(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070873
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】調光ユニットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230515BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20230515BHJP
H01R 4/04 20060101ALI20230515BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20230515BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1345
H01R4/04
H01R43/02 Z
H05K1/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183268
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 紀彦
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
5E085
5E344
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088FA03
2H088FA05
2H088FA22
2H088FA23
2H088FA29
2H088MA16
2H092GA32
2H092GA33
2H092GA48
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2H092HA27
2H092MA31
2H092MA32
2H092NA27
2H092NA28
5E085BB05
5E085BB09
5E085BB18
5E085DD05
5E085EE15
5E085HH17
5E085HH18
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5E344AA02
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5E344BB02
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5E344BB16
5E344CC03
5E344CD02
5E344DD08
5E344EE01
(57)【要約】
【課題】少ない工数で製造でき、堅牢で、調光層に対する封止性が良好で、透明電極との接合面積が大きく、対面する配線領域間の発熱問題が回避された調光ユニットの電極構造を提供する。
【解決手段】透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層を挟持した調光シートの一辺の端部に調光シートの駆動電圧を給電する給電構造部を備えた調光ユニットであって、前記給電構造部は、前記一辺の端部において、該端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルムの開かれた部分の奥の領域に充填された封止樹脂によって、前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材が、導電性接着剤を介して、前記一対の透明導電フィルムに挟持し、接着され、封止された給電部材を備えた調光ユニットである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層を挟持した調光シートの一辺の端部に調光シートの駆動電圧を給電する給電構造部を備えた調光ユニットであって、
前記給電構造部は、前記一辺の端部において、該端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルムの各透明導電膜に前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材を、導電性接着剤を介して、前記一対の透明導電フィルムに挟持し、接着してなり、
前記給電部材は、長尺状の絶縁層の、一方の面に第1導電層を備え、もう一方の面に第2導電層を備えた両面導電性テープであり、
前記第1導電層と、前記第2導電層とは、それぞれ、第1絶縁層と第2絶縁層により、被覆されており、
前記第1導電層と、一方の前記透明導電膜とは、前記第1絶縁層に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記第2導電層と、もう一方の前記透明導電膜とは、前記第2絶縁層に形成された、前記開口部とは平面視で重なる位置に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記給電構造部において、一方の前記透明導電膜と、もう一方の前記透明導電膜と、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面と、によって囲まれた空間に充填された封止樹脂によって、前記給電部材が埋め込まれ、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面が封止されていることを特徴とする調光ユニット。
