(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071364
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】螺旋管の製管装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20230516BHJP
F16L 1/00 20060101ALN20230516BHJP
F16L 11/16 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184092
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 彬
(72)【発明者】
【氏名】山崎 政浩
(72)【発明者】
【氏名】乙川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜幸
【テーマコード(参考)】
3H111
4F211
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111CA06
3H111EA17
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ15
4F211SJ21
4F211SP04
4F211SP10
(57)【要約】
【課題】ブレーキ機構を有する自走式の製管装置において、螺旋管の管端部を構成する帯状部材の損傷を防止しながら、ブレーキ力を付与する。
【解決手段】製管装置10によって、帯状部材10を螺旋状の巻回方向に沿って巻回して螺旋管9を形成する。製管装置10の装置フレーム11に設けた駆動部12の駆動ローラ13によって、帯状部材90の未製管部分90bを挟み付けて管端部9eへ向けて斜めに押し出す。装置フレーム11に設けたブレーキ機構20を管端部9eと摺擦させる。ブレーキ機構20の外周ブレーキ部材40の内周側面41は、内周ブレーキ部材30の対向面31と対向する中央面部分41cと、対向面31よりも推進方向の両側へ張り出す一対の張出面部分41aを有し、一対の張出面部分41aに対して中央面部分41cが外周側へ凹んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を螺旋状の巻回方向に沿って巻回して、前記帯状部材の一周違いの隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋管を製管する製管装置であって、
前後方向を前記巻回方向へ向けて、前記製管中の螺旋管の延伸方向の先端側の管端部に、前記前後方向へ移動可能に設けられた装置フレームと、
前記管端部の内側に配置されるように前記装置フレームに設けられた少なくとも一対の駆動ローラを含み、前記帯状部材の未製管部分を挟み付けて前記管端部へ向けて斜めに押し出す駆動部と、
前記装置フレームに取り付けられて、前記管端部と摺擦されるブレーキ機構と、
を備え、前記ブレーキ機構が、前記管端部の内周側に配置された内周ブレーキ部材と、前記内周ブレーキ部材と対向するように前記管端部の外周側に配置された外周ブレーキ部材とを含み、
前記外周ブレーキ部材における内周側面が、前記内周ブレーキ部材の対向面と対向する中央面部分と、前記対向面よりも前記前後方向の両側へ張り出す一対の張出面部分を有し、前記一対の張出面部分に対して前記中央面部分が外周側へ凹んでいることを特徴とする製管装置。
【請求項2】
前記内周側面が、円弧状の凹曲面であることを特徴とする請求項1に記載の製管装置。
【請求項3】
前記凹曲面の曲率半径が、前記螺旋管の目標製管半径より小さいことを特徴とする請求項2に記載の製管装置。
【請求項4】
前記内周側面の前記前後方向に沿う長さが、前記対向面の前記前後方向に沿う長さの1.2倍以上であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材から螺旋管を製造する製管装置に関し、特に製管に伴って推進される所謂自走式の製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の更生方法として、製管装置を用いて、既設管の内周に沿って帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回するとともに、該帯状部材の一周違いの隣接する縁どうしを凹凸嵌合にて接合して、螺旋管状の更生管を構築することが知られている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1の製管装置は、複数のリンク及びローラが交互かつ環状に並べられたリンクローラからなる環状の内周規制体を有している。