IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガスバリア性フィルム及び包装材 図1
  • 特開-ガスバリア性フィルム及び包装材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070206
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20230512BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B32B3/30
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182223
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 竜也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086DA08
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AB10B
4F100AK01A
4F100AK06C
4F100AK19A
4F100AK21A
4F100AK69A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DD01A
4F100DD11A
4F100EH66B
4F100EJ40
4F100GB15
4F100GB23
4F100GB41
4F100GB66
4F100JD02A
4F100JK17
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】水蒸気や酸素に対して良好なバリア性を示し、またフィルムの伸びや折り曲げによるバリア性低下を防ぐために柔軟性を有したガスバリア性フィルムおよび、それを用いた包装材を提供する。
【解決手段】少なくともプラスチックを含むガスバリア性フィルムは、凹部と凸部が繰り返し方向に沿って交互に繰り返されるように配列された凹凸構造を有し、前記凸部は、天面と、該天面の繰り返し方向両端に接続されて前記凹部側に向かう一対の斜面とを有し、前記凹部は、底面と、該底面の繰り返し方向両端に接続されて前記凸部側に向かう一対の斜面とを有し、前記凸部の天面は、第1の平面内にそれぞれ存在し、前記凹部の底面は、前記第1の平面に並行する第2の平面内にそれぞれ存在し、前記凸部の天面と前記凹部の底面は、それぞれ面積比率が30%以上、70%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともプラスチックを含むガスバリア性フィルムであって、
凹部と凸部が繰り返し方向に沿って交互に繰り返されるように配列された凹凸構造を有し、
前記凸部は、天面と、該天面の繰り返し方向両端に接続されて前記凹部側に向かう一対の斜面とを有し、
前記凹部は、底面と、該底面の繰り返し方向両端に接続されて前記凸部側に向かう一対の斜面とを有し、
前記凸部の天面は、第1の平面内にそれぞれ存在し、前記凹部の底面は、前記第1の平面に並行する第2の平面内にそれぞれ存在し、
前記凸部の天面と前記凹部の底面は、それぞれ面積比率が30%以上、70%未満である、ことを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記凸部の天面と前記凹部の底面との距離は一定である、ことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記ガスバリア性フィルムを前記凹部と前記凸部が繰り返される方向に引っ張った際に、最大伸長増加率が0.2以上、0.5以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア性フィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)から形成されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリア性フィルムが、アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカのうち、いずれかを蒸着積層させたフィルムである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムと、前記凸部の天面と前記凹部の底面のうち少なくとも一方の面に接合されるフィルムとを積層してなる、ことを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルム及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、精密電子部品などを保護する包装材としては、一般的には基材フィルム層とシーラント層を有しており、用途によって求められる特性に応じて中間層が設けられる。包装材の用途によって求められる特性の一つに、ガスバリア性が挙げられる。ガスバリア性フィルム層を設けた包装材により、例えば食品を包装した場合には、食品が含んでいるタンパク質や油脂の変質や、内容物が含んでいる水分の揮発放散を防止することができ、食品の風味や鮮度を長期間維持することが可能となる。
【0003】