【請求項2】
透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層を挟持した調光シートの一辺の端部に調光シートの駆動電圧を給電する給電構造部を備えた調光ユニットであって、
前記給電構造部は、前記一辺の端部において、該端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルムの各透明導電膜に前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材を、導電性接着剤を介して接着してなり、
前記給電部材は、長尺状の絶縁層の、一方の面に第1導電層を備え、もう一方の面に第2導電層を備えた両面導電性テープであり、
前記第1導電層と、前記第2導電層とは、それぞれ、第1絶縁層と第2絶縁層により、被覆されており、
前記第1導電層と、一方の前記透明導電膜とは、前記第1絶縁層に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記第2導電層と、もう一方の前記透明導電膜とは、前記第2絶縁層に形成された、前記開口部とは平面視で重ならない位置に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記給電構造部において、一方の前記透明導電膜と、もう一方の前記透明導電膜と、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面と、によって囲まれた空間に充填された封止樹脂によって、前記給電部材が埋め込まれ、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面が封止されていることを特徴とする調光ユニット。
【請求項3】
前記給電構造部において、前記給電部材の少なくとも一方の端部が、前記一辺に隣接する辺の端部から突出した、前記駆動電圧を給電する電源と接続可能な、配線領域を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の調光ユニット。
【請求項4】
前記第1絶縁層に形成された前記開口部が、前記一辺に沿って平行に、等間隔に配置さ
れた、同じ形状の、同じ大きさの開口部であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の調光ユニット。
【請求項5】
前記両面導電性テープが、両面フレキシブル配線板からなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の調光ユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の調光ユニットの製造方法であって、
前記調光シートの前記一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置を一対のロール間に挟み込むことで固定する工程と、
前記調光シートの前記一辺の端部から、先端が剃刀状となっているフィルム剥がしツールを前記調光シートの前記調光層に挿入することによって、一対のロールによって固定されている前記調光シートの前記一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置まで引き剥がすことによって、一対の前記透明導電フィルムを開く工程と、
開かれた一対の前記透明導電フィルムの前記透明導電膜上の前記調光層を除去する工程と、
一対の前記透明導電フィルムが開かれた部分の奥の領域に封止樹脂を充填する工程と、
前記給電部材の長手方向にテンションをかけた状態で、前記調光シートの一対の前記透明フィルムを開いた部分の奥の領域に充填された封止樹脂の中に前記給電部材を挿入する工程と、
挿入された前記給電部材を一対の前記透明フィルムで挟み込む形にラミネートし、前記導電性接着剤と前記封止樹脂の仮圧着を行いながら、さらに前記給電部材の前記調光シートの外側端部にも封止樹脂を充填する工程と、
前記給電部材と前記封止樹脂を挟み込んで、前記透明フィルムが平坦化するように一対のロールでラミネートし、紫外線を照射することにより前記導電性接着剤と前記封止樹脂を硬化させたのち、前記調光シートの不要な部分を切り落とす工程と、
を備えていることを特徴とする調光ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調光ユニットの給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
調光ユニットに使用する調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層と、を備える。一対の透明電極層に駆動電圧が印加されると、調光層に含まれる液晶分子の配向状態が変わることにより、調光シートの光透過率が変わる。こうした調光シートと、透明電極層を電源に接続するための接続部とから、調光ユニットが構成される(特許文献1参照)。
