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特開2023-704導電性ペーストおよびそれを用いて形成される導電膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000704
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】導電性ペーストおよびそれを用いて形成される導電膜
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
H01B1/22 A ZNM
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101683
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直倫
(72)【発明者】
【氏名】松野 行壮
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA06
5G301DA13
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蒸着、スパッタリング等の真空装置を必要とせずに、低抵抗な導電膜を形成できる導電性ペーストを提供する。
【解決手段】本発明の導電性ペーストは、融点が120℃以下であるはんだ粉と、導電性フィラーと、はんだ粉の酸化膜を除去するフラックスと、溶剤とを含む。はんだ粉と導電性フィラーの質量比率は、はんだ粉の質量に対し、導電性フィラーの質量が20~80%である。導電性ペーストは、はんだ粉でない導電性フィラーの粒子を含むため、はんだ粉の融点以上の温度に達しても溶融したはんだ粉は球状とはならず、導電性粒子の間にはんだが入り込み、導電性パスを形成す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が120℃以下であるはんだ粉と、
導電性フィラーと、
はんだ粉の酸化膜を除去するフラックスと、
溶剤と
を少なくとも含む導電性ペーストであって、
はんだ粉の質量に対する導電性フィラーの質量の割合は20~80%であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
はんだ粉および導電性フィラーは、共に平均粒子径が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記はんだ粉はInを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
導電性フィラーは、Cu、Agまたはカーボンのフィラーであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
はんだ粉、導電性フィラー、フラックスおよび溶剤を合わせた質量に対する、はんだ粉および導電性フィラーを合わせた質量の割合は、20~60%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
溶剤は、炭素および水素から構成される非極性溶剤であり、フラックスは、常温で固体の有機酸の粉末であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成した導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体デバイス等の電極として用いることができる導電膜およびそれを形成するための導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイス、有機薄膜太陽電池、有機電解効果トランジスタ等に代表される有機半導体デバイスでは、導電性、安定性等の利点を考慮して、電極としての導電膜にAuがしばしば用いられる。Auの成膜方法としては、蒸着、スパッタリング等の真空装置を用いたドライプロセス、めっきなどのウェットプロセスを用いることができる。
【0003】
しかしながら、このような方法によってAu膜を形成する場合、材料および工程の点で膜形成のコストが高くなる。そこで、より安価な導電膜形成方法として、Ag、カーボン等の導電性フィラーおよびバインダーを用いて構成される導電性ペーストを印刷、塗布等によって適用し、加熱硬化させて導電膜を形成する、真空装置を用いない方法が種々検討されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-140964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにAg、カーボン等の導電性フィラーを用いて構成される導電性ペーストを用いて導電膜を形成した場合、点接触し合った導電性粒子が導電パスを形成する為、そのような導電性粒子間の点接触部の抵抗が大きくなるため、導電膜の導電性を更に向上させることが課題となる。
【0006】
本発明は、これらの課題に鑑みて為されたもので、真空装置を必要とせずに、導電性ペーストを用いて導電膜を形成する方法において、導電性に優れた導電膜を形成する導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題について鋭意検討をした結果、第1の要旨において、本発明は、新たな導電性ペーストを提供する。この導電性ペーストは、
(1)融点が120℃以下であるはんだ粉と、
(2)導電性フィラーと、
(3)はんだ粉の酸化膜を除去するフラックスと、
(4)溶剤と
を少なくとも含み、はんだ粉に対する導電性フィラーの質量割合が20~80%であることを特徴とする。
【0008】
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストにおいて、はんだ粉および導電性フィラーは、20μm以下の平均粒子径を有する。
【0009】
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストにおいて、はんだ粉はInを含むはんだ合金で構成されている。
