IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特開-管制装置 図1
  • 特開-管制装置 図2
  • 特開-管制装置 図3
  • 特開-管制装置 図4
  • 特開-管制装置 図5
  • 特開-管制装置 図6
  • 特開-管制装置 図7
  • 特開-管制装置 図8
  • 特開-管制装置 図9
  • 特開-管制装置 図10
  • 特開-管制装置 図11
  • 特開-管制装置 図12
  • 特開-管制装置 図13
  • 特開-管制装置 図14
  • 特開-管制装置 図15
  • 特開-管制装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000679
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】管制装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/04 20060101AFI20221222BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20221222BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20221222BHJP
   G05D 1/10 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
G08G5/04 A
B64C27/04
B64F1/36
G05D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101638
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
(72)【発明者】
【氏名】今本 健二
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181FF03
5H181LL04
5H301AA06
5H301BB05
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301KK03
5H301KK04
5H301LL01
5H301LL03
5H301LL08
5H301LL14
5H301LL16
(57)【要約】
【課題】複数台の飛行体が一つの離着陸場へアプローチする場合に、安全かつ効率よく離着陸可能となるシステムを提供すること。
【解決手段】本発明の管制装置120は、複数の飛行体の離着陸を管理する管制装置であって、複数の飛行体を離着陸場130に順次着陸させる飛行計画を生成する飛行体位置管理部221と、飛行計画を複数の飛行体に送信する通信部220を備える。そして、飛行体位置管理部221は、離着陸場の上空に複数の飛行体を空中浮揚させ、複数の飛行体を互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の飛行体よりも上側の飛行体を、離着陸場から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の垂直離着陸飛行体の離着陸を管理する管制装置であって、
前記複数の垂直離着陸飛行体を離着陸場に順次着陸させる飛行計画を生成する飛行体位置管理部と、
前記飛行計画を前記複数の垂直離着陸飛行体に送信する通信部と、を備え、
前記飛行体位置管理部は、離着陸場の上空に前記複数の垂直離着陸飛行体を空中浮揚させ、前記複数の垂直離着陸飛行体を互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の垂直離着陸飛行体よりも上側の垂直離着陸飛行体を、前記離着陸場から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させることを特徴とする管制装置。
【請求項2】
前記飛行体位置管理部は、前記離着陸場の上方に該離着陸場を中心として水平に広がる円状の閉曲線又は多角形状の閉折れ線を有し、下段よりも上段の方が大きく広がる複数段の閉塞待機場を生成し、
前記複数段の閉塞待機場に前記複数の垂直離着陸飛行体を待機させることを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項3】
前記飛行体位置管理部は、前記複数段の閉塞待機場の最下段の閉塞待機場に待機している前記垂直離着陸飛行体を前記離着陸場に着陸させ、
前記複数段の閉塞待機場の下方の閉塞待機場に前記垂直離着陸飛行体を待機させる空きスペースがある場合には、上方の閉塞待機場に待機している前記垂直離着陸飛行体を下方の閉塞待機場に移動させることを特徴とする請求項2に記載の管制装置。
【請求項4】
前記飛行体位置管理部は、前記垂直離着陸飛行体を、前記閉塞待機場に停止飛行、または、前記閉塞待機場に沿って移動飛行させることを特徴とする請求項3に記載の管制装置。
【請求項5】
前記飛行体位置管理部は、前記離着陸場の上方に前記離着陸場を中心として前記離着陸場から上方に移行するにしたがって水平方向に離れる方向にらせん状に連続する1本の開放待機場を生成し、
前記開放待機場に前記複数の垂直離着陸飛行体を並べて待機させることを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項6】
前記飛行体位置管理部は、前記離着陸場の上方に前記離着陸場を中心として前記離着陸場から上方に移行するにしたがって水平方向に離れる方向に放射状に延びる複数の開放待機場を生成し、
前記複数の開放待機場に前記複数の垂直離着陸飛行体を並べて待機させることを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項7】
前記飛行体位置管理部は、前記開放待機場に前記複数の垂直離着陸飛行体を停止飛行させた状態で、前記離着陸場から垂直方向に延びる垂直線を中心軸として前記開放待機場を旋回させることを特徴とする請求項5または6に記載の管制装置。
【請求項8】
前記飛行体位置管理部は、前記複数の垂直離着陸飛行体を前記離着陸場との間の距離が短い順に着陸させることを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項9】
