IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2023-67470ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルム
<>
  • 特開-ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルム 図1
  • 特開-ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルム 図2
  • 特開-ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067470
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20230509BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178740
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】今泉 淑希子
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD02
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA11
4F100AA08B
4F100AA08D
4F100AA20C
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA23B
4F100CA23D
4F100CB00B
4F100CB03D
4F100DD22B
4F100DD22D
4F100DG10A
4F100EH23
4F100EH66C
4F100GB16
4F100JD02C
4F100JL12D
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れるガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】本開示の一側面に係るガスバリア積層体は、紙基材と、接着性樹脂層と、ガスバリア層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有し、接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部と、第1の充填材を含む第1の非マトリックス樹脂部と、を有し、接着性樹脂層における第1の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
接着性樹脂層と、
ガスバリア層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有し、
前記接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部と、第1の充填材を含む第1の非マトリックス樹脂部と、を有し、
前記接着性樹脂層における前記第1の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である、ガスバリア積層体。
【請求項2】
前記シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第2のマトリックス樹脂部と、第2の充填材を含む第2の非マトリックス樹脂部と、を有し、
前記シーラント層における前記第2の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項3】
前記第1及び第2の非マトリックス樹脂部が、空隙を更に含む、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項4】
前記第1及び第2の充填材の平均粒子径が、25μm以下である、請求項2又は3に記載のガスバリア積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア層が、フィルム基材としてポリオレフィンフィルムを有し、
前記ガスバリア層が、無機酸化物を含む蒸着層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア積層体によって構成されている容器。
【請求項7】
前記紙基材を貫通する孔が形成されたストロー突刺し口を備える、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
接着性樹脂層及びガスバリア層を備える積層構造を有し、
前記接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部と、第1の充填材を含む第1の非マトリックス樹脂部と、を有し、
前記接着性樹脂層における第1の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である、ガスバリアフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材の分野においては、紙を主材とする液体用紙容器が使用されている。特許文献1には、紙基材と、特定のバリア層と、特定の厚さの接着性樹脂層と、ヒートシール性樹脂層とからなる包装材を製函してなる液体紙容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-171649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙容器に収容される内容物(飲料等)は、酸素及び水蒸気等により変質しうる。そのため、このような液体紙容器には、内容物の長期間の保存が可能となるよう、構成する包装材の層間が十分な密着性を有し、十分なガスバリア性を有することが求められる。
