(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000696
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20221222BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20221222BHJP
F25D 23/00 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
F25D17/08 310
F25D17/06 313
F25D23/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101668
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 彩綾
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA16
3L345BB02
3L345CC01
3L345DD06
3L345DD24
3L345HH02
3L345HH36
3L345HH38
3L345HH42
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】内部の温度を調節可能な貯蔵室と、貯蔵室の温度を制御する制御部とを備え、制御部は、貯蔵室を所定温度に維持させる通常モードと、貯蔵室に収められた食品を所定時間冷却させる急冷モードと、貯蔵室の温度を所定温度に低下させた後に、貯蔵室に食品が収められた場合に、食品を所定時間冷却させる特別モードとを実施する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の温度を調節可能な貯蔵室と、
前記貯蔵室の温度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記貯蔵室を所定温度に維持させる通常モードと、
前記貯蔵室に収められた食品を所定時間冷却させる急冷モードと、
前記貯蔵室の温度を所定温度に低下させた後に、前記貯蔵室に食品が収められた場合に、前記食品を所定時間冷却させる特別モードとを実施する
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
所定の報知を出力する報知部を備え、
前記制御部は、前記特別モードを実施する場合に、前記貯蔵室の温度を所定温度に低下させた後に、前記報知部に所定の報知を実施させる
ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記特別モードを実施する場合に、
前記報知部に所定の報知を実施させてから所定時間が経過するまでに、所定の信号を受信できなければ、前記特別モードから前記通常モードを実施する
ことを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室には、前記貯蔵室に供給された冷気を前記貯蔵室に収められた食品に送り出す通風ファンが設けられ、
前記制御部は、前記通風ファンを所定時間駆動させることで、前記食品を所定時間冷却させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記貯蔵室は、複数の分室に区切られ、
前記通風ファンは、前記分室の内、前記制御部によって内部が冷凍温度帯に維持された冷凍室に設けられる
ことを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室に供給される冷気を生成する冷却器と、
前記冷却器で生成された冷気を前記貯蔵室に送り出す冷却ファンと、
前記冷却器と前記冷却ファンとが収められるダクトと、
前記冷気を前記冷凍室に導く風路を形成するダクトカバーと、を備え、
前記通風ファンは、前記ダクトカバーの前記冷凍室の内部に位置する箇所に設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、急冷可能な貯蔵室の急冷効果を高めるとともに、断熱性能の低下を抑制し、急冷を促進する通風ファンの取付け作業性を高めた冷蔵庫を提供する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、内部の温度を調節可能な貯蔵室と、前記貯蔵室の温度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記貯蔵室を所定温度に維持させる通常モードと、前記貯蔵室に収められた食品を所定時間冷却させる急冷モードと、前記貯蔵室の温度を所定温度に低下させた後に、前記貯蔵室に食品が収められた場合に、前記食品を所定時間冷却させる特別モードとを実施することを特徴とする冷蔵庫である。