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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070866
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】閉塞コイル用プッシャー
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183250
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 京典
(72)【発明者】
【氏名】林 愛菜
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
4C160MM33
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】X線透視下において、閉塞コイルとプッシャーとの境界を視認しやすくなり、閉塞コイルの留置作業の作業性を高めることができる、閉塞コイル用プッシャーを提供する。
【解決手段】この閉塞コイル用プッシャー10は、カテーテル内に配置されたX線不透過材料からなる閉塞コイルを押出すためのものであって、基部21及び先端部23を有する芯線20と、芯線20の先端部23に設けられ、閉塞コイルを押圧する押圧部30とを有しており、押圧部30は、線材31aを巻回してなるコイル部31と、押圧部30の最先端30aから10mmの範囲に設けられ、軸方向長さが1~5mmのX線透過部33とを有しており、該X線透過部33に隣接する部分はX線不透過部をなしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル内に配置されたX線不透過材料からなる閉塞コイルを押出すための、閉塞コイル用プッシャーであって、
基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、
前記芯線の先端部に設けられ、前記閉塞コイルを押圧する押圧部とを有しており、
前記押圧部は、線材を巻回してなる少なくとも1つのコイル部と、前記押圧部の最先端から10mmの範囲に設けられ、軸方向長さが1~5mmのX線透過部とを有しており、該X線透過部に隣接する部分はX線不透過部をなしていることを特徴とする閉塞コイル用プッシャー。
【請求項2】
前記X線透過部は、前記押圧部の最先端に配置されている請求項1記載の閉塞コイル用プッシャー。
【請求項3】
前記コイル部が前記X線不透過部をなすと共に、前記X線透過部は線材を巻回してなるコイル状をなしており、
前記X線透過部の、隣接する前記線材どうしの隙間は、前記X線不透過部の、隣接する前記線材どうしの隙間よりも大きくされている請求項1又は2記載の閉塞コイル用プッシャー。
【請求項4】
前記X線不透過部又は前記X線透過部は、撓み変形しない部材となっており、
この撓み変形しない部材は、前記押圧部の最先端に配置されている請求項1記載の閉塞コイル用プッシャー。
【請求項5】
前記X線不透過部は、前記押圧部の最先端に配置されており、X線透視下において、前記閉塞コイルよりも淡く視認されるように構成されている請求項1又は3記載の閉塞コイル用プッシャー。
【請求項6】
前記X線透過部は、前記芯線の軸方向に複数配置されており、
その内の少なくとも1つは、前記押圧部の最先端から10mmの範囲に配置されており、その基部側に、他の前記X線透過部が配置されている請求項1~5のいずれか1つに記載の閉塞コイル用プッシャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脳動脈瘤の治療等に用いられる閉塞コイルを押出すための、閉塞コイル用プッシャーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、脳動脈等の治療に際して、動脈瘤内に複数の閉塞コイルを充填して、血流を遮断して破裂を防いだり、或いは、抗癌剤等の投与に際して、分岐した複数の血管のうち、所定の血管内に閉塞コイルを留置して、その血流を遮断し、他の血管に、抗癌剤等を流しやすくして、患部を治療したりすることが行われている。
【0003】