【0005】
ところで、紙容器には、収容されている内容物をストローで吸い出すためのストロー突刺し口を形成する場合がある。ストローの突刺し口は、紙基材に貫通する孔を形成することで形成される。
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示の液体紙容器にストロー突刺し口を形成した場合には、ストローの突刺し性の点で改善の余地がある。
【0007】
また、紙容器においてストローの突刺し性を向上するためにガスバリア層にアルミニウム箔を用いることが考えられる。しかし、そのような紙容器には、異物混入検査で金属探知機を使用できない。そのため、アルミニウム箔を用いず、かつ、ストローの突刺し性に優れる包装材が求められている。また、リサイクルのしやすさの観点からも、アルミニウム箔を用いないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れるガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルムを提供する。
【0009】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体は、紙基材と、接着性樹脂層と、ガスバリア層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有し、接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部と、第1の充填材を含む第1の非マトリックス樹脂部と、を有し、接着性樹脂層における第1の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である。
【0010】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体は、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れる。このような効果は、以下のメカニズムによって奏されると推察される。すなわち、ガスバリア積層体は、接着性樹脂層の非マトリックス樹脂部が充填材を含む。充填材を含む非マトリックス樹脂部は、ストローを突き刺した際にガスバリア積層体の破断の起点となりうる。一方で、充填材を含む非マトリックス樹脂部は、層間の密着性を低下させる要因となり得る。しかし、非マトリックス樹脂部の割合を1~18%とすることで、ガスバリア積層体は、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れる。
【0011】
シーラント層は、ポリオレフィン系樹脂を含む第2のマトリックス樹脂部と、第2の充填材を含む第2の非マトリックス樹脂部と、を有し、シーラント層における第2の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%であってもよい。充填材を含む非マトリックス樹脂部は、ストローを突き刺した際にガスバリア積層体の破断の起点となりうる。そして、非マトリックス樹脂部の割合を1~18%とすることで、ガスバリア積層体は、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に一層優れたものとなる。
【0012】
第1及び第2の非マトリックス樹脂部は、空隙を更に含んでいてもよい。非マトリックス樹脂部に含まれる空隙は、ストローを突き刺した際にガスバリア積層体の破断の起点となりうる。そのため、ガスバリア積層体は、ガスバリア性が一層向上する。
【0013】
第1及び第2の充填材の平均粒子径は、空隙が容易に形成され、ガスバリア積層体のガスバリア性がより確実に低下しないようにする観点から、25μm以下であってもよい。
【0014】
ガスバリア層が、フィルム基材としてポリオレフィンフィルムを有し、ガスバリア層が、無機酸化物を含む蒸着層を有していてもよい。このようなガスバリア積層体は、リサイクル適性及び耐水性に優れる。
【0015】
本開示の他の一側面に係る容器は、上記ガスバリア積層体によって構成されている。この容器は、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れる。
【0016】
本開示の更に他の一側面に係るガスバリアフィルムは、接着性樹脂層及びガスバリア層を備える積層構造を有し、接着性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部と、第1の充填材を含む第1の非マトリックス樹脂部と、を有し、接着性樹脂層における第1の非マトリックス樹脂部の割合が、1~18%である。このようなガスバリアフィルムは、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、十分なガスバリア性を有し、且つ、ストロー突刺し性に優れるガスバリア積層体、容器及びガスバリアフィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本開示の一実施形態に係るガスバリア積層体を模式的に示す端面図である。
図2図2は本開示の他の一実施形態に係るガスバリア積層体を模式的に示す端面図である。
図3図3は本開示の一実施形態に係る容器を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ガスバリア積層体]
<第一実施形態>
