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  • 特開-クラフト粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068647
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】クラフト粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20230510BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230510BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174713
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021179838
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】成松 清士郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 信人
(72)【発明者】
【氏名】津村 健輔
(72)【発明者】
【氏名】林 研太
(72)【発明者】
【氏名】目黒 光行
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA04
4J004AA05
4J004AB01
4J004CA02
4J004CA04
4J004CC03
4J004FA06
4J040CA011
4J040DM011
4J040JB09
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】高い基材強度と優れた手切れ性を両立し、かつ環境負荷を低減させたクラフト粘着テープを提供すること。
【解決手段】一軸延伸オレフィンフィルムと、該一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面に設けられたクラフト紙とを備える基材と、該基材の表面上に設けられる粘着剤層とを備えるクラフト粘着テープであって、MD方向及びTD方向の引張強度が共に65N/24mm以上であり、引張強度(N/mm)を前記一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がMD方向、TD方向で共に150N/mm以上であり、クラフト粘着テープ1mあたりの基材におけるプラスチック使用量が40g/m以下である、クラフト粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸オレフィンフィルムと、該一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面に設けられたクラフト紙とを備える基材と、該基材の表面上に設けられる粘着剤層とを備えるクラフト粘着テープであって、
MD方向及びTD方向の引張強度が共に65N/24mm以上であり、
引張強度(N/mm)を前記一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がMD方向、TD方向で共に150N/mm以上であり、
クラフト粘着テープ1mあたりの基材におけるプラスチック使用量が40g/m以下である、クラフト粘着テープ。
【請求項2】
前記一軸延伸オレフィンフィルムが一軸延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項1に記載のクラフト粘着テープ。
【請求項3】
前記一軸延伸オレフィンフィルムがTD方向に延伸されたものである、請求項1又は2に記載のクラフト粘着テープ。
【請求項4】
前記一軸延伸オレフィンフィルムのMD方向の引張強度が20MPa以上であり、TD方向の引張強度が150MPa以上である、請求項1又は2に記載のクラフト粘着テープ。
【請求項5】
前記一軸延伸オレフィンフィルムの120℃で12分加熱した際のTD方向の熱収縮率が2.0%以下であり、120℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率が3.0%以下である、請求項1又は2に記載のクラフト粘着テープ。
【請求項6】
前記基材のバイオベース度が45%以上である、請求項1又は2に記載のクラフト粘着テープ。
【請求項7】
SP粘着力が4N/24mm以上である、請求項1又は2に記載のクラフト粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフト粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
重量物の梱包用途として使用可能な基材強度を有し、かつ手切れ性に優れるテープとして、布テープやクロステープが一般的に用いられている。