前記飛行体位置管理部は、前記垂直離着陸飛行体から優先着陸要請を受けた場合に、該垂直離着陸飛行体の待機位置から前記離着陸場までを直線で結ぶ優先着陸経路を設定し、該優先着陸経路が既に設定されている離陸もしくは着陸のための経路を横断する場合に、前記優先着陸経路の周囲に他の垂直離着陸飛行体の進入を禁止する専有領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項10】
前記飛行体位置管理部は、前記垂直離着陸飛行体から離脱要請を受けた場合に、該離脱要請をした前記垂直離着陸飛行体から前記離着陸場の離陸経路につながる離脱経路を設定し、該離脱経路が既に設定されている離陸もしくは着陸のための経路を横断する場合に、前記離脱経路の周囲に他の垂直離着陸飛行体の進入を禁止する専有領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の管制装置。
【請求項11】
複数の垂直離着陸飛行体と、該複数の垂直離着陸飛行体の離着陸を管理する管制装置とを有する飛行管理システムであって、
前記管制装置は、前記複数の垂直離着陸飛行体を離着陸場に順次着陸させる飛行計画を生成する飛行体位置管理部と、前記飛行計画を前記複数の垂直離着陸飛行体に送信する通信部と、を有し、
前記垂直離着陸飛行体は、前記管制装置から前記飛行計画を受信する受信部と、自己の位置と姿勢を検出する位置姿勢センサと、前記飛行計画と位置姿勢情報に基づいて飛行制御を行う位置姿勢制御部とを有し、
前記飛行体位置管理部は、離着陸場の上空に前記複数の垂直離着陸飛行体を空中浮揚させ、前記複数の垂直離着陸飛行体を互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の垂直離着陸飛行体よりも上側の垂直離着陸飛行体を、前記離着陸場から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させることを特徴とする飛行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の垂直離着陸飛行体の離着陸を管理する管制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、着陸面に対して垂直方向に離着陸するドローンと呼ばれる無人飛行体を利用して荷物を目的地に搬送するシステムが提案されている。このドローンは、複数の羽根ロータを有したマルチロータ方式が一般的に使用されている。
【0003】
このドローンによる搬送システムは、ドローンの水平面の飛行計画経路を表すデータを入力し、飛行計画経路上の複数の位置の夫々の下にある表面の標高を表す高さ基準値を取得し、その位置に対応する飛行高度を高さ基準値に加算した値を飛行計画経路の高度のデータとして使用することで、障害物に衝突しないで飛行計画経路を飛行できるようにしている。
【0004】
そして、このようなドローンによる搬送システムにおいて、数多くのドローンが効率よく目的地に到着して着陸できることが重要である。このため、ドローンの着陸制御装置としては、例えば、特許文献1に記載された方法が提案されている。この特許文献1においては、自律飛行可能なドローンが離着陸を行う各離着陸場の予約管理をするとともに、離着陸場間を自律飛行する複数のドローンの飛行計画及び飛行位置を管理する飛行管理システムが公開されている。複数のドローンが共同で離着陸場を利用する場合、離着陸場に対する予約管理を行うことで一つの離着陸場へ複数台のドローンがアプローチすることを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2018/155700
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されている手法は、予約する離着陸場の位置に対して直接アプローチするため、離着陸ポートが他機によって占有されている際は、別の離着陸場へ誘導されることになる。しかし、アプローチするドローンの台数に対して別の離着陸場の数が十分にない場合は、その周辺の空中で待機することが考えられる。このような場合、各ドローンの待機位置は他ドローンと衝突しないだけではなく、各ドローンが発生させる気流などの影響を受けないように待機する必要がある。この際、ドローンの台数が一つのポートに対して高密度となるほどの台数がある場合、例えば、あるドローンが離着陸ポートの空きを上空で待機する場合に、自機近くのドローンが待機中に発生する気流などの影響のみを考慮して待機位置を無秩序に決定すると、他ドローンが着陸するために十分な移動スペースが確保できないなどの課題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、このような課題を鑑み、複数の垂直離着陸飛行体を離着陸場に安全かつ効率よく離着陸させる管制装置を提供することにある。
【0008】
尚、この荷物搬送用の飛行体は無人であるが、将来的には有人の飛行体に展開される方向で開発が行われている。したがって、本発明では、無人飛行体に限らず有人飛行体に対しても適用できる管制装置を提案するものである。また、飛行体はマルチロータ方式に限らず、これ以外の自律的に飛行する飛行体をも対象とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の垂直離着陸飛行体の離着陸を管理する管制装置であって、前記複数の垂直離着陸飛行体を離着陸場に順次着陸させる飛行計画を生成する飛行体位置管理部と、前記飛行計画を前記複数の垂直離着陸飛行体に送信する通信部と、を備え、前記飛行体位置管理部は、離着陸場の上空に前記複数の垂直離着陸飛行体を空中浮揚させ、前記複数の垂直離着陸飛行体を互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の垂直離着陸飛行体よりも上側の垂直離着陸飛行体を、前記離着陸場から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の飛行体を安全かつ効率よく離着陸させることができる。
【0011】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】飛行体と離着陸場および管制装置の概要を説明する説明図である。
図2】本発明の管制装置が適用される飛行管理システムの構成を示すブロック図である。
図3図2に示す飛行体制御装置の動作モードを説明するための制御フローを示すフローチャートである。
図4図2に示す管制装置における経路および専有領域の設定を説明するための制御フローを示すフローチャートである。
