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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069321
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】包装袋用積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230511BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230511BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20230511BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/20 A
B32B23/08
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181102
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BB01
3E086BB52
3E086BB62
3E086BB63
4F100AJ04
4F100AJ04A
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK03B
4F100AK04
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK21
4F100AK21B
4F100AK21C
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100CB03
4F100CB03C
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ86
4F100GB15
4F100HB31
4F100HB31D
4F100JD04
4F100JK06
4F100JK15
4F100JK15B
4F100JL12
4F100JL12C
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】絵柄再現性及び透気防止性の向上が可能であり、当該向上にともなう質量増加を抑制可能な包装袋用積層体及びそれを用いた包装袋を提供すること。
【解決手段】包装袋用積層体は、シート状であって紙製の基材と、上記基材の一方面を覆う樹脂コート層と、上記基材の他方面の一部を覆うシール層と、上記樹脂コート層の上記基材とは反対側の面上に位置するインキと、を備え、上記樹脂コート層の質量が、上記基材及び上記樹脂コート層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下であり、上記シール層が、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を有し、上記顔料の含有量が、上記シール層の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状であって紙製の基材と、
前記基材の一方面を覆う樹脂コート層と、
前記基材の他方面の一部を覆うシール層と、
前記樹脂コート層の前記基材とは反対側の面上に位置するインキと、
を備え、
前記樹脂コート層の質量が、前記基材及び前記樹脂コート層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下であり、
前記シール層が、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を有し、
前記顔料の含有量が、前記シール層の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下である、包装袋用積層体。
【請求項2】
前記基材の坪量が、30g/m以上170g/m以下である、請求項1に記載の包装袋用積層体。
【請求項3】
前記樹脂コート層が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びラテックス系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1又は2に記載の包装袋用積層体。
【請求項4】
前記樹脂コート層の質量が、前記基材及び前記樹脂コート層の総質量に対して10質量%以上20質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装袋用積層体。
【請求項5】
前記樹脂コート層の前記基材とは反対側の面のベック平滑度が、350秒以上2000秒以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装袋用積層体。
【請求項6】
前記シール層が、前記顔料を、前記シール層の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下の含有量で有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装袋用積層体。
【請求項7】
前記シール層が、前記基材の前記他方面の5%以上70%以下を覆う、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装袋用積層体。
【請求項8】
前記インキを覆うオーバーコート層を更に備え、
前記オーバーコート層の厚さが5μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装袋用積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の包装袋用積層体を備え、