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷蔵庫は、ユーザが急冷モードや特別モードを選択することにより、貯蔵室を通常より低温に冷却することができる。そのため、冷蔵庫に収められた食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮することができる。また、従来よりも多くの食品を急速冷凍できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図9】予冷機能の有無による最大氷結晶生成帯通過時間の差を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、冷蔵庫において、蒸発器のファンとは別に貯蔵室に通風する通風ファンを設けることで、当該通風ファンによって送り出される冷気によって、貯蔵室に収められた食品の急速冷凍を行う技術があった。
【0009】
しかしながら、家庭用冷蔵庫では、容量を犠牲にすることなく急速冷凍を可能にしなければならない。そのため、家庭用冷蔵庫での急速冷凍という技術は限られた条件を満たすごく一部の食品のみに適用されている、という課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで本開示は、容量を犠牲にせず冷蔵庫制御だけを変えて最大氷結晶生成帯通過時間を短縮する冷蔵庫を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付画面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図8を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.冷蔵庫の構成]
まず、
図1~
図3を用いて冷蔵庫100の全体構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係る冷蔵庫100の外観図である。
図1では、冷蔵庫100の正面視を示す。
図1に示すように、冷蔵庫100は、貯蔵室を備える。この貯蔵室は、複数の分室に区切られる。具体的には、貯蔵室は、冷蔵室101、製氷室102、上段冷凍室103、下段冷凍室104、野菜室105に区切られる。
【0012】
冷蔵室101は、冷蔵温度帯(3℃~6℃)に維持される。野菜室105は、冷蔵室101よりやや高温の温度帯(3℃~8℃)に維持される。上段冷凍室103と下段冷凍室104は、冷凍温度帯(-20℃~-18℃)に維持される。
また、冷蔵室101の内部には、パーシャル温度帯(-3℃~-1℃)とチルド温度帯(0℃~2℃)とを切り替え可能な切替室210が設けられている。
また、製氷室102、上段冷凍室103、下段冷凍室104、野菜室105のそれぞれを閉塞する扉は、引き出し式の扉である。
【0013】
次に
図2を用いて、冷蔵庫100の風路構成を説明する。
図2は、冷蔵庫100の縦断面図である。
図2において、当該図面視で左手側が冷蔵庫100の正面側に対応し、右手側が冷蔵庫100の背面側に対応する。
冷蔵庫100の上部、かつ、冷蔵庫100の背面側には、圧縮機201が設けられている。
また、下段冷凍室104の背後に、冷却器203、冷却ファン204、及び除霜ヒータ205を少なくとも有する冷却室202が設けられている。
【0014】
冷蔵室101と、製氷室102、及び、上段冷凍室103とを仕切る仕切板206には、冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222とで構成されるツインダンパ220が設けられている(
図5)。
冷却器203が生成した冷気の一部は、冷蔵室ダンパ221を介して冷蔵室ダクト207に供給される。そして吐出口208と吐出口209を介して、冷蔵室ダクト207から冷蔵室101に冷気が供給される。
また、冷却器203が生成した冷気の一部は、切替室ダンパ222を介して切替室ダクトに供給され、吐出口を介して切替室ダクトから切替室210に冷気が供給される。
【0015】
冷蔵室101と切替室210には、それぞれ温度センサ231、232が設けられており、これらの温度センサ231、232が検知した温度に基づいて冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222との開閉動作が制御される。
【0016】