【0003】
調光ユニットの構造の一例について、図面を参照して説明する。
図14が示すように、調光ユニット100は、窓ガラス等の透明板200に取り付けられる。調光シート110は、一対の電極シート130A、130Bを備え、電極シート130Aには接続部160Aが接続され、電極シート130Bには接続部160Bが接続されている。
【0004】
図14のXII-XII´切断線における調光シート110と接続部160Aの断面構造を例示する断面説明図である
図15に詳細を示すように、一方の電極シート130Aは、透明電極層140Aと透明支持層150Aとの積層体である。透明電極層140Aは、調光層120の一方の面に接し、透明支持層150Aは、接着層210を介して透明板200に貼り付けられている。接続部160Aは、透明電極層140Aのなかで調光層120および他方の電極シート130Bから露出する領域に接続されている。
【0005】
また、
図14のXIII-XIII´切断線における調光シート110と接続部160Bの断面構造を例示する断面説明図である
図16に詳細を示すように、他方の電極シート130Bは、透明電極層140Bと透明支持層150Bとの積層体であり、透明電極層140Bは、調光層120の他方の面に接している。接続部160Bは、透明電極層140Bのなかで調光層120およびもう一方の電極シート130Aから露出する領域に接続されており、透明板200と対向する。
【0006】
接続部160A、160Bは、透明電極層140A、140Bに接合された導電性接着層161と、導電性接着層161に接合された導電テープ162と、を備える。導電性接着層161は、例えば、銀ペースト等の導電ペーストから構成される。導電テープ162は、例えば銅(箔)テープである。接続部160A、160Bは、さらに、導電テープ162の表面上に位置するはんだ163と、はんだ163によって導電テープ162に接続されたリード線164と、を備える。リード線164は、電源から供給される電圧を、調光シート110を駆動可能な駆動電圧に変換する駆動回路に接続され、接続部160A、160Bを通じて、透明電極層140A、140Bに駆動電圧が印加される。
【0007】
しかしながら、
図14~
図16で示されるような給電端子取り出し構造(接続部160A、160B)では、配線(リード線164)にかかる外力に対して脆弱であること以外にも、両面に、すなわち、電極シート130Aの透明電極層140Aの表面に接続部160Aと、電極シート130Bの透明電極層140Bの表面に接続部160Bと、を個別に加工を施さなければならないため、調光シート110を反転させて加工するなど加工工数を要すること、調光シート上にはんだ端子形成などの突起ができることによりガラス面に密着できない場合があること、また、信頼性などを良好にするためには、電極形成部にカバー構造や封止構造を別途施さなければならないこと、などの問題もあった。
【0008】
さらに、透明電極との接続部(配線領域)が小さい(電流供給方向に垂直な方向に幅が短い)場合には透明電極への電流の集中が起こり、配線領域周辺部での電圧降下や発熱、信頼性低下などの原因になった。また、
図14のようにーつの配線領域をある程度長くし、電流の注入性を良くした場合においては、対面する透明電極のそれぞれに施された配線領域間の距離が近いところに電流が集中し、その部分が発熱する、という問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、少ない工数で製造でき、堅牢で、調光層に対する封止性が良好で、透明電極との接合面積が大きく、対面する配線領域間の発熱問題が回避された調光ユニットの電極構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第1の態様は、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層を挟持した調光シートの一辺の端部に調光シートの駆動電圧を給電する給電構造部を備えた調光ユニットであって、
前記給電構造部は、前記一辺の端部において、該端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルムの各透明導電膜に前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材を、導電性接着剤を介して、前記一対の透明導電フィルムに挟持し、接着してなり、
前記給電部材は、長尺状の絶縁層の、一方の面に第1導電層を備え、もう一方の面に第2導電層を備えた両面導電性テープであり、
前記第1導電層と、前記第2導電層とは、それぞれ、第1絶縁層と第2絶縁層により、被覆されており、
