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特開2023-66820運転性能推定装置、運転性能推定方法、送水システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066820
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】運転性能推定装置、運転性能推定方法、送水システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20230509BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
F04B51/00
F04B49/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177634
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 諒
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 啓志
(72)【発明者】
【氏名】小峰 英明
(72)【発明者】
【氏名】有村 良一
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA16
3H145AA42
3H145BA39
3H145BA41
3H145CA03
3H145CA06
3H145CA21
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA20
3H145EA37
3H145FA17
3H145FA23
3H145FA25
3H145FA26
(57)【要約】
【課題】 各個の流体機械の運転性能を容易に診断できるようにすること。
【解決手段】 実施形態の運転性能推定装置は、複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成する性能曲線生成処理部と、前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成する初期性能曲線生成処理部と、前記性能曲線生成処理部により生成された前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線生成処理部により生成された前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画する曲線描画処理部とを具備する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成する性能曲線生成処理部と、
前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成する初期性能曲線生成処理部と、
前記性能曲線生成処理部により生成された前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線生成処理部により生成された前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画する曲線描画処理部と
を具備する、運転性能推定装置。
【請求項2】
前記性能曲線生成処理部は、
前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す第1の計測データを用いて、流量-圧力曲線の数式を求め、この数式の係数の値を示す第1の曲線パラメータを生成する流量圧力曲線パラメータ推定処理部と、
前記稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量を表す第2の計測データを用いて、流量-消費電力曲線の数式を求め、この数式の係数の値を示す第2の曲線パラメータを生成する流量電力曲線パラメータ推定処理部と
を含む、
請求項1に記載の運転性能推定装置。
【請求項3】
前記初期性能曲線生成処理部は、
前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報から、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す流量-圧力曲線の数式、流量-消費電力曲線の数式、および流量-効率曲線の数式を求め、それぞれの数式の係数の値を初期曲線パラメータとして生成する、
請求項2に記載の運転性能推定装置。
【請求項4】
前記曲線描画処理部は、
前記第1の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画する流量-圧力曲線描画処理部と、
前記第2の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画する流量-消費電力曲線描画処理部と、
前記第1及び第2の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する流量-効率曲線描画処理部と
を含む、
請求項3に記載の運転性能推定装置。
【請求項5】
前記流量圧力曲線パラメータ推定処理部は、
前記初期曲線パラメータを更に用いて、前記第1の曲線パラメータを求め、
前記流量電力曲線パラメータ推定処理部は、
前記初期曲線パラメータを更に用いて、前記第2の曲線パラメータを求める、
請求項3又は4に記載の運転性能推定装置。
【請求項6】
前記第1の曲線パラメータを過去の第1の曲線パラメータとして蓄積するとともに、前記第2の曲線パラメータを過去の第2の曲線パラメータとして蓄積する第1の蓄積部を更に具備し、
前記流量-圧力曲線描画処理部は、
前記第1の曲線パラメータと前記過去の第1の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画し、
前記流量-消費電力曲線描画処理部は、
前記第2の曲線パラメータと前記過去の第2の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画し、
前記流量-効率曲線描画処理部は、
前記第1及び第2の曲線パラメータと前記過去の第1及び第2の曲線パラメータと前記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する、
請求項4に記載の運転性能推定装置。
【請求項7】
前記曲線描画処理部は、
任意に指定される特定の流量値である対象流量に対応する圧力の時系列変化を描画する時系列圧力描画処理部と、
前記対象流量に対応する消費電力の時系列変化を描画する時系列消費電力描画処理部と
前記対象流量に対応する効率の時系列変化を描画する時系列効率描画処理部と
を含む、
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の運転性能推定装置。
【請求項8】
前記稼働中の流体機械とは異なる別の流体機械を稼働したときに前記流量圧力曲線パラメータ推定処理部により求められる第3の曲線パラメータと前記流量電力曲線パラメータ推定処理部により求められる第4の曲線パラメータとを蓄積する第2の蓄積部を更に具備し、
前記流量圧力曲線パラメータ推定処理部は、
前記第3の曲線パラメータを用いて、前記第1の曲線パラメータを求め、
前記流量電力曲線パラメータ推定処理部は、
前記第4の曲線パラメータを用いて、前記第2の曲線パラメータを求める、
