(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070416
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20230512BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B62D25/06 B
B62D25/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182579
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真之
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA03
3D203AA04
3D203BB56
3D203BB57
3D203BB59
3D203BB62
3D203BB64
3D203BB77
3D203CA53
3D203CB04
3D203DA36
(57)【要約】
【課題】バックドア開口部の上側コーナー部分の剛性を高めて車体全体のねじり剛性を向上させることが可能な車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部構造は、ルーフレール溝3の後端部に隣接して配置されるバックドア開口部6の上側コーナー部分に車幅方向に延びる筒状の補強構造部20を有する。補強構造部20は、車両側方視で四角形の形状を有しており、サイドボディアウタエクステンションパネル10によって形成される上面部21および後壁部22と、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12によって形成される底面部23および前壁部24とを備え、後壁部22および前壁部24のそれぞれが上側部分から下側部分にわたって直線状に延びている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルとサイドボディアウタパネルの接合部分に車両前後方向に沿って延びるルーフレール溝が設けられ、バックドアによって開閉されるバックドア開口部の上側コーナー部分が前記ルーフレール溝の後端部に隣接して配置されており、前記バックドア開口部の上側コーナー部分に車幅方向に延びる筒状の補強構造部を有し、該補強構造部が、前記サイドボディアウタパネルの上側後部と、前記サイドボディアウタパネルの後部の車両内側に配置されるクォーターインナパネルの上部とによって形成されている車体後部構造において、
前記補強構造部は、車両側方視で四角形の形状を有しており、前記サイドボディアウタパネルの上側後部によって形成される上面部および後壁部と、前記クォーターインナパネルの上部によって形成される底面部および前壁部とを備え、前記後壁部および前記前壁部のそれぞれが上側部分から下側部分にわたって直線状に延びていることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記補強構造部は、前記上面部および前記後壁部における車幅方向内側端から車両下方および車両前方に延びて前記底面部および前記前壁部に結合する隔壁部を有しており、
前記隔壁部は、車両下方に向かうに従って車幅方向内側に向かう傾斜形状を有しており、車両背面視で、前記傾斜形状の延長線上には、前記バックドア開口部の下側部分に設けられたバックドアストライカーが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記バックドア開口部の上側部分に設けられたバックドアヒンジリンフォースと、
前記サイドボディアウタパネルの上側後部と前記バックドアヒンジリンフォースとの間を曲面で繋ぐバックドアヒンジスティフナと、を有し、
前記隔壁部は、車両背面視で、前記バックドアヒンジスティフナによって覆われていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記バックドアヒンジスティフナは、前記バックドアを開閉可能に支持するバックドアヒンジを取り付けるためのヒンジ取付部を有し、該ヒンジ取付部には、前記ルーフパネルの後端部および前記バックドアヒンジリンフォースが重ねて接合されており、
前記バックドアヒンジは、車両背面視で、前記隔壁部よりも車幅方向内側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両において、車体後部上側にドアヒンジを有し、バックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両が知られている。ハッチバック車両のバックドア開口部は、積載能力を高めるため、あるいは荷物の積み降ろし作業性を向上させるために、車体後部において大きな面積を有するように設計されている。一方、バックドア開口部の面積を大きく形成した場合は、車両全体の剛性が減少するため、バックドア開口部周辺の剛性を増大させる必要がある。
【0003】