図5】閉塞待機場の一例を説明するための説明図である。
図6】閉塞待機場の一例を説明するための説明図である。
図7】閉塞待機場の一例を説明するための説明図である。
図8】離陸経路の一例を説明するための説明図である。
図9】着陸途中から離脱する経路の一例を説明するための説明図である。
図10】着陸途中から離脱する経路の一例を説明するための説明図である。
図11】緊急着陸する経路の一例を説明するための説明図である。
図12】緊急着陸する経路の一例を説明するための説明図である。
図13】閉塞待機場の遷移の一例を説明するための説明図である。
図14図2に示す管制装置における専有領域設定部の制御フローを示すフローチャートである。
図15】開放待機場の一例を説明するための説明図である。
図16】開放待機場の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明で使用される飛行体100および管制装置120、離着陸場130を含めたシステム概略の構成を示している。
【0015】
本実施形態における飛行管理システムは、複数の垂直離着陸飛行体(以下、飛行体)と、これら複数の飛行体100の飛行を管理する管制装置120とを含む。飛行体100は、例えば管制装置120の指示に基づき、出発地の離着陸場(駐機位置)130から離陸し、経路にしたがって目的地まで飛行し、目的地の離着陸場130に着陸することができる。飛行体100は、例えば、矩形状の筐体本体101の対称関係となる位置に4個の羽根ロータ102が設けられており、夫々の羽根ロータ102は図示しない電動モータによって駆動され、垂直に上昇および下降し、上空を飛行し、又は、上空の同じ位置に空中浮揚することができる。尚、本実施形態の飛行体は、これに限るものではなく、要は垂直方向に離着陸できる飛行体であれば良い。
【0016】
飛行体100の筐体本体101には、位置姿勢センサを含む飛行体制御装置103が設けられており、更に管制装置120との間で、飛行体100の位置や、その通過する経路の情報を通信する通信機104が設けられている。通信機104は、管制装置120から飛行計画を受信する受信部としても機能する。筐体本体101の位置や姿勢の検出には、周知のGNSSセンサおよび慣性計測装置が搭載されている。飛行体制御装置103は、飛行体100の水平面の飛行計画経路を表す経路情報と、飛行計画経路上の複数の位置の夫々の下にある地表面の標高を表す高さ基準値とから、その飛行位置に対応する飛行高度を高さ基準値に加算した値を飛行計画経路の高度情報として使用することで、他飛行体および障害物に衝突しないで飛行計画経路を飛行できるように飛行体100を制御する。
【0017】
管制装置120は、複数の飛行体100の飛行経路を指示し、また、離着陸場130への離着陸を管理する。例えば、管制装置120は、離着陸場130の上空に複数の飛行体100を空中浮揚させ、離着陸場130に順次着陸させる。その際、飛行体100同士の気流の影響等により機体姿勢が不安定とならないように、複数の飛行体100を互いに離れた位置に配置させる。具体的には、複数の飛行体100を互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の飛行体100よりも上側の飛行体100を、離着陸場130から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させる。
【0018】
管制装置120は、図1において離着陸場130と別体で表しているが、一体であっても良い。また、離着陸場130は、図1においては1つのみで表されているが、複数存在しても良い。ただし、管制装置120は少なくとも一つの離着陸場130へアプローチする飛行体100の経路を指示するものとし、飛行体100に複数の管制装置120から複数の経路が指示されることはないものとする。
【0019】
次に、本発明の離着陸システムについて図2を用いて説明する。
飛行体201に代表的な飛行体の構成を示し、複数ある飛行体を飛行体202として表している。飛行体202の構成は飛行体201とほぼ同様であり、図2においては表記を省略している。
【0020】
位置姿勢センサ210から検出される位置・姿勢情報は、通信機104および専有状態管理部211、動作状態管理部212、位置・姿勢制御部213の目標位置・姿勢生成部214に入力されている。ここで、位置・姿勢情報は、グローバル座標系における飛行体201の位置と傾きを表している。位置姿勢センサ210は、飛行体201の位置、及び飛行体201の「ヨー」、「ロール」、「ピッチ」等の飛行体201の回転軸回りのパラメータを検出している。
【0021】
通信機104は、位置姿勢センサ210が検出した飛行体201の位置・姿勢の情報と、動作状態管理部212で管理している飛行体201の動作状態の情報とを管制装置120へ出力する一方、管制装置120から配信される離着陸管理情報を地図データベース215へ入力し、更に管制装置120から割り当てられた自機の専有領域の情報を専有状態管理部211へ入力する。
【0022】
専有状態管理部211においては、飛行体201の位置が管制装置120から指示される自機に与えられた専有領域内の位置を算出し、専有領域を逸脱するまでの距離を動作状態管理部212へ出力する。
【0023】
専有状態管理部211により設定された専有領域を逸脱するまでの距離および地図データベース215からの経路情報、及び位置姿勢センサ210からの位置・姿勢情報は、動作状態管理部212に入力されている。これらの情報に基づいて動作状態管理部212は、飛行体201の動作状態の管理を実行する。ここで、動作状態(モード)は「着陸モード」、「離陸モード」、「巡行モード」、「接近モード」、「待機モード」の5つの動作状態を管理している。
【0024】
「着陸モード」、「離陸モード」では、飛行体201の垂直移動と、離着陸場を中心とした旋回を実行し、「巡行モード」では、地図データベース215にしたがい飛行計画経路に沿った移動を実行する。そして、「接近モード」では、所定の指定された地点(例えば、着陸地点)への移動のための地図データベース215に記憶された飛行計画経路と専有状態管理部211によって与えられた自機の専有領域内での移動を実行する。「待機モード」では、指定された待機場において移動をせずにホバリング(停止飛行)を実行する、もしくは、線状に設定された待機場に沿って移動飛行する、という動作状態を管理する機能を備えている。「待機モード」と通常の移動時に発生する一時停止などの動作とは基本的に異なり、「待機モード」は指定された位置へ移動して、その位置で待機するものである。