製管済みの更生管(螺旋管)の延伸方向の先端側の管端部が、リンクローラの外周にぴったりと巻き付けられている。これによって、管端部の管径及び断面形状が、内周側から規制されている。一方で、製管装置の大型化を免れず、施工中の流水断面積が小さくなってしまう。また、更生管の管径や断面形状を変えるには、リンクローラの周長を調節したり、リンクローラ全体を取り換えたりする必要があり、作業が煩雑である。
【0004】
特許文献2の製管装置は、リンクローラ等の内周規制体を有しない非内周規制構造となっている。このため、製管装置が小型化され、施工中の流水断面積が小さくなるのを回避できる。特許文献2の製管装置は、装置フレームと、一対の駆動ローラ(推進反力付与部)と、ブレーキ機構(抵抗力付与部)を備えている。装置フレームが、製管中の更生管(螺旋管)の管端部に配置されている、装置フレームに駆動ローラ及びブレーキ機構が設けられている。一対の駆動ローラによって、帯状部材における前記管端部に続く未製管の後続帯部を挟み付け、管端部へ向けて斜めに押し込む。これによって、前記後続帯部と管端部との隣接する縁どうしが凹凸嵌合によって接合されて製管が進むとともに、製管装置が螺旋巻回方向へ推進(自走)される。
【0005】
ブレーキ機構は、管端部の内周側に配置された内周ブレーキ部材と、管端部の外周側に配置された外周ブレーキ部材とを含む。これら内外のブレーキ部材によって管端部を挟み付ける。これによって、前記推進に対するブレーキ力(摩擦抵抗)が製管装置に付与される。内外のブレーキ部材による挟み付け度合いを調整することによって、ブレーキ力を増減できる。ブレーキ力を大きくすると、一対の駆動ローラによる帯状部材の送り込み量が製管装置の推進量より大きくなり、更生管(螺旋管)が拡径製管される。逆にブレーキ力を小さくすると、更生管(螺旋管)が縮径製管される。
【0006】
更生管を構成する帯状部材の外周側部には、通常、凹凸嵌合用の隆起及び凸条やリブが設けられている。そのうち管端部の縁に臨む隆起とリブとの間の溝に外周ブレーキ部材を差し込んで係止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2008/075681(
図4)
【特許文献2】国際公開WO2016/175243(
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前掲特許文献2の製管装置において、製管対象の帯状部材における隆起とリブとの間の溝が狭いと、外周ブレーキ部材と管端部との接触面積が小さくなり、管端部を構成する帯状部材が損傷したり、ブレーキが不安定になったりするおそれがある。また、ブレーキ機構の前後では、帯状部材が圧縮、膨張変位によって削られる等の損傷を受けるおそれがある。さらに、外周ブレーキ部材が何らの外力(外乱)を受けて回転変位や位置変位を起こした場合、帯状部材が局所的に集中荷重を受けて損傷するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、ブレーキ機構を有する自走式の製管装置において、螺旋管の管端部を構成する帯状部材の損傷を防止しながら、ブレーキ力を確実に付与することができるブレーキ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、帯状部材を螺旋状の巻回方向に沿って巻回して、前記帯状部材の一周違いの隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋管を製管する製管装置であって、
前後方向を前記巻回方向へ向けて、前記製管中の螺旋管の延伸方向の先端側の管端部に、前記前後方向へ移動可能に設けられた装置フレームと、
前記管端部の内側に配置されるように前記装置フレームに設けられた少なくとも一対の駆動ローラを含み、前記帯状部材の未製管部分を挟み付けて前記管端部へ向けて斜めに押し出す駆動部と、
前記装置フレームに取り付けられて、前記管端部と摺擦されるブレーキ機構と、
を備え、前記ブレーキ機構が、前記管端部の内周側に配置された内周ブレーキ部材と、前記内周ブレーキ部材と対向するように前記管端部の外周側に配置された外周ブレーキ部材とを含み、