また、冷却器203が生成した冷気の一部は、野菜室ダクトに供給される。野菜室ダクトには、野菜室ダンパ224が設けられており、当該野菜室ダンパ224を介して野菜室105に冷気が供給される。
野菜室105には、温度センサ233が設けられており、この温度センサ233が検知した温度に基づいて野菜室ダンパ224の開閉動作が制御される。
【0017】
また、冷却器203が生成した冷気の一部は、冷凍室ダクト211に供給される。そして吐出口212と吐出口213を介して、冷凍室ダクト211から下段冷凍室104に冷気が供給される。
また、冷凍室ダクト211の上部、かつ、上段冷凍室103の背面には、吐出口214が設けられている。吐出口214から吐出した冷気は、製氷室102と上段冷凍室103に供給される。
【0018】
上段冷凍室103の天面には、ダクトカバー302がビスを用いて取り付けられていて、このダクトカバー302によって冷気風路215が形成されている。このダクトカバー302は、断面U字状、または筒状のダクト状部材である。
なお、ダクトカバー302を上段冷凍室103の天面に取り付ける方法はビスに限らず、溶接等の他の方法を用いても良い。
【0019】
また、ダクトカバー302の前方には、急冷ファン216が設けられている。急冷ファン216は、本開示における通風ファンの一例に対応する。
吐出口214から上段冷凍室103に供給された冷気は、冷気風路215によって急冷ファン216に導かれる。
更に、冷却ファン204の風下側にある急冷ファン216が高回転で駆動することで、低温の冷気が上段冷凍室103に大風量で吐出される。これによって、上段冷凍室103に収められた食品を急速冷却、あるいは急速冷凍することが可能である。
【0020】
図4は、冷蔵庫100の制御構成を示すブロック図である。
冷蔵庫100は、CPU、ROM、RAM等で構成される制御基板250を備えている。この制御基板250は、冷蔵庫100の各部と信号の送受信を行い、冷蔵庫100の各部の制御を行う制御部として機能する。
制御基板250は、冷蔵庫100の内部、あるいは冷蔵庫100の外部に設けられた所定の装置と信号の送受信が可能な通信部251を備える。
また、制御基板250は、冷蔵庫100の所定の運転モードを記憶する記憶部252を備える。制御基板250は、この運転モードに則って、冷蔵庫100の各部の制御を実施する。
【0021】
制御基板250は、記憶部252に記憶された各種の運転モードに則って、例えば、圧縮機201の回転数や急冷ファン216、冷却ファン204の風量等を制御する。
また例えば、制御基板250は、温度センサ231、232、233が検知した温度を検出値として取得し、冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222と、野菜室ダンパ224との開閉動作を制御する。
【0022】
冷蔵庫100が駆動している場合において、制御基板250は、通常時には、冷蔵室101、製氷室102、上段冷凍室103、下段冷凍室104、野菜室105のそれぞれに設定された温度帯を維持させるように冷蔵庫100の各部を制御する。以下、制御基板250が実施するこのような冷蔵庫100の運転モードを通常モードという。
【0023】
なお、この通常モードにおいて、制御基板250は、所定の信号を受信すると、製氷室102で製氷を実施させる。以下、制御基板250が実施するこのような冷蔵庫100の運転を急速製氷機能という。
【0024】
制御基板250は、所定の信号を受信すると、クーリングアシストと呼ばれる各種の運転モードを実施する。
例えば、制御基板250は、所定の信号を受信すると、圧縮機201、冷却ファン204、急冷ファン216の回転数を制御し、上段冷凍室103、及び当該上段冷凍室103に収められた食品を急速冷却、あるいは急速冷凍させるように冷蔵庫100の各部を制御する。以下、制御基板250が実施するこのような冷蔵庫100の運転モードを急冷モード、あるいは急冷機能という。
【0025】
急冷モードを実施する場合において、制御基板250は、受信した信号に応じて、「冷ます」、「急冷」、「急凍」、の3つの動作を切り替えて実施する。これらの動作は、急冷モードを実施する時間が互いに異なる。
【0026】
具体的には、「冷ます」動作を実施する場合には、制御基板250は、冷蔵庫100に3分間または5分間に亘って、急冷モードを実施させる。
「急冷」動作を実施する場合には、制御基板250は、冷蔵庫100に10分間または15分間に亘って、急冷モードを実施させる。
「急凍」動作を実施する場合には、制御基板250は、冷蔵庫100に45分間または60分間に亘って、急冷モードを実施させる。
【0027】
