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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069349
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】セキュリティ印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20230511BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20230511BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20230511BHJP
   B41J 17/02 20060101ALI20230511BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20230511BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20230511BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20230511BHJP
   B41M 5/385 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/378
B41J2/325 A
B41J17/02
B41M5/40 300
B41M5/382 800
B41M5/52 300
B41M5/385 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181138
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】前平 誠
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
(72)【発明者】
【氏名】浦田 誠子
【テーマコード(参考)】
2C005
2C065
2C068
2H111
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HA17
2C005HB02
2C005HB09
2C005JB14
2C005LA20
2C005LA26
2C005LB08
2C065AA01
2C065AB09
2C065AF02
2C065DA11
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068BD04
2C068BD23
2C068BD32
2C068BD33
2C068KK13
2C068KK14
2C068KK16
2H111AA07
2H111AA26
2H111AB05
2H111BA03
2H111BA14
2H111BA32
2H111BA38
2H111BA47
2H111BA48
2H111BA49
2H111BA50
2H111BA53
2H111BA61
2H111BA74
2H113AA03
2H113AA04
2H113BA23
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB10
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA36
2H113CA37
2H113CA39
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA50
2H113DA53
2H113DA56
2H113DA57
2H113DA63
(57)【要約】
【課題】特殊インキとカラーインキとを使用する印刷を伴う印刷物の製造において、高い生産性を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】感熱転写媒体10の各パネルユニットPGは、支持体11の長さ方向に配列した複数のパネル区画を含む。これらパネル区画は、シアンのカラーインクパネル12Cを含んだ第1パネル区画PP1と、マゼンタのカラーインクパネル12Mを含んだ第2パネル区画PP2と、イエローのカラーインクパネル12Yを含んだ第3パネル区画PP3と、全体にブラックインクパネル12Kが設けられた第4パネル区画PP4とを含む。第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G又は12Bを更に含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱転写媒体を使用した熱転写記録方式によって印刷基材上に画像を記録することを含んだセキュリティ印刷物の製造方法であって、
前記感熱転写媒体は、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、
前記複数のパネルユニットの各々は、1以上のパネル区画を含み、
前記1以上のパネル区画の少なくとも1つは、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含み、
前記印刷基材上への前記画像の記録は、前記感熱転写媒体から中間転写媒体又は前記印刷基材への転写材の熱転写を前記パネル区画毎に行うことを含むセキュリティ印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記1以上のパネル区画は、前記長さ方向に配列した2以上のパネル区画であり、前記2以上のパネル区画の1つはブラックインクパネルからなる請求項1に記載のセキュリティ印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記セキュリティフィーチャーパネルは、光輝性顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方を含んだ請求項1又は2に記載のセキュリティ印刷物の製造方法。
【請求項4】
熱転写記録方式によって印刷基材上に画像を記録することを含んだセキュリティ印刷物の製造方法において使用する感熱転写媒体であって、
帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、
前記複数のパネルユニットの各々は、1以上のパネル区画を含み、
前記1以上のパネル区画の少なくとも1つは、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含み、
前記印刷基材上への前記画像の記録は、前記感熱転写媒体から中間転写媒体又は前記印刷基材への転写材の熱転写を前記パネル区画毎に行うことを含む感熱転写媒体。
【請求項5】
帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、
前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、
前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、
前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、
前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、
前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは面積が互いに異なる感熱転写媒体。
【請求項6】
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記長さ方向に配列した請求項5に記載の感熱転写媒体。
【請求項7】
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記支持体の幅方向に配列した請求項5に記載の感熱転写媒体。
【請求項8】
帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、
前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、
前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、
前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、
前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、
前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記支持体の幅方向に配列した感熱転写媒体。
【請求項9】
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記パネル区画の幅全体に亘って伸び、前記セキュリティフィーチャーパネルは、前記カラーインクパネルと比較して、前記支持体の幅方向における寸法がより小さい請求項5乃至7の何れか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項10】
帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、
前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、
前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、
前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、
前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、
前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記パネル区画の幅全体に亘って伸び、前記セキュリティフィーチャーパネルは、前記カラーインクパネルと比較して、前記支持体の幅方向における寸法がより小さい感熱転写媒体。
【請求項11】
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記セキュリティフィーチャーパネルを取り囲んでいる請求項9又は10に記載の感熱転写媒体。
【請求項12】
前記第1乃至第3パネル区画の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、特定の条件下で赤色を呈する赤の光輝性インクパネル、前記条件下で緑色を呈する緑の光輝性インクパネル及び前記条件下で青色を呈する青の光輝性インクパネルのうちの1つが設けられ、
前記第1乃至第3パネル区画の他の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤の光輝性インクパネル、前記緑の光輝性インクパネル及び前記青の光輝性インクパネルのうちの他の1つが設けられ、
前記第1乃至第3パネル区画の残りは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤の光輝性インクパネル、前記緑の光輝性インクパネル及び前記青の光輝性インクパネルの残りが設けられた請求項5乃至11の何れか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項13】
前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記セキュリティフィーチャーパネルの面積は、前記カラーインクパネルの面積と比較してより小さい請求項5乃至12の何れか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項14】
前記セキュリティフィーチャーパネルは、光輝性顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方を含んだ請求項4乃至13の何れか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項15】
第1画像を含む画像を再現する第1画像データと、第2画像を含む画像を再現する第2画像データとから、印刷データを生成するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記印刷データは、複数の画素に対応し、座標値と三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の印刷データ要素を含み、
前記複数の画素の一部からなる第1画素群は前記第1画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の一方の三原色の濃淡値を含み、
前記複数の画素の他の一部からなる第2画素群は、前記第1画像と隣り合うように前記第2画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記他の一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の他方の三原色の濃淡値を含んだプログラム。
【請求項16】
前記第1画像データは、座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第1画像データ要素を含み、前記第2画像データは、座標値と減法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第2画像データ要素を含んだ請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記印刷データを生成するステップに先立って、複数の画像データ要素の各々が座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを含んだ元画像データから、前記第2画像データを生成するステップを前記コンピュータに更に実行させる請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記元画像データは前記第1画像データである請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項20】
