(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071380
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】顕微鏡及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230516BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230516BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20230516BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L21/78 C
B24B49/12
G02B21/06
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184120
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
【テーマコード(参考)】
2H052
3C034
5F063
【Fターム(参考)】
2H052AC04
2H052AC09
2H052AC14
2H052AC17
2H052AF02
2H052AF14
2H052AF25
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB81
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034CB01
3C034CB14
3C034DD10
5F063AA43
5F063AA48
5F063BB01
5F063BB11
5F063DD06
5F063DD25
5F063DE02
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE32
5F063DE33
5F063DE34
5F063FF33
5F063FF42
5F063FF43
(57)【要約】
【課題】同軸照明及び斜光照明を同時に行う場合の輝度調整を簡単かつ適切に行うことができる。
【解決手段】半導体製造装置に設けられている顕微鏡において、第1波長域の同軸照明光をワークに照射する同軸照明部と、第1波長域とは異なる第2波長域の斜光照明光をワークに照射する斜光照明部と、ワークにて正反射された同軸照明光の正反射光と、ワークにて散乱された斜光照明光の散乱光との混合光が入射する撮像部であって、且つ混合光を正反射光と散乱光とに分離して同時に撮像する撮像部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に設けられている顕微鏡において、
第1波長域の同軸照明光をワークに照射する同軸照明部と、
前記第1波長域とは異なる第2波長域の斜光照明光を前記ワークに照射する斜光照明部と、
前記ワークにて正反射された前記同軸照明光の正反射光と、前記ワークにて散乱された前記斜光照明光の散乱光との混合光が入射する撮像部であって、且つ前記混合光を前記正反射光と前記散乱光とに分離して同時に撮像する撮像部と、
を備える顕微鏡。
【請求項2】
前記撮像部が、2次元配列された複数の画素と、前記複数の画素上に配設された複数のカラーフィルタと、を備えるカラー撮像素子であり、
前記複数のカラーフィルタには、前記第1波長域の光を透過する複数の第1カラーフィルタと、前記第2波長域の光を透過する複数の第2カラーフィルタと、が含まれる請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記撮像部が、
前記混合光を第1光と第2光に分離する光分離素子と、
前記光分離素子により分離された前記第1光の光路上に配置され且つ前記第1波長域の光のみを透過する第1フィルタと、
前記第1フィルタを透過した前記正反射光を撮像する第1撮像素子と、
前記光分離素子により分離された前記第2光の光路上に配置され且つ前記第2波長域の光のみを透過する第2フィルタと、
前記第2フィルタを透過した前記散乱光を撮像する第2撮像素子と、
を備える請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記撮像部が、
前記混合光を前記第1波長域の前記正反射光と前記第2波長域の前記散乱光とに波長分離する波長分離素子と、
前記波長分離素子により波長分離された前記正反射光を撮像する第1撮像素子と、
前記波長分離素子により波長分離された前記散乱光を撮像する第2撮像素子と、
を備える請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記同軸照明光及び前記斜光照明光の双方が可視光である請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記同軸照明光及び前記斜光照明光のいずれか一方が可視光であり且つ他方が赤外光であり、
前記撮像部が、前記正反射光及び前記散乱光のうちで前記可視光に対応する光を撮像して前記ワークの表面画像を出力し、且つ前記正反射光及び前記散乱光のうちで前記赤外光に対応する光を撮像して前記ワークの内部の赤外線透過画像を出力する請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の顕微鏡を備える半導体製造装置。
【請求項8】
前記撮像部により撮像された前記正反射光の第1撮像画像と前記散乱光の第2撮像画像とを合成して合成画像を生成する画像処理部を備える請求項7に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記撮像部により撮像された前記正反射光の第1撮像画像に基づき前記同軸照明部の光源の輝度調整を行い、且つ前記撮像部により撮像された前記散乱光の第2撮像画像に基づき前記斜光照明部の光源の輝度調整を行う輝度調整部を備える請求項7又は8に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸照明及び斜光照明を同時に実行可能な顕微鏡、及びこの顕微鏡を備える半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置として、スピンドルによって高速に回転される円盤状のブレードによってシリコンウェーハ等のワークをダイシング加工(切削加工)するダイシング装置が知られている(特許文献1参照)。このダイシング装置は、ワークに格子状に形成されたストリート(分割予定ラインともいう)に沿って高速回転するブレードを移動させることで、ストリートに沿ってワークのダイシング加工を行う。
【0003】
ダイシング装置では、ワークのダイシング加工に先立って、ワークに対するブレードのアライメントが行われる。アライメントを行う場合には、顕微鏡(撮影装置)を用いてワークのパターン(構造物を含む)を撮影し、この撮影で得られた撮影画像内に含まれるパターン等のエッジ情報に基づき各ストリートの位置を検出して、その検出結果に基づきブレードをストリートの加工開始位置に位置合わせする。
【0004】
このようなダイシング装置の顕微鏡として、ワークを同軸照明(落射照明又は同軸落射照明ともいう)する同軸照明部と、ワークを斜め方向から照明(斜光照明)するリング照明部と、を備えるものが知られている(特許文献2参照)。同軸照明によりワーク表面で反射された正反射光を顕微鏡で撮像することで、ワーク表面の明視野像が得られる。また、斜光照明によりワーク表面で散乱された散乱光を顕微鏡で撮像することで、ワーク表面の暗視野像が得られる。
【0005】
ここでワーク表面には、同軸照明による明視野像の方が認識し易いパターンと、斜光照明による暗視野像の方が認識し易いパターンと、の双方が含まれている。このため、顕微鏡により同軸照明と斜光照明とを同時に行うと共に正反射光及び散乱光を同時に撮像することにより、ワーク表面の撮影画像を取得してこの撮影画像に基づきアライメントを行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-84201号公報