【0025】
位置・姿勢制御部213においては、動作状態管理部212からの動作状態管理情報、地図データベース215からの地図情報、及び位置姿勢センサ210からの位置・姿勢情報が入力されている。更に、位置・姿勢制御部213は、目標位置・姿勢生成部214によって、目標位置・姿勢情報を生成する。この目標位置・姿勢情報は、追従制御部216に入力される。追従制御部216は、目標位置・姿勢情報に基づいて選択された、「着陸モード」、「離陸モード」、「巡行モード」、「接近モード」、「待機モード」のいずれかに対応して飛行体201を自律的に動作させる機能を備えている。
【0026】
以上が飛行体制御装置103の主な機能要素であるが、これら機能要素は、基本的には飛行体201に搭載されたマイクロコンピュータの制御プログラムを実行するによって動作される。マイクロコンピュータは、周知の通り、演算を実行するセントラルプロセッシングユニット(CPU)、制御プログラムを記憶した不揮発性メモリ(ROM)、計算結果を記憶したりする揮発性メモリ(RAM)、センサ信号を入力し、駆動信号を出力する入出力回路等から構成されている。
【0027】
次に管制装置120の構成とその機能を記す。
管制装置120は、各飛行体からの位置姿勢、動作状態を受信し、各飛行体へ経路および専有領域を配信する通信機(通信部)220を備える。通信機220から得られる各飛行体の位置および動作状態は、飛行体位置管理部221へ入力され、ここで管制装置120が掌握している全ての飛行体の位置および新しく管理すべき状態となった飛行体の位置を管理する。経路・モード変更部222では、全ての飛行体の位置および姿勢状態から予め保持している離着陸場130までの経路に変更が必要であるかその要否を判断する。そして、変更が必要な場合は、新たな経路を設定し、その新たな経路の情報を専有領域設定部223および通信機220へ出力し、通信機220から各飛行体に送信される。専有領域設定部223では、飛行体位置管理部221から得られる各飛行体の位置および経路・モード変更部222から得られる経路に応じて、各飛行体に専有領域を割り当てて、割り当てられた専有領域を通信機220へ出力する。
【0028】
以上が大まかな離着陸システムの処理の流れとなる。以下、飛行体201と管制装置120の制御フローについて説明する。
始めに飛行体制御装置103における主な機能要素の制御フローについて説明する。
【0029】
[動作モードの設定制御フロー]
先ず、図3は本発明の離着陸システムにおける飛行体制御装置103の制御フローを示しており、これによって飛行体201の動作モードを設定する。
【0030】
≪ステップS301≫
ステップS301においては、現在の位置・姿勢情報を取得する。この位置・姿勢情報の取得は、位置姿勢センサ210から求めることができる。現在の位置・姿勢情報が取得されるとステップS302に移行する。
【0031】
≪ステップS302≫
ステップS302においては、現在の飛行体201の飛行状態がいずれの動作状態(上述の5つの動作モード)であるかを判断するため、現時点で動作状態管理部212が設定している動作状態を取得する。現在の動作状態が取得されるとステップS303に移行する。
【0032】
≪ステップS303≫
ステップS303においては、動作状態管理部33から取得された動作状態が「巡行モード」かどうかを判断する。この判断ステップにおいては、動作状態管理部212から逐次送られてくる動作状態の情報に基づいて判断される。この判断ステップで「巡行モード」の状態と判断されるとステップS304に移行し、「巡行モード」の状態ではないと判断されるとステップS305に移行する。
【0033】
≪ステップS304≫
ステップS304においては、ステップS301で取得した現在の位置・姿勢と、地図データベース215からの地図情報をマッチングさせ、目標位置・姿勢情報を設定する。この状態で、以下の制御ステップS305、S309、S311で「no」と判断されると、ステップS313に移行して目標位置・姿勢情報にしたがって飛行体201を制御する。これによって、飛行体201は「巡行モード」で目的地に向かうことになる。
【0034】
≪ステップS305≫
ステップS303、S304の制御ステップを実行すると、本ステップS305では、動作状態管理部212から取得された動作状態が「接近モード」かどうかを判断する。この判断ステップで「接近モード」の状態と判断されるとステップS306に移行し、「接近モード」の状態ではないと判断されるとステップS309に移行する。
【0035】
≪ステップS306≫
ステップS305で「接近モード」と判断されているので、ステップS306においては、飛行体201に対して管制装置120から経路情報および専有領域の割り当てがあるかどうかを判断する。経路情報の有無は地図データベース215内の検索、専有領域の割り当ては専有状態管理部211への入力で判断することができる。ステップS306で、管制装置120から経路情報および専有領域の割り当てがあると判断されるとステップS307に移行し、着陸地点の出力がないと判断されるとステップS308に移行する。
【0036】
専有領域は、予め存在する経路における飛行体の移動可能な範囲を表すもので、この専有領域が他の飛行体の専有領域に干渉しないように全ての飛行体に与えられることで、ある飛行体に対して与えられた専有領域内には、与えられた飛行体以外の飛行体は存在しないように制御される。
【0037】
≪ステップS307≫
ステップS307においては、ステップS306で専有領域の設定があると判断されているので、ステップS304で設定されていた目標位置・姿勢情報を与えられた専有領域内の新たな経路の目標位置に再設定する。この状態で、以下の制御ステップS309、S311で「no」と判断されると、ステップS313に移行して目標位置情報にしたがって、飛行体201が経路に沿った目標位置に向かう制御を実行する。これによって、飛行体201は、「接近モード」で着陸地点である離着陸場130に向かって管制装置120が指示する経路に従って移動することになる。
【0038】
≪ステップS308≫
一方、ステップS308では、ステップS306で経路情報および専有領域の出力がない(no)と判断されているので、管制装置120が指示する待機位置にて目標位置・姿勢情報を維持するため、動作状態管理部212における動作状態を「待機モード」に設定する。