前記外周ブレーキ部材における内周側面が、前記内周ブレーキ部材の対向面と対向する中央面部分と、前記対向面よりも前記前後方向の両側へ張り出す一対の張出面部分を有し、前記一対の張出面部分に対して前記中央面部分が外周側へ凹んでいることを特徴とする。
【0010】
当該製管装置によれば、外周ブレーキ部材の張り出し構造によって、外周ブレーキ部材における管端部との接触可能範囲ないしは接触可能面積が拡大される。また、外周ブレーキ部材の凹曲面構造によって、外周ブレーキ部材の内周側面の中央面部分だけが管端部と接触するのが回避される。好ましくは、一対の張出面部分がそれぞれ管端部と接触されるようにできる。さらに、これら一対の張出面部分の間においては、内周ブレーキ部材の対向面が管端部と接触されるようにできる。これによって、管端部が、少なくとも3点においてブレーキ機構と接触される。この結果、ブレーキ力を効果的に付与できるとともに、管端部における局所的な集中荷重を緩和して、管端部を構成する帯状部材の損傷を防止できる。
また、ブレーキ機構が何らかの外力によって回転変位や位置変位を起こした場合、管端部の広い範囲が変形されることによって、管端部における局所的な集中荷重を一層確実に緩和することができる。
ブレーキ機構を締め込むと、外周ブレーキ部材の中央面部分と内周ブレーキ部材の対向面との間では、管端部を構成する帯状部材が圧縮されて薄肉化される。その前後の張出面部分上においては、帯状部材が相対的に膨張状態となる。一方、張出面部分上における帯状部材は、内周側へだけ解放されているために内周側へだけ変形可能であり、外周側へは張出面部分によって変形を規制されている。言い換えると、張出面部分上における帯状部材の膨張等の変形力を内周側へ逃がすことができる。したがって、帯状部材が、前記圧縮の前後において外周ブレーキ部材に食い込んで削られるのを防止できる。また、内周ブレーキ部材の対向面は、ある程度の面積になるようにできるから、帯状部材の膨張などの変形力を広い範囲に分散させることができる。したがって、帯状部材が内周ブレーキ部材によって削られるのを防止できる。
【0011】
前記内周側面が、円弧状の凹曲面であることが好ましい。これによって、ブレーキ力を効果的に付与できるとともに、管端部を構成する帯状部材の損傷を防止できる。
【0012】
前記凹曲面の曲率半径が、前記螺旋管の目標製管半径より小さいことが好ましい。これによって、ブレーキ力を一層効果的に付与できる。
【0013】
前記内周側面の前記前後方向に沿う長さが、前記対向面の前記前後方向に沿う長さの1.2倍以上であることが好ましい。
これによって、ブレーキ力を確実に付与することができるとともに、管端部における局所的な集中荷重を一層確実に緩和することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブレーキ機構を有する自走式の製管装置において、螺旋管の管端部を構成する帯状部材の損傷を防止できるとともに、ブレーキ力を確実に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る製管装置によって更生管をライニングすることによって更生施工中の既設管の管軸に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、前記更生施工中の製管装置の側面図である。
【
図4】
図4は、前記製管装置によって製管中の更生管の解説斜視図である。
【
図6】
図6は、ブレーキ機構を締め込んだ状態の側面図である。
【
図7】
図7は、ブレーキ機構を更にきつく締め込んだ状態の側面図である。
【
図8】
図8は、ブレーキ機構に外力(外乱)が加えられた状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、老朽化した既設管1の内周に更生管9がライニングされることによって、既設管1が更生されている。更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管であるが、本発明は、これに限定されず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管、トンネルなどであってもよい。
【0017】
図1及び