以下、第一実施形態に係るガスバリア積層体(以下、単に「積層体」ともいう)について説明する。図1は、第一実施形態に係る積層体を模式的に示す端面図である。図1に示すように、本実施形態に係る積層体10は、紙基材1と、接着性樹脂層2と、ガスバリア層3と、シーラント層4と、をこの順序で備える積層構造を有する。紙基材1には、ストロー突刺し口となる紙基材1を貫通する孔1aが形成されている。紙基材1の接着性樹脂層2と接する面とは反対の面には、保護層5が配置されている。ガスバリア層3は、蒸着層3a及びフィルム基材3bを含む。以下、積層体10の各構成について説明する。
【0020】
(紙基材)
紙基材1としては、例えば、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰及び強度等を有する紙を用いることができる。このような紙としては、例えば、強サイズ性の晒又は未晒の紙、純白ロール紙、クラフト紙、板紙及び加工紙を用いることができる。
【0021】
紙基材1の坪量は、得られる容器がガスバリア性に一層優れることから、80~600g/mであることが好ましく、200~450g/mであることがより好ましい。
【0022】
紙基材1には、文字、図形、絵柄及び記号等の所望の印刷絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0023】
(接着性樹脂層)
接着性樹脂層2は、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部2aと、第1の充填材12並びに空隙14を含む第1の非マトリックス樹脂部2bとからなる。
【0024】
接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合は、1~18%である。接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合は、ストロー突刺し性が一層向上することから、2%以上、3%以上、5%以上、又は6%以上であってよく、ガスバリア性に優れることから、15%以下、13%以下、11%以下、又は9%以下であってよい。
【0025】
接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合は、電子顕微鏡により測定される。具体的には、接着性樹脂層2の断面を電子顕微鏡によって観察して断面写真を撮影する。倍率は500~3000倍とする。画像解析装置で断面写真を画像処理することで第1のマトリックス樹脂部2a及び第1の非マトリックス樹脂部2bの合計面積に占める第1の非マトリックス樹脂部2bの面積を算出する。算出された値を接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合とする。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンとポリ酢酸ビニルの共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリエチレン及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、突刺し性が向上することから、低密度ポリエチレンであることが好ましい。低密度ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン及び分岐状低密度ポリエチレンが挙げられ、分岐状低密度ポリエチレンであることが好ましい。分岐状低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法で得られるものが好ましく、高圧ラジカル重合法でエチレンを単独重合して得られるものがより好ましい。このような低密度ポリエチレンは、機械的強度が低く、他のポリオレフィンと比べて脆いため、突刺し性が良好になる。ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm~0.935g/cmであることが好ましく、0.915g/cm~0.930g/cmであることがより好ましい。密度が上記の範囲内であれば、低密度ポリエチレンが適度な剛性を有するため、接着性樹脂層2の成膜性及び押出適性が向上する。
【0029】
ポリエチレン系樹脂の融点は、60~130℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。融点がこの範囲であれば、共押出加工性及び相溶性が向上する。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体及びプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリプロピレン及びプロピレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリプロピレンが挙げられる。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて合成されたものであってもよい。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましく、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を用いることで、接着性樹脂層2の耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができる。それにより、積層体10は、100℃以下のボイル若しくはホット充填、又は100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気加熱、高圧加熱による殺菌の用途に好適に用いることが出来る。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、110~165℃であることが好ましく、115~160℃であることがより好ましい。融点がこの範囲であれば、共押出加工性及び相溶性が向上する。
