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  • 特開-物品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071514
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 36/04 20060101AFI20230516BHJP
   C08C 19/08 20060101ALI20230516BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08F36/04
C08C19/08
B60C19/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184354
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】ダサナヤケ アルツゲ ラシカ
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宣利
(72)【発明者】
【氏名】張 錦良
(72)【発明者】
【氏名】中間 友樹
【テーマコード(参考)】
3D131
4J100
【Fターム(参考)】
3D131BC07
3D131BC09
3D131BC51
3D131BC55
3D131LA26
3D131LA28
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100AS02Q
4J100AS03P
4J100CA01
4J100CA03
4J100HA59
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】安定したガス組成の排ガスを回収し、均一な品質の新たな物品を効率よく製造し得る物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、物品を製造する方法が提供される。この方法は、廃棄された物品のうちの少なくとも有機成分および/またはそのガス化物を、鉱石とともに溶解炉に供給して精錬する第1の工程と、溶解炉から排出され、一酸化炭素および二酸化炭素を含む排ガスを回収する第2の工程と、排ガス中の一酸化炭素を使用して、有機成分を構成するモノマーを得る第3の工程と、モノマーを単独でまたは他のモノマーと重合することにより、有機成分を得る第4の工程と、有機成分を使用して、物品を製造する第5の工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を製造する方法であって、
廃棄された前記物品のうちの少なくとも有機成分および/またはそのガス化物を、鉱石とともに溶解炉に供給して精錬する第1の工程と、
前記溶解炉から排出され、一酸化炭素および二酸化炭素を含む排ガスを回収する第2の工程と、
前記排ガス中の前記一酸化炭素を使用して、前記有機成分を構成するモノマーを得る第3の工程と、
前記モノマーを単独でまたは他のモノマーと重合することにより、前記有機成分を得る第4の工程と、
前記有機成分を使用して、前記物品を製造する第5の工程と、を有する、物品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の物品の製造方法において、
さらに、前記第2の工程と前記第3の工程との間に、前記排ガス中の前記一酸化炭素の濃度を高める追加の工程を有する、物品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の物品の製造方法において、
前記追加の工程では、前記排ガスから前記二酸化炭素を分離し、分離された前記二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、前記排ガスに再度合流させる、物品の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の物品の製造方法において、
前記追加の工程では、前記排ガスを燃焼させることにより前記一酸化炭素を二酸化炭素に変換した後、前記二酸化炭素を一酸化炭素に変換する、物品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の物品の製造方法において、
前記第3の工程では、前記一酸化炭素から触媒または微生物の作用により前記モノマーを得る、物品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の物品の製造方法において、
前記第3の工程では、前記一酸化炭素から微生物の作用により中間生成物を生成し、前記中間生成物から触媒の作用により前記モノマーを得る、物品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の物品の製造方法において、
前記第1の工程では、前記物品自体および/またはその粉砕物を前記溶解炉に供給する、物品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の物品の製造方法において、
前記物品は、さらに無機成分を含む、物品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の物品の製造方法において、
前記物品は、前記有機成分としてゴム成分を含み、前記無機成分として金属成分を含むタイヤである、物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤから再生タイヤを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。このタイヤの製造方法では、まず、廃タイヤを高温下で熱分解して、C1ガスを含むガスを発生させる。次に、このガスに含まれる一酸化炭素を微生物によりイソプレンに転化して、リサイクルタイヤ材料を得る。そして、リサイクルタイヤ材料を重合させてポリイソプレンゴムとし、これを主材料として加工することにより、再生タイヤを製造する。
【0003】