【特許文献2】特開2020-4862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の半導体デバイスの微細化及び三次元化に伴い、上述のアライメントでは、ワーク表面の撮影画像からワークのより微細なパターンのエッジ情報を認識する必要がある。このため、特許文献2に記載の顕微鏡によるワーク表面の撮影を行う前には、同軸照明部及びリング照明部の輝度調整(調光)を適切に行う必要がある。
【0008】
図18は、白色光を用いる同軸照明部の輝度調整後に得られた明視野像D1の一例を示した説明図である。
図19は、白色光を用いるリング照明部の輝度調整後に得られた暗視野像D2の一例を示した説明図である。
図20は、同軸照明部による同軸照明及びリング照明部による斜光照明を同時に行う場合の輝度調整の課題を説明するための説明図である。
【0009】
図18に示すように、顕微鏡で同軸照明のみを行う場合には、顕微鏡により撮影された明視野像に基づき公知の手法で輝度調整を自動で行うことにより最適な明視野像D1が得られる。また、
図19に示すように、顕微鏡で斜光照明のみを行う場合には、顕微鏡により撮影された暗視野像に基づき公知の手法で輝度調整を自動で行うことにより最適な暗視野像D2が得られる。
【0010】
しかしながら、同軸照明及び斜光照明で同じ波長域の光(例えば白色光)が用いられると、顕微鏡で撮像される光が正反射光(同軸照明光)或いは散乱光(斜光照明光)のいずれであるのかを判別することができない。このため、この場合には同軸照明及び斜光照明の輝度調整を同時に行うことができない。
【0011】
また、同軸照明の輝度調整及び斜光照明の輝度調整を個別に行ったとしても、同軸照明及び斜光照明を同時に行った場合には、
図20に示すように、同軸照明及び斜光照明の双方の照明光が合成されることで顕微鏡により撮像される撮影画像D3が明るくなり過ぎてしまう。このため、同軸照明及び傾斜照明の個別の輝度調整の結果を生かすことができない。その結果、最適な撮影画像D3を撮影するためには、その都度、同軸照明及び斜光照明を同時に行いながら同軸照明部及び斜光照明部の輝度調整を繰り返し行う必要があり、非常に手間がかかり、さらに同軸照明及び斜光照明の光量バランスが崩れるおそれがある。また、撮影画像D3内のパターンが白飛び等により一部消失してしまうおそれもある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、同軸照明及び斜光照明を同時に行う場合の輝度調整を簡単かつ適切に行うことができる顕微鏡及び半導体製造装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するための顕微鏡は、半導体製造装置に設けられている顕微鏡において、第1波長域の同軸照明光をワークに照射する同軸照明部と、第1波長域とは異なる第2波長域の斜光照明光をワークに照射する斜光照明部と、ワークにて正反射された同軸照明光の正反射光と、ワークにて散乱された斜光照明光の散乱光との混合光が入射する撮像部であって、且つ混合光を正反射光と散乱光とに分離して同時に撮像する撮像部と、を備える。
【0014】
この顕微鏡によれば、同軸照明及び斜光照明を同時に行っている場合でも、同軸照明部の輝度調整と斜光照明部の輝度調整とを実行することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、撮像部が、2次元配列された複数の画素と、複数の画素上に配設された複数のカラーフィルタと、を備えるカラー撮像素子であり、複数のカラーフィルタには、第1波長域の光を透過する複数の第1カラーフィルタと、第2波長域の光を透過する複数の第2カラーフィルタと、が含まれる。これにより、混合光を正反射光と散乱光とに分離して同時に且つ同軸で撮像することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、撮像部が、混合光を第1光と第2光に分離する光分離素子と、光分離素子により分離された第1光の光路上に配置され且つ第1波長域の光のみを透過する第1フィルタと、第1フィルタを透過した正反射光を撮像する第1撮像素子と、光分離素子により分離された第2光の光路上に配置され且つ第2波長域の光のみを透過する第2フィルタと、第2フィルタを透過した散乱光を撮像する第2撮像素子と、を備える。これにより、混合光を正反射光と散乱光とに分離して同時に撮像することができ、さらに高解像な画像が得られる。
【0017】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、撮像部が、混合光を第1波長域の正反射光と第2波長域の散乱光とに波長分離する波長分離素子と、波長分離素子により波長分離された正反射光を撮像する第1撮像素子と、波長分離素子により波長分離された散乱光を撮像する第2撮像素子と、を備える。これにより、混合光を正反射光と散乱光とに分離して同時に撮像することができ、さらに高解像な画像が得られる。また、顕微鏡の部品数を減らすことができるので、顕微鏡の小型化及び低コスト化が図れる。
【0018】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、同軸照明光及び斜光照明光の双方が可視光である。
【0019】
本発明の他の態様に係る顕微鏡において、同軸照明光及び斜光照明光のいずれか一方が可視光であり且つ他方が赤外光であり、撮像部が、正反射光及び散乱光のうちで可視光に対応する光を撮像してワークの表面画像を出力し、且つ正反射光及び散乱光のうちで赤外光に対応する光を撮像してワークの内部の赤外線透過画像を出力する。これにより、ワークの内部領域の情報と表面の情報とが同時に得られる。
【0020】
本発明の目的を達成するための半導体製造装置は、上述の顕微鏡を備える。
【0021】
本発明の他の態様に係る半導体製造装置において、撮像部により撮像された正反射光の第1撮像画像と散乱光の第2撮像画像とを合成して合成画像を生成する画像処理部を備える。
【0022】
本発明の他の態様に係る半導体製造装置において、撮像部により撮像された正反射光の第1撮像画像に基づき同軸照明部の光源の輝度調整を行い、且つ撮像部により撮像された散乱光の第2撮像画像に基づき斜光照明部の光源の輝度調整を行う輝度調整部を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、同軸照明及び斜光照明を同時に行う場合の輝度調整を簡単かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態のダイシング装置の斜視図である。
【
図4】カラー撮像素子の受光面に設けられているカラーフィルタアレイの拡大図である。
【
図5】カラーフィルタアレイの変形例を示した拡大図である。
【
図6】カラーカメラにより撮像された明視野像の一例を示した説明図である。
【
図7】カラーカメラにより撮像された暗視野像の一例を示した説明図である。
【
図8】第1実施形態のダイシング装置の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図9】画像処理部による合成画像の生成方法の一例を示した説明図である。
【
図10】第1実施形態のダイシング装置によるワークのダイシング加工処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態のダイシング装置のブロック図である。
【
図13】第2実施形態の顕微鏡の変形例の側面図である。
【
図14】第3実施形態のダイシング装置の顕微鏡の側面図である。
【
図15】第1実施形態及び第2実施形態の光源の変形例を説明するための説明図である。
【
図16】正反射光及び散乱光を時分割で撮像するダイシング装置の顕微鏡の一例を示した側面図である。
【
図17】顕微鏡のリング照明部の変形例を示した図である。
【
図18】白色光を用いる同軸照明部の輝度調整後に得られた明視野像の一例を示した説明図である。
【