ガスバリア性フィルムとしてよく用いられる材料には、アルミニウム箔、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムなど、その材料自身がガスバリア性を持つものや、アルミ蒸着したPETフィルム、アルミナ蒸着したPETフィルム、シリカ蒸着したPETフィルムなど、PETフィルム上にガスバリア性を有する材料をコーティングしたフィルムが挙げられる。これらを包装材の中間層に設けることで、大気と内容物とを遮断し、大気中のガス流入による内容物変質や、内容物から水分が蒸発することを抑制することができる。
【0004】
しかしながら、上記のようなガスバリア性フィルムは、材料の特性上いずれも伸び性が悪く、上記のようなフィルムをガスバリア層に用いた包装材料に対して、伸縮、折り曲げなどの負荷がかかった場合に、ガスバリア性が損なわれてしまうといった問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1においては、屈曲しても高い水蒸気バリア性を維持することができるガスバリアフィルムとして、基材フィルム、易接着層、有機層、および無機層をこの順に有し、前記有機層は、内部応力が2.0MPa以下であり、ガラス転移温度が200℃以上であり、かつ厚さが1.0μm以上である、ガスバリアフィルムが提案されている。
【0006】
また、特許文献2においては、ポリエステル系樹脂、または、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層と、その上のガスバリア性塗布膜と、該ガスバリア性塗布膜表面に形成された、酸素、窒素若しくはアルゴンの単独ガス、またはこれらの混合ガスによるプラズマ処理をされた強密着処理層であって、グロー放電プラズマ発生装置を使用してパワー4~20kw、ガス圧2~100×10-3mbar、処理速度100~600m/minで易接着処理された層と、さらにその上に半透明金属薄膜層とを配置してなるガスバリア性積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6280477号公報
【特許文献2】特許第5870963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1によれば、有機層の存在により無機層のクラックを抑制することが述べられているが、特許文献1のガスバリアフィルムでは、10%以下の引っ張り量でクラックが発生してしまい、それ以上の伸びに対して効果が低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2によれば、効果を発揮するガスバリア性積層フィルムの引っ張り量の範囲は3%までであり、それ以上引っ張られた際の効果は記載されていないため、引っ張り量が3%を超える範囲で該フィルムを用いることができるかは不明であるが、特許文献2のフィルムの構成上、フィルムが引っ張られた際に必然的に薄くなる箇所や蒸着層のクラックが発生する箇所が生じるため、引っ張り量が3%を超える範囲ではガスバリア性を保持する効果が低下してしまう可能性が高い。
【0010】
本発明は、水蒸気や酸素に対して良好なバリア性を示し、またフィルムの伸びや折り曲げによるバリア性低下を防ぐために柔軟性を有したガスバリア性フィルムおよび、それを用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のガスバリア性フィルムの一つは、少なくともプラスチックを含むガスバリア性フィルムであって、
凹部と凸部が繰り返し方向に沿って交互に繰り返されるように配列された凹凸構造を有し、
前記凸部は、天面と、該天面の繰り返し方向両端に接続されて前記凹部側に向かう一対の斜面とを有し、
前記凹部は、底面と、該底面の繰り返し方向両端に接続されて前記凸部側に向かう一対の斜面とを有し、
前記凸部の天面は、第1の平面内にそれぞれ存在し、前記凹部の底面は、前記第1の平面に並行する第2の平面内にそれぞれ存在し、
前記凸部の天面と前記凹部の底面は、それぞれ面積比率が30%以上、70%未満であることにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水蒸気や酸素に対して良好なバリア性を示し、またフィルムの伸びや折り曲げによるバリア性低下を防ぐために柔軟性を有したガスバリア性フィルムおよび、それを用いた包装材を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態にかかるガスバリア性フィルムの一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる包装材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、実際のものとは異なる場合が含まれ、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示していることがある。
【0015】
以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定されるものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
なお、また、本明細書で用いる表面と裏面とは、便宜上の記載であり、ガスバリア性フィルムにおける一対の面のいずれかを、表面及び裏面としても良い。
【0016】