【0010】
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストにおいて、導電性フィラーは、Cu、Agまたはカーボンのフィラーであり、あるいは、これらのフィラーの任意の混合物であってもよい。別の好ましい態様では、導電性フィラーは、Cu、Agおよびカーボンから選択される少なくとも1種および必要に応じて用いてよい少なくとも1種の他の導電性成分(例えば、Au、Sn、Ni等)を含んでもよい。
【0011】
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストにおいて、はんだ粉、導電性フィラー、フラックスおよび溶剤を合わせた質量(即ち、導電性ペーストがこれらの成分以外の成分を含まない場合、導電性ペースト全体質量に相当)に対する、はんだ粉と導電性フィラーとを合わせた質量の割合は、20~60%である。
【0012】
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストにおいて、溶剤は常温(約25℃)で液体のC(炭素)、H(水素)および場合により他の元素(例えば酸素、窒素等)により構成される、非極性の有機化合物であり、フラックスは、常温で固体の有機酸である。この有機酸は粉末の形態であるのが特に好ましい。
【0013】
第2の要旨において、本発明は、上述または後述の本発明の導電性ペーストを用いて形成される導電膜を提供する。
【0014】
第3の要旨において、本発明は、本発明の導電膜の形成方法、即ち、製造方法を提供する。この方法は、本発明の導電性ペーストを対象(例えば有機半導体デバイス)に適用して導電性ペーストの層を形成し、導電性ペーストの層をはんだ粉の融点以上の温度に、好ましくは融点より少なくとも20℃高い温度に加熱して導電膜を形成することを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性ペーストでは、導電性粒子として融点が120℃以下であるはんだ粉と、はんだではない導電性フィラーとを組み合わせている。導電性ペーストがはんだ粉だけを含む場合、導電性ペーストを加熱すると、はんだ粉は、その融点を越えると溶融して球状となる。その結果、形成される導電膜では、導電パスはそのような球状はんだを含むことになるため、導電膜として十分に機能しない可能性がある。
【0016】
本発明の導電性ペーストがはんだ粉ではない導電性フィラーの粒子を含むことによって、導電性ペーストがはんだ粉の融点以上の温度に達しても溶融したはんだ粉は球状とはならず、導電性粒子の間にはんだが入り込み導電パスを形成できる。その結果、導電膜の十分な導電性を確保できる。
【0017】
また、本発明の導電性ペーストにおいて、はんだペーストに含まれる溶剤がC(炭素)H(水素)および場合により他の元素から構成される、非極性のものであり、フラックスとして作用する有機酸が常温で固体の粉末であると、有機半導体デバイスの表面に本発明の導電性ペーストを適用(例えば塗布)しても、有機半導体デバイスを構成する有機材料は導電性ペーストによって悪影響(例えば溶剤、フラックスによる化学的作用(例えば化学反応)および/または物理的作用(例えば溶解)による半導体デバイスの破壊)を受け難い状態で導電膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の導電性ペーストの実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
(はんだ粉)
本発明の導電性ペーストに含まれるはんだ粉は、融点が120℃以下であるはんだ合金で構成されている。従って、はんだ粉は120℃以下の融点を有する。そのようなはんだ粉は、融点が120℃以下のいわゆる低温はんだと呼ばれているはんだ合金で構成された粒子である。はんだ粉の融点が120℃を越えると、有機半導体デバイスの特性が悪化するという問題が生じ得る。また、動作環境での信頼性の観点から、はんだ粉の融点は、80℃以上であるのが好ましい。
【0020】
具体的には、インジウム、スズおよびビスマスから選択される少なくとも1種の金属を含むはんだ合金のはんだ粉が好ましい。より具体的には、はんだ合金は、そのような金属のみから構成されるものであってもよく、あるいは、そのような金属および少なくとも1種の他の金属(例えば、銅、銀、亜鉛等)から構成されるものであってもよい。
【0021】
本発明の導電性ペーストに用いるはんだ粉を構成するはんだ合金として、例えば、Sn-In系、Sn-Bi-In系、Bi-In系、Sn-Ag系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-In系、Sn-Cu-In系、Sn-Ag-Cu-In系、およびSn-Ag-Cu-Bi-In系から成る群から選択される少なくとも1種のはんだ合金を挙げることができる。即ち、これらのはんだ合金を単独で、またはこれらのはんだ合金の2種以上を組み合わせて使用できる。特に好ましいはんだ合金は、例えばSn-In系、Sn-Bi-In系である。尚、これらの種々のはんだ粉の少なくとも2種を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
好ましい態様では、はんだ粉は、いずれの適当な微小物の形態であってよく、例えば粒状(球状であってよい)、薄片(フレーク)状等であるのが好ましい。はんだ粉を構成する微小物は、好ましくは20μm以下の平均粒子径、より好ましくは0.5~15μmの平均粒子径を有する。平均粒子径が、このような範囲より大きい場合、導電膜が厚くなる分コストが高くなるという問題が生じ得、また、このような範囲より小さい場合、はんだの溶融性が悪化するという問題が生じ得る。
【0023】
尚、本明細書にて言及する平均粒子径とは、「レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50」を意味する。
【0024】
