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特開2023-69397設備点検計画作成システム、および、設備点検計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069397
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】設備点検計画作成システム、および、設備点検計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20230511BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230511BHJP
   G06Q 10/0635 20230101ALI20230511BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q10/04
G06Q10/06 326
G08G1/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181212
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 雅之
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181BB17
5H181BB20
5H181EE02
5L049AA04
5L049AA06
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】道路設備に関して有効な推奨点検計画を作成する。
【解決手段】実施形態の設備点検計画作成システムは、道路に設けられた設備の故障時期データと、設備の故障時期に関係し道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期関係データと、を教師データとして、入力を設備故障時期関係データとし、出力を設備の故障時期とする設備故障時期予測モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、リアルタイムの設備故障時期関係データを入力データとして、設備故障時期予測モデルを用いて、設備の故障時期を予測して故障時期予測結果を出力する設備故障時期予測部と、故障時期予測結果と、過去の設備点検履歴と、に基づいて、設備の故障リスクである設備故障リスクを算出する設備故障リスク算出部と、設備故障リスクに基づいて、設備に関する点検の推奨時期を含む計画である推奨点検計画を作成する点検計画作成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設けられた設備の故障時期データと、前記設備の故障時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期関係データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期関係データとし、出力を前記設備の故障時期とする設備故障時期予測モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、
リアルタイムの前記設備故障時期関係データを入力データとして、前記設備故障時期予測モデルを用いて、前記設備の故障時期を予測して故障時期予測結果を出力する設備故障時期予測部と、
前記故障時期予測結果と、過去の設備点検履歴と、に基づいて、前記設備の故障リスクである設備故障リスクを算出する設備故障リスク算出部と、
前記設備故障リスクに基づいて、前記設備に関する点検の推奨時期を含む計画である推奨点検計画を作成する点検計画作成部と、を備える設備点検計画作成システム。
【請求項2】
前記設備故障時期関係データは、前記道路の交通状況データ、設備稼働時間データ、設備修理情報データの少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の設備点検計画作成システム。
【請求項3】
前記設備故障リスクと、予め設定された前記設備の故障発生による影響度と、に基づいて、前記設備の点検時期に関する指標値である点検指標値を算出する点検指標値算出部を、さらに備え、
前記点検計画作成部は、前記点検指標値に基づいて、前記推奨点検計画を作成する、請求項1に記載の設備点検計画作成システム。
【請求項4】
前記点検計画作成部は、基準の点検計画に対して、前記点検指標値が所定閾値以上である前記設備であって次回の点検時の点検対象になっていない前記設備を次回の点検時の点検対象に追加することで、前記推奨点検計画を作成する、請求項3に記載の設備点検計画作成システム。
【請求項5】
道路に設けられた設備の故障時期データと、前記設備の故障時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期関係データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期関係データとし、出力を前記設備の故障時期とする設備故障時期予測モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習ステップと、