図2に示すように、更生管9は、帯状部材90(プロファイル)を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている。帯状部材90は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂からなり、一定の断面形状に形成されている。
【0018】
図3に例示するように、帯状部材90は、平坦な平帯部91と、雌雄の嵌合部93,94と、複数のリブ95とを含む。平帯部91の幅方向の一端部(
図3において左端部)に雌嵌合部93が設けられている。雌嵌合部93は、内周側(
図3において上)へ開口する嵌合溝93aを有して、外周側(
図3において下)へ隆起されている。平帯部91の幅方向の他端部(
図3において右端部)には、外周側へ突出する凸条からなる雄嵌合部94が設けられている。嵌合部93,94間の平帯部91には、外周側へ突出する複数のリブ95が帯状部材90の幅方向(
図3において左右)に間隔を置いて並んで設けられている。リブ95には、スチール製の帯板状の補強材96が埋め込まれている。
雌嵌合部93からなる隆起とその直近のリブ95との間には、幅狭の溝部97が形成されている。溝部97は、平帯部91側の溝底97に近づくにしたがって更に幅小になっている。
【0019】
図3に示すように、更生管9においては、帯状部材90が螺旋状に巻回されるとともに互いに一周ずれて隣接する嵌合部93,94どうしが凹凸嵌合によって接合されている。雌嵌合部93の嵌合溝93aに雄嵌合部94が嵌合されている。
【0020】
図1において模式的に示すように、更生管9は、製管装置10によって製管される。
図2に示すように、製管装置10は、更生管9の延伸方向EDの先端の約一周部分(以下「管端部9e」と称す)の周方向の一部に配置されている。製管装置10の全長は、更生管9の周長の数分の1~数十分の1程度である。管端部9eにおける、製管装置10が配置された箇所以外の部分は、内周側へ解放されている。製管装置10は、前掲特許文献2に開示された製管装置と同様に、内周規制体の無い非内周規制構造になっている。製管装置10は、既設管1の内周に沿って、
図2において反時計回りの螺旋巻回方向(推進方向)へ推進(自走)されながら、更生管9の製管を行う。
【0021】
図2に示すように、製管装置10は、装置フレーム11と、駆動部12(推進反力付与部)と、軌道ガイド14と、嵌合ガイド15と、管端ガイド16と、ブレーキ機構20(抵抗力付与部)を備えている。
装置フレーム11は、フレーム状ないしはハウジング状になっている。装置フレーム11ひいては製管装置10は、管端部9eに前後方向LDへ移動(推進)可能に設けられている。
図1に示すように、製管装置10の前後方向LDは、螺旋巻回方向へ向けられている。製管装置10の高さ方向は、更生管9の径方向へ向けられている。製管装置10の幅方向WD(以下「装置幅方向WDと称す)は、更生管9の管軸L
9及び延伸方向EDに略沿っており、厳密には螺旋のリード角だけ管軸に対してずれている。
【0022】
図2に示すように、装置フレーム11に、駆動部12、軌道ガイド14、嵌合ガイド15、管端ガイド16、ブレーキ機構20(ブレーキ機構)が設けられている。駆動部12は、管端部9eの内側に配置されており、少なくとも一対(ここでは二対)のインナーローラ13a及びアウターローラ13bからなる駆動ローラ13と、これら駆動ローラ13を回転駆動させる油圧モータ及びギア等の動力伝達機構(図示省略)を含む。
【0023】
軌道ガイド14は、インナー軌道ガイド部14a及びアウター軌道ガイド部14bを有し、これらガイド部14a,14bが共に装置フレーム11から推進方向の後方側(
図2において左側、以下「推進後方」と称す)へ延びている。軌道ガイド14は、管端部9eと後続帯部90bとが接合される位置までは延びていない。
軌道ガイド14の先端部に、インナー嵌合ガイド部15a及びアウター嵌合ガイド部15bを有する嵌合ガイド15が支持されている。
【0024】
図2に示すように、装置フレーム11の推進方向の前方(
図2において右側、以下「推進前方」と称す)にブレーキ機構20(ブレーキアタッチメント)が設けられている。ブレーキ機構20は、アタッチメントアーム21と、内周ブレーキ部材30(ブレーキシュー)と、外周ブレーキ部材40(ブレーキガイド)を含む。アタッチメントアーム21の基端部が、装置フレーム11の底部に着脱可能に取り付けられている。ブレーキ機構20は、装置フレーム11に着脱可能なアタッチメントになっている。
【0025】