(導電性フィラー)
本発明の導電性ペーストに含まれる導電性フィラーは、導電性ペーストを加熱してはんだ粉を溶融する場合に、溶融しない融点を有する。好ましくは、導電性フィラーの融点は200℃以上であるのが好ましい。融点が200℃未満の場合、導電性ペーストを過度に加熱すると、導電性フィラーが溶融するという問題が生じ得る。導電性フィラーは、はんだ粉と同様に、いずれの適当な微小物の形態であってよく、例えば粒状(球状であってよい)、フレーク状、微小な粒状、薄片状(フレーク状)、不定形な塊状物等であってよい。そのような導電性材料として金属(例えばCu、Ag、Ni、Au、これらの金属の少なくとも1種と他の金属との合金等)、カーボン(例えばカーボンブラック、グラファイト、ナノカーボン等)を挙げることができる。特に好ましい導電性フィラーとして、Cu、Agで構成された粒状(例えば球状)の微小物を挙げることができる。これらの種々の導電性フィラーの少なくとも2種を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
別の態様では、導電性フィラーは、上述の導電性材料のコーティングを有する微小物、即ち、複合微小物であってよい。例えば、導電性フィラーとして、表面にAuコーティングを有するCuフィラーを例示できる。
【0026】
好ましい態様では、導電性フィラーを構成する微小物は、好ましくは20μm以下の平均粒子径、より好ましくは0.5~15μmの平均粒子径を有する。ここで言及する導電性フィラーの「平均粒子径」は、はんだ粉の場合と同様の意味で用いている。
【0027】
本発明の導電性ペーストにおいて、はんだ粉と導電性ペーストとの質量割合に関して、導電性ペーストに含まれるはんだ粉の質量(A)に対する導電性ペーストに含まれる導電性フィラーの質量(B)の割合(即ち、B/A)が20~80%、好ましくは30から50%である。
【0028】
そのような範囲より小さい場合、導電膜において導電性フィラー間を接続するはんだ粉の量が不足して、導電パスの一部分は導電性粒子同士が点接触して形成されることになり、その結果、形成される導電膜の導電性が不十分となる傾向がある。また、そのような範囲より大きい場合、導電膜において導電性フィラー間を接続しないで球状で固化するはんだ粉の量が増え、形成される導電膜の導電性が不十分となる傾向がある。
【0029】
(フラックス)
本発明の導電性ペーストに含まれるフラックスは、導電性ペーストを適用する対象(即ち、被着体、例えば有機半導体デバイス)、対象が有する電極、はんだ粉および/または導電性フィラーの表面の酸化膜を除去できる還元力を有する。例えば、有機酸、アミンのハロゲン塩、アミン有機酸塩等をフラックスとして用いる。
【0030】
有機酸としては、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸;不飽和脂肪族モノカルボン酸であるクロトン酸;飽和脂肪族ジカルボン酸であるシュウ酸、L(-)-リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸;不飽和脂肪族ジカルボン酸であるマレイン酸、フマル酸;芳香族系カルボン酸であるフタルアルデヒド酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、フェニルプロピオン酸;エーテル系ジカルボン酸であるジグリコール酸、その他の有機酸であるアビエチン酸、アスコルビン酸等を挙げることができる。
【0031】
アミンのハロゲン塩としては、例えば、アミン塩酸塩であるエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩;アミン臭化水素酸塩であるジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩等を挙げることができる。
【0032】
アミン有機酸塩としては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、トリエタノールアミンや、アジピン酸、ジエチルグルタル酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸との混合物を挙げることができる。
【0033】
尚、フラックスは、室温にて液体または固体であってよく、上述の成分の少なくとも2種を組み合わせて使用してもよい。導電性ペーストを適用する対象、詳しくは導電性ペーストを適用する対象の少なくとも一部分、例えば対象としての有機半導体デバイスの有機材料部分が適用された導電性ペーストに含まれるフラックスによって影響を受ける(例えば導電性ペーストに含まれるフラックスが有機材料を溶かす)ことを避けるために、フラックスは常温で固体、特に好ましい態様では粉体状であってよい。
【0034】
(溶剤)
好ましい態様では、本発明の導電性ペーストに含まれる溶剤は、非極性の有機化合物、例えば炭化水素、アルコール、アミド等であってよく、例えば、アルコール類(2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ヘキサノール、1,2-プロパンジオール、ヘプタノール、シクロヘキサノール等)、グルコールエーテル類(エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ドデカン、デカン、ノナン、オクタン、p-メンタン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド 、ジメチルアセトアミド 、ジメチルスルホキシド 等)、その他(N-メチルピロリドン、シロキサン等)等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。
【0035】
導電性ペーストを適用する対象、詳しくは導電性ペーストを適用する対象の少なくとも一部分(例えば対象としての有機半導体デバイスの有機材料部分)が適用された導電性ペーストに含まれる溶剤によって影響を受ける(例えば導電性ペーストに含まれる溶剤が有機材料を溶かす)ことを避けるために、溶剤は適用する対象に対して不活性である(実質的に悪影響を与えない)のが特に好ましい。