前記第1導電層と、一方の前記透明導電膜とは、前記第1絶縁層に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記第2導電層と、もう一方の前記透明導電膜とは、前記第2絶縁層に形成された、前記開口部とは平面視で重なる位置に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記給電構造部において、一方の前記透明導電膜と、もう一方の前記透明導電膜と、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面と、によって囲まれた空間に充填された封止樹脂によって、前記給電部材が埋め込まれ、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面が封止されていることを特徴とする調光ユニットである。
【0012】
また、第2の態様は、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層を挟持した調光シートの一辺の端部に調光シートの駆動電圧を給電する給電構造部を備えた調光ユニットであって、
前記給電構造部は、前記一辺の端部において、該端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルムの各透明導電膜に前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材を、導電性接着剤を介して接着してなり、
前記給電部材は、長尺状の絶縁層の、一方の面に第1導電層を備え、もう一方の面に第2導電層を備えた両面導電性テープであり、
前記第1導電層と、前記第2導電層とは、それぞれ、第1絶縁層と第2絶縁層により、被覆されており、
前記第1導電層と、一方の前記透明導電膜とは、前記第1絶縁層に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記第2導電層と、もう一方の前記透明導電膜とは、前記第2絶縁層に形成された、前記開口部とは平面視で重ならない位置に形成された開口部に備えられた導電性接着剤を介して接着されており、
前記給電構造部において、一方の前記透明導電膜と、もう一方の前記透明導電膜と、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面と、によって囲まれた空間に充填された封止樹脂によって、前記給電部材が埋め込まれ、前記調光層の前記透明導電膜と接していない面が封止されていることを特徴とする調光ユニットである。
【0013】
また、第3の態様は、前記給電構造部において、前記給電部材の少なくとも一方の端部が、前記一辺に隣接する辺の端部から突出した、前記駆動電圧を給電する電源と接続可能な、配線領域を備えていることを特徴とする第1または第2の態様に記載の調光ユニットである。
【0014】
また、第4の態様は、前記第1絶縁層に形成された前記開口部が、前記一辺に沿って平行に、等間隔に配置された、同じ形状の、同じ大きさの開口部であることを特徴とする第1~第3の態様のいずれかに記載の調光ユニットである。
【0015】
また、第5の態様は、前記両面導電性テープが、両面フレキシブル配線板からなることを特徴とする第1~第4の態様のいずれかに記載の調光ユニットである。
【0016】
また、第6の態様は、請求項1~5のいずれかに記載の調光ユニットの製造方法であって、
前記調光シートの前記一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置を一対のロール間に挟み込むことで固定する工程と、
前記調光シートの前記一辺の端部から、先端が剃刀状となっているフィルム剥がしツールを前記調光シートの前記調光層に挿入することによって、一対のロールによって固定されている前記調光シートの前記一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置まで引き剥がすことによって、一対の前記透明導電フィルムを開く工程と、
開かれた一対の前記透明導電フィルムの前記透明導電膜上の前記調光層を除去する工程と、
一対の前記透明導電フィルムが開かれた部分の奥の領域に封止樹脂を充填する工程と、
前記給電部材の長手方向にテンションをかけた状態で、前記調光シートの一対の前記透明フィルムを開いた部分の奥の領域に充填された封止樹脂の中に前記給電部材を挿入する工程と、
挿入された前記給電部材を一対の前記透明フィルムで挟み込む形にラミネートし、前記導電性接着剤と前記封止樹脂の仮圧着を行いながら、さらに前記給電部材の前記調光シートの外側端部にも封止樹脂を充填する工程と、
前記給電部材と前記封止樹脂を挟み込んで、前記透明フィルムが平坦化するように一対のロールでラミネートし、紫外線を照射することにより前記導電性接着剤と前記封止樹脂を硬化させたのち、前記調光シートの不要な部分を切り落とす工程と、
を備えていることを特徴とする調光ユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の調光ユニットによれば、長尺状の両面FPC(フレキシブル配線板)などの、絶縁層の表裏面に導体層を備えた給電部材を、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして調光層を挟持した調光シートの一辺の端部を調光層の部分から引き剥がした部分に挿入し、封止樹脂で埋め込むことによって形成した給電構造部を備えている。この給電構造部においては、給電部材の一方の面の