印刷データに基づいて記録媒体へ熱転写記録方式によって画像を記録するプリンタと、
請求項15乃至18の何れか1項に記載のプログラムを記憶した記憶装置と、前記プログラムを実行することにより前記印刷データを生成する処理装置とを含み、前記印刷データを前記プリンタへ供給するコンピュータと
を備えたプリンタシステム。
【請求項21】
第1画像を含む画像を再現する第1画像データと、第2画像を含む画像を再現する第2画像データとから、印刷データを生成することを含み、
前記印刷データは、複数の画素に対応し、座標値と三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の印刷データ要素を含み、
前記複数の画素の一部からなる第1画素群は前記第1画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の一方の三原色の濃淡値を含み、
前記複数の画素の他の一部からなる第2画素群は、前記第1画像と隣り合うように前記第2画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記他の一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の他方の三原色の濃淡値を含んだ、印刷データの生成方法。
【請求項22】
前記第1画像データは、座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第1画像データ要素を含み、前記第2画像データは、座標値と減法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第2画像データ要素を含んだ請求項21に記載の印刷データの生成方法。
【請求項23】
前記印刷データの生成に先立って、複数の画像データ要素の各々が座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを含んだ元画像データから、前記第2画像データを生成することを更に含んだ請求項22に記載の印刷データの生成方法。
【請求項24】
前記元画像データは前記第1画像データである請求項23に記載の印刷データの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
識別(ID)カード、パスポート及び査証用ステッカなどの物品には、その偽造又は変造が困難であることが要求される。この要求に応えるべく、例えば、光輝性顔料及び蛍光顔料などの特殊顔料を含んだインキ、所謂、特殊インキを使用した印刷を行うことがある(特許文献1乃至3参照)。この印刷に、例えば、サーマルプリントヘッドを使用する熱転写記録方式を利用すると、個人情報などの物品毎に異なる情報を、容易に記録することができる(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-255234号公報
【特許文献2】特開平10-35089号公報
【特許文献3】特開2002-362069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偽造又は変造が困難であることが要求される物品には、特殊インキを使用した印刷に加えて、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのインキを使用した印刷を行うことがある。本発明者らは、そのような印刷を伴うセキュリティ印刷物の製造には、生産性について改善の余地があることを見出している。
【0005】
そこで、本発明は、セキュリティ印刷物の製造において、高い生産性を実現可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、感熱転写媒体を使用した熱転写記録方式によって印刷基材上に画像を記録することを含んだセキュリティ印刷物の製造方法であって、前記感熱転写媒体は、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、1以上のパネル区画を含み、前記1以上のパネル区画の少なくとも1つは、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含み、前記印刷基材上への前記画像の記録は、前記感熱転写媒体から中間転写媒体又は前記印刷基材への転写材の熱転写を前記パネル区画毎に行うことを含むセキュリティ印刷物の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の他の側面によると、前記1以上のパネル区画は、前記長さ方向に配列した2以上のパネル区画であり、前記2以上のパネル区画の1つはブラックインクパネルからなる上記側面に係るセキュリティ印刷物の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上のパネル区画は、前記長さ方向に配列し、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとを各々が含んだ第1乃至第3パネル区画を含み、前記第1乃至第3パネル区画の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、特定の条件下で赤色を呈する赤のインクパネル、前記条件下で緑色を呈する緑のインクパネル及び前記条件下で青色を呈する青のインクパネルのうちの1つが設けられ、前記第1乃至第3パネル区画の他の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤のインクパネル、前記緑のインクパネル及び前記青のインクパネルのうちの他の1つが設けられ、前記第1乃至第3パネル区画の残りは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤のインクパネル、前記緑のインクパネル及び前記青のインクパネルの残りが設けられた上記側面の何れかに係るセキュリティ印刷物の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、前記セキュリティフィーチャーパネルは、光輝性顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方を含んだ上記側面の何れかに係るセキュリティ印刷物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、熱転写記録方式によって印刷基材上に画像を記録することを含んだセキュリティ印刷物の製造方法において使用する感熱転写媒体であって、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、1以上のパネル区画を含み、前記1以上のパネル区画の少なくとも1つは、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含み、前記印刷基材上への前記画像の記録は、前記感熱転写媒体から中間転写媒体又は前記印刷基材への転写材の熱転写を前記パネル区画毎に行うことを含む感熱転写媒体が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第4パネル区画を含み、前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、前記第4パネル区画は、全体にブラックインクパネルが設けられた感熱転写媒体が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは面積が互いに異なる感熱転写媒体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記長さ方向に配列した上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記支持体の幅方向に配列した上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルと前記セキュリティフィーチャーパネルとは、前記支持体の幅方向に配列した感熱転写媒体が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記パネル区画の幅全体に亘って伸び、前記セキュリティフィーチャーパネルは、前記カラーインクパネルと比較して、前記支持体の幅方向における寸法がより小さい上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、帯状の支持体と、前記支持体上で前記支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備え、前記複数のパネルユニットの各々は、前記長さ方向に配列した第1乃至第3パネル区画を含み、前記第1パネル区画は、シアンのカラーインクパネルを含み、前記第2パネル区画は、マゼンタのカラーインクパネルを含み、前記第3パネル区画は、イエローのカラーインクパネルを含み、前記第1乃至第3パネル区画の1以上は、セキュリティフィーチャーパネルを更に含み、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記パネル区画の幅全体に亘って伸び、前記セキュリティフィーチャーパネルは、前記カラーインクパネルと比較して、前記支持体の幅方向における寸法がより小さい感熱転写媒体が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記カラーインクパネルは前記セキュリティフィーチャーパネルを取り囲んでいる上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、特定の条件下で赤色を呈する赤の光輝性インクパネル、前記条件下で緑色を呈する緑の光輝性インクパネル及び前記条件下で青色を呈する青の光輝性インクパネルのうちの1つが設けられ、前記第1乃至第3パネル区画の他の1つは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤の光輝性インクパネル、前記緑の光輝性インクパネル及び前記青の光輝性インクパネルのうちの他の1つが設けられ、前記第1乃至第3パネル区画の残りは、前記セキュリティフィーチャーパネルとして、前記赤の光輝性インクパネル、前記緑の光輝性インクパネル及び前記青の光輝性インクパネルの残りが設けられた上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3パネル区画のうち前記セキュリティフィーチャーパネルを含んだものにおいて、前記セキュリティフィーチャーパネルの面積は、前記カラーインクパネルの面積と比較してより小さい上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記セキュリティフィーチャーパネルは、光輝性顔料及び蛍光顔料の少なくとも一方を含んだ上記側面の何れかに係る感熱転写媒体が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、第1画像を含む画像を再現する第1画像データと、第2画像を含む画像を再現する第2画像データとから、印刷データを生成するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、前記印刷データは、複数の画素に対応し、座標値と三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の印刷データ要素を含み、前記複数の画素の一部からなる第1画素群は前記第1画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の一方の三原色の濃淡値を含み、前記複数の画素の他の一部からなる第2画素群は、前記第1画像と隣り合うように前記第2画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記他の一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の他方の三原色の濃淡値を含んだプログラムが提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、前記第1画像データは、座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第1画像データ要素を含み、前記第2画像データは、座標値と減法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第2画像データ要素を含んだ上記側面に係るプログラムが提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記印刷データを生成するステップに先立って、複数の画像データ要素の各々が座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを含んだ元画像データから、前記第2画像データを生成するステップを前記コンピュータに更に実行させる上記側面に係るプログラムが提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、前記元画像データは前記第1画像データである上記側面に係るプログラムが提供される。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係るプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、印刷データに基づいて記録媒体へ熱転写記録方式によって画像を記録するプリンタと、上記側面の何れかに係るプログラムを記憶した記憶装置と、前記プログラムを実行することにより前記印刷データを生成する処理装置とを含み、前記印刷データを前記プリンタへ供給するコンピュータとを備えたプリンタシステムが提供される。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、第1画像を含む画像を再現する第1画像データと、第2画像を含む画像を再現する第2画像データとから、印刷データを生成することを含み、前記印刷データは、複数の画素に対応し、座標値と三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の印刷データ要素を含み、前記複数の画素の一部からなる第1画素群は前記第1画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の一方の三原色の濃淡値を含み、前記複数の画素の他の一部からなる第2画素群は、前記第1画像と隣り合うように前記第2画像を表示し、前記複数の印刷データ要素のうち、前記複数の画素の前記他の一部に対応したものの各々は、前記三原色の濃淡値として減法混色及び加法混色の他方の三原色の濃淡値を含んだ、印刷データの生成方法が提供される。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記第1画像データは、座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第1画像データ要素を含み、前記第2画像データは、座標値と減法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第2画像データ要素を含んだ上記側面に係る印刷データの生成方法が提供される。
