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特開2023-71578レールの腐食防止方法、レールの補修構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071578
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】レールの腐食防止方法、レールの補修構造
(51)【国際特許分類】
   E01B 5/02 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
E01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060622
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021184159
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】原 崇晃
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】古橋 勝之
(72)【発明者】
【氏名】浪花 直人
(57)【要約】
【課題】繊維強化プリプレグシートがレールから浮き難く、かつ施工が容易なレールの腐食防止方法を提供する。
【解決手段】繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13を被覆するとともに、繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13と連続するレール10の腹部12の両側面を被覆する、レールの腐食防止方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プリプレグシートでレールの底部を被覆するとともに、前記繊維強化プリプレグシートで前記レールの底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する、レールの腐食防止方法。
【請求項2】
レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程と、
前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に接着剤を塗布する工程と、
前記レールの底部および腹部における前記接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付ける工程と、
紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程と、を有する、請求項1に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項3】
レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程と、
繊維強化プリプレグシートに接着剤を塗布する工程と、
前記繊維強化プリプレグシートの前記接着剤を塗布した面を、前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に貼り付ける工程と、
紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程と、を有する、請求項1に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項4】
前記繊維強化プリプレグシートは、ガラス繊維と、硬化性樹脂と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項5】
前記繊維強化プリプレグシートの厚さは、3.0mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項6】
前記硬化性樹脂は、光硬化型ビニルエステル樹脂である、請求項4に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項7】
前記繊維強化プリプレグシートは、鉄道車両用燃焼性試験による難燃性以上を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項8】
前記繊維強化プリプレグシートを複数枚用い、複数枚の繊維強化プリプレグシートが互いに前記レールの長手方向で一部が重なっている、請求項1~7のいずれか1項に記載のレールの腐食防止方法。
【請求項9】
レールと、前記レールの底部、および前記底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する繊維強化プリプレグシートと、を有する、レールの補修構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの腐食防止方法、レールの補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レールには、電車の動力となる電気が流れている。そのため、レールは腐食が進行しやすくなっている。そして、レールの腐食は、わずかに発生するだけでも、レールの折損を引き起こす原因となる。そのため、レールの腐食防止方法としては、例えば、レールの底部にテープを巻き付けて腐食の進行を妨げるテープ工法、レールの底部にアラミド繊維を巻き付け、さらにアラミド繊維に樹脂を含浸させて腐食の進行を妨げるアラミド繊維工法等が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、テープ工法は、摩耗性が低く、現場でテープを使用する際に、テープが劣化してレールが腐食するという課題がある。
【0004】