このように、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に収められた食品に対して、当該食品やユーザの目的に応じて、急冷モードの実施時間を変化させることで、より効率よく食品を冷却することが可能となっている。
【0028】
制御基板250は、所定の信号を受信すると、上段冷凍室103の温度を所定温度に低下させた後に、当該上段冷凍室103に食品が収められた場合に、当該食品を所定時間冷却させる特別モードを実施する。
具体的には、制御基板250は、所定の信号を受信すると、冷却ファン204の回転を連続運転させ、圧縮機201の回転数を増やし連続運転を開始させる。これらの制御によって、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に冷気が集中しやすくなり、庫内温度が低下する。以下、この冷蔵庫100の動作を、「予冷」、または予冷機能という。
【0029】
この後、制御基板250は、更に所定の信号を受信すると、「急凍」動作を実施する。このように、冷蔵庫100では、上段冷凍室103が予め所定温度に下げられていることによって、「急凍」動作のみを実施する場合よりも、上段冷凍室103に収められた食品を効率よく冷却することが可能となっている。
以下、この特別モードを「予冷+急凍」動作という。
【0030】
図5は、操作パネル400を示す図である。
冷蔵室101の庫内には、操作パネル400が設けられている。この操作パネル400は、制御基板250に所定の信号を送信可能な通信部410が設けられている。
また、
図5に示すように、操作パネル400には、cooling assistボタン401が設けられている。このcooling assistボタン401は、ユーザが押下することで通信部410を介して所定の信号を制御基板250に送信し、当該制御基板250に各種の運転モードを実施させる操作部として機能する。
【0031】
冷蔵庫100において、ユーザは、操作パネル400を用いることで、冷蔵庫の急冷機能を利用する時間として、自身の利用目的に応じた所望の時間を設定できる。換言すれば、ユーザは、この操作パネル400を用いて、クーリングアシストを開始することができ、自身の利用目的に応じて、「冷ます」、「急冷」、「急凍」、「予冷+急凍」のいずれかに対応する時間で急冷機能を利用することができる。
【0032】
具体的には、ユーザがcooling assistボタン401を押下することで、「冷ます」に対応する3分と5分、「急冷」に対応する10分と15分、「急凍」に対応する45分と60分の6つの候補の中から所望の時間を設定できる。
例えば加熱調理後の食品のあら熱を取りたい場合、ユーザは、「冷ます」に対応する3分または5分を選択すれば良い。
また、従来は冷蔵室101の庫内である程度時間をかけて冷却させていた食品の冷却について、この冷却に要する時間を短縮させたい場合は、ユーザは、「急冷」に対応する10分または15分を選択すれば良い。
【0033】
操作パネル400には、LED402、403、404、405が設けられている。これらのLED402、403、404、405は、ユーザのcooling assistボタン401の押下に応じて点灯する所謂インジケータとして機能する。
【0034】
次いで、ユーザの操作による操作パネル400の挙動を説明する。
ユーザがcooling assistボタン401を押すと、「冷ます」に対応するLED402が点灯する。そして冷ます時間として「3分」が表示部406に表示される。
表示部406に「3分」が表示されている状態でユーザがcooling assistボタン401を押すと、「冷ます」に対応するLED402が点灯したまま、冷ます時間として「5分」が表示部406に表示される。
【0035】
また、表示部406に「5分」が表示されている状態でユーザがcooling assistボタン401を押すと、LED402が消灯し、「急冷」に対応するLED403が点灯する。そして急冷時間として「10分」が表示部406に表示される。
表示部406に「10分」が表示されている状態でユーザがcooling assistボタン401を押すと、「急冷」に対応するLED403が点灯したまま、急冷時間として「15分」が表示部406に表示される。
【0036】
表示部406に「15分」が表示されている状態でユーザがcoolig assistボタン401を押すと、LED403が消灯し、「急凍」に対応するLED404が点灯する。そして急冷時間として「45分」が表示部406に表示される。
表示部406に「45分」が表示されている状態でユーザがcooling assistボタン401を押すと、「急凍」に対応するLED404が点灯したまま、急冷時間として「60分」が表示部406に表示される。更に、表示部406に「60分」が表示される。