そこで、従来のハッチバック車両の中には、バックドア開口部の上側コーナー部分を構成するパネルなどの接合剛性を高めることによって、バックドア開口部を補強するようにした構造のものがある。例えば、特許文献1には、ルーフパネルに設けられているルーフレール溝の後方に位置するバックドア開口肩部(バックドア開口部の上側コーナー部分)おいて、サイドボディアウタパネルおよびクォーターインナパネル等の部材により車両側面視で閉断面を形成した補強構造が開示されている(特許文献1の
図2および
図6等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなハッチバック車両では、ルーフパネルおよびサイドボディアウタパネルがルーフレール溝の下部の複数箇所でスポット溶接されており、走行時の荷重による車体のねじれなどが発生した場合に、ルーフレール溝のスポット溶接箇所を起点にルーフ全体で曲げ変形が生じやすい。バックドア開口部の上側コーナー部分は、このようなルーフレール溝の後端部に隣接して配置されているため、バックドア開口部の中でも特に変形しやすい部分である。バックドア開口部の剛性は、車体後部の剛性に影響を及ぼすので、車体全体のねじり剛性に寄与するとともに、車両の品質や操縦安定性の向上に寄与する。このため、バックドア開口部の上側コーナー部分の剛性を確保する必要がある。
【0006】
しかしながら、上述した従来の補強構造については、バックドア開口肩部に形成される閉断面(特許文献1の
図6)において、車両後側に位置し車両上下方向に延びるパネル面に、バックドア開口部の上側にヒンジを設けるための屈曲部が形成されている。このような屈曲部を有する閉断面では、車両上下方向の荷重が当該補強構造にかかると、上記パネル面が屈曲部を起点に折れ曲がる虞があり、バックドア開口部の上側コーナー部分の剛性を確保する上で改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、バックドア開口部の上側コーナー部分の剛性を高めて車体全体のねじり剛性を向上させることが可能な車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、ルーフパネルとサイドボディアウタパネルの接合部分に車両前後方向に沿って延びるルーフレール溝が設けられ、バックドアによって開閉されるバックドア開口部の上側コーナー部分が前記ルーフレール溝の後端部に隣接して配置されており、前記バックドア開口部の上側コーナー部分に車幅方向に延びる筒状の補強構造部を有し、該補強構造部が、前記サイドボディアウタパネルの上側後部と、前記サイドボディアウタパネルの後部の車両内側に配置されるクォーターインナパネルの上部とによって形成されている車体後部構造を提供する。この車体後部構造における前記補強構造部は、車両側方視で四角形の形状を有しており、前記サイドボディアウタパネルの上側後部によって形成される上面部および後壁部と、前記クォーターインナパネルの上部によって形成される底面部および前壁部とを備え、前記後壁部および前記前壁部のそれぞれが上側部分から下側部分にわたって直線状に延びている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車体後部構造によれば、バックドア開口部の上側コーナー部分に設けられる筒状の補強構造部によって車両側方視で四角形の閉断面が形成されるようになり、該補強構造部の後壁部および前壁部のそれぞれが上側部分から下側部分にわたって直線状に延びているので、走行時の車体のねじれやバックドアの開閉などに伴う車両上下方向の荷重によって後壁部または前壁部が折れ曲がるのを抑制することができる。これにより、バックドア開口部の上側コーナー部分の剛性を高めることができ、車体全体のねじり剛性や車両の品質、操縦安定性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車体後部構造が適用された車体を斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】
図1の車体右側後部を分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図3にルーフパネルを取り付けた状態を示す拡大斜視図である。
【
図5】
図3からバックドアヒンジスティフナを取り除いた状態で示す拡大斜視図である。
【
図6】
図4のA-A線で切断した断面斜視図である。
【
図7】
図6の補強構造部周辺を車幅方向内側から見た拡大断面図である。
【
図8】
図1の車体を車両後方から見た背面図である。
【
図9】
図4にバックドアヒンジを取り付けた状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車体後部構造が適用された車体を斜め後方から見た斜視図である。また、
図2は、
図1の車体右側後部を分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。なお、以下で説明する各図において、矢印Fr方向は車両前後方向で前方を示し、矢印O方向は車両幅方向で外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で上方を示している。また、実施形態の説明における「左右」は、車室内から車両前方を見たときの左右に対応している。