前記基材の厚さ方向において重なり合う前記シール層の一部と、前記基材の厚さ方向において重なり合う前記シール層の他の一部とが封止されている、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋用積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を基材としたプラスチックフィルムから形成される包装袋が利用されている。例えば、下記特許文献1には、ポリエステル基材にガスバリア層が積層されてなるポリエステル積層体を含有する包装用袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-150807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上記特許文献1に例示される樹脂基材を用いた包装袋の代わりに、紙を基材とした包装袋が用いられつつある。しかしながら、紙を基材とした包装袋の絵柄再現性及び透気防止性は、樹脂基材を用いた包装袋と比較して劣る傾向がある。このため、紙を基材とした包装袋においては、絵柄再現性及び透気防止性の向上が求められる。ここで、絵柄再現性及び透気防止性の向上にともなう包装袋の質量増加は望ましくない。
【0005】
本発明の一側面の目的は、絵柄再現性及び透気防止性の向上が可能であり、当該向上にともなう質量増加を抑制可能な包装袋用積層体及びそれを用いた包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る包装袋用積層体は、シート状であって紙製の基材と、上記基材の一方面を覆う樹脂コート層と、上記基材の他方面の一部を覆うシール層と、上記樹脂コート層の上記基材とは反対側の面上に位置するインキと、を備える。上記樹脂コート層の質量が、上記基材及び上記樹脂コート層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下であり、上記シール層が、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を有し、上記顔料の含有量が、上記シール層の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下である。
【0007】
この包装袋用積層体は、シート状であって紙製の基材の一方面を覆う樹脂コート層を備えており、インキは、樹脂コート層上に位置する。このため、紙製の基材に直接インキが付される場合と比較して、絵柄再現性を向上できる。また、樹脂コート層の質量が、基材及び樹脂コート層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下である。これにより、包装袋用積層体の質量増加を抑えつつ、当該積層体の透気防止性を向上できる。加えて、シール層は、基材の他方面の一部を覆っており、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を、シール層の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下の含有量で有する。これにより、基材の一部に設けられるシール層の位置を精度よく検出できる。よって、例えば樹脂コート層上に印刷されるインキマークと、シール層とを用いて、樹脂コート層上に印刷される図柄等の位置と、シール層の位置とのずれの有無を容易に判断できる。すなわち、シール層とインキとの見当不良の有無を容易に判断できる。。このため、包装袋用積層体の質量増加を抑制しつつ、高い歩留まりで包装袋用積層体を製造できる。
【0008】
上記基材の坪量は30g/m以上170g/m以下であってよい。基材の坪量が30g/m以上であることにより、包装袋用積層体を袋形状に成形する際に基材に破損が生じにくくなり、基材の坪量が170g/m以下であることにより、包装袋用積層体が硬くなりすぎず、袋形状に良好に形成することができる。
【0009】
上記樹脂コート層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びラテックス系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有してよい。
【0010】
上記樹脂コート層の質量は、上記基材及び上記樹脂コート層の総質量に対して10質量%以上20質量%以下であってよい。この場合、透気防止性をより向上できる。
【0011】
上記樹脂コート層の上記基材とは反対側の面のベック平滑度は、350秒以上2000秒以下であってよい。この場合、絵柄再現性をより向上できる。
【0012】
上記シール層は、上記顔料を、上記シール層の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下の含有量で有してよい。顔料の含有量がこの範囲内にあると、基材の一部に設けられるシール層の位置をより精度よく検出できる。加えて、シール層のシール性が維持されやすくなる。
【0013】
上記シール層が、上記基材の他方面の5%以上70%以下を覆っていてよい。この場合、シール層を形成するための樹脂の量をより減らすことができるため、包装袋用積層体の質量増加を抑制可能であると共に、ブロッキングを抑制できる。
【0014】
上記インキを覆うオーバーコート層を更に備え、上記オーバーコート層の厚さが5μm以下であってよい。上記包装袋用積層体は、樹脂コート層を備えるため、オーバーコート層の厚さが5μm以下であっても、上記包装袋用積層体全体の透気防止性は良好である。また、オーバーコート層を形成するための樹脂等の量を減らすことができる。
【0015】