【0037】
更に、表示部406に「60分」が表示されている状態でユーザがcoolig assistボタン401を押すと、LED404が消灯し、「予冷+急凍」に対応するLED405が点灯する。そして急冷時間として「60分」が表示部406に表示されている状態でユーザがcooling assistボタン401を押すと、LED405が消灯し、表示部406による急冷時間の表示が終了する。
表示部406が急冷時間を表示していない状態は、冷蔵庫100が急冷機能を実行しないことを示す。
【0038】
図4に示すように、冷蔵庫100は、報知部241を備えている。報知部241は、所定の信号を受信した場合に、所定の報知を出力するものである。本実施の形態では、報知部241は、音声出力装置であるスピーカと、発光素子であるLEDとを備える。報知部241は、当該スピーカから音声メッセージや所定のメロディーを出力し、LEDを点滅させることで、冷蔵庫100の状態をユーザに通知する。
【0039】
制御基板250は、冷蔵庫100の外部に設けられる通信装置253の信号を受信して、冷蔵庫100の各部を制御可能に形成されている。通信装置253は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末や、リモコン等のコントローラである。本実施の形態では、通信装置253は、通信ネットワーク254とサーバ255とを介して、制御基板250と所定の信号を送受信可能に形成されている。
【0040】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷蔵庫100について、その動作を以下説明する。
[1-2-1.クーリングアシスト]
図6から
図8に基づいて、冷蔵庫100が急冷機能を実行する際の処理を説明する。
図6から
図8のフローチャートに示す各ステップは、制御基板250において、ROMに記憶されているプログラムをCPUがRAMに展開して実行することによって実現される。
【0041】
図6は、制御基板250による予冷機能の有無の区別を示すフローチャートである。
クーリングアシストを実施する場合において、冷蔵庫100は、予冷機能を開始するか否かを判定する(ステップ601)。
【0042】
図7は、急冷機能を示すフローチャートである。
予冷機能を開始しない場合(ステップ601:NO)、冷蔵庫100は、急冷機能(ステップ602)を実施する。
図7に示すように、冷蔵庫100が急冷機能を開始すると判定すると(ステップ701:YES)、冷蔵庫100は、急冷機能を開始する(ステップ702)。
【0043】
具体的に説明すると、冷蔵庫100は、ユーザに指定された急冷時間を特定し、急冷ファン216の回転を開始する。この場合、冷蔵庫100は、冷却ファン204の回転数を通常モードの実施時よりも少なくする。更に、冷蔵庫100は、冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222と野菜室ダンパ224とを全て閉じ、圧縮機201の回転数を増やす。
【0044】
これらの制御によって、冷蔵庫100では、急冷ファン216に冷気が集中しやすくなり、急冷機能による冷却効率が向上する。この場合において、表示部406には、急冷時間の残り時間が表示される。
なお、急速製氷機能を実行中に冷蔵庫100が急冷機能を開始すると、冷気が急冷ファン216に集中するため、急速製氷機能は中止される。
【0045】
次に、冷蔵庫100は、実行中の急冷機能を中止するか否かを判定する(ステップ703)。
冷蔵庫100は、冷蔵庫100が急速製氷機能を開始する場合、あるいは操作パネル400で所定の中止操作が入力された場合、あるいは通信装置253が送信した中止指示をサーバ255経由で冷蔵庫100が受信した場合に、急冷機能を中止すると判定する(ステップ703:YES)。
急冷機能を中止すると判定すると、冷蔵庫100は、急冷機能を中止する(ステップ706)に進む。
【0046】
一方、急冷機能を中止しないと判定する(ステップ703:NO)と、冷蔵庫100は、ステップ702で急冷ファン216の回転を開始してから経過した時間(以降の説明ではこの時間のことを経過時間と呼ぶ場合がある)がステップ702で特定した急冷時間に達したか否かを判定する(ステップ704)。
経過時間がステップ702で特定した急冷時間に達したと冷蔵庫100が判定すると(ステップ704:YES)、冷蔵庫100による処理は、ステップ705に進む。
一方、経過時間がステップ702で特定した急冷時間に達していない場合(ステップ704:NO)、冷蔵庫100の処理は、ステップ703に戻る。
