特開 2023-68874 電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023068874

(43)【公開日】2023-05-18

(54)【発明の名称】電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法

(51)【国際特許分類】

   G01S 3/16 20060101AFI20230511BHJP

【ＦＩ】

G01S3/16

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021180288

(22)【出願日】2021-11-04

(71)【出願人】

【識別番号】000003078

【氏名又は名称】株式会社東芝

(71)【出願人】

【識別番号】598076591

【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001737

【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】栗原 秀輔

(72)【発明者】

【氏名】大木 秀実

(72)【発明者】

【氏名】升田 康晴

(72)【発明者】

【氏名】平山 和宏

(57)【要約】

【課題】干渉波が混在する環境下でも、所望波の検出及び到来方向推定の精度に対する干渉波の影響を軽減する。
【解決手段】実施形態に係る電波発射源監視装置は、信号受信部で到来波及び所望波の信号を受信し、受信した信号に対して信号処理部で信号処理を実施し、その信号処理結果を表示部に表示する。前記信号処理部は、データベース部に予め前記所望波の信号の諸元を記憶しておき、信号解析部において、前記信号受信部で受信される信号から前記所望波の諸元を抽出し、前記データベース部に記憶される諸元の情報と比較して所望波の信号の判定を行い、到来方向推定部で、前記信号解析部の所望波の信号の判定結果に基づいて前記信号受信部で受信される信号の到来方向を推定する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

到来波及び所望波の信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部で受信した信号に対して信号処理を実施する信号処理部と、
前記信号処理部の信号処理結果を表示する表示部と
を具備し、
前記信号処理部は、
予め前記所望波の信号の諸元を記憶するデータベース部と、
前記信号受信部で受信される信号から前記所望波の諸元を抽出し、前記データベース部に記憶される諸元の情報と比較して所望波の信号の判定を行う信号解析部と、
前記信号解析部の所望波の信号の判定結果に基づいて前記信号受信部で受信される信号の到来方向を推定する到来方向推定部と
を備える電波発射源監視装置。

【請求項2】

前記信号解析部は、前記信号受信部で受信された信号の諸元を読み取って前記所望波の信号を類別可能な部位を前記データベース部に記憶される諸元の情報と比較することで前記所望波の信号であるか否かを判定し、
前記到来方向推定部は、前記信号解析部で前記所望波の信号であると判定された場合に、その中心周波数の情報を取得し、取得した中心周波数に基づいて前記到来方向推定を実施する
請求項１記載の電波発射源監視装置。

【請求項3】

前記表示部は、前記信号解析部で前記所望波の信号が検出されたとき、前記所望波の信号が検出されたことを表示する請求項１記載の電波発射源監視装置。

【請求項4】

前記信号受信部は、
前記到来波を常に受信するリファレンスアンテナと、
それぞれが前記到来波を受信する複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子で受信される信号のいずれか１つを選択的に切り替えて出力する切り替え器とを備える到来波受信アンテナと、
前記所望波を受信する所望波受信アンテナと
を備え、
前記信号解析部は、前記所望波受信アンテナで受信される信号について前記所望波の信号の判定を行い、
前記到来方向推定部は、前記信号解析部で所望波の信号と判定されたとき、前記リファレンスアンテナで受信される信号と前記到来波受信アンテナで前記アンテナ素子毎に受信される信号を用いて到来方向を推定する
請求項１記載の電波発射源監視装置。

【請求項5】

前記信号受信部は、
それぞれが前記到来波を受信する複数のアンテナ素子を備える到来波受信アンテナと、
前記所望波を受信する所望波受信アンテナと
を備え、
前記信号解析部は、前記所望波受信アンテナで受信される信号について前記所望波の信号の判定を行い、
前記到来方向推定部は、前記信号解析部で所望波の信号と判定されたとき、前記到来波受信アンテナで前記アンテナ素子毎に受信される信号を用いて到来方向を推定する
請求項１記載の電波発射源監視装置。

【請求項6】

さらに、前記複数のアンテナ素子それぞれで受信される信号を一時記憶する一時記憶部を備え、
前記信号受信部は、それぞれが前記到来波を受信する複数のアンテナ素子を備え、
前記信号解析部は、前記一時記憶部にされる信号のうち、代表とするアンテナ素子で受信される信号について前記所望波の信号の諸元を抽出し、前記データベース部に記憶される諸元の情報と比較して所望波の信号が含まれているかを判定し、
前記到来方向推定部は、前記信号解析部で所望波の信号が含まれている判定されたとき、解析に使用した信号と同じ時刻における、前記一時記憶部にされる前記アンテナ素子それぞれで受信される信号を用いて到来方向を推定する
請求項１記載の電波発射源監視装置。