図19】白色光を用いるリング照明部の輝度調整後に得られた暗視野像の一例を示した説明図である。
【
図20】同軸照明部による同軸照明及びリング照明部による斜光照明を同時に行う場合の輝度調整の課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のダイシング装置10の斜視図である。なお、図中のXYZ軸は互いに直交する軸であり、XY軸が水平方向に平行な軸であり、Z軸が水平方向に直交する軸である。
【0026】
図1に示すように、ダイシング装置10は、本発明の半導体製造装置(ワーク加工装置ともいう)に相当するものであり、シリコンウェーハ(半導体ウェーハ)等の平板状のワークWをダイシング加工する。このダイシング装置10は、ロードポート12と搬送機構14と加工部16と洗浄部18とを備える。
【0027】
ロードポート12には、フレームFにマウントされたワークWを多数枚収納したカセットが載置される。搬送機構14はワークWを搬送する。加工部16はワークWのダイシング加工を行う。洗浄部18はダイシング加工済みのワークWをスピン洗浄する。また、ダイシング装置10の筐体10Aの内部には、ダイシング装置10の各部の動作を制御する統括制御部60(
図8参照)等が設けられている。なお、統括制御部60が筐体10Aの外部に設けられていてもよい。
【0028】
ロードポート12に載置されたカセット内に収納されている未加工のワークWは、搬送機構14により加工部16に搬送され、個々のチップに分断するために加工部16にて切断あるいは溝入れ加工等のダイシング加工が施される。そして、加工部16による加工済みのワークWは搬送機構14により洗浄部18に搬送され、洗浄部18により洗浄された後、搬送機構14によりロードポート12に搬送されてカセット内に収納される。
【0029】
図2は、加工部16の外観斜視図である。
図2及び既述の
図1に示すように、加工部16は、既述のツインスピンドルダイサであり、一対のブレード21A,21Bと、ブレードカバー(不図示)と、一対のスピンドル22A,22Bと、顕微鏡23と、テーブル31と、を備える。
【0030】
ブレード21A,21Bは円盤状に形成されている。また、ブレード21A,21Bの先端形状、すなわちブレード21A,21Bの径方向に沿ったブレード外周部(刃先部)の断面形状は矩形状(V字形状等の他の形状でも可)である。ブレード21A,21Bは、Y軸方向において対向配置されており、それぞれY軸方向に平行なブレード回転軸を中心として回転自在にスピンドル22A,22Bに保持されている。
【0031】
スピンドル22A,22Bは、高周波モータを内蔵しており、ブレード回転軸を中心としてブレード21A,21Bを高速回転させる。これにより、ブレード21A,21BによりワークWがその表面(デバイス形成面)側からダイシング加工される。ブレード21A,21BによるワークWのダイシング加工によってカーフ(溝)がワークWに形成される。
【0032】
顕微鏡23は、例えばスピンドル22A(スピンドル22Bでも可)と一体にZキャリッジ44に設けられており、Yキャリッジ43及びZキャリッジ44によってスピンドル22Aと一体にYZ軸方向に移動自在に保持されている。顕微鏡23は、ワークWの表面を撮影する。この顕微鏡23は、ワークWとブレード21A,21Bとのアライメントに用いられる。
【0033】
テーブル31は、ポーラス状(多孔質状)に形成されたワーク保持面31aを有しており、このワーク保持面31aによりワークWをその裏面側から吸着保持する。なお、テーブル31は、後述のXキャリッジ36によりX軸方向に移動自在に保持され、且つ後述の回転ユニット37により回転軸CAを中心として回転自在に保持されている。
【0034】
加工部16には、Xベース32と、Xガイド34と、X駆動部35と、Xキャリッジ36と、回転ユニット37と、が設けられている。Xベース32は、X軸方向に延びた平板形状を有しており、且つそのZ軸方向の上面にはXガイド34が設けられている。Xガイド34は、X軸方向に延びた形状を有し、Xキャリッジ36をX軸方向に沿ってガイドする。X駆動部35は、例えばリニアモータ等のアクチュエータが用いられ、Xガイド34に沿ってXキャリッジ36をX軸方向に移動(駆動)する。
【0035】
回転ユニット37は、Xキャリッジ36の上面に設けられている。また、回転ユニット37の上面には、テーブル31が設けられている。回転ユニット37は、モータ及びギヤ等により構成される回転駆動部38(
図8参照)によって回転駆動される。これにより、回転ユニット37は、テーブル31をその回転軸CAを中心としてθ方向に回転させる。
【0036】
搬送機構14によりロードポート12から搬送されたワークWは、テーブル31により吸着保持されることで、テーブル31と一体に移動及び回転する。
【0037】
また、加工部16には、Yベース41と、Yガイド42と、一対のYキャリッジ43と、一対のZキャリッジ44と、が設けられている。Yベース41は、Y軸方向においてXベース32を跨ぐような門型形状を有している。このYベース41のX軸方向の側面には、Yガイド42が設けられている。Yガイド42は、Y軸方向に延びた形状を有し、一対のYキャリッジ43をそれぞれY軸方向に沿ってガイドする。一対のYキャリッジ43は、例えばステッピングモータ及びボールスクリュー等により構成されるアクチュエータであるY駆動部46(
図8参照)により、Yガイド42に沿って独立して駆動される。
【0038】
一対のYキャリッジ43の各々には、ステッピングモータ等のアクチュエータにより構成されるZ駆動部48(
図8参照)を介して、Zキャリッジ44がZ軸方向に移動自在に設けられている。そして、Zキャリッジ44の一方にはスピンドル22A及び顕微鏡23が設けられ、且つZキャリッジ44の他方にはスピンドル22Bが設けられている。
【0039】
Xキャリッジ36、回転ユニット37、各Yキャリッジ43、及び各Zキャリッジ44を駆動することで、テーブル31及びワークWに対してブレード21A,21B、及び顕微鏡23をXYZ軸方向及びθ方向に相対移動させることができる。これにより、アライメント開始前のワークWに対する顕微鏡23の位置調整、及びアライメント検出後のワークWの加工開始位置に対するブレード21A,21Bのアライメントを行うことができる。また、ブレード21A,21BによるワークWのダイシング加工時には、ワークWのX方向への切削送りと、ブレード21A,21BのY軸方向のインデックス送り及びZ軸方向の切込み送りと、を行うことができる。
【0040】
[顕微鏡]
図3は、第1実施形態の顕微鏡23の側面図である。顕微鏡23は、ワークWの同軸照明及び斜光照明が可能であり、大別して、同軸照明部52とリング照明部54とカラーカメラ56とを備える。
【0041】
同軸照明部52は、ワークWの表面に対して同軸照明光L1を照射する。この同軸照明部52は、同軸照明光源52aと、ハーフミラー52bと、対物レンズ52cとを備える。対物レンズ52cは、ワークWの表面及びワーク保持面31aに対向する位置に配置され、ハーフミラー52bは対物レンズ52cのZ方向上方側に配置され、さらに同軸照明光源52aはハーフミラー52bの側方に配置されている。
【0042】
同軸照明光源52aは、例えばLED(light emitting diode)が用いられ、ハーフミラー52bに向けて同軸照明光L1を出射する。この同軸照明光L1としては、可視光の中の特定の波長域λA(本発明の第1波長域に相当)の光、例えば赤色光が用いられる。
【0043】
ハーフミラー52bは、同軸照明光源52aから入射した同軸照明光L1を対物レンズ52cに向けて反射する。また、ハーフミラー52bは、対物レンズ52cから入射した後述の正反射光L1A及び散乱光L2Aをそのまま透過してカラーカメラ56に向けて出射する。
【0044】
対物レンズ52cは、ハーフミラー52bから入射した同軸照明光L1をワークWの表面に照射する。これにより、ワークWの表面にて正反射された同軸照明光L1の正反射光L1Aが対物レンズ52c及びハーフミラー52bを順に透過してカラーカメラ56に入射する。
