(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068898
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20230511BHJP
H04B 17/30 20150101ALI20230511BHJP
【FI】
H04B1/10 B
H04B17/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180338
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】大木 秀実
(72)【発明者】
【氏名】升田 康晴
(72)【発明者】
【氏名】平山 和宏
【テーマコード(参考)】
5K052
【Fターム(参考)】
5K052BB02
5K052DD04
5K052EE12
5K052FF21
(57)【要約】
【課題】所望波に対する干渉波成分を比較的容易に抑圧することができ、これによって所望波の検出及び到来方向推定の精度を高める。
【解決手段】実施形態に係る電波発射源監視装置は、広帯域系受信部で到来波を広帯域で受信し、狭帯域系受信部で前記到来波を狭帯域で受信し、広帯域系信号処理部で前記広帯域の受信信号から所望波の信号を検出し、前記広帯域系信号処理部で前記所望波の信号を検出された場合に狭帯域系信号処理部で前記狭帯域系の受信信号から所望波の信号を検出して到来方向を推定するものとし、前記所望波の信号を検出する前に前記所望波に対する干渉波をブランキングする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来波を広帯域で受信する広帯域系受信部と、
前記到来波を狭帯域で受信する狭帯域系受信部と、
前記広帯域系受信部で受信された信号から所望波の信号を検出する広帯域系信号処理部と、
前記広帯域系信号処理部で前記所望波の信号を検出された場合に前記狭帯域系受信部で受信された信号から所望波の信号を検出して到来方向を推定する狭帯域系信号処理部と
を具備し、
前記所望波の信号を検出する前に前記所望波に対する干渉波をブランキングする電波発射源監視装置。
【請求項2】
前記干渉波のブランキング処理は、前記広帯域系信号処理部で実行する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項3】
前記干渉波のブランキング処理は、前記狭帯域系信号処理部で実行する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項4】
前記干渉波のブランキング処理は、前記広帯域系信号処理部及び前記狭帯域系信号処理部の双方で実行する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項5】
前記干渉波のブランキング処理は、前記受信された信号の強度が閾値を超えた場合にその部分を除去する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項6】
前記干渉波のブランキング処理は、前記受信された信号の時間方向の信号長をカウントして干渉波であると判定された場合にその部分を除去する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項7】
前記干渉波のブランキング処理は、前記受信された信号のスペクトラムを解析し、その解析結果から干渉波であると判定された場合にその部分を除去する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項8】
前記干渉波のブランキング処理は、複数のパラメータを切り換えてそれぞれの解析処理により前記ブランキング処理の有効性を判定し、前記ブランキング処理に関わるパラメータを変更してこれを繰り返し、適切なパラメータを選択することで自動化する請求項1記載の電波発射源監視装置。
【請求項9】
到来波を広帯域で受信し、
前記到来波を狭帯域で受信し、
前記広帯域で受信された信号から所望波の信号を検出し、
前記広帯域で受信された信号から前記所望波の信号を検出された場合に前記狭帯域で受信された信号から所望波の信号を検出して到来方向を推定する電波監視方法であって、
前記所望波の信号を検出する前に前記所望波に対する干渉波をブランキングする電波発射源監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、受信信号に対して所望波の検出処理を実施し、到来方向推定処理を行うことで、所望波の電波発射源に対する到来方向を推定する電波発射源監視装置の開発が進められている。ここで、実空間においては、所望波の他に干渉波が存在するため、所望波を検出する際に、信号強度の大きな干渉波が存在すると、所望波の検出が困難になる。また、到来方向推定処理においては、信号強度の大きな干渉波の影響を受けて正しく到来方向推定ができない場合がある。
【0003】
