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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071194
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20230516BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H05K5/02 P
G06K19/077 200
G06K19/077 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183792
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東良 哲平
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB08
4E360AB33
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA11
4E360EC04
4E360EC16
4E360ED12
4E360ED14
4E360FA02
4E360FA12
4E360GA12
4E360GA14
4E360GA29
4E360GA53
4E360GB89
4E360GC04
4E360GC08
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】電子回路基板と保持部材とを組み付ける際の電子回路基板および電子部品の損傷を抑制する。
【解決手段】無線通信装置は、平面視したときの外縁の一部を構成する互いに平行ではない2つの端辺にそれぞれ1つずつ設けられた2つの被係合部を有する電子回路基板と、電子回路基板を保持する保持部材とを備える。保持部材は、電子回路基板に向かって延設されて先端部に爪部を有する第1係合部および第2係合部であって、2つの被係合部に対して爪部によりスナップフィット係合する第1係合部および第2係合部を有する。第1係合部および第2係合部のうちの少なくとも一方の係合部が有する爪部は、爪部と被係合部との係り量が、2つの端辺の交点または2つの端辺を延長した場合の交点に端辺に沿って近づくにつれて減少する係り量減少部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置であって、
無線通信を制御する電子部品が搭載された電子回路基板であって、平面視したときの外縁の一部を構成する互いに平行ではない2つの端辺にそれぞれ1つずつ設けられた2つの被係合部を有する電子回路基板と、
前記電子回路基板と重なって配置されて前記電子回路基板を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記電子回路基板に向かって延設されて先端部に爪部を有する第1係合部および第2係合部であって、前記2つの被係合部に対して前記爪部によりスナップフィット係合する第1係合部および第2係合部を有し、
前記第1係合部および前記第2係合部のうちの少なくとも一方の係合部が有する前記爪部は、前記爪部と前記被係合部との係り量が、前記2つの端辺の交点または前記2つの端辺を延長した場合の交点に前記端辺に沿って近づくにつれて減少する係り量減少部を有する、
無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記第1係合部と前記第2係合部とのうちの少なくとも一方の係合部が有する前記爪部は、前記係り量減少部に対して前記端辺に沿って前記交点から遠い側に位置して前記係り量が一定である係り量一定部を有する、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信装置において、
前記保持部材は、前記第1係合部および前記第2係合部を含む3つ以上の係合部を有し、
前記電子回路基板は、前記電子部品としてコンデンサを有し、
前記3つ以上の係合部うちの前記第1係合部および前記第2係合部は、前記電子回路基板を平面視したときに、他の前記係合部に比べて、前記コンデンサに近い位置に配置されている、無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記電子回路基板は、矩形状の前記外縁を有し、前記2つの被係合部に加えて前記交点に対する対角側に設けられた被係合部を更に有し、
前記保持部材は、
前記第1係合部および前記第2係合部に加えて、前記対角側に設けられた前記被係合部に対して係合する対角係合部を有し、
前記2つの端辺と対向する2つの対向端辺において前記電子回路基板と係合しない、無線通信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の無線通信装置において、
前記第1係合部が有する前記爪部と、前記第2係合部が有する前記爪部とは、いずれも前記係り量減少部を有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記交点から前記各端辺に沿って互いに等距離の位置に配置されている、無線通信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の無線通信装置において、
前記第1係合部が有する前記爪部である第1爪部と、前記第2係合部が有する前記爪部である第2爪部とは、いずれも前記係り量減少部を有し、
前記第1爪部が有する前記係り量減少部における前記交点に近づく方向への単位距離当たりの前記係り量の減少量である減少率と、前記第2爪部が有する前記係り量減少部における前記減少率と、は互いに等しい、無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティシステムにおいて携帯性に優れる無線通信装置が用いられることがある。例えば、特許文献1では、無線通信装置の一例としての無線タグが用いられている。具体的には、入退室管理システムにおいて、入退場管理エリアに設置されている認証を行う管理装置に対し、無線タグの装置固有のタグIDと、ユーザ固有の暗証番号とを含むタグ情報を無線送信するために、無線タグが用いられる。この入退室管理システムにおいては、管理装置は、受信したタグ情報を、予め登録されているIDおよび暗証番号と比較して認証し、認証成功の場合には、部屋の扉のロックを解除する。