本発明の一側面に係る包装袋は、上記包装袋用積層体を備え、上記基材の厚さ方向において重なり合う上記シール層の一部と、上記基材の厚さ方向において重なり合う上記シール層の他の一部とが封止されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、絵柄再現性及び透気防止性の向上が可能であり、当該向上にともなう質量増加を抑制可能な包装袋用積層体及びそれを用いた包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、包装袋用積層体の概略断面図である。
図2図2は、包装袋の概略平面図である。
図3図3は、変形例に係る包装袋の概略平面図である。
図4図4は、図4のIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5図5は、変形例に係る包装袋を展開して得られる包装袋用積層体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
<包装袋用積層体>
図1を参照しながら、包装袋用積層体1について詳細に説明する。図1は、包装袋用積層体の概略断面図である。包装袋用積層体1は、図2に示される包装袋2、図3に示される包装袋2A等を形成するために用いられる包装用紙である。包装袋用積層体1は、要求される性能(例えば、ガスバリア性、遮光性、耐水性、耐温湿性、機械的強度、印刷容易性、印刷適性、装飾容易性等)を備え得る。なお、ガスバリア性は、酸素、水蒸気等のガス透過を防止または抑制する性能(透気防止性)を意味する。耐水性は、包装袋2等が濡れたときの強度低下率によって評価される。包装袋用積層体1は、基材11と、樹脂コート層12と、シール層13と、インキ14と、オーバーコート層15とを備える。基材11と、樹脂コート層12と、シール層13と、オーバーコート層15とは、基材11の厚さ方向(以下、単に「厚さ方向」ともいう。)において互いに重なっている。
【0020】
基材11は、抄紙された紙自体から形成されるフィルム状部材であり、主面11a,11bを有する。主面11a,11bは、基材11の厚さ方向に対して交差する面である。包装袋用積層体1から包装袋2が形成されたとき、主面11aは包装袋2の外表面側に位置する一方面であり、主面11bは包装袋2の内表面側に位置する他方面である。基材11を構成する紙は、例えば上質紙、特殊上質紙、アート紙、和紙、模造紙、クラフト紙等である。基材11を構成する紙として再生紙以外の紙であれば特に限定されず、例えば、上質紙、特殊上質紙、アート紙、和紙、模造紙、クラフト紙等である。本実施形態では、基材11は、晒クラフト紙であるが、これに限られない。基材11は、例えば、未晒クラフト紙でもよい。包装袋2の外表面における美粧性の観点から、基材11は、雲龍紙でもよいし、混抄紙でもよい。
【0021】
基材11の質量は、例えば、基材11と、樹脂コート層12と、シール層13と、インキ14と、オーバーコート層15との合計質量に対して51%以上である。この場合、成形性よく包装袋用積層体1から包装袋を製造できる。
【0022】
基材11の坪量は、30g/m以上170g/m以下であってよい。基材11の坪量の下限値は、包装袋用積層体1の一部と他部との貼り合わせ加工を良好に実施でき、包装袋用積層体1に視認し得る破損等が生じることを抑制できる観点から、例えば30g/mでもよいし、40g/mでもよいし、50g/mでもよいし、60g/mでもよい。基材11の坪量の上限値は、包装袋用積層体1が硬くなりすぎず、袋形状に成形しやすくなる観点、及び、シール層13がヒートシールされる場合、基材11を介してシール層13に良好に伝熱されるので、良好なシール性が発揮される観点から、170g/mでもよいし、150g/mでもよいし、100g/mでもよいし、80g/mでもよい。
【0023】
樹脂コート層12は、基材11の主面11aを覆うフィルム状部材であり、主面12a,12bを有する。包装袋用積層体1の透気防止性の観点から、樹脂コート層12は、基材11の主面11aの全面を覆う。主面12a,12bは、基材11の厚さ方向に対して交差する面である。主面12aは、樹脂コート層12における露出面であり、主面12aは樹脂コート層12の基材11とは反対側の面に相当する。主面12bは、厚さ方向において基材11に対向する面である。主面12bは、基材11の主面11aに接触してもよい。樹脂コート層12は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びラテックス系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有してよい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂等が挙げられる。ラテックス系樹脂としては、具体的には、スチレン-ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン系樹脂等が挙げられる。樹脂コート層12は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びラテックス系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を、樹脂コート層12の全量基準で5質量%以上90質量%以下含有してよい。
【0024】
樹脂コート層12の質量は、例えば、包装袋用積層体1の質量と、絵柄再現性及び透気防止性との観点から、基材11及び樹脂コート層12の総質量に対して5質量%以上30質量%以下である。また、樹脂コート層12の質量が上記範囲内である場合、包装袋用積層体1の製造時におけるシワの発生を抑制できる。絵柄再現性及び透気防止性の観点から、樹脂コート層12の質量は、上記総質量に対して10質量%以上でもよく、15質量%でもよい。包装袋用積層体1の質量の観点から、樹脂コート層12の質量は、上記総質量に対して25質量%以下でもよいし、20質量%以下でもよい。なお、絵柄再現性が高いほど、包装袋用積層体1に印刷される絵柄が、表示装置等に表示される元図の絵柄に近いこととする。
