(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067074
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】唾液採取容器セット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20230509BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230509BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20230509BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N33/48 S
B65D47/36 100
B65D41/04 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178040
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】工藤 良太郎
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
3E084
【Fターム(参考)】
2G045CB07
2G045HA06
2G045HA13
2G045HA14
2G052AA29
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA17
2G052DA02
2G052DA13
2G052DA15
2G052DA27
2G052GA29
2G052JA08
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DB17
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HB01
3E084HC03
3E084HD04
3E084JA20
3E084KB01
3E084LA17
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】内方に薬液収容部を有する唾液採取容器セットのキャップにおいて、薬液収容部の筒壁の上端部にヒケが生じないようにして、キャップで閉じた容器本体からの液漏れを防止する。
【解決手段】唾液受け具2と唾液溜め部12を有する容器本体3とこの容器本体3の装着口部8を閉じるキャップ5とを備え、キャップ5の内側に薬液収容部18があり、容器本体3の内側に薬液収容部18のフィルム23を破って薬液を唾液溜め部12に落とす破フィルム部材4が配置されている唾液採取容器セット1であり、キャップ5のキャップ天板15に連続した筒体20の上端部24は容器本体3の装着口部8の内周面25に液密にして接する摺接面26を有していて、この摺接面26に対応する部分に肉盗み部28を設けた。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液を溜める唾液溜め部を有する容器本体と、
容器本体の上部にある装着口部を閉じるキャップとを備え、
キャップの内側には、キャップ天板に連続する筒体とこの筒体の下部開口を覆うフィルムとからなり内部に薬液を収めた薬液収容部が設けられ、
容器本体の内側には、唾液溜め部の上部に位置して、装着口部側から入れられる唾液を唾液溜め部に向けて通すとともに、キャップを容器本体の装着口部に取り付けたときに薬液収容部のフィルムを破って、前記薬液を唾液溜め部に向けて通す破フィルム部材が配置されていて、
キャップ天板に連続した筒体の上端部は、容器本体の装着口部の内周面に摺接可能に接する摺接面を有し、筒体の上端部での前記摺接面に対応する部分に肉盗み部を設けたことを特徴とする唾液採取容器セット。
【請求項2】
容器本体の装着口部の外周部に、筒体の上端部の肉盗み部と対応する高さ位置に肉盗み部を設けて、接合し合う筒体の上端部の摺接面と容器本体の装着口部の内周面とを間にして、筒体の上端部の肉盗み部と容器本体の装着口部の外周部の肉盗み部とが対向している請求項1に記載の唾液採取容器セット。
【請求項3】
容器本体の装着口部に取り付けたときのキャップと容器本体の内側に配置された破フィルム部材とは非嵌合とされていて、装着口部に取り付けた前記キャップと破フィルム部材との間には、破フィルム部材が破ったフィルムが位置できる隙間が形成されている請求項1または2に記載の唾液採取容器セット。