【請求項7】

到来波及び所望波の信号を受信し、
受信された信号から前記所望波の諸元を抽出し、予め記憶される前記所望波の諸元の情報と比較して所望波の信号か否かを判定し、
前記所望波の信号と判定されたときの受信された信号の到来方向を推定し、
前記到来方向の推定結果を表示する
電波発射源監視方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明の実施形態は、電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、受信信号に対して所望波の検出処理を実施し、到来方向推定処理を行うことで、所望波の到来方向を推定する電波発射源監視装置の開発が進められている。ここで、実空間においては、所望波の他に干渉波が存在する。これに対して、従来では、サイドローブに入る干渉波を低減する手法は提案されているが、干渉波がメインローブに入った場合には、その干渉波に応答してしまう。特に、走査範囲に複数の到来波が存在する場合、所望波の信号以外の到来方向も算出してしまう。このように、従来の電波発射源監視装置では、干渉波の混在が、所望波の検出処理や到来方向の推定の精度に悪影響を及ぼしている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特許第６６２９９７８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

以上のように、従来の電波発射源監視装置では、干渉波の混在が、所望波の検出処理や到来方向の推定の精度に悪影響を及ぼしている。

【0005】

本発明の課題は、干渉波が混在する環境下でも、所望波の検出及び到来方向推定の精度に対する干渉波の影響を軽減することのできる電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記の課題を解決するために、実施形態に係る電波発射源監視装置は、信号受信部で到来波及び所望波の信号を受信し、受信した信号に対して信号処理部で信号処理を実施し、その信号処理結果を表示部に表示する。前記信号処理部は、データベース部に予め前記所望波の信号の諸元を記憶しておき、信号解析部において、前記信号受信部で受信される信号から前記所望波の諸元を抽出し、前記データベース部に記憶される諸元の情報と比較して所望波の信号の判定を行い、到来方向推定部で、前記信号解析部の所望波の信号の判定結果に基づいて前記信号受信部で受信される信号の到来方向を推定する。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】図１は、第１の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。

【図2】図２は、図１に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。

【図3】図３は、図１に示す電波発射源監視装置の動作例を示す図である。

【図4】図４は、第２の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。

【図5】図５は、第３の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。

【図6】図６は、第４の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。

【発明を実施するための形態】

【0008】

以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
（第１の実施形態）
図１は第１の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。図１において、１１は信号を受信する信号受信部、１２は信号受信部１１で受信した信号に対して信号処理を実施する信号処理部、１３は信号処理部１２による処理結果を表示画像として表示する表示部である。上記信号受信部１１は、到来電波を受信するアンテナ受信部１１１と、到来電波のうち所望波を受信する所望波受信部１１２とを備える。上記信号処理部１２は、予め所望波の諸元を記憶するデータベース部１２１と、所望波受信部１１２の受信信号から所望波の諸元を取得してデータベース部１２１の情報と比較判定する信号解析部１２２と、アンテナ受信部１１１の受信信号を入力し、信号解析部１２１の解析結果に基づいて入力した信号の到来方向を推定する到来方向推定部１２３とを備える。上記表示部１３は、上記信号処理部１２による処理結果を表示画像として表示する表示モニタ１３１を備える。

【0009】

図２は、図１に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。すなわち、上記構成による電波発射源監視装置では、図２に示すように、空間に所望波が存在すれば、所望波受信部１１２によって所望波を受信し（ステップＳ１）、信号解析部１２２によって受信した信号を解析してその信号の諸元を読み取る（ステップＳ２）。続いて、信号諸元のうち、所望波の信号の類別可能な部位を読み取り、所望波の信号であるか否かを判定する（ステップＳ３）。所望波でないと判定された場合には、ステップＳ１に戻って処理を行い、所望波の信号であることが確認できたら、受信処理を行ってその中心周波数を取得し（ステップＳ４）、取得した中心周波数に基づいて到来方向推定部１２４によって到来方向推定を実施し（ステップＳ５）、表示部１３の表示処理によって到来方向推定結果をモニタ表示する（ステップＳ６）。

【0010】

なお、上記所望波の信号か否かの判定で所望波の信号であると判定された場合には、所望波の信号を検出したことがわかる情報を表示部１３に通知し、表示部１３において、ユーザに所望波の信号を受信したことを知らせる表示を行うようにするとよい。