アラミド繊維工法は、現場でアラミド繊維に樹脂を含浸させる工法であるため、施工性に課題がある。アラミド繊維工法は、素地ケレン工程と、プライマーを塗布する工程と、エポキシ樹脂を塗布する工程と、アラミド繊維を貼付ける工程と、上塗りエポキシ樹脂を塗布する工程と、アラミド繊維に前記の樹脂を含浸する工程と、前記の樹脂を硬化する工程とを有するため、煩雑、かつ、作業者による樹脂の含浸技術が必要な複雑なプロセスとなっている。
【0005】
施工性の問題を解決する方法としては、例えば、繊維強化プリプレグシート工法が知られている。繊維強化プリプレグシート工法は、強化繊維に樹脂が含浸した繊維強化プリプレグシートを対象物に貼付ける工法である。繊維強化プリプレグシート工法は、素地ケレン工程と、プライマーを塗布する工程と、接着剤を塗布する工程と、繊維強化プリプレグシートを貼付ける工程と、繊維強化プリプレグシートに含まれる樹脂を硬化する工程とを有する。繊維強化プリプレグシート工法は、鋼管や歩道橋等の鋼構造物に用いられている工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-108768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記繊維強化プリプレグシートをレールの腐食に適用するには、繊維強化プリプレグシートがレールのような複雑形状へ追従して、その複雑形状に貼付けできる必要がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維強化プリプレグシートがレールから浮き難く、かつ施工が容易なレールの腐食防止方法およびレールの補修構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]繊維強化プリプレグシートでレールの底部を被覆するとともに、前記繊維強化プリプレグシートで前記レールの底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する、レールの腐食防止方法。
[2]レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程と、
前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に接着剤を塗布する工程と、
前記レールの底部および腹部における前記接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付ける工程と、
紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程と、を有する、[1]に記載のレールの腐食防止方法。
[3]レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程と、
繊維強化プリプレグシートに接着剤を塗布する工程と、
前記繊維強化プリプレグシートの前記接着剤を塗布した面を、前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に貼り付ける工程と、
紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程と、を有する、[1]に記載のレールの腐食防止方法。
[4]前記繊維強化プリプレグシートは、ガラス繊維と、硬化性樹脂と、を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のレールの腐食防止方法。
[5]前記繊維強化プリプレグシートの厚さは、3.0mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のレールの腐食防止方法。
[6]前記硬化性樹脂は、光硬化型ビニルエステル樹脂である、[4]に記載のレールの腐食防止方法。
[7]前記繊維強化プリプレグシートは、鉄道車両用燃焼性試験による難燃性以上を有する、[1]~[6]のいずれかに記載のレールの腐食防止方法。
[8]前記繊維強化プリプレグシートを複数枚用い、複数枚の繊維強化プリプレグシートが互いに前記レールの長手方向で一部が重なっている、[1]~[7]のいずれかに記載のレールの腐食防止方法。
[9]レールと、前記レールの底部、および前記底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する繊維強化プリプレグシートと、を有する、レールの補修構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維強化プリプレグシートがレールから浮き難く、かつ施工が容易なレールの腐食防止方法およびレールの補修構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るレールの腐食防止方法およびレールの補修構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るレールの腐食防止方法で用いられる繊維強化プリプレグシートの燃焼性試験を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るレールの腐食防止方法で用いられる繊維強化プリプレグシートの貼付け方を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るレールの腐食防止方法で用いられる繊維強化プリプレグシートの貼付け方を示す断面図である。
図5】実施例5~実施例8において、鋼板および繊維強化プリプレグシートを含む積層体の曲げ強度の測定方法を示す断面図である。
図6】実施例5~実施例10において、鋼板および繊維強化プリプレグシートを含む積層体の曲げ強度の測定方法を示す断面図である。
図7】実施例9において、鋼板および繊維強化プリプレグシートを含む積層体の曲げ強度の測定方法を示す断面図である。