【0012】
図1および
図2において、本実施形態の車体後部構造が適用された車両は、車体後部上側に図示しないドアヒンジを有し、バックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両である。ハッチバック車両の車体上部には、車両前後方向および車幅方向に広がるルーフパネル1が設けられている。ルーフパネル1の車幅方向両端部には、車体側部を構成する左右のサイドボディアウタパネル2の上部がそれぞれ接合されている。なお、
図1には、ルーフパネル1およびサイドボディアウタパネル2を取り除いた状態が示されている。
【0013】
ルーフパネル1およびサイドボディアウタパネル2の接合部分には、車両前後方向に沿って延びるルーフレール溝3が設けられている。このルーフレール溝3は、スポット溶接用の溝として使用することができる。具体的に、ルーフレール溝3は、断面略L字状に折り曲げられたルーフパネル1の車幅方向端部1Aと、断面略L字状に折り曲げられたサイドボディアウタパネル2の車両内側端部2Aとを重ね合わせてスポット溶接にて接合することにより、断面略U字状に形成されている。このようなルーフレール溝3には、車両前後方向に沿って延びる複数本の稜線が形成されている。
【0014】
左右のルーフレール溝3の間には、複数のルーフクロスメンバ4が車両前後方向に間隔を空けて配置されている。複数のルーフクロスメンバ4のそれぞれは、ルーフパネル1の内側面が各ルーフクロスメンバ4に接合されている。また、ルーフレール溝3の下面には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール5が接合されている。複数のルーフクロスメンバ4およびルーフサイドレール5によって、ルーフ全体の強度および剛性が高められている。
【0015】
ルーフパネル1の後端部1Bは、
図2に示すように、車両下方に向かって折り曲げられている。車体後部には、バックドアによって開閉されるバックドア開口部6が設けられており(
図1)、ルーフパネル1の後端部1Bは、バックドア開口部6の上側周縁を形成している。ルーフパネル1の後端部1Bの車両内側には、ルーフバックインナリンフォース7と、左右一対のバックドアヒンジリンフォース8と、左右一対のバックドアヒンジスティフナ9とが設けられている。
【0016】
ルーフバックインナリンフォース7は、車幅方向に延びており、断面略L字状に形成されている。ルーフバックインナリンフォース7の上端部および後端部(L字の両端部)は、ルーフパネル1の内側面に接合されている。
【0017】
バックドアヒンジリンフォース8は、ルーフバックインナリンフォース7の車幅方向端部に接合されており、該接合箇所から車幅方向外側に向かって延びている。バックドアヒンジリンフォース8の車幅方向内側部分は、ルーフバックインナリンフォース7と連続するように断面略L字状に形成されている。バックドアヒンジリンフォース8の車幅方向外側端部8Aには、後述する補強構造部20の一部を構成する隔壁部25が形成されている。
【0018】
バックドアヒンジスティフナ9は、バックドアヒンジリンフォース8の車両外側(車両後方側)に配置されている。バックドアヒンジスティフナ9の車幅方向内側部分は、バックドアヒンジリンフォース8に接合されている。バックドアヒンジスティフナ9の車幅方向外側部分は、後述するサイドボディアウタエクステンションパネル10に接合されている。バックドアヒンジスティフナ9は、バックドアヒンジリンフォース8とサイドボディアウタエクステンションパネル10との間を滑らかな曲面で連続して繋いでいる。
【0019】
サイドボディアウタパネル2の後部には、車両上下方向に延びるクォーターピラー部2Bが配置されている。このクォーターピラー部2Bの後端上部には、前述したサイドボディアウタエクステンションパネル10が設けられている。
【0020】
サイドボディアウタエクステンションパネル10は、サイドボディアウタパネル2におけるクォーターピラー部2Bの後端上部から車両後側に延出している。サイドボディアウタエクステンションパネル10は、クォーターピラー部2Bの後端上部に沿って概ね車両上下方向に延びており、上側部分が下側部分よりも車両前側に位置する傾斜形状を有している。サイドボディアウタエクステンションパネル10の上端部10Aは、車幅方向内側に向けて湾曲している。該上端部10Aの先端(車幅方向内側端)は、車両背面視で、ルーフレール溝3を形成しているサイドボディアウタパネル2の車両内側端部2Aよりも車幅方向内側に位置している。つまり、サイドボディアウタエクステンションパネル10の湾曲した上端部10Aは、車両背面視で、ルーフレール溝3の位置よりも車幅方向内側に延びている。サイドボディアウタエクステンションパネル10の後端部10Bは、車両内側に向けて屈曲している。
【0021】