【0011】

以下、具体例をあげて説明する。

【0012】

アンテナ受信部１１１は、例えば、複数のアンテナ素子で構成されるアレーアンテナである。また、所望波受信部１１２は、所望波を受信するためのアンテナと受信部を具備する。ここで、所望波を、例えばあるMACアドレスと送信元および送信先IPアドレスを持つWiFiであるとする。データベース部１２１には、所望波の信号の諸元として、例えばWiFiのヘッダ情報に記載される送信元および送信先IPアドレスとMACアドレスとその所望波の名称が記憶される。信号解析部１２２は、例えばWiFiのヘッダに記載されるアドレス情報を取得し、所望波の信号のためのデータベース部１２１に記憶されている所望波の信号のアドレス情報と比較する。図３は、データベース部１２１に記憶される諸元とする、所望波の名称、送信元（Source）IPアドレス、送信先（Destination）IPアドレス、MACアドレスの例を示している。

【0013】

以上の説明では、所望波がWiFiの場合を例にとって説明したが、所望波の対象をWiFiに限定する必要はない。所望波の諸元は、信号の特定のパターンを使用することで、未知の信号であっても処理することができる。信号のパターンは、例えば、信号の内容を復調する場合、信号の公開部分を使用すればデータの内容が隠されていても判定することができ、データの内容にかかわらず適用できる。

【0014】

信号の公開部分は、例えば、同期用の部分や、宛先、送信元のアドレス、機材固有のアドレス、製造情報などを使用してもよい。また、信号のパターンとして信号の波形を選んでもよい。これは、例えば、振幅や位相、中心周波数、帯域幅のうちいずれか１つ以上の組み合わせとしてもよい。信号のパターンの判定処理は、例えば、データベース部１２１との比較、機械学習、相関処理によって実施する。

【0015】

所望波受信部１１２で受信した信号は信号解析部１２２で、所望波の信号であるか判定される。ここで、所望波を、例えばあるMACアドレスと送信元IPアドレスを持つWiFiであるとする。所望のWiFi信号であるか否かの判定は、所望信号データベースとの照合により実施する。例えば、wifiのヘッダに記載されるMACアドレスと送信元IPアドレスを取得し、所望波の信号のデータベース部１２１に記憶されているMACアドレスと送信元IPアドレスと比較する。比較した結果、WiFi信号が所望の信号であると判定された場合に、アンテナ部１１で受信した信号に対して到来方向推定処理を実施する。WiFi以外の信号をパターン判定した場合でも、同様の処理を適用することができる。

【0016】

ここで、所望波の信号を検出した場合に、表示画面に所望の信号を受信したことを表示してユーザに通知するようにするとよい。例えば、所望波をあるMACアドレスと送信元IPアドレスを持つWiFiであるとすれば、所望波の信号のデータベース部１２１の対応する所望波の名称をポップアップ表示する。

【0017】

以上のように、本実施形態によれば、全到来波から所望波を区別して受信し、所望波の諸元に基づいて比較検出して所望波を検出し、その到来方向を推定するようにしているので、干渉波が混在する環境下でも、所望波を確実に検出し、到来方向推定を精度よく実行することができる。

【0018】

（第２の実施形態）
図４は第２の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。図４において、図１と同一部分には同一符号を付して示す。図４に示す電波発射源監視装置は、図１に示す第１の実施形態と同様に、信号受信部１１、信号処理部１２、表示部１３を備える。ただし、上記信号受信部１１は、到来電波を受信するアンテナとして、リファレンスアンテナ１１３と、N個のアンテナ素子１～Ｎからなる受信アンテナ１１４、任意のアンテナ素子１～Ｎの受信出力を順次切り換えて信号処理部１２に導出する切り替え器１１５、所望波を受信して解析用に出力する所望波解析用アンテナ１１６を備える。

【0019】

また、上記信号処理部１２では、図１に示す第１の実施形態と同様に、データベース部１２１、信号解析部１２２を備え、さらに到来方向推定部１２４を備える。この到来方向推定部１２４は、図１に示す到来方向推定部１２３とは異なり、リファレンスアンテナ１１３で得られる到来電波の受信信号と切り替え器１１５で順に選択されるアンテナ素子それぞれの受信信号とを順次比較することで到来方向を推定する。