図8】実施例10において、鋼板および繊維強化プリプレグシートを含む積層体の曲げ強度の測定方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のレールの腐食防止方法およびレールの補修構造について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るレールの腐食防止方法およびレールの補修構造を示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0014】
[レールの腐食防止方法]
本実施形態のレールの腐食防止方法は、繊維強化プリプレグシートでレールの底部を被覆するとともに、前記繊維強化プリプレグシートで前記レールの底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する方法である。
【0015】
本実施形態のレールの腐食防止方法は、レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程(以下、「工程A1」と言う。)と、前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に接着剤を塗布する工程(以下、「工程B1」と言う。)と、前記レールの底部および腹部における前記接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付ける工程(以下、「工程C1」と言う。)と、紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程(以下、「工程D1」と言う。)と、を有することが好ましい。
【0016】
図1に示すように、レール10は、頭部11と、腹部12と、底部13とを有する。レール10は、鉛直下方から上方に向かって順に連続する底部13と、腹部12と、頭部11とを、有する。
底部13は、断面形状が略三角形状をなしている。底部13は、枕木の表面等の設置面に接する底面13aと、底面13aと連続し、底部13の一方の端13dおよび他方の端13eから立ち上がる一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13cとを有する。
腹部12は、断面形状が略長方形状をなしている。腹部12は、底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13cと連続する両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)を有する。
頭部11は、断面形状が略長方形状をなしている。
【0017】
本実施形態のレールの腐食防止方法では、工程A1の前に、レール10の表面、特に、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)と、レール10の底部13の底面13a、およびレール10の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13cとに対して、素地調製(下地処理)を行い、錆を落とすことが好ましい。
【0018】
素地調製の方法としては、例えば、グラインダーやサンドペーパーでのケレンが挙げられる。
【0019】
「工程A1」
工程A1では、レール10の底部13および腹部12にプライマーを塗布する。詳細には、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12cおよび他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13dおよび他方の端13eにプライマーを塗布する。
【0020】
レール10の底部13および腹部12にプライマーを塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り方法、ローラー塗り方法、スプレー塗布方法等を用いることができる。
【0021】
プライマーの塗布量は、レール10の底部13および腹部12の表面の単位面積当たり、0.05kg/m以上0.25kg/m以下であることが好ましく、0.1kg/m以上0.2kg/m以下であることがより好ましい。プライマーの塗布量が前記下限値以上であれば、レール10の底部13および腹部12の表面と接着剤との密着性を向上することができる。プライマーの塗布量が前記上限値以下であれば、プライマーを対象物に均一に塗布することが可能である。
【0022】
プライマーとしては、例えば、エポキシ樹脂系プライマー、ウレタン樹脂系プライマー、ポリエステル樹脂系プライマー、ポリプロピレン樹脂系プライマー等が挙げられる。これらの中でも、作業性の観点から、ウレタン樹脂系プライマーが好ましい。
【0023】
プライマーを塗布した後、タック(べたつき)がなくなるまで養生する。
【0024】
「工程B1」
工程B1では、工程A1で塗布したプライマーを介して、レール10の底部13および腹部12に接着剤を塗布する。詳細には、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)と、レール10の底部13の底面13a、並びにレール10の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13cとに、プライマーを介して接着剤を塗布する。
【0025】
レール10の底部13および腹部12に接着剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り法、スプレー塗布法等を用いることができる。
【0026】
接着剤の塗布量は、レール10の底部13および腹部12の表面の単位面積当たり、0.05kg/m以上0.25kg/m以下であることが好ましく、0.1kg/m以上0.2kg/m以下であることがより好ましい。接着剤の塗布量が前記下限値以上であれば、レール10の底部13および腹部12の表面と繊維強化プリプレグシート20とを十分に接着することができる。接着剤の塗布量が前記上限値以下であれば、作業性が向上する。