【0045】
リング照明部54は、例えば、対物レンズ52cを囲むようにその光軸O1を中心とする円周方向に沿って等角度ピッチで配置された複数の光源54aを有する。各光源54aは、ワークWの表面及びワーク保持面31aに対して斜め方向から斜光照明光L2を照射する。この斜光照明光L2は、可視光の中で波長域λAとは異なる波長域λB(本発明の第2波長域に相当)の光、例えば青色光が用いられる。そして、ワークWの表面に対して斜め方向から斜光照明光L2が照射されると、この表面において斜光照明光L2が散乱され、その散乱光L2Aの一部が対物レンズ52cを透過し、さらにハーフミラー52bを透過してカラーカメラ56に入射する。
【0046】
本実施形態では、同軸照明部52によるワークWの表面への同軸照明光L1の照射、及びリング照明部54によるワークWの表面への斜光照明光L2の照射が、後述の統括制御部60(
図8参照)の制御の下で同時に実行される。これにより、カラーカメラ56には、正反射光L1Aと散乱光L2Aとの混合光LMが入射する。なお、必要に応じて、同軸照明部52によるワークWの表面への同軸照明光L1の照射と、リング照明部54によるワークWの表面への斜光照明光L2の照射と、を選択的に行うことも可能である。
【0047】
カラーカメラ56は、ハーフミラー52bを透過して入射した混合光LMを正反射光L1Aと散乱光L2Aとに波長分離した後、正反射光L1Aと散乱光L2Aとを同時に撮像する。このカラーカメラ56は、結像レンズ56aとカラー撮像素子56bとを備える。
【0048】
結像レンズ56aは、ハーフミラー52bから入射した混合光LMをカラー撮像素子56bの受光面に結像する。
【0049】
図4は、カラー撮像素子56bの受光面に設けられているカラーフィルタアレイ58の拡大図である。
図4に示すように、カラー撮像素子56bは、例えば、図中の点線枠で示した複数の画素57(受光素子)がXY方向に2次元配列されたCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の2次元撮像素子であり、その受光面側にカラーフィルタアレイ58を備える。
【0050】
図4に示すように、カラーフィルタアレイ58は、図中の「G」で示す緑色のカラーフィルタ58Gと、図中の「B」で示す青色のカラーフィルタ58Bと、図中の「R」で示す赤色のカラーフィルタ58Rと、をそれぞれ複数含んで構成されている。各色のカラーフィルタ58R,58G,58Bは、例えば、公知のベイヤー配列で各画素57上に配設されている。
【0051】
カラーフィルタ58Rは、本発明の第1カラーフィルタに相当するものであり、混合光LMの中で赤色光である正反射光L1Aのみを透過する。カラーフィルタ58Bは、本発明の第2カラーフィルタに相当するものであり、混合光LMの中で青色光である散乱光L2Aのみを透過する。なお、カラーフィルタ58Gは、混合光LMを透過しない。これにより、カラーフィルタアレイ58に入射した混合光LMは、各カラーフィルタ58Rを透過する正反射光L1Aと、各カラーフィルタ58Bを透過する散乱光L2Aとに波長分離される。その結果、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Rに対する複数の画素57により正反射光L1Aが撮像されると共に、各カラーフィルタ58Bに対する複数の画素57により散乱光L2Aが撮像される。すなわち、カラー撮像素子56bにより正反射光L1A及び散乱光L2Aが互いに分離された状態で同時に撮像される。
【0052】
図5は、カラーフィルタアレイ58の変形例を示した拡大図である。上記
図4に示したようにカラーフィルタアレイ58がベイヤー配列で構成されている場合には、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Gに対する複数の画素57による撮像は実行されない。この場合には、正反射光L1A及び散乱光L2Aの撮像を行う画素57の数が少なくなることで、後述の明視野像D1及び暗視野像D2(
図6及び
図7参照)の解像度が低下してしまう。
【0053】
そこで、
図5に示すように、カラーフィルタアレイ58を、正反射光L1A(波長域λA)及び散乱光L2A(波長域λB)に対応するカラーフィルタ58R,58Bのみで構成することで、正反射光L1A及び散乱光L2Aを撮像する画素57の数を増やす、すなわち、明視野像D1及び暗視野像D2(
図6及び
図7参照)の解像度を向上させることができる。
【0054】
図6は、カラーカメラ56により撮像された明視野像D1の一例を示した説明図である。
図7は、カラーカメラ56により撮像された暗視野像D2の一例を示した説明図である。
図6に示すように、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Rに対する複数の画素57のみで正反射光L1Aを撮像することでワークWの表面の明視野像D1(本発明の第1撮像画像に相当)が得られる。また、
図7に示すように、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Bに対する複数の画素57のみで散乱光L2Aを撮像することでワークWの表面の暗視野像D2(本発明の第2撮像画像に相当)が得られる。従って、同軸照明と斜光照明とを同時に実行した場合には、カラーカメラ56により明視野像D1と暗視野像D2とを同時且つ同軸で撮像することができる。
【0055】
[統括制御部]
図8は、第1実施形態のダイシング装置10の統括制御部60の機能ブロック図である。
図8に示すように、統括制御部60は、ダイシング装置10の各部を統括制御して、同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整(以下、単に輝度調整と略す)と、アライメント検出と、アライメントと、ダイシング加工と、含む各種動作を実行させる。
【0056】
統括制御部60は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、統括制御部60の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0057】
統括制御部60には、既述のスピンドル22A,22B、顕微鏡23、X駆動部35、回転駆動部38、Y駆動部46、及びZ駆動部48などの他に、操作部62、記憶部64、及び表示部66等が接続されている。
【0058】
操作部62は、キーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。記憶部64は、ダイシング装置10の制御プログラム(図示は省略)、及び各種設定情報等を記憶する。表示部66は、例えば液晶ディスプレイ等の公知の各種モニタが用いられる。この表示部66は、顕微鏡23により撮影された画像(明視野像D1及び暗視野像D2)、後述の画像処理部78により生成された合成画像DC、及びダイシング装置10の各種の設定画面などを表示する。
【0059】
統括制御部60は、記憶部64に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することで、ブレード駆動制御部70、移動制御部72、撮影制御部74、輝度調整部76、画像処理部78、アライメント検出部80、及び加工制御部82として機能する。なお、統括制御部60の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0060】
ブレード駆動制御部70は、スピンドル22A,22Bによるブレード21A,21Bの回転駆動を制御する。
【0061】
移動制御部72は、X駆動部35(Xキャリッジ36)、回転駆動部38(回転ユニット37)、Y駆動部46(Yキャリッジ43)、及びZ駆動部48(Zキャリッジ44)を含む相対移動機構49を駆動することで、テーブル31及びワークWに対してブレード21A,21B、及び顕微鏡23を相対移動させる。
【0062】