上記の閉塞コイルは、通常は放射線不透過材料から形成されており、プッシャーによって押出されて、所望位置に留置される。この際、X線透視下(放射線透視下)において、閉塞コイルやプッシャーの境界を視認しながら、プッシャーで閉塞コイルを押出すようにしている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、主線材と、その先端部外周に装着されたスプリングコイルとを備え、スプリングコイルは、主線材の先端に配置された放射線不透過コイル部と、該放射線不透過コイル部の基端に、隣接して配置された放射線透過コイル部とからなる、生体留置部材用プッシャーワイヤーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4463191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の生体留置部材用プッシャーワイヤーでは、スプリングコイルの先端部は、閉塞コイルの材質と同様の放射線不透過材料からなる、放射線不透過コイル部となっているので、X線透視下において、閉塞コイルと放射線コイル部との境界(閉塞コイルの基端と放射線不透過コイル部の先端との間の部分)を視認しにくくなり、閉塞コイルの留置作業に時間がかかることがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、X線透視下において、閉塞コイルとプッシャーとの境界を視認しやすくして、閉塞コイルの留置作業の作業性を高めることができる、閉塞コイル用プッシャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、カテーテル内に配置されたX線不透過材料からなる閉塞コイルを押出すための、閉塞コイル用プッシャーであって、基部及び該基部よりも縮径した先端部を有する芯線と、前記芯線の先端部に設けられ、前記閉塞コイルを押圧する押圧部とを有しており、前記押圧部は、線材を巻回してなる少なくとも1つのコイル部と、前記押圧部の最先端から10mmの範囲に設けられ、軸方向長さが1~5mmのX線透過部とを有しており、該X線透過部に隣接する部分はX線不透過部をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押圧部の最先端から10mmの範囲に軸方向長さが1~5mmのX線透過部が設けられ、該X線透過部に隣接する部分はX線不透過部をなしているので、閉塞コイルの基端と押圧部の最先端との境界を視認しやすくなり、閉塞コイルの留置作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの第1実施形態を示しており、その断面図である。
図2】同閉塞コイル用プッシャーを用いて、カテーテル内に収容された閉塞コイルを押出す際の、説明図である。
図3】同閉塞コイル用プッシャーの、X線透視下におけるX線透視画像図である。
図4】同閉塞コイル用プッシャーを用いて、体内の所定箇所に閉塞コイルを押出した状態の説明図である。
図5】比較例の閉塞コイル用プッシャーを示しており、(a)はその側面説明図、(b)はX線透視下におけるX線透視画像図である。
図6】(a)は本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの第2実施形態を示す断面図、(b)は本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの第3実施形態を示す断面図である。
図7】本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの第4実施形態を示しており、(a)はその断面図、(b)はX線透視下におけるX線透視画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(閉塞コイル用プッシャーの第1実施形態)
以下、図1~4を参照して、本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの、第1実施形態について説明する。
【0012】
図4に示すように、例えば、血管等の管状器官Vに生じた動脈瘤等の患部A内に、閉塞コイル1を留置したり、分岐した複数の血管のうち、所定の血管内に閉塞コイル1を留置したり、その他、所定の目的で体内に閉塞コイル1を留置したりすることがある。この閉塞コイル用プッシャー10は、上記閉塞コイル1を収容したカテーテル5(図2参照)の内部から、閉塞コイル1を押出すためのものである。なお、閉塞コイル1は、例えば、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性材料の線材を巻回して形成されている。