しかしながら、近年、環境問題の観点から、石油等の化石資源系材料の使用量削減が望まれており、プラスチック使用量多い布テープやクロステープに代わる材料が求められている。そこで、クラフト紙を備えるクラフト粘着テープの使用が考えられる。
【0003】
クラフト粘着テープは、例えば段ボール箱等で各種内容物を梱包するために用いられている。クラフト粘着テープは、一般に、クラフト紙の一方の面にポリエチレンなどの樹脂層、クラフト紙の他方の面に粘着剤層が積層されており、さらに樹脂層の表面には離型剤層が設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリエチレン樹脂層の耐熱性を向上させる観点などから、特定の構造のポリエチレン樹脂によりポリエチレン樹脂層を形成するクラフト紙粘着テープの製造方法に関する発明が記載されている。
特許文献2では、独立気泡が無数に形成された粘着剤層を有する粘着テープを製造する方法として、クラフト紙などの基材の片面に揮散性物質を付与する工程と、揮散性物質が付与された面に粘着剤を塗工する工程と、揮発性物質をガス化することにより粘着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程を備える方法が開示されている。
特許文献3では、手切れ性に優れる粘着テープとして、特定の組成のポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物を横一軸延伸した基材を具備する粘着テープに関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3704274号公報
【特許文献2】特開平10-140107号公報
【特許文献3】特許第5022585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のクラフト粘着テープでは、高い基材強度と優れた手切れ性を両立することが難しいため、重量物の梱包には、プラスチック使用量の多い布テープやクロステープの方が適すると考えられるが、これら布テープやクロステープは、環境負荷の観点から改善の余地があった。
そこで、本発明は、高い基材強度と優れた手切れ性を両立し、かつ環境負荷を低減させたクラフト粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した。その結果、一軸延伸オレフィンフィルムを含む基材を備えるクラフト粘着テープであって、引張強度が一定以上であり、引張強度を上記フィルムの厚みで除した値が一定以上であり、かつ単位面積あたりの基材におけるプラスチック使用量が一定以下であるクラフト粘着テープにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下の[1]~[7]の通りである。
【0008】
[1]一軸延伸オレフィンフィルムと、該一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面に設けられたクラフト紙とを備える基材と、該基材の表面上に設けられる粘着剤層とを備えるクラフト粘着テープであって、MD方向及びTD方向の引張強度が共に65N/24mm以上であり、引張強度(N/mm)を前記一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がMD方向、TD方向で共に150N/mm以上であり、クラフト粘着テープ1mあたりの基材におけるプラスチック使用量が40g/m以下である、クラフト粘着テープ。
[2]前記一軸延伸オレフィンフィルムが一軸延伸ポリプロピレンフィルムである、上記[1]に記載のクラフト粘着テープ。
[3]前記一軸延伸オレフィンフィルムがTD方向に延伸されたものである、上記[1]又は[2]に記載のクラフト粘着テープ。
[4]前記一軸延伸オレフィンフィルムのMD方向の引張強度が20MPa以上であり、TD方向の引張強度が150MPa以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のクラフト粘着テープ。
[5]前記一軸延伸オレフィンフィルムの120℃で12分加熱した際のTD方向の熱収縮率が2.0%以下であり、120℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率が3.0%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のクラフト粘着テープ。
[6]前記基材のバイオベース度が45%以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のクラフト粘着テープ。