アタッチメントアーム21は、装置フレーム11の底部から推進前方へ片持ち状に延びている。アタッチメントアーム21の先端部にブレーキホルダ22が設けられている。ブレーキホルダ22に内周ブレーキ部材30及び外周ブレーキ部材40が保持されている。
図4に示すように、ブレーキ部材30,40は、更生管9(螺旋管)の管軸L
9に沿って駆動ローラ13よりも1ピッチ分だけ延伸後方へずれて配置されている。
【0026】
図3及び
図5に示すように、内周ブレーキ部材30は、概略直方体形状のブロック状に形成されている。内周ブレーキ部材30の外周側面31(外周ブレーキ部材40との対向面)は、平坦になっている。内周ブレーキ部材30における推進方向の両側面32と外周側面31とで作るコーナー33は、R面取りされている。
【0027】
図3に示すように、外周ブレーキ部材40は、内周ブレーキ部材30よりも製管装置10の底部側(
図3において下側)に配置されて、内周ブレーキ部材30と対向するように配置されている。
図5に示すように、外周ブレーキ部材40は、装置幅方向WDから見て、内周ブレーキ部材30へ向かって拡幅する概略、逆三角形状ないしは逆さ台形状に形成され、かつ
図3に示すように、薄板状に形成されている。外周ブレーキ部材40の断面形状は、溝部97の断面形状に合わせられている。外周ブレーキ部材40の厚みは、溝部97の溝幅に合わせられており、外周ブレーキ部材40の先端へ向かって小さくなっている。外周ブレーキ部材40の厚み方向は、製管装置10の幅方向WD(
図3において左右)へ向けられている。
【0028】
図5に示すように、外周ブレーキ部材40における内周側面41は、中央面部分41cと、その両側の一対の張出面部分41aを有している。中央面部分41cが、内周ブレーキ部材30の対向面31と対向している。一対の張出面部分41aは、対向面31よりも推進方向の両側へ張り出している。外周ブレーキ部材40の各張出面部分41aと斜めをなす側面42とで作るコーナー43は、概略半円状になっている。
外周ブレーキ部材40における内周側面41の前後方向LDに沿う長さL
41は、内周ブレーキ部材30における対向面31の前後方向LDに沿う長さL
31の好ましくは1.2倍以上であり(L
41≧1.2×L
31)、より好ましくは2倍~3倍程度である(2×L
31≦L
41≦3×L
31)。
【0029】
図5に示すように、中央面部分41cは、一対の張出面部分41aに対して外周側へ凹んでいる。これによって、外周ブレーキ部材40の内周側面41が凹曲面となっている。好ましくは、円弧状の凹曲面になっている。内周側面41の曲率半径は、好ましくは更生管9の目標製管半径より小さく、より好ましくは目標製管半径の50%程度~100%未満、一層好ましくは目標製管半径の80%~90%程度である。
更生管9を既設管1の内周の全周に張り付けるように製管する場合、内周側面41の曲率半径は、好ましくは既設管1の管半径より小さく、より好ましくは既設管1の管半径の50%程度~100%未満、一層好ましくは既設管1の管半径の80%~90%程度である。
【0030】
図5に示すように、ブレーキ部材30,40の間に管端部9eが通されている。ブレーキ部材30,40が、管端部9eを内周側及び外周側から挟み付けている。内周ブレーキ部材30は、管端部9eの内周側に配置され、管端部9eの内周面に当接されている。外周ブレーキ部材40は、管端部9eの外周側に配置されている。該外周ブレーキ部材40が、管端部9eの溝部97に嵌り込んで、管端部9eに推進方向(
図3の紙面と直交する方向)へ摺動可能に係止されている。
【0031】
ブレーキホルダ22には、ブレーキ力調整手段50が設けられている。ブレーキ力調整手段50は、調整ボルト51を含む。調整ボルト51によって、内周ブレーキ部材30が高さ調整可能である。これによって、ブレーキ部材30,40どうしが接近離間され、ブレーキ部材30,40による管端部9eの挟み付け力、ひいてはブレーキ部材30,40と管端部9eとの間の摩擦抵抗が調整される。
【0032】
詳しくは、
図5に示すように、調整ボルト51(
図3)の締め込みが緩いときは、管端部9eを構成する帯状部材90におけるブレーキ部材30,40を通る部分98は、ほとんど変形されておらず、元の曲率及び厚みを維持している。内周ブレーキ部材30の2つのコーナー33が、それぞれ管端部9eの内周面と接している。内周ブレーキ部材30の平坦な対向面31と管端部9eの内周面との間には僅かな隙間が出来ている。外周ブレーキ部材40においては、一対の張出面部分41a又はコーナー43が、それぞれ管端部9eの溝部97の溝底部97bに当接されている。中央面部分41cは、溝底部97bから離れている。