【0013】
図1に示すように、この第1実施形態の閉塞コイル用プッシャー10(以下、単に「プッシャー10」ともいう)は、基部21及び該基部21よりも縮径した先端部23を有する芯線20と、この芯線20の先端部23に設けられ、閉塞コイル1を押圧する押圧部30とを有している。
【0014】
なお、以下の説明で、芯線20や押圧部30等の各部材における「基端部」又は「基端」とは、閉塞コイル用プッシャーを使用する使用者の、手元に近い方の端部や端(近位端部,近位端)を意味し、「先端部」又は「先端」とは、上記基端部又は基端とは反対側の端部や端(遠位端部,遠位端)を意味する。
【0015】
この実施形態における前記芯線20は、円形断面の丸線であって、一定外径にて所定長さで伸びる基部21と、この基部21の先端側に連設され、該基部21よりも小径の先端部23とを有している。先端部23は、前記基部21の先端から、芯線先端に向かって次第に縮径しつつ延びる第1テーパ部24と、この第1テーパ部24の先端から一定外径で直線状に延びる第1直線状部25と、この第1直線状部25の先端から、芯線先端に向かって次第に縮径しつつ延びる第2テーパ部26と、この第2テーパ部26の先端から一定外径で直線状に延びる第2直線状部27とからなる。なお、この実施形態の場合、第2直線状部27の先端27aが、芯線20の最先端となっている。
【0016】
前記押圧部30は、線材31аを巻回してなる少なくとも1つのコイル部31と、押圧部30の最先端30aから10mmの範囲(図1のL1参照)に設けられ、軸方向長さL2が1~5mmのX線透過部33とを有しており、該X線透過部33に隣接する部分はX線不透過部をなしている。
【0017】
より具合的に説明すると、この実施形態における押圧部30は、芯線20の先端部23の第2テーパ部26の外周に配置されたコイル部31と、芯線20の先端部23の第2直線状部27の外周に配置され、前記コイル部31よりも芯線20の軸方向の先端側に設けられたX線透過部33とを有している。
【0018】
上記コイル部31は、この実施形態の場合、例えば、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性材料の線材31аを巻回して形成されている。そして、このコイル部31が、本発明における「X線不透過部」をなしている。また、この実施形態のコイル部31は、隣接する線材31а,31аどうしを所定の隙間P1を空けて巻回してなる疎巻のコイルとなっている。
【0019】
なお、X線不透過部をなすコイル部31は、X線透視下においては、X線透過部33よりも暗い色、ここでは黒又は黒に近い色に視認されるようになっている(図3のX線透視画像G3参照)。ただし、この実施形態の場合、X線不透過部のX線透視画像G3は、閉塞コイル1のX線透視画像G1よりも、淡く(明るく)視認されるようになっている。
【0020】
一方、X線透過部33は、例えば、ステンレスやピアノ線等のFe系合金、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタン、又はこれらの合金などからなるX線透過性材料の線材33аを巻回して形成された、コイル状となっている。また、この実施形態のX線透過部33は、隣接する線材33а,33аどうしを所定の隙間P2を空けて巻回してなる疎巻のコイルとなっている。更に、X線透過部33の、隣接する線材33а,33аどうしの隙間P2は、上記コイル部31の、隣接する線材31а,31аどうしの隙間P1よりも大きくされている。
【0021】
また、この実施形態では、X線透過部33を形成する線材33аの線径は、コイル部31を形成する線材31аの線径と同一となっている。更に、この実施形態では、X線透過部33の外径は、コイル部31の外径と同一となっている。
【0022】
なお、X線透過部33は、X線透視下においては、閉塞コイル1及びX線不透過部よりも明るい色、ここでは白又は白に近い色に視認されるようになっている(図3のX線透視画像G2参照)。
【0023】
また、図1に示すように、コイル部31の先端と、X線透過部33の基端とが、例えば、金属ロウや接着剤等の固着材料からなる接合部35により接合されている。それによって、押圧部30の最先端にX線透過部33が配置され、このX線透過部33の軸方向基端側の隣接した部分に、接合部35を介して、X線不透過部をなすコイル部31が配置されるようになっている。すなわち、X線透過部33の基端側に、接合部35を介して、X線不透過部であるコイル部31が隣接して配置されるようになっている。