【0030】
本発明の更に他の側面によると、前記印刷データの生成に先立って、複数の画像データ要素の各々が座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを含んだ元画像データから、前記第2画像データを生成することを更に含んだ上記側面に係る印刷データの生成方法が提供される。
【0031】
本発明の更に他の側面によると、前記元画像データは前記第1画像データである上記側面に係る印刷データの生成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法において使用可能なプリンタの一例を示す図。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るプリンタシステムのブロック図。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る感熱転写媒体の平面図。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法において使用可能な記録媒体の一例を示す平面図。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る方法によって製造可能な印刷物の一例を示す平面図。
図6図6は、図5に示す印刷物のVI-VI線に沿った断面図。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法のフローチャート。
図8図8は、比較例に係る感熱転写媒体の平面図。
図9図9は、第1変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図10図10は、第2変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図11図11は、第3変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図12図12は、第4変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図13図13は、第5変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図14図14は、第6変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図15図15は、第7変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
図16図16は、第8変形例に係る感熱転写媒体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0034】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0035】
<1>プリンタシステム
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法において使用可能なプリンタの一例を示す図である。
【0036】
図1に示すプリンタ100は、間接転写方式の熱転写プリンタである。このプリンタ100は、巻き出し装置30及び70と、巻き取り装置40及び80と、一次転写部50と、二次転写部90と、図示しない搬送装置と、図示しない処理・制御装置とを含んでいる。
【0037】
巻き出し装置30には、巻かれた感熱転写媒体10が設置されている。ここでは、感熱転写媒体10は、フィルムである。巻き出し装置30は、感熱転写媒体10からなるロールを回転可能に支持するシャフトを含んでいる。巻き出し装置30は、感熱転写媒体10の巻き出しを可能とする。巻き出し装置30は、巻き出された感熱転写媒体10に加わる張力を調整するブレーキを更に備えることができる。
【0038】
巻き取り装置40は、巻き出し装置30から巻き出され、一次転写部50を通過した感熱転写媒体10を巻き取る。巻き取り装置40は、巻き取りモータを備えている。
【0039】
巻き出し装置70には、巻かれた中間転写媒体60が設置されている。ここでは、中間転写媒体60は、フィルムである。中間転写媒体は、基材と、その一方の主面に設けられたオーバーレイ層とを含むことができる。中間転写媒体は、オーバーレイ層を含んでいなくてもよい。巻き出し装置70は、中間転写媒体60からなるロールを回転可能に支持するシャフトと、シャフトを順/逆回転するモータを備えている。巻き出し装置70は、中間転写媒体60の巻き出しと巻き戻しとを可能とする。
【0040】
巻き取り装置80は、巻き出し装置70によって巻き出され、一次転写部50及び二次転写部90を通過した中間転写媒体60を巻き取る。巻き取り装置80は、中間転写媒体60を巻き取るシャフトとシャフトを回転させるモータを備えている。
【0041】
一次転写部50は、サーマルプリントヘッド51と、プラテンローラ52と、図示しないレーザと、図示しない光センサとを含んでいる。サーマルプリントヘッド51とプラテンローラ52とは、巻き出し装置30から巻き出された感熱転写媒体10及び巻き出し装置70から巻き出された中間転写媒体60を間に挟んで向き合うように配置されている。サーマルプリントヘッド51は、感熱転写媒体10へ熱圧を加えて、感熱転写媒体10から中間転写媒体60へのインキの転写を生じさせる。レーザは、感熱転写媒体10へレーザ光を照射する。光センサは、感熱転写媒体10を透過したレーザ光又は感熱転写媒体10によって反射されたレーザ光の強度を検出する。光センサの出力は、サーマルプリントヘッド51に対する感熱転写媒体10の位置合わせ等に利用する。一次転写部50は、レーザ及び光センサの代わりに、撮像装置を含んでいてもよい。撮像装置に感熱転写媒体10を撮像させ、これによって得られた画像を、サーマルプリントヘッド51に対する感熱転写媒体10の位置合わせ等に利用してもよい。
【0042】
二次転写部90は、ヒートローラ91と、プラテンローラ92と、図示しない撮像装置とを含んでいる。ヒートローラ91とプラテンローラ92とは、一次転写部50から送り出された中間転写媒体60と記録媒体20とを間に挟んで向き合うように配置されている。ヒートローラ91は、中間転写媒体60へ熱圧を加えて、中間転写媒体60から記録媒体20へのインキ層の転写を生じさせる。中間転写媒体60がオーバーレイ層を含んでいる場合、ヒートローラ91は、中間転写媒体60へ熱圧を加えることにより、インキ層とオーバーレイ層との積層体を、中間転写媒体60から記録媒体20へ転写させる。撮像装置は、中間転写媒体60を撮像する。この撮像装置によって取得した画像は、記録媒体20に対する中間転写媒体60の位置合わせに利用する。
【0043】
搬送装置は、記録媒体20を二次転写部90へ搬送する。搬送装置は、1以上の搬送ローラ、1以上の搬送ベルト、又はそれらの組み合わせと、それらを駆動するモータとを備えていてもよい。
【0044】
処理・制御装置は、光センサ及び撮像装置からの出力に基づいて、巻き出し装置30及び70、巻き取り装置40及び80、一次転写部50、二次転写部90、並びに搬送装置の動作を制御できる。処理・制御装置は、後述するコンピュータ本体310と同様に、中央処理装置と、主記憶装置と、補助記憶装置とを含んでいる。処理・制御装置による処理及び制御については、後で詳しく説明する。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態に係るプリンタシステムのブロック図である。
図2に示すプリンタシステムは、上述したプリンタ100と、コンピュータ300とを含んでいる。
【0046】
コンピュータ300は、コンピュータ本体310と、ネットワーク装置320と、入力装置330と、表示装置340と、プリンタ100に接続するネットワーク装置350とを含んでいる。
【0047】
コンピュータ本体310は、中央処理装置311と、主記憶装置312と、補助記憶装置313とを含んでいる。
【0048】
中央処理装置311は、大規模集積回路であって、演算装置311Aと、制御装置311Bとを含んでいる。演算装置311Aは、論理演算及び四則演算などの演算処理を行う。制御装置311Bは、実行する命令を解読し、各装置の動作を制御する。具体的には、入力装置330並びにネットワーク装置320から送出された指令及び情報を受け取り、演算装置311A、主記憶装置312、補助記憶装置313及びネットワーク装置350の動作を制御する。
【0049】
主記憶装置312は、処理すべき情報、プログラム及び演算結果等を一時的に記憶する。主記憶装置312は、揮発性メモリチップとメモリコントローラとにより構成できる。揮発性メモリの具体例は、ランダムアクセスメモリである。
【0050】
補助記憶装置313は、不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置313は、プログラム及び各種データを長期的に記憶可能である。補助記憶装置313は、具体的には、磁気記憶装置やフラッシュメモリ記憶装置である。補助記憶装置313は、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブの1以上を含むことができる。
【0051】
ネットワーク装置320は、コンピュータ300と外部装置とを有線又は無線接続可能とするものである。コンピュータ本体310は、ネットワーク装置320を介して外部装置から情報を受け取る。外部装置は、例えば、デジタルカメラ又はフラッシュメモリ記憶装置である。
【0052】
入力装置330は、オペレータの操作によってコンピュータ本体310へ指令及び情報を入力するためのものである。入力装置330は、ヒューマンインタフェースである。入力装置330は、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチパネル、及び音声入力装置の1以上で構成することができる。
【0053】
表示装置340は、中央処理装置311による演算処理の結果を表示する。オペレータは、表示に沿って操作を行う。表示装置340は、フラットパネルディスプレイとすることができる。
【0054】
ネットワーク装置350は、コンピュータ300とプリンタ100とを有線又は無線接続可能とするものである。コンピュータ本体310は、ネットワーク装置350を介して、プリンタ100へデータ及びコマンドを送信する。
【0055】
<2>感熱転写媒体
実施形態に係る感熱転写媒体は、帯状の支持体と、支持体上で支持体の長さ方向に配列した複数のパネルユニットとを備えている。各パネルユニットは、1以上のパネル区画を含んでいる。パネル区画の1以上は、各々が均質な1以上のカラーインクパネルと、各々が均質な1以上のセキュリティフィーチャーパネルとを含んでいる。上記の通り、パネル区画が有する1以上のカラーインクパネルは、各々が均質である。また、上記の通り、パネル区画が有する1以上のセキュリティフィーチャーパネルは、各々が均質である。
【0056】
各パネルは、不均質であってもよい。不均質な場合には、その不均質なインキの分布を、個々の記録媒体の認証のための特徴として利用可能である。均質な場合には、インキから形成された柄の視認性を高めることができる。
【0057】
カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含んだパネル区画は、境界域を含んでいてもよい。境界域は、境界線でもよい。境界線は、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとの間にある。カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとに挟まれた境界線の幅は、0.1mm以上、1mm以下とすることができる。
【0058】
境界域では、カラーインクパネルのカラーインキ層とセキュリティフィーチャーパネルの特殊インキ層又は機能層とが重なり合っているか、カラーインキ層、特殊インキ層及び機能層の何れも存在していないか、又は、或る部分でカラーインキ層と特殊インキ層又は機能層とが重なり合っており、他の部分ではカラーインキ層、特殊インキ層及び機能層の何れも存在してない。境界域にカラーインキ層特殊インキ層及び機能層の何れも存在していない構造は、ブロッキングを防止できる。境界域においてカラーインキ層と特殊インキ層又は機能層とが重なり合った構造は、カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルの有効に印字できる範囲を最大化できる。境界域の或る部分でカラーインキ層と特殊インキ層又は機能層とが重なり合い、他の部分にカラーインキ層、特殊インキ層及び機能層の何れも存在していない構造は、ブロッキング防止性と有効に印字できる範囲とのバランスを取ることができる。この境界域により、高精度の印刷機を用いなくてもインキと特殊インキとの過度な重なりを防止でき、印字できない空白の領域が大きくなることに起因した違和感が生じない。
【0059】
パネルユニットが複数のパネル区画を含んでいる場合、これらパネル区画は、支持体の一方の主面上で、支持体の長さ方向に配列している。この感熱転写媒体を使用すると、パネル区画毎に、ワンステップで、通常のインキの印刷及び特殊インキの印刷が行える。これにより、高速な印字が可能となる。また、高価な特殊インキ層又は機能層を、パネル区画の一部にのみ設けることができるので、コストの上昇を抑えられる。