【請求項4】
容器本体における破フィルム部材配置位置に破フィルム部材回転防止手段が設けられていて、この破フィルム部材回転防止手段は、破フィルム部材に係止してキャップ回転方向に沿う破フィルム部材の軸回転を規制し、且つ、装着口部側から破フィルム部材配置位置への破フィルム部材の配置が可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の唾液採取容器セット。
【請求項5】
破フィルム部材回転防止手段は、容器本体高さ方向での上方に向けて尖頭の楔形状とした複数の上向き凸体を、破フィルム部材配置位置で容器本体の周方向に一定の間隔をおいて配置してなるものであり、
破フィルム部材は、外周部分に、容器本体高さ方向での下方に向けて尖頭の楔形状とされて、隣り合う上向き凸体の間の形状に対応した下向き凸体を備えていて、
破フィルム部材は、下向き凸体が容器本体高さ方向上方から上向き凸体の間に入るようにして破フィルム部材配置位置へ配置されるとともに、下向き凸体が上向き凸体に係止してキャップ回転方向に沿う軸回転が規制される構成とした請求項4に記載の唾液採取容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者自身で唾液の採取を行なうとともに、採取の後に郵送などの搬送形態にも適応させることができる、DNA解析用の唾液採取容器セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行し、感染しているか否かの検査の一つとしてPCR検査が多く行われている。このPCR検査では、検体を得るために被験者の鼻、咽頭を拭って細胞を含む粘液を採取したり、被験者の唾液を採取したりしている。
【0003】
そして、新型コロナウイルス検査の他、ガンなどの発症リスクをDNAから調べる用途でも採用される一般的なPCR検査において、被験者の唾液を容器に入れて検査サービス機関に送るためのセットが提供されるようになってきた。
【0004】
PCR検査に用いるセットは、被験者が吐き出す唾液を専用の容器に入れて被験者自身でキャッピングを行ない、郵送などの方法で搬送するようにしたものである。そして、被験者が唾液を専用の容器内に吐き出したあと、唾液内に含まれるウイルスの不活性化を目的とした薬液と唾液とを混合しなければならないタイプがある。
【0005】
このような採取セットでは、唾液と薬液とを容器に入れた後、キャップで閉じる作業を被験者自身で行なうため、キャップで液止めをする必要がある。
【0006】
一般的な液体容器の口部にキャップをねじ付けて液止めを行なう場合、例えばPETボトルのキャップなどで実施されているように、キャップ天部に縦断面が薄肉で舌片状とされたインナーリングを設けており、そのインナーリングの外周面が液体容器の口部の内周面に液密にして接している。
【0007】
また、本願出願人は、DNA解析用の唾液採取容器セットの発明を先に提案していて、特許文献1にこの唾液採取容器セットが示されている。このセットは、唾液受け具と、唾液受け具から入れられた唾液を内部に溜め受ける容器本体と、唾液受け具を取り外した容器本体の装着口部に取り付けて閉じるキャップとを備えていて、それぞれ合成樹脂材料から成形されている。
【0008】
さらに、キャップの内側に筒体に囲まれた収容空間に薬液を収容し、筒体の下部をアルミ箔を含む樹脂積層のフィルムで閉じた薬液収容部を備えるとともに、容器本体の内方に、キャップを取り付けたときに薬液収容部のフィルムを破って薬液収容部を開封する破フィルム部材を着脱可能に配置している。
そして、キャップを容器本体の装着口部に取り付けたときに、フィルムを破った破フィルム部材に筒体が上方から嵌合し、キャップを容器本体から外すときに、キャップとともに破フィルム部材が容器本体から取り外される構成である。
【0009】
このような唾液採取容器セットに採用するキャップでは、キャップ内方に薬液などの液体を収容する空間を広く形成しているので、上述したインナーリングを単独で設けることが、容器サイズの制約から困難になる場合がある。
【0010】