【0003】
一般に、無線タグは、無線通信を実行する通信用IC(Integrated Circuit)、コンデンサ、アンテナ素子およびメモリ等が搭載された電子回路基板や電池が樹脂等で形成されたケース内に収容された装置構成を有する。例えば、特許文献2に記載の携帯機1の装置構成に類似する装置構成が採用され得る。特許文献2の装置構成においては、電池ケースは、電池を保持すると共に、爪を有し、かかる爪を基板の外縁にいわゆるスナップフィット係合させることによって基板を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-106570号公報
【特許文献2】特開2004-150184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、電子回路基板の外縁に保持部材の爪をスナップフィットにより係合させることによって保持部材が電子回路基板を保持する構成においては、保持部材の爪を電子回路基板の外縁に係合させようとする際に、電子回路基板が過剰に反ってしまいクラックが発生する、或いは、電子回路基板に搭載されたコンデンサ等の電子部品が損傷してしまうといった問題が起こり得る。そこで、電子回路基板と保持部材とを組み付ける際の電子回路基板および電子部品の損傷を抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置が提供される。この無線通信装置は、無線通信を制御する電子部品が搭載された電子回路基板であって、平面視したときの外縁の一部を構成する互いに平行ではない2つの端辺にそれぞれ1つずつ設けられた2つの被係合部を有する電子回路基板と、前記電子回路基板と重なって配置されて前記電子回路基板を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記電子回路基板に向かって延設されて先端部に爪部を有する第1係合部および第2係合部であって、前記2つの被係合部に対して前記爪部によりスナップフィット係合する第1係合部および第2係合部を有し、前記第1係合部および前記第2係合部のうちの少なくとも一方の係合部が有する前記爪部は、前記爪部と前記被係合部との係り量が、前記2つの端辺の交点または前記2つの端辺を延長した場合の交点に前記端辺に沿って近づくにつれて減少する係り量減少部を有する。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材が有する第1係合部と第2係合部とのうちの少なくとも一方の係合部が有する爪部は、電子回路基板の被係合部との係り量が、交点に近づくにつれて減少する係り量減少部を有するので、両係合部が有する爪部がいずれも係り量減少部を有しない構成に比べて、スナップフィットの際により少ないスナップの変位量で電子回路基板と保持部材とを組み付けることができる。このため、組み付ける際に電子回路基板に加わる力を減少でき、電子回路基板および電子部品の損傷を抑制できる。
(2)上記形態の無線通信装置において、前記第1係合部と前記第2係合部とのうちの少なくとも一方の係合部が有する前記爪部は、前記係り量減少部に対して前記端辺に沿って前記交点から遠い側に位置して前記係り量が一定である係り量一定部を有してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、第1係合部と第2係合部とのうちの少なくとも一方の係合部が有する爪部は、係り量減少部に対して端辺に沿って交点から遠い側に位置する係り量一定部を有するので、両係合部が有する爪部がいずれも係り量減少部を有しない構成と、同程度の保持力で電子回路基板を保持できる。
(3)上記形態の無線通信装置において、前記保持部材は、前記第1係合部および前記第2係合部を含む3つ以上の係合部を有し、前記電子回路基板は、前記電子部品としてコンデンサを有し、前記3つ以上の係合部うちの前記第1係合部および前記第2係合部は、前記電子回路基板を平面視したときに、他の前記係合部に比べて、前記コンデンサに近い位置に配置されていてもよい。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材は、3つ以上の係合部を有しているため、2以下の係合部を有する構成に比べて、保持部材による電子回路基板の保持力を向上できる。加えて、第1係合部および第2係合部は、電子回路基板を平面視した時に、他の係合部に比べてコンデンサに近い位置に配置されているので、第1係合部および第2係合部と2つの被係合部とを係合させる際に、電子回路基板のうちのコンデンサに近い部分における反りを低減できる。このため、電子回路基板と保持部材とを組み付ける際のコンデンサの損傷を抑制できる。
(4)上記形態の無線通信装置において、前記電子回路基板は、矩形状の前記外縁を有し、前記2つの被係合部に加えて前記交点に対する対角側に設けられた被係合部を更に有し、前記保持部材は、前記第1係合部および前記第2係合部に加えて、前記対角側に設けられた前記被係合部に対して係合する対角係合部を有し、前記2つの端辺と対向する2つの対向端辺において前記電子回路基板と係合しなくてもよい。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材は、第1係合部および第2係合部に加えて、対角係合部が被係合部と係合するので、対角係合部を有しない構成と比べて、保持部材による電子回路部品の保持力を向上できる。加えて、保持部材は、2つの端辺と対向する2つの対向端辺において電子回路基板と係合しないので、2つの対向端辺においても電子回路基板と係合する構成に比べて、2つの端辺に設けられた2つの被係合部に第1係合部および第2係合部が係合する際に、より少ないスナップの変位量で係合を実現できる。