【0039】
≪ステップS309≫
ステップS309においては、動作状態管理部212から取得された動作状態が「待機モード」かどうかを判断する。この判断ステップで「待機モード」の状態と判断されるとステップS310に移行し、「待機モード」の状態ではないと判断されるとステップS311に移行する。
【0040】
≪ステップS310≫
ステップS310においては、飛行体201が着陸地点に到着して「待機モード」に設定されているので、管制装置120が指示する位置・姿勢情報を新たな目標位置・姿勢情報に再設定する。この状態で飛行体201は、目標位置への移動および目標位置でのホバリングを行い着陸地点の上空で待機することになる。着陸地点の上空で待機する飛行体201が複数の場合、互いに垂直方向に異なる位置でかつ、下側の飛行体201よりも上側の飛行体201を、離着陸場130から水平方向に離れる距離が長くなる位置に待機させる。次に、この状態でステップS311に移行する。
【0041】
≪ステップS311≫
本ステップS311においては、動作状態が「着陸モード」あるいは「離陸モード」にあるかどうかを判断する。「着陸モード」あるいは「離陸モード」ではないと判断されるとステップS313に移行し、「着陸モード」あるいは「離陸モード」にあると判断されるとステップS312に移行する。
【0042】
≪ステップS312≫
ステップS312においては、動作状態が「着陸モード」の場合は離着陸場130を目標位置に設定し、「離陸モード」の場合は管制装置120が指示する離着陸場130の垂直方向に移動した位置を目標位置・姿勢に設定する。これによって、飛行体201が上昇方向、或いは下降方向に移動できることになる。目標位置・姿勢が設定されるとステップS313に移行する。
【0043】
≪ステップS313≫
ステップS313においては、ステップS304、S307、S310、S312のいずれかで設定された目標位置・姿勢情報に基づき、飛行体201の動作状態を制御することで、飛行体201を目的とする位置に飛行させることができる。
以上が飛行体制御装置103の位置・姿勢制御部213の大まかな制御フローである。
【0044】
次に本発明が対象とする離着陸システムの具体的な制御フローを説明する。尚、以下では離着陸システムの全体的な制御フローを説明し、その後に全体的な制御フローで実行される主な個々の管制装置120の制御フローを説明する。
【0045】
[全体的な着陸制御フロー]
全体的な着陸制御フローは、図4に示す通りである。主には管制システムの動作となり、一定の作動周期で作動するものとする。
【0046】
≪ステップS401≫
ステップS401においては、管制装置120に対して飛行体201から位置および動作状態の通信があることを確認する。通信がある場合はステップS402に移行し、通信がない場合はS403に移行する。
【0047】
≪ステップS402≫
ステップS402においては、飛行体201の位置を現在の経路にマッピングする。マッピングする対象の経路(マップ)は、離着陸場130へアプローチするための経路と、出発地周辺と目的地周辺をつなぐ経路に大別されている。本発明で対象とするのは前者の離着陸場130へアプローチするための経路である。この経路は、目的地周辺に辿り着いた飛行体が「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」である場合に移動可能な経路である。
【0048】
マッピングは、離着陸場130の周辺に「巡行モード」で到着した飛行体201が着陸のために「接近モード」に変更されることで管制装置120にて着陸経路への侵入を許可、管理するために実施される。
第1実施形態ではこの着陸経路として複数の閉塞待機場を持った経路を示す。
【0049】
図5に第1実施形態における複数の閉塞待機場の例を示す。
閉塞待機場は、離着陸場130の上空に仮想的に設定される、閉じた線状の待機場であり、この待機場に複数の飛行体100をホバリングさせて待機させることができる。閉塞待機場は、離着陸場130の上方に離着陸場130を中心として水平に広がる円状の閉曲線又は多角形状の閉折れ線の形状を有し、下段よりも上段の方が大きく広がるように複数段が生成される。
【0050】
図5では、複数の閉塞待機場511~513を、離着陸場130を中心とした同心円で表しており、円状の線は実際には所定の断面積の太さを持った領域である。これら複数の閉塞待機場511~513は、2次元にて見ると、つまり、垂直方向および水平方向から見ても、互いに重なることは無く、閉じたラインによって生成される閉領域の面積が大きいほど高度が高くなることを特徴としている。この時、上下の経路同士の最も接近する箇所が、飛行体の飛行によって生じる気流等の影響を互いに受けない距離をとるように設計する。閉塞待機場511~513は、離着陸場130からの高さがh1~h3と高くなり、離着陸場130を中心とした半径がL11~L13と大きくなるように設定されている。
【0051】
このような複数の閉塞待機場を生成することによって、ある閉塞待機場に存在する飛行体は、その閉塞待機場で待機する限り、つまり、閉塞待機場で停止飛行あるいは閉塞待機場に沿って移動する限りは、別の閉塞待機場に存在する飛行体から気流等の影響を受けることが無くなり、離着陸場130の周りで密なキューイングが可能となる。また、複数の飛行体を閉塞待機場から離着陸場130に着陸させる場合に、下方の閉塞待機場に存在する飛行体から着陸させ、上方の閉塞待機場から下方の閉塞待機場の空きスペースに飛行体を移動させることができ、複数の飛行体を順番に着陸させることができる。そして、例えば緊急事態の発生等により、上方の閉塞待機場に存在している飛行体を優先的に着陸させることが必要となった場合には、その飛行体を閉塞待機場の中心に向かって水平に移動させ、離着陸場130の垂直方向上方位置で下方に垂直降下させることによって、他の飛行体に干渉することなく、迅速かつ円滑に着陸をさせることができる。
【0052】
図5では、複数の閉塞待機場511~513が複数の同心円からなることを例として記したが、「離着陸場130が閉じた閉塞待機場の内側に存在する」ことと「複数の閉塞待機場が上下に重ならない」ことと「高さが各閉塞待機場によって異なる」ことを満たせばよい。複数の閉塞待機場は、例えば図6のような多角形状の閉折れ線を有するものや、図7のような楕円状の閉曲線を有するものであってもよく、また、こられの組み合わせでも同様の効果が得られる。
【0053】