上述した唾液採取容器セットでは、内方に薬液収容部を有するキャップで液止めを行なうために、キャップ天板に連続している筒体の筒壁上部を厚肉にし、その外周面を容器本体の装着口部の内周面に液密にして接しさせている。これによってキャップで閉じた容器本体から唾液と薬液との混合液が外部に漏れ出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、キャップは合成樹脂材料から成形されているものであることから、筒壁上部に樹脂材料の収縮によるヒケが発生し、筒壁上部の外周面の形状を適正な形状にすることが困難になってしまう。
そして、適正な外周面形状を再現できないキャップで容器本体の装着口部を閉じると、液漏れし易くなるという問題がある。
【0013】
そこで本発明は上記事情に鑑み、内方に薬液収容部を有する唾液採取容器セットのキャップにおいて、薬液収容部の筒壁の上部に合成樹脂材料の収縮によるヒケが生じないようにすることを課題として、キャップで閉じた容器本体からの液漏れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、唾液を溜める唾液溜め部を有する容器本体と、
容器本体の上部にある装着口部を閉じるキャップとを備え、
キャップの内側には、キャップ天板に連続する筒体とこの筒体の下部開口を覆うフィルムとからなり内部に薬液を収めた薬液収容部が設けられ、
容器本体の内側には、唾液溜め部の上部に位置して、装着口部側から入れられる唾液を唾液溜め部に向けて通すとともに、キャップを容器本体の装着口部に取り付けたときに薬液収容部のフィルムを破って、前記薬液を唾液溜め部に向けて通す破フィルム部材が配置されていて、
キャップ天板に連続した筒体の上端部は、容器本体の装着口部の内周面に摺接可能に接する摺接面を有し、筒体の上端部での前記摺接面に対応する部分に肉盗み部を設けたことを特徴とする唾液採取容器セットを提供して、上記課題を解消するものである。
【0015】
そして、本発明は、容器本体の装着口部の外周部に、筒体の上端部の肉盗み部と対応する高さ位置に肉盗み部を設けて、接合し合う筒体の上端部の摺接面と容器本体の装着口部の内周面とを間にして、筒体の上端部の肉盗み部と容器本体の装着口部の外周部の肉盗み部とが対向していることが良好である。
【0016】
また、本発明は、容器本体の装着口部に取り付けたときのキャップと容器本体の内側に配置された破フィルム部材とは非嵌合とされていて、装着口部に取り付けた前記キャップと破フィルム部材との間には、破フィルム部材が破ったフィルムが位置できる隙間が形成されていることが良好である。
【0017】
また、本発明は、容器本体における破フィルム部材配置位置に破フィルム部材回転防止手段が設けられていて、この破フィルム部材回転防止手段は、破フィルム部材に係止してキャップ回転方向に沿う破フィルム部材の軸回転を規制し、且つ、装着口部側から破フィルム部材配置位置への破フィルム部材の配置が可能であることが好ましい。
【0018】
そして、本発明は、破フィルム部材回転防止手段は、容器本体高さ方向での上方に向けて尖頭の楔形状とした複数の上向き凸体を、破フィルム部材配置位置で容器本体の周方向に一定の間隔をおいて配置してなるものであり、
破フィルム部材は、外周部分に、容器本体高さ方向での下方に向けて尖頭の楔形状とされて、隣り合う上向き凸体の間の形状に対応した下向き凸体を備えていて、
破フィルム部材は、下向き凸体が容器本体高さ方向上方から上向き凸体の間に入るようにして破フィルム部材配置位置へ配置されるとともに、下向き凸体が上向き凸体に係止してキャップ回転方向に沿う軸回転が規制される構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キャップにおける筒体の上端部であって、容器本体の装着口部の内周面に接する摺接面に対応する部分に肉盗み部を設けている。
この肉盗み部を設けることで、前記摺接面を外面として有する筒体の上端部は肉厚を薄くすることが容易となり、キャップを合成樹脂材料から射出成形などによって成形した後の収縮が、筒体の上端部で生じず、外周面の形状を適正に再現したキャップが得られ、このキャップを用いることで、容器本体の装着口部を閉じた後での液止めの効果を確実なものとすることができる。
【0020】
また、本発明によれば、容器本体の装着口部の外周部に、筒体の上端部の肉盗み部と対応する高さ位置に肉盗み部を設けていて、装着口部の肉厚が薄くなるために柔軟性を備えるようになる。