【0025】
樹脂コート層12の主面12aのベック平滑度は、350秒以上2000秒以下であってよい。ベック平滑度は、JIS P8119:1998「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して求められる値である。
【0026】
シール層13は、包装袋用積層体1の一部と他部とを貼り付けるために用いられており、基材11の主面11b上に位置する。このため、シール層13は、厚さ方向において基材11を挟んで樹脂コート層12の反対側に位置する。また、包装袋用積層体1から包装袋を形成したとき、シール層13は、基材11よりも内側に位置する。本実施形態では、シール層13は、主面11bの一部を覆う。このため、主面11bはシール層13によってパートコートされており、かつ、主面11bの一部はシール層13から露出する。例えば、シール層13は、厚さ方向から見て枠形状を呈するように、主面11bの一部を覆う。この場合、シール層13は、主面11bの縁に沿って設けられてもよい。包装袋用積層体1の質量の観点から、シール層13は、例えば主面11bの5%以上70%以下を覆う。また、シール層13の一部と他部とが接合したとき、当該接合部分におけるブロッキングの発生を抑制できる。シール層13の一部と他部とは、例えば、ヒートシールが実施されるが、これに限られない。シール層13には、例えばコールドシール等が実施されてもよい。なお、シール層13の一部は、包装袋2の内面を構成してもよい。
【0027】
シール層13は、ヒートシールニスであってよく、コールドシールニスであってよい。シール層13は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合及びそれらの混合材料を含んでいてよい。より具体的には、シール層13は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を含んでいてよい。また、シール層13は、アクリル系水性エマルジョン、水性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)系、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコン、ポリブテン等の水性エマルジョンであってもよい。シール層13は、上述した樹脂のうち1種類の樹脂を含んでもよいし、複数種類の樹脂を含んでもよい。シール層13は、フィラー等を含んでもよい。
【0028】
シール層13は、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を有する。すなわち、シール層13は、顔料として、蓄光顔料、蛍光顔料、もしくは、蓄光顔料及び蛍光顔料からなる顔料を有する。この場合、シール層13に光を照射した後、当該シール層13が発光できる。蓄光顔料は、蓄光性を有する物質であり、例えばアルミン酸塩等である。蛍光顔料は、蛍光性を有する物質であり、例えばベンゾオキサゾリルチオフェン系蛍光剤等である。蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方は、無色でもよいし、透明でもよいし、無色透明でもよい。シール層13は、例えば、上記顔料をシール層13の質量に対して0.075質量%以上の含有量で有する。この場合、主面11b上に位置するシール層13の位置を、光センサなどによって精度よく検出できる。シール層13は、上記顔料をシール層13の質量に対して0.1質量%以上の含有量で有してもよい。この場合、作業者等はシール層13から発生する光を目視にて確認でき、光センサなどによる検出精度を向上できる。また、シール層13は、例えば、上記顔料をシール層13の質量に対して5.5質量%以下の含有量で有する。この場合、シール層13中における上記顔料の沈殿を抑制できる。シール層13のシール性の観点から、シール層13は、例えば、上記顔料を5質量%以下の含有量で有してよい。なお、顔料が、蓄光顔料及び蛍光顔料からなる場合、蓄光顔料の含有量と、蛍光顔料の含有量とのそれぞれが、シール層13の質量に対して0.075質量%以上でもよいし、0.1質量%以上でもよい。
【0029】
シール層13の厚さは、シール性の観点から、0.5μm以上5μm以下であってよく、1μm以上4μm以下であってよく、2μm以上3μm以下であってもよい。
【0030】
インキ14は、包装袋用積層体1において印刷された部分に相当し、樹脂コート層12の主面12a上に位置する。樹脂コート層12上に位置するインキ14によって、包装袋用積層体1に図柄等が形成される。本実施形態では、インキ14は、例えば水性もしくは油性のインクが印刷された部分であり、樹脂コート層12の主面12aに付着している。インキ14に含まれるインクの少なくとも一部は、主面12aに浸み込んでもよい。インキ14は、複数のインクの混合又は複数のインクの重ね合わせによって形成されていてよい。印刷適性、コスト等の観点から、インキ14の厚さは、例えば0.1μm以上2μm以下である。本実施形態では、インキ14の厚さは、1μm程度である。インキ14は、樹脂コート層12の主面12aの全体に付着していてもよく、主面12aの一部のみに付着していてもよい。包装袋用積層体1がインキ14を備えることで、包装袋用積層体及び包装袋の意匠性が向上する。
【0031】