【0047】
次にステップ705について説明する。
ステップ705において、冷蔵庫100は急冷機能を完了する。具体的に説明すると、冷蔵庫100は、急冷ファン216の回転を停止し、更に急冷機能が完了したことを示す音声メッセージや所定のメロディーを流すことで急冷機能が完了したことをユーザに通知する。
この場合において、冷蔵庫100は、冷却ファン204の回転数を通常の回転数に戻し、冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222と野菜室ダンパ224との制御を通常の制御に戻し、圧縮機201の回転数を通常の回転数に戻す。
【0048】
次にステップ706について説明する。
ステップ706において、冷蔵庫100は急冷機能を中止する。具体的に説明すると、冷蔵庫100は、急冷ファン216の回転を停止し、更に急冷機能が中止されたことを示す音声メッセージを流すことで急冷機能が中止されたことをユーザに通知する。
また、冷蔵庫100は、冷却ファン204の回転数を通常の回転数に戻し、冷蔵室ダンパ221と切替室ダンパ222と野菜室ダンパ224との制御を通常の制御に戻し、圧縮機201の回転数を通常の回転数に戻す。
【0049】
図8は、予冷機能を示すフローチャートである。
予冷機能を開始する場合(ステップ601:YES)、冷蔵庫100は、予冷機能(ステップ603)を実施する。
図8に示すように、予冷機能を開始すると冷蔵庫100が判定すると(ステップ801)、冷蔵庫100は、予冷機能を開始する(ステップ802)。
具体的に説明すると、冷蔵庫100は、ユーザに指定された急速製氷機能を開始する。この場合において、冷蔵庫100は、冷却ファン204の回転を連続運転させ、圧縮機201の回転数を増やし連続運転を開始する。これらの制御によって、上段冷凍室103に冷気が集中しやすくなり、庫内温度が低下する。
【0050】
次いで、冷蔵庫100は、実行中の予冷機能を中止するか否かを判定する(ステップ803)。冷蔵庫100は、操作パネル400で所定の中止操作が入力された場合、あるいは通信装置253が送信した中止指示をサーバ255経由で冷蔵庫100が受信した場合に、予冷機能を中止すると判定する(ステップ803:YES)。
予冷機能を中止すると冷蔵庫100が判定すると、冷蔵庫100の処理は、ステップ806に進む。
一方、急冷機能を中止しないと冷蔵庫100が判定すると(ステップ803:NO)、処理はステップ804に進む。
【0051】
次にステップ804について説明する。
ステップ804において、冷蔵庫100は、ステップ702で予冷機能を開始してから経過した時間(以降の説明ではこの時間のことを経過時間と呼ぶ場合がある)がステップ802で特定した予冷時間に達したか否かを判定する。
経過時間がステップ702で特定した予冷時間に達したと冷蔵庫100が判定すると(ステップ804:YES)、冷蔵庫100の処理は、ステップ805に進む。
一方、経過時間がステップ802で特定した予冷時間に達していないと冷蔵庫100が判定すると(ステップ804:NO)、冷蔵庫100の処理は、ステップ803に戻る。
【0052】
次にステップ805について説明する。
ステップ805において、冷蔵庫100は、予冷機能を完了する。
具体的に説明すると、冷蔵庫100は、予冷機能が完了したことを示す音声メッセージや所定のメロディー、あるいはLEDを点滅させることを報知部241に実施させ、予冷機能が完了したことをユーザに通知する。これによって、冷蔵庫100は、予冷機能が完了したことをユーザに認識させることが可能である。
【0053】
予冷機能が完了したことを認識したユーザが上段冷凍室103に食品を入れて、cooling assistボタン401を操作し、再度「予冷+急凍」を選択すると、冷蔵庫100は、
図7に示す急冷機能を実行する。
以上の説明の通り、冷蔵庫100において、ユーザは、「冷ます」、「急冷」、「急凍」、「予冷+急凍」に対応する複数の候補の中から、急冷機能の利用目的に応じて所望の急冷時間を指定できる。
【0054】
ここで、本実施の形態における冷蔵庫100の冷却の特性を測定した実験について説明する。
発明者らは、冷蔵庫100において、予冷機能の有無が食品の最大氷結晶生成帯通過時間に与える影響を実験によって検証した。
この実験では、冷蔵庫100の冷却対象である食品の試料として、牛肉の成分を想定して作られた模擬負荷を用いた。そのため、この模擬負荷の最大氷結晶生成帯は、-1℃~-5℃である。模擬負荷は、冷蔵庫100に収められる前に、室温(25℃)に安定した150gのものを用いた。
【0055】
図9は、予冷機能の有無による最大氷結晶生成帯通過時間の差を示す図である。