【0060】
パネルユニットは、1以上のパネル区画に加え、センサマークを更に含むことができる。パネルユニットのカラーインクパネルは、減法混色の三原色又は単色としてもよい。パネルユニットは、特色のインクパネル含んだパネル区画を更に備えていてもよい。パネルユニットは、ブラックインクパネルを含んだパネル区画を更に備えることができる。セキュリティフィーチャーパネルは、加法混色の三原色を発するインキ又は構造とすることができる。セキュリティフィーチャーパネルは、単色のインキ又は構造としてもよい。
【0061】
図3は、本発明の一実施形態に係る感熱転写媒体の平面図である。
図3に示す感熱転写媒体は、支持体11と、複数のパネルユニットPGと、位置合わせマーク13Aと、位置検出マーク13Bとを含んでいる。
【0062】
支持体11は、帯状のフィルム又はシートである。支持体11は、転写時の熱に対して十分な耐性を有している。支持体11は、ポリマーフィルムとすることができる。ポリマーフィルムの材質は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンとすることができる。支持体11は、単層又は多層構造とすることができる。
【0063】
パネルユニットPGは、支持体11の一方の主面上で、支持体11の長さ方向に配列している。パネルユニットPGの各々は、支持体11の長さ方向に配列した複数のパネル区画を含んでいる。これらパネル区画の少なくとも1つは、カラーインクパネルとセキュリティフィーチャーパネルとを含んでいる。
【0064】
各パネル区画において、カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、支持体11の長さ方向に配列していてもよい。支持体11の長さ方向におけるカラーインクパネルの寸法L1Aは、支持体11の長さ方向におけるセキュリティフィーチャーパネルの寸法L1Bと比較してより大きい。寸法L1Bと寸法L1Aとの比L1B/L1Aは、一例によれば0.5乃至1.5の範囲内にあり、他の例によれば0.7乃至1.0の範囲内にある。
【0065】
また、各パネル区画において、カラーインクパネルの面積SS1は、セキュリティフィーチャーパネルの面積SS2と比較してより大きい。面積SS2と面積SS1との比SS2/SS1は、一例によれば0.1乃至2.0の範囲内にあり、他の例によれば0.5乃至1.0の範囲内にある。
【0066】
複数のパネル区画は、第1パネル区画PP1、第2パネル区画PP2、第3パネル区画PP3及び第4パネル区画PP4である。これらパネル区画は、支持体11の長さ方向における寸法L1が互いに等しい。また、これらパネル区画は、支持体11の幅方向における寸法W1が互いに等しい。なお、ここでは、寸法W1は、支持体11の幅よりも小さい。
【0067】
第1パネル区画PP1は、カラーインクパネルとしてシアンのカラーインクパネル12Cが設けられ、セキュリティフィーチャーパネルとして、特定の条件下で赤色を呈する赤のセキュリティフィーチャーパネル12Rが設けられている。第2パネル区画PP2は、カラーインクパネルとしてマゼンタのカラーインクパネル12Mと、セキュリティフィーチャーパネルとして、先の条件下で緑色を呈する緑のセキュリティフィーチャーパネル12Gが設けられている。第3パネル区画PP3は、カラーインクパネルとしてイエローのカラーインクパネル12Yが設けられ、セキュリティフィーチャーパネルとして、先の条件下で青色を呈する青のセキュリティフィーチャーパネル12Bが設けられている。第4パネル区画PP4は、全体がブラックインキからなるブラックインクパネル12Kである。即ち、第4パネル区画PP4は、ブラックインキからなる。なお、カラーインクパネル、セキュリティフィーチャーパネル及びブラックインクパネルの配置の順番は、インキの不透明度やインキの濃度に応じて決めることができる。つまり、上記の配置の順序は、一例である。
【0068】
カラーインクパネル12C、12M及び12Y並びにブラックインクパネル12Kの各々は、熱転写インキからなる。ここでは、熱転写インキは、色材とバインダ樹脂と分散媒を含んだカラーインキ又はブラックインキである。
【0069】
これらカラーインクパネルが含んでいる色材は、1種以上の顔料、1種以上の染料又はそれらの混合物である。これら色材は、可視域内の特定の帯域で高い吸収率を示す。これらカラーインキは、物体色を呈する。従って、これらカラーインクパネルやこれらカラーインキからなるカラー印刷パターンは、照明の方向や観察方向を変化させても、色が変化しない。また、これらカラーインクパネルやこれらカラーインキからなるカラー印刷パターンは、励起光により蛍光や燐光を発しないか、又は、励起光により蛍光や燐光を発するとしても、その強度は、後述の特殊顔料が発する蛍光や燐光の強度よりも低い。ここでは、カラーインクパネル12Cを構成しているカラーインキ、カラーインクパネル12Mを構成しているカラーインキ、カラーインクパネル12Yを構成しているカラーインキ、及びブラックインクパネル12Kを構成しているブラックインキは、それぞれ、白色光で照明した場合に、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック色を呈する。
【0070】
カラーインクパネル及びブラックインクパネルの厚さは、2μm以下、例えば、0.3μm以上2μm以下とすることができる。セキュリティフィーチャーパネルの厚さは、3μm以下、例えば、0.3μm以上3μm以下とすることができる。セキュリティフィーチャーパネルの厚さが3μmより大きいと、サーマルヘッドで加熱されていない領域も転写されてバリが発生し、印字品位が落ちやすい。セキュリティフィーチャーパネルの厚さが0.3μmより小さいと、印字濃度が低くなり、必要な色の濃さを得難い。
【0071】
セキュリティフィーチャーパネルの厚さT2と、カラーインクパネル及びブラックインクパネルの厚さT1との比T2/T1は、0.5より大きく、3.0より小さくすることができる。これにより、セキュリティフィーチャーパネルからの転写によって得られる印刷層が表示する画像の十分な視認性を確保しつつ、セキュリティフィーチャーパネルの厚さとカラーインクパネルの厚さとの相違に起因した、セキュリティフィーチャーパネルの位置での巻き締りを抑えることができる。
【0072】
セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bの各々は、特殊インキ又は機能層からなる。
【0073】
機能層は、ホログラム又は液晶ポリマー層とすることができる。ホログラムは、レリーフホログラム又はボリュームホログラムとすることができる。レリーフホログラムは、凹凸面を有する樹脂層と、凹凸面を被覆した蒸着層とからなるものとすることができる。液晶ポリマー層は、コレステリック液晶ポリマー層又はネマチック液晶ポリマー層とすることができる。液晶ポリマーは、ゲストホスト液晶、即ち、二色性色素と液晶との混合物としてもよい。
【0074】
ここでは、セキュリティフィーチャーパネルは、特殊インキからなる。また、ここでは、特殊インキは、特殊顔料とバインダ樹脂とを含んだ熱転写インキである。
【0075】
特殊顔料は、照明及び/又は観察条件により、色相や輝度が変化する。即ち、特殊顔料は、或る条件下で呈する色と、他の条件下で呈する色とが異なり、物体色とは異なる発色をする。従って、これらセキュリティフィーチャーパネルを熱転写してなる印刷パターンは、或る条件下で呈する色と、他の条件下で呈する色とが異なる。
【0076】
ここで、特殊顔料は、プロセスカラーで再現困難な顔料を指し、具体的にはカラーコピー等で複製困難な物体色又は構造色を呈する顔料である。
【0077】
物体色は、光を照射した際に特定の波長の光が反射され、この反射光を肉眼で観察することによって視認される色である。物体色を呈する顔料のうち、草色、オレンジ色、及び紫色のように、黄色、紅色、藍色及び黒色のプロセスカラーの組み合わせで再現が困難な色や、パステルカラーを呈するものは特殊顔料である。また、黒色顔料のうち、赤外線領域の光を透過するものも特殊顔料に当てはまる。更に、白色及び無色顔料のうち赤外線領域の光を吸収する顔料や、紫外線又は赤外線を照射した際に、照射した波長とは異なる波長の光を発光する蛍光顔料及び燐光顔料も特殊顔料である。
【0078】
構造色は、構造により特定の波長範囲の光が観察者の目に入らないようにすることで特定の色を観察者に視認させる顔料である。構造色を生じさせ得る光学過程としては、薄膜干渉、多層膜干渉、フォトニック結晶、回折格子、及び光散乱がある。構造色を呈する特殊顔料は、観察角度を変化させることにより色が変化して見える光輝性顔料である。
【0079】
特殊顔料は、蛍光顔料、燐光顔料、光輝性顔料、磁性インキ又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0080】
蛍光顔料は、励起光を照射することなしに白色光で照明した場合、一般には無色又は透明である。蛍光顔料は、励起光の照射により、蛍光を発する。燐光顔料は、励起光の照射により燐光を発する。可視域の蛍光及び燐光は、赤色、緑色及び青色などの色として視認できる。
【0081】
光輝性顔料は、干渉構造を備えた顔料である。光輝性顔料は、白色光照明下で、光の干渉によって、照明角度や観察角度に応じて異なる色を発する。
【0082】
ここでは、一例として、特殊顔料は、白色光で照明した場合に繰り返し反射干渉によって着色光を射出する光輝性顔料であるとする。
【0083】
そのような光輝性顔料の構造は、可視光透過性を有している鱗片状の核(フレーク)と、可視光透過性を各々が有し、核を覆った1以上の被覆層とを含んだものとすることができる。この構造を有している光輝性顔料は、パール顔料と呼ばれることもある。
【0084】
核は、互いに平行な一対の平面を有する鱗片状粒子である。核は、金属などの反射体やガラスなどの透明誘電体とすることができる。透明誘電体の核内では、その一方の主面に入射した光は、互いに平行な一対の平面による反射を繰り返し得る。しかしながら、鱗片状粒子は、干渉が起こる可視光の1/4波長と比較して一般的には厚いため、核内での繰り返し反射干渉によって、強い干渉光は生じない。
【0085】
カラーインキ及び特殊インキが含んでいるバインダ樹脂は、熱可塑性樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂の材質は、ポリエステルとすることができる。また、カラーインキ及び特殊インキが含んでいるバインダ樹脂の具体例は、アクリル樹脂である。光輝性顔料の製造において、このカラーインキ及び特殊インキは、有機溶剤で溶解して用いることができる。この有機溶剤は、ケトン、エステル、及びトルエン等の混合物とすることができる。カラーインキ及び特殊インキは、分散剤などの添加剤を更に含むことができる。
【0086】
バインダ樹脂として、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、スルホンアミド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、石油系樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、スチレン及びその誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類及びメタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体などを用いることができる。また、これらの樹脂は2種類以上混合して用いることもできる。
【0087】
また、各色のインクパネルの熱転写インキには、前記顔料やバインダ樹脂の他に、適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤といった添加剤を添加することができる。
【0088】
被覆層は、そのほぼ全体に亘って略均一な厚さを有している薄い層である。即ち、被覆層は、その表面が核の表面に対してコンフォーマルである薄い層である。
【0089】
被覆層のうち核と接しているものは、核とは屈折率が異なっている。また、光輝性顔料が2以上の被覆層を含んでいる場合、被覆層の隣り合ったものは、屈折率が異なっている。被覆層の各々は、透明誘電体とすることができる。透明誘電体は、無機化合物とすることができる。無機化合物は、酸化物とすることができる。酸化物は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、及び二酸化珪素とすることができる。被覆層の1以上は、金などの金属からなるものであってもよい。薄い金属からなる被覆層は、可視光透過性を有し得る。
【0090】
被覆層に入射した光は、この被覆層の下面と上面とによって反射され得る。被覆層は、略均一な厚さを有している薄い層であるので、被覆層に入射した光は、その上面と下面とを反射面とする繰り返し反射干渉を生じ、その結果、強い干渉光を生じ得る。強め合う干渉を生じる光の波長は、光路長に応じて変化する。そして、光路長は、拡散照明下での観察では観察角度に応じて変化する。即ち、通常用いられる拡散照明下では、強め合う干渉を生じる波長の光による干渉色は、観察角度に応じて変化する。なお、照明光が特定の波長の光のみを有する単色光では、このような色の変化は起きず、輝度の変化のみを生じる。一方、通常の照明は、白色光の照明であり、可視域内の広い波長帯域の光を含む。そのため、照明光のうち強め合う干渉を生じる光の波長は反射され、それ以外の光は、強め合う干渉を生じず、反射されない。その結果、強め合う干渉を生じた波長に応じた発色となる。
【0091】
また、光輝性顔料の表面は、核の表面に対してコンフォーマルである。即ち、光輝性顔料は、核と厚さ方向が等しい鱗片状粒子である。それ故、特殊顔料として光輝性顔料を含んだセキュリティフィーチャーパネルや、特殊顔料として光輝性顔料を含んだ特殊インキを記録媒体上に転写してなる光学可変パターンにおいて、光輝性顔料は、その厚さ方向がセキュリティフィーチャーパネル又は光学可変パターンの厚さ方向と略一致するように配向する。
【0092】
なお、磁性インキは、磁気によりその配向を制御できる。磁性インキは、強磁性体のフレークを被覆層で被覆したものとすることができる。これも、光輝性顔料である。強磁性体は、鉄またはステンレス片が好ましい。被覆層は、以下で記載のものを適用できる。