請求項2乃至7のいずれか1項に記載の運転性能推定装置。
【請求項9】
性能曲線生成処理部により、複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成することと、
初期性能曲線生成処理部により、前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成することと、
曲線描画処理部により、前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画することと
を含む、運転性能推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成する手順と、
前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成する手順と、
前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画する手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
複数の配管にそれぞれ設けられ、稼働又は停止が選択的に制御される複数の流体機械と、
前記複数の配管の下流側に合流部を介して接続される1つの配管に設けられ、流体の流量および圧力をそれぞれ計測する流量計および圧力計と、
前記複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械が消費する消費電力を計測する電力計と、
運転性能推定装置と
を具備し、
前記運転性能推定装置は、
前記稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成する性能曲線生成処理部と、
前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成する初期性能曲線生成処理部と、
前記性能曲線生成処理部により生成された前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線生成処理部により生成された前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画する曲線描画処理部とを含む、
送水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、運転性能推定装置、運転性能推定方法、送水システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上水道施設において、ポンプは処理対象である水を輸送する設備として利用される。また、ポンプは上水道施設で浄化した水を各需要家へ配水する供給手段としても利用される。そのため、上水道の運営に使用される消費電力の大部分をポンプが占め、効率のよいポンプを使用することは、上水道施設の省エネに寄与することが知られている。
一方、下水道施設においても、ポンプは水の輸送だけでなく、汚泥を輸送する手段として使用される。また、微生物処理においては、ポンプと同様の構造をした空気供給設備であるブロワが使用される。下水道の運営においても、ポンプやブロワの消費電力が大部分を占めることになる。
【0003】
一般に、ポンプやブロワなどの流体機械は、継続して使用することで設備劣化により運転性能が低下する。また、故障する蓋然性も高くなる。そのため、流体機械の運転性能を診断し、定期的に点検・メンテナンスしていくことが望ましいが、人手がかかるため、センサなどの計測値を利用して、流体機械の運転性能を診断する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5395944号公報
【特許文献2】特許第6290119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のポンプの運転性能の診断方法として、電流計や振動センサをポンプに設置し、消費電流や振動の測定値から運転性能の低下(以降、「性能低下」と呼ぶ場合がある。)の度合いを推定する方法などがあるが、上下水道施設の各ポンプに個別にそれらの計器を設置することはコストの面で現実的でない。
【0006】
近年では、ポンプの性能低下による効率低下を利用して、ポンプの効率から、ポンプの運転性能を推定することが試みられている。ポンプの効率は消費した電力のエネルギ-を水力学的エネルギ-に変換した比率として下式のように定義することができ、ポンプの吐出流量、吐出圧力、消費電力が分かれば、算出することができる。
【0007】
(効率)=(水力学的エネルギ-)/(消費電力)
=((吐出流量)×(吐出圧力))/(消費電力)
しかしながら、上下水道施設において、これらの吐出流量、吐出圧力、消費電力をポンプ各個に対して測定することはコスト面から現実的ではなく、配管の合流部やポンプ群が含まれる受電系統の合流部にのみ流量計、圧力計、電力計を設置し、系列単位で監視を行っている場合が多い。そうした場合、各ポンプ個別に吐出流量、吐出圧力、消費電力を測定しないことから、各ポンプの効率を算出(推定)し、ポンプの運転性能を診断することは困難となる。このような問題は、水や汚泥等を輸送するポンプを使用する設備に限らず、空気やその他のガス等を送り出すブロワを使用する設備にも同様に存在する。
【0008】
発明が解決しようとする課題は、各個の流体機械の運転性能を容易に診断できるようにする、運転性能推定装置、運転性能推定方法、送水システム、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の運転性能推定装置は、性能曲線生成処理部と、初期性能曲線生成処理部と、曲線描画処理部とを具備する。
【0010】
前記性能曲線生成処理部は、複数の流体機械のうちの稼働中の流体機械の消費電力および前記稼働中の流体機械が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、前記稼働中の流体機械の運転性能を表す性能曲線の情報を生成する。前記初期性能曲線生成処理部は、前記稼働中の流体機械の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、前記稼働中の流体機械の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報を生成する。前記曲線描画処理部は、前記性能曲線生成処理部により生成された前記性能曲線の情報と前記初期性能曲線生成処理部により生成された前記初期性能曲線の情報とに基づいて、前記稼働中の流体機械の前記性能曲線と前記初期性能曲線とを比較できるように描画する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1~第5の実施形態に係る運転性能推定装置10が適用される送水システムの構成例を示す図。
図2】試験成績書に記載される情報の例を示す図。
図3】ポンプ納入時あるいは修繕直後の性能曲線61とその後に得られる測定データから推定される性能曲線62とを描画した例を示す図。
図4】第1の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す図。
図5】第1の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す図。
図7】第2の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を示すフローチャート。