リアルタイムの前記設備故障時期関係データを入力データとして、前記設備故障時期予測モデルを用いて、前記設備の故障時期を予測して故障時期予測結果を出力する設備故障時期予測ステップと、
前記故障時期予測結果と、過去の設備点検履歴と、に基づいて、前記設備の故障リスクである設備故障リスクを算出する設備故障リスク算出ステップと、
前記設備故障リスクに基づいて、前記設備に関する点検の推奨時期を含む計画である推奨点検計画を作成する点検計画作成ステップと、を含む設備故障予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設備点検計画作成システム、および、設備点検計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路(高速道路等)には、道路の付帯設備として、車両と通信する路側機や、走行車両に対して情報を表示する情報板や、照明装置や、トンネル内の換気設備などの各種設備が設けられている。それらの道路付帯設備については、故障等の予防として、定期点検などが行われている。
【0003】
一般に、高速道路の施設管制システムの運用業務では、高速道路上に設置された各種設備(情報板やトンネルの換気設備など)の稼動状態を監視し、障害や故障の発生時に現地保守員に連絡し、障害復旧の対応を行っている。
【0004】
また、定期点検や定期設備交換などの基本的な保守業務は、「時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)」が中心で実施される。しかし、実際は各種設備の動作環境(屋内、屋外など)や経年によって障害や故障の発生の頻度に差が生じており、必ずしもTBMが適切な保守業務であるとは限らない。本来であれば、設備毎の状態に応じて保守を行う「状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)」や設備の故障リスクを加味した「リスクベースメンテナンス(RBM:Risk Based Maintenance)」を行うべきである。しかし、現状では、設備の状態監視と保守業務が連携できていない。
【0005】
このため、リアルタイムで機器の故障状態を検知する施設管制システムと、各種設備の稼働状態を管理している設備管理システムを人が確認し、設備の点検・修理で対処可能なものは即時処理を行い、そうではないものは設備の交換・更新を行うといった運用を行っている。
【0006】
しかし、リアルタイムな機器の故障状態監視を保守業務のトリガーとする従来の保守業務では、限られた保守業務の担当者でそれら全ての対処を迅速に行うことが困難である。そして、状況によっては夜間や休日にも緊急対応を行う必要があるなど、限られたリソースの最適化に限界が生じる課題に直面している。
【0007】
この課題に対し、故障発生をトリガーとした「事後保全」だけではなく、TBMに依存しないCBMやRBMによる「予防保全」の確立が重要となる。
【0008】
例えば、従来技術で、トンネル非常用設備である火災検知器の誤動作(例えば非火災時の火災検知)のリスク(故障発生リスク)を設備の設置台数、稼働時間、過去の故障率を元に予測し、故障発生リスクが所定値以上となった場合に点検強化や交換計画策定を促すという予防保全の仕組みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-087389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の従来技術は、以下の問題がある。まず、同じ設備(火災検知器)が同様の環境(トンネル内)に複数台設置されていることが故障発生リスクの予測を行うための前提となっている。したがって、同じ設備が異なる環境下で1台または少数台のみ設置されている情報板やトンネル換気設備に応用することはできない。
【0011】
また、故障発生リスクの予測は、誤動作の確率と台数を出力するのみで、複数台ある設備のうちどれを点検・交換すれば良いかは特定できていない。つまり、トンネル非常用設備全体の点検強化・交換計画策定を促す仕組みとなっている。
【0012】
そこで、本実施形態の課題は、道路に設けられた設備に関して有効な推奨点検計画を作成することができる設備点検計画作成システム、および、設備点検計画作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の設備点検計画作成システムは、道路に設けられた設備の故障時期データと、前記設備の故障時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期関係データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期関係データとし、出力を前記設備の故障時期とする設備故障時期予測モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、リアルタイムの前記設備故障時期関係データを入力データとして、前記設備故障時期予測モデルを用いて、前記設備の故障時期を予測して故障時期予測結果を出力する設備故障時期予測部と、前記故障時期予測結果と、過去の設備点検履歴と、に基づいて、前記設備の故障リスクである設備故障リスクを算出する設備故障リスク算出部と、前記設備故障リスクに基づいて、前記設備に関する点検の推奨時期を含む計画である推奨点検計画を作成する点検計画作成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態の施設管制システム等の概略を示す全体構成図である。