【0027】
接着剤としては、2液混合型の接着剤が好ましい。2液混合型の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤等が挙げられる。これらの中でも、耐食性の観点から、ビニルエステル樹脂系接着剤が好ましい。
【0028】
「工程C1」
工程C1では、まず、上記接着剤を塗布したレール10の一方の腹部側面12aに繊維強化プリプレグシート20を貼付ける。次に、繊維強化プリプレグシート20を、腹部12と底部13の境界12cで折り曲げて、レール10の底部13の一方の底部上面13bに貼付ける。次に、繊維強化プリプレグシート20を、レール10の底部13の一方の端13dで折り曲げて、レール10の底部13の底面13aに貼付ける。次に、繊維強化プリプレグシート20を、レール10の底部13の他方の端13eで折り曲げて、レール10の底部13の他方の底部上面13cに貼付ける。次に、繊維強化プリプレグシート20を、腹部12と底部13の境界12dで折り曲げて、レール10の他方の腹部側面12bに貼付ける。
【0029】
繊維強化プリプレグシート20は、補強部材と、硬化性樹脂とを含む未硬化樹脂シートである。硬化性樹脂は、補強部材に含浸している。
【0030】
補強部材としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維、ビニロン繊維等の有機繊維、炭素繊維、スチール繊維等の金属繊維等の繊維が挙げられる。これらの中でも、コストの観点から、ガラス繊維が好ましい。
【0031】
繊維の形態としては特に限定されず、例えば、トウ、クロス、チョップダイバー、連続繊維等の繊維を一方向に引き揃えた形態;連続繊維を経緯にして織物とした形態;トウの方向を一方向に引揃え横糸補助糸で保持した形態;繊維の方向を一方向に引揃えた複数の繊維シートをそれぞれの繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態;および、繊維の不織布の形態等が挙げられる。これらの中でも、繊維が等方的に配置されている観点から、不織布が好ましい。
【0032】
硬化性樹脂としては、例えば、光硬化型ビニルエステル樹脂、光硬化型不飽和ポリエステル樹脂、光硬化型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐食性の観点から、光硬化型ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0033】
繊維強化プリプレグシート20は、目付量が450g/m以上1050g/m以下であることが好ましく、600g/m以上900g/m以下であることがより好ましい。前記目付量が前記下限値以上であると、繊維強化プリプレグシート20は、耐食性に優れる。前記目付量が前記上限値以下であると、繊維強化プリプレグシート20は、可撓性に優れ、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12cおよび他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13dおよび他方の端13eに沿って容易に変形し、これらの面に貼付けることができる。
【0034】
繊維強化プリプレグシート20は、厚さが3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。前記厚さが前記上限値以下であると、繊維強化プリプレグシート20は、可撓性に優れ、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12cおよび他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13dおよび他方の端13eに沿って容易に変形し、これらの面に貼付けることができる。
【0035】
繊維強化プリプレグシート20は、厚さが1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。前記厚さが前記下限値以上であると、繊維強化プリプレグシート20は、耐食性に優れる。
また、レール10の底部13および腹部12における接着剤を塗布した面に貼付ける繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものであってもよく、2枚以上を組み合わせたものであってもよい。レール10に貼付ける工程を簡略化するためには、繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものが好ましい。
【0036】
繊維強化プリプレグシート20は、鉄道車両用燃焼性試験による難燃性を有することが好ましい。より好ましくは、不燃性であることが好ましい。
レールは、保守点検で、削正車でレール頭部を削る作業があり、繊維強化プリプレグシートには火花がかかる。そのため、繊維強化プリプレグシート20には、鉄(レール)に貼り付けた構成で難燃性以上(火元が離れると燃えない性質)が必要となる。
【0037】
鉄道車両用燃焼性試験について説明する。
鉄道車両用燃焼性試験は、「鉄道車両用材料燃焼性試験のご案内 燃焼試験 JRMA 一般社団法人 日本鉄道車両機械技術協会」に記載されている方法に準拠して行う。
燃焼試験(鉄道車両用非金属材料)方法は、図2に示すように、B5の供試材(182mm×257mm)110を45°傾斜に保持し、燃料容器120の底の中心が、供試材110の下面(燃焼面)中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台130に載せ、燃料容器120に純エチルアルコール0.5mLを入れて着火し、純エチルアルコールが燃え尽きるまで放置する。