図8】第3の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す図。
図9】一定の期間毎に推定した性能曲線(流量-圧力曲線)81,82を比較できるように描画した例を示す図。
図10】第3の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を示すフローチャート。
図11】第4の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す図。
図12図9に示される流量-圧力曲線に基づき、指定されたある対象流量に対する圧力の値を月毎に比較できるように描画した例を示す図。
図13】第4の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を示すフローチャート。
図14】第5の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す図。
図15】第5の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
(システム構成)
最初に、第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1に、第1の実施形態に係る運転性能推定装置が適用される送水システムの構成例を示す。なお、図1に示される構成例は、後述する第2~第5の実施形態においても使用されるものである。
【0015】
ここで対象とするプロセスは、例えば上水施設の送水プロセスである。図1には4台のポンプによる送水プロセスの例が示されているが、これは一例であり、利用可能なポンプの運転台数は4台に限定されるものではない。各ポンプはそれぞれ配管を通じて水を合流させてから、送水先である配水池や需要家(図示せず)に供給される。また、ここでは、運転性能推定装置を、水や汚泥等を送り出すポンプを使用する施設に適用する例を示すが、これに限らず、空気やその他のガス等を送り出すブロワを使用する施設にも適用できるものである。
【0016】
図1に示される上水施設には、水などの流体が輸送される輸送路として、並列に配置される複数の配管w1と、その下流側に位置する合流部w2と、その下流側に位置する1つの配管w3とがある。流体が合流する前の複数の配管w1には、複数のポンプ(流体機械)1と複数のバルブ2がそれぞれ設置される。複数のポンプ1は、それぞれ、後述する運転制御システムによって稼働又は停止が選択的に制御されるようになっている。合流部w2もしくは流体が合流した後の配管w3には、流量計3および圧力計4が設置される。流量計3は、配管w3を流れる水などの流体の流量を計測するセンサである。圧力計4は、配管w3を流れる水などの流体の圧力を計測するセンサである。
【0017】
また、この送水システムには、電源から上記複数のポンプ1を含む電力需要設備へ電力を供給する電力供給線P0が備えられ、この電力供給線P0から各ポンプを含む電力需要設備への電力の供給/停止を個別に切り替えるためのスイッチSが設置される。電力供給線P0には、電力計5が設置される。電力計5は、稼働中のポンプ1が消費する消費電力を計測するセンサである。
【0018】
また、この送水システムには、複数のポンプ1の運転を個別に制御し運転状態を監視する運転制御システム6が備えられる。運転制御システム6は、複数のポンプ1にそれぞれ対応して設けられるスイッチSを操作することにより、各ポンプを個別に稼働状態にしたり停止状態にしたりすることができる。
【0019】
運転性能推定装置10は、各ポンプの運転性能を推定する装置であり、例えばコンピュータにより実現される。
【0020】
運転性能推定装置10は、入力部11,12、演算処理部13、記憶部14、表示部15、および通信部16を備える。
【0021】
入力部11は、各ポンプの初期の性能試験の結果を示す試験結果情報(試験成績書などの情報)を入力する装置である。
【0022】
入力部12は、流量計3で計測される流量の値を時系列に示す情報(流量データ)、圧力計4で計測される圧力の値を時系列に示す情報(圧力データ)、および電力計5で計測される電力の値を時系列に示す情報(電力データ)、ならびに運転制御システム6で制御される各スイッチSのオン/オフの状態を時系列に示す情報(すなわち、いずれのポンプ1が稼働しているか停止しているかを時系列に示すポンプ運転情報)をオンラインで入力する装置である。
【0023】
演算処理部13は、入力部11により入力される試験結果情報、入力部11,12により入力される流量データ、圧力データ、電力データおよびポンプ運転情報を用いて、所定の情報処理を行うプロセッサなどの装置である。この演算処理部13は、当該情報処理において、各ポンプの初期の運転性能から現時点の運転性能までの性能低下の変化を視覚的に把握できるようにそれぞれの時期におけるポンプ性能を示す複数の性能曲線を時系列に描画した性能曲線情報を生成したり、生成した性能曲線情報を記憶部14、表示部15、あるいは通信部16へ出力したりする処理を行う。性能曲線の種類としては、流量-圧力曲線、流量-消費電力曲線、流量-効率曲線などが挙げられる。なお、演算処理部13で行われる処理は、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することが可能である。
【0024】
記憶部14は、演算処理部13が情報処理を行うために必要なプログラム、データ、性能曲線情報などの各種の情報を記憶する記憶媒体を有する装置である。
【0025】
表示部15は、性能曲線情報などの情報を画面に表示する装置である。
【0026】
通信部16は、性能曲線情報などの情報を別の情報機器に送信してその情報機器の表示部に表示させる場合などに使用される装置である。
【0027】
(運転性能を示す数式モデル)
各ポンプの運転性能は、入力部12に入力される流量データ、圧力データ、電力データ、およびポンプ運転情報を用いて演算処理部13で推定することができる。
【0028】
図1に示される送水プロセスで計測される流量と圧力の値は、合流部w2の下流側で計測されるものであるが、ポンプの稼働台数が1台である場合は、稼動している1台のポンプ1の吐出流量と吐出圧力が計測されることになる。ポンプ1の稼働台数が1台の場合は、入力部12で得られたデータを使用すれば、時刻tにおけるポンプ1の効率は、下式で算出することができる。
η(t)={Q(t)・H(t)}/P(t) …(1)
ここで、
η(t):効率
Q(t):流量
H(t):圧力
P(t):電力
【0029】
したがって、1台運転に対応する計測データが十分にある場合は、Q-H(流量-圧力)、Q-P(流量-消費電力)、Q-η(流量-効率)の関係を得ることが可能である。また、データの関係を得るだけでなく、数式モデルを用いて性能を考える方が都合よいこともある。例えば、一般に、ポンプの流量と圧力、流量と消費電力には関係があり、例えば下式に示すような二次式や三次式でその関係を近似できることが知られている。
H(t)=αQ(t)+βQ(t)+γ …(2a)
P(t)=δQ(t)+εQ(t)+λQ(t)+μ …(2b)
ここで、
Q(t):流量
H(t):圧力
P(t):電力
【0030】
上記の関係を数式モデルに当てはめる場合、1台運転時の計測データを利用して最適化問題を解くことによって、近似曲線を表す数式の係数(数式モデルのパラメータ)を求めることができる。この問題は線形の最適化問題となるので、通常の最小二乗法などで求解することができる。