以下、図1図2を参照して、ガスバリア性フィルム1、及び包装材20の構成について説明する。
【0017】
(ガスバリア性フィルム)
ガスバリア性フィルム1は、樹脂材料からなり、図1に示すように、ガスバリア性フィルム1の断面方向から見て凹部2bと凸部2aが、繰り返し方向(図1で左右方向)に沿って交互に形成された凹凸構造2を有する。ここで、凹部2bは、底面2s(凹凸構造2において最も低い面)と、該底面2sの繰り返し方向両端に接続されて凸部2a側に向かう一対の斜平面(斜面ともいう)2c’とを有する。また、凸部2aは、天面2t(凹凸構造2において最も高い面)と、該天面2tの繰り返し方向両端に接続されて凹部2b側に向かう一対の斜平面(斜面ともいう)2cとを有する。繰り返し方向における凹部2bのピッチと凸部2aのピッチは、互いに等しい。
【0018】
一対の斜平面2c、2c’は、天面2tまたは底面2sから離れるにつれて互いに離間するように、対称的に角度付けされて延在する。斜平面2c、2c’の天面2tまたは底面2sに対する角度は、30度~60度であると好ましい。隣接する凹部2bと凸部2aとの間に存在する斜平面2c、2c’は、平行して延在するガスバリア性フィルム1の表裏面である。ガスバリア性フィルム1の厚みは等しいと好ましい。
【0019】
ガスバリア性フィルム1に凹凸構造2を設けることで、断面がうねった形状となり凹部2bと凸部2aとが配列された繰り返し方向に沿って伸び性を付与することが可能となる。その理由は、引っ張った際に天面2t及び底面2sと斜平面2c、2c’との交差角度が増大することで、うねった構造が平坦に近づいていくことにより、構造由来の伸びを発生させるからである。これによって、フィルム材料そのものにはダメージを与えることがないため、バリア性を損ねることなく伸長することが可能となる。
【0020】
凹凸構造2は、図1の奥行き方向には直線状に延在しており、断面形状は奥行き方向の任意の位置で不変である。
ここで、各凸部2aの天面2tは、第1の平面内に共通して存在することが望ましく、また凹部2bの底面2sは、第1の平面とは異なる第2の平面内に共通して存在することが望ましく、さらに第1の平面と第2の平面とは平行であることが望ましい。なお、凸部2aの天面2tと斜平面2c、2c’との間を接続する曲面状のつなぎ面を配設してもよく、また凹部2bの底面2sと斜平面2c、2c’との間を接続する曲面状のつなぎ面を配設してもよい。
【0021】
また、ガスバリア性フィルム1に複数配列している凸部2aのレベル(底面2sから天面2tまでの距離)は、全て同一であると好ましい。換言すれば、凹部2bのレベル(天面2tから底面2sまでの距離)も、全て同一であると好ましい。すなわち、天面2tと底面2sとの距離は一定であると好ましい。凸部2aまたは凹部2bのレベル差が大きく異なると、包装材とするためにガスバリア性フィルムを、平坦なフィルムと積層する際に段差によって接触しない箇所が発生し、ラミネート強度が低下する不具合が発生するおそれがあるからである。
【0022】
凸部2aおよび凹部2bの面積比率は、それぞれ30%以上、70%未満である。ここで、平面上に載置したガスバリア性フィルムを平面視した場合において、ガスバリア性フィルムの全体面積をAとし、凸部2aの天面2tまたは凹部2bの底面2sの合計面積をBとしたときに、面積比率Cは、以下の式(1)で表される。ただし、凹凸構造2が、つなぎ面を有する場合、天面2tまたは底面2sからの距離が5μm以内のつなぎ面を平面視して得られる面積も、天面2tまたは底面2sの一部として合計面積Bに含めるものとする。
C=(B/A)×100% (1)
【0023】
面積比率が30%未満の場合、包装材として平坦なフィルムと積層する際に接触面積が小さくなり、ラミネート強度が低下する不具合が発生しやすくなる。一方、面積比率が70%以上となる場合、例えば凹部2bの底面2sの面積比率が70%以上となる場合は、他方の面である凸部2aの天面2tの面積比率が必ず30%を下回ってしまうからである。
【0024】
凹凸構造2は、凹部2bと凸部2aとの高低差(凹凸構造2の表面において、最も高い面(天面2t)と最も低い面(底面2sに対する面)との距離)が、ガスバリア性フィルム1の厚さよりも大きくなるように形成されているのが好ましい。
【0025】
また、凹凸構造2を設けたガスバリア性フィルム1を、凹部2bと凸部2aが繰り返される方向(図1で左右方向)に引っ張った際に、断面の凹凸構造が伸びきった時の元の長さに対する最大伸長増加率は、0.2以上、0.5以下であることが好ましい。ここで、ガスバリア性フィルム1の引っ張る前の引っ張り方向の長さをDとし、所定の引っ張り力で引っ張った際における引っ張り方向の長さをEとすると、最大伸長増加率Fは、以下の式(2)で表される。ただし「所定の引っ張り力」とは、引っ張り力を除荷したとき、ガスバリア性フィルム1が元の長さDに戻ることができる引っ張り力のうち、最大の引っ張り力をいう。
F=(E-D)/D (2)
【0026】
最大伸長増加率が0.2未満の場合、ガスバリア性フィルム1フィルムを引っ張った際に構造が変形できる余地が少ないため、大きな引っ張りに対してはフィルムがダメージを受け、ガスバリア性が低下することがある。また、最大伸長増加率は大きいほど好ましいが、0.5より大きい構造はフィルム作製が困難となるため好ましくない。その理由としては、ガスバリア性フィルム1の凹凸構造2を設けるために、凹凸成形用の型から剥がす工程が含まれるが、最大伸長増加率が0.5より大きい構造は型から剥がすことが困難となるからである。