燃焼判定は、純エチルアルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて判定する。純エチルアルコールの燃焼中は、供試材110への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察する。純エチルアルコールの燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。
供試体110の試験前処理は、供試体110が吸湿性の材料の場合、所定寸法に仕上げたものを、通気性のある室内で直射日光を避け床面から1m以上離し、5日以上経過させる。
試験室内の条件は、温度:15℃~30℃、湿度:60%~75%で空気の流動はない状態とする。
【0038】
また、工程C1では、繊維強化プリプレグシート20を複数枚用い、複数枚の繊維強化プリプレグシート20が互いにレール10の長手方向で一部が重なっていることが好ましい。例えば、図3および図4に示すように、繊維強化プリプレグシート20として、第1の繊維強化プリプレグシート21と第2の繊維強化プリプレグシート22を用いた場合について説明する。例えば、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13eおよび底部13の底面13aに、第1の繊維強化プリプレグシート21と第2の繊維強化プリプレグシート22を貼付ける場合について説明する。
レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13eおよび底部13の底面13aに、プライマー40を塗布する。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13eおよび底部13の底面13aに、プライマー40を介して接着剤50を塗布する。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13eおよび底部13の底面13aに、接着剤50を介して、第1の繊維強化プリプレグシート21を貼り付ける。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13eおよび底部13の底面13aに、接着剤50を介して、第2の繊維強化プリプレグシート22を貼り付ける。この際、第1の繊維強化プリプレグシート21のレール10の長手方向の一端部21aに、第2の繊維強化プリプレグシート22のレール10の長手方向の一端部22aを重ねる。この場合、第1の繊維強化プリプレグシート21の一端部21aと、第2の繊維強化プリプレグシート22の一端部22aとは、例えば、第1の繊維強化プリプレグシート21の一端部21aに塗布したプライマーおよび接着剤を介して接着していることが好ましい。
このようにすれば、繊維強化プリプレグシート20をレール10に貼り付けた後、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12cおよび他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の底部13の一方の底部上面13bおよび他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13dおよび他方の端13eと外部環境との遮断性を保持することができる。
【0039】
第1の繊維強化プリプレグシート21の一端部21aと、第2の繊維強化プリプレグシート22の一端部22aとが重なる長さ(図4に示すW)は、0mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。ただし、最も好ましいものは1枚のプリプレグシートでレール長全体を貼り付けることである。前記長さWが前記範囲内であると、繊維強化プリプレグシート20をレール10に貼り付けた後、レール10における繊維強化プリプレグシート20を貼り付けた部分において、プリプレグシートがレールから剥がれにくいため、外部環境との遮断性を保持することができる。
【0040】
「工程D1」
工程D1では、紫外線照射により繊維強化プリプレグシート20を硬化させる。
工程D1において、紫外線の照射量は、特に限定されず、繊維強化プリプレグシート20に含まれる硬化性樹脂の種類や量に応じて適宜調整する。
【0041】
以上の工程により、繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13を被覆するとともに、繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13と連続するレール10の腹部12の両側面を被覆し、レールの腐食防止の作業を完了する。
【0042】
本実施形態のレールの腐食防止方法によれば、レールに貼付けた後の繊維強化プリプレグシートが浮き難く、かつ容易にレールの腐食防止を実施することができる。従って、レール固定治具等とレールとの接触箇所、レールの底部等からの漏れ電流に起因するレールの電食を防止することができる。
【0043】
[レールの補修構造]
本実施形態のレールの補修構造は、レールと、前記レールの底部、および前記底部と連続する前記レールの腹部の両側面を被覆する繊維強化プリプレグシートと、を有する。
【0044】
本実施形態のレールの補修構造は、上述の実施形態のレールの腐食防止方法によってレールを修復することにより得られる構造である。
図1に示すように、本実施形態のレールの補修構造30は、レール10と、レール10の底部13、および底部13と連続するレール10の腹部12の両側面を被覆する繊維強化プリプレグシート20を有する。
レール10の底部13および腹部12を被覆する繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものであってもよく、2枚以上を組み合わせたものであってもよい。繊維強化プリプレグシート同士の接合部から引き裂けることを防止するためには、繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものが好ましい。