オーバーコート層15は、包装袋2の最外面に相当し、インキ14及び樹脂コート層12の主面12aを保護する。オーバーコート層15は、樹脂コート層12の主面12a及びインキ14を覆う。本実施形態では、オーバーコート層15は、樹脂コート層12の主面12aに完全に重なっているが、これに限られない。オーバーコート層15は、例えば、ニス等の塗料、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を含む。意匠性及び成形性の観点から、オーバーコート層15の厚さは、例えば0.1μm以上5μm以下であってよい。塗料を用いた場合、コスト、コーティング性能等の観点から、塗料を用いた場合のオーバーコート層15の厚さは、0.1μm以上3μm以下でもよい。紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂を用いた場合、オーバーコート層15の厚さは、1μm以上5μm以下でもよい。コスト、コーティング性能等の観点から、上記樹脂を用いた場合におけるオーバーコート層15の厚さは、1μm以上3μm以下でもよい。
【0032】
<包装袋の概要>
図2を参照しながら、本実施形態に係る包装袋について説明する。図2は、包装袋の概略平面図である。
【0033】
図2に示される包装袋2は、固体等を収容する密封容器であり、例えば紙製容器包装袋である。紙製容器包装袋は、日本の資源有効利用促進法に基づき、紙製容器包装の識別表示が付される包装体である。このため、本実施形態に係る包装袋2の主成分は、紙である。本実施形態においては、包装袋2の合計質量のうち、紙の質量が51%以上である。包装袋2は、包装袋用積層体1(図1を参照)から構成されると共に、内容物を収容していてよい。包装袋2は、例えば内容物を挟むように二つ折りにした包装袋用積層体1の端部を封止することによって、袋形状に成形される。内容物は、特に限定されず、例えば飲食物、医薬品、化粧品、化学品、電子機器、工具、文房具等である。内容物は、固体に限られず、液体、気体でもよい。内容物は、個包装されてもよい。
【0034】
包装袋2は、内容物が収容される本体部4と、本体部4の端部に位置するシール部5と、包装袋用積層体1が折り曲げられた折曲部6とを有する。本体部4の形状は、特に限定されず、例えば所定の方向から見て矩形形状を呈する。本体部4の外表面における少なくとも一部には、印刷が施されている(不図示)。本体部4には、例えば、内容物に加えて窒素等の特定の気体が収容されてもよい。シール部5は、包装袋用積層体1の一部と他部とが貼り合わされる部分である。シール部5においては、包装袋用積層体1の一部と他部とが互いに密着している。シール部5は、例えば包装袋用積層体1の一部と他部とが加熱及び圧縮される(すなわち、ヒートシールされる)ことによって形成されるが、これに限られない。例えば、シール部5は、コールドシール等によって形成されてもよい。本実施形態では、所定の方向から見て、折曲部6が本体部4の一辺を構成し、シール部5が本体部4の残り三辺を構成する。折曲部6の両端と、シール部5とは重なっている。
【0035】
以下では、包装袋用積層体1を用いて包装袋2を製造する方法の一例について説明する。まず、シート状であって紙製の基材11を準備する(第1工程)。第1工程では、例えば公知の抄紙条件、抄紙方式にて、基材11を形成する。基材11の厚さ方向から見て、基材11は、略矩形状を呈する。基材11の主材料として、クラフトパルプのみが用いられてもよいし、古紙パルプのみが用いられてもよいし、クラフトパルプと古紙パルプとの混合物が用いられてもよい。クラフトパルプの種類、及び古紙パルプの種類のそれぞれは、特に限定されない。基材11を形成するとき、硫酸バンド、ロジン等のサイズ剤、ポリアミド、澱粉等の紙力増強剤、濾水歩留まり向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロヒドリン等の耐水化剤、染料などが使用されてもよい。
【0036】
次に、基材11の主面11aを覆う樹脂コート層12を形成する(第2工程)。第2工程においては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷、キャストコート等の公知の手法によって、樹脂コート層12を形成する。
【0037】
次に、樹脂コート層12の主面12a上に、インキ14を形成する(第3工程)。このとき、所望の絵柄に加えて、マーク(インキマーク)が印刷される。インキマークは、例えば、見当調整用のマーク、トリムマークなどとして用いられる。第3工程では、公知の印刷方法にて主面12a上にインクを印刷することによって、インキ14を形成する。公知の印刷方法は、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷等である。
【0038】
次に、基材11の主面11bの一部を覆うシール層13を形成する(第4工程)。第4工程では、まず、例えばヒートシールニス等の樹脂と顔料とが溶解された溶液(コーティング液)を、主面11bの一部にコーティングする。続いて、上記コーティング液から溶媒を除去することによって、シール層13を形成する。溶媒の除去は、例えばコーティング液が塗布された基材11を室温よりも高い温度環境に静置することによって、実施される。なお、例えば、樹脂コート層12上のインキマークと、シール層13に含まれる顔料とを用いることによって、主面11bの一部にシール層13が形成される。
【0039】
次に、樹脂コート層12の主面12a及びインキ14を覆うオーバーコート層15を形成する(第5工程)。第5工程では、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、エアナイフ法、ドクターブレード法等の周知の方法によって、樹脂コート層12の主面12aの全体に対してオーバーコート層15を形成する。オーバーコート層15が熱可塑性樹脂を含む場合、例えばエクストルーダー加工(押出成形加工)によってオーバーコート層15が形成されてもよい。
【0040】