キャップは一般的に合成樹脂材料から成形され、この唾液採取容器セットでのキャップも合成樹脂材料から成形される。そして、成形されたキャップについては寸法にばらつきが出易いが、閉栓の操作をするときに装着口部が変形をして寸法のばらつきを吸収するようになり、寸法のばらつきによるキャップ閉めトルクを安定させることができる。
【0021】
また、本発明によれば、容器本体の装着口部に取り付けたときのキャップと破フィルム部材とは非嵌合となる関係の部材同士とされている。即ち、キャップを容器本体から取り外すときに破フィルム部材をキャップとともに引き上げるなどの構造や機構を付加しないので、キャップの筒体の形状や破フィルム部材の形状をシンプルなものにできる。また、破フィルム部材をキャップとともに引き上げる必要がないので、被験者の唾液と接した部材の多くが容器本体の内部に取り残されることになり、検査を行う人が唾液に接触するリスクを低減することができる。
【0022】
また、本発明によれば、容器本体における破フィルム部材配置位置での内周面に破フィルム部材回転防止手段を設けて、キャップを回すときに破フィルム部材が供回りしないので、薬液収容部のフィルムを確実に破断できるようになる。
【0023】
さらに、本発明によれば、破フィルム部材回転防止手段は、容器本体高さ方向での上方に向けて尖頭の楔形状とした複数の上向き凸体を、破フィルム部材配置位置で容器本体の周方向に一定の間隔をおいて配置してなるものとされ、また、破フィルム部材は、外周部分に、容器本体高さ方向での下方に向けて尖頭の楔形状とされて、容器本体の周方向に隣り合う上向き凸体の間の形状に対応した下向き凸体を備えている。
これによって、破フィルム部材を容器本体の内側に配したときに、破フィルム部材の下向き凸体が、容器本体側の上向き凸体の傾斜側面に案内され易くなり、破フィルム部材の下向き凸体が上向き凸体の間にスムーズに入り込んで、破フィルム部材が傾いた状態で容器本体の内部に位置するという不良を生じないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る唾液採取容器セットの一例における構成部品を分離した状態で示す説明図である。
【
図2】唾液受け具を示すもので、(イ)は上方から見た状態を示す説明図、(ロ)は幅広方向の断面を示す説明図、(ハ)は細幅方向の一部断面を示す説明図である。
【
図5】キャップを容器本体に取り付けた状態を断面で示す説明図である。
【
図6】キャップにおける筒壁上端部を拡大して肉盗み部を示す説明図である。
【
図7】破フィルム部材の一例を示すもので、(イ)は上方から見た状態を示す説明図、(ロ)は側方から見た状態を示す説明図、(ハ)は下方から見た状態を示す説明図、(ニ)は斜め上方から見た状態を示す説明図である。
【
図8】キャップの取り付けと取り外しとを示すもので、(イ)は薬液収容部を装着口部に差し入れる前の状態を示す説明図、(ロ)はキャップを装着口部に取り付けてフィルムが破断した状態を示す説明図、(ハ)は薬液を排出した後のキャップを取り外した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る唾液採取容器セット1が示され、構成部材を分離した状態で図示していて、
図1に示すように人の口を添え易くするためにやや扁平な漏斗状にしている唾液受け具2と、この唾液受け具2を上部に取り付けたり取り外したりする筒状の容器本体3と、この容器本体3の内部に配置する破フィルム部材4と、容器本体3の上部に取り付けて容器本体3を閉じるために用いるキャップ5とを備えていて、それぞれは合成樹脂製の部材である。
【0026】
(唾液受け具)
唾液受け具2を単独で
図2に示していて、特許文献1にて示す発明のものと同じく下部には漏斗の筒状部分として接続口部6を設けている。また、上部を一方向に幅広の扁平形状にして人(被験者)が口元を添え易くしており、吐き出された唾液が接続口部6に案内される。
【0027】
図示の唾液受け具2の例では、接続口部6との間で隙間を形成してこの接続口部6の外周を覆うようにしたガイド筒7を一体にして備えている。容器本体3に唾液を収容するときに、容器本体3の上部の開口部分である装着口部8の内側に唾液受け具2の接続口部6を差し入れるとともに、ガイド筒7が、容器本体3の外周部分に位置する雄ねじ9に摺接して、唾液受け具2が容器本体3に対して傾かないようにしている。なお、ガイド筒7は唾液受け具2を容器本体3に取り付ける上で必ず必要とされるものではない。