(5)上記形態の無線通信装置において、前記第1係合部が有する前記爪部と、前記第2係合部が有する前記爪部とは、いずれも前記係り量減少部を有し、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記交点から前記各端辺に沿って互いに等距離の位置に配置されていてもよい。
この形態の無線通信装置によれば、第1係合部および第2係合部は、交点から各端辺に沿って互いに等距離の位置に配置されているので、第1係合部および第2係合部が被係合部に係合する際に、2つの係合部分のうちの一方に過度に力が加わり、他方には過度に少ない力が加わって係合し難くなることを抑制できる。
(6)上記形態の無線通信装置において、前記第1係合部が有する前記爪部である第1爪部と、前記第2係合部が有する前記爪部である第2爪部とは、いずれも前記係り量減少部を有し、前記第1爪部が有する前記係り量減少部における前記交点に近づく方向への単位距離当たりの前記係り量の減少量である減少率と、前記第2爪部が有する前記係り量減少部における前記減少率と、は互いに等しくてもよい。
この形態の無線通信装置によれば、第1爪部が有する係り量減少部における減少率と、第2爪部が有する係り量減少部における減少率と、は互いに等しいので、第1係合部および第2係合部が被係合部に係合する際に、2つの係合部分のうちの一方に過度に力が加わり、他方には過度に少ない力が加わって係合し難くなることを抑制できる。
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、無線通信装置を備えるセキュリティシステム、無線タグ、および無線通信装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態の無線通信装置としての無線タグの外観構成を示す上面図である。
図2】無線タグの外観形状を示す正面図である。
図3】第2ケース部の構成を示す斜視図である。
図4】第1ケース部に収容された状態の保持部材および電池を示す斜視図である。
図5】第1ケース部から外された状態の保持部材および電子回路基板を示す斜視図である。
図6】第1ケース部から外された状態の保持部材および電子回路基板を示す平面図である。
図7】保持部材の平面図である。
図8】第1端辺と第2端辺との位置関係を示す説明図である。
図9】第1係合部の詳細構成を示す斜視図である。
図10】第1係合部が有する爪部と第1被係合部との係り量を示す説明図である。
図11】第3係合部の詳細構成を示す斜視図である。
図12】第3係合部が有する爪部と第3被係合部との係り量を示す説明図である。
図13】保持部材と電子回路基板とを組み付けるときの様子を示す斜視図である。
図14】第1係合部および第2係合部が係り量一定部および係り量減少部を備えることの効果を説明するための説明図である。
図15】第2実施形態の保持部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.全体構成:
図1は、本開示の一実施形態の無線通信装置としての無線タグ10の外観構成を示す上面図である。図2は、無線タグ10の外観形状を示す正面図である。図1には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が表されている。なお、他の図2図15におけるX軸、Y軸およびZ軸は、いずれも図1のX軸、Y軸およびZ軸に対応する。本実施形態において、「X軸方向」とは、+X方向および-X方向の総称である。同様に、「Y軸方向」とは+Y方向および-Y方向の総称であり、「Z軸方向」とは+Z方向および-Z方向の総称である。
【0010】
無線タグ10は、無線通信を実行可能に構成されており、セキュリティシステムにおいて用いられる。具体的には、本実施形態において、無線タグ10は、住居等の家屋内の異常を検知して報知等を行う、いわゆるホームセキュリティシステムにおいて用いられる。かかるホームセキュリティシステムでは、例えば、玄関近傍に操作盤が設置されており、かかる操作盤に設けられたボタンや操作パネルを、無線タグ10を携帯したユーザが操作することにより、家屋のセキュリティレベルを切り替えることができる。例えば、窓や扉の開閉動作の有無がユーザやセキュリティ会社に報知されるセキュリティレベルと、このような開閉動作の有無が報知されないセキュリティレベルとを相互に切り替えることができる。セキュリティレベルの切り替え操作を行うのが正規のユーザ、すなわち、家屋の住人であることの認証が、無線タグ10を利用して実行される。具体的には、無線タグ10に予め記憶されている認証情報が無線通信によって、操作盤に通知される。操作盤には、ネットワークを介して認証装置が接続されており、無線タグ10から受信された認証情報が認証装置に中継される。認証装置は、受信した認証情報を予め登録されている認証情報を比較することにより、認証を実行する。なお、認証情報としては、例えば、無線タグ10の機器本体固有のIDや、ユーザが予め無線タグ10に記憶させておいたパスワード等の情報が該当する。
【0011】
図1および図2に示すように、無線タグ10は、薄い扁平な略直方体の外観形状を有する。一例として、縦3cm、横3cm、高さ1cmの略直方体の外観形状を有してもよい。無線タグ10は、外殻を形成するケース20の内部に、後述する電子回路基板200や電池90などが収容された構造を有する。図2に示すように、ケース20は、第1ケース部30と第2ケース部40とが、無線タグ10の厚さ方向(Z軸方向)に分解可能に互いに組み付けられて構成されている。第1ケース部30の表面には、操作部31が設けられている。操作部31は、ユーザが無線タグ10に対して何らかの操作を行う場合に用いられる。かかる操作としては、例えば、無線タグ10の動作モードを強制的にスリープモードや、ウェイクアップモードに移行させる操作などが該当する。
【0012】