【0031】
しかしながら、送水プロセスによっては、1台運転でなく複数台運転をしている場合もしくは極端に1台運転のデータが少ない場合もある。ここで、合流部w2の下流側に設置された各センサで測定されたデータを単純に使用しても各個のポンプの特性を把握することは難しい。以下、その理由を説明する。
【0032】
図1に示されるように、合流部w2の下流側の配管w3に流量計3と圧力計4とを設置し、合流部w2上流側で並列に配置される複数の配管w1にそれぞれポンプ1を設置した場合、管路の摩擦抵抗などを無視すれば、各ポンプの吐出圧力と合流部w2の下流側の流体圧力は同じ値となり、圧力計4で各ポンプ1が吐出する圧力を計測できていると考えることができる。しかしながら、流量については、流量計3は複数のポンプ1の吐出流量の“和”を測定している。そのため、各ポンプの吐出流量を知得するためには、流量計3の計測値から推定を行う必要がある。仮に複数のポンプ1がすべて同じ型式のポンプであった場合、最も単純な推定方法は流量計の計測値をポンプ運転台数で割る方法が考えられるが、性能低下の度合いが各ポンプで異なる場合は、各個のポンプの特性が異なるため、精度の良い推定を行えない。
【0033】
このような理由から、合流部w2の下流側に設置される各センサの計測値を単純に使用しても各個のポンプの特性を推定することは難しい。つまり、1台運転でない場合の計測データを扱うためには、各ポンプの吐出流量の扱いを考慮する必要がある。
【0034】
本実施形態では、数式モデルとして後述する近似直線を推定する手法および近似曲線を推定する手法を採用するとともに、複数台のポンプが同時に運転された状態で取得される計測データに基づいて定式化される最適化問題を解くことによって所望の推定を行う。但し、近似直線を推定する手法は必ずしも必要とされるものではなく、近似直線を推定する手法以外の手法を用いて近似曲線を推定できる場合は、近似直線を推定する手法を用いなくてもよい。
【0035】
(近似直線と近似曲線)
複数台のポンプが同時に運転される状況では、最適化問題を解くにあたり、数式モデルで使用するパラメータの数を減らして、可同定性を高め、最適解が得られるようにすることが望ましい。そのためには、例えば、計測されたデータから近似直線を求め、求めた近似直線のパラメータをもとに、ポンプの特性を考慮して外挿するモデルのパラメータを決定する。
【0036】
まず、Q-H(流量-圧力)の関係を例に説明すると、下式を用いて表される近似直線を考える。これは、実際に得られている流量範囲が狭い場合は、収集されるデータが示す曲線の形状も直線とみなしても差し支えなく考えられる場合が多いことも利用している。
H(t)=aQ(t)+b …(3)
【0037】
(3)式の中のa、bに対応する近似直線のパラメータa、bを求める最適化問題は、パラメータの数が少なく、(2a)式、(2b)式を利用するよりもパラメータの可同定性が向上する。得られた近似直線のパラメータa、bから、後述するいくつかの前提条件を仮定してそれらを連立方程式とみなして解くことにより、近似曲線のパラメータα、β、γへの変換を行う。
【0038】
このような近似直線や近似曲線のパラメータの推定には、特許第6290119号公報に開示される技術を利用することが有効である。
【0039】
(試験成績書)
本実施形態では、各ポンプの性能低下の度合いを把握しやすいものとするため、各ポンプの初期の運転性能を表す性能曲線と、その後に得られる計測データから推定される性能曲線とを、比較できるよう可視化する機能を提供する。ここで、各ポンプの初期の運転性能を表す性能曲線を得るためには、例えば、あらかじめ各ポンプのポンプ納入時あるいは修繕時に性能試験の結果として添付される試験成績書を、ポンプ性能推定装置10内に取り込む。
【0040】
性能試験では、異なる吐出量について回転数や吸込圧などを測定する。測定で得られた試験結果は、試験成績書として図2に示されるような表形式で、各種の項目(図2の例では、回転数、吐出量、吐出水頭、吸込水頭、全揚程、理論動力、電流、入力、効率、ポンプ軸動力、ポンプ効率といった項目)に対する測定値が記載されることが多いため、それらの値を入力部11から入力することでポンプ性能推定装置10内に取り込むことができる。
【0041】
なお、ポンプ性能推定装置10に入力する手間を省くために、OCR(光学文字認識:Optical character recognition)技術を用いて、表の情報を取り込むようにしてもよい。また、試験結果情報は、表形式のデータとして取り込んでもよいが、性能試験の測定点は概ね5点程度あるため、(1)式、(2a)式および(2b)式のような数式モデルに当てはめ、その係数をパラメータとして記録してもよい。さらに、試験成績書には図2のような表形式のデータをグラフにしたものが記載されていることも多いため、グラフ画像を画像処理することで、性能曲線の情報を取り込んでもよい。
【0042】
ポンプ性能推定装置10に取り込まれた試験結果情報は、ポンプ納入時あるいは修繕直後の性能曲線として記憶部14などに記録・保存しておく。
【0043】
図3に、ポンプ納入時あるいは修繕直後の性能曲線61とその後に得られる測定データから推定される性能曲線62とを同じグラフ上に描画した例を示す。試験成績書に基づく性能曲線を取り込むことで、図3に示されるようにポンプ納入時あるいは修繕直後の性能曲線61と、その後に得られる測定データから推定される性能曲線62とを、表示部15等の画面で比較することが可能になる。性能曲線61はポンプ毎に描画するようにしてもよい。図3は流量-圧力曲線を描画した例であるが、流量-消費電力曲線、流量-効率曲線についても同様に描画することができる。
【0044】
このように各曲線の差分を可視化することで、性能低下の度合いを把握しやすくなる。試験成績書に基づく性能曲線とその後に得られる測定データから推定される性能曲線とが重なるようであれば、性能が低下していないと考えられるし、両者が乖離していれば、性能低下が起こっている可能性が高いと考えることができる。
【0045】
(演算処理部13の機能構成)
図4に、第1の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す。
【0046】
演算処理部13は、各種の機能として、性能曲線生成処理部30、曲線描画処理部40、および初期性能曲線生成処理部50を備えている。
性能曲線生成処理部30は、複数のポンプ1のうちの稼働中のポンプ1の消費電力および稼働中のポンプ1が吐出する流体の流量および圧力を表す計測データに基づいて、稼働中のポンプ1の運転性能を表す性能曲線の情報(例えば後述する第1の曲線パラメータおよび第2の曲線パラメータ)を生成する機能である。
初期性能曲線生成処理部50は、稼働中のポンプ1の初期の性能試験の結果を示す試験結果情報に基づいて、稼働中のポンプ1の初期の運転性能を表す初期性能曲線の情報(例えば後述する初期曲線パラメータ)を生成する機能である。
曲線描画処理部40は、性能曲線生成処理部30により生成された性能曲線の情報と初期性能曲線生成処理部50により生成された初期性能曲線の情報とに基づいて、稼働中のポンプ1の性能曲線と初期性能曲線とを比較できるように描画する機能である。