【0032】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、環状共役ジエン重合体が挙げられる。接着性樹脂層2は、ストロー突刺し性が一層向上することから、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0033】
第1のマトリックス樹脂部2aにおけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、第1のマトリックス樹脂部2aの全量を基準として、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。
【0034】
第1の充填材12としては、有機充填材及び無機充填材が挙げられる。充填材は、第1のマトリックス樹脂部2aと非相溶である。「非相溶」とは、第1のマトリックス樹脂部2aと、充填材とをブレンドした場合に、第1のマトリックス樹脂部2aに充填材が均一に溶解せず、分離された状態を保ったまま海島構造を形成することをいう。第1の充填材12は、マイクロボイド(空隙14)を形成しやすいことから、無機充填材であることが好ましい。
【0035】
無機充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ケイ素及び酸化マグネシウム、並びにこれらを脂肪酸、高分子界面活性剤及び帯電防止剤等で表面処理した無機フィラー粉末が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ及びタルクが、空隙14の成型性に優れ、安価なために好ましい。
【0036】
有機充填剤としては、例えば、熱硬化性樹脂のフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0037】
第1の充填材12の平均粒子径は、ポリオレフィン系樹脂中での凝集が抑制され均一に分散する傾向にあることから、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。第1の充填材12の平均粒子径は、空隙14の成形性に優れストロー突刺し性が一層優れ、かつ、ガスバリア性を維持できる傾向にあることから、25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径は、一般的な粒度分布測定装置、もしくは走査型電子顕微鏡による観察により測定される。
【0038】
第1の充填材12の形状としては、例えば、略球状、板状、針状、繊維、柱状及び不定形が挙げられる。第1の充填材12は多孔質であってもよく、非多孔質であってもよい。
【0039】
第1の非マトリックス樹脂部2bにおける第1の充填材12の割合は、ストローを突き刺した際に第1の非マトリックス樹脂部2bの境界を第1の充填剤12が押すことでストロー突刺し性が一層向上することから、体積比で50%以上、70%以上、又は90%以上であってよく、接着性樹脂層2が過度に破壊されやすくなることを抑制する観点からは、95%以下、90%以下、又は80%以下であってよい。
【0040】
第1の非マトリックス樹脂部2bにおける第1の充填材12の割合は、電子顕微鏡により測定される。具体的には、接着性樹脂層2の断面を電子顕微鏡によって観察して断面写真を撮影する。倍率は500~3000倍とする。画像解析装置で断面写真を画像処理することで非マトリックス樹脂部の面積に占める第1の充填材12の面積を算出する。算出された値を第1の非マトリックス樹脂部2bにおける第1の充填材12の割合とする。
【0041】
第1の非マトリックス樹脂部2bにおける空隙14の割合は、ストロー突刺し性が一層向上することから、5%以上、10%以上、又は20%以上であってよく、接着性樹脂層2に剛性の低下を抑制して取扱性を向上させる観点から、70%以下、50%以下、又は30%以下であってよい。
【0042】
第1の非マトリックス樹脂部2bにおける空隙14の割合は、電子顕微鏡により測定される。具体的には、接着性樹脂層2の断面を電子顕微鏡によって観察して断面写真を撮影する。倍率は500~3000倍とする。画像解析装置で断面写真を画像処理することで非マトリックス樹脂部の面積に占める空隙14の面積を算出する。算出された値を非マトリックス樹脂部における空隙14の割合とする。
【0043】
接着性樹脂層2には、上記以外のその他成分として、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、結晶核剤、可塑剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、染料、顔料、離型剤及び難燃剤等を本開示の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0044】
接着性樹脂層2は、第1の充填剤の分散の均一性を高める観点から、分散剤を含有することができる。分散剤としては、例えば酸変性ポリオレフィン及びシラノール変性ポリオレフィン等が挙げらる。分散剤は、市販品を用いてもよい。分散剤の市販品としては、ユーメックス1001(三洋化成社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0045】
接着性樹脂層2における分散剤の含有量は、十分な分散性が得られやすいことから、接着性樹脂層2の全量を基準として、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。接着性樹脂層2における分散剤の含有量は、第1の充填剤の凝集を抑制しやすい傾向にあることから、接着性樹脂層2の全量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、成膜性の観点から、7質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0046】