図3は、第2ケース部40の構成を示す斜視図である。第2ケース部40は、中央が凹状に窪んだ底の浅いカップ状、言い換えるとトレー状の外観形状を有する。本実施形態において、第2ケース部40は、ポリエチレンやポリアミドといった合成樹脂により形成されている。なお、合成樹脂に代えてアルミニウム等の金属や炭素繊維などにより形成されてもよい。第2ケース部40が有する4つの側面43および底面44で囲まれた空間41は、後述する電子回路基板200や電池90等のZ軸方向のおよそ半分を収容する空間として利用される。各側面43には、係合爪42が設けられている。係合爪42は、第1ケース部30と第2ケース部40とが互いに組み付けられる際に用いられる。底面44における1つの角には、Z軸方向に延設されたリブ45が配置されている。第1ケース部30と第2ケース部40とが組み付けられた状態において、リブ45の先端は、後述する保持部材100に接する。これにより、無線タグ10の内部における保持部材100のZ軸方向への位置ずれが抑制される。加えて、第2ケース部40に対して+Z方向の応力が加えられた場合に、底面44が撓むことが抑制される。
【0013】
図4は、第1ケース部30に収容された状態の保持部材100および電池90を示す斜視図である。図5は、第1ケース部30から外された状態の保持部材100および電子回路基板200を示す斜視図である。図5では、保持部材100と電子回路基板200とを互いに弁別容易とするために、電子回路基板200に対してのみ斜線のハッチングを付している。図6は、第1ケース部30から外された状態の保持部材100および電子回路基板200を示す平面図である。図6では、互いに組み付けられた保持部材100および200を+Z方向に見た平面図を示している。図7は、保持部材100の平面図である。図7では、保持部材100を+Z方向に見た平面図を示している。また、図7では、後述の第1電極191および第2電極192が省略されている。
【0014】
図4に示すように、第1ケース部30は、第2ケース部40と同様に、中央に凹部を有するカップ状(トレー状)の外観形状を有する。かかる凹部は、無線タグ10の内部において、電子回路基板200と保持部材100と電池90を収容するための収容空間の一部を形成する。第1ケース部30は、主部材32と、弾性部材33とを備える。
【0015】
主部材32は、中央凹部を形成する窪みが形成されたカップ状(トレー状)の外観形状を有する。主部材32は、第2ケース部40と同様に合成樹脂により形成されている。主部材32における外周縁よりも若干内側の位置には、-Z方向に突出する周回壁部34が設けられている。第1ケース部30と第2ケース部40とが組み付けられた状態において、周回壁部34における第2ケース部40の係合爪42と対応する4つの位置には、それぞれ被係合部35が設けられている。被係合部35は、第2ケース部40の係合爪42と係合可能に構成されている。
【0016】
図4に示す弾性部材33は、主部材32の内側表面を覆うカップ状の外観形状を有する。弾性部材33は、保持部材100を全周に亘って囲むように構成されている。本実施形態において、弾性部材33は、ブチルゴムにより形成されている。なお、ブチルゴムに限らず、シリコンゴムや、天然ゴムなど、任意の種類の弾性材料により形成されてもよい。弾性部材33は、外部から無線タグ10に加えられた衝撃を吸収し、電子回路基板200や電池90に衝撃が伝わることを抑制すると共に、第1ケース部30と第2ケース部40との境界部分のシール部材としても機能する。
【0017】
電池90は、本実施形態では、いわゆるボタン型電池(「コイン型電池」とも呼ばれる)に相当する。本実施形態において、電池90の径方向は、X-Y平面と平行である。電池90の厚さ方向はZ軸方向と平行である。電池90は、後述する電子回路基板200に搭載されている電子部品に電力を供給する。すなわち、本実施形態において、無線タグ10は、いわゆるアクティブリーダ方式の無線タグに相当する。
【0018】
保持部材100は、-Z側において電池90を収容して保持すると共に、+Z側において電子回路基板200と係合して電子回路基板200を保持する。図5に示すように、保持部材100は、無線タグ10の厚さ方向、すなわちZ軸方向に見て略矩形の平面形状を有する。図4ないし図6に示すように、保持部材100は、電池収容部101と、第1電極191と、第2電極192と、第1固定爪111と、第2固定爪112と、第1角部121と、第2角部122と、第1係合部130と、第2係合部140と、第3係合部150と、第4係合部160とを備える。
【0019】
図5に示すように、電池収容部101は、保持部材100の-Z方向の中央に形成された平面視略円形状の凹部として構成されている。電池収容部101は、電池90を収容する。電池収容部101の側面の一部には、第1開口171が形成されている。第1開口171には、第1電極191が配置されている。第1電極191は、電池90のマイナス極に接触する。電池収容部101の底部(+Z方向の端部)には、第2開口172が形成されている。第2開口172には、第2電極192が設けられている。第2電極192は、電池90のプラス極に接触する。保持部材100における電池収容部101の周囲には、第1固定爪111と第2固定爪112とが設けられている。これら2つの固定爪111、112は、電池90が電池収容部101に収容された状態において、電池90の-Z方向の端面の外縁近傍を+Z方向に押さえる。これにより、電池90の-Z方向への位置ずれが抑制される。第1角部121および第2角部122は、電池収容部101の一部を形成する。これら2つの角部121、122は、電池90を挟んで互いに対向する位置に設けられている。2つの角部121、122は、それぞれ、電池90の側面に接しており、X-Y平面と平行な方向に沿って他方の角部に向かって電池90に若干の応力を加える。このような構成により、電池90のX-Y方向に沿った位置ずれが抑制される。
【0020】