[7]SP粘着力が4N/24mm以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のクラフト粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い基材強度と優れた手切れ性を両立し、かつ環境負荷を低減させたクラフト粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るクラフト粘着テープを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[クラフト粘着テープ]
本発明のクラフト粘着テープは、一軸延伸オレフィンフィルムと、該一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面に設けられたクラフト紙とを備える基材と、該基材の表面上に設けられる粘着剤層とを備えるクラフト粘着テープに関するものである。本発明のクラフト粘着テープは、MD方向及びTD方向の引張強度が共に65N/24mm以上であり、引張強度(N/mm)を前記一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がMD方向、TD方向で共に150N/mm以上であり、クラフト粘着テープ1mあたりの基材におけるプラスチック使用量が40g/m以下である。
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るクラフト粘着テープについて詳細に説明する。なお、本発明のクラフト粘着テープは図面の内容に限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係るクラフト粘着テープ20は、基材21と、該基材21の表面上に設けられる粘着剤層25とを備える。基材21は、一軸延伸オレフィンフィルム23と、該一軸延伸オレフィンフィルム23の一方の面に設けられたクラフト紙22とを備えている。基材21が一軸延伸オレフィンフィルム23を備えることで、後述するようにクラフト粘着テープ20の手切れ性が向上する。基材21は、一軸延伸オレフィンフィルム23及びクラフト紙22以外の他の層を備えていてもよいが、一軸延伸オレフィンフィルム及びクラフト紙22のみで構成されることが好ましい。
粘着剤層25はクラフト紙22の表面に配置されることが好ましく、クラフト紙22の粘着剤層25と接触する面とは反対側の面に一軸延伸オレフィンフィルム23が設けられる。
また、基材21の粘着剤層25と接触する面とは反対側の面に離型剤層24が設けられることが好ましい。クラフト粘着テープ20は、粘着剤層25、クラフト紙22、一軸延伸オレフィンフィルム23、離型剤層24がこの順に積層された多層構造体である。
【0013】
<引張強度>
本発明のクラフト粘着テープのMD方向及びTD方向の引張強度(N/24mm)は共に65N/24mm以上である。該引張強度(N/24mm)が65N/24mm未満であると、クラフト粘着テープを重量物の梱包用に使用した場合に、テープが破れやすくなる。
クラフト粘着テープのMD方向及びTD方向の引張強度(N/24mm)は共に、100N/24mm以上であることが好ましく、150N/24mm以上であることがより好ましい。
クラフト粘着テープのMD方向及びTD方向の引張強度(N/24mm)の上限値は、特に限定されないが、手切れ性を良好にする観点などから、例えば600N/24mmである。
引張強度は、MD方向及びTD方向にそれぞれ伸長させたときの破断時の強度を意味し、JIS K7161に準拠して引張試験機を用い、測定温度23℃湿度50%、試験速度300mm/minの条件で引張試験を行うことにより測定することができる。
本明細書において、「MD方向」とは、Machine Directionの略であり、「TD方向」とは、Transverse Directionの略である。
クラフト粘着テープのMD方向は、製造時の押出方向等と一致する方向を意味する。TD方向は、MD方向に直交しかつクラフト粘着テープに平行な方向を意味する。
クラフト粘着テープがロール状に巻回された巻回体である場合は、クラフト粘着テープの長手方向がMD方向となり、該MD方向に直交しかつクラフト粘着テープに平行な方向がTD方向である。
【0014】
<引張強度/一軸オレフィンフィルムの厚み>
本発明のクラフト粘着テープは、引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がMD方向、TD方向で共に150N/mm以上である。
すなわち、言い換えると、クラフト粘着テープのMD方向の引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値、及びクラフト粘着テープのTD方向の引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値が共に150N/mm以上である。