【0024】
更に図1に示すように、コイル部31やX線透過部33の径方向内側には、例えば、接着剤や、合成樹脂、ロウ等の充填部材37が充填されている。そして、この充填部材37を介して、芯線20の先端部23の所定箇所に、コイル部31及びX線透過部33が固定されるようになっている。
【0025】
また、コイル部31及びX線透過部33の外側には、例えば、ポリウレタンや、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂などで形成された樹脂膜、及び/又は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体などで形成された親水性樹脂膜からなる、カバー39が被覆されている。
【0026】
そして、上記のX線透過部33は、上述したように、押圧部30の最先端30а(カバー39を含む最先端)から10mmの範囲(図1のL1参照)に設けられていると共に、X線透過部33は、その軸方向長さL2が1~5mmとされている。
【0027】
(変形例)
以上説明した実施形態における芯線や、押圧部、押圧部を構成するコイル部やX線透過部等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0028】
例えば、芯線を断面角形の線材から形成したり、また、芯線の先端部を、軸方向先端に向けて次第に縮径する1つ又は複数のテーパ部のみからなる形状としたり(直線状部がない形状)、基部よりも縮径した一定外径の直線状部を、軸方向に1つ又は複数連設した形状としたり(テーパ部がない形状)してもよい。
【0029】
また、押圧部としては、その最先端に、X線不透過部を設け、その軸方向基端側に隣接する位置に、X線透過部を設けてもよい(これについては後述の第4実施形態で説明する)。更に、押圧部を構成するコイル部は、ステンレス等のX線透過材料から形成されていてもよい。また、この実施形態のX線透過部33は、伸縮変形可能な疎巻のコイル状となっているが、例えば、密巻のコイル状としたり、撓み変形しない部材としたりしてもよい(これについては後述の第2,第3実施形態で説明する)。なお、この実施形態における押圧部30は、カバー39を有しているが、このカバー39は存在しなくともよい。
【0030】
更に、この実施形態では、コイル部31及びX線透過部33の外径や、それらを形成する線材31а,33аの線径は同一となっているが、例えば、X線透過部33の外径や線径を、コイル部31の外径や線径よりも大きくしたり或いは小さくしたりしてもよい。また、X線透過部33の、隣接する線材33а,33аどうしの隙間P2を、コイル部31の、隣接する線材31а,31аどうしの隙間P1よりも小さくしたり、或いは、同一としたりしてもよい。
【0031】
更に、この実施形態では、コイル部31及びX線透過部33はそれぞれ1つずつとなっているが、コイル部やX線不透過部を複数としてもよい(これについては後述の第4実施形態で説明する)。ただし、この場合でも、少なくとも1つのX線透過部は、押圧部の最先端から10mmの範囲に配置されていることが必要である。
【0032】
また、この実施形態では、コイル部31やX線透過部33の径方向内側に、接着剤等からなる充填部材37が充填されているが、コイル部やX線透過部の内側に、充填部材を充填せず、空隙としてもよい。
【0033】
(作用効果)
次に、上記構成からなる本発明に係るプッシャー10の作用効果について説明する。
【0034】
すなわち、X線透視下(放射線透視下)において、周知のセルディンガー法等によって、造影剤を体内に投与しながら、図示しないガイドワイヤを介して、カテーテル5をガイドさせつつ移動させていき、その先端部を所定位置まで到達させる。その後、カテーテル5からガイドワイヤを抜去し、閉塞コイル1をカテーテル5の内側に収容し、図2の矢印に示すように、カテーテル5の基端部5b側から、プッシャー10を挿入していく。そして、プッシャー10の押圧部30で閉塞コイル1を押圧し、閉塞コイル1をカテーテル5内で移動させ、最終的に、カテーテル5の先端部5аから閉塞コイル1を押出して、患部A内に閉塞コイル1を留置する。なお、この実施形態のように患部Aが動脈瘤等の場合には、図4に示すにように、複数の閉塞コイル1を患部A内に留置することが多い。
【0035】