性能曲線生成処理部30は、流量圧力近似直線推定処理部51、流量電力近似直線推定処理部52、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53、および流量電力曲線パラメータ推定処理部54を有する。曲線描画処理部40は、流量-圧力曲線描画処理部55、流量-消費電力曲線描画処理部56、および流量-効率曲線描画処理部57を有する。
【0047】
初期性能曲線生成処理部50は、より具体的には、入力部11により取り込まれた各ポンプの初期の性能試験の結果を示す試験結果情報(例えば、納入初期の性能試験の結果を示す試験成績書などの情報)のうち、少なくとも稼働中のポンプの初期の性能試験の結果を示す試験結果情報から、当該稼働中のポンプ1の初期の運転性能を表す流量-圧力曲線の数式、流量-消費電力曲線の数式、および流量-効率曲線の数式を求め、それぞれの数式の係数の値を初期曲線パラメータとして生成する機能である。
【0048】
流量圧力近似直線推定処理部51は、入力部12により入力される流量データ、圧力データ、およびポンプ運転情報よりなる第1の計測データ、すなわち、稼働中のポンプ1が吐出する流体の流量および圧力を表すデータから、例えば流量-圧力の座標上に当該データを複数の点としてプロットした情報を生成し、これより流量と圧力との関係を示す近似直線の数式(上述した(3)式に基づく数式)を求め、この数式の係数の値を示す第1の直線パラメータを生成する機能である。
【0049】
流量電力近似直線推定処理部52は、入力部12に入力される流量データ、電力データ、およびポンプ運転情報よりなる第2の計測データ、すなわち、稼働中のポンプ1が吐出する流体の流量および消費電力を表すデータから、例えば流量-消費電力の座標上に当該データを複数の点としてプロットした情報を生成し、これより流量と消費電力との関係を示す近似直線の数式(上述した(3)式に基づく数式)を求め、この数式の係数の値を示す第2の直線パラメータを生成する機能である。
【0050】
流量圧力曲線パラメータ推定処理部53は、上記第1の直線パラメータから、流量-圧力曲線(例えば二次曲線)の数式を求め、この数式の係数の値を示す第1の曲線パラメータを生成する機能である。この流量圧力曲線パラメータ推定処理部53は、近似直線のパラメータである第1の直線パラメータから、いくつかの前提条件を仮定してそれらを連立方程式とみなして解くことにより、二次曲線のパラメータである第1の曲線パラメータへの変換を行う。この場合の前提条件は、例えば次の3つとする。
(1)締切圧(全てのポンプが送水を行わない場合の圧力、換言すれば全てのポンプを締め切った場合の圧力)がポンプ効率によらず低下しないこと
(2)流量範囲の中心における流量-圧力曲線の接線の傾きが近似直線の傾きと同じであること
(3)流量-圧力曲線が、流量範囲の最大値において近似直線上の点を通ること
【0051】
あるいは、上記の2番目の条件を変え、次の3つとする。
(1)締切圧(全てのポンプが送水を行わない場合の圧力、換言すれば全てのポンプを締め切った場合の圧力)がポンプ効率によらず低下しないこと
(2)流量-圧力曲線が、流量範囲の最小値において近似直線上の点を通ること
(3)流量-圧力曲線が、流量範囲の最大値において近似直線上の点を通ること
【0052】
流量電力曲線パラメータ推定処理部54は、上記第2の直線パラメータから、流量-消費電力曲線(例えば三次曲線)の数式を求め、この数式の係数の値を示す第2の曲線パラメータを生成する機能である。この流量電力曲線パラメータ推定処理部54は、近似直線のパラメータである第2の直線パラメータから、いくつかの前提条件を仮定してそれらを連立方程式とみなして解くことにより、三次曲線のパラメータである第2の曲線パラメータへの変換を行う。この場合の前提条件は、例えば次の4つとする。
(1)流量がゼロのときの電力は変化しないこと
(2)流量-消費電力曲線が、流量範囲の最小値において近似直線上の点を通ること
(3)流量-消費電力曲線が、流量範囲の最大値において近似直線上の点を通ること
(4)流量範囲の中心における流量-消費電力曲線の接線の傾きが近似直線の傾きと同じであること
【0053】
流量-圧力曲線描画処理部55は、上記第1の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画する機能である。
【0054】
流量-消費電力曲線描画処理部56は、上記第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画する機能である。
【0055】
流量-効率曲線描画処理部57は、上記第1及び第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する機能である。
【0056】
(動作)
次に、図5のフローチャートを参照して、第1の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を説明する。なお、後述するステップS1~S4の処理は、必ずしもこの順序で実施する必要はなく、適宜、実施する順序を変えることができる。例えば、ステップS1の処理とステップS3の処理とは、実施する順序を入れ替えてもよいし、同時に実施するようにしてもよい。
【0057】
ポンプ性能推定装置10内には、あらかじめ、入力部11から各ポンプのポンプ納入時あるいは修繕時に性能試験の結果として添付される試験成績書などの試験結果情報が取り込まれているものとする。
【0058】
ステップS1においては、運転性能推定装置10は、流量圧力近似直線推定処理部51により、入力部12から入力される流量データ、圧力データ、およびポンプ運転情報よりなる第1の計測データから、流量と圧力との関係を示す近似直線の数式を求め、この数式の係数の値を示す第1の直線パラメータを生成するとともに、流量電力近似直線推定処理部52により、入力部12に入力される流量データ、電力データ、およびポンプ運転情報よりなる第2の計測データから、流量と消費電力との関係を示す近似直線の数式を求め、この数式の係数の値を示す第2の直線パラメータを生成する。
【0059】
次に、ステップS2において、運転性能推定装置10は、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53により、上記第1の直線パラメータから、流量-圧力曲線(例えば二次曲線)の数式を求め、この数式の係数の値を示す第1の曲線パラメータを生成するとともに、流量電力曲線パラメータ推定処理部54により、上記第2の直線パラメータから、流量-消費電力曲線(例えば三次曲線)の数式を求め、この数式の係数の値を示す第2の曲線パラメータを生成する。
【0060】
一方で、ステップS3において、運転性能推定装置10は、初期性能曲線生成処理部50により、入力部11により取り込まれた各ポンプの初期の性能試験の結果を示す試験結果情報(例えば、納入初期の性能試験の結果を示す試験成績書などの情報)のうち、稼働中のポンプの初期の性能試験の結果を示す試験結果情報から、当該稼働中のポンプ1の初期の運転性能を表す流量-圧力曲線の数式、流量-消費電力曲線の数式、および流量-効率曲線の数式を求め、それぞれの数式の係数の値を初期曲線パラメータとして生成する。
【0061】
最後に、ステップS4において、運転性能推定装置10は、流量-圧力曲線描画処理部55により、上記第1の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画し、流量-消費電力曲線描画処理部56により、上記第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画し、流量-効率曲線描画処理部57により、上記第1及び第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する。