導体層と、その導体層に面した透明導電膜と、の導通がとられている。また、給電部材のもう一方の面の導体層と、その導体層に面した透明導電膜と、の導通がとられている。このように、調光シートの一対の透明導電膜と導通がとれた給電部材が、調光シートの一辺の端部の一対の透明導電フィルムの間に挿入され、さらに封止樹脂でその給電部材が封止され、固定された給電構造部となっている。そのため、給電構造部に外力がかかっても容易に透明導電膜と給電部材間の導通が破られることが無い堅牢な構造であると同時に良好な封止状態となっている。また、透明電極との接合面積は、従来の電極構造より大面積であり、一対の透明導電膜に給電する2つの導体層は絶縁層の表裏面に形成されているため、対面する配線領域間の発熱問題も回避することができる。さらに、給電部材は、両面FPCを使用して作製可能であり、そのような給電部材を調光シートの端部を引き剥がして挿入する工程となるため、調光シートを製造工程の中で裏返す必要が無く、少ない工数で製造することができる。
【0018】
また、本発明の調光ユニットの製造方法によれば、本発明の調光ユニットを提供可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の調光ユニットの給電構造部の上面図を例示する説明図。
【
図2】
図1のa-a´切断線における給電構造部の断面図を例示する説明図。
【
図3】
図1のc-c´切断線における給電構造部の断面図を例示する説明図。
【
図4】本発明の調光ユニットの給電構造部の上面図を例示する説明図。
【
図5】
図4のb1-b1´切断線における給電構造部の断面図を例示する説明図。
【
図6】
図4のb2-b2´切断線における給電構造部の断面図を例示する説明図。
【
図7】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、一対の抑え兼ラミネートロールに液晶調光シートをセットした状態を示している。
【
図8】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、液晶調光シートの調光層にフィルム剥がしツールを差し込み、2枚の透明導電膜が形成された透明フィルムを引き剥がした状態を示している。
【
図9】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、フィルム剥がしツールを抜き取った後、調光層拭き取りツールを挿入し、2枚の透明導電膜が形成された透明フィルムの透明導電膜上の調光層を拭き取っている状態を示している。
【
図10】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、
図9の後、封止樹脂ディスペンサーツールを用いて、2枚の透明導電膜が形成された透明フィルムの間に封止樹脂を充填している状態を示している。
【
図11】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、充填した封止樹脂の中に給電構造部を挿入している状態を示している。
【
図12】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、給電構造部を挿入した後、一対の抑え兼ラミネートロールによって、2枚の透明導電膜が形成された透明フィルムの透明導電膜を給電構造部の導電性接着剤に押し当てることによって、引き剥がされた2枚の透明導電膜が形成された透明フィルムを、封止樹脂によって再封している状態を示している。
【
図13】本発明の調光ユニットの給電構造部の製造過程を例示する断面説明図であって、封止樹脂によって再封された部分に紫外線を照射することによって、封止樹脂を硬化後、カッターを用いて液晶調光シートの端部を切断する直前の状態を示している。
【
図14】従来の調光ユニットの給電構造部を例示する上面図。
【
図15】
図14のXII-XII´切断線における調光シート110と接続部160Aの断面構造を例示する断面説明図。
【
図16】
図14のXIII-XIII´切断線における調光シート110と接続部160Bの断面構造を例示する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<調光ユニット>
(第1の実施形態)
図1~
図3に本発明の調光ユニット100-1の第1の実施形態を示す。
本発明の調光ユニット100-1は、透明フィルム1A、1Bの表面に、それぞれ透明導電膜2A、2Bを形成した一対の透明導電フィルム(図示省略)の透明導電膜2A、2B側を内側にして、印加する電圧によって光の透過率が変化する調光層3を挟持した調光シートAの一辺の端部に調光シートAの駆動電圧を給電する給電構造部8-1を備えた調光ユニットである。
【0021】
給電構造部8-1は、調光シートAの一辺の端部において、その端部に沿って平行に引き剥がされた一対の透明導電フィルム(透明フィルム1Aの表面に透明導電膜2Aが形成されたもの、および透明フィルム1Bの表面に透明導電膜2Bが形成されたもの)の各透明導電膜2A、2Bに前記一辺の長さの80%以上の長さの長尺状の給電部材B1を、導電性接着剤7A、7Bを介して、一対の透明導電フィルムの透明導電膜2A、2Bの間に挟持し、接着した構成となっている。