そして、このプッシャー10においては、押圧部30は、線材31аを巻回してなる少なくとも1つのコイル部31と、押圧部30の最先端30аから10mmの範囲(図1のL1参照)に設けられ、軸方向長さL2が1~5mmのX線透過部33とを有しており、該X線透過部33に隣接する部分はX線不透過部をなしている。
【0036】
そのため、X線透視下において、閉塞コイル1の基端1аと、押圧部30の最先端30аとの境界を視認しやすくなる。
【0037】
具体的には、
(1)図3のX線透視画像G1に示すように、X線不透過材料からなる閉塞コイル1は、X線透視下では、X線透過部33よりも暗い色で視認され(ここでは黒く視認される)、
(2)図3のX線透視画像G2に示すように、押圧部30の最先端30аから10mmの範囲(図1のL1参照)に設けられ、軸方向長さL2が1~5mmのX線透過材料からなるX線透過部33は、X線透視下では、閉塞コイル1やX線不透過部(コイル部31)よりも明るい色で視認され(ここでは白く視認される)、
(3)図3のX線透視画像G3に示すように、X線透過部33に隣接するX線不透過材料からなるX線不透過部(コイル部31)は、X線透視下では、X線透過部33よりも暗い色で視認される(ここでは、閉塞コイル1よりもやや明るい(淡い)黒に近い色で視認される)。
【0038】
すなわち、X線透視下においては、図3中左から右に向けて、閉塞コイル1による黒いX線透視画像G1、X線透過部33による白いX線透視画像G2、X線透過部であるコイル部31による、閉塞コイル1よりもやや明るい黒に近いX線透視画像G3が、閉塞コイル1やプッシャー10の軸方向に沿って並列して配置されるように視認可能となっている。
【0039】
その結果、閉塞コイル1の基端1а(図2参照)と押圧部30の最先端30аとの境界部分に、黒や黒に近い色、及び、白又は白に近い色による大きな明暗差が生じる(図3参照)。その結果、閉塞コイル1の基端1аと押圧部30の最先端30аとの境界が視認しやすくなる。また、この実施形態においては、押圧部30の最先端30aに位置するX線透過部33に隣接した位置には、X線不透過材料からなるコイル部31が配置されているので、閉塞コイル1によるX線透視画像G1と、コイル部31によるX線透視画像G3との間に、それらのX線透視画像G1,G2よりも明るい白又は白に近い色のX線透視画像G2が位置することになり、閉塞コイル1の基端1aと押圧部30の最先端30aとの間に、あたかも隙間(ギャップ)が生じたように視認されることとなる(図3参照)。
【0040】
それによって、プッシャー10の使用者が、X線透視下において、閉塞コイル1の基端位置(手元側の位置)や、押圧部30の先端位置を認識しやすくなるので、カテーテル5の先端部5аから閉塞コイル1を押出すときの、押出し状況を正確に把握することができ、閉塞コイル1の押しすぎや、閉塞コイル1の留置位置のずれを抑制でき、閉塞コイル1の留置作業の作業性を高めることができる。また、プッシャー10の押圧部30による、閉塞コイル1の押しすぎや、それによる閉塞コイル1の留置位置のずれを抑制して、体内の所望位置に精度良く閉塞コイル1を留置することができ、更に、閉塞コイル1の押しすぎによる、体内の器官等の損傷を抑制することができる。
【0041】
また、押圧部30は、線材31aを巻回してなる少なくとも1つのコイル部31を有しているので、プッシャー10の先端部での柔軟性を確保することができ、これによっても閉塞コイル1の留置作業性を向上させることができる。
【0042】
なお、図5(a)には、比較例の閉塞コイル用プッシャー100(以下、単に「プッシャー100」ともいう)が記載されている。このプッシャー100の押圧部30は、X線不透過材料からなるコイル部のみからなり、第1実施形態のプッシャー10のようなX線透過部33は存在しない構成となっている。この場合、図5(b)に示すように、X線透視下において、閉塞コイル1及び押圧部30全体は、両者とも黒又は黒に近い色で視認され、閉塞コイル1の基端1aと押圧部30の最先端30aとの明暗差が小さいので、その境界は視認しにくい。
【0043】
以上のように、このプッシャー10においては、押圧部30は、その最先端30аから10mmの範囲(図1のL1参照)に設けられ、軸方向長さL2が1~5mmのX線透過部33を有することで、上記のような作用効果を奏するが、上記の条件を満たさないと以下のようになる。
【0044】
すなわち、X線透過部33の軸方向長さL2が1mm未満だと、X線透視下において、X線透過部33が視認しにくくなり、閉塞コイル1の基端位置や、押圧部30の先端位置を認識しにくくなる。
