IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

特開2023-69854ブドウ果汁含有飲料及び凝集浮遊物抑制方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069854
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ブドウ果汁含有飲料及び凝集浮遊物抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20230511BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182026
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】小池 央朗
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC15
4B117LG05
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL06
4B117LL07
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有していても、凝集浮遊物の発生が抑制されたブドウ果汁含有飲料を提供する。
【解決手段】ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料であって、pHが3.2以上である、ブドウ果汁含有飲料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料であって、
pHが3.2以上である、
ブドウ果汁含有飲料。
【請求項2】
赤ブドウ果汁を含有する、
請求項1に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項3】
果汁率が3~25質量%である、
請求項1又は2に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項4】
ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料における凝集浮遊物抑制方法であって、
前記ブドウ果汁含有飲料のpHを3.2以上に調整する、
凝集浮遊物抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ果汁含有飲料、及びブドウ果汁含有飲料における凝集浮遊物抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフェノールを含むブドウ果汁を含有するブドウ果汁含有飲料が広く親しまれている。
【0003】
ブドウ果汁含有飲料では、酸化を防止する抗酸化剤や、容器への充填等の際に泡が生成することを抑制する消泡剤等の添加剤が添加される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、ポリフェノール含有量が多いブドウ果汁含有飲料において、抗酸化剤や消泡剤等の添加剤が添加されると、一定期間保管したときに浮遊物が発生する場合があることが見出された。
【0005】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、その浮遊物は、ポリフェノールと、抗酸化剤や消泡剤等に由来するグリセリン脂肪酸エステルやトコフェロールとが凝集して発生するものであることが明らかとなった。
【0006】
飲料中に発生したこのような浮遊物は、見た目がよくなく消費者に不快感を与える場合がある。そのため、浮遊物の発生を抑制することが望まれる。
【0007】
本発明は、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有していても、凝集浮遊物の発生が抑制されたブドウ果汁含有飲料を提供することを目的とする。また、本発明は、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有するブドウ果汁含有飲料における凝集浮遊物抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有するブドウ果汁含有飲料において、pHを特定範囲に調整することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)のように構成される。
(1)ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料であって、pHが3.2以上である、ブドウ果汁含有飲料。
【0010】
(2)赤ブドウ果汁を含有する、(1)のブドウ果汁含有飲料。
【0011】
(3)果汁率が3~25質量%である、(1)又は(2)のブドウ果汁含有飲料。
【0012】
(4)ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料における凝集浮遊物抑制方法であって、前記ブドウ果汁含有飲料のpHを3.2以上に調整する、凝集浮遊物抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有していても、凝集浮遊物の発生が抑制されたブドウ果汁含有飲料を提供することができる。また、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有するブドウ果汁含有飲料における凝集浮遊物抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
【0015】
<1.ブドウ果汁含有飲料>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmである。そして、このブドウ果汁含有飲料においては、pHが3.2以上であることを特徴としている。
【0016】
このようなブドウ果汁含有飲料によれば、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有していても、一定期間保管した後に発生する凝集浮遊物を効果的に抑制することができる。
【0017】
(1)ブドウ果汁
ブドウ果汁は、ブドウの果実からの搾汁を用いて得られる。例えば、搾汁(ストレート果汁)をそのままブドウ果汁として用いてもよく、搾汁を加工したものをブドウ果汁として用いてもよい。搾汁を加工したものとしては、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、搾汁液の濃縮果汁を希釈した還元果汁等が挙げられる。
【0018】
搾汁を加工する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。搾汁は清澄処理した透明果汁でもよく、混濁果汁でもよい。
【0019】
ブドウ果汁は、ポリフェノールを豊富に含み、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点から赤ブドウ果汁であることが好ましい。赤ブドウの品種は、特に限定されない。例えば、コンコード、巨峰、紅マスカット、デラウェア、安芸クイーン、サニードルチェ、サニールージュ、ピオーネ、藤稔、ナガノパープル、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラーズ、キャンベル・アーリー、スチューベン等が挙げられるが、ポリフェノールを豊富に含み、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点からコンコードが好ましい。ブドウ果汁としては、白ブドウ果汁を用いてもよく、例えば、マスカット(マスカットオブアレキサンドリア)、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、ピッテロビアンコ、シャルドネ、トムソン・シードレス等の品種が挙げられる。このようなブドウは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