引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値が、MD方向及びTD方向の少なくともいずれかで150N/mm未満であると、プラスチック使用量を低減しつつ、基材強度を高めることが難しくなる。
なお、引張強度(N/mm)は上記した引張強度(N/24mm)を24で割った値である。
【0015】
引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値は、MD方向、TD方向で共に、好ましくは170N/mm以上であり、より好ましくは190N/mm以上である。
クラフト粘着テープの引張強度(N/mm)を一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値がこのように大きい場合は、一軸延伸オレフィンフィルムの厚みを薄くしてもクラフト粘着テープの引張強度を高くできるため、プラスチック使用量を低減しつつ、基材強度を高めることができる。
引張強度(N/mm)を前記一軸延伸オレフィンフィルムの厚み(mm)で除した値の上限値は特に限定されないが、手切れ性を良好にする観点などから、例えば1000N/mmである。
【0016】
<プラスチック使用量>
本発明におけるクラフト粘着テープは、1mあたりの基材におけるプラスチック使用量が40g/m以下である。該プラスチック使用量が40g/m超であると、クラフト粘着テープの環境負荷が大きくなる。
環境負荷低減の観点から、クラフト粘着テープの1mあたりの基材におけるプラスチック使用量は好ましくは38g/m以下であり、より好ましくは37g/m以下であり、そして一定の基材強度を確保する観点から、好ましくは15g/m以上である。
なお、1mあたりの基材におけるプラスチック使用量とは、クラフト粘着テープの面積1mあたりの基材におけるプラスチック使用量を意味する。また基材におけるプラスチック使用量とは、基材が一軸延伸オレフィンフィルムとクラフト紙のみからなる場合は、一軸延伸オレフィンフィルムの使用量を意味し、基材が一軸延伸オレフィンフィルム以外の他のプラスチック層を有している場合は、一軸延伸オレフィンフィルムと他のプラスチック層の合計の使用量を意味する。
プラスチック使用量は、例えば、クラフト粘着テープから基材に使用されているプラスチック以外の成分を溶剤で除去することで算出できる。
【0017】
<バイオベース度>
本発明のクラフト粘着テープの基材のバイオベース度は45%以上であることが好ましい。基材のバイオベース度が45%以上であると、化石資源系材料の使用量が相対的に少なくなり、環境負荷が低減される。クラフト粘着テープの基材のバイオベース度は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは54%以上である。
なお、バイオベース度は、ASTM D6866に準拠して測定される値であり、質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。
【0018】
<SP粘着力>
本発明のクラフト粘着テープのSP粘着力は、好ましくは4N/24mm以上である。SP粘着力が4N/24mm以上であると、クラフト粘着テープの梱包性能が向上する。クラフト粘着テープのSP粘着力は、好ましくは6N/24mm以上、より好ましくは8N/24mm以上である。クラフト粘着テープのSP粘着力の上限値は特に限定されるものではないが、実用的にはSP粘着力は30N/24mm以下である。クラフト粘着テープのSP粘着力は、粘着剤層の組成などにより調整することができる。SP粘着力は、JIS Z0237:2009に準じて測定される180°引きはがし粘着力である。
【0019】
<ボールタック値>
本発明のクラフト粘着テープのボールタック値は、好ましくは8以上である。ボールタック値が8未満であると、クラフト粘着テープの梱包性能が低下する。梱包性能を向上させる観点から、クラフト粘着テープのボールタック値は、より好ましくは9以上であり、さらに好ましくは10以上であり、そして実用的には30以下である。
なお、ボールタック値はJIS Z0237:2009に準拠して、傾斜角度30°でクラフト粘着テープの粘着剤層に対して測定される値である。
【0020】
<一軸延伸オレフィンフィルム>
本発明のクラフト粘着テープは、基材に一軸延伸オレフィンフィルムを備えている。一軸延伸フィルムを備えることで、クラフト粘着テープの手切れ性が向上する。
一軸延伸オレフィンフィルムとしては、フィルムダイを通じて押出された未延伸オレフィンフィルムをロール延伸によりMD方向に延伸したフィルム(縦一軸延伸フィルム)、又は該未延伸オレフィンフィルムをテンター延伸によりTD方向に延伸されたフィルム(横一軸延伸フィルム)が挙げられる。中でも、一軸延伸オレフィンフィルムは、TD方向に延伸されたフィルム(横一軸延伸フィルム)であることが好ましい。
一軸延伸オレフィンフィルムはその延伸方向を、クラフト粘着テープのTD方向になるようには配置するとよい。このようにすることで、クラフト粘着テープのTD方向の手切れ性が高まり、使用し易くなる。