【0045】
また、X線透過部33の軸方向長さL2が5mmを超えると、X線透視下において、押圧部30に設けられたX線透過部33による、明るい色なのか、或いは、閉塞コイル1の基端1аと押圧部30の最先端30аとの距離が離れることによって形成された、明るい色なのか、の見分けが付きにくくなり、押圧部30の先端位置が認識しにくくなる。その結果、プッシャー10で閉塞コイル1を押しすぎて、体内での閉塞コイル1の留置位置がずれてしまうおそれがある。また、閉塞コイル1の押しすぎによって、体内の器官等が損傷するおそれがある。
【0046】
更に、押圧部30の最先端30аから10mmを超えた位置に、X線透過部33が配置されていると、押圧部30の先端位置が認識しづらくなるため、押圧部30の最先端30аが閉塞コイル1の基端1аに当接した状態で、閉塞コイル1の基端1аと押圧部30の最先端30аとの境界が認識しにくくなり、閉塞コイル1が、カテーテル5の先端部5aからどの程度押出されたかを把握しにくくなる。
【0047】
また、この実施形態においては、図1に示すように、X線透過部33は、押圧部30の最先端30aに配置されている。
【0048】
この態様によれば、閉塞コイル1の基端1aに対して軸方向に隣接する位置に、X線透過部33が配置されることになるので、X線透視下において、閉塞コイル1の基端1aと押圧部30の最先端30aとの境界を、より視認しやすくなる。
【0049】
更に、この実施形態においては、コイル部31がX線不透過部をなすと共に、X線透過部33は線材33aを巻回してなるコイル状をなしており、X線透過部33の、隣接する線材33a,33aどうしの隙間P2は、X線不透過部をなすコイル部31の、隣接する線材どうし31aの隙間P1よりも大きくされている(図1参照)。
【0050】
上記態様によれば、X線透過部33の、隣接する線材33a,33aどうしの隙間P2は、X線不透過部の、隣接する線材どうし33a,33aの隙間P1よりも大きくされているので、X線がX線透過部33を透過しやすくなり、X線透視下において、X線不透過材料からなる閉塞コイル1の基端1と、押圧部30の最先端30aとの境界を、より一層視認しやすくなる(X線透視下において、X線透過部33が、より白く視認されるようになるので、閉塞コイル1との明暗差が大きくなり、閉塞コイル1の基端1と押圧部30の最先端30aとの境界を視認しやすくなる)。更に、この実施形態におけるX線透過部33は、コイル状をなしているので、プッシャー10の先端部での柔軟性が確保され、従来の操作感覚のままで、X線透視下における閉塞コイル1の基端1aと押圧部30の最先端30aとの境界の視認性向上効果を付与できる。
【0051】
(閉塞コイル用プッシャーの第2実施形態)
図6(a)には、本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0052】
この第2実施形態の閉塞コイル用プッシャー10A(以下、単に「プッシャー10A」ともいう)は、押圧部30Aの構造が前記第1実施形態と異なっている。
【0053】
すなわち、この押圧部30Aは、X線透過部33Aが、第1実施形態のX線透過部33のようにコイル状とはなっておらず、撓み変形しない部材となっている。また、この撓み変形しないX線透過部33Aは、押圧部30Aの最先端30aに配置されている。なお、押圧部30Aの最先端30aに、撓み変形しないX線不透過部を配置してもよい。
【0054】
この実施形態によれば、押圧部30の最先端30aに配置された、X線透過部33A又はX線不透過部は、撓み変形しない部材となっているので、コイルよりも硬度や剛性を向上させることができ、閉塞コイル1の押出し機能の向上を図ることができる。
【0055】
(閉塞コイル用プッシャーの第3実施形態)
図6(b)には、本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この第3実施形態の閉塞コイル用プッシャー10B(以下、単に「プッシャー10B」ともいう)は、押圧部30Bの構造が前記第1,第2実施形態と異なっている。
【0057】
すなわち、この押圧部30Bは、X線透過部33Bが、第2実施形態のX線透過部33Aと同様に撓み変形しない部材となっており、かつ、X線透過部33Bは、芯線20の先端部23の第2テーパ部26の先端に連設されて、芯線20に対して一体形成されている。すなわち、この実施形態におけるX線透過部33Bは、押圧部30Bの一部であると共に、芯線20の一部ともなっている。また、X線透過部33Bは、芯線20の先端部23の第2テーパ部26の外径よりも拡径しており、その先端面34は平面状をなしており、基端面36は、芯線20の基部21側に向けて次第に突出量が小さくなる、逆テーパ面状をなしている。