次に、基材11を曲げ、シール層13の一部と他の一部とを接着することによって、袋形状の包装袋2を形成する(第6工程)。第6工程では、まず、基材11を二つ折りにする。このとき、シール層13が内側に位置し、且つ、二つ折りされた基材11の一方と他方との縁が揃うように、基材11を折り曲げる。二つ折りされた基材11は、略矩形形状を呈している。基材11において折り曲げられた部分を除く3つの縁は、開放端となっている。続いて、折り曲げた基材11の間に内容物を供給した後、上記3つの縁及びその周辺を加熱条件下で加圧する。このとき、当該縁及びその周辺にて接しているシール層13の一部と他部とが接着される。これにより、内容物を収容する密封容器である包装袋2が形成される。
【0041】
上記実施形態では、第1工程から第6工程を順次実施することによって包装袋が製造されるが、これに限られない。第1工程から第6工程の順番は、適宜変更されてもよい。例えば、第4工程が第2工程の前に実施されてもよい。
【0042】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法で製造される包装袋2は、紙製の基材11と、樹脂コート層12と、シール層13と、インキ14と、オーバーコート層15とを有する包装袋用積層体1を用いて形成される。このような包装袋2は、シート状であって紙製の基材11の主面11aを覆う樹脂コート層12を備えており、インキ14は、樹脂コート層12上に位置する。このため、紙製の基材に直接インクが付される場合と比較して、絵柄再現性を向上できる。また、樹脂コート層12の質量が、基材11及び樹脂コート層12の総質量に対して5質量%以上30質量%以下である。これにより、包装袋用積層体1の質量増加を抑えつつ、当該包装袋用積層体1の透気防止性を向上できる。加えて、シール層13は、基材11の主面11bの一部を覆っており、蓄光顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方から構成される顔料を、シール層13の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下の含有量で有する。これにより、基材11の一部に設けられるシール層13の位置を精度よく検出できる。このため、例えば樹脂コート層12上に印刷されるインキマークと、シール層13とを用いることによって、樹脂コート層12上に印刷される図柄等の位置と、シール層13の位置とのずれの有無を容易に判断できる。すなわち、シール層13とインキ14との見当不良の有無を容易に判断できる。したがって本実施形態によれば、包装袋2(ならびに包装袋用積層体1)の質量増加を抑制しつつ、高い歩留まりで包装袋2(ならびに包装袋用積層体1)を製造できる。
【0043】
加えて、本実施形態では、樹脂コート層12の質量が上記総質量に対して5質量%以上30質量%以下であるので、包装袋用積層体1の製造時におけるシワの発生を抑制できる。さらには、シール層13は、顔料を、シール層13の質量に対して0.075質量%以上5.5質量%以下の含有量で有するので、包装袋2を製造する際のシール層13の一部と他部との位置合わせもしやすくなる。
【0044】
本実施形態では、基材11の坪量は30g/m以上170g/m以下であってよい。この場合、包装袋用積層体1から包装袋2を成形する際に基材11に破損が生じにくくなる。また、包装袋用積層体1が硬くなりすぎないので、包装袋用積層体1から包装袋2を良好に形成することができる。
【0045】
本実施形態では、樹脂コート層12は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びラテックス系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。よって、インキ14が印刷される樹脂コート層12から基材11の主面11aが露出しにくくなる。したがって、露出した主面11aに起因する包装袋用積層体1の白化現象が生じにくくなる。
【0046】
本実施形態では、樹脂コート層12の質量は、基材11及び樹脂コート層12の総質量に対して10質量%以上20質量%以下であってよい。この場合、透気防止性をより向上できる。
【0047】
本実施形態では、樹脂コート層12の主面12aのベック平滑度は、350秒以上2000秒以下であってよい。この場合、絵柄再現性をより向上できる。
【0048】
本実施形態では、シール層13は、上記顔料を、シール層13の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下の含有量で有してよい。この場合、シール層13のシール性を維持しつつ、シール層13の位置をより精度よく検出できる。
【0049】
本実施形態では、シール層13が、基材11の主面11bの5%以上70%以下を覆っていてよい。この場合、シール層13を形成するための樹脂の量をより減らすことができるため、包装袋用積層体1の質量増加を抑制可能であると共に、ブロッキングを抑制できる。
【0050】
本実施形態では、インキ14を覆うオーバーコート層15を備え、オーバーコート層15の厚さが5μm以下である。包装袋用積層体1は、樹脂コート層12を備えるため、オーバーコート層15の厚さが5μm以下であっても、包装袋用積層体1全体の透気防止性は良好である。また、オーバーコート層15を形成するための樹脂等の量を減らすことができる。
【0051】
以下では、図3図5を参照しながら、上記実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。図3は、変形例に係る包装袋の概略平面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った概略断面図である。図5は、変形例に係る包装袋を展開して得られる包装袋用積層体の平面図である。
【0052】