図2図2は、第1実施形態の設備点検履歴の例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の故障影響度算出部が使用するデータの例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の設備故障リスク算出部が使用するデータの例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の点検指標値算出部が使用するデータの例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態の推奨点検計画画面の例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態の点検推奨根拠画面の例を示す図である。
図8図8は、第1実施形態の施設管制システムによる処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態(第1実施形態、第2実施形態)の設備点検計画作成システム、および、設備点検計画作成方法について説明する。なお、本実施形態では、道路として高速道路の場合を例にとって説明する。また、以下において、「予報」とは「予測」だけを意味する場合もある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の施設管制システム1等の概略を示す全体構成図である。なお、図1では、主な情報の流れを矢印で示しており、矢印のない部分で情報の送受信が行われる場合もある。
【0017】
管制対象である高速道路Rに対して、施設管制システム1と交通管制システム2が設けられる。また、トンネルTが設けられた高速道路Rには、トンネル情報板31、CCTV(Closed Circuit Television System)32、受配電・自家発設備33、トンネル照明設備34、ラジオ再放送設備35、火災検知器36、水噴霧設備37、トンネル換気設備38、遠隔監視制御設備39が設けられる。なお、以下において、トンネル情報板31~トンネル換気設備38を総称して「設備」ともいう。
【0018】
トンネル情報板31は、トンネルTの入り口の手前に設置され、交通管制システム2によって制御され、トンネルTに進入直前の車両に対して、トンネルT内の事故、火災等の情報や、安全走行に関する情報を表示する。
【0019】
CCTV32は、高速道路Rの路側に設置され、高速道路Rを撮影するカメラであり、撮影した映像を施設管制システム1や交通管制システム2に送信する。
【0020】
受配電・自家発設備33は、高速道路Rの路側に設置され、受配電や自家発電を行う設備である。
【0021】
トンネル照明設備34は、トンネルT内に設置された照明設備である。
【0022】
ラジオ再放送設備35は、トンネルT内に設置され、通常のラジオ放送の電波が届かないトンネルT内において、AM(Amplitude Modulation)ラジオ・FM(Frequency Modulation)ラジオの受信を可能にする設備である。
【0023】
火災検知器36は、トンネルT内に設置され、火災を検知すると検知情報を施設管制システム1や交通管制システム2に送信する。
【0024】
水噴霧設備37は、トンネルT内に設置され、噴霧ヘッドから水を噴霧状に均一に放射して燃焼部分を覆うことにより火災を消火する設備である。
【0025】
トンネル換気設備38は、トンネルT内に設置され、換気を行う設備である。
【0026】
遠隔監視制御設備39は、高速道路Rの路側に設置され、例えば、設備に関する設備状態データ(設備の状態変化を示す設備状態変化通知(データ)を含む)や、設備に関する故障を示す設備故障通知(データ)を施設管制システム1に送信する。
【0027】
また、これらの設備のほかに、車両感知器なども設置される。車両感知器は、高速道路の路側に設置され、交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報を収集し、収集した情報を交通管制システム2に送信する。
【0028】
交通管制システム2は、高速道路Rの車両交通を管理(監視)、制御するシステムである。交通管制システム2は、例えば、情報交換サーバや中央処理装置等の複数のコンピュータ装置によって実現される。
【0029】
交通イベント21は、高速道路Rの過去の交通情報(交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]など)や事故情報を含む情報(交通状況データ)である。交通イベント21は、設備の故障時期に関係し高速道路Rに関する所定の履歴のデータである設備故障時期関係データの例である。
【0030】
渋滞予測モデル22は、交通イベント21等を用いた機械学習によって高速道路Rの将来の渋滞を予測するためのモデルである。
【0031】
事故予報モデル23は、交通イベント21や事故履歴データ等を用いた機械学習によって高速道路Rの将来の事故を予測するためのモデルである。
【0032】
気象情報24は、気象(天候、気温、路温、風向、風速、雨量等)に関する情報であり、所定の観測所や気象情報センタから受信した情報である。