接着性樹脂層2の厚さは、例えば、10~40μmであることが好ましく、15~25μmであることがより好ましい。接着性樹脂層2は一軸延伸又は二軸延伸されている。
【0047】
(シーラント層)
シーラント層4は、ポリオレフィン系樹脂を含む第2のマトリックス樹脂部4aと、第2の充填材16及び空隙18を含む第2の非マトリックス樹脂部4bとからなる。第2のマトリックス樹脂部4aに含まれるポリオレフィン系樹脂及びその含有量は、第1のマトリックス樹脂部2aと同様である。第2の非マトリックス樹脂部に含まれる第2の充填材16及びその割合並びに空隙18の割合は、第1の非マトリックス樹脂部2bと同様である。シーラント層4に含まれてもよいその他成分及びその含有量は、接着性樹脂層2と同様である。
【0048】
シーラント層4の厚さは、特に限定されないが、包装材料としての適性、他のフィルムを積層又は蒸着層3aを形成する場合の加工性を考慮すると、20μm~50μmであることが好ましい。
【0049】
(蒸着層)
蒸着層3aは、酸化ケイ素(SiO)を蒸着した層である。これにより、積層体10は耐水性に優れたものとなる。蒸着層3aの厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、好ましくは10~300nmであり、より好ましくは30~100nmである。蒸着層3aの厚さを10nm以上とすることで蒸着層3aの連続性を十分なものとしやすく、300nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。
【0050】
蒸着層3aは、酸化ケイ素(SiO)以外の無機酸化物又は金属を蒸着した層であってもよい。蒸着層3aとしては、例えば、アルミニウムを蒸着して得られたものであってもよく、酸化アルミニウム(AlO)を含むものであってもよい。
【0051】
(フィルム基材)
フィルム基材3bの材料としては、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びナイロンフィルムが挙げられる。フィルム基材3bは、ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。ポリオレフィンフィルムを用いることで、接着性樹脂層2及びシーラント層4と併せてオレフィン系プラスチック材料としてのリサイクルが可能となる。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルムが挙げられる。フィルム基材3bは、1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムであってもよい。
【0052】
フィルム基材3bがポリオレフィンフィルムである場合、フィルム基材3bと、シーラント層4とのラミネート強度は、突刺し性に一層優れることから、1N/15mm以上であることか好ましく、1.5N/15mm以上であることがより好ましく、2N/15mm以上であることが更に好ましい。ラミネート強度は、JIS Z-1707に準拠して測定される。
【0053】
このようなラミネート強度を実現するフィルム基材3bのポリオレフィンフィルムと接する面の濡れ性は、ラミネート強度が1N/15mm以上の場合には34ダイン以上であってもよく、1.5N/15mm以上の場合には36ダイン以上であってもよく、2N/15mm以上の場合には38ダイン以上であってもよい。濡れ性は、JIS K6768:1999に準拠して測定される。フィルム基材3bの表面の濡れ性は、例えば、フィルム基材3bをコロナ処理することで調整できる。
【0054】
フィルム基材3bの厚さは、ラミネート加工等の加工のし易さの観点から、15~30μmであることが好ましく、18~20μmであることがより好ましい。
【0055】
(保護層)
保護層5の材料は、例えばポリエチレン樹脂であってもよい。保護層5がポリエチレン樹脂であることで、得られる容器はリサイクル適性に優れる。ポリエチレン樹脂は、物理的な強度が高く、得られる容器がガスバリア性に一層優れたものとなることから、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンであることが好ましい。このようなポリエチレン樹脂の密度は、0.920g/cm~0.950g/cmであることが好ましく、0.925g/cm~0.945g/cmであることがより好ましい。
【0056】
保護層5の厚さは、得られる容器がガスバリア性に一層優れることから、10~30μmであることが好ましく、15~20μmであることがより好ましい。
【0057】
以上、一実施形態に係るガスバリア積層体について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第2の非マトリックス樹脂部は、空隙18を含んでいなくてもよい。シーラント層4は、第2の充填材16及び空隙18を含んでいなくてもよい。フィルム基材3bと蒸着層3aとの積層順は入れ替えてもよい。その場合、フィルム基材3bと、接着性樹脂層2とのラミネート強度は、上述したフィルム基材3bと、シーラント層4とのラミネート強度と同様であってもよい。積層体10において、蒸着層3aが設けられていなくてもよい。
【0058】
<第二実施形態>