これに対して、従来の電波発射源監視装置では、干渉波を除去するためのコストに見合った有効な手立てがない。このため、干渉波が混在している環境でも、干渉波除去を講じることなく所望波の検出処理や到来方向の推定を実施しているのが実情であり、干渉波の混在が、所望波の検出処理や到来方向の推定の精度に悪影響を及ぼしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の電波発射源監視装置では、干渉波を除去するためのコストに見合った有効な手立てがなく、干渉波の混在が、所望波の検出処理や到来方向の推定の精度に悪影響を及ぼしている。
【0006】
本発明の課題は、所望波に対する干渉波成分を比較的容易に抑圧することができ、これによって所望波の検出及び到来方向推定の精度を高めることのできる電波発射源監視装置及び電波発射源監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、実施形態に係る電波発射源監視装置は、広帯域系受信部で到来波を広帯域で受信し、狭帯域系受信部で前記到来波を狭帯域で受信し、広帯域系信号処理部で前記広帯域の受信信号から所望波の信号を検出し、前記広帯域系信号処理部で前記所望波の信号を検出された場合に狭帯域系信号処理部で前記狭帯域系の受信信号から所望波の信号を検出して到来方向を推定するものとし、前記所望波の信号を検出する前に前記所望波に対する干渉波をブランキングする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図である。
図1において、監視対象とする電波発射源(例えば無人航空機等)は、例えばIQデータを通信信号として、一般で使用されているWi-Fiと同じ周波数帯で送信するものとする。このため、Wi-Fi通信機器が干渉波源となる。
【0010】
図1に示す電波発射源監視装置は、アンテナ部11と、切替部12と、広帯域系受信部13と、広帯域系信号処理部14Aと、狭帯域系受信部15と、狭帯域系信号処理部16と、後処理部17とを備える。
【0011】
上記アンテナ部11は、アレイアンテナで構成され、覆域内の到来電波を捕捉する。上記切替部12は、初期状態で広帯域系出力を選択し、切替指示に応じて狭帯域系出力に切り替える。上記広帯域系受信部13は、上記切替部12の広帯域系出力の選択を受けて、上記アンテナ部11を通じて広帯域の到来電波を受信する。上記広帯域系信号処理部14Aは、上記広帯域系受信部13で受信された広帯域信号に対して干渉波ブランキング処理を実施し、その処理出力を解析して所望の監視対象からの電波が含まれることを判定し、含まれている場合には、上記切替部12に対して広帯域系出力から狭帯域系出力へ切り替えるように指示する。
【0012】
上記狭帯域系受信部15は、狭帯域系出力の選択を受けて、上記アンテナ部11を通じて狭帯域の電波を受信する。上記狭帯域系信号処理部16は、狭帯域系受信部15で受信された狭帯域信号を解析して監視対象からの電波の到来方向を推定する。上記後処理部17は、上記狭帯域系信号処理部16で得られた電波到来方向の推定結果の表示、関連機器への情報発信等を行う。
【0013】
上記構成において、
図2を参照して一連の処理動作を説明する。
電波発射源監視装置がおかれる実際の環境では、所望波の信号以外に干渉波が存在する。干渉波は例えば、無線LANのアクセスポイントから送信されるWi-Fiの信号である。干渉波の信号強度がある程度小さい場合には、所望波の検出および到来方向推定に対する影響は許容可能となる。その一方で、干渉波の信号強度がある程度大きくなると、所望波の検出に対する影響は無視できなくなる。そこで、ブランキングにより干渉波を除去する処理を実施する。
【0014】
図2は、
図1に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、監視が開始されると、広帯域系出力の選択により広帯域で到来電波を受信する(ステップS1)。続いて、監視対象の電波を検出するためのパラメータを設定し(ステップS2)、ブランキング処理(ステップS3)、信号検出処理(ステップS4)を順に実行する。ここで、パラメータが予め用意された変更回数に到達したか判断し(ステップS5)、到達していなければステップS2の処理に戻って他のパラメータを設定し、ブランキング処理(ステップS3)、信号検出処理(ステップS4)を順に実行する。
【0015】
ステップS5で、パラメータの変更回数が規定値に到達したと判断した場合には、所望の信号を検出するためのパラメータを選定し(ステップS6)、狭帯域系出力の選択により狭帯域で到来電波を受信する(ステップS7)。続いて、閾値の条件がより厳しいパラメータを設定し(ステップS8)、所望の信号を検出して到来方向を推定し(ステップS9)、電波到来方向の推定結果の表示、関連機器への情報発信等の後処理を行って(ステップS10)、一連の処理を終了する。
【0016】
ここで、上記所望電波の信号検出処理は、例えば、予め検出したい信号の中心周波数や、スペクトラムの形状、信号長等の特徴を記憶しておき、受信した信号の中心周波数や、スペクトラムの形状、信号長等の特徴と比較することで、所望の信号であることを判定する。
【0017】
また、上記干渉波ブランキング処理は、信号の強度が閾値を超えた場合に、その部分を除去する方法、時間方向の信号長をカウントし、干渉波であると判定された場合にその部分を除去する方法、受信信号のスペクトラムを解析し、その解析結果から干渉波であると判定された場合にその部分を除去する方法がある。