【0033】
交通管制システム2は、渋滞予測モデル22に基づいて渋滞予測結果を出力する。交通管制システム2は、事故予報モデル23に基づいて事故予報結果を出力する。
【0034】
施設管制システム1は、道路の設備(トンネル情報板31~トンネル換気設備38)を管理(監視)、制御するシステムである。施設管制システム1は、例えば、情報交換サーバや中央処理装置等の複数のコンピュータ装置によって実現される。
【0035】
施設管制システム1は、記憶部11と、処理部12と、入力部13と、表示部14と、を備える。
【0036】
記憶部11は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。記憶部11は、各種プログラム、各種データを記憶する。記憶部11は、例えば、設備故障時期予測モデル111、設備点検履歴112、設備管理台帳113、標準点検計画114(基準の点検計画)を記憶する。
【0037】
設備故障時期予測モデル111は、特定の状況下(例えば、交通状況、設備稼働時間など)における設備の故障発生傾向に基づいて、どのような時にどの設備が壊れやすいかを推定するための学習モデルであり、施設中央データ処理部121によって生成される(詳細は後述)。
【0038】
設備点検履歴112は、過去の設備点検結果を示すデータである。
図2は、第1実施形態の設備点検履歴112の例を示す図である。設備点検履歴112は、設備に関して、点検実施日、場所、(点検)周期、設備名、天候、上下線区分、製造年月、検査装置名、検査部位、検査項目、検査結果、処置の各項目を有する。なお、図2では、異常があった点検履歴しか示していないが、設備点検履歴112は異常がなかった点検履歴も含む。
【0039】
図1に戻って、設備管理台帳113は、高速道路の設備・諸元の管理データである。
【0040】
標準点検計画114は、推奨点検計画のベースとなる標準の点検計画である。
【0041】
処理部12は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。
ROMは、各種プログラムや各種データを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。
MPUは、施設管制システム1の動作を統括的に制御する。そして、MPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部11等に格納されたプログラムを実行する。
【0042】
処理部12は、機能部として、施設中央データ処理部121、故障影響度算出部122、点検計画作成部123を備える。
【0043】
施設中央データ処理部121は、高速道路RのトンネルTなどに設置された設備の状態データ(設備状態データ)を収集する。また、施設中央データ処理部121(設備故障時期学習部の例)は、設備の故障時期データ(例えば設備点検履歴112)と交通イベント21とを教師データとして、入力を交通イベント21とし、出力を設備の故障時期とする設備故障時期予測モデル111を機械学習により生成する。
【0044】
また、施設中央データ処理部121(設備故障時期予測部の例)は、リアルタイムの交通イベント21を入力データとして、設備故障時期予測モデル111を用いて、設備の故障時期を予測して故障時期予測結果(故障予測)を出力する。
【0045】
故障影響度算出部122は、設備が故障した際の影響度(故障影響度)を算出する。故障影響度算出部122は、例えば、設備が故障した際の標準的な影響度と、渋滞予測モデル22に基づく渋滞予測結果、事故予報モデル23に基づく事故予報結果、気象情報24における気象予報のうち1つ以上と、に基づいて、設備の故障影響度を算出する。
【0046】
図3は、第1実施形態の故障影響度算出部122が使用するデータの例を示す図である。このデータは、場所、トンネルの等級、渋滞予測(結果)、事故予報(結果)、気象予報、故障影響度テーブルの各項目から構成される。故障影響度は、最小の「1」から最大の「5」までの5段階で表される。
【0047】
例えば、上から2行目の例であれば、「Aトンネル」に関して、トンネル情報板(トンネル情報板31)の故障影響度は「3」で、CCTV(CCTV32)の故障影響度は「2」である。各故障影響度は、現場での設備の故障の影響度の実情を踏まえてユーザによって予め設定される。
【0048】
図1に戻って、点検計画作成部123は、設備故障リスク算出部124、点検指標値算出部125、推奨点検計画出力部126を備える。
【0049】
次に、図4を参照して、設備故障リスク算出部124について説明する。
図4は、第1実施形態の設備故障リスク算出部124が使用するデータの例を示す図である。設備故障リスク算出部124は、故障確率(故障時期予測結果)と、点検経過日数(過去の設備点検履歴におけるデータ)と、に基づいて、設備の故障リスクである設備故障リスクを算出する。
【0050】
ここで、故障確率は、程度によって、小さいほうから順に「微」、「小」、「中」、「大」の4段階に分類される。また、点検経過日数は、程度によって、小さいほうから順に「微」、「小」、「中」、「大」の4段階に分類される。また、設備故障リスクは、最小の「0」から最大の「9」までの10段階で表される。
【0051】