以下、本実施形態に係るガスバリア積層体について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一実施形態に係るガスバリア積層体と同様である。図2は、第二実施形態に係る積層体を模式的に示す端面図である。図2に示すように、本実施形態に係る積層体20は、紙基材1と、接着性樹脂層2と、ガスバリア層3と、シーラント層4と、をこの順序で備える積層構造を有する。紙基材1には、ストロー突刺し口となる紙基材1を貫通する孔1aが形成されている。紙基材1の接着性樹脂層2と接する面とは反対の面には、保護層5が配置されている。ガスバリア層3は、蒸着層3a及びフィルム基材3bからなる。
【0059】
(接着性樹脂層)
接着性樹脂層2は、ポリオレフィン系樹脂を含む第1のマトリックス樹脂部2aと、第1の充填材12を含む第1の非マトリックス樹脂部2bとからなる。
【0060】
接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合は、1~18%である。接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bの割合は、ストロー突刺し性が一層向上することから、2%以上、3%以上、5%以上、又は6%以上であってよく、ガスバリア性に優れることから、15%以下、13%以下、11%以下、又は9%以下であってよい。
【0061】
第1の非マトリックス樹脂部2bにおける第1の充填材12の割合は、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上又は100質量%であってよい。
【0062】
(シーラント層)
シーラント層4は、ポリオレフィン系樹脂を含む第2のマトリックス樹脂部4aと、第2の充填材16を含む第2の非マトリックス樹脂部とからなる。シーラント層4における第2の非マトリックス樹脂部の割合は、接着性樹脂層2における第1の非マトリックス樹脂部2bと同様である。第2の非マトリックス樹脂部における第2の充填材16の割合は、第1の非マトリックス樹脂部2bと同様である。
【0063】
以上、一実施形態に係るガスバリア積層体について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シーラント層4は第2の充填材16を含んでいなくてもよい。フィルム基材3bと蒸着層3aとの積層順は入れ替えてもよい。その場合、フィルム基材3bと、接着性樹脂層2とのラミネート強度は、上述したフィルム基材3bと、シーラント層4とのラミネート強度と同様であってもよい。積層体20において、蒸着層3aが設けられていなくてもよい。
【0064】
[ガスバリア積層体の製造方法]
<第一実施形態>
以下、本実施形態に係る積層体10の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、下記の工程を備える。
(1a)接着性樹脂層2及びガスバリア層3を備える積層構造を有するガスバリアフィルムを準備する工程。
(1b)紙基材1の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層5を形成して第1積層体を得る工程。
(1c)ガスバリアフィルムの接着性樹脂層2と、第2積層体の紙基材1と、を熱ラミネートにより貼り合わせて第2積層体を得る工程。
(1d)フィルム状のシーラント層4を準備する工程。
(1e)第2積層体のガスバリア層3と、フィルム状のシーラント層4と、を熱ラミネートにより貼り合わせて積層体10を得る工程。
【0065】
[(1a)工程]
本工程では、接着性樹脂層2及びガスバリア層3を備える積層構造を有するガスバリアフィルムを準備する。ガスバリアフィルムは、接着性樹脂層2と、蒸着層3aと、フィルム基材3bとをこの順序で備える積層構造を有する。
【0066】
接着性樹脂層2は、フィルム状の接着性樹脂層2と、ガスバリア層3の蒸着層3aとを、熱ラミネートにより貼り合わせることで得られる。フィルム状の接着性樹脂層2は、少なくともポリオレフィン系樹脂及び充填材を含む樹脂組成物を溶融させた状態で押出し、延伸することで得られる。延伸することで、接着性樹脂層2において充填材が起点となり空隙18が生じる。延伸は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。延伸倍率は、2倍以上、又は4倍以上であってもよく、10倍以下、又は6倍以下であってもよい。
【0067】
蒸着層3aは、真空成膜手段によってフィルム基材3bの表面上に成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0068】
[(1b)工程]
本工程では、紙基材1の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層5を形成して第1積層体を得る。保護層5を形成する方法は、押出しラミネートに限られない。その他の方法としては、例えば、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法及び共押し出しインフレーション法が挙げられる。
【0069】
[(1c)工程]
本工程では、ガスバリアフィルムの接着性樹脂層2と、第1積層体の紙基材1と、を熱ラミネートにより貼り合わせて第2積層体を得る。
【0070】
[(1d)工程]
本工程では、フィルム状のシーラント層4を準備する。フィルム状のシーラント層4は、少なくともポリオレフィン系樹脂及び充填材を含む樹脂組成物を溶融させた状態で押出し、延伸することで得られる。延伸することで、シーラント層4において充填材が起点となり空隙18が生じる。延伸は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。延伸倍率は、2倍以上、又は4倍以上であってもよく、8倍以下、又は5倍以下であってもよい。
【0071】
[(1e)工程]