【0022】
給電部材B1は、長尺状の絶縁層5の、一方の面に第1導電層6Aを備え、もう一方の面に第2導電層6Bを備えた両面導電性テープである。
【0023】
第1導電層6Aと、第2導電層6Bとは、それぞれ、第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bにより、被覆されている。
【0024】
第1導電層6Aと、一方の透明導電膜2Aとは、第1絶縁層5Aに形成された開口部(図示を省略したが、導電性接着剤7Aが形成されている第1絶縁層5Aが除去された部分)に備えられた導電性接着剤7Aを介して接着されている。
【0025】
同様に、第2導電層6Bと、もう一方の透明導電膜2Bとは、第2絶縁層5Bに形成された開口部(図示を省略したが、導電性接着剤7Bが形成されている第2絶縁層5Bが除去された部分)に備えられた導電性接着剤7Bを介して接着されている。これら2つの開口部は平面視で重なる位置に形成されている。
【0026】
また、給電構造部8-1において、一方の透明導電膜2Aと、もう一方の透明導電膜2Bと、調光層3の透明導電膜2A、2Bと接していない面と、によって囲まれた空間に充填された封止樹脂4によって、給電部材B1が埋め込まれ、調光層3の透明導電膜2A、2Bと接していない面が封止されている。
【0027】
本発明の調光ユニット100-1をさらに詳しく説明する。
図1に示すように、調光シートAの一辺の端部に給電構造部8-1が、対向する透明導電膜2Aを有する透明フィルム1Aと透明導電膜2Bを有する透明フィルム1Bで挟持された構造になっており、少なくとも、その一端が配線領域C1として液晶調光シートAから突出している構造になっている。配線領域C1は、調光シートAを駆動する駆動電圧を給電するリード線として機能する部位である。
【0028】
図2に、
図1のa-a´切断線における給電構造部8-1の断面構造を示す。給電構造部8-1は、給電部材B1が透明導電膜2A、2Bと接続する構造体である。給電部材B1は絶縁層5を基材として、その表裏に、第1導電層6Aと第2導電層6Bが形成されており、さらにその上に、それぞれ、第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bが形成されている。第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bには、透明導電膜2Aと第1導電層6A、および透明導
電膜2Bと第2導電層6B、を接続するための開口部が設けられている。
【0029】
図1ならびに
図2においては、対向する透明導電膜2A、2Bが向き合う形で背中合わせの位置に接合するための開口部が第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bに形成されている場合を示している。それらの開口部には導電性接着剤7A、7Bが形成されており、これらを介して透明導電膜2Aと第1導電層6Aおよび透明導電膜2Bと第2導電層6Bが電気的に接続されている。第1導電層6Aと第2導電層6Bは、そのまま配線領域C1まで連続的に形成されており、そこではんだ付けやソケットによって、駆動電圧の供給源である電源への配線と接続される。
【0030】
図1においては、島状に複数の開口部と導電性接着剤を有する接続部が設けられているが、接続部は給電部材B1の表裏に最低各1か所設けられていればよい。接続部の長さ(給電部材B1の長手方向の長さ)は限定されるものではないが、給電構造部8-1が設けられている調光シートAの一辺の長さに近い方がよく、80%以上ある方が電流集中なく、効率的に電力供給ができるため好ましい。
【0031】
図3に、
図1のc-c´切断線における給電構造部8-1の断面構造を示す。配線領域C1において、給電部材B1が突出する部分では、第2絶縁層5Bの開口部と導電性接着剤7A、7Bは設けられていない構造になっている。
【0032】
給電構造部8-1の周辺には絶縁性の封止樹脂4が設けられており、前記配線領域C1の給電部材B1の突出部も含め、調光シートAの端部まで透明導電膜2Aと2Bに挟持される形で満たされている。給電部材B1の周辺の調光層3は除去されており、給電部材B1から調光層3までの間も同様に封止樹脂4で埋められている。第1導電層6A、第2導電層6Bと透明導電膜2A、2Bとの接続のための開口は最低でも表裏に各1か所あればよいと前述したが、片面の電極数が1または数個程度と少ない場合には、調光シートAの大きさに対応してその大きさに合わせるため、給電部材B1を個別に設計する必要が発生してしまう。
図1はそのような問題を回避可能とするもので、島状に複数の第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bの開口部と導電性接着剤7A、7Bを設けている。その開口部間は前述した配線領域C1のc-c´切断線(
図1参照)における断面と同様な構造になっており、任意の開口部間で切断可能なため、1種又は少ない品種の給電部材で様々なサイズの調光パネルで柔軟に対応できる給電構造部を供給できる。
【0033】