図9では、「急凍」と「予冷+急凍」の冷却グラフを記載している。
図9に示すグラフの縦軸は、模擬負荷の温度を示し、横軸は、「急凍」の開始時間を0分とし、当該模擬負荷の冷却にかかった時間を示している。
なお、
図9において、「予冷」にかかった時間は、省略して示している。
図9に示すように、冷蔵庫100に収められた試料に対して、「急凍」だけ実施された場合では、当該試料の最大氷結晶生成帯通過時間は、44分であった。一方、冷蔵庫100に収められた試料に対して、「予冷+急凍」が実施された場合では、当該試料の最大氷結晶生成帯通過時間は、29分であった。
【0056】
これらの結果から、冷蔵庫100では、事前に予冷を入れることで最大氷結晶生成帯通過時間を短縮可能である、という知見を得た。すなわち、冷蔵庫100では、「急凍」だけでは最大氷結晶生成帯を30分以内で通過できなかった食品であっても、「予冷+急凍」が実施されることで、最大氷結晶生成帯を30分以内で通過可能である、という知見を得た。
これによって、発明者らは、事前に予冷を入れることで冷蔵庫100に収められた食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮可能である、という知見を得た。
【0057】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫100は、内部の温度を調節可能な上段冷凍室103と、上段冷凍室103の温度を制御する制御基板250とを備える。
制御基板250は、上段冷凍室103を所定温度に保たせる通常モードと、上段冷凍室103に収められた食品を所定時間冷却させる急冷モードと、上段冷凍室103の温度を所定温度に低下させた後に、上段冷凍室103に食品が収められた場合に、食品を所定時間冷却させる特別モードとを実施する。
【0058】
これにより、冷蔵庫100では、ユーザが急冷モードや、特別モードを選択して実施させることにより、上段冷凍室103を通常より低温に冷却することができる。更に、冷蔵庫100では、上段冷凍室103を予冷した上で急冷機能を実施する特別モードを実施することで、上段冷凍室103に収められた食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮することができ、凍結による食品の損傷を抑制できる。
また、冷蔵庫100では、ユーザが急冷モードや、特別モードを選択して実施させることにより、従来よりも多くの食品を急速冷凍できるようになる。
【0059】
本実施の形態のように、所定の報知を出力する報知部241を備え、制御基板250は、特別モードを実施する場合に、上段冷凍室103の温度を所定温度に低下させた後に、報知部241に所定の報知を実施させてもよい。
これにより、ユーザは、所定温度に低下した上段冷凍室103に、食品を収めることができる。そのため、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に収められた食品の最大氷結晶生成帯通過時間を短縮することができる。
【0060】
本実施の形態のように、制御基板250は、特別モードを実施する場合に、報知部241に所定の報知を実施させてから所定時間が経過するまでに、所定の信号を受信できなければ、特別モードから通常モードを実施するようにしてもよい。
これにより、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に食品が収められていない場合に、特別モードの実施を中止できる。そのため、冷蔵庫100では、電力の入力を抑制し、省エネルギー化を図ることができる。
【0061】
本実施の形態のように、上段冷凍室103には、上段冷凍室103に供給された冷気を上段冷凍室103に収められた食品に送り出す急冷ファン216が設けられ、制御基板250は、急冷ファン216を所定時間駆動させることで、食品を所定時間冷却させるようにしてもよい。
これにより、冷蔵庫100は、上段冷凍室103において、急冷機能を実現できる。そのため、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に収められた食品をより効率よく冷却できる。
【0062】
本実施の形態のように、上段冷凍室103に供給される冷気を生成する冷却器203と、冷却器203で生成された冷気を貯蔵室に送り出す冷却ファン204と、冷却器203と冷却ファン204とが収められる冷凍室ダクト211と、冷気を上段冷凍室103に導く風路を形成するダクトカバー302とを備える。そして、急冷ファン216は、ダクトカバー302の上段冷凍室103の内部に位置する箇所に設けられるようにしてもよい。