本工程では、第2積層体のフィルム基材3bと、フィルム状のシーラント層4と、を熱ラミネートにより貼り合わせて積層体10を得る。
【0072】
以上、一実施形態に係るガスバリア積層体の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シーラント層4は、第2積層体のフィルム基材3bの表面上に熱ラミネート以外の方法で形成されてもよい。熱ラミネート以外の方法としては、例えば、押出しラミネート、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法及び共押し出しインフレーション法が挙げられる。
【0073】
また、ガスバリアフィルムは、フィルム基材3bの蒸着層3aが設けられた面とは反対の面側にシーラント層4を備えていてもよい。この場合、ガスバリア積層体の製造方法は、(1d)工程及び(1e)工程を備えていなくてもよい。ガスバリアフィルムにおいて、蒸着層3aとフィルム基材3bの積層順序を入れ替えてもよい。ガスバリアフィルムは、蒸着層3aを備えていなくてもよい。積層体10を構成する各層には、積層前に、コロナ処理及びプラズマ処理等の前処理をおこなってもよい。
【0074】
<第二実施形態>
以下、本実施形態に係る積層体20の製造方法について説明する。以下で説明がない点については、不整合が生じない限り、第一実施形態に係る積層体10の製造方法と同様である。本実施形態に係る製造方法は、下記の工程を備える。
(2a)ガスバリア層3を備えるガスバリアフィルムを準備する工程。
(2b)紙基材1の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層5を形成して第1積層体を得る工程。
(2c)ガスバリアフィルムの蒸着層3aと、第1積層体の紙基材1との間に、押出しラミネートにより接着性樹脂層2を形成し、ガスバリアフィルムと第1積層体とが接着性樹脂層2を介してラミネートされた第2積層体を得る工程。
(2d)第2積層体のガスバリア層3の表面上に押出しラミネートによりシーラント層4を形成して積層体20を得る工程。
【0075】
[(2a)工程]
本工程では、ガスバリア層3を備えるガスバリアフィルムを準備する。ガスバリアフィルムは、蒸着層3aと、フィルム基材3bとを備える積層構造を有する。
【0076】
[(2b)工程]
本工程では、紙基材1の一方の表面上に押出しラミネートにより保護層5を形成して第1積層体を得る。
【0077】
[(2c)工程]
本工程では、ガスバリアフィルムの蒸着層3aと、第1積層体の紙基材1との間に、押出しラミネートにより接着性樹脂層2を形成し、ガスバリアフィルムと第1積層体とが接着性樹脂層2を介してラミネートされた第2積層体を得る。接着性樹脂層2を形成する方法は、押出しラミネートに限られない。その他の方法としては、例えば、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法及び共押し出しインフレーション法が挙げられる。
【0078】
[(2d)工程]
本工程では、第2積層体のガスバリア層の表面上に押出しラミネートによりシーラント層4を形成して積層体20を得る。
【0079】
[容器]
以下、本実施形態に係る容器(紙容器)について説明する。図3に示す容器50は、積層体10によって構成されている。
【0080】
容器50は、例えば、各種の飲食品、接着剤及び粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、並びにその他の種々の物品を充填包装することができる。容器50は、突刺し性及びガスバリア性に優れることから、酒、牛乳等の乳製品、果汁飲料等のジュース、ミネラルウオーター、醤油及びソース等の液体調味料、並びに、カレー、シチュー及びスープ等の液体飲食物を充填包装する包装用容器として特に好適に用いられる。
【0081】
容器50は、ブリックタイプの容器である。容器50は、ストロー突刺し口51が設けられた上部52aと、側面52bと、底部52cとを有する直方体形状の容器本体部52を備える。ストロー突刺し口51は、積層体10において紙基材1に孔1aが形成されている部分である。
【0082】
以上、本実施形態に係る容器について詳細に説明したが、本発明に係る容器は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、容器の形状は、容器50の形状に限られず、例えば、ゲーブルトップタイプ又は三角錐状であってもよい。また、容器本体部の形状は、円筒状であってもよい。容器は、積層体20によって構成されていてもよい。
【実施例0083】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
[積層体の製造]
(実施例1)
以下の工程を経て本例に係る積層体を得た。すなわち、シーラント層及び接着性樹脂層を形成する樹脂として、低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm)と、炭酸カルシウム(平均粒子径:10μm)とを混合して樹脂組成物を得た。混合は、炭酸カルシウムの含有量が、樹脂組成物の全量を基準として、2体積%となるように行った。
【0085】
フィルム基材(材料:ポリプロピレン樹脂、厚さ:18μm)の一方の表面上にシリカを主成分とする蒸着層(厚さ:50nm)が形成されたガスバリアフィルムを準備した。フィルム基材の蒸着層が形成された面とは反対の面に表面の濡れ性が40ダインとなるようにコロナ処理を施した。フィルム基材の蒸着層が形成された面とは反対の面に樹脂組成物を押出し、シーラント層(厚さ:30μm)を形成して内層材を得た。
【0086】
他方、ストロー突刺し口として貫通する孔が設けられた紙基材(坪量:260g/m)の一方の表面上に保護層(材料:密度が0.923g/cmの低密度ポリエチレン、厚さ:20μm)を形成し、紙基材を含む外層材を得た。