図6に示す複数の閉塞待機場611~613は、多角形状の閉折れ線を有しており、離着陸場130からの水平方向の離間距離は、下段から上段に向かって大きくなるように設定されている(L21~L23)。図7に示す複数の閉塞待機場711~713は、最下段の閉塞待機場711は、半径がL31の真円状の閉曲線、2段目および3段目の閉塞待機場712、713は、楕円状の閉曲線を有している。2段目の閉塞待機場712と3段目の閉塞待機場713は、長軸と短軸の向きが互いに90度ずれており、下段から上段に向かって大きくなるように設定されている(L32、L33)。
【0054】
閉塞待機場711~713は、例えば、複数の高層建築物の間に、離着陸場を設置する場合に、複数の高層建築物の間に沿って延びるように配置することができ、閉塞待機場の長さをより長くして、閉塞待機場に、より多くの飛行体100を待機させることができる。
【0055】
閉塞待機場に待機している複数の飛行体100は、管制装置120からの制御指示により、離着陸場130との間の距離が短い順に着陸させられ、本実施形態では、最下段の閉塞待機場に存在するものから離着陸場130に着陸させられる。下方の閉塞待機場に飛行体100を待機させる空きスペースがある場合には、上方の閉塞待機場に待機している飛行体100が下方の閉塞待機場に移動し、複数の飛行体100が順番に下方に降りるように移動する。なお、飛行体201を停止飛行(ホバリング)させることは電力消費の観点から効率が落ちたり、ボルテックス・リング・ステートが発生し、浮力が損なわれる可能性がある。この問題を解決するためには水平方向に動き続けることが良いとされている。したがって、例えば、閉じた線状の閉塞待機場に沿って飛行体100を移動させたり、図6のような多角形状の閉折れ線を有する閉塞待機場611~613を、離着陸場130から垂直に延びる垂直線を中心軸として旋回させる設定としてもよい。閉塞待機場が旋回することで、円状の経路を指定せずとも、飛行体201が着陸のためにスムーズに旋回しながらの待機が可能となる。
このような経路に対して、各飛行体の位置のマッピングを終えればステップS403に移行する。
【0056】
≪ステップS403≫
ステップS403においては、ステップS402でマッピングした全ての飛行体201において、送信されたモードが「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」のいずれかであることを確認する。ここで、「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」のいずれかである場合は、離着陸場130へアプローチする飛行体201として判断し、「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」以外のモードに変更されている場合は、飛行体側で離着陸場130へのアプローチを中断する意図でモード変更が行われたと判断し、管制範囲の外へ向かう経路を設定する。
【0057】
全ての飛行体が「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」のいずれかである場合はステップS409へ移行し、「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」以外のモードが存在する場合はステップS404に移行する。
【0058】
≪ステップS404≫
ステップS404においては、上述した「接近モード」「着陸モード」「離陸モード」以外のモードとなっている飛行体をリストアップし、1体の飛行体ごとにS405からS408までの処理を実施し、リストアップされた全ての飛行体に対して繰り返す。
【0059】
≪ステップS405≫
ステップS405においては、ステップS404にてリストから選択された飛行体201に対して、モードの遷移をチェックし、モードが「巡行モード」の場合は、駐機場へのアプローチがキャンセルされたと判断し、ステップS406へ移行する。モード遷移により「待機モード」となった場合は、何らかの機体トラブル等が発生したと判断し、ステップS407へ移行する。
【0060】
≪ステップS406≫
ステップS406では、離着陸場130へのアプローチがユーザによってキャンセルされたとみなし、離着陸場130からの離陸経路への経路を引き直す。
【0061】
離陸経路は、例えば、図8に示すように離着陸場130から垂直に引かれている場合や、図10のように閉塞待機場が交互に離陸経路と着陸経路に分かれている場合などがある。
【0062】
図8において飛行体100が巡行モードとなった場合は、離着陸場130から垂直上方へ伸びる離陸経路へ矢印のように経路801が生成される。また、図9において飛行体100が巡行モードとなった場合は、飛行体が存在する閉じた経路よりも上方に位置する離陸経路に連続する矢印のように離脱経路901が生成される。
【0063】
図8図10は、離陸経路の一例を示す図である。図8は、離陸経路の一例を説明するための説明図である。図8に示す例では、離着陸場130から上方に向かって垂直に延びるように垂直離陸経路801が設定されており、飛行体100は、この垂直離陸経路801に沿って離着陸場130から離陸する。
【0064】
図9は、着陸途中から離脱する経路の一例を説明するための説明図である。図9に示す例は、閉塞待機場513に待機している一つの飛行体100Cが離着陸場130への着陸をキャンセルして離脱する場合を示している。飛行体100Cは、閉塞待機場513から垂直離陸経路801まで離脱経路901に沿って移動し、垂直離着陸経路801に沿って離着陸場130から離れる方向に飛行して離脱する。
【0065】
管制装置120は、飛行体100から離脱要請を受けた場合に、離脱要請をした飛行体100から離陸経路801につながる離脱経路を設定する。そして、その離脱経路が既に設定されている離陸もしくは着陸のための経路を横断する場合に、離脱経路の周囲に他の垂直離着陸飛行体の進入を禁止する専有領域を設定する。
【0066】
図10は、着陸途中から離脱する経路の一例を説明するための説明図である。図10に示す例は、閉塞待機場が交互に離陸経路と着陸経路に分かれて設定された状態を示している。二点鎖線で示す閉塞待機場511、512が着陸用の待機場であり、一点鎖線で示す閉塞待機場1011、1012が離陸用の待機場である。閉塞待機場1011に待機していた飛行体100aを、矢印1001に示すように上段の閉塞待機場1012まで移動させ、閉塞待機場1012から離脱させることができる。