例えば移動制御部72は、ワークWとブレード21A,21Bとのアライメント前には、相対移動機構49を駆動して、ワークWの表面に形成されているアライメント検出用のパターンを撮影可能な位置への顕微鏡23の位置調整を実行させる。
【0063】
また、移動制御部72は、ワークWとブレード21A,21Bとのアライメント実行時(アライメント検出後)には、相対移動機構49を駆動して、ブレード21A,21BとワークWの加工開始位置との位置合わせを実行させる。
【0064】
さらに、移動制御部72は、ブレード21A,21BによるワークWの切削加工時には、相対移動機構49を駆動して、ワークWのX方向への切削送りと、ブレード21A,21BのY軸方向のインデックス送り及びZ軸方向の切込み送りと、を実行させる。
【0065】
撮影制御部74は、顕微鏡23によるワークWの撮影を制御する。この撮影制御部74は、既述の顕微鏡23の位置調整後に、同軸照明部52による同軸照明とリング照明部54による斜光照明とを開始させると共に、カラーカメラ56によるワークWの撮影、すなわち明視野像D1及び暗視野像D2の撮影を実行させる。ここで明視野像D1及び暗視野像D2の撮影は、少なくとも顕微鏡23の同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整前と、これらの輝度調整後で且つアライメント検出前と、において実行すれば良く、或いは連続して実行してもよい。カラーカメラ56は、輝度調整前に撮影した明視野像D1及び暗視野像D2を後述の輝度調整部76へ出力し、アライメント検出前に撮影した明視野像D1及び暗視野像D2を後述の画像処理部78へ出力する。
【0066】
輝度調整部76は、既述の顕微鏡23の位置調整後に作動する。輝度調整部76は、カラーカメラ56から明視野像D1及び暗視野像D2が入力された場合に、明視野像D1に基づき同軸照明部52(同軸照明光源52a)の輝度調整を行い且つ暗視野像D2に基づきリング照明部54(各光源54a)の輝度調整を行う。
【0067】
例えば輝度調整部76は、正反射光L1Aのみを撮像して得られた明視野像D1に基づき、この明視野像D1のコントラストが最適化(最大化)されるように、同軸照明光源52aから出射される同軸照明光L1の光量を調整する。また、輝度調整部76は、散乱光L2Aのみを撮像して得られた暗視野像D2に基づき、この暗視野像D2のコントラストが最適化されるように、各光源54aから出射される斜光照明光L2の光量を調整する。この場合の同軸照明部52の輝度調整とリング照明部54の輝度調整とはそれぞれ公知の方法で実行可能であり、さらに両方の輝度調整を同時(時分割でも可)に実行可能である。
【0068】
このように輝度調整部76が同軸照明部52及びリング照明部54の双方の輝度調整を行うことで、カラーカメラ56により高コントラスト、すなわちワークWの表面のパターンを高精度に認識可能な明視野像D1及び暗視野像D2を撮影することができる。輝度調整後にカラーカメラ56により撮影された明視野像D1及び暗視野像D2は、カラーカメラ56から画像処理部78に入力される。
【0069】
図9は、画像処理部78による合成画像DCの生成方法の一例を示した説明図である。
図9及び既述の
図8に示すように、画像処理部78は、輝度調整部76による輝度調整後にカラーカメラ56から入力された明視野像D1(
図6参照)と暗視野像D2(
図7参照)とを合成して合成画像DCを生成する。
【0070】
例えば画像処理部78は、最初に
図9の符号9A,9Bに示すように、明視野像D1及び暗視野像D2をそれぞれ複数の領域に分割して分割領域ごとのコントラスト評価値を演算する(国際公開第2013/047482号参照)。なお、
図9では、図面の煩雑化を防止するため、分割領域の分割数を実際よりも少なく図示している。
【0071】
次いで、画像処理部78は、分割領域ごとに明視野像D1のコントラスト評価値と暗視野像D2のコントラスト評価値とを比較して、コントラスト評価値が高い方の分割領域を選択して繋ぎ合わせることで、
図9の符号9Cに示すような合成画像DCを生成する。これにより、明視野像D1及び暗視野像D2からそれぞれコントラストの高い領域を選択して繋ぎ合わせた合成画像DCが得られる。その結果、同軸照明による明視野像D1の方が認識し易いパターンと、斜光照明による暗視野像D2の方が認識し易いパターンとの双方を含む合成画像DCが得られる。そして、画像処理部78は、合成画像DCをアライメント検出部80へ出力する。
【0072】
なお、画像処理部78による合成画像DCの生成方法は特に限定はされず、単純に明視野像D1及び暗視野像D2の一方に対して他方を重畳してもよい。また、明視野像D1及び暗視野像D2から輝度情報のみを抽出してから、既述の
図9に示した方法でモノクロの合成画像DCを生成したり、或いはモノクロの明視野像D1及び暗視野像D2の一方に対して他方を重畳したりしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、既述の通りカラーカメラ56が明視野像D1及び暗視野像D2を同軸で撮影しているので、画像処理部78が明視野像D1及び暗視野像D2を合成する際の位置ずれ補正を省略することができる。
【0074】
図8に戻って、アライメント検出部80は、画像処理部78から入力された合成画像DCに基づき、この合成画像DC内に含まれているワークWのアライメント検出用パターンのエッジ情報等を公知の画像認識法で検出することで、ワークWの各ストリート(図示は省略)の位置を検出するアライメント検出を行う。そして、アライメント検出部80は、アライメント検出結果を移動制御部72へ出力する。これにより、移動制御部72が相対移動機構49を駆動して加工対象のストリート(図示は省略)とブレード21A,21Bとの位置合わせ(アライメント)を行う。
【0075】
加工制御部82は、アライメント完了後にブレード駆動制御部70及び移動制御部72を介してスピンドル22A,22B及び相対移動機構49を駆動して、ワークWのストリート(図示は省略)ごとにブレード21A,21Bによるダイシング加工を行う。なお、本実施形態のダイシング装置10は所謂ツインスピンドルダイサであるので、加工制御部82は、ワークWのダイシング加工として例えばミーティング切削方式及びステップカット方式を選択的に実行する(上記特許文献1参照)。
【0076】
[第1実施形態の作用]
図10は、上記構成の第1実施形態のダイシング装置10によるワークWのダイシング加工処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示すように、ワークWがテーブル31に吸着保持されると、統括制御部60の各部が作動する。そして、移動制御部72が相対移動機構49を駆動して、ワークWの表面のアライメント検出用パターンを撮影可能な位置に顕微鏡23を位置調整する。
【0077】
顕微鏡23の位置調整が完了すると、撮影制御部74が同軸照明光源52aからの同軸照明光L1の出射と、各光源54aからの斜光照明光L2の出射とを開始させると共に、カラー撮像素子56bによる撮像を開始させる。これにより、同軸照明部52によるワークWへの同軸照明光L1の照射(同軸照明)と、リング照明部54によるワークWへの斜光照明光L2の照射(斜光照明)と、が同時に行われる(ステップS1)。
【0078】
同軸照明と斜光照明とが同時に開始されると、ワークWの表面で正反射された同軸照明光L1の正反射光L1Aと、ワークWの表面で散乱された斜光照明光L2の散乱光L2Aの一部との混合光LMが、対物レンズ52c及びハーフミラー52bを経てカラーカメラ56に入射し、さらにこのカラーカメラ56の結像レンズ56aを経てカラー撮像素子56bのカラーフィルタアレイ58に入射する。
【0079】