本実施形態では、サイドボディアウタパネル2およびサイドボディアウタエクステンションパネル10が本発明の「サイドボディアウタパネル」に相当し、サイドボディアウタエクステンションパネル10が本発明の「サイドボディアウタパネルの上側後部」を構成している。
【0022】
サイドボディアウタパネル2におけるクォーターピラー部2Bの車両内側には、クォーターインナアッパーパネル11と、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12とが設けられている。
【0023】
クォーターインナアッパーパネル11は、クォーターピラー部2Bに沿って車両上下方向に延びている。クォーターインナアッパーパネル11の後端部は、車幅方向内側に向けて屈曲している。クォーターインナアッパーパネル11の後端部の車両外側には、サイドボディアウタエクステンションパネル10の下側部分が接合されている。
【0024】
クォーターインナアッパーエクステンションパネル12は、クォーターインナアッパーパネル11の上端部から車両上方側に延出している。クォーターインナアッパーエクステンションパネル12の上端部12Aは、車幅方向内側に向けて湾曲し、車両前後方向に延びている。クォーターインナアッパーエクステンションパネル12の後端部12Bは、車両内側に向けて屈曲している。クォーターインナアッパーエクステンションパネル12の後端部12Bの車両外側には、サイドボディアウタエクステンションパネル10の上側部分が接合されている。
【0025】
本実施形態では、クォーターインナアッパーパネル11およびクォーターインナアッパーエクステンションパネル12が本発明の「クォーターインナパネル」に相当し、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12が本発明の「クォーターインナパネルの上部」を構成している。
【0026】
本実施形態の車体後部構造において、バックドア開口部6の上側コーナー部分は、ルーフレール溝3の後端部に隣接して配置されている。
図1の一点鎖線で囲まれたX部は、バックドア開口部6の右上側コーナー部分を示している。
図3は、
図1のX部を示す拡大斜視図である。また、
図4は、
図3にルーフパネル1を取り付けた状態を示す拡大斜視図である。さらに、
図5は、
図3からバックドアヒンジスティフナ9を取り除いた状態を示す拡大斜視図である。
【0027】
図3~
図5に示すように、本実施形態の車体後部構造は、バックドア開口部6の上側コーナー部分に車幅方向に延びる筒状の補強構造部20を有している。この補強構造部20は、サイドボディアウタエクステンションパネル10と、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12とによって形成されている。具体的には、サイドボディアウタエクステンションパネル10の上端部10Aの車両内側面に、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12の後端部12Bの車両外側面が接合されることで、車幅方向に延びる筒状の補強構造部20が形成されている。
【0028】
以下、本実施形態による補強構造部20について詳しく説明する。
図6は、
図4のA-A線で切断した断面斜視図である。また、
図7は、
図6における補強構造部20の周辺を車幅方向内側から見た拡大断面図である。
【0029】
図6および
図7に示すように、本実施形態による補強構造部20は、車両側方視で四角形の形状を有しており、サイドボディアウタエクステンションパネル10によって形成される上面部21および後壁部22と、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12によって形成される底面部23および前壁部24とを備えている。
【0030】
具体的に、補強構造部20の上面部21および後壁部22は、サイドボディアウタエクステンションパネル10の上端部10Aを略L字状に屈曲させて形成されている。車両側方視(
図7)において、上面部21は前後方向に延びており、後壁部22は車両後方に向かうに従って車両下方に延びている。後壁部22は、上側部分から下側部分にわたって直線状に延びるように形成されている。換言すると、後壁部22は、車両上下方向の両端部分を除いて、屈曲部分のない平板状の形状を有している。また、本実施形態では、上面部21も、前側部分から後側部分にわたって直線状に延びるように形成されている。ただし、上面部21については、車両前後方向の中間部分が屈曲または湾曲するように形成されていてもよい。
【0031】
補強構造部20の底面部23および前壁部24は、クォーターインナアッパーエクステンションパネル12の後端部12Bを略L字状に屈曲させて形成されている。車両側方視(
図7)において、底面部23は前後方向に延びており、前壁部24は車両前方に向かうに従って車両上方に延びている。前壁部24は、前述した後壁部22と同様に、上側部分から下側部分にわたって直線状に延びるように形成されている。換言すると、前壁部24は、車両上下方向の両端部分を除いて、屈曲部分のない平板状の形状を有している。前壁部24における車両上下方向の中間部分には、スポット溶接用の作業孔12Cが設けられている(