図6および図7に示すように、4つの係合部130、140、150、160は、後述する電子回路基板200の4つの被係合部(被係合部230、240、250、260)にそれぞれ係合する。このように4つの係合部130~160が4つの被係合部230~260と係合することにより、保持部材100と電子回路基板200とは互いに重なるように配置されて互いに組み付けられる。4つの係合部130~160は、いずれも電子回路基板200と対向する面、すなわち、-Z方向の面から電子回路基板200に向かって(-Z方向に)延設されている。保持部材100は、Z軸方向に見て略矩形の外縁を有している。換言すると、保持部材100は、平面視略矩形の外形を有する。そして、4つの係合部130~160は、この外縁を構成する略矩形の各端辺に1つずつ配置されている。各係合部130~160は、基部と爪部とを備える。具体的には、第1係合部130は、基部131と爪部132とを備える。同様に、第2係合部140は、基部141と爪部142とを備える。第3係合部150は、基部151と爪部152とを備える。第4係合部160は、基部161と爪部162とを備える。各基部131~161は、いずれも保持部材100における-Z方向の面から-Z方向に突出した柱状形状を有する。各爪部132~162は、各基部131~161の-Z方向の端部に近い位置(先端部)において、各基部131~161が設けられた端辺とは対向する端辺に向かって突出した構成を有する。本実施形態では、第1係合部130と第2係合部140とは互いに同様な構成を有する。また、第3係合部150と第4係合部160とは互いに同様な構成を有する。但し、第1係合部130および第2係合部140と、第3係合部150および第4係合部160とは、互いに異なる構成を有する。4つの係合部130~160の詳細構成については、後述する。
【0021】
電子回路基板200は、複数の部品が搭載された板状部材であり、平面視略矩形の外縁を有する。図6に示すように、電子回路基板200の-Z方向の面には、IC(Integrated Circuit)チップ211、コンデンサ212、アンテナ素子213、その他図示しない配線や素子を含む電子回路が配置されている。ここで、コンデンサ212は、平面視したときの電子回路基板200の一つの角部(第1角部201)の近傍に配置されている。コンデンサ212は、比較的剛性が低く、外力が入力された場合に損傷し易い。
【0022】
図6に示すように、電子回路基板200は、第1被係合部230と、第2被係合部240と、第3被係合部250と、第4被係合部260とを備える。電子回路基板200は、保持部材100と同様に、平面視略矩形の外形を有する。そして、4つの被係合部230~260は、この外縁を構成する略矩形の各端辺に1つずつ配置されている。具体的には、第1被係合部230は、第1端辺L1に配置されている。同様に第2被係合部240は第2端辺L2に、第3被係合部250は第3端辺L3に、第4被係合部260は第4端辺L4に、それぞれ配置されている。第1被係合部230は、保持部材100の第1係合部130と係合する。同様に、第2被係合部240は保持部材100の第2係合部140に、第3被係合部250は保持部材100の第3係合部150に、第4被係合部260は保持部材100の第4係合部160に、それぞれ係合する。4つの被係合部230~260は、いずれも、各端辺から略垂直に窪んだ凹部と、かかる凹部に対して内側に位置する電子回路基板200の表面の一部により構成されている。かかる表面の一部には、後述のように、各係合部130~160の各爪部132~162が係合する。
【0023】
コンデンサ212は、第1端辺L1と第2端辺L2とに挟まれた第1角部201の近傍に配置されている。したがって、第1被係合部230および第2被係合部240は、他の係合部250、260に比べて、コンデンサ212に近い位置に配置されている。ICチップ211は、第3端辺L3と第4端辺L4とに挟まれた第2角部202の近傍に配置されている。第1角部201と第2角部202とは、互いに対角の位置関係にある。
【0024】
図8は、第1端辺L1と第2端辺L2との位置関係を示す説明図である。図8では、電子回路基板200における第1角部201近傍部分を拡大して示し、その他の部分を省略している。また、図8では、保持部材100のうちの第1係合部130および第2係合部140のみを、電子回路基板200の一部に加えて示している。
【0025】
第1端辺L1は、X軸に沿った辺である。第2端辺L2は、Y軸に沿った辺である。図8に示すように、本実施形態では、第1端辺L1と第2端辺L2とは互いに直接交わっていない。第1端辺L1と第2端辺L2とは、X軸とY軸とにそれぞれ交差する方向に延びる接続部L10を介して互いに接続されている。しかし、第1端辺L1を延長した仮想線L1aと、第2端辺L2を延長した仮想線L2aとは互いに交わる。そして、この仮想線L1aと仮想線L2aとの交点P1から第1係合部130までの第1端辺L1に沿った距離x1と、交点P1から第2係合部140までの第2端辺L2に沿った距離y1とは、互いに等しい。
【0026】
A2.係合部の詳細構成:
図9は、第1係合部130の詳細構成を示す斜視図である。図9では、第1係合部130のうちの-Z方向の端部のみを示し、+Z方向の一部を省略している。図9に示すように、基部131は、+Z方向に見て、X軸方向が長辺となりY軸方向が短辺となる略長方形の外観形状を有する。基部131は、第1被係合部230の窪み(凹部)に収容される。爪部132は、基部131における-Z方向の端部から-Y方向に突出している。爪部132は、第1被係合部230に係り合う。具体的には、第1被係合部230の窪みよりも内側にある電子回路基板200の表面に引っ掛かる。爪部132は、係り量一定部133と、係り量減少部134とを備える。係り量一定部133では、被係合部230との係り量が、X軸方向に沿って(第1端辺L1に沿って)一定である。係り量減少部134は、第1被係合部230との係り量が、+X方向に向かうにつれて次第に減少する。
【0027】