【0067】
巡行モードとなった場合の経路が変更されれば、管制装置120は変更した経路を対象の飛行体へ通信機220を通して送信し、ステップS408へ移行する。また、この巡行モードは、離陸経路へ入るまでは維持される。
【0068】
≪ステップS407≫
ステップS407においては、機体トラブルや救急搬送が必要な場合等が発生したと判断されるため、他の飛行体よりも優先して着陸させるための緊急着陸経路(優先着陸経路)が生成される。緊急着陸経路は、上方の閉塞待機場513から離着陸場130に直接アプローチするための経路である。
【0069】
管制装置120の飛行体位置管理部221は、飛行体100から緊急着陸の要請(優先着陸要請)を受けた場合に、その飛行体100の待機位置から離着陸場130までを直線で結ぶ緊急着陸経路を設定し、その緊急着陸経路が、既に設定されている他の飛行体のための離陸経路もしくは着陸経路を横断する場合には、緊急着陸経路の周囲に他の垂直離着陸飛行体の進入を禁止する専有領域を設定する。
【0070】
離着陸場130に飛行体100が存在しない場合は図11の点線で示した矢印1102のように離着陸場130の垂直上方に一度移動してから矢印1101に沿って離着陸場130まで垂直に着陸する経路を生成する。また、離着陸場130に飛行体が存在する場合など、離陸経路と重なる場合は、図12に矢印1201で示すように、上段の閉塞待機場513から離着陸場130に向かって直線的に着陸する経路を生成する。
待機モードとなった場合の経路が変更されれば、変更した経路を対象の飛行体へ通信機220を通して送信し、ステップS408に移行する。
【0071】
≪ステップS408≫
ステップS408においては、ステップS404でリストアップされた全てのモード遷移した飛行体に対して、経路の変更が実施されたことを確認し、全てのモード遷移した飛行体の経路が変更された場合は、ステップS409へ移行する。モード遷移した飛行体の内、経路変更されていない飛行体が残っている場合はステップS404へ戻り、処理を繰り返す。
【0072】
≪ステップS409≫
ステップS409においては、離着陸場130へ着陸する飛行体、もしくは離陸する飛行体を選択する。一つの離着陸場130には一つの飛行体のみが存在し得るとすれば、その離着陸場130にアプローチする経路上に離陸する飛行体がなければ、着陸する飛行体を離着陸場130に最も近い閉塞待機場511上に存在する飛行体100Aの中から離着陸場130の数だけ選べばよい。一方、離陸する飛行体100は、離着陸場130に存在する飛行体100を全て選択すればよい。
【0073】
このように離陸する飛行体100が存在する離着陸場130への経路においては、着陸する飛行体100は選択されず、接近モードが保たれることになる。離着陸場130に存在していた飛行体100が離陸モードとなり離陸後、離陸経路に入り、接近モードもしくは巡行モードとなれば、離着陸場130へアプローチする経路に離陸モードの飛行体100がなくなり、着陸する飛行体100の選択がされ、その飛行体100が着陸モードを選択できるようになる。離着陸する飛行体100の指定が完了すると、離着陸する飛行体100の経路を変更し、変更した経路を対象の飛行体100へ通信機を通して送信し、ステップS410に移行する。
【0074】
≪ステップS410≫
ステップS410においては、離着陸および経路変更を含め経路を遷移する飛行体100を選定し、優先順位を設定する。優先順位は、離陸する飛行体100が最も優先度が高く、次に着陸する飛行体100の優先度が高くなる。その他の飛行体については離着陸場130までの距離が近い順に優先度が設定される。
【0075】
また、図13に示すように、離着陸場130に近い閉塞待機場511上に、飛行体100を待機させることが可能な空きスペースが生じた場合は、順次その閉塞待機場511に近い、他の閉塞待機場512に待機している飛行体100Bから最も優先度の高いものを選択し、閉塞待機場512から閉塞待機場511に移動させるための経路1301(図では点線矢印)を生成する。複数の飛行体100の優先順位の設定が完了すると、ステップS411に移行する。
【0076】
≪ステップS411≫
ステップS411においては、各飛行体に設定されている専有領域変更の必要性を判断し、専有領域変更が必要な飛行体が存在する場合は、ステップS412へ移行する。変更が不要と判断された場合は、本制御フローの処理を終了する。
【0077】
≪ステップS412≫
ステップS412においては、ステップS411において専有領域の変更が必要と判断されているため、専有領域の変更が必要な飛行体をピックアップし、その専有領域を更新し、更新した専有領域を対象とする飛行体へ通信機を通して送信し、本制御フローを終了する。
【0078】
以上が着陸制御装置の全体的な制御フローであるが、次に主な個々の制御フローを説明する。
【0079】
[専有領域設定フロー]
ステップS412における専有領域設定フローについて、図14を用いて説明する。
【0080】
≪ステップS1401≫
まず、ステップS1401にてステップS407において緊急着陸する飛行体があるかをチェックし、緊急着陸する飛行体があればステップS1402へ移行し、緊急着陸する飛行体がなければステップS1405へ移行する。
【0081】
≪ステップS1402≫
ステップS1402では、ステップS1401にて緊急着陸を要する飛行体が存在することが確認されているため、対応する離着陸場130に既に飛行体が存在するかを確認し、存在する場合はステップS1403へ移行し、存在しない場合はステップS1404へ移行する。
【0082】
≪ステップS1403≫
ステップS1403では、緊急着陸させる飛行体が存在し、かつその離着陸場130に他の飛行体が存在する状況にある。緊急着陸が必要な飛行体を着陸させるためには、まず離着陸場130に存在する他の飛行体を離陸させる必要がある。そのため、先に離着陸場130に存在する他の飛行体を離陸経路へ誘導する経路の専有領域を設定し、設定が終わればステップS1404へ移行する。
【0083】
≪ステップS1404≫
ステップS1404では、緊急着陸する予定の飛行体の経路に専有領域を設定する。ただし、緊急着陸の経路と離陸経路が干渉しており、ステップS1403で既に離陸のための専有領域が設定されている場合は、その専有領域に干渉しない点までの専有領域を設定する。
緊急着陸に対する専有領域の設定が完了すればステップS1405へ移行する。