しかしながら、かかる方法では、廃タイヤを高温に加熱することにより熱分解するだけなので、廃タイヤの種類、加熱条件等によって、発生するガスのガス組成が大きく変動することが、本発明者らの検討により判明している。そして、ガス組成が変動するガスを使用することにより、リサイクルタイヤ材料やポリイソプレンの生産量、品質等にバラツキが生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表第2014/115437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、安定したガス組成の排ガスを回収し、均一な品質の新たな物品を効率よく製造し得る物品の製造方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、物品を製造する方法が提供される。この方法は、廃棄された物品のうちの少なくとも有機成分および/またはそのガス化物を、鉱石とともに溶解炉に供給して精錬する第1の工程と、溶解炉から排出され、一酸化炭素および二酸化炭素を含む排ガスを回収する第2の工程と、排ガス中の一酸化炭素を使用して、有機成分を構成するモノマーを得る第3の工程と、モノマーを単独でまたは他のモノマーと重合することにより、有機成分を得る第4の工程と、有機成分を使用して、物品を製造する第5の工程と、を有する。
【0007】
本発明の一態様によれば、安定したガス組成の排ガスを回収し、均一な品質の新たな物品を効率よく製造し得る。また、排ガスを有効利用することにより、その排出量を削減して、サーキュラーエコノミー(物質循環型社会)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】タイヤの製造システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の物品の製造方法について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下の説明では、物品の代表として、タイヤを一例とする。
まず、本実施形態のタイヤの製造方法の説明に先立って、タイヤの製造システムについて説明する。
図1は、タイヤの製造システムの全体構成を示す模式図である。
図1に示す製造システム1は、高炉(溶解炉)2と、CO濃縮部3と、モノマー生成部4と、ゴム成分合成部5と、タイヤ製造部6とを備えている。
【0010】
本実施形態では、高炉2から排出される排ガスを利用する構成であるが、例えば、製鉄所または精錬所に付属するその他の炉であってもよい。好ましい他の炉としては、シャフト炉、転炉、電気炉等が挙げられる。各炉では、内容物の溶融、精錬等の際に、排ガスが生成(発生)する。排ガスは、通常、二酸化炭素および一酸化炭素に加えて、窒素、酸素、水蒸気、メタン等の他のガス成分を含む。
高炉2からの排ガス(高炉ガス)は、高炉2において銑鉄を製造する際に発生するガスであり、二酸化炭素が10~15体積%、窒素が55~60体積%、一酸化炭素が25~30体積%、水素が1~5体積%で含まれる。
【0011】
また、転炉からの排ガス(転炉ガス)は、転炉において鋼を製造する際に発生するガスであり、二酸化炭素が15~20体積%、一酸化炭素が50~60体積%、窒素が15~25体積%、水素が1~5体積%で含まれる。
これらの排ガスを使用すれば、従来、大気中に排出していた二酸化炭素を有効利用することができ、環境への負荷を低減するとともに、物質循環の程度をより高めることができる。
【0012】
CO濃縮部3では、排ガス中の一酸化炭素の濃度を高める。
排ガス中の一酸化炭素の濃度を高める方法としては、例えば、I:排ガスから二酸化炭素を一旦分離し、分離された二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、排ガスに再度合流させる方法、II:排ガスを燃焼させることにより一酸化炭素を二酸化炭素に変換した後、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する方法等が挙げられる。
なお、CO濃縮部3では、別途用意した一酸化炭素を排ガスに追加することにより、排ガス中の一酸化炭素の濃度を高めるようにしてもよい。
【0013】
Iの方法において、排ガスから二酸化炭素を分離する際には、例えば、低温分離方式(深冷方式)の分離器、圧力スイング吸着(PSA)方式の分離器、膜分離方式の分離器、温度スイング吸着(TSA)方式の分離器、アミン吸収式の分離器、アミン吸着式の分離器等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
一方、IIの方法において、排ガスを燃焼させることにより一酸化炭素を二酸化炭素に変換する際には、例えば、燃焼炉(燃焼ボイラー)等を使用することができる。
【0014】
また、IおよびIIの方法において、二酸化炭素の一酸化炭素への変換は、例えば、1つの反応器内で行う逆水性ガスシフト反応による方法、複数の反応器を切り換えて行うケミカルルーピング法、二酸化炭素の電気分解法等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、ケミカルルーピング法とは、逆水性ガスシフト反応を、二酸化炭素の一酸化炭素への変換反応と、水素(還元物質)による還元反応との2つに分割し、これらの反応を還元剤に橋渡しさせる方法である。そして、複数の反応器を切り換えつつ、1つの反応器内で変換反応と還元反応とが交互に行われる。
この場合、還元剤は、各反応器に固定された固定床であってもよく、反応器の間を循環する流動床(移動床)であってもよい。
【0015】
逆水性ガスシフト反応に使用する還元剤は、例えば、粒子状(顆粒状)、鱗片状、ペレット状等であることが好ましい。かかる形状の還元剤であれば、反応器(多管式反応器のチューブ)への充填効率を高めることができ、反応器に供給される排ガス(二酸化炭素)との接触面積をより増大させることができる。
還元剤が粒子状である場合、その体積平均粒径は、特に限定されないが、1~50mmであることが好ましく、3~30mmであることがより好ましい。この場合、還元剤と排ガスとの接触面積をさらに高め、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率をより向上させることができる。同様に、ケミカルルーピング法の場合、水素による還元剤の再生(還元)もより効率よく行うことができる。
粒子状の還元剤は、より球形度が高まることから、転動造粒により製造された造粒物であることが好ましい。
【0016】
また、還元剤は、担体に担持させるようにしてもよい。
担体の構成材料としては、排ガスとの接触、反応条件等によらず変性し難い材料が好適であり、特に限定されないが、例えば、炭素材料(グラファイト、グラフェン等)、ゼオライト、モンモリロナイト、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、アルミナ、酸化バナジウムまたはこれらの複合酸化物等が挙げられる。