【0062】
このステップS4での処理により、各種の性能曲線が比較できるように描画された性能曲線情報が形成される。性能曲線情報は、記憶部14、表示部15、あるいは通信部16へ出力される。
【0063】
第1の実施形態によれば、各ポンプのポンプ納入時あるいは修繕時に性能試験の結果として添付される試験成績書などの試験結果情報を運転性能推定装置10に取り込んだ上で、この試験結果情報から初期の運転性能を表す性能曲線を生成し、当該性能曲線と、その後に得られる計測データから推定される性能曲線とを、比較できるように共に描画するため、各曲線の差分を可視化することができ、性能低下の度合いをユーザにとって把握しやすいものとすることができる。
【0064】
<第2の実施形態>
(システム構成)
次に、第2の実施形態について説明する。以下では、前述した第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、システム全体の構成は、図1に示したものと同じとなるため、ここではその説明を省略する。
【0065】
(演算処理部13の機能構成)
図6に、第2の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す。ここでは、前述した図4の構成と異なる部分について説明する。
【0066】
図6に示されるように、運転性能推定装置10内においては、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53は、流量圧力近似直線推定処理部51により生成された第1の直線パラメータと初期性能曲線生成処理部50により生成された初期曲線パラメータとから、上記第1の曲線パラメータを求める。また、流量電力曲線パラメータ推定処理部54は、流量電力近似直線推定処理部52により生成された第2の直線パラメータと初期性能曲線生成処理部50により生成された初期曲線パラメータとから、上記第2の曲線パラメータを求める。
【0067】
本実施形態では、試験成績書などに基づく性能曲線のパラメータ(すなわち、初期曲線パラメータ)を、性能曲線の推定結果を補足することにも利用する。これにより、直線パラメータを精度良く求められない場合などに、曲線パラメータの推定精度の低下を抑制することを可能にする。
【0068】
前述の第1の実施形態では、推定した(3)式に基づく数式の直線パラメータをもとに近似曲線のパラメータを求めていた。したがって、近似曲線のパラメータを精度良く求めるためには、直線パラメータを精度良く求める必要がある。しかしながら、異常値等の影響によって直線パラメータを精度良く求められない場合もある。この場合、直線パラメータのみから近似曲線のパラメータを求めるより、直線パラメータに例えば試験成績書の情報も加味して近似曲線のパラメータを求めた方が精度を高められる可能性がある。これは、計測データから推定する性能低下後の性能曲線の形が、試験成績書に基づく性能曲線の形と同様になることが先見情報として利用できるためである。
【0069】
例えば、(2a)式のQ-H(流量-圧力)が試験成績書に基づく性能曲線であったとして、性能低下後の計測データから得られるQ-H(流量-圧力)性能曲線は以下の(4)式に示すようにβ、γは変わらず、αがα′に置き換わったほぼ同じ形になると仮定する。
H(t)=α′Q(t)+βQ(t)+γ …(4)
【0070】
ここで、ある流量の代表値Qを決めれば、当該流量の代表値Qおよび対応する圧力の代表値Hの近似直線上の点(Q,H)を、「(Q,H)=aQ+b」と表現することができる。
【0071】
(4)式に示すQ-H(流量-圧力)性能曲線が、この近似直線上の点(Q,H)を通るとすれば、α′は、近似直線のパラメータa、bと、試験成績書に基づく近似曲線の曲線パラメータβ、γとを用いて、以下の(5)式のように求めることができる。
α′=(H-βQ-γ)/Q
=(aQ+b-βQ-γ)/Q …(5)
【0072】
このように、近似直線のパラメータを使用するだけでなく、試験成績書に基づく近似曲線のパラメータ(すなわち、初期曲線パラメータ)を使用し、測定データから得られる性能曲線のパラメータを試験成績書に基づく近似曲線のパラメータと同じような形にすることで、直線パラメータを精度良く求められない場合などに、曲線パラメータの推定精度の低下を抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、得られる推定曲線が(4)式のように与えられると仮定したが、(4)式はあくまでも一例であり、近似直線の推定の状況に応じて、仮定を変更してもよく、他の形で仮定を行っても構わない。
【0074】
(動作)
次に、図7のフローチャートを参照して、第2の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を説明する。ここでは、前述した図5のフローチャートと異なる部分について説明する。
【0075】
図7では、図5に示されるステップS2が、ステップS2′に変更されている。
【0076】
ステップS2′において、運転性能推定装置10は、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53により、流量圧力近似直線推定処理部51から生成された第1の直線パラメータと初期性能曲線生成処理部50から生成された初期曲線パラメータとから、上記第1の曲線パラメータを求めるとともに、流量電力曲線パラメータ推定処理部54により、流量電力近似直線推定処理部52から生成された第2の直線パラメータと初期性能曲線生成処理部50から生成された初期曲線パラメータとから、上記第2の曲線パラメータを求める。
【0077】
第2の実施形態によれば、計測データから得られる性能曲線の曲線パラメータを推定するに際し、試験成績書に基づく近似曲線のパラメータを使用することにより、直線パラメータを精度良く求められない場合などに、曲線パラメータの推定精度の低下を抑制することができる。
【0078】
<第3の実施形態>
(システム構成)
次に、第3の実施形態について説明する。以下では、前述した第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、システム全体の構成は、図1に示したものと同じとなるため、ここではその説明を省略する。
【0079】
(演算処理部13の機能構成)
図8に、第3の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す。ここでは、前述した図6の構成と異なる部分について説明する。
【0080】
図8に示されるように、運転性能推定装置10内には、曲線パラメータデータベース(第1の蓄積部)71が備えられる。この曲線パラメータデータベース71は、上記第1の曲線パラメータを過去の第1の曲線パラメータとして蓄積するとともに、上記第2の曲線パラメータを過去の第2の曲線パラメータとして蓄積する。
【0081】
前記流量-圧力曲線描画処理部55は、上記第1の曲線パラメータと上記過去の第1の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画する。
【0082】