図6)。また、本実施形態では、底面部23も、前述した上面部21と同様に、前側部分から後側部分にわたって直線状に延びるように形成されている。ただし、底面部23については、車両前後方向の中間部分が屈曲または湾曲するように形成されていてもよい。
【0032】
本実施形態による補強構造部20において、後壁部22と前壁部24は略平行に配置されており、かつ、上面部21と底面部23は略平行に配置されている。つまり、本実施形態による補強構造部20は、車両側方視で、概ね平行四辺形の形状を有している。後壁部22の下端部分と底面部23の後端部分とは、2枚重ねでスポット溶接されている。また、上面部21の前端部分と前壁部24の上端部分とは、ルーフパネル1およびサイドボディアウタパネル2を加えた4枚重ねでスポット溶接されている。補強構造部20の車幅方向外側の端部は、サイドボディアウタパネル2のクォーターピラー部2B、およびサイドボディアウタエクステンションパネル10の上部側面によって塞がれている。このような車幅方向に延びる有底筒状の補強構造部20は、車両側方視で閉断面を形成している。
【0033】
補強構造部20の車幅方向内側端には、前述した隔壁部25が設けられている(
図5)。隔壁部25は、上面部21および後壁部22における車幅方向内側端から車両下方および車両前方に延びて底面部23および前壁部24に結合している。また、隔壁部25は、車両下方に向かうに従って車幅方向内側に向かう傾斜形状を有している。本実施形態では、バックドアヒンジリンフォース8の車幅方向外側端部8Aによって隔壁部25が形成されている。具体的には、断面略L字状に形成されているバックドアヒンジリンフォース8において、縦壁部8Bおよび底壁部8Cのそれぞれの車幅方向外側端の間を繋ぎ、車幅方向を臨む略四角形の傾斜面部(車幅方向外側端部8A)が、補強構造部20の隔壁部25として形成されている。このようにバックドアヒンジリンフォース8の一部からなる隔壁部25は、車両背面視で、バックドアヒンジスティフナ9によって覆われている(
図3)。
【0034】
ここで、上記のような隔壁部25の傾斜形状について詳しく説明する。
図8は、
図1の車体を車両後方から見た背面図である。ただし、
図8には、サイドボディアウタパネル2を取り付け、右側のバックドアヒンジスティフナ9を取り除いた状態が概略的に示されている。
図8に示すように、車両背面視において、隔壁部25の傾斜形状の延長線L(一点鎖線)上には、バックドア開口部6の下側中央部分に設けられたバックドアストライカー13が配置されている。バックドアストライカー13は、図示しないバックドアの下端部に設けられているドアロック内にあるラッチと噛み合うことで、バックドアをロック状態にしておくためのフック等である。このように本実施形態では、バックドアストライカー13に対する補強構造部20の隔壁部25の相対的な位置関係に合わせて、隔壁部25の傾斜角度が調整されている。
【0035】
上記のような補強構造部20の隔壁部25を車両後方側から覆っているバックドアヒンジスティフナ9には、
図3に示すように、バックドアを開閉可能に支持するバックドアヒンジ14を取り付けるためのヒンジ取付部15が設けられている。バックドアヒンジスティフナ9のヒンジ取付部15には、ルーフパネル1の後端部1Bが車両上方側から重ねて接合されるとともに(
図4)、バックドアヒンジリンフォース8の底壁部8Cにおける車幅方向中間部が車両下側から重ねて接合される(
図3および
図5)。つまり、ヒンジ取付部15を含むルーフパネル1の下方には、ヒンジ取付部15を補強するバックドアヒンジスティフナ9およびバックドアヒンジリンフォース8が設けられている。
【0036】
図9は、
図4においてバックドアヒンジ14がヒンジ取付部15に取り付けられた状態を示す拡大斜視図である。また、
図10は、
図9のB-B線断面図である。
図9および
図10に示すように、バックドアヒンジ14は、ボルト等を用いてヒンジ取付部15に締結される。ルーフパネル1、バックドアヒンジスティフナ9およびバックドアヒンジリンフォース8には、締付ボルト16を挿入するボルト孔1C,9A,8Dが対応する位置にそれぞれ設けられている。バックドアヒンジリンフォース8の下面には、締付ボルト16と螺合する溶接ナット17がボルト孔8Dの位置と対応して固着されている。バックドアヒンジ14は、ヒンジ取付部15に固定されたヒンジブラケット14Aと、バックドア側に固定されたヒンジアーム14Bとを、ヒンジピン14C(回動中心軸)を介して上下方向に回動自在に連結して構成されている。
【0037】
次に、本実施形態による車体後部構造の作用について説明する。
上述したように一般的なハッチバック車両では、走行時の荷重による車体のねじれなどが発生した場合に、ルーフレール溝のスポット溶接箇所を起点にルーフ全体で曲げ変形が生じやすい。このため、ルーフレール溝の後端部に隣接して配置されるバックドア開口部の上側コーナー部分は、バックドア開口部の中でも特に変形しやすい部分となる。そこで、本実施形態による車体後部構造では、バックドア開口部6の上側コーナー部分に、車幅方向に延びる筒状の補強構造部20が設けられている。この補強構造部20は、車両側方視で四角形の形状を有しており、後壁部22および前壁部24のそれぞれが上側部分から下側部分にわたって直線状に延びている。