【0045】
本実施形態のレールの補修構造によれば、レールの底部、および腹部の両側面を繊維強化プリプレグシートで被覆しているため、レール固定治具等とレールとの接触箇所、レールの底部等からの漏れ電流に起因するレールの電食を防止することができる。
【0046】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0047】
例えば、以下に示すような変形例を採用してもよい。
【0048】
[レールの腐食防止方法]
本実施形態のレールの腐食防止方法は、レールの底部および腹部にプライマーを塗布する工程(以下、「工程A2」と言う。)と、繊維強化プリプレグシートに接着剤を塗布する工程(以下、「工程B2」と言う。)と、前記繊維強化プリプレグシートの前記接着剤を塗布した面を、前記プライマーを介して、前記レールの底部および腹部に貼り付ける工程(以下、「工程C1」と言う。)と、紫外線照射により前記繊維強化プリプレグシートを硬化させる工程(以下、「工程D2」と言う。)と、を有する。
【0049】
本実施形態のレールの腐食防止方法でも、工程A2の前に、レール10の表面に対して、素地調製(下地処理)を行い、錆を落とすことが好ましい。
【0050】
「工程A2」
工程A2では、上記の工程A1と同様に、レール10の底部13および腹部12にプライマーを塗布する。
【0051】
「工程B2」
工程B2では、繊維強化プリプレグシート20に接着剤を塗布する。繊維強化プリプレグシート20に接着剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り法、スプレー塗布法、ディップ法等を用いることができる。
接着剤としては、上述の工程B1で用いられるもの同様のものが用いられる。
【0052】
接着剤の塗布量は、繊維強化プリプレグシート20の表面の単位面積当たり、0.5kg/m以上2.0kg/m以下であることが好ましく、0.7kg/m以上1.2kg/m以下であることがより好ましい。接着剤の塗布量が前記下限値以上であれば、レール10の底部13および腹部12の表面と繊維強化プリプレグシート20とを十分に接着することができる。接着剤の塗布量が前記上限値以下であれば、作業性が向上する。
また、繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものであってもよく、2枚以上を組み合わせたものであってもよい。レール10に貼付ける工程を簡略化するためには、繊維強化プリプレグシート20は、連続した1枚のものが好ましい。
【0053】
「工程C2」
工程C2では、繊維強化プリプレグシート20の接着剤を塗布した面を、上記の工程C1と同様に、プライマーを介して、レール10の底部13および腹部12に貼り付ける。
【0054】
「工程D2」
工程D2では、紫外線照射により繊維強化プリプレグシート20を硬化させる。
【0055】
以上の工程により、繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13を被覆するとともに、繊維強化プリプレグシート20でレール10の底部13と連続するレール10の腹部12の両側面を被覆し、レールの腐食防止の作業を完了する。
【0056】
本実施形態のレールの腐食防止方法によれば、プライマー硬化時間を利用して繊維強化プリプレグシート20の貼付け面に接着剤を塗布して施工時間を削減することができる。
【0057】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。さらに、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。
【実施例0058】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
レールの腹部の両側面と、レールの底部の底面、およびレールの底部の上面とに対して、サンドペーパーで素地調製を行い、これらの面の錆を落とした。
次に、レールの表面の錆微粉を、アセトンを染み込ませたウエスで拭き取った。
次に、レールの底部および腹部に、ウレタンプライマー(商品名:シンクボンドプライマーU-100、積水化学工業株式会社製)を塗布し、タック(べたつき)がなくなるまで養生した。
次に、ウレタンプライマーを介して、レールの底部および腹部にビニルエステル接着剤(商品名:貼付けプライマーV200(主剤)、積水化学工業株式会社製)と硬化剤(商品名:メポックスD、積水化学工業株式会社製)を混合した接着剤を塗布した。
次に、レールの底部および腹部におけるビニルエステル接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付けた。繊維強化プリプレグシートを貼付ける際に、レールに対して繊維強化プリプレグシートを押し付けて、レールと繊維強化プリプレグシートとの間のビニルエステル接着剤を気泡と共に押し出すことにより、レールと繊維強化プリプレグシートとの間に気泡が残らないようにした。繊維強化プリプレグシートとしては、ガラスマットと、ビニルエステル樹脂とを含み、目付量が600g/m、厚さ1.5mm、縦400mm、横400mmのシートを用いた。
レールに繊維強化プリプレグシートを貼付けた直後(0分)、レールに繊維強化プリプレグシートを貼付けてから5分後、レールに繊維強化プリプレグシートを貼付けてから10分後について、繊維強化プリプレグシートの浮きや、剥がれの発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
また、レールに繊維強化プリプレグシートを貼付けるために要した時間(施工時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