図3に示すように、さらに好ましくは、外周ブレーキ部材40の側面が溝部97の内側面に当接されている。
【0033】
図6に示すように、調整ボルト51(
図3)が締め込まれた状態では、内周ブレーキ部材30と外周ブレーキ部材40とが接近されることによって、内周ブレーキ部材30の対向面31が管端部9eの内周面に押し当てられるとともに、外周ブレーキ部材40の内周側面41の全域すなわち中央面部分41c及び一対の張出面部分41aが溝底部97bに押し当てられる。これによって、管端部9eにおけるブレーキ部材30,40の間の部分98が、外周ブレーキ部材40の内周側面41に倣うように変形される。
【0034】
図7に示すように、調整ボルト51(
図3)が更にきつく締め込まれた状態では、内周ブレーキ部材30の対向面31と外周ブレーキ部材40の中央面部分41cとの距離が更に狭まる。これによって、管端部9eを構成する帯状部材90における、対向面31と中央面部分41cに挟まれた部分98cが厚み方向に圧縮されて、その両側の張出面部分41a上の部分98aよりも厚みが小さくなる。
【0035】
前記の製管装置10によって、更生管9が、次のようにして製造される。
<帯状部材90の繰り出し>
図1に示すように、帯状部材90の未製管部分(以下「後続帯部90b」と称す)を地上の巻取りドラム6から繰り出し、マンホール4を経て、既設管1内の製管済の更生管9の内部に通して、管端部9eの製管装置10へ送る。
【0036】
<接合工程>
後続帯部90bは、製管装置10の対をなす駆動ローラ13間に導入される。これら駆動ローラ13の回転駆動によって、後続帯部90bが、推進方向の後方側(
図2において左側、以下「推進後方」と称す)かつ径方向外側へ斜めに押し込まれる。後続帯部90bは、軌道ガイド14に案内されて、嵌合ガイド15に導入される。嵌合ガイド15内において、後続帯部90bの雄嵌合部94が、管端部9eの雌嵌合部93と嵌合(接合)される。これによって、後続帯部90bが更生管9(螺旋管)に組み込まれ、更生管90が管軸に沿う延伸方向へ延伸される。
【0037】
<推進工程>
前記嵌合によって、推進反力が生じ、製管装置10が推進前方側(
図4において左側)へ推進(自走)される。
【0038】
<抵抗力付与工程>
製管装置10の推進によって、ブレーキ部材30.40と管端部9eとが摺擦されて、滑り摩擦が生じる。これによって、製管装置10にブレーキ力が付与される。
【0039】
<製管径制御工程>
ブレーキ力調整手段50の調節ボルト51の締め込み量を調整するによって、ブレーキ部材30.40を接近、離間させて、ブレーキ力を増減できる。調節ボルト51を締め込んでブレーキ力を大きくすると、駆動ローラ13による後続帯部90bの送り込み量が製管装置10の推進量より大きくなり、更生管9(螺旋管)が拡径製管される。これによって、更生管9を既設管1の内周の全周にぴったり張り付けるように製管することができる。逆に、調節ボルト51を緩めて、ブレーキ力を小さくすると、更生管9(螺旋管)が縮径製管される。このようにして、製管径を制御できる。
【0040】
製管装置10によれば、外周ブレーキ部材40の内周側面41が、内周ブレーキ部材30の対向面31より張り出す凹曲面をなしていることによって、ブレーキ機構20と管端部9eとの接触範囲を拡大できる。すなわち、
図5に示すように、調整ボルト51の締め込みが緩い段階では、内周ブレーキ部材30の2つのコーナー33が管端部9eの内周面と接触されるとともに、その接触部よりも管周方向の外側において、外周ブレーキ部材40の一対の張出面部分41aが管端部9eの溝底部97bと接触される。
図6及び
図7に示すように、調整ボルト51(
図3)の締め込みを強くすると、内周ブレーキ部材30の対向面31が管端部9eの内周面と接触されるとともに、それよりも管周方向の広い範囲にわたって、外周ブレーキ部材40の内周側面41の全域が管端部9eの溝底部97bと接触される。したがって、ブレーキ機構20と管端部9eとの摺擦部分を管周方向に分散ないしは広くできる。この結果、管端部9eを構成する帯状部材90が削り込まれる等の損傷を受けるのを抑制できる。