変形例に係る包装袋2Aは、上記実施形態と同様に包装袋用積層体1から構成されるピロー包装袋である。ピロー包装袋は、例えば公知のピロー包装充填機等を用いることによって形成できる。本変形例では、上記包装充填機等を用いて、シール層13が内側に位置するように基材11を曲げた後、シール層13の一部と他の一部とを接着することによって、ピロー包装袋である包装袋2Aが形成される。包装袋2Aの基材11は、筒形状を呈する本体部21と、フランジ部22とを有する。以下では、本体部21の軸方向を図3に示される方向Xとし、方向Xに直交する方向を方向Yとする。方向Yは、図5に示されるように基材11の展開時において、基材11の厚さ方向及び方向Xに直交する方向に相当する。
【0053】
本体部21は、包装袋2Aの内容物が収容される部分である。本体部21は、包装袋用積層体1を方向Yに沿って丸めることによって形成される。方向Xにおける本体部21の両端23は、シール層13によって封止されている。内容物の収容製の観点から、方向Xに沿った本体部21の寸法は、例えば、方向Xに沿った基材11の寸法の80%以上である。両端23のシール性の観点から、方向Xに沿った本体部21の寸法は、例えば、方向Xに沿った基材11の寸法の90%以下である。包装袋2Aを容易に破るため、本体部21には切り込みが設けられてもよい。この場合、両端23の一方のみに切り込みが設けられてもよい。
【0054】
フランジ部22は、包装袋2Aの形成時に設けられる部分であり、方向Xに沿って延在すると共に本体部21から突出する。フランジ部22は、方向Xにおける包装袋2Aの一端から他端まで延在する。フランジ部22は、基材11の展開時の方向Yにおける基材11の一対の端部11c,11dがシール層13によって貼り合わされた部分に相当する(図5を参照)。基材11の展開時において、方向Yに沿ったフランジ部22の寸法は、例えば、方向Yに沿った基材11の寸法の2%以上5%以下である。この場合、包装袋2Aの容積を確保しつつ、フランジ部22が良好に貼り合わせられる。シール層13を介した一対の端部11c,11dの貼り合わせは、シール層13を介した本体部21の両端23の封止と同時に実施される。
【0055】
通常、ピロー包装袋においては、フランジ部を構成する一対の端部と、本体部との境界部分における接着不良が発生しやすい。これに対して本変形例においては、上記実施形態と同様に、シール層13同士の位置合わせがしやすい。が用いられる。これにより、包装袋2Aにおけるフランジ部22を構成する一対の端部11c,11dと本体部21との境界部分においても、シール層13によって良好に封止される。加えて、本変形例においても、上記実施形態と同様に、絵柄再現性及び透気防止性の向上が可能であり、当該向上にともなう質量増加を抑制可能である。加えて、包装袋2Aは、顔料をシール層の質量に対して0.1質量%以上5質量%以下の含有量で有するシール層を備えるため、包装袋を製造する際のシール層同士の位置合わせがしやすく、その結果歩留まり良く製造される。
【0056】
図4においては、基材11、樹脂コート層12、シール層13及びインキ14のみが積層されているが、これに限られない。例えば、オーバーコート層等が積層されてもよい。
【0057】
本発明の一側面に係る包装袋用積層体及び包装袋は、上記実施形態及び上記変形例に限られない。例えば、上記実施形態では、包装袋用積層体は、基材、樹脂コート層、シール層、インキ及びオーバーコート層を備えるが、これに限られない。例えば、包装袋用積層体は、バリアコート層、耐水コート層及び耐油コート層の少なくとも一つを備えてもよい。バリアコート層、耐水コート層及び耐油コート層の少なくとも一つは、例えば、基材とシール層との間に位置してもよいし、基材と樹脂コート層との間に位置してもよいし、樹脂コート層とインキとの間に位置してもよい。バリアコート層、耐水コート層及び耐油コート層は、例えば既存の手法、材料にて形成できる。あるいは、包装袋用積層体は、物理的強度を向上させるための補強層を備えてもよい。補強層は、例えば、基材とシール層との間に位置してもよいし、基材と樹脂コート層との間に位置してもよいし、基材とインキとの間に位置してもよい。補強層は、例えば未延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。この場合、補強層は、例えばポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を含む。もしくは、シール層上に上記バリア層、補強層等が形成されてもよい。この場合、これらの層は、シール層の接着時に破壊可能な厚さであればよい。破壊可能な厚さは、例えば5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。
【0058】
包装袋用積層体は、蒸着層を備えてもよい。蒸着層は、バリアコート層の機能、耐水コート層の機能、耐油コート層の機能及び補強層の機能の少なくとも一つを有してもよい。蒸着層は、例えば、シリカ蒸着層、アルミナ蒸着層、アルミ蒸着層等である。蒸着層は、例えば物理気相成長法によって形成される。蒸着層は、基材上に形成されるが、これに限られない。
【0059】
包装袋は、上述したように包装袋用積層体を二つ折りにして製造されてよいし、複数回屈曲されて製造されてもよい。また、包装袋は、包装袋用積層体を折り曲げることなく製造されてもよい。この場合、例えば互いに重ね合わせた2枚の包装袋用積層体の端部を封止することによって、包装袋を製造する。また、包装袋は、必ずしも密封されなくてもよい。例えば、包装袋の少なくとも一部が開放されてもよい。もしくは、包装袋の一部には、開閉自在な部分が形成されてもよい。
【実施例0060】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
<包装袋用積層体>
まず、シート状であって紙製の基材として坪量が65g/mの晒クラフト紙を準備した。本実施例では、矩形形状を呈する紙製の基材を使用した。次に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂又はラテックス系樹脂を主成分とする樹脂を基材の一方面上に塗布した。次に、塗布した樹脂を乾燥させて、上記一方面の全体を覆う樹脂コート層を得た。次に、所望する絵柄が描かれた元図を用意し、樹脂コート層の露出面に元図と同じ絵柄が現れるように、当該露出面に色インキをグラビア印刷で印刷した。絵柄に加えてインキマークも印刷した。当該色インキを乾燥した。乾燥後の色インキの厚さが約1μmになるように、色インキの印刷が実施された。