【0027】
ガスバリア性フィルム1の厚みは特に限定されず、包装材として用いた際に必要な厚みに設定することができるが、12~30μm程度とするのが好ましい。
【0028】
ガスバリア性フィルム1の材料としては、ガスバリア性を有するプラスチック材料であれば単体で使用することができる。
ガスバリア性フィルム1に用いることができる材料としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。
【0029】
一方、ガスバリア性フィルム1には、ガスバリア性を有していないプラスチック材料のフィルムを用いることも可能である。ただし、その場合には凹凸構造2を設けたフィルムの片方の面にガスバリア層をコーティングすることで、ガスバリア性フィルム1として扱うことができる。
【0030】
ガスバリア層としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの無機物を蒸着膜や、層状鉱物を含んだ塗料のコーティング膜、ガスバリア性を発現する有機物を含んだ塗料のコーティング膜などが挙げられる。
【0031】
このとき、コーティング膜を設けたことで凹部2bの空間(隣接する天面2tの間のくぼんだ空間)を埋めてしまわないように注意が必要である。凹部2bの空間が埋まるほどにコーティング膜が多く付着した場合、付着したコーティング膜がガスバリア性フィルム1の構造由来の伸びる動きを制限するからである。
【0032】
ガスバリア性フィルム1の製造方法については、例えば、熱プレスによる製造方法や、押出成形による製造方法等、各種の方法を適宜選択して用いることが可能である。
【0033】
熱プレスによる製造方法では、製膜したガスバリア性フィルム1を、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱ロール間、又は、一対の加熱した平板状のプレス機に通すことで、ガスバリア性フィルム1を製造することが可能である。この際、一対の加熱ロール間、又は一対の平板が有する上下の凹形状と凸形状との精密な位置合わせを行い、熱プレス後のガスバリア性フィルム1の表面と裏面が、連続的な凹凸構造2となっていることが重要となる。
【0034】
さらに、熱プレスによる別の製造方法では、離形性を有する複数のフラットフィルムを重ね、又は、離形性を有する複数の層を保持するフラットフィルムを、凹凸形状を設けた加熱ロール間、又は、加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸構造2を付与することが可能である。この際、プレスの深さやプレス圧を調整することによって、フラットフィルムの表面及び層界面に所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸構造2を付与した複数の層のフィルムを剥離することにより、ガスバリア性フィルム1を製造することが可能である。
【0035】
押出成形による製造方法では、樹脂を加熱溶融してTダイから押し出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロール及びニップロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表面と裏面に連続的な凹凸構造2を設けることが可能である。押出成形による製造方法においても、冷却ロールとニップロールが有する凹凸形状との精密な位置合わせが必要になる。
【0036】
さらに、押出成形による別の製造方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の樹脂を、フィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、ガスバリア性フィルム1を片側表面に配置した、2層以上の多層構成のフィルムを得ることが可能である。この際、フィルム化するための冷却工程において、ガスバリア性フィルム1を配置した面に、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2を形成することが可能である。この時、冷却ロールと接するガスバリア性フィルム1の厚さに対し、凹凸構造2の高低差が大きいときには、ガスバリア性フィルム1の冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸構造2が付加されるため、冷却後に凹凸構造2を付与したガスバリア性フィルム1を多層フィルムから剥離することにより、断面がうねった形状のガスバリア性フィルム1を得ることが可能である。
【0037】
その他、射出成形等、凹凸構造2を付加するいずれかの製造方法を選択することが可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0038】
また、先述したように、ガスバリア性フィルム1は、それ自体がガスバリア性を有さない材料を用いた場合、後工程で、蒸着やウェットコーティングによるコーティング層を設けることで、バリア性を持たせることができる。
【0039】
更に、製造したガスバリア性フィルム1は、のちに平坦なフィルムと積層する際のラミネート強度を向上させるために、適宜コロナ処理を行うことができる。
【0040】
(包装材)