【0036】
例えば、導電膜を形成する対象が有機半導体デバイスである場合、溶剤は有機半導体デバイスの有機材料を実質的に溶解しないものが好ましく、例えば脂肪族炭化水素類を溶剤として使用するのが特に望ましい。
【0037】
(他の成分)
1つの好ましい態様では、本発明の導電性ペーストは、必要に応じて、他の成分を含んで成ってよい。例えば、導電性ペーストは、バインダーとして機能する樹脂成分を有してもよく、形成される導電膜の対象への密着性、形成された導電膜の耐屈曲性を向上させることができる。樹脂成分としては、例えばセルロース誘導体、ポリビニルアセタール、ポリエステル系等を使用できる。セルロース誘導体がより好ましい。
【0038】
他の好ましい態様では、本発明の導電性ペーストは、必要に応じて他の成分を含んで成ってよい。そのような他の成分として、粘性を制御する為のチクソ付与剤を含んで成ってよい。このような成分を含むことによって、ペーストの塗布安定性が向上するという効果がある。
【0039】
本発明の導電膜は、上述の本発明の導電性ペーストを、例えば有機半導体デバイスのような対象に、例えば塗布により適用して導電性ペーストの層を形成し、導電性ペーストの層をはんだ粉の融点以上の温度に、好ましくは融点より少なくとも20℃高い温度に、より好ましくは少なくとも40℃高い温度に加熱することにより形成できる。
【実施例0040】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例として、以下の材料を用いて本発明の導電性ペーストを調製し、ガラス板上に適用して形成した導電膜の抵抗値を評価した。
・平均粒子径(レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50基準)が10μmの25Sn―55Bi―20In(融点96℃)のはんだ粉を用いた。
・平均粒子径(レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50基準)が5μmのCu粉を導電性フィラーとして用いた。
・グルタル酸をフラックスとして用いた。
・p-メンタンを溶剤として用いた。
【0041】
p-メンタン57重量部に、グルタル酸8重量部、はんだ粉27重量部およびCu粉8重量部を添加し、真空プラネタリミキサで10分間混練することで実施例1の導電性ペーストを得た。
【0042】
厚さ 1mmのスライドガラス板の両縁に100μm厚のポリイミドテープを貼り、テープ間に導電性ペーストを供給後、スキージでペーストをポリイミドテープの上面に沿って平坦化させることで導電性ペースト層(厚さ100μm)をスライドガラス板上に塗布した。このスライドガラス板を120℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して導電膜を形成した。
【0043】
形成した導電膜の抵抗値に関して、テスターを用いて1cmの距離の抵抗値を測定して評価した。抵抗値が10Ω未満のものを合格〇、抵抗値が10Ω以上のものを不合格×として評価した。
【0044】
実施例1の導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗値は0.4Ωとなり、合格の評価となった。
【0045】
(実施例2~7および比較例1~3)
実施例1と同様に、実施例2~7及び比較例1~3の種々の導電性ペーストを調製し、先に説明した方法と同様にして形成した導電膜の抵抗値を評価した。実施例および比較例の導電性ペーストの調製に用いたはんだ粉の量、Cu粉の量および評価結果を下記の表1に示す。尚、実施例および比較例において、いずれの例においても、p-メンタンの配合量は全て57重量部であり、グルタル酸の配合量は全て8重量部であった。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1~7の結果と比較例1~3の結果とを比較すると、はんだ粉の質量(A)に対するCu粉の質量(B)の割合C(=B/A)が20~80%である実施例の導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗値は、いずれも合格の評価となった。これらの実施例の場合の導電膜は、Cu粉の粒子間を溶融はんだが繋いでいる為に低い抵抗値を示すと考えられる。しかしながら、比較例3のようにCu粉の割合が多過ぎると、Cu粉の粒子間を繋ぐ溶融はんだの量が不足し、抵抗値が高くなる。逆に、比較例1および2のようにCu粉の割合が少な過ぎると、溶融したはんだがCu粉の粒子間を有効に繋がずに、凝集してしまう割合が増える結果、均一な導電膜が形成されずに抵抗値が高くなっていると考えられる。
【0048】
また、はんだ粉と導電性フィラーを合わせた質量が、導電性ペースト全体の質量(=A+B+p-メンタンの質量+グルタル酸の質量)に対して、20~60%、好ましくは30~50%であると、形成される導電膜の抵抗値は目標(10Ω未満)を満たすが、導電性ペーストの質量に対するはんだ粉と導電性フィラーとを合わせた質量の割合Dが比較例4に示すように少な過ぎると、導電性の成分(即ち、はんだおよびCu)の量が不足して抵抗値が高くなる。逆に、はんだ粉と導電性フィラーとを合わせた質量の割合Dが比較例5のように60%を越えて多過ぎると、導電性ペーストの粘度が高くなり、塗布性が悪くなる為に均一な導電膜を形成できない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の導電性ペーストは、対象に例えば塗布により適用した後、比較的低温に加熱するだけで導電性に優れた導電膜を形成できるという特性を有し、有機ELデバイス、有機薄膜太陽電池、有機電解効果トランジスタ等に代表される有機半導体デバイスに形成する導電膜を形成する場合に有用である。しかも、真空装置を必要とせずに導電膜を形成できる利点も有する。