仮に、外周ブレーキ部材40の内周側面41が平坦であったとすると、張り出しの有無にかかわらず、かつ締め込みの程度にかかわらず、外周ブレーキ部材40においては中央面部分41cだけしか管端部9eと接触できず、局所的な摺擦を免れず、削り込みが起きるおそれがある。
【0041】
また、
図5に示すように、調整ボルト51(
図3)を緩く締めると、管端部9eが、内周ブレーキ部材30と、その両外側の張出面部分41aとによって3点曲げされた状態となる。これによって、ブレーキ力を効果的に発現させることができる。
図6に示すように、調整ボルト51(
図3)を締め込むと、管端部9eにおけるブレーキ部材30,40を通る部分98が、外周ブレーキ部材40の内周側面41の曲率に倣うように変形されることで、管端部9eの他の部分よりも曲率半径が小さくなる。これによって、管端部9eを厚み方向に圧縮するのに代えて、又は圧縮するのに加えて、曲げ力を加えることができ、ブレーキ力を一層効果的に発現させることができる。
【0042】
図7に示すように、調整ボルト51(
図3)を更に強く締め込むと、管端部9eにおける、対向面31と中央面部分41cとに挟み付けられた部分98cが圧縮されて薄肉化される。当該圧縮部分98cの両外側(
図7において左右)の直近部分98aは、相対的に膨張状態となる。直近部分98aは、張出面部分41a上に配置されて、内周側(
図7において上側)へ解放されている。したがって、直近部分98aは、内周側への変形を許容される一方、外周側(
図7において下側)へは張出面部分41aによって変形を規制されている。言い換えると、張出面部分41a上における帯状部材90の膨張等の変形力を内周側へ逃がすことができる。したがって、帯状部材90における圧縮部分98cの直近部分98aが、外周ブレーキ部材40に食い込んで削られるのを防止できる。
図3に示すように、内周ブレーキ部材30は、薄肉の爪状の外周ブレーキ部材40よりも十分に幅広のブロック状であるため、帯状部材90の膨張等の変形力を幅方向WDの広い範囲で受けることができる。したがって、帯状部材90が内周ブレーキ部材30によって削られるのを防止できる。
【0043】
図8に示すように、ブレーキ機構20に何らかの外力F(外乱)が加わって、ブレーキ部材30,40が位置変位や回転変位を来すことがある。一方、外周ブレーキ部材40が一対の張出面部分41aを有しているため、管端部9eが前記位置変位や回転変位によって変形される領域が広がる。その分、局所的な集中荷重を緩和でき、管端部9eを構成する帯状部材90の損傷を抑制できる。
仮に、外周ブレーキ部材40が張出面部分41aを有していなかった場合には、外力Fによって、管端部9eが局所的に大きく変形して、集中荷重による損傷を受けるおそれがある。
このように、製管装置10によれば、更生管9の管端部9eを構成する帯状部材90を損傷することなく、ブレーキ力を確実に付与できる。
【0044】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、ブレーキ機構20が、複数組の内外のブレーキ部材30,40を有していてもよい。複数組の内外のブレーキ部材30,40が、管端部9eの周方向に並んで配置されていてもよい。
外周ブレーキ部材40の内周側面41は、一対の張出面部分41aに対して中央面部分41cが凹んでいればよく、一定曲率の円弧状に限らず、張出面部分41aと中央面部分41cとで曲率が異なっていてもよく、張出面部分41aと中央面部分41cとの間に段差や隅角部が形成されていてもよい。
内周ブレーキ部材30の対向面31が凸面状であってもよい。
嵌合ガイド15を設けず、軌道ガイド14に沿って斜め方向に送られた後続帯部90bの雄嵌合部94が管端部9eの雌嵌合部93に押し込まれるようにしてもよい。
リンクローラ等の内周規制体や、更生管の外周に設けられ、更生管の断面形状を整える外周規制体を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 既設管
10 製管装置
11 装置フレーム
12 駆動部(推進反力付与部)
13 駆動ローラ
20 ブレーキ機構(抵抗力付与部)
30 内周ブレーキ部材
31 外周側面(対向面)
40 外周ブレーキ部材
41 内周側面
41a 張出面部分
41c 中央面部分
50 ブレーキ力調整手段
51 調整ボルト
9 更生管
9e 管端部
90 帯状部材(プロファイル)
91 平帯部
93 雌嵌合部
94 雄嵌合部
97 溝部
97b 溝底部
LD 前後方向
ED 延伸方向
L31 外周側面の長さ
L41 内周側面の長さ