【0093】
従って、光輝性顔料を含んだ特殊インキを記録媒体上に転写してなる光学可変パターンは、観察角度に応じて異なる色相を呈する。
【0094】
また、光輝性顔料を含んだセキュリティフィーチャーパネルにより形成される光学可変パターンが特定の照明下及び観察条件下で呈する色相は、被覆層の材質及び厚さ等に応じて変更可能である。従って、特定の照明下及び観察条件下で或るセキュリティフィーチャーパネル又は光学可変パターンが呈する色を赤色とし、その照明下及び観察条件下で他のセキュリティフィーチャーパネル又は光学可変パターンが呈する色を緑色とし、その照明下及び観察条件下で更に他のセキュリティフィーチャーパネル又は光学可変パターンが呈する色を青色とすることができる。上記の光学特性を有するように光輝性顔料を選択することにより、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bは、特定の照明下及び観察条件下で、赤色、緑色及び青色をそれぞれ呈する。
【0095】
なお、光輝性顔料が2以上の被覆層を含んでいる場合、最表面の被覆層は、酸化鉄(III)からなるものであってもよい。そのような光輝性顔料を含んだ光学可変パターンは、或る観察角度では、干渉色を殆ど生じることなく、酸化鉄(III)の色である赤茶色に見えるようにすることができる。そして、観察角度を変化させると、干渉色が見えるようになる。
【0096】
位置合わせマーク13A及び位置検出マーク13Bは、支持体11上に設けられている。位置合わせマーク13A及び位置検出マーク13Bは、センサマークである。具体的には、位置合わせマーク13A及び位置検出マーク13Bは、光学的に読み取ることができ、互いから区別可能なマークである。
【0097】
位置検出マーク13Bは、1つのパネルユニットPGに対して1つの頻度で設けることができる。位置検出マーク13Bの、これに隣接したパネルユニットPGに対する相対的位置は、位置検出マーク13B間で互いに等しい。ここでは、各位置検出マーク13Bは、第4パネル区画PP4と隣接するように設けられている。
【0098】
位置合わせマーク13Aは、位置検出マーク13Bと隣接したパネル区画以外のパネル区画又はカラーパネル毎に設けられている。ここでは、位置合わせマーク13Aは、各パネルユニットPGに対して3つの頻度で設けられている。また、ここでは、位置合わせマーク13Aは、第1パネル区画PP1と隣接したものと、第2パネル区画PP2に隣接したものと、第3パネル区画PP3に隣接したものとを含んでいる。位置合わせマーク13Aの、これに隣接したパネル区画に対する相対位置は、位置合わせマーク13A間で互いに等しい。
【0099】
<3>記録媒体
図4は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法において使用可能な記録媒体の一例を示す平面図である。
【0100】
図4に示す記録媒体20は、カード状である。記録媒体20は、ここでは、厚さ方向に垂直な平面への正射影が略矩形状である。記録媒体20は、シート状又は冊子状であってもよい。
【0101】
記録媒体20のコア材の具体例は、紙、ポリマー、金属、無機粉体又はそれらの1以上を含んだ複合体からなる。記録媒体20は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0102】
記録媒体20は、表裏の主面を有している。記録媒体20は、少なくとも一方の主面を記録面として有している。ここでは、一例として、記録媒体20は、表裏の主面のうち一方を記録面として有していることとする。
【0103】
記録媒体20の記録面は、識別領域R1及び検証領域R2を含んでいる。なお、識別領域R1及び検証領域R2の輪郭は、それぞれ、後述する第1及び第2画像の記録面における有効範囲の輪郭である。識別領域R1及び検証領域R2の輪郭内で、記録面における第1及び第2画像の配置をそれぞれ決定できる。ここでは、識別領域R1及び検証領域R2の輪郭が存在しているものとして記載するが、実際の記録媒体20の記録面は、識別領域R1及び検証領域R2の輪郭を特定可能な特徴を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0104】
識別領域R1及び検証領域R2は、それぞれ、パネル区画のカラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルに対応している。ここでは、識別領域R1及び検証領域R2は、略矩形状又は略正方形状である。識別領域R1及び検証領域R2は、上記正射影の長辺に対して平行な方向に配列している。
【0105】
識別領域R1及び検証領域R2の配列は、上記正射影の長辺に対して平行な方向における寸法L2が、支持体11の長さ方向におけるパネル区画の寸法L1とほぼ等しい。例えば、寸法L2は、寸法L1よりも僅かに小さい。
【0106】
識別領域R1及び検証領域R2の配列は、上記正射影の短辺に対して平行な方向における寸法W2が、支持体11の幅方向におけるパネル区画の寸法W1とほぼ等しい。例えば、寸法W2は、寸法W1よりも僅かに小さい。
【0107】
上記正射影の長辺に対して平行な方向における識別領域R1の寸法L2Aは、支持体11の長さ方向におけるカラーインクパネルの寸法L1Aとほぼ等しい。例えば、寸法L2Aは、寸法L1Aよりも僅かに小さい。
【0108】
上記正射影の長辺に対して平行な方向における検証領域R2の寸法L2Bは、支持体11の長さ方向におけるセキュリティフィーチャーパネルの寸法L1Bとほぼ等しい。例えば、寸法L2Bは、寸法L1Bよりも僅かに小さい。
【0109】
<4>印刷物
図5は、本発明の一実施形態に係る方法によって製造可能な印刷物の一例を示す平面図である。図6は、図5に示す印刷物のVI-VI線に沿った断面図である。
【0110】
図5及び図6に示す印刷物200は、識別(ID)カードなどのカード状である。印刷物200は、シート状又は冊子状であってもよい。
【0111】
印刷物200は、図6に示すように、上記の記録媒体20と、オーバーレイ層21と、カラー印刷パターン22C、22M及び22Yと、ブラック印刷パターン22Kと、光学可変パターン22R、22G及び22Bと、接着層23とを含んでいる。
【0112】
オーバーレイ層21は、記録媒体20の記録面と向き合っている。オーバーレイ層21は、印刷物200の最表面層であり、カラー印刷パターン22C、22M及び22Y、ブラック印刷パターン22K、並びに、光学可変パターン22R、22G及び22B等を損傷から保護する。オーバーレイ層21は、透明なポリマーからなるものとすることができる。オーバーレイ層21は、省略することができる。透明なポリマーは、エポキシ樹脂とすることができる。
【0113】
接着層23は、記録媒体20とオーバーレイ層21との間に介在している。接着層23は、接着剤からなる。接着層23は、省略することができる。
【0114】
カラー印刷パターン22C、22M及び22Y並びにブラック印刷パターン22Kは、接着層23とオーバーレイ層21との間に介在している。カラー印刷パターン22C、22M及び22Y並びにブラック印刷パターン22Kは、それぞれ、図3を参照しながら説明したカラーインクパネル12C、12M及び12Y並びにブラックインクパネル12Kからインキの一部を転写することにより得られたものである。
【0115】
図6に示すカラー印刷パターン22C、22M及び22Yは、図4を参照しながら説明した識別領域R1上に配置されている。他方、ブラック印刷パターン22Kは、識別領域R1及び検証領域R2上に配置されている。カラー印刷パターン22C、22M及び22Yと、ブラック印刷パターン22Kのうち識別領域R1上に位置した部分の一部とは、図5に示す第1画像I1を表示する。そして、ブラック印刷パターン22Kの残りは、図5に示す第3画像I3を表示する。
【0116】
図6に示す光学可変パターン22R、22G及び22Bは、接着層23とオーバーレイ層21との間に介在している。光学可変パターン22R、22G及び22Bは、それぞれ、図3を参照しながら説明したセキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bから転写材の一部を転写することにより得られたものである。ここで、転写材は、特殊インキ又は機能層である。
【0117】
図6に示す光学可変パターン22R、22G及び22Bは、図4を参照しながら説明した検証領域R2上に配置されている。光学可変パターン22R、22G及び22Bは、図5に示す第2画像I2を表示する。
【0118】
第1画像I1は、物体色による色表現を行うカラー画像である。第1画像I1は、ここでは、個人情報の一部として、印刷物200の所有者の顔画像を含んだカラー画像である。第1画像I1は、他の画像であってもよい。上記の通り、第1画像I1は、カラー印刷パターン22C、22M及び22Y並びにブラック印刷パターン22Kからなる。従って、第1画像I1は、白色光で照明しながら照明方向又は観察方向を変化させても、色変化が生じない。
【0119】
第2画像I2は、構造色による色表現を行うカラー画像である。第2画像I2は、寸法が小さく、構造色による色表現を行うものであること以外は、第1画像I1と同一である。第2画像I2は、第1画像I1と寸法が等しくてもよい。第2画像I2は、寸法及び色表現法だけでなく、他の点でも第1画像I1とは異なっていてもよい。上記の通り、第2画像I2は、光学可変パターン22R、22G及び22Bからなる。従って、第2画像I2は、白色光で照明しながら照明方向又は観察方向を変化させると、色変化を生じる。
【0120】
第3画像I3は、物体色による色表現を行うモノクローム画像である。第3画像I3は、ここでは、文字及び文字列であり、上記人物の個人情報の他の一部を含んでいる。第3画像I3は、装飾模様及び幾何学図形等の他の画像であってもよい。上記の通り、第3画像I3は、ブラック印刷パターン22Kからなる。従って、第3画像I3は、白色光で照明しながら照明方向又は観察方向を変化させても、色変化を生じない。
【0121】
<5>印刷物(偽造防止媒体)の製造方法
図7は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法のフローチャートである。
【0122】
図7の方法では、図1及び図2を参照しながら説明したプリンタシステムと、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と、図4を参照しながら説明した記録媒体20とを使用して、図5及び図6を参照しながら説明した印刷物200を製造する。
【0123】
先ず、オペレータは、図2に示すコンピュータ300とデジタルカメラ及びフラッシュメモリ記憶装置などの外部装置とを、ネットワーク装置320を介して有線又は無線接続する。次に、オペレータは、キーボード及びマウス等の入力装置330を操作して、外部装置から第1画像データ及び元画像データをコンピュータ本体310へ取り込むとともに、テキストデータを入力する(ステップS1)。
【0124】
第1画像データは、図5に示す第1画像I1を含む画像を再現するデータである。第1画像データは、座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第1画像データ要素を含んでいる。
【0125】
元画像データは、第2画像データの生成に使用するデータである。第2画像データは、図5に示す第2画像I2を含む画像を再現するデータである。第2画像データは、座標値と減法混色の三原色の濃淡値とを各々が含んだ複数の第2画像データ要素を含んでいる。元画像データは、複数の画像データ要素の各々が座標値と加法混色の三原色の濃淡値とを含んでいる。
【0126】
なお、上記の通り、ここでは、第2画像I2は、寸法が小さく、構造色による色表現を行うものであること以外は、第1画像I1と同一である。従って、外部装置からコンピュータ本体310への元画像データの取り込みは行わず、後述するように、コンピュータ本体310へ取り込んだ第1画像データを元画像データとして利用して、第2画像データを生成してもよい。
【0127】
次に、中央処理装置311は、主記憶装置312が記憶しているプログラムに従って、以下の処理を実行する。
【0128】
即ち、中央処理装置311は、先ず、元画像データから第2画像データを生成する(ステップS2)。第2画像データは、以下の方法により元画像データから生成することができる。
【0129】
即ち、元画像データにおけるN番目の画素の赤、緑及び青の濃淡値を、それぞれ、G(N)、G(N)及びG(N)とする。また、元画像データにおける赤、緑及び青の各々の階調数から1を減じた値をGとする。例えば、元画像データの色毎の階調数が256である場合、Gは255である。この場合、第2画像データにおけるN番目の画素のシアンの濃淡値G(N)、マゼンタの濃淡値G(N)及びイエローの濃淡値G(N)は、以下の等式(1)乃至(3)から算出することができる。
【0130】
(N)=G-G(N) …(1)
(N)=G-G(N) …(2)
(N)=G-G(N) …(3)
上記の変換を全ての画素について行うことにより、元画像データから第2画像データを生成することができる。
【0131】
なお、第2画像データは、他の関数又はアルゴリズムを利用して、元画像データから生成することもできる。また、第2画像データは、第1画像データから生成してもよい。
【0132】
次に、中央処理装置311は、図4を参照しながら説明した記録媒体20の記録面上での画像の配置を決定する(ステップS3)。例えば、第1画像データによって再現される画像から第1画像I1を抽出し、この第1画像I1を、必要に応じて拡大又は縮小し、次いで、識別領域R1に対応した第1仮想領域上の予め定められている位置に配置する。また、元画像データ又は第2画像データによって再現される画像から第2画像I2を抽出し、この第2画像I2を、必要に応じて拡大又は縮小し、次いで、検証領域R2に対応した第2仮想領域上の予め定められている位置に配置する。そして、テキストデータによって再現される文字及び文字列の第3画像I3を、必要に応じて拡大又は縮小し、次いで、第1及び第2仮想領域の少なくとも一方の上の予め定められている位置に配置する。第3画像I3は、記録面上で第1画像I1及び第2画像I2とは重ならないように配置することができる。また、第3画像I3は、記録面上で第1画像I1及び/又は第2画像I2と重なるように配置することができる。