例えば、故障確率が「小」で点検経過日数が「中」の場合、設備故障リスクは「5」となる。各設備故障リスクは、現場での設備の故障リスクの実情を踏まえてユーザによって予め設定される。
【0052】
次に、図5を参照して、点検指標値算出部125について説明する。
図5は、第1実施形態の点検指標値算出部125が使用するデータの例を示す図である。
点検指標値算出部125は、設備故障リスク算出部124によって算出された設備故障リスクと、故障影響度算出部122によって算出された故障影響度と、に基づいて、設備の点検時期に関する指標値である点検指標値を算出する。
【0053】
ここで、故障影響度は、程度によって、小さいほうから順に「微」、「小」、「中」、「大」の4段階に分類される。また、設備故障リスクは、程度によって、小さいほうから順に「微」、「小」、「中」、「大」の4段階に分類される。また、点検指標値は、最小の「0」から最大の「9」までの10段階で表される。
【0054】
例えば、故障影響度が「中」で設備故障リスクが「大」の場合、点検指標値は「8」となる。各点検指標値は、点検の必要性の実情を踏まえてユーザによって予め設定される。
【0055】
図1に戻って、推奨点検計画出力部126は、点検指標値に基づいて、推奨点検計画を作成する。例えば、推奨点検計画出力部126は、標準点検計画114に対して、点検指標値が所定閾値(例えば「6」)以上である設備であって次回の点検時の点検対象になっていない設備を次回の点検時の点検対象に追加することで、推奨点検計画を作成する。
【0056】
図6は、第1実施形態の推奨点検計画画面の例を示す図である。推奨点検計画画面において、領域R1には、点検計画画面である旨と現在日時情報が表示される。領域R2には、対象トンネルと、対象設備と、点検周期と、が表示される。
【0057】
領域R3には、標準点検計画114で設定されている標準点検(毎月の点検)が表示される。領域R4には、推奨点検、つまり、本来は行われない点検(2ヶ月点検、3ヶ月点検)であって点検指標値が所定閾値以上であることで追加された点検が表示される。ここでは、点検項目として、変圧器と断路器が表示されている。領域R4の「点検推奨根拠」ボタンを操作すると、図7の画面に遷移する。なお、変圧器と断路器は、図3の故障影響度テーブルにおける受配電・自家発(設備)に含まれる。
【0058】
図7は、第1実施形態の点検推奨根拠画面の例を示す図である。点検推奨根拠画面において、領域R11には、点検推奨根拠画面である旨と現在日時情報が表示される。領域R12には、対象トンネルと、対象設備と、点検周期と、が表示される。
【0059】
領域R13には、設備故障リスクに関する情報が表示される。ここでは、左側のグラフで、変圧器と断路器に関して、点検経過日数と故障確率の関係(故障確率線。交通状況データ等によって変化するので非線形)が示されている。なお、点検経過日数の「15」が現在日である。また、右側の表で、変圧器と断路器に関して、前回点検日と、(点検)周期と、設備故障リスク値(現在、1ヶ月時点(1ヶ月後)、次回点検時(2ヶ月後))と、が示されている。変圧器と断路器について、1ヶ月時点では設備故障リスク値が「3」と「3」と低くなっているが、次回点検時では設備故障リスク値が「8」と「6」で高くなっている。
【0060】
また、領域R14には、点検指標値に関する情報が表示される。ここでは、左側のグラフで、変圧器と断路器に関して、設備故障リスクと故障影響度の関係が示されている。また、右側の表で、変圧器と断路器に関して、前回点検日と、(点検)周期と、点検指標値(現在、1ヶ月時点(1ヶ月後)、次回点検時(2ヶ月後))と、が示されている。変圧器と断路器について、1ヶ月時点では点検指標値が「3」と「3」で閾値「6」を下回っているが、次回点検時では設備故障リスク値が「9」と「8」で閾値「6」以上となっている。つまり、標準点検計画における点検タイミングの2ヶ月後には点検指標値が閾値以上となっているので、その前の1ヶ月時点のタイミングで点検することが好ましい。
【0061】
図1に戻って、入力部13は、施設管制システム1に対するユーザの操作を受け付ける入力装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0062】
表示部14は、情報を表示する装置であり、例えば、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等である。
【0063】
次に、図8を参照して、第1実施形態の施設管制システム1による処理について説明する。
図8は、第1実施形態の施設管制システム1による処理の例を示すフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS1において、施設中央データ処理部121は、遠隔監視制御設備39から設備状態データを入力する。
【0065】
次に、ステップS2において、施設中央データ処理部121は、設備状態データ中に設備状態変化通知があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0066】
ステップS3において、施設中央データ処理部121は、設備状態変化通知と、リアルタイムの交通イベント21を入力データとして、設備故障時期予測モデル111を用いて、設備の故障時期を予測して故障時期予測結果(故障確率)を出力する。
【0067】