かかる材料で構成される担体は、還元剤の反応に悪影響を及ぼさず、還元剤の担持能に優れる点で好ましい。ここで、担体は、還元剤の反応には関与せず、還元剤を単に支持(保持)する。かかる形態の一例としては、担体の表面の少なくとも一部を還元剤で被覆する構成が挙げられる。
【0017】
還元剤に含まれる金属酸化物(酸素キャリア)は、二酸化炭素を還元することができれば、特に限定されない。
具体的な金属酸化物は、第3族~第12族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、第4族~第12属に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロムおよびセリウムのうちの少なくとも1種を含有することがさらに好ましく、鉄を含有する金属酸化物または複合酸化物が特に好ましい。これらの金属酸化物は、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率が特に良好なため有用である。
【0018】
モノマー生成部4では、排ガス中の一酸化炭素を使用して、ゴム成分(有機成分)を構成するモノマーを生成する。
ここで、モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブテン、ブタンジオール化合物、ブタノール化合物、ブテナール化合物およびコハク酸からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
ブタンジオール化合物としては、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールが挙げられる。ブタノール化合物としては、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノールが挙げられる。ブテナール化合物としては、2-ブテナール、3-ブテナールが挙げられる。
これらの中でも、タイヤのゴム成分を合成するのに適していることから、モノマーは、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
モノマー生成部4では、A:一酸化炭素から触媒または微生物の作用により直接モノマーを得てもよく、B:一酸化炭素から微生物の作用により中間生成物を生成し、中間生成物から触媒の作用によりモノマーを得てもよい。
Aの方法で使用可能な触媒としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、マンガン、ゲルマニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ランタン、セリウム、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、ケイ素またはそれらの酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
Bの方法で生成される中間生成物としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、アセトアルデヒド、酢酸、乳酸、コハク酸等が挙げられる。
Bの方法で使用可能な触媒としては、例えば、ゲルマニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ランタン、セリウム、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、銀、銅、亜鉛、ケイ素またはそれらの酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
また、AおよびBの方法で使用可能な微生物としては、例えば、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、ムーレラ(Moorella)属細菌、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属細菌、カルボキシドセラ(Carboxydocella)属細菌、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属細菌、ユーバクテリウム(Eubacterium)属細菌、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)属細菌、オリゴトロファ(Oligotropha)属細菌、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、ラルソトニア(Ralsotonia)属細菌等が挙げられる。
これらの微生物は、そのまま使用することができる他、目的とする物質(化合物)を合成する酵素をコードする核酸を導入して使用することもできる。
【0021】
ゴム成分合成部5では、上記モノマーを単独でまたは他のモノマーと重合することにより、ゴム成分を合成する。
具体的なゴム成分としては、例えば、イソプレンの単独重合体(イソプレンゴム)、ブタジエンの単独重合体(ブタジエンゴム)、イソプレンとブタジエンとの共重合体(イソプレン/ブタジエン共重合体ゴム)、イソプレンとスチレンとの共重合体(イソプレン/スチレン共重合体ゴム)、ブタジエンとスチレンとの共重合体(ブタジエン/スチレン共重合体ゴム)、エチレンとプロピレンとの共重合体(エチレン/プロピレン共重合体ゴム)等が挙げられる。これらのゴム成分は、タイヤの素材として適していることから好ましい。
【0022】
タイヤ製造部6では、得られたゴム成分を使用して、タイヤ(再生タイヤ)を製造する。具体的には、ゴム成分を架橋反応させてタイヤのゴム部分を製造する。
また、上記ゴム成分(再生ゴム成分)に加えて、他のゴム成分を使用してもよい。他のゴム成分としては、新規に合成されたゴム成分等が挙げられる。この場合、再生ゴム成分の使用割合が多いほど、環境負荷を低減でき、得られるタイヤの製造コストを削減することができる。
【0023】
タイヤの製造には、ゴム成分以外の化合物も使用される。かかる化合物としては、顔料、硫黄、ポリエステル化合物等が挙げられる。
顔料としては、炭素顔料であることが好ましく、カーボン顔料であることがより好ましい。顔料の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
また、タイヤの製造には、金属製ワイヤ等の補強材も使用される。
【0024】