【0133】
中央処理装置311は、上記のように配置した画像と記録面の画像とを重ね合わせたプレビュー画像を、表示装置340に表示させることができる。オペレータは、表示装置340の画面に映し出されたプレビュー画像を確認し、必要な場合には、入力装置330の操作により、画像の抽出、拡大又は縮小、及び配置等の修正に関する指令をコンピュータ本体310へ入力する。中央処理装置311は、入力された指令に基づいて、画像の抽出、拡大又は縮小、及び配置等の修正を行い、その後、表示装置340に、上記と同様のプレビュー画像を再度表示させる。オペレータは、表示装置340の画面に映し出されたプレビュー画像を確認し、問題がなければ、入力装置330の操作により、配置等の決定に関する指令をコンピュータ本体310へ入力する。
【0134】
次に、中央処理装置311は、上記のようにして決定した配置等に基づいて、印刷データとして、カラー印刷データとモノクローム印刷データとを生成する(ステップS4)。
【0135】
具体的には、中央処理装置311は、上記のようにして決定した配置等に基づいて、第1画像データと第2画像データとから、カラー印刷データを生成する。
【0136】
カラー印刷データは、複数の画素に対応した複数の印刷データ要素を含んでいる。印刷データ要素の各々は、座標値と三原色の濃淡値とを含んでいる。
【0137】
複数の画素の一部からなる第1画素群は、第1画像I1を表示する。複数の印刷データ要素のうち、複数の画素の上記一部に対応したものの各々は、三原色の濃淡値として減法混色の三原色、即ち、シアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を含んでいる。
【0138】
複数の画素の他の一部からなる第2画素群は、第1画像I1と隣り合うように第2画像I2を表示する。複数の印刷データ要素のうち、複数の画素の上記他の一部に対応したものの各々は、三原色の濃淡値として加法混色の三原色、即ち、赤、緑及び青の濃淡値を含んでいる。
【0139】
カラー印刷データの生成は、以下の工程によって行うことができる。
先ず、中央処理装置311は、上記のように決定した第1画像I1の寸法及び位置等に基づいて、第1画像データから座標値と必要に応じて解像度とを変更した第1変換データを生成する。第1変換データが含んでいる各画像データ要素は、三原色の濃淡値として加法混色の三原色、即ち、赤、緑及び青の濃淡値を含んでいる。
【0140】
また、中央処理装置311は、上記のように決定した第2画像I2の寸法及び位置等に基づいて、第2画像データから座標値と必要に応じて解像度とを変更した第2変換データを生成する。第2変換データが含んでいる各画像データ要素は、三原色の濃淡値として減法混色の三原色、即ち、シアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を含んでいる。第2変換データは、第1変換データと、座標軸の各々における解像度を等しくする。
【0141】
中央処理装置311は、第1変換データと第2変換データとから、第4画像データを生成する。例えば、第1変換データの画像データ要素の各々を、これと同じ座標値を有している第2変換データの画像データ要素と対比する。前者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、前者の画像データ要素を、これに対応した第4画像データの画像データ要素とする。また、後者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、後者の画像データ要素を、これに対応した第4画像データの画像データ要素とする。そして、何れもゼロ以外の濃淡値を有していない場合は、これに対応した第4画像データの画像データ要素の各濃淡値をゼロとする。
【0142】
中央処理装置311は、第4画像データからカラー印刷データを生成する。カラー印刷データは、以下の方法により第4画像データから生成することができる。
【0143】
即ち、第4画像データにおける、N番目の画素の第1番目の色の濃淡値、第2番目の色の濃淡値及び第3番目の色の濃淡値を、それぞれ、G1A(N)、G2A(N)及びG3A(N)とする。また、第4画像データにおける各色の階調数から1を減じた値をGとする。例えば、第4画像データの色毎の階調数が256である場合、Gは255である。この場合、カラー印刷データにおけるN番目の画素の、第1番目の色の濃淡値G1B(N)、第2番目の色の濃淡値G2B(N)及び第3番目の色の濃淡値G2C(N)は、以下の等式(4)乃至(6)から算出することができる。
【0144】
1B(N)=G-G1A(N) …(4)
2B(N)=G-G2A(N) …(5)
3B(N)=G-G3A(N) …(6)
上記の変換を全ての画素について行うことにより、第4画像データからカラー印刷データを生成することができる。中央処理装置311は、他の関数又はアルゴリズムを利用して、カラー印刷データを生成してもよい。
【0145】
更に、中央処理装置311は、上記のように決定した第3画像I3の寸法及び位置等に基づいて、例えばテキストデータから第3変換データを生成する。第3変換データが含んでいる各画像データ要素は、座標値とブラックの濃淡値とを含んでいる。ブラックの濃淡値は、二値であってもよく、三値以上の多値であってもよい。第3変換データは、第1変換データと、座標軸の各々における解像度を等しくする。
【0146】
中央処理装置311は、上記の第3変換データを、モノクローム画像を表示するブラック印刷パターンを形成するためのモノクローム印刷データとする。モノクローム印刷データは、複数の画素に対応した複数の印刷データ要素を含んでいる。これら印刷データ要素の各々は、座標値とブラックの濃淡値とを含んでいる。濃淡値がゼロ以外の画素からなる第3画素群は、第3画像I3を表示する。
【0147】
コンピュータ300は、このようにして生成したカラー印刷データ及びモノクローム印刷データと印刷コマンドとを、ネットワーク装置350を介して、プリンタ100へ送出する(ステップS5)。
【0148】
プリンタ100は、カラー印刷データとモノクローム印刷データと印刷コマンドとに基づいて、記録媒体20の記録面への画像の記録を行う(ステップS6)。
【0149】
即ち、処理・制御装置は、感熱転写媒体10から中間転写媒体60へのインキの熱転写がパネル区画毎に行われるように、巻き取り装置40及び80、巻き出し装置30及び70、並びにサーマルプリントヘッド51の動作を制御する。具体的には、処理・制御装置は、中間転写媒体60の同一の領域に対して、1つのパネルユニットPGが含んでいる、第1パネル区画PP1、第2パネル区画PP2、第3パネル区画PP3及び第4パネル区画PP4からの転写材の熱転写が順次行われるように、巻き取り装置40及び80、巻き出し装置30及び70、並びにサーマルプリントヘッド51の動作を制御する。
【0150】
例えば、処理・制御装置は、巻き取り装置40が感熱転写媒体10を巻き取るように、その動作を制御する。即ち、処理・制御装置は、感熱転写媒体10が順方向へ移動するように巻き取り装置40の動作を制御する。そして、感熱転写媒体10のうち、サーマルプリントヘッド51の正面に位置した部分が、M-1番目のパネルユニットPGからM番目のパネルユニットPGへ切り替わった時点で、処理・制御装置は、巻き取り装置40が感熱転写媒体10の巻き取りを中断し、サーマルプリントヘッド51が第1パネル区画PP1から中間転写媒体60へのインキの転写を開始するように、それらの動作を制御する。
【0151】
巻き取り装置40による感熱転写媒体10の巻き取りを中断するタイミングは、以下に説明するように、位置検出マーク13Bを利用して決定する。レーザは、一次転写部50の近傍で、感熱転写媒体10のうちパネルユニットPGが設けられていない縁部へレーザ光を照射する。光センサは、感熱転写媒体10を透過したレーザ光又は感熱転写媒体10によって反射されたレーザ光の強度を検出する。レーザ光の照射部に位置合わせマーク13A又は位置検出マーク13Bが位置している場合と、レーザ光の照射部に位置合わせマーク13A又は位置検出マーク13Bが位置していない場合とでは、光センサが検出するレーザ光の強度が異なる。また、レーザ光の照射部を位置合わせマーク13Aが通過した場合に得られる波形と、レーザ光の照射部を位置検出マーク13Bが通過した場合に得られる波形とは、互いから区別可能である。処理・制御装置は、光センサの出力から、サーマルプリントヘッド51に対する感熱転写媒体10の相対的な位置を把握し、これに基づいて、巻き取り装置40による感熱転写媒体10の巻き取りを中断するタイミングを決定する。
【0152】
第1パネル区画PP1から中間転写媒体60へのインキの転写は、以下のようにして行う。
【0153】
処理・制御装置は、カラー印刷データに基づいて印刷濃度を決定する。例えば、N番目の画素に対応した印刷データ要素の第1番目の濃淡値がG(N)である場合、この画素の第1番目の色の印刷濃度P(N)はG(N)とすることができる。ここで、印刷データ要素の第1番目の濃淡値は、赤又はシアンの濃淡値である。処理・制御装置は、他の等式又はアルゴリズムを利用して、印刷濃度P(N)を算出してもよい。
【0154】
処理・制御装置は、N番目の画素に対応したサーマルプリントヘッド51の発熱体へ供給する電圧パルスの幅を、上記のようにして算出した印刷濃度P(N)に応じて制御する。即ち、印刷濃度P(N)が高い場合には、電圧パルスの幅を大きくする。発熱体の温度は、電圧パルスの幅に応じて変化する。それ故、サーマルプリントヘッド51とプラテンローラ52とによってそれらの間に介在した感熱転写媒体10及び中間転写媒体60に熱圧を加えることによって第1パネル区画PP1から中間転写媒体60へ転写される転写材の量も、電圧パルスの幅に応じて変化する。
【0155】
第1パネル区画PP1の幅全体で上記の転写動作を完了すると、処理・制御装置は、感熱転写媒体10及び中間転写媒体60が順方向へ僅かに移動するように、巻き取り装置40及び80の動作を制御する。そして、処理・制御装置は、上記と同様の濃淡値から印刷濃度への変換を行うとともに、第1パネル区画PP1の幅全体に亘って上記の転写動作が行われるようにサーマルプリントヘッド51の動作を制御する。処理・制御装置は、カラー印刷データにおける全ての第1番目の濃淡値について上記の転写動作が完了するまで、これらが交互に繰り返されるように、サーマルプリントヘッド51、巻き取り装置40及び80の動作を制御する。
【0156】
以上のようにして、中間転写媒体60上に、カラー印刷パターン22C及び光学可変パターン22Rが形成される。なお、以下、中間転写媒体60のうち上記の転写動作が行われた部分を、被転写部と呼ぶ。
【0157】
全ての第1番目の濃淡値について上記の転写動作が完了した後、処理・制御装置は、被転写部が、第1番目の濃淡値について上記の転写動作を開始した時点の位置へ戻るまで逆方向へ移動するように、巻き出し装置70の動作を制御する。また、処理・制御装置は、第2パネル区画PP2のうち第1パネル区画PP1と隣接した部分がサーマルプリントヘッド51の正面に位置するように、巻き取り装置40の動作を制御する。この位置決めには、位置合わせマーク13Aを利用する。
【0158】
次いで、処理・制御装置は、第1番目の濃淡値について上述したのと同様の処理及び制御を、第2番目の濃淡値について行う。ここで、印刷データ要素の第2番目の濃淡値は、緑又はマゼンタの濃淡値である。以上のようにして、中間転写媒体60の被転写部上に、カラー印刷パターン22M及び光学可変パターン22Gが更に形成される。
【0159】
全ての第2番目の濃淡値について上記の転写動作が完了した後、処理・制御装置は、被転写部が、第1番目の濃淡値について上記の転写動作を開始した時点の位置へ戻るまで逆方向へ移動するように、巻き出し装置70の動作を制御する。また、処理・制御装置は、第3パネル区画PP3のうち第2パネル区画PP2と隣接した部分がサーマルプリントヘッド51の正面に位置するように、巻き取り装置40の動作を制御する。この位置決めには、位置合わせマーク13Aを利用する。
【0160】
次いで、処理・制御装置は、第1番目の濃淡値について上述したのと同様の処理及び制御を、第3番目の濃淡値について行う。ここで、印刷データ要素の第3番目の濃淡値は、青又はイエローの濃淡値である。以上のようにして、中間転写媒体60の被転写部上に、カラー印刷パターン22Y及び光学可変パターン22Bが更に形成される。
【0161】
全ての第3番目の濃淡値について上記の転写動作が完了した後、処理・制御装置は、被転写部が、第1番目の濃淡値について上記の転写動作を開始した時点の位置へ戻るまで逆方向へ移動するように、巻き出し装置70の動作を制御する。また、処理・制御装置は、第4パネル区画PP4のうち第3パネル区画PP3と隣接した部分がサーマルプリントヘッド51の正面に位置するように、巻き取り装置40の動作を制御する。この位置決めには、位置合わせマーク13A又は位置検出マーク13Bを利用する。
【0162】
次いで、処理・制御装置は、カラー印刷データの代わりにモノクローム印刷データを利用すること以外は、第1番目の濃淡値について上述したのと同様の処理及び制御を行う。以上のようにして、中間転写媒体60の被転写部上に、ブラック印刷パターン22Kが更に形成される。
【0163】
その後、処理・制御装置は、中間転写媒体60の被転写部が二次転写部90まで順方向へ移動するように、巻き取り装置80の動作を制御する。これとともに、処理・制御装置は、記録媒体20が、その記録面の位置が被転写部の位置と一致して二次転写部90へ搬送されるように、搬送装置の動作を制御する。続いて、処理・制御装置は、ヒートローラ91とプラテンローラ92とが、それらの間に挟まれた中間転写媒体60及び記録媒体20へ、熱圧を被転写部の一端から他端まで順次加えるように、巻き取り装置80、搬送装置及びヒートローラ91等の動作を制御する。
【0164】
この操作により、カラー印刷パターン22C、22M及び22Y、ブラック印刷パターン22K、並びに、光学可変パターン22R、22G及び22Bは、中間転写媒体60から記録媒体20上へ転写される。以上のようにして、図5及び図6を参照しながら説明した印刷物200を得る。
【0165】
<6>効果
上述した製造方法は、特殊インキ又は機能層とカラーインキとブラックインキとを使用する印刷を伴うにも拘わらず、高い生産性を実現することができる。これについて、以下に説明する。