カラーフィルタアレイ58に入射した混合光LMは、各カラーフィルタ58Rを透過する正反射光L1Aと、各カラーフィルタ58Bを透過する散乱光L2Aとに波長分離される。そして、正反射光L1Aが、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Rに対する複数の画素57により撮像される。また同時に、散乱光L2Aが、カラー撮像素子56bの各カラーフィルタ58Bに対する複数の画素57により撮像される。これにより、カラー撮像素子56bにより正反射光L1A及び散乱光L2Aが互いに分離された状態で同時に撮像される(ステップS2)。その結果、カラーカメラ56から輝度調整部76に対して、正反射光L1Aを撮像した明視野像D1と、散乱光L2Aを撮像した暗視野像D2とが同時に出力される。
【0080】
このように本実施形態では、同軸照明光L1(正反射光L1A)の波長域λAと斜光照明光L2(散乱光L2A)の波長域λBとを互いに異ならせておくことで、カラーカメラ56において混合光LMを正反射光L1Aと散乱光L2Aとに簡単に波長分離して個別に撮像することができる。
【0081】
次いで、輝度調整部76が、カラーカメラ56から明視野像D1及び暗視野像D2を取得すると(ステップS3)、明視野像D1に基づいた同軸照明部52(同軸照明光源52a)の輝度調整と、暗視野像D2に基づいたリング照明部54(各光源54a)の輝度調整と、を同時に行う(ステップS4)。この場合には、明視野像D1に基づく同軸照明部52の輝度調整と、暗視野像D2に基づくリング照明部54の輝度調整と、を個別に公知の手法で行うだけでよいので、同軸照明部52及びリング照明部54の双方の輝度調整を簡単に行うことができる。
【0082】
さらに本実施形態では、波長域λAと波長域λBとが重複していないので、既述の
図20に示したような同軸照明部52及びリング照明部54の双方の照明下で撮影画像D3が明るくなり過ぎるという問題は発生せず、輝度調整に使用可能な明るさの明視野像D1及び暗視野像D2が得られる。このため、本実施形態では、同軸照明部52及びリング照明部54の双方の輝度調整を個別に行うだけでよく、従来のように同軸照明部52及びリング照明部54の個別の輝度調整後に、同軸照明及び斜光照明を同時に行いながら同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整を繰り返し行う必要がなくなる。その結果、同軸照明部52及びリング照明部54の双方の輝度調整を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0083】
同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整が完了すると、撮影制御部74がカラー撮像素子56bによる撮像を開始させる。これにより、既述のステップS2と同様に、カラー撮像素子56bにより正反射光L1A及び散乱光L2Aが互いに分離された状態で同時に撮像される(ステップS5)。そして、カラーカメラ56から画像処理部78に対して、正反射光L1Aを撮像した明視野像D1と、散乱光L2Aを撮像した暗視野像D2とが同時に出力される。
【0084】
次いで、画像処理部78が、カラーカメラ56から明視野像D1及び暗視野像D2を取得すると(ステップS6)、例えば既述の
図9で説明したように、明視野像D1及び暗視野像D2からそれぞれコントラストの高い領域を選択して繋ぎ合わせた合成画像DCを生成する(ステップS7)。これにより、同軸照明による明視野像D1の方が認識し易いパターンと、斜光照明による暗視野像D2の方が認識し易いパターンとの双方を含む合成画像DCが得られる。この際に本実施形態では、カラーカメラ56により明視野像D1及び暗視野像D2を同軸で撮影しているため、明視野像D1及び暗視野像D2を合成する際の位置ずれ補正を省略することができ、その結果、合成画像DCの生成を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0085】
さらに本実施形態では、同軸照明光L1の波長域λAと斜光照明光L2の波長域λBとを異ならせると共に正反射光L1Aと散乱光L2Aとを波長分離して撮像することで、従来の撮影画像D3のように明るくなり過ぎてワークWの表面のパターンが消失することが防止され、より多くのパターン(エッジ情報)を含んだ合成画像DCが得られる。この合成画像DCは、画像処理部78からアライメント検出部80に出力される。
【0086】
そして、アライメント検出部80は、画像処理部78から入力された合成画像DCに基づき、公知の手法でワークWの各ストリート(図示は省略)の位置を検出するアライメント検出を行い、そのアライメント検出結果を移動制御部72へ出力する(ステップS8)。
【0087】
次いで移動制御部72が、アライメント検出部80によるアライメント検出結果に基づき、相対移動機構49を駆動して加工対象のストリート(図示は省略)とブレード21A,21Bとのアライメントを行う(ステップS9)。既述の合成画像DCに基づき、より多くのパターン(エッジ情報)を用いてアライメント検出を行ったり、或いは従来では消失してしまうような情報の少ないパターンを用いてアライメント検出を行ったりすることができる。その結果、アライメント検出及びアライメントの精度を向上させることができる。
【0088】
アライメントが完了すると、加工制御部82は、ブレード駆動制御部70及び移動制御部72を介してスピンドル22A,22B及び相対移動機構49を駆動して、ワークWのストリート(図示は省略)ごとにブレード21A,21Bによるダイシング加工を行う(ステップS10)。
【0089】
以上のように第1実施形態では、同軸照明光L1の波長域λAと斜光照明光L2の波長域λBとを互いに異ならせておくことで、カラーカメラ56により正反射光L1Aと散乱光L2Aとに簡単に波長分離して個別に撮像することができる。その結果、同軸照明及び斜光照明を同時に行う場合においても、同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整を簡単かつ適切に行うことができる。
【0090】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態のダイシング装置10のブロック図である。
図12は、第2実施形態の顕微鏡23の側面図である。上記第1実施形態では、カラーカメラ56のカラー撮像素子56bにより正反射光L1Aと散乱光L2Aとを波長分離して撮像しているが、第2実施形態では、カラー撮像素子56bを用いることなく正反射光L1Aと散乱光L2Aとを波長分離して撮像する。
【0091】
図11及び
図12に示すように、第2実施形態のダイシング装置10は、顕微鏡23にハーフミラー52d、透過フィルタ52e、及び透過フィルタ52fが設けられている点と、顕微鏡23にカラーカメラ56の代わりに第1カメラ59A及び第2カメラ59Bが設けられている点と、を除けば上記第1実施形態の基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。なお、第2実施形態では、ハーフミラー52d、透過フィルタ52e、透過フィルタ52f、第1カメラ59A、及び第2カメラ59Bにより本発明の撮像部が構成される。
【0092】
ハーフミラー52dは、本発明の光分離素子に相当するものであり、ハーフミラー52bのZ方向上方側に配置されている。このハーフミラー52dは、ハーフミラー52bから入射した混合光LMの一部(本発明の第1光に相当)をZ方向上方側に透過し、且つ混合光LMの残り(本発明の第2光に相当)を側方、ここではX方向に反射する。なお、混合光LMを2分割可能であれば、ハーフミラー52d以外の各種光分離素子を用いてもよい。
【0093】
透過フィルタ52e(本発明の第1フィルタに相当)は、ハーフミラー52bのZ方向上方側の位置で且つ混合光LMの光路上に配置されており、波長域λAの光のみを透過するバンドパスフィルタである。これにより、透過フィルタ52eは、ハーフミラー52dから混合光LMが入射すると、波長域λAの光である正反射光L1Aのみを透過して後述の第1カメラ59Aに向けて出射する。
【0094】
透過フィルタ52f(本発明の第2フィルタに相当)は、ハーフミラー52bの側方(混合光LMの反射方向側)で且つ混合光LMの光路上に配置されており、波長域λBの光のみを透過するバンドパスフィルタである。これにより、透過フィルタ52fは、ハーフミラー52dから混合光LMが入射すると、波長域λBの光である散乱光L2Aのみを透過して後述の第2カメラ59Bに向けて出射する。