【0018】
また、上記パラメータの選定としては、広帯域信号に対して干渉波ブランキング処理を実施し、その干渉波ブランキング処理された信号に対して解析処理を実施して干渉波ブランキング処理の有効性を判定し、干渉波ブランキングに関わるパラメータを変更してこれを繰り返し、適切なパラメータを選択するようにすることで、干渉波ブランキング処理の自動化を実現することが可能となる。
【0019】
上記実施形態に係る電波発射源監視装置によれば、受信された広帯域信号に対して複数のパラメータに基づく干渉波ブランキング処理を実施して、監視対象とする電波の信号を検出した上で、所望電波の信号検出のためのパラメータを再設定して狭帯域での信号から到来方向を推定するようにしているので、所望波を検出する際に、信号強度の大きな干渉波が存在する場合でも、確実に所望波の検出が可能となり、到来方向推定処理においても、信号強度の大きな干渉波の影響を受けずに、正しく到来方向を推定することが可能となる。
【0020】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図、
図4は
図3に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0021】
本実施形態では、
図3に示すように、干渉波ブランキング処理を含む広帯域系信号処理部14Aに代わって干渉波ブランキング処理を含まない広帯域系信号処理部14を用い、干渉波ブランキング処理を含まない狭帯域信号処理部16に代わって干渉波ブランキング処理を含む狭帯域信号処理部16Aを用いている。
【0022】
すなわち、
図4に示すように、広帯域系では、広帯域信号の受信(ステップS1)の後、干渉波ブランキング処理をせずに直接、信号検出処理(ステップS4)を実行し、狭帯域系で、狭帯域信号の受信(ステップS7)の後に、閾値の条件がより厳しいパラメータを設定し(ステップS8)、干渉波ブランキング処理を実行して(ステップS11)、到来方向推定処理(ステップS9)、後処理(ステップS10)に移行する。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る電波発射源監視装置によれば、受信された広帯域信号に対して複数のパラメータに基づいて監視対象とする電波の信号を検出し、所望電波の信号検出のためのパラメータを再設定した段階で、狭帯域での受信信号に干渉波ブランキング処理を施して到来方向を推定するようにしている。このため、第1の実施形態と同様に、所望波を検出する際に、信号強度の大きな干渉波が存在する場合でも、確実に所望波の検出が可能となり、到来方向推定処理においても、信号強度の大きな干渉波の影響を受けずに、正しく到来方向を推定することが可能となる。
【0024】
なお、本実施形態において、干渉波ブランキング処理の手法、パラメータの選定による干渉波ブランキング処理の自動化については、第1の実施形態と同様である。
【0025】
(第3の実施形態)
図5は第3の実施形態に係る電波発射源監視装置の構成を示すブロック図、
図6は
図5に示す電波発射源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0026】
本実施形態では、
図5に示すように、干渉波ブランキング処理を含む広帯域系信号処理部14A、干渉波ブランキング処理を含む狭帯域信号処理部16Aを用い、
図6に示すように、広帯域系、狭帯域系それぞれで、干渉波ブランキング処理(ステップS3、S11)を実行し、信号検出処理(ステップS4)、到来方向推定処理(ステップS9)に移行する。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る電波発射源監視装置によれば、広帯域信号系、狭帯域系それぞれの信号処理で干渉波ブランキング処理を施して信号検出、到来方向の推定を実行するようにしている。このため、第1、第2の実施形態と同様に、所望波を検出する際に、信号強度の大きな干渉波が存在する場合でも、確実に所望波の検出が可能となり、到来方向推定処理においても、信号強度の大きな干渉波の影響を受けずに、正しく到来方向を推定することが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態においても、干渉波ブランキング処理の手法、パラメータの選定による干渉波ブランキング処理の自動化については、第1の実施形態と同様である。
【0029】
なお、上記の実施形態では、所望波の例として小型の無人航空機の通信を想定したが、小型の無人航空機に限定するものではない。また、干渉波としてWi-Fiを想定したが、干渉波をWi-Fiに限定するものではない。また、各実施形態の構成は、独立して適用してもよいし、他の実施形態と組み合わせて適用してもよい。
【0030】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
11…アンテナ部、12…切替部、13…広帯域系受信部、14…広帯域系信号処理部、14A…広帯域系信号処理部(干渉波ブランキング処理を含む)、15…狭帯域系受信部、16…狭帯域系信号処理部、16A…狭帯域系信号処理部(干渉波ブランキング処理を含む)、17…後処理部。