また、ブドウ果汁は、ブドウ以外の果実等から得られる果汁(例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁等)と併用してもよい。ブドウ果汁含有飲料において、このような果汁をブドウ果汁と併用する場合、その配合量は得ようとする風味等に応じて適宜調整できる。
【0021】
ブドウ果汁含有飲料における果汁率は、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点から、3~25質量%が好ましい、果汁率の上限は、12質量%がより好ましく、8質量%が更に好ましい。
【0022】
なお、「果汁率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100質量%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算される。例えば、ブドウ果汁はJAS規格が11°Bxであるから、55°Bxの濃縮ブドウ果汁を飲料中10質量%配合した場合、果汁含有率は50質量%となる。ただし、果汁の果汁率をJAS規格の糖用屈折計示度に基づいて換算する際には、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。また、通常果汁率は質量%(すなわち飲料100gあたりの果汁量(g)(w/w))で表される。
【0023】
(2)ポリフェノール
本明細書において、ポリフェノールとは、1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称を意味する。ポリフェノールは、上述したブドウ果汁に由来するものであるが、例えば、ブドウ以外の果実等から得られる果汁等の天然物や、そのような天然物からの抽出物に由来するものであってもよい。また、化学合成されたものであってもよい。
【0024】
ブドウ果汁含有飲料において、ポリフェノール含有量は1000~8000ppmである。ポリフェノール含有量の下限は、1500ppmが好ましい。また、ポリフェノール含有量の上限は、5000ppmが好ましく、3000ppmがより好ましい。上記範囲内であると、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある。
【0025】
本明細書において、ポリフェノールの含有量は、フォーリン・チオカルト法(没食子酸換算)により測定される。
【0026】
(3)グリセリン脂肪酸エステル
本明細書において、グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンがもつ3つの水酸基(親水性基)のうち1つまたは2つに脂肪酸がエステル結合したものであり、食品用乳化剤として知られるものである。グリセリン脂肪酸エステルは、例えば、抗酸化剤や消泡剤、香料等に由来するものである。
【0027】
脂肪酸は、特に限定されず、直鎖状でも分岐状でもよく、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。脂肪酸の炭素原子数も特に限定されないが、通常、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等が挙げられる。具体的な脂肪酸としては、例えば炭素数8~24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられる。
【0028】
ブドウ果汁含有飲料において、グリセリン脂肪酸エステル含有量は500~7000ppmである。グリセリン脂肪酸エステル含有量の下限は、1500ppmが好ましく、3000ppmがより好ましい。また、グリセリン脂肪酸エステル含有量の上限は、5000ppmが好ましい。上記範囲内であると、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある。
【0029】
(4)トコフェロール
トコフェロールは、脂溶性ビタミンの1種であり、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールの4種類がある。トコフェロールは、例えば、抗酸化剤や消泡剤等に由来するものである。
【0030】
ブドウ果汁含有飲料において、トコフェロール含有量は1~1000ppmである。トコフェロール含有量の下限は、200ppmが好ましく、400ppmがより好ましい。また、トコフェロール含有量の上限は、800ppmが好ましく、600ppmがより好ましい。上記範囲内であると、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある。
【0031】
本明細書において、トコフェロールの含有量は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)で既知の方法により測定される。
【0032】
(5)pH
ブドウ果汁含有飲料のpHは、3.2以上である。pHの下限は、3.4が好ましく、3.7がより好ましい。pHの上限は、特に限定されないが、例えば、4.2が好ましく、4.0がより好ましい。
【0033】
(6)その他
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料においては、必要に応じて、一般的な飲料に通常用いられる原材料や添加剤を適宜配合することができる。例えば、糖類(砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖やオリゴ糖、エリスリトールやマルチトール等のような糖アルコール、果糖ぶどう糖液糖等の異性化糖)、甘味料、抗酸化剤、乳化剤、増粘安定剤、色素、香料、保存料、防腐剤、pH調整剤、防かび剤、ビタミン類やミネラル類、酸味料、食物繊維等が挙げられる。
【0034】
<2.ブドウ果汁含有飲料の製造方法>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、通常の飲料の製造方法に用いられる装置や条件によって製造することができる。
【0035】
具体的に、このブドウ果汁含有飲料の製造方法は、例えば、ブドウ果汁を含有する溶液に、抗酸化剤や消泡剤、香料等の添加剤を添加する等により、ポリフェノール含有量が1000~8000ppm、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppm、トコフェロール含有量が1~1000ppmとなったブドウ果汁含有飲料において、pHを3.2以上に調整する工程を有する。なお、原料の混合順序は、特に限定されない。
【0036】
pHの調整方法は、特に限定されず、例えば、pH調整剤やブドウ果汁以外の果汁を添加したり、複数種のブドウ果汁の混合比を調整したりする方法が挙げられる。pH調整剤としては、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸、L-酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