これにより、冷蔵庫100は、上段冷凍室103において、急冷機能を実現できる。そのため、冷蔵庫100では、上段冷凍室103に収められた食品をより効率よく冷却できる。
【0063】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0064】
実施の形態1では、報知部241による報知によって、予冷機能が完了したことを認識したユーザが上段冷凍室103に食品を入れて、cooling assistボタン401を操作し、再度「予冷+急凍」を選択すると、冷蔵庫100は、
図7に示す急冷機能を実行するとした。
しかしながらこれに限らず、冷蔵庫100は、予冷機能の完了後に上段冷凍室103を閉塞する扉の開閉を検知した場合に、
図7に示す急冷機能を実行してもよい。
【0065】
この場合において、冷蔵庫100には、上段冷凍室103を閉塞する扉の開閉を検知する開閉センサが設けられている。
制御基板250は、当該開閉センサの検知結果を取得し、上段冷凍室103の開閉を判定し、更に、急冷機能を実行するか否かを判定する。
具体的には、制御基板250は、ステップ805の実施後に、上段冷凍室103を閉塞する扉が開かれた後に閉じられた、と判定すると、冷蔵庫100の各部に、急冷機能を実行させる。
【0066】
これによって、制御基板250は、上段冷凍室103を閉塞する扉の開閉を検知することで、予冷機能の完了後にユーザが上段冷凍室103に食品を入れたか否かを判定し、冷蔵庫100に急冷機能を実行させるか否かを判定することが可能である。
このため、冷蔵庫100では、ユーザがcooling assistボタン401を操作することなく、予冷機能の完了後に急冷機能を実行することが可能である。
【0067】
実施の形態1では、冷蔵庫100は、上段冷凍室103において、予冷機能、及び急冷機能が実施されるとした。
しかしながらこれに限らず、冷蔵庫100では、当該冷蔵庫100が備える冷蔵室101、製氷室102、下段冷凍室104、野菜室105等の他の貯蔵室、あるいはその分室で予冷機能、及び急冷機能が実施されてもよい。またその場合、予冷機能、及び急冷機能が実施される貯蔵室には、冷却器で生成された冷気が導かれる風路を形成するダクトと、当該ダクトに設けられる通風ファンが設けられる。
【0068】
実施の形態1では、冷蔵庫100が報知部241を備え、報知部241が音声メッセージや所定のメロディーやLEDを点滅させることで、予冷機能が完了したことをユーザに通知するとした。
しかしながらこれに限らず、通信装置253が報知部241を備え、制御基板250がサーバ255を介して、所定の信号を送信し、当該通信装置253の報知部241に所定の報知を実施させることで、予冷機能が完了したことをユーザに通知してもよい。
この場合において、例えば、通信装置253がスマートフォンであった場合には、プッシュ通知によって、予冷機能が完了したことをユーザに通知してもよい。
【0069】
また、
図4に示した各部は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、あるいは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、冷蔵庫100、及び制御基板250の他の各部の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0070】
また、例えば、
図6から
図8に示す動作のステップ単位は、制御基板250の各部の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、更に多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位が更に多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0071】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、熱輸送手段で搬送される外気の熱で回転仕切体の結露を抑制することで、結露防止用ヒータへの入力を低減し、省エネ性を向上させることができるので、回転仕切体を備えた家庭用及び業務用など様々な種類及び大きさの冷蔵庫に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100 冷蔵庫
103 上段冷凍室(貯蔵室)
203 冷却器
204 冷却ファン
211 冷凍室ダクト(ダクト)
215 冷気風路(風路)
216 急冷ファン(通風ファン)
241 報知部
250 制御基板(制御部)
302 ダクトカバー