【0084】
≪ステップS1405≫
次にステップS1405以降にて、通常の離着陸のための専有領域の設定が実施される。以降は優先順位の高い飛行計画から順に専有領域が設定される。
まずはステップS1405にて離着陸場130から離陸経路へと移動するために離陸モードとなっている飛行体を一つ選択し、ステップS1406へ移行する。
【0085】
≪ステップS1406≫
ステップS1406ではステップS1405で選択された飛行体の離着陸場130から離陸経路へ移動するための経路に対して専有領域を設定し、ステップS1407へ移行する。
【0086】
≪ステップS1407≫
ステップS1407では、全ての離陸モードとなっている飛行体の経路に専有領域が設定されていることをチェックし、設定されていればステップS1408へ移行し、設定されていない飛行体が存在すればステップS1405へ戻り上記の処理を繰り返す。
【0087】
≪ステップS1408≫
次にステップS1408において、着陸モードとなっている飛行体を一つ選択し、ステップS1409へ移行する。
【0088】
≪ステップS1409≫
ステップS1409では、ステップS1408で選択された着陸モードの飛行体の離着陸場130までの経路に対して専有領域を設定し、ステップS1410へ移行する。
【0089】
≪ステップS1410≫
ステップS1410では、全ての着陸モードとなっている飛行体の経路に専有領域が設定されていることをチェックし、設定されていればステップS1411へ移行し、設定されていない飛行体が存在すればステップS1408へ戻り上記の処理を繰り返す。
【0090】
≪ステップS1411≫
ステップS1411では、ステップS1403、ステップS1404、ステップS1406およびステップS1409のいずれかで専有領域が設定されていない飛行体に対して、優先順位順に専有領域を設定する。専有領域は重なりが無いよう、現在位置を含む経路に沿って設定する。全ての飛行体に対して専有領域が設定されればステップS1412へ移行する。
【0091】
≪ステップS1412≫
ステップS1412ではステップS1403、ステップS1404、ステップS1406、ステップS1409およびステップS1411のいずれかにおいて専有領域が設定された全ての飛行体に対して、設定された専有領域を通信機220を通して配信し、専有領域設定部の処理を終了する。
以上の処理により、離着陸位置に対して複数の飛行体を効率よく離着陸させることが可能となる。
【0092】
[第2実施形態]
第1実施形態では、閉塞待機場から離着陸場130にアプローチする方法について説明した。閉塞待機場は、着陸までに複数の閉塞待機場を経るため、閉塞待機場ごとの管理が必要であり、管制装置120による制御が煩雑となりがちである。第2実施形態では、この課題に対して、開放待機場について示す。
【0093】
待機場の上下の違いによって、飛行体の処理や機能に変更はなく、また管制装置120によって上空に設定される待機場が、図15に示されるような開放待機場であった場合でも大きな処理の差は生じない。第1実施形態との差異は、着陸の順序が経路追従を実施した時点で決定されており、専有領域の更新は緊急着陸およびアプローチのキャンセル時のみである点が異なる。第2実施形態では、経路の形状についてのみ記す。
【0094】
図15は、らせん状に開いた開放待機場を設定した場合の例である。
管制装置120の飛行体位置管理部221は、離着陸場130の上方に離着陸場130を中心として離着陸場130から上方に移行するにしたがって水平方向に離れる方向にらせん状に連続する1本の開放待機場1511を生成する。そして、開放待機場1511上に複数の飛行体100を並べて待機させる。
【0095】
開放待機場1511のらせん状は、第1実施形態における円状の閉塞待機場を複数設定する場合と同様に、上下に重なることなく、飛行体同士の距離も保つように設計可能である。また、全ての飛行体を1本のラインで離着陸場130まで誘導可能であり、専有領域の設定が容易となる。また、着陸経路と離陸経路を2重らせんに設計すれば、2本の経路のみで安全かつ高密度な離着陸を実現できる。
【0096】
図16は、放射状に開いた経路を複数設定した場合の例である。
管制装置120の飛行体位置管理部221は、離着陸場130の上方に離着陸場130を中心として離着陸場130から上方に移行するにしたがって水平方向に離れる方向に放射状に延びる複数の開放待機場1611~1614を生成し、複数の開放待機場1611~1614上に複数の飛行体100を並べて待機させる。
【0097】
放射状に延びる複数の開放待機場1611~1614は、上下に重なることなく、飛行体同士の距離も保つように設計可能である。また、飛行体100を開放待機場1611~1614に沿って下降させることによって、離着陸場130まで誘導可能であり、専有領域の設定が容易となる。また、複数の開放待機場1611~1614を着陸経路と離陸経路に分けて設定することによって、複数の飛行体の安全かつ高密度な離着陸を実現できる。
【0098】
また、第1実施形態と同様に、図15に示す開放待機場1511上、あるいは、図16に示す開放待機場1611~1614上に複数の飛行体100を配置した状態で、離着陸場130から垂直方向に延びる垂直線を中心軸として図15に示す開放待機場1511、あるいは、図16に示す開放待機場1611~1614を旋回させる設定としてもよい。開放待機場1511等を旋回させるにより、待機場に配置されている複数の飛行体100を水平方向に動かし続けることができる。したがって、ボルテックス・リング・ステートの発生を防いで、飛行体を安定して飛行待機させることができる。
【0099】
以上に説明した離着陸制御を実行することによって、少なくとも、複数の飛行体が(1)密に一つの離着陸場130へアプローチする場合、或いは(2)着陸順序を入れ替える必要が生じた場合のいずれかにおいて、飛行体を安全かつ高効率に離着陸させることができるようになる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
100、201、202・・・飛行体、120・・・管制装置、130・・・離着陸場、221・・・飛行体位置管理部、223・・・専有領域設定部、511、512、513・・・閉塞待機場、1511、1611、1612、1613、1614・・・開放待機場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16