なお、ここで用いられる給電部材B1に用いられる材料は、一般的なFPC(Flexible Printed Circuit、フレキシブル配線板)部材を用いることができ、特に限定するものではない。
【0034】
絶縁層5としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、PES(ポリエーテルサルフォン)、液晶ポリマーなどを用いることができる。はんだ耐熱性のあるポリイミドなどが一般的であり、好適に使用可能である。厚みは5~50μmが好ましく、7~12μmがより適している。
【0035】
第1導電層6A、第2導電層6Bとしては、銅、銀、金、ニッケル、タングステン、チタン、カーボン、およびそれらの積層体や複合材料を用いることができるが、銅を用いたものが好適であり、厚みは2~40μmが好ましく、5~12μmがより好適である。
【0036】
第1絶縁層5A、第2絶縁層5Bは、一般的にフィルムタイプのソルダーレジストと呼ばれている材料を用いることができ、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系などの材料を用いることができ、厚みは5~12μmが好適である。
【0037】
導電性接着剤7A、7Bには、一般的な異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、等方性導電フィルム、等方性導電ペーストなどを用いることができるが、特に異方性である必要性はない。熱硬化、UV(紫外線)硬化などがあるが、熱履歴や応力などを考えるとUV硬化型の銀ペーストなどが好適である。
【0038】
封止樹脂4には、調光ユニットの調光層3へ外部環境から水分や汚染物質の侵入を防ぐ材料であれば限定する必要はないが、熱硬化型エポキシ樹脂やUVラジカル硬化型封止材などを利用できる。上記導電性接着剤と同時形成し、同時に硬化するためにはUV硬化型の材料が適しているが、熱との併用などでもよい。
【0039】
給電部材B1の幅は、必要に応じ決めればよく、特に制限されるものではないが、窓やパーテーションで使う際に狭いことを求められていることが多く、10mm以下が好ましく、5~3mmがより好適である。好ましくは封止領域を含めた幅が5mm以下である。
【0040】
第1絶縁層5A、第2絶縁層5Bの開口部の幅も必要に応じて決めればよく、特に制限されるものではないが、5~100mmが好ましく、25~50mmがより好適である。
【0041】
開口部間の間隔は、調光シートAの一辺に沿って平行に、等間隔に配置された、同じ形状の、同じ大きさの開口部であっても良いし、そのようになっていなくても構わない。給電部材の位置合わせ精度、切断精度、封止領域の必要性に合わせて決めればよい。例えば、これに限定されないが、5~10mmが適している。
【0042】
(第2の実施形態)
図4~
図6に本発明の調光ユニットの第2の実施形態を示す。
第2の実施形態における調光ユニット100-2が第1の実施形態における調光ユニット100-1と異なる点は、調光部材B2における第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bに形成される開口部の位置である。第2の実施形態においては、第1絶縁層5Aと第2絶縁層5Bに形成される開口部の位置が、平面視で重ならない位置に形成されている。
【0043】
図4は、本発明の調光ユニット100-2の上面図を例示している。本発明の調光ユニット100-2は調光シートAの一辺の端部に、その辺と平行に給電構造部8-2を備えている。また、その一辺に隣接する2辺のうち、少なくとも1辺の端部から給電部材B2が突出した部分である配線領域C2を備えている。この配線領域C2によって、給電部材B2と駆動電圧を発生する電源とを接続可能となり、調光シートAに駆動電圧を給電することが可能となる。
図5は、
図4における切断線b1-b1´における断面図を例示したものである。
図6は、
図4における切断線b2-b2´における断面図を例示したものである。
【0044】
第1の実施形態における調光ユニット100-1の給電構造部8-1の給電部材B1では、透明導電膜2Aに接続する第1導電層6Aの開口部の位置と、透明導電膜2Bに接続する第2導電層6Bの開口部の位置と、が背中合わせの位置関係に設置されていたが、第2の実施形態における調光ユニット100-2の給電構造部8-2の給電部材B2ではでは、第1導電層6Aの開口部の位置と、第2導電層6Bの開口部の位置とを、ずらすことで、平面視で重ならない位置関係に備えられていることが異なる。
【0045】
透明導電膜2A、2Bと導電層6A、6Bの接続面積を多くするためには、第1の実施形態における開口部の配置が有利であるが、調光シートのサイズなど調光ユニットの設計によっては、背中合わせに開口部が配置され、その開口部に導電性接着剤が充填された給電部が存在する場合には、その給電部の周辺に電流集中が起こり、給電される電圧の均一性などに影響が出る場合が考えられる。そのような問題を回避する手段として、背中合わ
せにならない位置に配置することによって、電流分布を均一化し、電圧の均一性の問題を解決することができる。
【0046】