製造したガスバリア性フィルム1は、他のフィルムと積層することで包装材として用いることができる。
【0041】
包装材20は、最外層から順に基材フィルム層10、ガスバリア性フィルム1、中間層11、シーラント層12が接合されて形成される。このとき、基材フィルム層10の内側面(図2で下面)は、ガスバリア性フィルム1の凸部2aの各天面2tに接合され、中間層11の外側面(図2で上面)は、ガスバリア性フィルム1の凹部2bの各底面2sに接合される。なお、ガスバリア性フィルム1に積層されるフィルムは、ガスバリア性フィルムの伸長特性を阻害しないように、柔軟な(伸びやすい)素材から形成されていると好ましい。
【0042】
基材フィルム層10に用いられる材料は、包装材の用途によって種々の材料から選ぶことができる。具体的には、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリアミド(ONy)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。
【0043】
基材フィルム層10には、必要に応じて外層側もしくは内層側に印刷層を設けても良い。
【0044】
基材フィルム層10の厚みとしては特に限定されず、包装材として用いるのに必要な厚みに設定することができるが、一般的な包装材に使用される厚みである12~30μmとするのが好ましい。
【0045】
中間層11は包装材の用途によって、必要な機能すなわち機械的強度や突き刺し耐性などを満たすための層となる。中間層11に用いられる樹脂としては、必要な機能を満たす材料から選ぶことができる。具体的には二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリアミド(ONy)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。また中間層11の厚みは、要求される特性を満たすのに必要な厚みに設定することができる。一般的な包装材においては12μm~30μm程度の厚み設定とする場合が多い。また、包装材の用途によって不要であれば中間層11を設けなくても良い。
【0046】
中間層11は、基材フィルム層10とガスバリア性フィルム1との間に設けても良いし、ガスバリア性フィルム1とシーラント層12との間に設けても良い。
【0047】
シーラント層12に用いられる材料は、ヒートシール性を有していれば特に限定されず、包装材の用途によって種々の材料から選ぶことができる。具体的にはポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂などのエチレン-不飽和カルボン酸またはそのエステル化合物との共重合体が挙げられる。
【0048】
シーラント層12の厚みとしては、内容物を封緘後、輸送や落下に対する衝撃に耐えられる程度の厚みを有していれば特に制限されない。一般的な包装材シーラント層に設定される厚みとしては20μm~100μmすることが多く、本包装材においても同様の厚みに設定するのが好ましい。
【0049】
各層のフィルムを積層する方法は特に限定されず、一般的に用いられている方法を用いることができる。具体的には、接着剤を介した積層や押出ラミネートなどが挙げられる。
【0050】
以下に、本発明に基づく実施例を、比較例と比較して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0051】
(実施例1)
ガスバリア性フィルムの材料として、三菱ケミカル株式会社のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)である、ソアノールD2908を選択した。
また、ガスバリア性フィルムと共押出する樹脂の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)である、ノバテックLD LC600Aを選択した。
そして、選択した二種類の樹脂を用いて、押出成形により共押出を行い、その後、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いて樹脂にニップ圧力を付加しながら冷却した。その後、共押出した低密度ポリエチレン層を剥離することで、樹脂フィルムの表面と裏面に連続的な凹凸構造2を設けたガスバリア性フィルムを作製した。
このときガスバリア性フィルムの厚みを12μmとし、凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.4、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.4、最大伸長増加率が0.4となる凹凸構造2を設けた。
【0052】
(実施例2)
ガスバリア性フィルムの凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.4、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.4、最大伸長増加率が0.3となる凹凸構造2を設けた以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルムを作製して、実施例2とした。
【0053】
(実施例3)