一軸延伸オレフィンフィルムの延伸方向の延伸倍率は、特に制限されないが、例えば2~20倍である。
【0021】
一軸延伸オレフィンフィルムは、原料としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を使用したフィルムであれば特に制限されないが、原料としてポリプロピレンを使用した、一軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。一軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することで、上記した引張強度、引張強度を一軸延伸オレフィンフィルムの厚みで除した値、及びプラスチック使用量の各種パラメーターを所望の範囲に調整しやすくなる。
【0022】
一軸延伸オレフィンフィルムのMD方向の引張強度は、好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは30MPa以上であり、さらに好ましくは35MPa以上である。一軸延伸オレフィンフィルムTD方向の引張強度は好ましくは150MPa以上であり、より好ましくは170MPa以上である。
一軸延伸オレフィンフィルムのMD及びTD方向の引張強度がこれら下限値以上であると、基材強度が高まり、クラフト粘着テープを重量物の梱包に使用し易くなる。
【0023】
一軸延伸オレフィンフィルムの120℃で12分加熱した際のTD方向の熱収縮率は、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.8%以下である。また一軸延伸オレフィンフィルムの120℃で5分加熱した際のMD方向の熱収縮率は、好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.5%以下である。一軸延伸オレフィンフィルムの熱収縮率が小さいと、クラフト粘着テープの耐熱性が向上する。
なお、TD方向及びMD方向の熱収縮率は、MD方向の長さが50mm、TD方向の長さが50mmの一軸延伸オレフィンフィルムをサンプルとして用いて、以下の式により求められる。
TD方向の熱収縮率(%)=[(加熱前のTD方向の長さ-加熱後のTD方向の長さ)/加熱前のTD方向の長さ]×100
MD方向の熱収縮率(%)=[(加熱前のMD方向の長さ-加熱後のMD方向の長さ)/加熱前のMD方向の長さ]×100
なお、加熱後のTD方向の長さ及び加熱後のMD方向の長さは、等間隔に10点測定した値の平均値として求める。
【0024】
一軸延伸オレフィンフィルムの厚みは特に限定されないが、例えば5~100μmであり、好ましくは10~70μmであり、より好ましくは20~50μmである。一軸延伸オレフィンフィルムの厚さがこれら下限値以上であると基材強度が高まり、上限値以下であるとプラスチック使用量を低減させることができる。
【0025】
<クラフト紙>
本発明のクラフト粘着テープが備える基材は、上記した一軸延伸オレフィンフィルムと、該一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面に設けられたクラフト紙とを備える。クラフト紙を用いることにより、梱包用などとして好適に使用できる粘着テープとなる。
クラフト紙としては、例えば、未晒クラフト紙、半晒クラフト紙、晒クラフト紙、これらに伸長性を付与するためにクルパック加工が施されたもの、また、これらに湿潤強度を付与するためにウェットストレングス加工が施されたもの等が挙げられる。
クラフト紙の厚みは特に限定されるものではないが、坪量で10g/m以上150g/m以下であることが好ましく、40g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。
クラフト粘着テープの基材の全体の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下である。
【0026】
一軸延伸オレフィンフィルムの一方の面にクラフト紙を設ける方法としては、特に限定されないが、一軸延伸オレフィンフィルムとクラフト紙とを接着剤により積層する方法が挙げられる。具体的には、一軸延伸オレフィンフィルム及びクラフト紙のいずれか一方の片面に接着剤を塗布し、該接着剤上に他方を貼付して積層するとよい。
該接着剤としては、公知の接着剤が特に制限なく使用することができ、たとえばウレタン系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
【0027】
<粘着剤層>
以下、クラフト粘着テープを構成する粘着剤層について説明する。
【0028】
(ゴム成分)
粘着剤層は、ゴム成分を含有する。ゴム成分は、天然ゴムであってもよいし、天然ゴム以外のゴムであってもよい。天然ゴムを使用する場合は、化石資源系材料の使用量が低減され、環境負荷が抑制されたクラフト粘着テープを提供することができる。