[実施例2]
繊維強化プリプレグシートの厚さを3.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、レールの底部および腹部におけるビニルエステル接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付けた。
実施例1と同様にして、繊維強化プリプレグシートの浮きや、剥がれの発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
繊維強化プリプレグシートの厚さを4.5mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、レールの底部および腹部におけるビニルエステル接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付けた。
実施例1と同様にして、繊維強化プリプレグシートの浮きや、剥がれの発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
レールの腹部の両側面と、レールの底部の底面、およびレールの底部の上面とに対して、サンドペーパーで素地調製を行い、これらの面の錆を落とした。
次に、レールの表面の錆微粉を、アセトンを染み込ませたウエスで拭き取った。
次に、レールの底部および腹部に、ビニルエステル系プライマー(商品名:リポキシCP-819B、昭和電工株式会社製)と硬化剤(商品名:パーカドックス B-40ES、日本特殊塗料株式会社製)を混合して塗布し、タック(べたつき)がなくなるまで養生した。
次に、補強層としてビニルエステル樹脂(商品名:リポキシR-804、昭和電工株式会社製)と硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬ヌーリオン社製)を混合して塗布した。その後、補強層に縦400mm、横400mmのガラスマット(商品名:MC450A、日東紡株式会社製)を貼付け、さらに、そのガラスマットに上記ビニルエステル樹脂を含浸させた後、脱泡処理を行った。
次に、上塗りとしてビニルエステル樹脂(商品名:リポキシR-804B、昭和電工株式会社)と硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬ヌーリオン株式会社製)を混合して塗布した。
以上により、レールの表面を処理した。
レールにガラスマットを貼付けるために要した時間(施工時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から、実施例1および実施例2では、繊維強化プリプレグシートを貼付けてから10分後においても、繊維強化プリプレグシートの浮きや、剥がれが発生しないことが確認された。
【0065】
【表2】
【0066】
表2の結果から、実施例1の繊維強化プリプレグシートを用いたプリプレグシート工法では1時間で施工が完了するが、比較例1のガラスマットを用いたハンドレイアップ法では6時間で施工が完了することが確認された。
【0067】
[実施例4]
[繊維強化プリプレグシートの燃焼性の評価]
以下の方法で、繊維強化プリプレグシートの燃焼性を評価した。
鋼板(SS400、厚さ4.5mm、縦257mm、横182mm)の一方の面に、ウレタンプライマー(商品名:シンクボンドプライマーU-100、積水化学工業株式会社製)を、0.15kg/m塗布し、タック(べたつき)がなくなるまで養生した。
次に、ウレタンプライマーを介して、鋼板の一方の面にビニルエステル接着剤(商品名:貼付けプライマーV200(主剤)、積水化学工業株式会社製)と硬化剤(商品名:メポックスD、積水化学工業株式会社製)を混合した接着剤を、0.15kg/m塗布した。
次に、鋼板の一方の面におけるビニルエステル接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシートを貼付けた。繊維強化プリプレグシートを貼付ける際に、鋼板に対して繊維強化プリプレグシートを押し付けて、レールと繊維強化プリプレグシートとの間のビニルエステル接着剤を気泡と共に押し出すことにより、レールと繊維強化プリプレグシートとの間に気泡が残らないようにした。繊維強化プリプレグシートとしては、ガラスマットと、ビニルエステル樹脂とを含み、目付量が600g/m、厚さ1.6mm、縦257mm、横182mmのシートを用いた。
上記の鉄道車両用燃焼性試験により、繊維強化プリプレグシートの燃焼性を評価した。試験室内の温度を21℃、湿度を60%とした。また、アルコールの燃焼時間を1分48秒とした。
結果を表3に示す。また、燃焼性の判定基準を表4に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
判定の注意事項を以下に示す。
燃焼結果から、判定基準によって供試材についての級別判定は、アルコールの燃焼中ならびに燃焼後の全要素に対する各評価中の最低位に該当する級別により判定する。この場合、異常発煙があれば備考の適用により1級下げた判定とする。
異常発煙とは、加熱によって試験片内部に発生した燃焼性ガスが噴出、着炎し試験片の面にほぼ垂直に噴炎する状態が数秒間連続すること。噴炎が弱く、面に垂直以下での瞬間の場合は「弱い異常発煙」として判定には影響させない。
不燃性の煙の項については、僅少はタバコの煙程度をいい、試験片の上端を超えず消滅するものをいう。煙の項で、多いとあるのは煙が試験片の上端を超えるものをいう。
火勢については試験片の上端を水平に見通して上昇する炎が明らかに見通し線を超えるかどうかで判断する。これが1秒程度の短時間である場合はこれを「瞬間的に超える」として扱い、これによりグレードを下げることはしない。
炭化の項で、変色とあるのは、炭化に至らない表面的な僅かの変色のことであり、炭化は明らかに変質という部分をいう。
【0071】