ガスバリア性フィルムの凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.3、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.5、最大伸長増加率が0.4となる凹凸構造2を設けた以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルムを作製して、実施例3とした。
【0054】
(実施例4)
ガスバリア性フィルムの凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.6、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.3、最大伸長増加率が0.4となる凹凸構造2を設けた以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルムを作製して、実施例4とした。
【0055】
(比較例1)
ガスバリア性フィルムの材料として、三菱ケミカル株式会社のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)である、ソアノールD2908を選択し、これを押出成形にて厚み12μmのフィルム上に製膜して、凹凸構造を持たない比較例1とした。
【0056】
(比較例2)
ガスバリア性フィルムの凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.25、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.5、最大伸長増加率が0.4となる凹凸構造2を設けた以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルムを作製して、比較例2とした。
【0057】
(比較例3)
ガスバリア性フィルムの凸部2aの天面2tにおける面積比率を0.7、凹部2bの底面2sにおける面積比率を0.1、最大伸長増加率が0.4となる凹凸構造2を設けた以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルムを作製して、比較例3とした。
【0058】
(ガスバリア性評価)
作製した各実施例および比較例のガスバリア性フィルムのガスバリア性について、ガス透過度を評価した。評価はJIS K7126-2:2006に準拠し、評価ガスには酸素を用いて、30℃ドライ環境下で試験を実施した。
ガスバリア性の評価は各ガスバリア性フィルムについて、未伸長の場合、10%伸長状態を10秒保った後、20%伸長状態を10秒保った後、30%伸長状態を10秒保った後の各状態について実施した。なお、試験結果において、「ネッキング」とは、ガスバリア性フィルムの引っ張り方向と交差する方向にくびれが生じる現象であり、塑性変形が生じたことを示すものである。
【0059】
(ラミネート強度評価)
作製した各実施例および比較例のガスバリア性フィルムのラミネート強度について評価した。作製したガスバリア性フィルムの両面にコロナ処理を行い、接着剤(主剤:三井化学製 タケラックA-626/硬化剤:タケネートA-50)を用いて厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとドライラミネートにて接着して積層した。なお、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの積層面にも事前にコロナ処理を行った。この処理はガスバリア性フィルムの両面について実施した。
積層後、引張試験機にてJIS K6854-1に準拠する方法で積層フィルムの剥離試験を実施した。評価指標としては試験中に層間剥離することなく材料破壊した場合、十分なラミネート強度を達成していると判断し、材料破壊することなく層間剥離した場合にはラミネート強度が不足していると判断した。
【0060】
(試験結果)
試験結果を、表1にまとめて示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(試験結果の考察)
表1に示すように、凹凸構造がない比較例1では、10%の伸長時にガス透過度が増大してしまい、さらに20%以上の伸長時にネッキングが生じてしまい、ガス透過度の測定が不能となった。一方、凹凸構造を設けた比較例2,3では、30%伸長した場合でも酸素バリア性を維持することから、凹凸構造を設けることにより、引っ張り時のガスバリア特性が向上することが分かった。しかしながら、比較例2,3では、ラミネート後の剥離試験にて、いずれも層間剥離が生じたため、ラミネート強度が不足していることが判明した。
【0063】
これに対し、実施例1~4については、30%伸長した場合でも酸素バリア性を維持するとともに、ラミネート後の剥離試験にて材料破壊が生じる結果となっており、十分なラミネート強度を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のガスバリア性フィルムは伸長によるバリア性低下が発生せず、他のフィルムと積層した場合においても十分なラミネート強度を有することから、包装材を構成する素材として使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…ガスバリア性フィルム
2…凹凸構造
2a…凸部
2b…凹部
2c、2c’…斜平面
2t…天面
2s…底面
10…基材フィルム層
11…中間層
12…シーラント層
20…包装材
図1
図2