【0020】

上記構成において、信号受信部１１の1つのアンテナ素子（リファレンスアンテナ）１１３は常時受信処理する系に接続されている。また、受信アンテナ１１４のアンテナ素子１～Ｎは、切り替え部１１５により１からＮまで切り替えデータを取得する。所望波受信アンテナ１１６で受信したデータは、信号解析部１２２の解析に必要な諸元が抽出され、データベース部１２１の内容と照合される。その結果、所望波の信号であれば、アンテナ素子１～Ｎまでそれぞれの受信信号を順次切り替えて出力する。

【0021】

一方、リファレンスアンテナ１１３は、受信アンテナ１１４のアンテナ素子１～Ｎが受信している間、常に信号を受信する。信号処理部１２では、到来方向推定部１２４において、アンテナ素子１～Ｎで受信したデータとリファレンスアンテナ１１３で受信したデータを用いて到来方向推定処理を実施する。

【0022】

すなわち、信号受信部１１は、リファレンスアンテナ１１３と、Ｎ個のアンテナ素子（１～Ｎ）による受信アンテナ１１４とで構成されるアレーアンテナを備える。アンテナ素子（１～Ｎ）は切り替え器１１５に接続され、それぞれの受信信号は切り替え器１１５によって時間的に切り替えて信号処理部１２へと送られる。

【0023】

また、所望波解析用アンテナ１１６は、受信した信号を信号処理部１２の信号解析部１２２に送る。ここで、所望波を、例えばあるMACアドレスと送信元IPアドレスを持つWiFiであるとする。データベース部１２１には、予め所望波の信号に関するデータが記憶されており、例えば、WiFiのヘッダ情報に記載される送信元および送信先IPアドレスとMACアドレスとその所望波の名称が記憶される。

【0024】

信号解析部１２２は、例えば、WiFiのヘッダに記載されるアドレス情報を取得し、データベース部１２１に記憶されている所望波の信号のアドレス情報と比較する機能を有し、到来した信号が所望波解析用アンテナ１１６で受信されて信号解析部１２２へ送られると、信号解析部１２２では、受信した信号の諸元を取得し、データベース部１２１に予め記憶されている所望波の諸元と比較して所望波であるか否かを判定する。

【0025】

ここで、所望波を例えばWiFiとし、諸元を特定のMACアドレスおよびIPアドレスを持つ信号であるとする。そして判定の結果が、データベース部１２１に記憶される信号の諸元と一致したとする。このとき、信号解析部１２２は判定結果および一致した信号の諸元を表示部１３に対して送信すると共に、到来方向推定部１２４に到来方向推定処理を実施する指示を出す。

【0026】

これにより、到来方向推定部１２４では、受信アンテナ１１４のアンテナ素子１～Ｎを時間的に切り替えて受信した信号と、それと同じ期間にリファレンスアンテナ１１３で受信した信号の組み合わせを取得し、この信号の組み合わせを用いて到来方向推定処理を実施する。到来方向推定した結果は表示部１３に送信され、表示モニタ１３１に表示される。

【0027】

以上のように、本実施形態でも、全到来波を受信する一方で、所望波を区別して受信して所望波の諸元に基づいて受信した所望波を解析し、その全到来波の受信出力の中から所望波の受信信号を取り込んで、到来方向を推定するようにしているので、干渉波が混在する環境下でも、所望波を確実に検出し、到来方向推定を精度よく実行することができる。

【0028】

（第３の実施形態）
図５は第３の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。図５において、図１、図４と同一部分には同一符号を付して示す。図５に示す電波発射源監視装置は、図１に示す第１の実施形態と同様に、信号受信部１１、信号処理部１２、表示部１３を備える。ただし、上記信号受信部１１は、N個のアンテナ素子１～Ｎからなる受信アンテナ１１４と所望波解析用アンテナ１１６を備え、信号処理部１２は、信号解析部１２２からの指示によって、N個のアンテナ素子１～Ｎの受信信号から到来方向推定を実行する到来方向推定部１２５を備える。

【0029】

所望波解析用アンテナ１１６で受信したデータは、解析処理部１２２により解析に必要な諸元が抽出され、データベース部１２１の内容と照合される。その結果、所望の信号であれば、全てのアンテナ素子１～Ｎで受信し、それぞれのアンテナ素子１～Ｎで受信したデータを用いて到来方向推定処理を実施する。