【0038】
このような補強構造部20を有する車体後部構造によれば、バックドア開口部6の上側コーナー部分に車両側方視で四角形の閉断面が形成され、かつ、該閉断面を構成する補強構造部20の後壁部22および前壁部24が屈曲部分のない平板状の形状になっているので、走行時の車体のねじれやバックドアの開閉などに伴う車両上下方向の荷重によって後壁部22または前壁部24が折れ曲がるのを抑制することができる。また、本実施形態では、後壁部22および前壁部24に加えて、上面部21および底面部23も屈曲部分のない平板状の形状になっているので、車両前後方向の荷重によって上面部21または底面部23が折れ曲がるのを抑制することができる。これにより、本実施形態の車体後部構造は、バックドア開口部6の上側コーナー部分の剛性を高めることができ、車体全体のねじり剛性や車両の品質、操縦安定性を向上させることが可能である。
【0039】
また、本実施形態による車体後部構造では、補強構造部20の車幅方向内側端に隔壁部25が設けられているので、補強構造部20に作用する上下方向および前後方向の荷重に対してより強い構造を実現することができる。さらに、隔壁部25は、車両下方に向かうに従って車幅方向内側に向かう傾斜形状を有しており、該傾斜形状の延長線L上にはバックドアストライカー13が配置されている。車両の走行時、バックドアにはバックドアストライカー13を中心とした左右の動きが発生する。このようなバックドアの左右の動きにより生じる応力に対して、隔壁部25の傾斜方向がバックドアストライカー13を向いていることにより、補強構造部20の強度を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態による車体後部構造においては、サイドボディアウタエクステンションパネル10とバックドアヒンジリンフォース8との間を曲面で繋ぐバックドアヒンジスティフナ9が設けられており、補強構造部20の隔壁部25が、車両背面視で、バックドアヒンジスティフナ9によって覆われている。隔壁部25(バックドアヒンジリンフォース8の車幅方向外側端部8A)は、バックドアヒンジリンフォース8の縦壁部8Bおよび底壁部8Cに対して段差となり、該段差を起点にバックドアヒンジリンフォース8が折れ曲がる可能性がある。しかし、バックドアヒンジスティフナ9が隔壁部25を跨いでサイドボディアウタエクステンションパネル10とバックドアヒンジリンフォース8との間を繋いでいることによって、バックドアヒンジリンフォース8が折れ曲がるのを抑制することができる。これにより、バックドア開口部6の上側コーナー部分の剛性を更に高めることができる。
【0041】
また、本実施形態による車体後部構造では、バックドアヒンジ14を取り付けるためのヒンジ取付部15がバックドアヒンジスティフナ9に設けられており、該ヒンジ取付部15には、ルーフパネル1の後端部1Bおよびバックドアヒンジリンフォース8の車幅方向中間部が重ねて接合されている。このようにバックドアヒンジスティフナ9、ルーフパネル1およびバックドアヒンジリンフォース8の3枚重ねで剛性を高めたヒンジ取付部15にバックドアヒンジ14が取り付けられるようにすることで、バックドア開口部6の上側コーナー部分の剛性を一層高めることができるとともに、バックドアの支持性能を高めることができる。さらに、バックドアヒンジ14が、車両背面視で、隔壁部25よりも車幅方向内側に配置されていることにより、前後方向に奥行を有する補強構造部20を避けたバックドアヒンジリンフォース8上にバックドアヒンジ14を設置することができる。これにより、バックドアを閉めた際の車体とバックドアの隙間(見切り)を低減することが可能になる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、補強構造部20が、車両側方視で、概ね平行四辺形の形状を有している一例を示したが、平行四辺形の他、台形などの四角形の形状を有していてもよい。また、補強構造部20の車幅方向内側端に隔壁部25を設けた一例を説明したが、隔壁部25を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ルーフパネル
2…サイドボディアウタパネル
3…ルーフレール溝
4…ルーフクロスメンバ
5…ルーフサイドレール
6…バックドア開口部
7…ルーフバックインナリンフォース
8…バックドアヒンジリンフォース
9…バックドアヒンジスティフナ
10…サイドボディアウタエクステンションパネル(サイドボディアウタパネルの上側後部)
11…クォーターインナアッパーパネル
12…クォーターインナアッパーエクステンションパネル(クォーターインナパネルの上部)
13…バックドアストライカー
14…バックドアヒンジ
15…ヒンジ取付部
20…補強構造部
21…上面部
22…後壁部
23…底面部
24…前壁部
25…隔壁部
L…延長線