なお、第2の実施形態における材料や寸法などについては、第1の実施形態と同様である。
【0047】
<調光ユニットの製造方法>
調光ユニット100-1の製造方法をについて、
図1~
図3、
図7~
図13を用いて説明する。
本発明の調光ユニットの製造方法は、本発明の調光ユニット100-1の調光シートAの一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置を一対のロール間に挟み込むことで固定する工程と、調光シートAの前記一辺の端部から、先端が剃刀状となっているフィルム剥がしツールFを調光シートAの調光層3に挿入することによって、一対のロール(抑え兼ラミネートロールD)によって固定されている調光シートAの前記一辺の端部から所定の距離だけ内側の位置まで引き剥がすことによって、一対の透明導電フィルム(透明フィルム1上に透明導電膜2が形成されたフィルム)を開く工程と、開かれた一対の透明導電フィルムの透明導電膜2上の調光層3を除去する工程と、一対の透明導電フィルムが開かれた部分の奥の領域に封止樹脂4を充填する工程と、給電部材Bの長手方向にテンションをかけた状態で、調光シートAの一対の透明フィルム1(または透明導電フィルム)を開いた部分の奥の領域に充填された封止樹脂4の中に給電部材Bを挿入する工程と、挿入された給電部材Bを一対の透明フィルム1で挟み込む形にラミネートし、導電性接着剤7と封止樹脂4の仮圧着を行いながら、さらに給電部材Bの調光シートAの外側端部にも封止樹脂4を充填する工程と、給電部材Bと封止樹脂4を挟み込んで、透明フィルム1が平坦化するように一対のロールDでラミネートし、紫外線を照射することにより導電性接着剤7と封止樹脂4を硬化させたのち、調光シートAの不要な部分を切り落とす工程と、を備えている。
【0048】
【0049】
図7は、押さえ兼ラミネートロールDによって必要量の調光シートAが繰り出された状態を示している。
【0050】
図8に示すように、フィルム剥がしツールFで一対の透明導電膜2に挟持された調光層3を、調光シートAの一辺の全体に一律の幅で、押さえ兼ラミネートロールDで押さえられた部分まで剥がす。この時、粘着や吸着などの方法で押さえ兼ラミネートロールDに透明フィルム1を吸着させてもよい。
【0051】
図9では、調光層ふき取りツールGで、調光層3の除去を行う。一般的にはアセトン、エタノール、イソプロピルアルコール等の有機溶剤での十分なふき取りが好適であるが、導電性接着剤との良好な電気的接続を取るためには、透明導電膜2の清浄化が重要である。そのため、必要に応じて、UV洗浄やプラズマ洗浄を施してもよい。
【0052】
図10では、透明導電膜2を有する一対の透明フィルム1(または一対の透明導電フィルム)が開いた部分の奥の領域に、封止樹脂ディスペンスツールHなどを用いて、封止樹脂4を充填する。封止樹脂4を充填することによって、次の工程で給電部材Bを封止樹脂4の中に挿入可能とする。この後、一対の透明フィルム1を貼り合わせた際に給電部材Bの少なくとも一部が封止樹脂4で埋められる量以上の量を充填する。
【0053】
図11では、巻き取りリールに巻いてあった給電部材Bを巻き取りリールから引き出し、両端でテンションをかけた状態で調光シートAの一対の透明フィルム1を開いた部分の奥の領域に充填された封止樹脂4の中に挿入する。この時、導電性接着剤7は、事前に形成されていてもよく、また、リールから給電部材Bに予め、ディスペンサー、インクジェット、印刷などの方法で形成してもよい。
【0054】
図12では、挿入された給電部材Bを一対の透明フィルム1で挟み込む形にラミネートし導電性接着剤7、封止樹脂4の仮圧着を行いながら、さらに給電部材Bの逆端部(調光シートAの外側端部)にも封止樹脂4を施す。
【0055】
図13では、給電部材Bと封止樹脂4を挟み込んで、透明フィルム1が平坦化するように押さえ兼ラミネートロールDでラミネートを行う。最後に、紫外線ランプIで導電性接着剤7と封止樹脂4を硬化させたのち、調光シートAの必要な残部を残して不要な端部をカッターJなどの切断手段を用いて切り落とすことによって、最小幅の給電構造部を備えた調光ユニットを得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B・・・透明フィルム
2A、2B・・・透明導電膜
3・・・調光層
4・・・封止樹脂
5、5A、5B・・・絶縁層
6A、6B・・・導電層
7A、7B・・・導電性接着剤
8-1、8-2・・・給電構造部
100-1、100-2、100´・・・調光ユニット
110・・・調光シート
120・・・調光層
130A、130B・・・電極シート
140A、140B・・・透明電極層
150A、150B・・・透明支持層
160A、160B・・・接続部
161・・・導電性接着剤
162・・・導電テープ
163・・・はんだ
164・・・リード線
200・・・透明板
210・・・接着層
A・・・調光シート
B、B1、B2・・・給電部材
C1、C2・・・配線領域
D・・・抑え兼ラミネートロール
F・・・フィルム剥がしツール
G・・・調光層拭き取りツール
H・・・封止樹脂ディスペンスツール
I・・・紫外線ランプ
J・・・カッター