次に、ステップS4において、設備故障リスク算出部124は、設備点検履歴112のデータを読み込む。
【0068】
次に、ステップS5において、設備故障リスク算出部124は、故障時期予測結果(故障確率)と、点検経過日数(過去の設備点検履歴におけるデータ)と、に基づいて、設備故障リスクを算出する(図4)。
【0069】
次に、ステップS6において、故障影響度算出部122は、設備が故障した際の標準的な影響度と、渋滞予測結果、事故予報結果、気象予報のうち1つ以上と、に基づいて、設備の故障影響度を算出する。
【0070】
次に、ステップS7において、点検指標値算出部125は、ステップS5で算出された設備故障リスクと、ステップS6で算出された故障影響度と、に基づいて、点検指標値を算出する(図5)。
【0071】
次に、ステップS8において、推奨点検計画出力部126は、標準点検計画114からデータを読み込む。
【0072】
次に、ステップS9において、推奨点検計画出力部126は、標準点検計画114に対して、点検指標値が所定閾値以上である設備であって次回の点検時の点検対象になっていない設備を次回の点検時の点検対象に追加することで、推奨点検計画(図6)を作成、出力する。また、推奨点検計画出力部126は、推奨点検計画に対応する点検推奨根拠(設備故障リスクと点検指標値を可視化した内容。図7)を作成、出力する。
【0073】
保守員M(図1)は、表示部14に表示された推奨点検計画(図6)や点検推奨根拠(図7)に基づいて設備の点検等を行う。
【0074】
このように、第1実施形態の施設管制システム1によれば、道路に設けられた設備に関して、故障予測結果等に基づいて設備故障リスクや点検指標値を算出して、それらに基づいて有効な推奨点検計画を作成することができる。
【0075】
したがって、例えば、予防保全により、高速道路の各種設備の停止時間(ダウンタイム)を減らすことができる。
【0076】
また、高速道路の各種設備の点検計画を検討する上で定量的な根拠(図7)を作成、表示することができる。
【0077】
また、保守業務を行う担当者が夜間・休日の突発対応を行う頻度を減らすことができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第1実施形態では点検指標値に基づいて推奨点検計画を作成したが、第2実施形態では点検指標値は算出せずに設備故障リスクに基づいて推奨点検計画を作成する。
【0079】
つまり、推奨点検計画出力部126は、設備故障リスク算出部124によって算出された設備故障リスクに基づいて、設備に関する点検の推奨時期を含む計画である推奨点検計画を作成する。
【0080】
このように、第2実施形態によれば、より簡易な構成、処理で、有効な推奨点検計画を作成することができる。
【0081】
なお、本実施形態の施設管制システム1で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。当該プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0082】
さらに、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0083】
当該プログラムは、上述した施設管制システム1の処理部12における各部121~126を含むモジュール構成となっている。つまり、CPUが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより、各部121~126が主記憶装置上にロードされる。
【0084】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0085】
例えば、対象の道路は、高速道路に限定されず、一般道路等の他の道路に設置された道路付帯設備にも同様に適用できる。
【0086】
また、施設管制システム1において、設備故障の予測等に、例えば、地震情報(震度、SI値、加速度等)や、トンネル内の一酸化炭素濃度や煙霧透過率(換気設備の稼働要因)などを用いてもよい。
【0087】
また、設備故障時期関係データとして、道路の交通状況データ(交通イベント21)のほかに、設備稼働時間データや設備修理情報データ等を用いてもよい。設備稼働時間データは、例えば、設備ID(Identifier)、施設名、(道路の)方向、設備名、環境、竣工年月、製造会社、経過年数、保守期限等の各項目から構成される。
【符号の説明】
【0088】
1…施設管制システム、2…交通管制システム、11…記憶部、12…処理部、13…入力部、14…表示部、21…交通イベント、22…渋滞予測モデル、23…事故予報モデル、24…気象情報、31…トンネル情報板、32…CCTV、33…受配電・自家発設備、34…トンネル照明設備、35…ラジオ再放送設備、36…火災検知器、37…水噴霧設備、38…トンネル換気設備、39…遠隔監視制御設備、111…設備故障時期予測モデル、112…設備点検履歴、113…設備管理台帳、114…標準点検計画、121…施設中央データ処理部、122…故障影響度算出部、123…点検計画作成部、124…設備故障リスク算出部、125…点検指標値算出部、126…推奨点検計画出力部、M…保守員、R…高速道路
図1
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図7
図8