図10は、第1係合部130が有する爪部132と第1被係合部230との係り量d1を示す説明図である。図10では、第1係合部130と第1被係合部230との係り合った部分のみを拡大して示し、保持部材100および電子回路基板200におけるその他の部分は省略されている。本実施形態において係り量d1とは、Z軸方向に見て、すなわち、保持部材100と電子回路基板200との重なる方向に見て、爪部132と第1被係合部230との重複部分のY軸方向の長さを意味する。図10に示すように、係り量一定部133の係り量daは、X軸方向に沿って、換言すると、第1端辺L1に沿って交点P1に近づく方向において一定である。他方、係り量減少部134の係り量dbは、係り量一定部133と接する部分において最大であり、+X方向に向かうにつれて、換言すると、第1端辺L1に沿って交点P1に近づくにつれて減少する。
【0028】
第2係合部140の構成は、90°向きが異なっている点を除き、第1係合部130と同様である。すなわち、第2係合部140の爪部142は、係り量一定部と係り量減少部とを備える。そして、爪部142の係り量減少部の係り量は、図6に示すように、係り量一定部と接する部分において最大であり、+Y方向に向かうにつれて、換言すると、第2端辺L2に沿って交点P1に近づくにつれて減少する。
【0029】
本実施形態では、第1係合部130が有する係り量減少部134における交点P1に近づく方向への単位距離当たりの係り量dbの減少量(以下、「減少率」と呼ぶ)と、第2係合部140が有する係り量減少部における減少率とは、互いに等しい。
【0030】
図11は、第3係合部150の詳細構成を示す斜視図である。図11では、第3係合部150のうちの-Z方向の端部のみを示し、+Z方向の一部を省略している。第3係合部150の基部151は、図9に示す第1係合部130の基部131と同様な構成を有する。基部151は、第3被係合部250の窪み(凹部)に収容される。爪部152は、基部151における-Z方向の端部から-Y方向に突出している。爪部152は、第3被係合部250に係り合う。具体的には、第3被係合部250の窪みよりも内側にある電子回路基板200の表面に引っ掛かる。爪部152は、第1係合部130の爪部132とは異なり、係り量減少部が省略され、係り量一定部153のみから成る。
【0031】
図12は、第3係合部150が有する爪部152と第3被係合部250との係り量d2を示す説明図である。図12では、第3係合部150と第3被係合部250との係り合った部分のみを拡大して示し、保持部材100および電子回路基板200におけるその他の部分は省略されている。本実施形態において係り量d2とは、Z軸方向に見て、すなわち、保持部材100と電子回路基板200との重なる方向に見て、爪部152と第1被係合部230との重複部分のY軸方向の長さを意味する。図12に示すように、爪部152の係り量d2は、係り量一定部153のY軸方向の長さdcに等しい。そして、この係り量d2は、爪部152におけるX軸方向のいずれの位置において一定である。
【0032】
A3.保持部材100と電子回路基板200との組み付け方法:
図13は、保持部材100と電子回路基板200とを組み付けるときの様子を示す斜視図である。保持部材100と電子回路基板200とを組み付ける際には、まず、電子回路基板200の第2角部202を保持部材100に近づけ、第3被係合部250と第3係合部150とを係合させ、第4被係合部260と第4係合部160とを係合させる。このとき、第1被係合部230および第2被係合部240は係合していないため、電子回路基板200は、X軸方向またはY軸方向にずれる余地があり、第3係合部150および第4係合部160がスナップフィットする際の変位量(スナップ量)は、比較的小さい。したがって、このときに電子回路基板200に対して第3係合部150および第4係合部160から受ける応力(反力)は小さい。
【0033】
第3被係合部250および第4被係合部260が係合された後、電子回路基板200において第1角部201側を保持部材100に近づけていく。そして、第1角部201を保持部材100側へと押し込むことにより、第1係合部130および第2係合部140がスナップフィットにより、被係合部230および第2被係合部240に係合することとなる。このようにして、保持部材100と電子回路基板200とが互いに組み付けられる。
【0034】
A4.効果:
図14は、第1係合部130および第2係合部140が係り量一定部および係り量減少部を備えることの効果を説明するための説明図である。図14では、第1角部201近傍における保持部材100および電子回路基板200を模式的に示している。第1係合部130と第2係合部140との間の最短距離は、爪部132において交点P1に最も近い位置と、爪部142において交点P1に最も近い位置との間の距離M1が該当する。第1係合部130は、係り量減少部134を有しており、係り量減少部134は、交点P1に近づくにつれて係り量が減少するため、爪部132において交点P1に最も近い位置とは、係り量減少部134において最も+Y方向の位置を意味する。同様に、爪部142において交点P1に最も近い位置とは、係り量減少部144において最も+X方向の位置を意味する。この距離M1は、図14において破線で示す距離M2よりも小さい。この距離M2は、係り量減少部134および144が無く、第1係合部130および第2係合部140が第3係合部150および第4係合部160と同様な構成を有する場合の第1係合部130と第2係合部140との最短距離を意味する。
【0035】
このように第1係合部130および第2係合部140が係り量減少部134、144を備えることにより、第1係合部130と第2係合部140との間の最短距離を大きくできる。このため、図13に示すように、第3被係合部250および第4被係合部260が第3係合部150および第4係合部160に係合した状態で、第1角部201を押下して第1係合部130および第2係合部140を第1被係合部230および第2被係合部240に係合させようとする際に、第1係合部130および第2係合部140のスナップ量をより小さくしてそれぞれ係合させることができる。このため、第1係合部130および第2係合部140をスナップフィットさせるために電子回路基板200に加える力を抑制でき、電子回路基板200が反ってしまい、電子回路基板200自体或いは電子部品が損傷することを抑制できる。特に、剛性が弱く、且つ、第1角部201の近傍に配置されており第1角部201の反りの影響を受け易いコンデンサ212についても、損傷を抑制できる。