【0062】
次に、HSニス(大日精化工業株式会社製、「セイカダイン1900W」)に、蛍光増白剤及び蓄光剤の少なくとも一つから構成される顔料をHSニス全量基準で0.1質量%混合し、顔料混合HSニスを得た。得られた顔料混合HSニスを、基材の他方面上に塗工した。顔料混合HSニスに光を当てて発光位置を検知し、インキマークの位置に合わせて顔料混合HSニスの塗工位置を調整した(すなわち、見当調整を実施した)。顔料混合HSニスは、枠形状になるように基材の縁に沿って塗工した。塗工された顔料混合HSニスの幅は、13mmとした。このとき、HSニスの乾燥後の厚さが3μmになるように塗工した。そして、顔料混合HSニスを90℃の条件にて20秒間乾燥処理することによって、基材の片側の面上に厚さ3μmのシール層を形成した。
【0063】
乾燥後の色インキ上に、グラビア印刷でOPPニスを印刷した。OPPニスは、色インキ及び樹脂コート層を覆うように印刷された。乾燥後のOPPニスの厚さが約1μmになるように、上記印刷が実施された。このようにして、OPPニス、インキ、樹脂コート層、基材及びシール層を有する包装袋用積層体を形成した。
【0064】
<包装袋>
まず、上記包装袋用積層体をシール層が内側に位置するように曲げ、両端を約1cm重ね合わせてヒートシールした。これにより、背シールが形成された筒状体を得た。続いて、筒状体の軸方向に沿って所定間隔ごとに筒状体を区切るためのヒートシールをした。これにより、背シールと、幅約1cmのエンドシール及びトップシールとが形成されたピロー包装袋を得た。以上の操作は、縦型ピロー製袋機(株式会社イシダ製、「INSPIRA」)を用いて行った。当該ヒートシールは、180℃、0.2MPa、0.5secの条件で実施した。
【0065】
<平滑度>
JIS P8119:1998「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して、色インキを印刷する前の樹脂コート層の露出面の平滑度を求めた。測定は、熊谷理機工業株式会社製、ベック平滑試験機HK型「0518-P」を用いて行った。
【0066】
<絵柄再現性>
まず、無作為に選択されたパネラー30名を準備した。続いて、各パネラーは、包装袋用積層体にて印刷された絵柄と、ディスプレイ装置等の表示装置に表示される元図の絵柄とを見比べた。続いて、各パネラーは、包装袋用積層体に印刷された絵柄の形状、色、質感などが元図の絵柄を再現できているか否かを判断した。元図の絵柄が再現されていると判断したパネラーが30名中20名以上であれば「○」とし、30名中19名以下であれば「×」とした。
【0067】
<透気防止性>
包装袋用積層体を用いてピロー包装袋を製作し、空気の漏れがなければ「〇」、空気の漏れがあれば「×」とした。
【0068】
<表裏の見当調整の可否>
色インキを印刷して得られた絵柄と、顔料混合HSニスとの見当を合わせられるか否かを印刷機を用いて評価した。一方面上にインキマークを印刷し、且つ、他方面上に顔料混合HSニスを塗工した基材を、Line Speed(LS)150m/minで動かしながら、チップLED型光源を含むUVストロボを用いて、基材上の顔料混合HSニスに光を照射した。UVストロボの調整可能域は30~10,000rpmであり、発光時間は10~100μsであった。また、チップLED型光源は、365nmのUV光及び可視光を照射するものであり、光源から10cm離れた箇所におけるUV照度は、約17mW/cmであった。次に、上記基材において発光した部分があるか否かを実験者が目視で観察した。UVストロボの照射及び発光の視認は暗室で行った。ストロボ照射後に上記基材において発光した部分を視認できれば「○」とし、発光した部分を視認できなければ「×」とした。
【0069】
<ブロッキング>
上記包装袋用積層体を用いて、150mm×150mmのピロー包装袋を作成した。このとき、シールされる部分(シール部分)の幅(シール幅)が10mmとなるように調整した上で、ピロー包装袋を作成した。そして、0.4kN/cm、室温の条件下で、ピロー包装袋全体を3日間加圧した。その後、シール層同士の密着部分をはがすようにピロー包装袋を開封するとき、当該密着部分がはがれ始めるよりも前にピロー包装袋に破損が生じた場合、ブロッキングありとした。また、シール層同士が密着しない場合、もしくは、ピロー包装袋に破損が生じることなく上記密着部分をはがすことができた場合、ブロッキングなしとした。
【0070】
(実施例2~6、比較例1~8及び参考例1,2)
表1,2に示す構成、樹脂コート層の質量、HSニス中の顔料の含有量及びシール層の塗工方法としたこと以外は、実施例1と同様にして包装袋用積層体及びピロー包装袋を作成し、絵柄再現性、透気防止性等を評価した。透明蒸着PET12としては、凸版印刷株式会社製、「GL-RD」(厚さ12μm)を用いた。PE15、PE30、PE50としては、タマポリ株式会社製、「SE620N」を用いた。NY15としては、ユニチカ株式会社製、「ONBC」を用いた。結果を表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【符号の説明】
【0073】
1…包装袋用積層体、2、2A…包装袋、4…本体部、5…シール部、6…折曲部、11…基材、11a…主面(一方面)、11b…主面(他方面)、11c,11d…端部、12…樹脂コート層、12a、12b…主面、13…シール層、14…インキ、15…オーバーコート層、21…本体部、22…フランジ部、23…両端。
図1
図2
図3
図4
図5