製造されたタイヤ(再生タイヤ)が使用され、耐用年数を経過したり、摩耗等により劣化した場合、廃棄されて廃タイヤとなる。
この廃タイヤ(廃棄された物品)は、ゴム成分(ゴム部分のみ)、廃タイヤ自体、廃タイヤの粉砕物がコークスと混合され、鉄鉱石とともに、高炉2に供給され、鉄の精錬(製鉄)が行われる。
なお、ゴム成分は、高温での加熱によりガス化物として、高炉2に供給してもよく、上記固形物と併せて高炉2に供給するようにしてもよい。ガス化物の生成には、例えば、コークス炉、ガス化炉、燃焼炉等を使用することができる。
特に、廃タイヤからゴム成分を分離することなく、廃タイヤ自体および/またはその粉砕物を高炉2に供給することが好ましい。この場合、廃タイヤに含まれる金属成分(無機成分)も製鉄に使用することができ、廃棄物の更なる削減に寄与する。
【0025】
次に、本実施形態のタイヤの製造方法(すなわち、製造システム1の使用方法)について説明する。
本実施形態のタイヤ製造方法は、例えば、図1に示す製造システム1を使用して行われるタイヤを製造する方法である。
[1]まず、廃タイヤのうちの少なくともゴム成分および/またはそのガス化物を、鉄鉱石とともに高炉2に供給して精錬する(第1の工程)。このとき、高炉2からは、一酸化炭素および二酸化炭素を含む排ガスが排出される。
[2]次に、高炉2から排出された排ガスを回収する(第2の工程)。
【0026】
[3]次に、この回収した排ガスをCO濃縮部3に供給し、上述したような方法で、排ガス中の一酸化炭素の濃度を高める(第2の工程と第3の工程との間の追加の工程)。なお。本工程は、省略してもよい。この場合、高炉2からの排ガスをそのまま使用することができる。
[4]次に、一酸化炭素の濃度を高めた排ガスを、モノマー生成部4に供給し、上述したような方法で、タイヤのゴム成分を構成するモノマーを生成する(第3の工程)。
[5]次に、得られたモノマーを、ゴム成分合成部5に供給し、上述したような方法で、ゴム成分を合成する(第4の工程)。
【0027】
[6]次に、合成されたゴム成分、添加剤等を使用してゴム部分を得るとともに、補強材等も使用して、タイヤ(再生タイヤ)を製造する(第5の工程)。
[7]その後、再度使用され、廃棄されたタイヤは、製造システム1に供給される。そして、上記工程[1]~[6]を経て、再生タイヤとして再度生まれ変わる。
このように、廃タイヤを再生して使用することにより、環境負荷を大幅に低減することができる。また、高炉2からの排ガスでは、一酸化炭素、二酸化炭素等のガス組成が安定するため、品質のバラツキの少ないゴム成分を得易い。よって、均一な品質の新たなタイヤを効率よく製造し得る。
【0028】
なお、上述したような製造方法(製造システム1)によれば、排ガスを有効利用することにより、その排出量を削減することができる。また、適切な装置構成を選択することにより、物品のマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルおよびサーマルリサイクルを同時に達成することもできる。このようなことから、上記製造方法(製造システム1)によれば、サーキュラーエコノミー(物質循環型社会)を実現することができる。
特に、廃タイヤ自体や、その粉砕物を使用した場合には、これらに含まれる金属材料も有効利用することができる。
【0029】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記物品の製造方法において、さらに、前記第2の工程と前記第3の工程との間に、前記排ガス中の前記一酸化炭素の濃度を高める追加の工程を有する、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記追加の工程では、前記排ガスから前記二酸化炭素を分離し、分離された前記二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、前記排ガスに再度合流させる、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記追加の工程では、前記排ガスを燃焼させることにより前記一酸化炭素を二酸化炭素に変換した後、前記二酸化炭素を一酸化炭素に変換する、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記第3の工程では、前記一酸化炭素から触媒または微生物の作用により前記モノマーを得る、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記第3の工程では、前記一酸化炭素から微生物の作用により中間生成物を生成し、前記中間生成物から触媒の作用により前記モノマーを得る、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記第1の工程では、前記物品自体および/またはその粉砕物を前記溶解炉に供給する、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記物品は、さらに無機成分を含む、物品の製造方法。
前記物品の製造方法において、前記物品は、前記有機成分としてゴム成分を含み、前記無機成分として金属成分を含むタイヤである、物品の製造方法。
もちろん、この限りではない。
【0030】
上記実施形態では、物品の代表として、有機成分としてゴム成分を含み、無機成分として金属成分を含むタイヤを一例にして説明したが、物品はこれに限定されない。
物品の有機成分は、ゴム成分に限らず、樹脂成分、エラストマー成分、これらの組み合わせ等であってもよい。また、物品の無機成分は、金属成分に限らず、セラミックス成分、これらの組み合わせ等であってもよい。
また、物品は、有機成分単独で構成されていてもよい。
【0031】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0032】
例えば、本発明の物品の製造方法は、他の任意の追加の構成を有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよく、一部の構成が省略されていてもよい。
また、本発明の物品の製造方法は、任意の目的の工程が追加されていてもよい。
また、本発明では、鉄鉱石に代えて、鉄以外の金属を含む鉱石を使用することができる。この場合、鉱石の種類に応じて、使用する溶解炉の種類を変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 :製造システム
2 :高炉
3 :CO濃縮部
4 :モノマー生成部
5 :ゴム成分合成部
6 :タイヤ製造部
図1