【0058】
この実施形態においても、第2実施形態と同様に、押圧部30Bの最先端30aに配置されたX線透過部33Bが、撓み変形しない部材となっているので、閉塞コイル1の押出し機能の向上を図ることができる。
【0059】
(閉塞コイル用プッシャーの第4実施形態)
図7には、本発明に係る閉塞コイル用プッシャーの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この第4実施形態の閉塞コイル用プッシャー10C(以下、単に「プッシャー10C」ともいう)は、押圧部30Cの構造が前記第1~3の実施形態と異なっている。
【0061】
すなわち、この実施形態の押圧部30Cは、X線透過部33Cは、芯線20の軸方向に複数配置されており、その内の少なくとも1つは、押圧部30Cの最先端30aから10mmの範囲(図7のL1参照)に配置されており、その基部側に、すなわち、押圧部30Cの最先端30aから10mmの位置よりも基部側に、他のX線透過部33Cが配置されている(図7(a)参照)。また、コイル部31CがX線不透過部をなしており、このX線不透過部は、押圧部30Cの最先端30aに配置されており、X線透視下において、閉塞コイル1よりも淡く視認されるように構成されている(図7(b)のX線透視画像G3参照)。
【0062】
より具体的には、この押圧部30Cは、芯線20の第2直線状部27の先端27a側から基部21側に向けて、3つのコイル部31C(X線不透過部をなす)が配置されていると共に、コイル部31Cとコイル部31Cとの間に、X線透過部33Cが配置された構成となっている(図7(a)参照)。すなわち、芯線20の最先端から基部21側に向けて、コイル部31Cを先頭にして、X線透過部33Cとコイル部31Cとが交互に複数個配置されている(3つのコイル部31C及び2つのX線透過部33Cが配置されている)。
【0063】
また、図7(b)に示すように、X線透視下においては、図中左から右に向けて(芯線20の先端側から基部21側に向けて)、閉塞コイル1による黒いX線透視画像G1、X線不透過部であるコイル部31Cによる、閉塞コイル1よりもやや明るい黒に近いX線透視画像G3、X線透過部33Cによる白いX線透視画像G2が配置され、以下、G3、G2と明度の異なるX線透視画像がプッシャー10Cの軸方向に沿って交互に視認可能となっている。
【0064】
そして、この実施形態においては、X線不透過部(コイル部31C)は、押圧部30の最先端30aに配置されており、X線透視下において、閉塞コイル1よりも淡く視認されるように構成されているので、押圧部30Cの最先端30aにX線不透過部が配置されている場合でも、X線透視下において、閉塞コイル1の基端1aと押圧部30Cの最先端30аとの境界を視認しやすくなり、閉塞コイル1の基端位置や、押圧部30Cの先端位置を認識しやすくなる。その結果、閉塞コイル1の押しすぎや、閉塞コイル1の留置位置のずれを抑制して、閉塞コイル1の留置作業の作業性を高める。
【0065】
また、この実施形態においては、X線透過部33Cは、芯線20の軸方向に複数配置されており、その内の少なくとも1つは、押圧部30Cの最先端30aから10mmの範囲(図7のL1参照)に配置されており、その基部側に、他のX線透過部33Cが配置されているので、例えば、体内の所定箇所(ここでは動脈瘤等の患部A)に複数の閉塞コイル1を留置して、それらの閉塞コイル1中に押圧部30Cが埋もれてしまって、X線透視下において、押圧部30Cの先端側のX線透過部33Cを視認しにくくなっても、基部側のX線透過部33Cによって、押圧部30Cの位置を推定することができる。更に押圧部30Cは、複数のX線透過部33を有するので、プッシャー10Cの進行方向を判別しやすい。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 閉塞コイル
5 カテーテル
10,10A,10B,10C 閉塞コイル用プッシャー(プッシャー)
20 芯線
21 基部
23 先端部
30,30A,30B,30C 押圧部
30a 最先端
31 コイル部
33,33A,33B,33C X線透過部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7