天然ゴムは、主として天然植物から得られるゴム状の高分子物質であり、例えば、スモークドシート、ペールクレープ、エアドライドシート、スキムラバー、SPラバー、TCラバー、MGラバーなどが挙げられる。
【0029】
天然ゴムのムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは20~120であり、より好ましくは30~100であり、さらに好ましくは40~85である。天然ゴムのムーニー粘度がこれら下限値以上であると、クラフト粘着テープの粘着力が高まり、梱包性能が向上する。一方、天然ゴムのムーニー粘度がこれら上限値以下であると、クラフト粘着テープを製造する際の加工性が向上する。
なお、本明細書においてムーニー粘度とは、100℃におけるムーニー粘度であり、JIS K6300-2013に準拠して測定される。
【0030】
ゴム成分は、天然ゴム以外のゴムを含んでもよい。天然ゴム以外のゴムとしては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロスルホン化ポリエチレン、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、中でも、熱可塑性エラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレンとイソプレンをブロック共重合化したスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく使用され、具体的にはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)等が挙げられ、中でもSISがより好ましい。
【0031】
粘着剤層全量基準におけるゴム成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは20~70質量%である。
【0032】
(粘着付与樹脂)
粘着剤層は、上記したゴム成分に加えて、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。粘着付与樹脂を含有することにより、粘着剤層の粘着性能が向上する。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂などが挙げられ、これらの中では石油樹脂が好ましい。粘着剤層における粘着付与樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上200質量部以下、好ましくは50質量部以上150質量部以下である。
【0033】
(軟化剤)
粘着剤層は、軟化剤を含有してもよい。粘着剤層は、軟化剤を含有することで、軟化して、塗布性、粘着性能などを良好にしやすくなる。軟化剤としては、パラフィンオイル、ナフテンオイルなどの鉱油(プロセスオイルとも呼ばれる)、液状ポリブテン、液状ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレートなどが挙げられる。粘着剤層における軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば5質量部以上80質量部以下、好ましくは10質量部以上50質量部以下である。
【0034】
粘着剤層は、上記以外にも、充填材、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、顔料等の粘着剤層に使用される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0035】
(厚み)
粘着剤層の厚さは特に制限されないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。粘着剤層の厚みがこれら下限値以上であると、粘着性能を確保しやすくなる。一方、粘着剤層の厚みがこれら上限値以下であると、粘着剤の使用量を少なくすることができる。
【0036】
<離型剤層>
本発明のクラフト粘着テープは、基材の粘着剤層が設けられる面とは反対側の面に、離型剤層が設けられることが好ましい。離型剤層が設けられることで、クラフト粘着テープをロール状に巻回して巻回体とする際、粘着剤層が離型剤層に接触することになる。そのため、クラフト粘着テープを巻回体から容易に繰り出すことが可能になる。
離型剤層は、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤などの公知の離型剤より形成すればよい。離型剤層の厚さは、特に限定されないが、その付着量が例えば0.1g/m以上10g/m以下、好ましくは0.3g/m以上5g/m以下程度となるように調製すればよい。
【0037】