【0036】
また、第1係合部130および第2係合部140がいずれも係り量一定部133、143を備えることにより、第1係合部130および第2係合部140における係り量d1の最大値は、第3係合部150および第4係合部160における係り量d2の最大値と同程度にできる。これにより、保持部材100は、第1係合部130および第2係合部140が第3係合部150および第4係合部160と同様に係り量減少部を有しない構成と同程度の保持力で、電子回路基板200を保持できる。
【0037】
以上説明した第1実施形態の無線タグ10によれば、第1係合部130が有する爪部132と第2係合部が有する爪部142は、電子回路基板200の被係合部230、240との係り量が、交点P1に近づくにつれて減少する係り量減少部134および係り量減少部144を有するので、両係合部130、140が有する爪部132、142がいずれも係り量減少部134、144を有しない構成に比べて、スナップフィットの際により少ないスナップの変位量で電子回路基板200と保持部材100とを組み付けることができる。このため、組み付ける際に電子回路基板200に加わる力を減少でき、電子回路基板200および電子部品の損傷を抑制できる。
【0038】
また、第1係合部130と第2係合部140が有する爪部132、142は、係り量減少部134、144に対して端辺に沿って交点から遠い側に位置する係り量一定部133、143を有するので、保持部材100は、両係合部130、140が有する爪部132、142がいずれも係り量減少部134、144を有しない構成と、同程度の保持力で電子回路基板200を保持できる。
【0039】
保持部材100は、4つの係合部130~160を有しているため、2以下の係合部を有する構成に比べて、保持部材100による電子回路基板200の保持力を向上できる。加えて、第1係合部130および第2係合部140は、電子回路基板200を平面視した時に、他の係合部150、160に比べてコンデンサ212に近い位置に配置されているので、第1係合部130および第2係合部140と2つの被係合部230、240とを係合させる際に、電子回路基板200のうちのコンデンサ212に近い部分(第1角部201)における反りを低減できる。このため、電子回路基板200と保持部材100とを組み付ける際のコンデンサ212の損傷を抑制できる。
【0040】
また、第1係合部130および第2係合部140は、交点P1から各端辺L1、L2に沿って互いに等距離の位置に配置されているので、第1係合部130および第2係合部140が被係合部230、240に係合する際に、2つの係合部分のうちの一方に過度に力が加わり、他方には過度に少ない力が加わって係合し難くなることを抑制できる。
【0041】
また、第1係合部130が有する爪部132(第1爪部)における係り量減少部134の減少率と、第2係合部140が有する爪部142(第2爪部)における係り量減少部144の減少率と、は互いに等しいので、第1係合部130および第2係合部140が被係合部230、240に係合する際に、2つの係合部分のうちの一方に過度に力が加わり、他方には過度に少ない力が加わって係合し難くなることを抑制できる。
【0042】
B.第2実施形態:
図15は、第2実施形態の保持部材100aを示す平面図である。図15では、図7と同様に、保持部材100aを+Z方向に見た平面図を示している。なお、理解を助けるため、図15では、交点P1も合わせて示している。第2実施形態の無線タグ10は、保持部材100に代えて保持部材100aを備える点において第1実施形態の無線タグ10と異なる。第2実施形態の無線タグ10におけるその他の構成は、第1実施形態の無線タグ10と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
第2実施形態の保持部材100aは、第3係合部150および第4係合部160に代えて、第5係合部180を備える点において、第1実施形態の保持部材100と異なる。保持部材100aにおけるその他の構成は、保持部材100と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
第5係合部180は、保持部材100aにおいて、交点P1と対角側に設けられている。具体的には、電子回路基板200における第3端辺L3および第4端辺L4に挟まれた第2角部202における角の端部に設けられている。第5係合部180は、第1実施形態の第3係合部150および第4係合部160と同様に、基部181と、係り量減少部を有しない爪部182とを備える。第5係合部180は、第1係合部130および第2係合部140と同様に、電子回路基板200の被係合部と係合する。第5係合部180と係合する被係合部は、図6に示す第2角部202の角の端部が該当する。そして、図15に示すように、第3係合部150および第4係合部160は、省略されているため、保持部材100aと電子回路基板200とは、3つの係合部130、140、180と対応する被係合部(第1被係合部230、第2被係合部240、および第2角部202の角の端部)とが係り合うことにより、互いに組み付けられる。このとき、保持部材100aは、第1端辺L1および第2端辺L2と対向する2つの端辺(対向端辺)において、電子回路基板200と係合しない。
【0045】
このような構成における保持部材100aと電子回路基板200との組み付け手順は、図13を用いて説明した第1実施形態の手順と同様である。すなわち、まず、第5係合部180と第2角部202の角の端部とが係り合わされ、その後、第1角部201を保持部材100a側に押すことにより、第1係合部130と第1被係合部230とを係合させ、第2係合部140と第2被係合部240とを係合させる。
【0046】