【0028】
(容器本体)
容器本体3に対しては、唾液受け具2の接続口部6が装着口部8の内側に抜き差しできるように設けられており、よって、唾液受け具2は容器本体3に着脱可能である。
【0029】
また、容器本体3では、
図3に示すように装着口部8の下部にこの装着口部8より小径にした胴部10が連続している。胴部10の中段部分に、縦断面形状を下方に凸形状にした中底11を設けていて、中底11より上方の部分を唾液(検体)溜め部12としている。
【0030】
胴部10の唾液溜め部12に対応する部分の外周には、容器本体3にラベル貼りをする自動機が位置決めに利用する入り目線13がある。この入り目線13は、容器本体3の外周の全周に亘る溝の形状を呈している。
【0031】
容器本体3の上記装着口部8と胴部10との境界は、装着口部8の内径に対して胴部10の内径を小とすることで形成された段差部分としている。そして、段差部分の位置で内周に亘って容器本体3の中心に向けて下り傾斜した斜面からなる受け段部14が設けられている。受け段部14は、破フィルム部材4を載せ置く部分であり、この部分に適正に載せ置かれた位置が破フィルム部材配置位置15としている。
【0032】
なお、破フィルム部材4を上記破フィルム部材配置位置15に配置させている状態で、キャップ5を容器本体3に取り付けたとき、後述するように収容空間を覆っているフィルムを破フィルム部材4が破り、収容している薬液がキャップ5から流れ落ちるようにしている。
【0033】
(キャップ)
キャップ5は、
図4に示されているように雌ねじ16がある外周壁17を備えるとともに、キャップ5の内側に外周壁17に囲まれる配置にして薬液収容部18を備えている。
薬液収容部18は、キャップ天板19と一体となる筒体20の筒壁21で囲った収容空間22を、筒壁21の下端縁に取り付けたフィルム23で閉じたものである。
【0034】
本実施の形態の唾液採取容器セット1では、唾液溜め部12に入れた唾液と混合して、唾液に含まれるウイルスを不活性化するための薬液が、フィルム23で封止する前に収容空間22に充填される。この充填後にフィルム23を筒壁21の下端縁に亘ってシールして薬液を封止した薬液収容部18を形成する。
【0035】
唾液採取容器セット1では、被験者が唾液を吐き出した後に唾液受け具2を取り外して、つぎに容器本体3の上部にキャップ5を取り付けて装着口部8を閉じることによって、薬液収容部18のフィルム23が破られるようにしている。
【0036】
そして、唾液溜め部12にある唾液と薬液収容部18から流れ落ちた薬液との混合液が外部に漏れ出ないように設けられている。なお、フィルム23を破る破フィルム部材4の形状などについては後述する。
【0037】
図5と
図6はキャップ5で装着口部8を閉じた状態が示されている。図示されているように筒壁21の上端部24以外は、容器本体3の内面との間に隙間を配して非接触である。
そして、筒壁21の上端部24の外周面(外周壁17側)は、容器本体3の装着口部8の内周面25に液密にして接する摺接面26であり、この上端部24自体は、PETボトルキャップなどのインナーリングと同様に液止めする役割を果たす部分である。
【0038】
(キャップの肉盗み部)
本発明の実施の形態は、筒壁21の上端部24によって適正に液止めをするための工夫を備えている。その工夫が
図5に示されていて、キャップ天板19における筒壁21の上端部24の位置に沿った部分を下方に段状に凹ませていて、その段落ちした形状部分と前記上端部24とで凹溝状の凹陥部27を設けている。
【0039】
図4のキャップ5の断面で示すように凹陥部27の凹んだ空所は、キャップ径方向で上端部24と隣り合う並びであって摺接面26とは反対側に形成した肉盗み部28とされている。
そして、
図4から
図6に示すように凹陥部27に対する肉盗み部28(空所部分)は、この凹陥部27の中心位置ではなく、摺接面26側に偏倚した位置としている。肉盗み部28を摺接面26側に寄せた配置にすることによって、上端部24の肉厚は、この凹陥部27における底板部27aの肉厚、凹陥部27における上端部24に対向する縦壁板部27bの肉厚より小さく設けられている。
【0040】