クラフト粘着テープは、上記のとおり、ロール状に巻回して巻回体とするとよい。クラフト粘着テープは、例えば巻芯を中心にロール状に巻回するとよい。巻回体とする場合には、粘着剤層が内側、離型剤層が外側になるように巻回すればよく、それにより、巻回体の最外周面を離型剤層にできる。また、クラフト粘着テープは、巻回体とすることで梱包用の粘着テープなどとして好適である。
勿論、クラフト粘着テープは巻回体とする必要はなく、シート状のままとしてもよい。そのような場合、粘着剤層の表面には、粘着剤層を保護するための離型シートなどを貼付してもよく、また、離型剤層は適宜省略するとよい。
【0038】
[クラフト粘着テープの製造方法]
本発明のクラフト粘着テープにおける粘着剤層は、ゴム成分を含有する粘着剤組成物により製造することが好ましい。また、該粘着剤組成物は、必要に応じて、上記した粘着付与樹脂、軟化剤、添加剤等を含んでもよい。粘着剤組成物におけるゴム成分100質量部に対する粘着付与樹脂の量及び軟化剤の量などは、上記した粘着剤層中の量と同様である。
【0039】
粘着剤組成物は、溶剤によって希釈された溶剤希釈型であってもよいし、溶剤によって希釈されずにホットメルト型となってもよいが、ホットメルト型が好ましい。ホットメルト型とすることで、有機溶剤の使用量を削減でき、環境負荷を低減することができる。
粘着剤組成物の積層方法は、特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ホットメルトコーター等を用いて、粘着剤組成物を基材に直接塗工する方法が挙げられる。
【実施例0040】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0042】
<引張強度、伸び>
実施例及び比較例の各粘着テープ及び一軸延伸オレフィンフィルムの引張強度及び伸び(引張伸び)は、JIS K7161に準拠して、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、商品名「テンシロン万能材料試験機」)を用いて、測定温度23℃湿度50%、試験速度300mm/minの条件で引張試験を行うことにより測定した。
【0043】
<プラスチック使用量>
実施例及び比較例の各粘着テープから基材中のプラスチックのみを取り出してプラスチック使用量を求めた。具体的には、有機溶剤(トルエン)により粘着剤及び離型剤を除去し、さらに水酸化ナトリウムによりクラフト紙を除去して、プラスチックのみを取り出し重量を測定した。該プラスチックの重量から、クラフト粘着テープの面積1mあたりの基材におけるプラスチック使用量(g/m)を求めた。
【0044】
<バイオベース度>
クラフト粘着テープの基材のバイオベース度は、ASTM D6866に準拠して測定した。基材のバイオベース度は、クラフト粘着テープから粘着剤層及び離型剤層を除いた部分のバイオベース度である。
【0045】
<手切れ性>
クラフト粘着テープの手切れ性を以下の基準で評価した。
◎・・基材が容易に直線的に切れた
〇・・基材が直線的に切れた
△・・基材が直線的に切れなかった
【0046】
<SP粘着力>
室温(23℃)、相対湿度50%の環境下で、各テープの粘着剤層側をSUS 304鋼板に2kgのローラで2往復させて圧着させた。この環境下で30分放置した後、JIS Z0237の方法に準じて、24mm幅における180°剥離強度を、引張試験機にて引張速度300mm/分の条件で測定し、これをSP粘着力とした。
【0047】
<ボールタック値>
JISZ 0237:2009に準拠して、傾斜角度30°で粘着剤層のボールタック値を測定した。
【0048】
<展開力>
1cm幅の各テープの巻重体を30m/分の速度で巻き戻したときに要する力(N/cm)を測定し、これを展開力とした。
【0049】
<引裂強度>
クラフト粘着テープのTD方向の引裂強度(N)を、JIS K7128に準拠して測定した。
【0050】
<原料>
実施例のクラフト粘着テープの原料として以下のものを用いた
(粘着剤層の原料)
・スチレン―イソプレンースチレン・ブロック共重合体(JSR株式会社製、商品名「SIS5506」)
・天然ゴム RSS1級、素練り、ムーニー粘度80
【0051】
・石油樹脂(日本ゼオン株式会社製、商品名「クイントンA-100」)
・プロセスオイル(JXTGエネルギー株式会社製、商品名「クリセフオイルF220」)
・炭酸カルシウム(日東粉化工業社製 NS#100)
・老化防止剤(吉富製薬株式会社製、商品名「ヨシノックス425」)
【0052】
・一軸延伸ポリプロピレンフィルムA(東洋紡株式会社製、商品名「パイレン(登録商標)OT」 P4748)厚み25μm、MD方向引張強度35MPa、TD方向引張強度180MPa、MD方向熱収縮率(120℃、5分)2.4%、TD方向熱収縮率(120℃、12分)1.7%、TD方向に延伸されたフィルム