【0087】
内層材の蒸着層と外層材の紙基材が対面するように押出しラミネートによって内層材及び外層材を樹脂組成物(接着性樹脂層)で貼り合わせて積層体(包装材)を得た。接着性樹脂層の厚さは15~20μmであった。
【0088】
(実施例2)
炭酸カルシウムに代えて酸化マグネシウム(平均粒子径:23μm)を用い、樹脂組成物における酸化マグネシウムの含有量を樹脂組成物の全量を基準として、8体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0089】
(実施例3)
実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をフィルム状に成型し、更に延伸することでフィルム状の接着性樹脂層を得た。延伸倍率は、4倍とした。
【0090】
フィルム基材(材料:ポリプロピレン樹脂、厚さ:18μm)の一方の表面上にシリカを主成分とする蒸着層(厚さ:50nm)が形成されたガスバリアフィルムを準備した。フィルム基材の蒸着層が形成された面とは反対の面に表面の濡れ性が40ダインとなるようにコロナ処理を施した。フィルム基材の蒸着層が形成された面にフィルム状の接着性樹脂層を熱ラミネートにより貼り付けた。フィルム基材の蒸着層が形成された面とは反対の面に樹脂組成物を押出し、シーラント層(厚さ:30μm)を形成して内層材を得た。
【0091】
他方、実施例1と同様にして外層材を得た。内層材の接着性樹脂層形成用のフィルムと、外層材の保護層と、を熱ラミネートにより貼り合わせ積層体を得た。
【0092】
(実施例4)
樹脂組成物に代えて低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm)を用いてシーラント層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0093】
(比較例1)
炭酸カルシウム(平均粒子径:10μm)に代えて炭酸カルシウム(平均粒子径:50μm)を用い、樹脂組成物における炭酸カルシウムの含有量を樹脂組成物の全量を基準として、40体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を製造しようとした。しかし、樹脂組成物を溶融させた状態で押出してもうまく成膜できず接着性樹脂層及びシーラント層が形成できなかった。
【0094】
(比較例2)
炭酸カルシウムに代えて酸化マグネシウムを用い、樹脂組成物における酸化マグネシウムの含有量を樹脂組成物の全量を基準として、20体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を製造しようとした。しかし、樹脂組成物を溶融させた状態で押出してもうまく成膜できず接着性樹脂層及びシーラント層が形成できなかった。
【0095】
(比較例3)
樹脂組成物に代えて低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm)を用いてシーラント層及び接着性樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0096】
[ラミネート強度の測定]
各実施例及び比較例で得られたガスバリア積層体について、ガスバリアフィルムとシーラント層とのラミネート強度を測定した。測定は、JIS Z-1707に準拠して行った。具体的には、積層体を幅15mmの短冊状にカットした。短冊状にカットされた積層体のシーラント層を、テンシロン引張試験機(製品名「テンシロンRTC-1250」、オリエンテック社製)を用いて、シーラント層とガスバリアフィルムとが反対側に向かうように(すなわち剥離角度がT型になるように)、300mm/分の剥離速度でガスバリアフィルムから剥離し、剥離に要した強度(単位:N/15mm)をラミネート強度として測定した。結果を表1に示した。
【0097】
[非マトリックス樹脂部の割合の測定]
各実施例及び比較例で得られたガスバリア積層体について、接着性樹脂層の断面を電子顕微鏡によって観察して断面写真を撮影した。倍率は1000倍とした。画像解析装置で断面写真を画像処理することで非マトリックス樹脂部及びマトリックス樹脂部の合計面積に占める非マトリックス樹脂部の面積を算出した。算出された値を接着性樹脂層における非マトリックス樹脂部の割合とした。結果を表1に示した。
【0098】
[突刺し性]
各実施例及び比較例で得られた積層体の突刺し性について下記の評価1及び評価2を行った。結果を表1に示した。
【0099】
<評価1>
積層体の突刺し強度を測定した。具体的には、積層体のストロー突刺し口の保護層側から引張圧縮試験機(島津製作所製)を用いて針を突刺した。針は、先端が半球状(直径:0.5mm)である半球針を用いた。針を突刺す速度は、50mm/分とした。突刺し強度の測定値は、針を突刺す間に測定されるピーク値とした。
【0100】
<評価2>
プッシュプルゲージ(株式会社イマダ製、商品名:「DPX-5T」)の先端にストロー(先端角度:45°、材料:プラスチック)を取付けた。積層体のストロー突刺し口の保護層側からストローを突刺した。突刺し性は、下記の基準に基づき評価した。
2:突き刺し易さを感じる
1:突き刺し易さを感じず突き刺しにくさを感じる
【0101】
【表1】
【符号の説明】
【0102】
1…紙基材、1a…孔、2…接着性樹脂層、2a,4a…マトリックス樹脂部、2b,4b…非マトリックス樹脂部、3…ガスバリア層、3a…蒸着層、3b…フィルム基材、4…シーラント層、5…保護層、10,20…積層体、12,16…充填材、14,18…空隙、50…容器、51…ストロー突刺し口。
図1
図2
図3