ここで、第2実施形態においては、第1係合部130を被係合部230に係合させる際に、第1係合部130に対して対向する位置には、係合部が存在しない。このため、第1係合部130を被係合部230に係合させる際に電子回路基板200は、-Y方向に若干変位し易い。このため、第1係合部130のスナップ時の変位量を小さくできる。同様に、第2係合部140を第2被係合部240に係合させる際に、電子回路基板200は、-X方向に若干変位し易い。このため、第2係合部140のスナップ時の変位量を小さくできる。これらのことから、第1角部201を保持部材100aに押し付けて、第1係合部130および第2係合部140を、第1被係合部230および第2被係合部240に係合させる際に電子回路基板200に加えられる力を抑制できる。
【0047】
以上説明した第2実施形態の無線タグ10は、第1実施形態の無線タグ10と同様な効果を有する。加えて、保持部材100aは、第1係合部130および第2係合部140に加えて、対角係合部180が電子回路基板200の被係合部と係合するので、対角係合部180を有しない構成と比べて、保持部材100aによる電子回路基板200の保持力を向上できる。加えて、保持部材100aは、2つの端辺L1、L2と対向する2つの対向端辺(L3、L4)において電子回路基板200と係合しないので、2つの対向端辺L3、L4においても電子回路基板200と係合する構成に比べて、2つの端辺L1、L2に設けられた2つの被係合部230、240に第1係合部130および第2係合部140が係合する際に、より少ないスナップの変位量で係合を実現できる。
【0048】
C.他の実施形態:
(C1)各実施形態において、第1係合部130と第2係合部140とは、いずれも各爪部132、142において、係り量減少部134、144を有していたが、本開示はこれに限定されない。第1係合部130と第2係合部140とのうちのいずれか一方のみが係り量減少部を有する構成としてもよい。かかる構成においても、第1係合部130と第2係合部140との最短距離を長くでき、スナップフットの際のスナップ量を低減できる。これにより、各実施形態と同様な効果を奏し得る。
【0049】
(C2)各実施形態では、第1端辺L1と第2端辺L2とは、X軸とY軸とにそれぞれ交差する方向に延びる接続部L10を介して互いに接続されていたが、本開示はこれに限定されない。第1端辺L1と第2端辺L2とが直接互いに接続する構成であってもよい。かかる構成においては、第1端辺L1と第2端辺L2との交点、すなわち接続点が各実施形態の交点P1に対応するものとして、第1係合部130および第2係合部140の係り量減少部134、144の形状が特定されることとなる。
【0050】
(C3)各実施形態では、第1係合部130および第2係合部140の爪部132、142は、係り量一定部133、143を有していたが、本開示はこれに限定されない。係り量一定部133、143を省略して、爪部132、142をすべて係り量減少部により構成してもよい。かかる構成においても、交点P1に近づくにつれて係り量が減少するように係り量減少部を形成することにより、各実施形態と同様な効果を奏する。
【0051】
(C4)各実施形態では、コンデンサ212は、第1角部201に配置されていたが、第1角部201に限らず、他の部位、例えば、第2角部202に配置されていてもよい。同様に、ICチップ211およびアンテナ素子213の配置位置も、図6に示す位置に限定されるものではない。
【0052】
(C5)各実施形態では、第1係合部130および第2係合部140は、交点P1から各端辺L1、L2に沿って互いに等距離の位置に配置されていたが、それぞれ異なる距離の位置に配置されていてもよい。
【0053】
(C6)各実施形態では、第1係合部130が有する爪部132(第1爪部)における係り量減少部134の減少率と、第2係合部140が有する爪部142(第2爪部)における係り量減少部144の減少率と、は互いに等しかったが、それぞれ異なっていてもよい。
【0054】
(C7)各実施形態における無線タグ10の構成は、あくまで一例であり、様々に変更可能である。例えば、弾性部材33を省略してもよい。かかる構成においては、保持部材100の外周縁が主部材32の内側面に接する構成としてもよい。また、無線タグ10は、ホームセキュリティシステムに適用されていたが、他の任意の種類のセキュリティシステムに適用されてもよい。例えば、企業において居室や倉庫や機械室等を監視するためのセキュリティシステムに適用されてもよい。また、無線タグ10に限らず、携帯性を有する任意の種類の無線通信装置に本開示を適用してもよい。
【0055】
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…無線タグ、20…ケース、30…第1ケース部、31…操作部、32…主部材、33…弾性部材、34…周回壁部、35…被係合部、40…第2ケース部、41…空間、42…係合爪、43…側面、44…底面、45…リブ、90…電池、100…保持部材、100a…保持部材、101…電池収容部、111…第1固定爪、112…第2固定爪、121…第1角部、122…第2角部、130…第1係合部、131…基部、132…爪部、133…係り量一定部、134…係り量減少部、140…第2係合部、141…基部、142…爪部、143…係り量一定部、144…係り量減少部、150…第3係合部、151…基部、152…爪部、153…係り量一定部、160…第4係合部、161…基部、162…爪部、171…第1開口、172…第2開口、180…第5係合部(対角係合部)、191…第1電極、192…第2電極、200…電子回路基板、201…第1角部、202…第2角部、211…ICチップ、212…コンデンサ、213…アンテナ素子、230…第1被係合部、240…第2被係合部、250…第3被係合部、260…第4被係合部、L1…第1端辺、L10…接続部、L1a…仮想線、L2…第2端辺、L2a…仮想線、L3…第3端辺、L4…第4端辺、M1…距離、M2…距離、P1…交点、d1…係り量、d2…係り量、da…係り量、db…係り量、x1…距離、y1…距離
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