【0030】

ここで、所望波を、例えばあるMACアドレスと送信元IPアドレスを持つWiFiであるとする。所望信号のデータベース部１２１には、例えば、WiFiのヘッダ情報に記載される送信元および送信先IPアドレスとMACアドレスとその所望波の名称が記憶される。信号解析部１２２は、例えば、WiFiのヘッダに記載されるアドレス情報を取得し、データベース部１２１に記憶されている所望信号のアドレス情報と比較する。

【0031】

すなわち、到来した信号は、所望波解析用アンテナ１１６で受信されて信号解析部１２１へ送られる。信号解析部１２２では、受信した信号の諸元を取得し、データベース部１２１に予め記憶されている所望波の諸元と比較して所望波であるか否かを判定する。

【0032】

ここで、所望波を例えばWiFiとし、諸元を特定のMACアドレスおよびIPアドレスを持つ信号であるとする。そして判定の結果が、データベース部１２１の信号と一致したとする。このとき、信号解析部１２２は判定結果および一致した信号の諸元を表示部１３に対して送信する。

【0033】

また、信号解析部１２２は到来方向推定部１２５に推定処理を実施する指示を出す。アンテナ素子１～Ｎで受信した信号は到来方向推定処理部１２５へと送られ、到来方向推定処理が実施される。到来方向推定した結果は表示部１３に送信され、表示モニタ１３１に表示される。

【0034】

以上のように、本実施形態でも、全到来波を受信する一方で、所望波を区別して受信して所望波の諸元に基づいて受信した所望波を解析し、その全到来波の受信出力の中から所望波の受信信号を取り込んで、到来方向を推定するようにしているので、干渉波が混在する環境下でも、所望波を確実に検出し、到来方向推定を精度よく実行することができる。

【0035】

（第４の実施形態）
図６は第４の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。図６において、図１、図４、図５と同一部分には同一符号を付して示す。図６に示す電波発射源監視装置は、図１に示す第１の実施形態と同様に、信号受信部１１、信号処理部１２、表示部１３を備える。ただし、上記信号受信部１１は、N個のアンテナ素子１～Ｎからなる受信アンテナ１１４のみを備え、信号処理部１２は、データベース部１２１、信号解析部１２２、到来方向推定部１２５と共に、一時記憶部１２６を備える。一時記憶部１２６は、N個のアンテナ素子１～Ｎの受信信号を一時記憶するバッファ１２６１～１２６Ｎを備え、各バッファ１２６１～１２６Ｎに記憶された信号を到来方向推定部１２５に出力し、代表とする一部のアンテナ素子の受信データを信号解析部１２２に出力する。

【0036】

本実施形態では、Ｎ個のアンテナ素子１～Ｎで受信した信号を一時的に記憶する一時記憶部１２６を備え、一時記憶部１２６で記憶したデータのうち、代表するアンテナ素子のデータに対して、所望波解析範囲のデータを取り出す。取り出したデータは、解析処理部１２２で解析に必要な諸元が抽出され、データベース部１２１の内容と照合される。解析処理の結果、所望信号が含まれていれば、解析処理を実施したのと同一の時刻範囲で取得した全素子のデータを用いて到来方向推定処理を実施する。

【0037】

以上のように、本実施形態では、全アンテナ素子１～Ｎで受信した信号を一時的に記憶し、代表アンテナ（例えばＮ番目のアンテナ素子）で受信したデータを所望波信号解析機能により解析し、所望波の信号が含まれるか否かを判定する。所望波の信号が含まれれば、所望信号解析に使用したデータと同じ時刻における全アンテナ素子のデータを用いて到来方向推定を実施する。

【0038】

したがって、本実施形態でも、干渉波が混在する環境下で、所望波を確実に検出し、到来方向推定を精度よく実行することができる。

【0039】

なお、本実施形態の一時記憶処理は、第１～第３の実施形態の構成に追加してもよい。

【0040】

また、上記の実施形態では、所望波としてWi-Fiを想定したが、所望波をWi-Fiに限定するものではない。また、各実施形態の構成は、独立して適用してもよいし、他の実施形態と組み合わせて適用してもよい。

【0041】

本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【符号の説明】

【0042】

１１…信号受信部、１１１…アンテナ受信部、１１２…所望波受信部、１１３…リファレンスアンテナ、１１４…受信アンテナ（Ｎ個のアンテナ素子１～Ｎ）、１１５…切り替え器、１１６…所望波解析用アンテナ、
１２…信号処理部、１２１…データベース部、１２２…信号解析部、１２３，１２４，１２５…到来方向推定部、１２６…一時記憶部、１２６１～１２６Ｎ…バッファ、
１３…表示部、１３１…表示モニタ。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】