【0095】
第1カメラ59Aは、透過フィルタ52eのZ方向上方側に配置されている。第1カメラ59Aは、所謂モノクロカメラであり、第1結像レンズ90aと、カラーフィルタアレイ58を有さない第1撮像素子92aと、を備える。
【0096】
第1結像レンズ90aは、透過フィルタ52eを透過した正反射光L1Aを第1撮像素子92aの受光面に結像させる。これにより、第1撮像素子92aは、正反射光L1Aのみを撮像して明視野像D1を統括制御部60へ出力する。この際に、第1撮像素子92aは、第1実施形態のカラー撮像素子56bとは異なり、受光面内(有効領域内)の全画素57を使って正反射光L1Aの撮像を行うため、第1実施形態よりも高解像度の明視野像D1が得られる。
【0097】
第2カメラ59Bは、透過フィルタ52fの出射面に対向する位置に配置されており、第2結像レンズ90bと、カラーフィルタアレイ58を有さない第2撮像素子92bと、を備える。第2結像レンズ90bは、透過フィルタ52fを透過した散乱光L2Aを第2撮像素子92bの受光面に結像させる。これにより、第2撮像素子92bは、散乱光L2Aのみを撮像して暗視野像D2を統括制御部60へ出力する。この際に、第2撮像素子92bも受光面内(有効領域内)の全画素57を使って散乱光L2Aの撮像を行うことができるので、第1実施形態よりも高解像度の暗視野像D2が得られる。
【0098】
第2実施形態の撮影制御部74は、少なくとも同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整前と、アライメント検出前とにおいて、第1カメラ59Aによる正反射光L1Aの撮像と第2カメラ59Bによる散乱光L2Aの撮像とを同時に実行させる。これにより、輝度調整前には第1カメラ59A及び第2カメラ59Bから輝度調整部76に対して明視野像D1及び暗視野像D2が入力される。その結果、上記第1実施形態と同様に、輝度調整部76による同軸照明部52及びリング照明部54の輝度調整が実行される。
【0099】
また、アライメント検出前には第1カメラ59A及び第2カメラ59Bから画像処理部78に対して明視野像D1及び暗視野像D2が入力される。これにより、上記第1実施形態と同様に、画像処理部78による合成画像DCの生成及びアライメント検出部80によるアライメント検出が実行される。
【0100】
このように第2実施形態では、ハーフミラー52d、透過フィルタ52e,52f、第1カメラ59A、及び第2カメラ59Bを組み合わせることで、第1実施形態と同様に正反射光L1Aと散乱光L2Aとを簡単に波長分離して同時に撮像することができる。その結果、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第1カメラ59A及び第2カメラ59B(モノクロカメラ)を用いることで、第1実施形態よりも高解像度の明視野像D1及び暗視野像D2が得られるため、アライメント検出の精度をより向上させることができる。
【0101】
[第2実施形態の変形例]
図13は、第2実施形態の顕微鏡23の変形例の側面図である。上記第2実施形態では、ハーフミラー52d及び透過フィルタ52e,52fを用いて混合光LMを正反射光L1Aと散乱光L2Aとに波長分離しているが、
図13に示すようにダイクロイックミラー52g(本発明の波長分離素子に相当)を用いて上述の波長分離を実行してもよい。この場合には、ダイクロイックミラー52g、第1カメラ59A、及び第2カメラ59Bにより本発明の撮像部が構成される。
【0102】
なお、混合光LMを正反射光L1Aと散乱光L2Aとに波長分離可能であれば、ダイクロイックミラー52g以外の各種波長分離素子を用いてもよい。
【0103】
以上のように第2実施形態の変形例では、ダイクロイックミラー52gを用いて混合光LMを正反射光L1Aと散乱光L2Aとに波長分離することで、上記第2実施形態よりも顕微鏡23の部品数を減らすことができるので、顕微鏡23の小型化及び低コスト化が図れる。
【0104】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態のダイシング装置10の顕微鏡23の側面図である。上記各実施形態では、同軸照明光L1及び斜光照明光L2として可視光を用いているが、第3実施形態では、同軸照明光L1及び斜光照明光L2のいずれか一方に赤外光(近赤外光を含む)を用いる。なお、第3実施形態のダイシング装置10は、顕微鏡23の同軸照明光源52aが赤外光の波長域λIRの同軸照明光L1を出射する点を除けば、上記第1実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0105】
図14に示すように、第3実施形態では同軸照明に同軸照明光L1(赤外光)を用いることで、カラーカメラ56が正反射光L1Aの撮像を行った場合にワークWの内部領域ARの赤外線透過画像である明視野像D1が得られる。一方、暗視野像D2については上記第1実施形態と同様にワークWの表面画像である。このため、第3実施形態では、同軸照明と斜光照明とを同時に行うことで、ワークWの内部領域ARの情報と表面の情報とが同時に得られる。なお、ワークWの表面と内部領域ARとではカラーカメラ56の合焦位置が異なるため、カラーカメラ56の合焦位置を変えて撮影を2回行ったり、或いは被写界深度の深いカラーカメラ56で撮影を行ったりしてもよい。
【0106】
また、第3実施形態では同軸照明に同軸照明光L1(赤外光)を用いることで、ワークWの表面のパターン等が樹脂(赤外光は透過する)で覆われている場合でも、明視野像D1に基づいてこのパターンの位置を検出することができる。このため、第3実施形態では、顕微鏡23を用いてダイシング加工により形成されるカーフの位置と、樹脂で覆われているパターンの位置とを同時に検出して、カーフの形成位置(ズレ量)を補正することができる。
【0107】
さらに第3実施形態では、ワークWの内部領域ARの情報と表面の情報とが同時に得られるので、上述の樹脂の厚みが薄い場合でも暗視野像D2に基づき樹脂表面の情報が得られる。すなわち、同軸照明及び斜光照明の双方で赤外光のみを用いた場合には、樹脂の厚みが薄いとその内部のパターンが透けて見えてしまうため、樹脂表面の観察が困難になるが、第3実施形態では斜光照明に可視光を用いることで樹脂表面の観察が可能になる。
【0108】
なお、上記第3実施形態では、同軸照明を赤外光で行い且つ斜光照明を可視光で行っているが、同軸照明を可視光で行い且つ斜光照明を赤外光で行ってもよい。また、上記第2実施形態においても同軸照明光L1及び斜光照明光L2のいずれか一方を赤外光としてもよい。
【0109】
[光源の変形例]
図15は、上記第1実施形態及び第2実施形態の光源の変形例を説明するための説明図である。上記第1実施形態及び第2実施形態では、同軸照明部52及びリング照明部54がそれぞれ独立した光源(同軸照明光源52a、各光源54a)を有しているが、同軸照明部52及びリング照明部54の光源を共通化する、すなわち共通光源100を顕微鏡23に設けてもよい。
【0110】
図15に示すように、共通光源100は、白色LED101と、ハーフミラー102と、透過フィルタ104と、ミラー106と、透過フィルタ108と、を備える。
【0111】
白色LED101は、白色光L0をハーフミラー102に向けて出射する。ハーフミラー102は、白色光L0を2分割してその一方を透過フィルタ104に向けて出射し且つその他方をミラー106に向けて出射する。ミラー106は、ハーフミラー102から入射した白色光L0を透過フィルタ108に向けて出射する。
【0112】
透過フィルタ104は、上記第2実施形態の透過フィルタ52eと基本的に同じものであり、波長域λAの光を透過する。これにより、透過フィルタ104は、ハーフミラー102から白色光L0が入射すると、波長域λAの同軸照明光L1のみを透過して同軸照明部52に供給する。これにより、同軸照明部52から同軸照明光L1を出射することができる。