・一軸延伸ポリプロピレンフィルムB(東洋紡株式会社製、商品名「パイレン(登録商標)OT」 P4748) 厚み40μm、MD方向引張強度35MPa、TD方向引張強度180MPa、MD方向熱収縮率(120℃、5分)2.4%、TD方向熱収縮率(120℃、12分)1.7%、TD方向に延伸されたフィルム
【0053】
[実施例1]
クルパック加工およびウェットストレングス加工が施された坪量70g/mの未晒クラフト紙の片面に、ウレタン系接着剤により、一軸延伸ポリプロピレンフィルムAをラミネートし、クラフト紙と一軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材を得た。
得られた基材の一軸延伸ポリプロピレンフィルムAの上に、シリコーン系離型剤を乾燥後の付着量が1g/mとなるように塗布し乾燥して、基材の裏面に離型剤層を形成した。次いで、表1に示すゴム成分、粘着付与樹脂、軟化剤、及び添加剤を含む粘着剤組成物Aを基材のクラフト紙の表面にホットメルトコーターにより積層し、粘着剤層を形成させ、クラフト粘着テープを製造した。なお、上記粘着剤組成物Aは、溶剤によって希釈されていない無溶剤型であり、環境負荷を低減することができる。評価結果を2に示した。
【0054】
[実施例2]
一軸延伸ポリプロピレンフィルムAの代わりに一軸延伸ポリプロピレンフィルムBを使用した以外は、実施例1と同様にしてクラフト粘着テープを製造した。評価結果を表2に示した。
【0055】
[実施例3]
表1に示す粘着剤組成物Aの代わりに粘着剤組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様にしてクラフト粘着テープを製造した。なお、上記粘着剤組成物Bは、溶剤によって希釈されていない無溶剤型であり、環境負荷を低減することができる。評価結果を2に示した。
【0056】
[比較例1]
クラフト粘着テープ(積水化学工業社製「#500」)を用いた。該クラフト粘着テープは、クラフト紙の一方の面に未延伸のポリエチレン樹脂層および離型剤層が設けられ、他方の面にゴム成分を含有する粘着剤層が設けられている。該粘着剤層は、表1の粘着剤組成物Aにより形成されたものである。粘着テープの構成及び評価結果を表2に示した。
【0057】
[比較例2]
クラフト紙の一方の面に一軸延伸ポリエチレンフィルム(デンカ株式会社製、商品名「カラリヤンY」)および離型剤層が設けられ、他方の面にゴム成分を含有する粘着剤層が設けられているクラフト粘着テープを用いた。該粘着剤層は、表1の粘着剤組成物Aにより形成されたものである。粘着テープの構成及び評価結果を表2に示した。
なお、使用した一軸延伸ポリエチレンフィルムの詳細は以下の通りである。
一軸延伸ポリエチレンフィルム(デンカ株式会社製、商品名「カラリヤンY」) 厚み18μm、MD方向引張強度30MPa、TD方向引張強度220MPa、熱収縮率(100℃、10分)3%
【0058】
[比較例3]
布テープ1(積水化学工業株式会社製「#600A」)を用いた。該布テープ1は、PETクロスの一方の面に未延伸のポリエチレン樹脂層および離型剤層が形成され、他方の面にゴム成分を含有する粘着剤層が形成された布テープである。該粘着剤層は、表1の粘着剤組成物Bにより形成されたものである。テープの構成及び評価結果を表2に示した。
【0059】
[比較例4]
布テープ2(積水化学工業株式会社製「#600M」)を用いた。該布テープ2は、PETクロスの両面に未延伸のポリエチレン樹脂層が設けられ、一方のポリエチレン樹脂層上に離型剤層設けられ、他方のポリエチレン樹脂層上にゴム成分を含有する粘着剤層が形成された布テープである。該粘着剤層は、表1の粘着剤組成物Bにより形成されたものである。テープの構成及び評価結果を表2に示した。
【0060】
[比較例5]
クロステープ1(積水化学工業株式会社製「#750」)を用いた。該クロステープ1は、PETクロスの一方の面に未延伸のポリエチレン樹脂層および離型剤層が設けられ、他方の面にゴム成分を含有する粘着剤層が形成されたクロステープである。該粘着剤層は、表1の粘着剤組成物Bにより形成されたものである。テープの構成及び評価結果を表2に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
実施例1~3のクラフト粘着テープは、引張強度が高く、基材強度に優れており、重量物の梱包に適する。さらに、手切れ性も良好であり、さらにプラスチック使用量も少ないため環境負荷が小さいクラフト粘着テープである。
比較例1のクラフト粘着テープは、プラスチック使用量が少なく環境負荷は少ないものの、手切れ性が悪かった。これは基材として一軸延伸オレフィンフィルムを使用していないからと考えられる。
比較例2~5の粘着テープは、手切れ性は良好であったが、プラスチック使用量が多く環境負荷が大きかった。
【符号の説明】
【0064】
20 クラフト粘着テープ
21 基材
22 クラフト紙
23 一軸延伸オレフィンフィルム
24 離型剤層
25 粘着剤層
図1