表3に示す結果から、繊維強化プリプレグシートは不燃性であると判定された。
【0072】
[実施例5]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性の評価]
以下の方法で、繊維強化プリプレグシートの遮断性を評価した。
図5を用いて、実施例5を説明する。図5において、ウレタンプライマーとビニルエステル接着剤の図示を省略する。
鋼板(SS400、厚さ4.5mm、縦220mm、横15mm)210の一方の面210aに、ウレタンプライマー(商品名:シンクボンドプライマーU-100、積水化学工業株式会社製)を、0.15kg/m塗布し、タック(べたつき)がなくなるまで養生した。
次に、ウレタンプライマーを介して、鋼板210の一方の面210aにビニルエステル接着剤(商品名:貼付けプライマーV200(主剤)、積水化学工業株式会社製)と硬化剤(商品名:メポックスD、積水化学工業株式会社製)を混合した接着剤を、0.15kg/m塗布した。
次に、鋼板210の一方の面210aにおけるビニルエステル接着剤を塗布した面に繊維強化プリプレグシート220を貼付けた。詳細には、繊維強化プリプレグシート220として、第1の繊維強化プリプレグシート221と第2の繊維強化プリプレグシート222を用い、第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端部221aに、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端部222aを重ねた。第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端部221aと、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端部222aとが重なる長さ(図5に示すW)は10mmであった。
図6に示すように、繊維強化プリプレグシート220を下方に配置して、繊維強化プリプレグシート220に当接するように、柱状の支点311,312で鋼板210および繊維強化プリプレグシート220を含む積層体の長手方向の両端部を支持した。
この状態で、万能試験機(装置名:テンシロン、株式会社エー・アンド・デイ社製)を用いて、上記積層体の中央部に加圧部材320で、上記積層体の厚さ方向の下方に力を加えて、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。母材から剥がれる変位量としては、曲げ強度が低下したときの変位量を用いた。結果を表5に示す。
【0073】
[実施例6]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性継続力の評価]
第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端部221aと、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端部222aとが重なる長さWを25mmとしたこと以外は実施例5と同様にして、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。
【0074】
[実施例7]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性継続力の評価]
第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端部221aと、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端部222aとが重なる長さWを50mmとしたこと以外は実施例5と同様にして、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。
【0075】
[実施例8]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性継続力の評価]
第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端部221aと、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端部222aとが重なる長さWを75mmとしたこと以外は実施例5と同様にして、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。
【0076】
[実施例9]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性継続力の評価]
図7に示すように、第1の繊維強化プリプレグシート221の長手方向の一端面221bと、第2の繊維強化プリプレグシート222の長手方向の一端面222bとを突き合わせたこと以外は実施例5と同様にして、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。
【0077】
[実施例10]
[繊維強化プリプレグシートの遮断性継続力の評価]
図8に示すように、鋼板210の一方の面210aに、1枚の繊維強化プリプレグシート220を貼り付けたこと以外は実施例5と同様にして、上記積層体の母材から剥がれる変位量曲げ強度を測定した。結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
表5に示す結果から、実施例5~実施例8では、実施例9および実施例10よりも、繊維強化プリプレグシート220の耐久性が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0080】
10 レール
11 頭部
12 腹部
13 底部
20 繊維強化プリプレグシート
30 レールの補修構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8