このようにして調製した飲料を、容器に充填することによって、容器詰めブドウ果汁含有飲料を製造することができる。
【0038】
なお、製造されたブドウ果汁含有飲料においては、例えば容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0039】
ブドウ果汁含有飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶等の密封容器等が挙げられる。特に、凝集浮遊物の発生が確認されやすく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点から、透明容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0040】
<3.凝集浮遊物抑制方法>
上述したように、本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料において、pHが3.2以上であることで、そのような所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有するブドウ果汁含有飲料であっても、一定期間保管した後に発生する凝集浮遊物を抑制することができるという効果を奏する。
【0041】
このことから、所定量のポリフェノール、グリセリン脂肪酸エステル及びトコフェロールを含有するブドウ果汁含有飲料に対して、pHを3.2以上に調整する、という凝集浮遊物抑制方法と定義することができる。
【0042】
このような方法に基づいてpHを調整することで、一定期間保管した後に発生する凝集浮遊物が抑制されたブドウ果汁含有飲料を提供することができる。
【実施例0043】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[試験1:ポリフェノール含有量の違いによる凝集浮遊物発生の検証]
(ブドウ果汁含有飲料の調製)
表1の「処方」の項に示す割合で各成分を混合した後、果汁率が「特性等」の項の果汁率に示す値となるように水で希釈した果汁希釈飲料(ブドウ果汁含有飲料)を調製した。赤ブドウ果汁はコンコード種の果汁を用いた。
【0045】
得られた飲料の各特性等は、以下の方法で測定して、結果を表1に示した。
【0046】
果汁率:飲料の果汁率の計算値を示した(単位:質量%)。
【0047】
Brix:飲料の液温を20℃に調整してから、糖用屈折計(商品名「RX-5000α」、株式会社アタゴ製)を用いて、飲料のBrix値を測定した(単位:°Bx)。
【0048】
酸度:飲料の酸度を、日本農林規格(平成18年8月8日農水告第1127号)に定められた酸度の測定方法に基づき、以下の式で算出した(単位:無水クエン酸g/100ml)。
酸度(%)=A×f×100/V×0.0064
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
V:試料体積(mL)
0.0064:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLに相当する無水クエン酸の重量(g)
【0049】
pH:飲料の液温を20℃に調整してから、pHメーター(商品名「HM-30R」、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、飲料のpHを測定した。
【0050】
<外観>
得られた飲料を55℃で10日間保管した後、外観(色調)を評価し、結果を表1に示した。評価は、専門的な訓練を受けたパネル6名により、以下の評価基準に従って1~7点の7段階評価を実施し、各パネルによる評価点の平均点とした。調製直後の劣化前の各飲料を対照とした。
(評価基準)
7点:対照(劣化前)と差がない
6点:対照(劣化前)と差がわずかにある
5点:対照(劣化前)と少し差がある
4点:対照(劣化前)と比較的差がある
3点:対照(劣化前)との差が大きい
2点:対照(劣化前)との差がかなり大きい
1点:対照(劣化前)との差が非常に大きい
【0051】
<凝集浮遊物>
得られた飲料を55℃で10日間保管した後、凝集浮遊物の発生度合を評価し、結果を表1に示した。評価は、専門的な訓練を受けたパネル6名により、以下の評価基準に従って1~7点の7段階評価を実施し、各パネルによる評価点の平均点とした。調製直後の各飲料はいずれも7点であった。
(評価基準)
7点:凝集浮遊物が確認できない
6点:光を当てるとようやく靄が確認できる
5点:光を当てなくても靄が見え、細かい凝集浮遊物が確認できる
4点:1mm程度の凝集浮遊物が確認できる
3点:1mm程度の凝集浮遊物が確認でき、2mm程度の凝集浮遊物が少量確認できる
2点:2mm程度の凝集浮遊物が多量に確認できる
1点:2mm以上の凝集浮遊物が多量に確認できる
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示される通り、ポリフェノール含有量が1000~8000ppmである場合、凝集浮遊物の発生が確認されることがわかった。なお、ポリフェノール含有量が8000ppmを超える場合、凝集浮遊物の発生が確認されにくくなるが、これは、対照と外観の差があまりなく、液色が濃いことで凝集浮遊物が目立たなくなったと考えられる。
【0054】
[試験2:グリセリン脂肪酸エステル含有量及びトコフェロール含有量の違いによる凝集浮遊物発生の検証]
(ブドウ果汁含有飲料の調製)
表2の「処方」の項に示す割合で各成分を混合した後、果汁率が「特性等」の項の果汁率に示す値となるように水で希釈した果汁希釈飲料(ブドウ果汁含有飲料)を調製した。赤ブドウ果汁はコンコード種の果汁を用いた。
【0055】
得られた飲料の各特性等は、試験1と同様にして測定して、結果を表2に示した。
【0056】
得られた飲料の外観及び凝集浮遊物の評価は、試験1と同様にして行い、結果を表2に示した。なお、凝集浮遊物の評価について、調製直後の各飲料はいずれも7点であった。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示される通り、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmである場合、凝集浮遊物の発生が確認されることがわかった。
【0059】
[試験3:pH調整による凝集浮遊物抑制の検証]
(ブドウ果汁含有飲料の調製)
表3の「処方」の項に示す割合で各成分を混合した後、果汁率が「特性等」の項の果汁率に示す値となるように水で希釈した果汁希釈飲料(ブドウ果汁含有飲料)を調製した。赤ブドウ果汁はコンコード種の果汁を用いた。
【0060】
得られた飲料の各特性は、試験1と同様にして測定して、結果を表3に示した。
【0061】
得られた飲料の外観及び凝集浮遊物の評価は、試験1と同様にして行い、結果を表3に示した。なお、凝集浮遊物の評価について、調製直後の各飲料はいずれも7点であった。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示される通り、ポリフェノール含有量が1000~8000ppmであり、グリセリン脂肪酸エステル含有量が500~7000ppmであり、トコフェロール含有量が1~1000ppmであるブドウ果汁含有飲料において、pHが3.2以上である実施例1~3は、比較例1及び2と比べて、凝集浮遊物の発生を抑制できることがわかった。