このようにキャップ径方向で肉厚の小さい上端部24と肉盗み部28とを隣り合う配置しているので、キャップ5の成形後の摺接面26はヒケが生じずに適正に再現され、キャップ5で容器本体3の装着口部8を閉じたときに液漏れの発生を防止する。
【0041】
さらに上端部24の肉厚を凹陥部27中の他の二板部分(底板部27a、縦壁板部27b)より薄肉にして変形し易くしているので、キャップ5で閉栓した際、装着口部8に当接する上端部24が変形することで、密に接する度合いを高めるようになり、この点からも液止めを行なう上で効果がある。
【0042】
(容器本体の装着口部側の肉盗み部)
容器本体3の装着口部8の外周面29にも肉盗み部30が設けられている。肉盗み部30は、キャップ5の肉盗み部28と対応する高さ位置にある。そして、
図6に示すように接合し合う筒壁21の上端部24の摺接面26と容器本体3の装着口部8の内周面25とを間にして、キャップ5側の肉盗み部28と容器本体3側の肉盗み部30とが対向している。
【0043】
このように、筒壁21の上端部24と摺接する装着口部8の外周面29に肉盗み部30を形成し、装着口部8を変形し易くしているので、キャップ5の上端部24に径寸法のばらつきがあっても、閉栓の操作をするときに装着口部8が変形をしていずれのキャップ5の前記径寸法のばらつきを吸収して、寸法のばらつきによるキャップ閉めトルクを安定させることができるという効果がある。
【0044】
(破フィルム部材)
破フィルム部材4は内側を透孔にした略筒状とされており、容器本体3の受け段部14に載せ置くことができるフランジ31を外周回りに備えるとともに、フランジ31の位置から下方に嵌合筒部32が延設されている。
【0045】
嵌合筒部32は、受け段部14の位置から内径を小さくした唾液溜め部12の上部に嵌め入れる部分である。そして、フランジ31を受け段部14に支持させて破フィルム部材配置位置15に配置されている状態から上へ向けて不用意に抜け出ることがないように、複数の脱落防止リブ33が嵌合筒部32の外周に設けられている。
【0046】
また、フランジ31の上部には環状の開封刃34が一体にして設けられている。開封刃34は上述したようにキャップ5を装着口部8に取り付けたときに、薬液収容部18のフィルム23を破断する部分である。
【0047】
(筒体と破フィルム部材-非嵌合)
開封刃34は、薬液収容部18の筒体20と干渉することが無いように設けられていて、筒壁21の内径より開封刃34の外径が小さく、かつ、筒壁21と開封刃34との間には、切断されたフィルムを両者で挟み込まない十分な隙間35を配している。また、筒壁21の下端部とフランジ31との間にも同様の間隔の隙間35が形成されるようにしていて、筒体20が破フィルム部材配置位置15から下方に向けてさらに破フィルム部材4を押し込むことがないように設けられている。
【0048】
このようにキャップ5を容器本体3に取り付けて開封刃34によって薬液収容部18のフィルム23を破断するものの、破フィルム部材4とキャップ5の筒体20とは、キャップ5を容器本体3に取り付けた状態において嵌合し合うことがない。よって、本実施の形態では、キャップ5を容器本体3から取り外すときには破フィルム部材4は容器本体3の内側に残るように設けられている。
【0049】
(空転防止構造)
破フィルム部材配置位置15での容器本体3の内周面は破フィルム部材4を容器本体3の内側での軸回転を規制して空転させない破フィルム部材回転防止手段36を設けている。破フィルム部材回転防止手段36は、容器本体3の高さ方向での上方に向けて尖頭の楔形状にした複数の上向き凸体37が並んでなるもので、複数の上向き凸体37が、破フィルム部材4のフランジ31の外周面が対面する位置であって、容器本体3の受け段部14に沿うようにして容器本体3の周方向に一定の間隔をおいて配置されている。
図3参照
【0050】
受け段部14に支えられるようにして破フィルム部材配置位置15に配された破フィルム部材4は、周方向に回転しかかるときに、フランジ31が上記破フィルム部材回転防止手段36の上向き凸体37に係止するように設けられており、フランジ31が係止することで破フィルム部材4が自由回転せず、また、キャップ5の閉栓方向の回転や開栓方向の回転に供回りしない。
【0051】
図7に、上向け凸体37に係止する複数の下向き凸体38を備えたフランジ31が示されている。そして、下向き凸体38は、容器本体高さ方向での下方に向けて尖頭の楔形状とされ、容器本体3の周方向に隣り合う上向き凸体37の間に配置できる形状にした下向きに凸の三角形にして設けられている。