前記流量-消費電力曲線描画処理部56は、上記第2の曲線パラメータと上記過去の第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画する。
【0083】
前記流量-効率曲線描画処理部57は、上記第1及び第2の曲線パラメータと上記過去の第1及び第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する。
【0084】
本実施形態では、各ポンプの性能曲線のパラメータ(すなわち、第1の曲線パラメータおよび第2の曲線パラメータ)を、過去の曲線パラメータとして後で使用することにも利用する。これにより、各ポンプの性能曲線を、過去の性能曲線と比較できるように描画することを可能にする。
【0085】
推定した性能曲線のパラメータを過去の曲線パラメータとして記録しておくことで、同じ流量範囲に対して性能低下を複数の曲線で時系列に描画することが可能になり、各曲線の差分をユーザが把握しやすくなる。推定した性能曲線のパラメータを記録するタイミングに機能上の制限は特に必要ないが、定周期で計測データをもとに性能曲線を推定し、個々の推定結果を比較することで、ポンプの性能低下の度合いや、どのタイミングで性能低下が開始しているかなどを把握しやすくなる。図9に、第3の実施形態による可視化の例を示す。
【0086】
図9は、一定の期間毎に推定した性能曲線(流量-圧力曲線)を比較できるように描画した結果を示している。性能曲線81は過去に推定したものであり、性能曲線82は現時点で推定したものである。ある流量値においては、性能曲線82の圧力値が性能曲線81の圧力値よりも低下していることがわかる。
【0087】
可視化する性能曲線を推定するタイミングは1カ月単位であってもよいし、3カ月単位や半年単位、あるいは年単位であってもよいが、計測データの特徴などに応じて推定精度が高めるのに必要十分な期間、かつなるべく短い期間で推定するのが望ましい。また、見易さのため、図9では、描画する性能曲線を2本としているが、2本以上であっても構わない。また、図9では、Q-H(流量-圧力)曲線を示しているが、Q-P(流量-消費電力)曲線、Q-η(流量-効率)曲線についても同様に可視化することができる。例えば過去の性能曲線と現時点で推定した性能曲線が重なるようであれば、運転性能が低下していないと考えられるし、両者が乖離していれば、性能低下が起こっている可能性が高いと考えることができる。
【0088】
(動作)
次に、図10のフローチャートを参照して、第3の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を説明する。ここでは、前述した図7のフローチャートと異なる部分について説明する。
【0089】
図10では、新たなステップS5がステップS2′の後に挿入されている。
また、図10では、図7に示されるステップS4が、ステップS4′に変更されている。
【0090】
ステップS5において、運転性能推定装置10は、曲線パラメータデータベース71に、上記第1の曲線パラメータを、過去の第1の曲線パラメータとして蓄積するとともに、上記第2の曲線パラメータを、過去の第2の曲線パラメータとして蓄積する。
【0091】
次に、ステップS4′において、運転性能推定装置10は、流量-圧力曲線描画処理部55により、上記第1の曲線パラメータと上記過去の第1の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-圧力曲線を比較できるように描画し、流量-消費電力曲線描画処理部56により、上記第2の曲線パラメータと上記過去の第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-消費電力曲線を比較できるように描画し、流量-効率曲線描画処理部57により、上記第1及び第2の曲線パラメータと上記過去の第1及び第2の曲線パラメータと上記初期曲線パラメータとから、それぞれに対応する流量-効率曲線を比較できるように描画する。
【0092】
このステップS4′での処理により、各種の性能曲線が比較できるように描画された性能曲線情報が形成される。性能曲線情報は、記憶部14、表示部15、あるいは通信部16へ出力される。
【0093】
第3の実施形態によれば、各ポンプの性能曲線を、過去の性能曲線と比較できるように描画することで、各曲線の差分を可視化することができ、性能低下の度合いをユーザにとって把握しやすいものとすることができる。
【0094】
<第4の実施形態>
(システム構成)
次に、第4の実施形態について説明する。以下では、前述した第3の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、システム全体の構成は、図1に示したものと同じとなるため、ここではその説明を省略する。
【0095】
(演算処理部13の機能構成)
図11に、第4の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す。ここでは、前述した図8の構成と異なる部分について説明する。
【0096】
なお、図11中では、前述した流量-圧力曲線描画処理部55、流量-消費電力曲線描画処理部56、および流量-効率曲線描画処理部57の図示を省略しているが、これらの処理部55、56、および57は存在するように構成してもよいし、図11に示すとおり省略してもよい。曲線描画処理部40は、時系列圧力描画処理部91、時系列消費電力描画処理部92、および時系列効率描画処理部93を備えている。
【0097】
時系列圧力描画処理部91、時系列消費電力描画処理部92、および時系列効率描画処理部93には、ユーザによって任意に指定される特定の流量値(以下、「対象流量」)が、必要に応じて入力部11等から入力できるように構成されている。
【0098】
時系列圧力描画処理部91は、指定される対象流量に対応する圧力の時系列変化を描画する機能である。
【0099】
時系列消費電力描画処理部92は、指定される対象流量に対応する消費電力の時系列変化を描画する機能である。
【0100】
時系列効率描画処理部93は、指定される対象流量に対応する効率の時系列変化を描画する機能である。
【0101】
本実施形態では、各ポンプの性能曲線を、過去の性能曲線と比較できるように描画するに際し、ユーザから指定される対象流量に対応する圧力、消費電力、効率の時系列変化を描画できるようにする。
【0102】
前述の図9に示されるような可視化は、ポンプの性能低下の度合いや、どのタイミングで性能低下が開始しているかなどを把握しやすい一方で、描画する曲線の本数が多くなるとユーザによる解釈が困難となる可能性がある。また、図9に示されるような可視化は、広範な流量範囲に関して結果を確認できるが、現実に運転しているポンプの動作点は特定の流量範囲であることも少なくなく、特定の流量に絞って比較をしたい要求も考えられる。
【0103】
例えば、図9に示される複数のQ-H(流量-圧力)曲線に対して、対象流量を1つ決めれば、対応する圧力は、各曲線につき1つの値に対応する。したがって、対象流量を1つ決めれば、対応する値が時系列でどのように変化したかを見ることができ、ポンプの性能低下の度合いを確認することができる。図12に、第4の実施形態による可視化の例を示す。
【0104】
図12は、図9に示されるQ-H(流量-圧力)曲線に基づき、指定されたある対象流量に対する圧力の値を月毎に比較できるように描画した結果を示している。
【0105】