【0166】
図8は、比較例に係る感熱転写媒体の平面図である。図8に示す感熱転写媒体10Aは、以下の構成を採用したこと以外は、上述した感熱転写媒体10と同様である。即ち、感熱転写媒体10Aでは、カラーインクパネル12C、12M及び12Y、ブラックインクパネル12K、並びに、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bの各々は、支持体11の長さ方向における寸法が、感熱転写媒体10について上述した寸法L1と等しい。換言すれば、各パネル区画には、カラーインクパネル12C、12M及び12Y、ブラックインクパネル12K、並びに、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bの何れか1つのみが設けられている。また、感熱転写媒体10Aでは、インクパネル毎に、位置合わせマーク13A又は位置検出マーク13Bが配置されている。
【0167】
感熱転写媒体10を使用する上記の方法では、パネル区画毎に転写を行う。1つのパネルユニットPGが含んでいるパネル区画の数は4であるので、1つの被転写領域に対して行う転写動作の回数は4回である。
【0168】
これに対し、感熱転写媒体10の代わりに感熱転写媒体10Aを使用して印刷物200を製造する場合、インクパネル毎に転写を行うことになる。1つのパネルユニットPGが含んでいるインクパネルの数は7であるので、1つの被転写領域に対して行う転写動作の回数は7回である。
【0169】
このように、感熱転写媒体10を使用する上記方法によると、感熱転写媒体10Aを使用する方法と比較して少ない転写動作回数で、印刷物200を製造することができる。従って、感熱転写媒体10を使用する上記方法によると、高い生産性を達成することができる。
【0170】
また、支持体11の長さ方向におけるパネルユニットPGの寸法は、図8に示す感熱転写媒体10Aでは寸法L2であるのに対し、図3に示す感熱転写媒体10では寸法L1である。寸法L1は、寸法L2と比較して遥かに小さい。従って、支持体11の長さが等しい場合、感熱転写媒体10では、感熱転写媒体10Aと比較して、支持体11上により多くのパネルユニットPGを配置することができる。
【0171】
更に、感熱転写媒体10のカラーインクパネル12C、12M及び12Y並びにセキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bは、それぞれ、感熱転写媒体10Aのカラーインクパネル12C、12M及び12Y並びにセキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bと比較して、面積がより小さい。それ故、感熱転写媒体10を使用するプリンタシステムは、感熱転写媒体10Aを使用するプリンタシステムと比較して、ランニングコストがより低い。特殊インキ及び機能層はカラーインキと比較して高価であるので、低コスト化の効果は大きい。
【0172】
また、上記のプリンタシステムは、コンピュータ300からプリンタ100へ送出するカラー印刷データ等を適宜変更すれば、感熱転写媒体10Aを使用した印刷物200の製造にも利用可能である。逆に言えば、感熱転写媒体10Aを使用した印刷物200の製造に利用可能なプリンタシステムがあれば、プリンタ100のファームウェアを変更することなしに、コンピュータ300に実行させるプログラムと感熱転写媒体とを変更するだけで、上記の効果を得ることができる。
【0173】
<7>変形例
上述した技術には、様々な変更が可能である。以下に、幾つかの変形例を記載する。なお、以下において参照する図9乃至図16では、簡略化のために、位置合わせマーク13A及び位置検出マーク13Bを省略している。
【0174】
<7.1>第1変形例
図9は、第1変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図9に示す感熱転写媒体10Bは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0175】
即ち、感熱転写媒体10Bでは、カラーインクパネルはパネル区画の幅全体に亘って伸びている。セキュリティフィーチャーパネルは、カラーインクパネルと比較して、支持体11の幅方向における寸法がより小さい。そして、カラーインクパネルは、セキュリティフィーチャーパネルを取り囲んでいる。
【0176】
感熱転写媒体10Bを使用した場合、感熱転写媒体10を使用した場合と比較して、第2画像I2の配置の自由度が低くなる可能性がある。従って、感熱転写媒体10Bは、記録面上における第2画像I2の位置が狭い範囲に限定されている場合に、特に適している。
【0177】
<7.2>第2変形例
図10は、第2変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図10に示す感熱転写媒体10Cは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0178】
即ち、感熱転写媒体10Cでは、カラーインクパネルはパネル区画の幅全体に亘って伸びている。セキュリティフィーチャーパネルは、カラーインクパネルと比較して、支持体11の幅方向における寸法がより小さい。カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、互いから離間している。なお、感熱転写媒体10Bとは異なり、カラーインクパネルは、セキュリティフィーチャーパネルを取り囲んでいない。
【0179】
感熱転写媒体10Cも、感熱転写媒体10Bと同様に、記録面上における第2画像I2の位置が狭い範囲に限定されている場合に、特に適している。また、第1及びセキュリティフィーチャーパネルは互いから離間しているので、インクパネル同士の重なりは生じ難い。
【0180】
なお、感熱転写媒体10Cは、セキュリティフィーチャーパネルの周囲に、インクパネルが設けられていない境界域を有している。これに起因して、感熱転写媒体10Cは、感熱転写媒体10及び10Bと比較して、厚さのばらつきが大きい。それ故、感熱転写媒体10Cをロール状に巻く際には、張力の管理をより厳密に行うことが望ましい。
【0181】
<7.3>第3変形例
図11は、第3変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図11に示す感熱転写媒体10Dは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0182】
即ち、感熱転写媒体10Dでは、カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、支持体11の幅方向に配列している。支持体11の長さ方向における第1及びセキュリティフィーチャーパネルの寸法は、支持体11の長さ方向におけるパネル区画の寸法L1と等しい。また、カラーインクパネルの面積とセキュリティフィーチャーパネルの面積とは互いに等しい。
【0183】
この構造は、記録媒体20の幅のほぼ全体に亘って特殊インキによる印刷を行う場合に適し得る。なお、支持体11の長さ方向におけるカラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルの寸法は、支持体11の長さ方向におけるパネル区画の寸法L1とは異なっていてもよい。
【0184】
また、カラーインクパネルの面積SS1とセキュリティフィーチャーパネルの面積SS2とは、異なっていてもよい。この場合、面積SS2と面積SS1との比SS2/SS1は、図3を参照しながら説明した範囲内にあってもよい。
【0185】
<7.4>第4変形例
図12は、第4変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図12に示す感熱転写媒体10Eは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0186】
即ち、感熱転写媒体10Eでは、各パネル区画において、カラーインクパネルは、支持体11の長さ方向に配列した2つの領域からなり、これら領域間にセキュリティフィーチャーパネルが介在している。2つの領域は、面積が互いに異なっている。
【0187】
この構造は、上記2つの領域のうち、面積がより大きい領域を顔画像の印刷に利用し、面積がより小さい領域をマークや文字列の印刷に利用する場合に適し得る。
【0188】
なお、2つの領域は、支持体11の幅方向に配列していてもよい。また、セキュリティフィーチャーパネルが2つの領域からなり、それらの間にカラーインクパネルが介在した構造を採用してもよい。
【0189】
<7.5>第5変形例
図13は、第5変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図13に示す感熱転写媒体10Fは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0190】
即ち、感熱転写媒体10Fでは、支持体11の長さ方向におけるカラーインクパネルの寸法L1Aは、支持体11の長さ方向におけるセキュリティフィーチャーパネルの寸法L1Bと比較してより小さい。即ち、カラーインクパネルの面積SS1は、セキュリティフィーチャーパネルの面積SS2と比較してより小さい。
【0191】
このように、カラーインクパネルの面積SS1は、セキュリティフィーチャーパネルの面積SS2と比較してより小さくてもよい。この場合、一例によれば、面積SS1と面積SS2との比SS1/SS2は、図3を参照しながら説明した面積SS2と面積SS1との比SS2/SS1の範囲と同じ範囲内にあってもよい。また、それら面積SS1及びSS2は、互いに等しくてもよい。
【0192】
<7.6>第6変形例
図14は、第6変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図14に示す感熱転写媒体10Gは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0193】
即ち、感熱転写媒体10Gでは、カラーインクパネルはパネル区画の幅全体に亘って伸びている。セキュリティフィーチャーパネルは、カラーインクパネルと比較して、支持体11の幅方向における寸法がより小さい。カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、互いから離間している。なお、感熱転写媒体10Cと同様に、カラーインクパネルは、セキュリティフィーチャーパネルを取り囲んでいない。但し、感熱転写媒体10Cとは異なり、感熱転写媒体10Gは、セキュリティフィーチャーパネル12G及び12Bを含んでいない。即ち、第2パネル区画PP2及び第3パネル区画PP3では、第1パネル区画PP1におけるセキュリティフィーチャーパネル12Rの位置に相当する位置P2に、セキュリティフィーチャーパネル12G及び12Bがそれぞれ設けられていない。
【0194】
感熱転写媒体10Gも、感熱転写媒体10Bと同様に、記録面上における第2画像I2の位置が狭い範囲に限定されている場合に、特に適している。また、特殊インキ及び機能層はカラーインキと比較して高価であるので、感熱転写媒体10Gは、低コスト化が求められる場合にも適している。そして、カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは互いから離間しているので、インクパネル同士の重なりは生じ難い。
【0195】
なお、感熱転写媒体10Gは、セキュリティフィーチャーパネル12Rの周囲に、インクパネルが設けられていない境界域を有している。そして、感熱転写媒体10Gでは、位置P2にセキュリティフィーチャーパネルは設けられておらず、その周囲にインクパネルは設けられていない。これに起因して、感熱転写媒体10Gは、感熱転写媒体10及び10Bと比較して、厚さのばらつきが大きい。それ故、感熱転写媒体10Gをロール状に巻く際には、感熱転写媒体10Cをロール状に巻く際と同様に、張力の管理をより厳密に行うことが望ましい。
【0196】
<7.7>第7変形例
図15は、第7変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図15に示す感熱転写媒体10Hは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0197】
即ち、感熱転写媒体10Hでは、パネルユニットPGは、第5パネル区画PP5を更に含んでいる。各パネルユニットPGの第5パネル区画PP5は、そのパネルユニットPGの第4パネル区画PP4と、これと隣接したパネルユニットPGとの間に介在している。第5パネル区画PP5には、プライマーからなるプライマーパネル12Pが設けられている。プライマーの具体例は、ポリウレタンである。
【0198】
感熱転写媒体10Hを使用し、プライマーパネル12Pから被転写部へ接着剤を転写すると、特には、中間転写媒体60がオーバーレイ層を含んでいる場合に、印刷物200の損傷を生じ難くなる。
【0199】
<7.8>第8変形例
図16は、第8変形例に係る感熱転写媒体の平面図である。図16に示す感熱転写媒体10Iは、以下の構成を採用したこと以外は、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10と同様である。
【0200】
即ち、感熱転写媒体10Iでは、パネルユニットPGは、第5パネル区画PP5と、第6パネル区画PP6と、第7パネル区画PP7とを更に含んでいる。各パネルユニットPGにおいて、第5パネル区画PP5、第6パネル区画PP6、及び第7パネル区画PP7は、そのパネルユニットPGの第4パネル区画PP4側から、これと隣接したパネルユニットPGへ向けて順次配列している。
【0201】
第5パネル区画PP5には、プライマーからなるプライマーパネル12Pが設けられている。第6パネル区画PP6には、ブラックインキからなるブラックインクパネル12K2が設けられている。第7パネル区画PP7には、プライマーからなるプライマーパネル12P2が設けられている。
【0202】