【0052】
破フィルム部材4を容器本体3の破フィルム部材配置位置15に置く場合、隙間が上方に向けて徐々に広がる上向き凸体37の間に下向き凸体38が入るようになる。したがって、破フィルム部材4を容器本体3の高さ方向上方から落とし込むようにして破フィルム部材配置位置15にスムーズに配置できて、且つ、配置後は破フィルム部材4の軸方向での回転が規制される。
【0053】
このように破フィルム部材回転防止手段36を、上方に向けて凸の楔形状にした複数の上向き凸体37を並べ設けてなるものとし、破フィルム部材4側は、容器本体の周方向に並んで隣り合う上向き凸体37の間に入り込むとともに容器本体周方向に移動するときに係止部材を設けるものとすればよく、上述したように破フィルム部材4を容器本体3の装着口部8側から降ろすという簡単な操作でこの破フィルム部材4を所定位置に置くことができるという効果がある。
【0054】
(キャップの取り付け取り外し)
特許文献1で示した従来の唾液採取容器セットでは、破フィルム部材がキャップとともに容器本体から取り外されるものであったが、上述したように本実施の形態の唾液採取容器セット1では、破フィルム部材4が容器本体3側に残るようにしているものである。
【0055】
図8は、本実施の形態での唾液採取容器セット1において、キャップ5の容器本体3に対する取り付けと取り外しとを示している。被験者が容器本体3の唾液溜め部12に所要量の唾液を入れて唾液受け具2を取り外した後、薬液収容部18を容器本体3の装着口部8の内側に差し入れるようにしてキャップ5を装着口部8に被せる(イ)。
そして、キャップ5を閉栓方向に回転させて下ろすことで、薬液収容部18のフィルム23が、破フィルム部材配置位置15にある破フィルム部材4の開封刃34で破られ、収容していた薬液Aが落下して、破フィルム部材4の内側などの部分を通って唾液溜め部12に入り、唾液と混じり合う(ロ)。
【0056】
図8(ロ)は、筒壁21の上端部24の摺接面26が容器本体3の装着口部8の内周面25に液密にして接していて、液止めされている状態である。本唾液採取容器セット1の取り扱い方法では、キャップ5で装着口部8を閉じた容器本体3が、PCR検査機関へ送り段階である。そして、PCR検査機関で、キャップ5のみを取り外すようにする(ハ)。
【0057】
本実施の形態の唾液採取容器セット1では、キャップ5を容器本体3に取り付ける操作に慣れていない被験者がキャップ5を閉栓方向に適正な回転量で回して止めるための工夫が設けられている。
【0058】
具体的にはキャップ5の外周壁17の下端からボス39を下方に向けて突設しているとともに、容器本体3の雄ねじ9の下方となる外周面から外方にフランジ40を張り出して、このフランジ40に爪状の第一のストッパー41を設けている(
図1参照)。
そして、被験者がキャップ5で容器本体3の装着口部8を閉じるとき、キャップ5のボス39が第一のストッパー41に当接することで、キャップ5の回転を止めて、必要以上にキャップ5を回すことがないように図られている。
【0059】
また、容器本体3には、フランジ40の上位となる位置にして爪状の第二のストッパー42が外方に向けて突設されている。さらに、キャップ5が上記第一のストッパー41に当接して閉栓方向での回転終了位置で停止したときに第二のストッパー42が入り込む凹部(不図示)が、キャップ5の外周壁17の下端側に設けられており、閉栓したキャップ5が振動などによって開栓方向に回る不適切な回転が生じかけたときに前記凹部の内壁面に第二のストッパー42が係止して、キャップ5の締めが緩むことがないように図られている。
【符号の説明】
【0060】
1…唾液採取容器セット
2…唾液受け具
3…容器本体
4…破フィルム部材
5…キャップ
6…接続口部
8…装着口部
10…胴部
12…唾液溜め部
15…破フィルム部材配置位置
18…薬液収容部
19…キャップ天板
20…筒体
21…筒壁
23…フィルム
24…上端部
25…装着口部の内周面
26…摺接面
27…凹陥部
28…上端部の内側の肉盗み部
29…装着口部の外周面
30…装着口部の外側の肉盗み部
31…フランジ
32…嵌合筒部
34…開封刃
35…隙間
36…破フィルム部材回転防止手段
37…上向き凸体
38…下向き凸体
A…薬液