図12の例では、指定されたある対象流量に対する各月の圧力が点で表現され、各点を結ぶ線100によって月毎の圧力の変化が可視化されている。なお、図12では、Q-H(流量-圧力)曲線に基づく「圧力」の変化の可視化の例を示しているが、Q-P(流量-消費電力)曲線に基づく「消費電力」の変化、Q-η(流量-効率)曲線に基づく「効率」の変化についても同様に可視化することができる。
【0106】
このようにすると、圧力や消費電力、効率といった性能が時系列にどのように変化しているのかを把握しやすくなる。また、横軸を時系列に表示することで、対象とする推定結果が多い場合に、図9に示される描画でユーザによる解釈が困難となった問題も回避することができ、多くの推定結果を比較することができる。
【0107】
(動作)
次に、図13のフローチャートを参照して、第4の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を説明する。ここでは、前述した図10のフローチャートと異なる部分について説明する。
【0108】
なお、図13中では、図10に示されるステップS4′の図示を省略しているが、ステップS4′は存在するものとする。このステップS4′は、新たなステップS4”を含む。
【0109】
ステップS4”において、運転性能推定装置10は、ユーザからある対象流量が指定されると、時系列圧力描画処理部91により、指定される対象流量に対応する圧力の時系列変化を描画し、時系列消費電力描画処理部92により、指定される対象流量に対応する消費電力の時系列変化を描画し、時系列効率描画処理部93により、指定される対象流量に対応する効率の時系列変化を描画する。
【0110】
第4の実施形態によれば、各ポンプの性能曲線を、過去の性能曲線と比較できるように描画するに際し、特定の流量に対する圧力、消費電力、効率の差分を可視化することができるので、性能低下の度合いをユーザにとってより把握しやすいものとすることができる。
【0111】
<第5の実施形態>
(システム構成)
次に、第5の実施形態について説明する。以下では、前述した第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、システム全体の構成は、図1に示したものと同じとなるため、ここではその説明を省略する。
【0112】
(演算処理部13の機能構成)
図14に、第5の実施形態による演算処理部13の機能構成の一例を示す。ここでは、前述した図6の構成と異なる部分について説明する。
【0113】
図14に示されるように、運転性能推定装置10内には、曲線パラメータデータベース(第2の蓄積部)71′が備えられる。この曲線パラメータデータベース71′は、稼働中のポンプとは異なる別のポンプを稼働したときに流量圧力曲線パラメータ推定処理部53により求められる第3の曲線パラメータと流量電力曲線パラメータ推定処理部54により求められる第4の曲線パラメータとを、あらかじめ蓄積する。
【0114】
流量圧力曲線パラメータ推定処理部53は、上記第3の曲線パラメータを用いて、上記第1の曲線パラメータを求める機能を有する。この場合、上記第3の曲線パラメータをそのまま上記第1の曲線パラメータとして出力するようにしてもよい。
【0115】
前記流量電力曲線パラメータ推定処理部54は、上記第4の曲線パラメータを用いて、上記第2の曲線パラメータを求める機能を有する。この場合、上記第4の曲線パラメータをそのまま上記第2の曲線パラメータとして出力するようにしてもよい。
【0116】
本実施形態では、稼働中のポンプとは異なる別のポンプを稼働したときに得た性能曲線のパラメータ(すなわち、第3の曲線パラメータおよび第4の曲線パラメータ)を、現在の性能曲線の推定結果を補足することに利用する。これにより、直線パラメータを精度良く求めることができず、また試験成績書の情報を利用しても曲線パラメータを精度良く求めることができない場合に、曲線パラメータの推定精度の低下を抑制することを可能にする。
【0117】
前述の第2の実施形態では、直線パラメータを精度良く求められない場合に、試験成績書の情報も加味して近似曲線のパラメータを求めていたが、試験成績書の情報が残っていない場合やその情報が不十分である場合には、曲線パラメータの推定精度は低下する。しかし、送水プロセスでは、併設されている複数のポンプの型式が同じ場合が多いので、本実施形態では、計測データから推定する性能低下後の性能曲線の形が、他のポンプの性能曲線の形と同様になると仮定し、他のポンプの性能曲線の推定結果を利用する。
【0118】
(動作)
次に、図15のフローチャートを参照して、第5の実施形態による運転性能推定装置10の動作の一例を説明する。ここでは、前述した図7のフローチャートと異なる部分について説明する。
【0119】
図15では、新たなステップS6およびS7が、ステップS4の前に挿入されている。
また、図15では図示を省略しているが、ステップS6の前には、図7に示されるステップS1およびS2′があるものとする。但し、当該ステップS1およびS2′の処理は、別のポンプの稼働中に実施されるものとする。
【0120】
運転性能推定装置10は、別のポンプの稼働中にステップS1およびS2′の処理を実施する。すなわち、運転性能推定装置10は、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53により、別のポンプに対応する第3の曲線パラメータを生成し、流量電力曲線パラメータ推定処理部54により、別のポンプに対応する第4の曲線パラメータを生成する。
【0121】
ステップS6においては、運転性能推定装置10は、曲線パラメータデータベース71′に、上記第3の曲線パラメータおよび上記第4の曲線パラメータを蓄積する。
【0122】
次に、ステップS7において、運転性能推定装置10は、流量圧力曲線パラメータ推定処理部53により、上記第3の曲線パラメータを用いて上記第1の曲線パラメータを求めるとともに、流量電力曲線パラメータ推定処理部54により、上記第4の曲線パラメータを用いて上記第2の曲線パラメータを求める。
【0123】
第5の実施形態によれば、直線パラメータを精度良く求めることができず、また試験成績書の情報を利用しても曲線パラメータを精度良く求めることができない場合に、曲線パラメータの推定精度の低下を抑制することができる。
【0124】
以上詳述したように、実施形態によれば、各個の流体機械の運転性能を容易に診断できる。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
1…複数のポンプ(流体機械)、2…バルブ、3…流量計、4…圧力計、5…電力計、6…運転制御システム、10…運転性能推定装置、11,12…入力部、13…演算処理部、14…記憶部、15…表示部、16…通信部、30…性能曲線生成処理部、40…曲線描画処理部、50…初期性能曲線生成処理部、51…流量圧力近似直線推定処理部、52…流量電力近似直線推定処理部、53…流量圧力曲線パラメータ推定処理部、54…流量電力曲線パラメータ推定処理部、55…流量-圧力曲線描画処理部、56…流量-消費電力曲線描画処理部、57…流量-効率曲線描画処理部、71…曲線パラメータデータベース(第1の蓄積部)、71′…曲線パラメータデータベース(第2の蓄積部)、P0…電力供給線、w1,w3…配管、w2…合流部。
図1
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図15