【0113】
透過フィルタ108は、上記第2実施形態の透過フィルタ52fと基本的に同じものであり、波長域λBの光を透過する。これにより、透過フィルタ108は、ミラー106から白色光L0が入射すると、波長域λBの斜光照明光L2のみを透過してリング照明部54に供給する。これにより、リング照明部54から斜光照明光L2を出射することができる。このように共通光源100を用いることで、白色光L0から特定の2波長(波長域λA,λB)の光(可視光、赤外光、紫外光を含む)を取り出すことができる。なお、白色LED101の代わりに白色光L0を出射するハロゲンランプを使用してもよい。
【0114】
[顕微鏡の他の変形例]
図16は、正反射光L1A及び散乱光L2Aを時分割で撮像するダイシング装置10の顕微鏡110の一例を示した側面図である。上記各実施形態の顕微鏡23は正反射光L1A及び散乱光L2Aを同時撮像しているが、
図16に示す顕微鏡110のように、正反射光L1A及び散乱光L2Aを時分割で撮像してもよい。
【0115】
顕微鏡110は、ハーフミラー52d、透過フィルタ52e、透過フィルタ52f、及び第2カメラ59Bの代わりにフィルタ切替機構111を備える点を除けば、上記第2実施形態の顕微鏡23(
図12参照)と基本的に同じ構成である。このため、上記第2実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0116】
フィルタ切替機構111は、ハーフミラー52bと第1カメラ59Aとの間に配置されている。このフィルタ切替機構111は、統括制御部60の制御の下、混合光LMの光路上に透過フィルタ112Aと透過フィルタ112Bとを選択的に配置する。
【0117】
透過フィルタ112Aは、上記第2実施形態の透過フィルタ52eと基本的に同じものであり、波長域λAの光を透過する。これにより、透過フィルタ112Aが混合光LMの光路上に配置されている場合には、第1カメラ59Aに正反射光L1Aのみが入射する。その結果、第1カメラ59Aから統括制御部60に対して明視野像D1が出力される。
【0118】
透過フィルタ112Bは、上記第2実施形態の透過フィルタ52fと基本的に同じものであり、波長域λBの光を透過する。これにより、透過フィルタ112Bが混合光LMの光路上に配置されている場合には、第1カメラ59Aに散乱光L2Aのみが入射する。その結果、第1カメラ59Aから統括制御部60に対して暗視野像D2が出力される。
【0119】
以上のように、フィルタ切替機構111を駆動して混合光LMの光路上に透過フィルタ112A及び透過フィルタ112Bを順番に配置することで、第1カメラ59Aが正反射光L1A及び散乱光L2Aを時分割で撮像することができる。この場合においても、第1カメラ59Aにより撮像された明視野像D1及び暗視野像D2に基づき、上記各実施形態と同様に輝度調整及びアライメント検出等を実行することができる。
【0120】
なお、上記第1実施形態の顕微鏡23のカラー撮像素子56bがCOMS型である場合には、カラー撮像素子56bを制御することで、各カラーフィルタ58Rに対する複数の画素57による正反射光L1Aの撮像と、各カラーフィルタ58Bに対する複数の画素57による散乱光L2Aの撮像と、を時分割で行うことができる。
【0121】
[その他]
上記第1実施形態及び第2実施形態では、同軸照明光L1として赤色光を用い且つ斜光照明光L2としてワークWの表面で散乱し易い(波長の短い)青色光を用いているが、同軸照明光L1として青色光を用い且つ斜光照明光L2として赤色光を用いてよい。また、同軸照明光L1の波長域λA及び斜光照明光L2の波長域λBは互いに異なっていれば特に限定はされない。例えば同軸照明光L1及び斜光照明光L2の一方として紫外光を用い且つ他方として可視光を用いたり、一方として紫外光を用い且つ他方として赤外光を用いたりしてもよい。特に紫外光は散乱強度が高いので斜光照明光L2として有効である。
【0122】
なお、波長域λA及び波長域λBは単波長に限定されるものではなく、ブロードなスペクトルの中心波長であってもよい。この場合には、例えば同軸照明光L1として赤外光全域を使用し、斜光照明光L2として青色光から赤色光までの可視光全域を使用してもよい。
【0123】
また、波長域λA及び波長域λBは、互いに異なっていれば連続的な波長域でなくともよい。例えば、波長域λAの同軸照明光L1として緑色波長域を使用した場合に、波長域λBの斜光照明光L2として赤色波長域の光と青色波長域の光を使用してもよい。
【0124】
さらに、同軸照明光L1及び斜光照明光L2として3以上の互いに異なる波長域の光を使用してもよい。この場合には、例えば
図17に示すように、リング照明部54とは異なる入射角度でワーク保持面31aに対して斜め方向から波長域λCの斜光照明光L3を照射するリング照明部54-1(各光源54a)を顕微鏡23に追加してもよい。さらにまた、ワーク保持面31aに対する斜光照明光の入射角度とその波長域を異ならせた複数のリング照明部をさらに追加してもよい。
【0125】
上記各実施形態では、リング照明部54によりワークWに対する斜光照明を行っているが、リング照明部54の代わりに斜光照明が可能な各種の斜光照明部を用いてもよい。
【0126】
上記各実施形態では、ブレード21A,21Bを用いてワークWのダイシング加工を行うダイシング装置10及びその顕微鏡23を例に挙げて説明したが、レーザ光を用いてウェーハのダイシング加工を行うダイシング装置10及びその顕微鏡23にも本発明を適用可能である。
【0127】
上記各実施形態ではダイシング装置10及びその顕微鏡23を例に挙げて説明したが、ウェーハの内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置、ブレード21A,21Bの診断を行う診断装置、又はワークW上に形成された複数のチップの検査を行うプローバなどの各種の半導体製造装置及びその顕微鏡に本発明を適用可能である。さらに本発明は、半導体製造装置以外に用いられる顕微鏡であって且つ各種の被観察物に対して同軸照明及び斜光照明を同時に行う顕微鏡にも適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 ダイシング装置
10A 筐体
12 ロードポート
14 搬送機構
16 加工部
18 洗浄部
21A,21B ブレード
22A,22B スピンドル
23 顕微鏡
31 テーブル
31a ワーク保持面
32 Xベース
34 Xガイド
35 X駆動部
36 Xキャリッジ
37 回転ユニット
38 回転駆動部
41 Yベース
42 Yガイド
43 Yキャリッジ
44 Zキャリッジ
46 Y駆動部
48 Z駆動部
49 相対移動機構
52 同軸照明部
52a 同軸照明光源
52b ハーフミラー
52c 対物レンズ
52d ハーフミラー
52e 透過フィルタ
52f 透過フィルタ
52g ダイクロイックミラー
54 リング照明部
54a 光源
56 カラーカメラ
56a 結像レンズ
56b カラー撮像素子
57 画素
58 カラーフィルタアレイ
58B カラーフィルタ
58G カラーフィルタ
58R カラーフィルタ
59A 第1カメラ
59B 第2カメラ
60 統括制御部
62 操作部
64 記憶部
66 表示部
70 ブレード駆動制御部
72 移動制御部
74 撮影制御部
76 輝度調整部
78 画像処理部
80 アライメント検出部
82 加工制御部
90a 第1結像レンズ
90b 第2結像レンズ
92a 第1撮像素子
92b 第2撮像素子
100 共通光源
101 白色LED
102 ハーフミラー
104 透過フィルタ
106 ミラー
108 透過フィルタ
110 顕微鏡
111 フィルタ切替機構
112A,112B 透過フィルタ
AR 内部領域
CA 回転軸
D1 明視野像
D2 暗視野像
D3 撮影画像
DC 合成画像
F フレーム
L0 白色光
L1 同軸照明光
L1A 正反射光
L2 斜光照明光
L2A 散乱光
LM 混合光
O1 光軸
W ワーク
λA 波長域
λB 波長域
λIR 波長域