感熱転写媒体10Iは、記録媒体20の両面へ印刷する場合に使用する。具体的には、第1パネル区画PP1、第2パネル区画PP2、第3パネル区画PP3、第4パネル区画PP4及び第5パネル区画PP5は、記録媒体20の一方の面への印刷に利用する。そして、第6パネル区画PP6及び第7パネル区画PP7は、記録媒体20の他方の面への印刷に利用する。なお、感熱転写媒体10Iを用いて記録媒体20の両面へ印刷する場合、プリンタ100には、記録媒体20を反転させる反転装置を設ける。
【0203】
<7.9>第9変形例
上記のカラー印刷データ及びモノクローム印刷データは、以下の方法で生成することもできる。
【0204】
即ち、中央処理装置311は、上記と同様の処理により、第1及び第2変換データと第3画像データとを生成する。
【0205】
次に、中央処理装置311は、赤、緑及び青の濃淡値を含んだ上記の第1変換データから、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの濃淡値を含んだ第4変換データを生成する。第4変換データは、以下の方法により第1変換データから生成することができる。
【0206】
即ち、第1変換データにおけるN番目の画素の赤、緑及び青の濃淡値を、それぞれ、GR1(N)、GG1(N)及びGB1(N)とする。また、第1変換データにおける赤、緑及び青の各々の階調数から1を減じた値をGとする。例えば、第1変換データの色毎の階調数が256である場合、Gは255である。この場合、第4変換データにおけるN番目の画素のシアンの濃淡値GC4(N)、マゼンタの濃淡値GM4(N)、イエローの濃淡値GB4(N)及びブラックの濃淡値GK4(N)は、以下の等式(7)乃至(10)から算出することができる。
【0207】
C4(N)=G-GR1(N)-GK4(N) …(7)
M4(N)=G-GG1(N)-GK4(N) …(8)
Y4(N)=G-GB1(N)-GK4(N) …(9)
K4(N)=G-Max[GR1(N),GG1(N),GB1(N)] …(10)
上記の変換を全ての画素について行うことにより、第1変換データから第4変換データを生成することができる。なお、第4変換データは、他の関数又はアルゴリズムを利用して、第1変換データから生成することもできる。
【0208】
また、中央処理装置311は、シアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を含んだ上記の第2変換データから、赤、緑及び青の濃淡値を含んだ第5変換データを生成する。第5変換データは、以下の方法により第2変換データから生成することができる。
【0209】
即ち、第2変換データにおけるN番目の画素のシアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を、それぞれ、GC2(N)、GM2(N)及びGY2(N)とする。また、第2変換データにおけるシアン、マゼンタ及びイエローの各々の階調数から1を減じた値をGとする。例えば、第2変換データの色毎の階調数が256である場合、Gは255である。この場合、第5変換データにおけるN番目の画素の赤の濃淡値GR5(N)、緑の濃淡値GG5(N)及び青の濃淡値GB5(N)は、以下の等式(11)乃至(13)から算出することができる。
【0210】
R5(N)=G-GC2(N) …(11)
G5(N)=G-GM2(N) …(12)
B5(N)=G-GY2(N) …(13)
上記の変換を全ての画素について行うことにより、第2変換データから第5変換データを生成することができる。なお、第5変換データは、他の関数又はアルゴリズムを利用して、第2変換データから生成することもできる。
【0211】
中央処理装置311は、第4変換データの一部と第5変換データとから、カラー印刷データを生成する。例えば、第4変換データの画像データ要素のうち、シアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を、これと同じ座標値を有している第5変換データの画像データ要素の赤、緑及び青の濃淡値と対比する。前者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、前者の画像データ要素のうち、シアン、マゼンタ及びイエローの濃淡値を、これに対応したカラー印刷データの印刷データ要素とする。また、後者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、後者の画像データ要素の赤、緑及び青の濃淡値を、これに対応したカラー印刷データの印刷データ要素とする。そして、何れもゼロ以外の濃淡値を有していない場合は、これに対応したカラー印刷データの印刷データ要素の各濃淡値をゼロとする。
【0212】
また、中央処理装置311は、第4変換データの他の一部と第3画像データとから、モノクローム印刷データを生成する。例えば、第4変換データの画像データ要素のうちブラックの濃淡値を、これと同じ座標値を有している第3画像データの画像データ要素のブラックの濃淡値と対比する。前者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、前者の画像データ要素のうちブラックの濃淡値を、これに対応したモノクローム印刷データの印刷データ要素とする。また、後者がゼロ以外の濃淡値を有している場合は、後者の画像データ要素のブラックの濃淡値を、これに対応したモノクローム印刷データの印刷データ要素とする。そして、何れもゼロ以外の濃淡値を有していない場合は、これに対応したモノクローム印刷データの印刷データ要素の各濃淡値をゼロとする。
【0213】
このようにして生成したカラー印刷データ及びモノクローム印刷データを使用した場合、第1画像I1における黒色はより暗くなる。
【0214】
なお、この方法では、画像データ要素の各々が加法混色の三原色の濃淡値を含んだ元画像データから、画像データ要素の各々が減法混色の三原色の濃淡値を含んだ第2画像データを生成し、この第2画像データから、画像データ要素の各々が減法混色の三原色の濃淡値を含んだ第2変換データを生成し、この第2変換データから、画像データ要素の各々が加法混色の三原色の濃淡値を含んだ第5変換データを生成している。即ち、この方法では、RGB-CMY変換とCMY-RGB変換とを行っている。これら変換は、元画像データを第2画像データとして用いて第2変換データを生成し、この第2変換データを第5変換データとして使用すれば、省略することができる。
【0215】
<7.10>他の変形例
セキュリティフィーチャーパネルが含む特殊顔料として、光輝性顔料の代わりに、蛍光顔料を使用してもよい。或るセキュリティフィーチャーパネルが含む特殊顔料を光輝性顔料とし、他のセキュリティフィーチャーパネルが含む特殊顔料を蛍光顔料としてもよい。また、或るセキュリティフィーチャーパネルが含む特殊顔料を光輝性顔料及び蛍光顔料の一方とし、他のセキュリティフィーチャーパネルが含む特殊顔料を光輝性顔料と蛍光顔料との組み合わせとしてもよい。
【0216】
パネル区画のカラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、様々な形状を有し得る。カラーインクパネル及びセキュリティフィーチャーパネルは、円形又は楕円形であってもよい。
【0217】
パネルユニットが含むパネル区画の数に制限はない。パネルユニットが含むパネル区画の数は、1乃至3の何れかとしてもよい。つまり、パネルユニットが含んでいるパネル区画の数は、1以上であればよい。
【0218】
第3画像I3は、第1画像I1及び第2画像I2から離間させてもよく、第1画像I1及び第2画像I2の少なくとも一方と重ねてもよい。第3画像I3の少なくとも一部は、第2画像I2の少なくとも一部を縁取ることができる。
【0219】
上記の方法では、RGB-CMY変換及びCMY-RGB変換の全てをコンピュータ300において行っている。RGB-CMY変換及びCMY-RGB変換の一部は、プリンタ100において行ってもよい。
【0220】
上記のプリンタシステムは、間接転写方式のプリンタ100を含んでいるが、プリンタシステムは直接転写方式のプリンタを含んでいてもよい。即ち、感熱転写媒体から記録媒体上への転写材の転写は、中間転写媒体を介することなしに、直接行ってもよい。
【実施例0221】
以下に、本発明の具体例を記載する。
【0222】
寸法L1Aと寸法L1Bとを等しくしたこと以外は図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10とほぼ同様の感熱転写媒体を製造した。
ここでは、支持体11として、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さが12μmのフィルムを使用した。この支持体11上に、グラビアコータを使用して、シアンのカラーインクパネル12C、赤のセキュリティフィーチャーパネル12R、マゼンタのカラーインクパネル12M、緑のセキュリティフィーチャーパネル12G、イエローのカラーインクパネル12Y、青のセキュリティフィーチャーパネル12B、及びブラックインクパネル12Kを、支持体11の長さ方向に沿ってこの順に形成した。各セキュリティフィーチャーパネルは、特殊インキとして光輝性インキを使用して形成した。
【0223】
カラーインクパネル12C、12M及び12Y並びにブラックインクパネル12Kの厚さは、1.0μmとした。セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bの厚さは、1.5μmとした。そして、寸法L1は400mmとし、寸法L1は100mmとし、寸法L1A及びL1Bは50mmとした。
【0224】
以下に、カラーインクパネル12C、12M及び12Yに使用したカラーインキの組成と、ブラックインクパネル12Kの形成に使用したブラックインキの組成と、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bの形成に使用した光輝性インキの組成とを記載する。
【0225】
[カラーインキ及び特殊インキの組成]
顔料 5質量部
バインダ樹脂 15質量部
分散媒 80質量部
なお、カラーインキ、ブラックインキ及び光輝性インキの何れにおいても、バインダ樹脂としては、東洋紡株式会社製のバイロン(登録商標)500を使用した。また、分散媒としては、カラーインキ、ブラックインキ及び光輝性インキの何れにおいても、東洋インキ製造株式会社製のメチルエチルケトンを使用した。
【0226】
以上のようにして、図3を参照しながら説明した感熱転写媒体10とほぼ同様の感熱転写媒体を製造した。以下、この感熱転写媒体を、第1サンプルと呼ぶ。
【0227】
また、比較の目的で、セキュリティフィーチャーパネル12R、12G及び12Bに対応した部分を省略したこと以外は、図8を参照しながら説明した感熱転写媒体10Aとほぼ同様の感熱転写媒体を製造した。この感熱転写媒体は、上記の構造を採用した点を除いて、第1サンプルと同様の方法により製造した。なお、この感熱転写媒体では、第1サンプルと同様に、寸法L1は100mmとし、寸法L2は400mmとした。以下、この感熱転写媒体を、第2サンプルと呼ぶ。
【0228】
次に、第1サンプルと、図1及び図2を参照しながら説明したプリンタシステムと、図4を参照しながら説明した記録媒体20とを使用し、図5及び図6を参照しながら説明した印刷物200としてのIDカードを、図7等を参照しながら説明した方法により製造した。ここでは、プリンタ100として、凸版印刷株式会社製のカードプリンタCP500を使用した。記録媒体20としては、JIS X6301:2005「識別カード-物理的特性」に規定されているID-1カードを使用した。また、コンピュータ300に実行させるプログラムを搭載したカード発行ソフトウェアとして、TopCard Maker Exを使用した。ステップS2に相当する処理には、別のソフトウェアを利用した。
【0229】
また、第1サンプルの代わりに第2サンプルを使用し、第2画像I2に関するデータを印刷データに含めなかったこと以外は、上記と同様の方法によりIDカードを製造した。
【0230】
第1サンプルを使用して得られたIDカードは、第1画像I1及び第3画像I3だけでなく、観察方向を変化することにより色変化を生じる第2画像I2を表示した。この第2画像I2の存在により、第1サンプルを使用して得られたIDカードは、セキュリティ性、即ち、耐偽造性に優れている。
【0231】
また、第1サンプルを使用した場合、コンピュータ300からプリンタ100へ印刷データを送出してから印刷を完了するまでに要した時間は、第2サンプルを使用した場合と同等であった。
【符号の説明】
【0232】
10…感熱転写媒体、10A…感熱転写媒体、10B…感熱転写媒体、10C…感熱転写媒体、10D…感熱転写媒体、10E…感熱転写媒体、10F…感熱転写媒体、10G…感熱転写媒体、10H…感熱転写媒体、10I…感熱転写媒体、11…支持体、12B…セキュリティフィーチャーパネル、12C…カラーインクパネル、12G…セキュリティフィーチャーパネル、12K…ブラックインクパネル、12K2…ブラックインクパネル、12M…カラーインクパネル、12P…プライマーパネル、12P2…プライマーパネル、12R…セキュリティフィーチャーパネル、12Y…カラーインクパネル、13A…位置合わせマーク、13B…位置検出マーク、20…記録媒体、21…オーバーレイ層、22B…光学可変パターン、22C…カラー印刷パターン、22G…光学可変パターン、22K…ブラック印刷パターン、22M…カラー印刷パターン、22R…光学可変パターン、22Y…カラー印刷パターン、23…接着層、30…巻き出し装置、40…巻き取り装置、50…一次転写部、51…サーマルプリントヘッド、52…プラテンローラ、60…中間転写媒体、70…巻き出し装置、80…巻き取り装置、90…二次転写部、91…ヒートローラ、92…プラテンローラ、100…プリンタ、200…印刷物、300…コンピュータ、310…コンピュータ本体、311…中央処理装置、311A…演算装置、311B…制御装置、312…主記憶装置、313…補助記憶装置、320…ネットワーク装置、330…入力装置、340…表示装置、350…ネットワーク装置、I1…第1画像、I2…第2画像、I3…第3画像、P2…位置、PG…パネルユニット、PP1…第1パネル区画、PP2…第2パネル区画、PP3…第3パネル区画、PP4…第4パネル区画、PP5…第5パネル区画、PP6…第6パネル区画、PP7…第7パネル区画、R1…識別領域、R2…検証領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16