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特開2023-7162設計支援装置、設計支援プログラム、及び設計支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007162
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援プログラム、及び設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230111BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110239
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 紀明
(72)【発明者】
【氏名】中村 治之
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 彩子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】便器が設置される設置場所の設計をより適切に支援する技術を提供する。
【解決手段】設計支援装置は、複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するトイレ室情報取得部と、トイレ室情報取得部により取得された情報に基づいて、トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する器具数算定部と、器具数算定部により算定された数の便器のトイレ室への配置の候補を生成する配置候補生成部と、配置候補生成部により生成された配置の候補を提示する提示部と、を備える。配置候補生成部は、器具数算定部により算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムによりトイレ室に配置し、便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するトイレ室情報取得部と、
前記トイレ室情報取得部により取得された情報に基づいて、前記トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する器具数算定部と、
前記器具数算定部により算定された数の便器の前記トイレ室への配置の候補を生成する配置候補生成部と、
前記配置候補生成部により生成された配置の候補を提示する提示部と、
を備え、
前記配置候補生成部は、前記器具数算定部により算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムにより前記トイレ室に配置し、前記便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する
設計支援装置。
【請求項2】
前記トイレ室情報取得部は、前記トイレ室に設置される設置物に関する情報を更に取得し、
前記配置候補生成部は、便器と設置物の前記トイレ室への配置の候補を生成する
請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記配置候補生成部は、同じ種類の便器又は設置物をグループ化し、それぞれの便器又は設置物のグループを前記トイレ室に配置することにより、進化的アルゴリズムにおける初期集団を生成する
請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記配置候補生成部は、進化的アルゴリズムにおいて、グループ内における便器又は設置物の数、形状、大きさ、若しくは位置関係、又はグループの形状、大きさ、若しくは位置を変更可能である
請求項3に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記評価基準は、想定される使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性を表す基準を含む
請求項1から4のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記配置候補生成部は、複数の基準のうち優先される基準の評価値が高い個体を優先して次世代に保存する
請求項5に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記提示部は、提示する配置の候補に関する説明を提示する
請求項1から6のいずれかに記載の設計支援装置。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するトイレ室情報取得部と、
前記トイレ室情報取得部により取得された情報に基づいて、前記トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する器具数算定部と、
前記器具数算定部により算定された数の便器の前記トイレ室への配置の候補を生成する配置候補生成部と、
前記配置候補生成部により生成された配置の候補を提示する提示部と、
として機能させ、
前記配置候補生成部は、前記器具数算定部により算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムにより前記トイレ室に配置し、前記便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する
設計支援プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するステップと、
取得された情報に基づいて、前記トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定するステップと、
算定された数の便器の前記トイレ室への配置の候補を生成するステップと、
生成された配置の候補を提示するステップと、
を実行させ、
前記配置の候補を生成するステップは、
算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムにより前記トイレ室に配置するステップと、
前記便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成するステップと、
を含む設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器が設置される設置場所の設計を支援するための設計支援装置、設計支援プログラム、及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便器だけでなく、手すり、おむつ交換台、オストメイト対応トイレなど、特別な配慮を要する使用者のための様々な機器、器具、装置などの設置物が設置されたトイレが普及している。とくに、特定多数又は不特定の使用者が想定される施設などにおいては、様々な属性の使用者に対する配慮が必要とされるので、多数の設置物が設置された多機能トイレが設けられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
多機能トイレにおける便器と設置物の配置を施主などが検討するとき、便器や設置物などのカタログに掲載された配置案や、個々の施設の特徴に応じて設計された配置の候補などが参考として提示される。また、必要に応じて、実物大又は縮小されたモックアップが作成され、設置場所における動作などが検証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-71207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カタログに掲載された配置案や、個別に設計される配置の候補は、数に限りがある。また、モックアップを作成して動作を検証可能な配置の候補の数は、更に限られる。便器の使用者や設置者の利便性を更に向上させるために、必要とされる配慮が行き届いた便器及び設置物の配置を生成する技術が求められる。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、便器が設置される設置場所の設計をより適切に支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の設計支援装置は、複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するトイレ室情報取得部と、トイレ室情報取得部により取得された情報に基づいて、トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する器具数算定部と、器具数算定部により算定された数の便器のトイレ室への配置の候補を生成する配置候補生成部と、配置候補生成部により生成された配置の候補を提示する提示部と、を備える。配置候補生成部は、器具数算定部により算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムによりトイレ室に配置し、便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。
【0008】
本開示の別の態様は、設計支援方法である。この方法は、コンピュータに、複数の便器が設置されるトイレ室に関する情報を取得するステップと、取得された情報に基づいて、トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定するステップと、算定された数の便器のトイレ室への配置の候補を生成するステップと、生成された配置の候補を提示するステップと、を実行させ、配置の候補を生成するステップは、算定された数の便器を図形埋め込みアルゴリズムによりトイレ室に配置するステップと、便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成するステップと、を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)(b)は、実施の形態に係る設計支援装置により設計される便器の設置場所の例を示す図である。
図2】実施の形態に係る設計支援方法の手順を示すフローチャートである。
図3】設計支援装置が提示する表示画面の例を示す図である。
図4】適正な便器の数を算定するためのグラフを示す図である。
図5】適正な便器の数を算定するためのグラフを示す図である。
図6】設計支援装置が提示する表示画面の例を示す図である。
図7】設計支援装置が提示する表示画面の例を示す図である。
図8】設計支援装置が便器及び設置物のグループをトイレ室に配置する方法を説明するための図である。
図9】設計支援装置が提示する表示画面の例を示す図である。
図10】設計支援装置が提示する表示画面の例を示す図である。
図11】実施の形態に係る設計支援装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態として、便器の設置場所における最適な便器及び設置物の配置の候補を自動的に生成する技術について説明する。実施の形態に係る設計支援装置は、設置場所における便器と設置物の配置の選択肢の中から、設置場所に関する事情、設置者の要望、想定される使用者などに必要とされる配慮事項などに合った配置の候補を生成する。設置場所における便器と設置物の配置の選択肢は膨大に存在しうるので、本実施の形態の設計支援装置は、便器の使用者に対する配慮事項などによって重み付けをした評価に基づいて配置の候補の近似解を求める。このような近似解の探索に適したアルゴリズムの一つに、進化的アルゴリズムがある。本実施の形態の設計支援装置は、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。評価基準は、想定される使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性などを表す基準を含む。これにより、使用者の利便性が高い配置の候補を優先的に保存しながら配置を進化させて、最適な配置の候補の近似解を効率良く探索することができる。
【0012】
図1(a)(b)は、実施の形態に係る設計支援装置により設計される便器の設置場所の例を示す。図1(a)は、多機能トイレの例を示す。多機能トイレ10には、大便器12に加えて、手すり13、洗面器14、紙巻器15、ベビーキープ16、ユニバーサルシート17、オストメイト対応トイレ18などの設置物が設置される。大便器12は、車椅子に乗車した使用者が車椅子を方向転換する際の取り回しを良くするために、扉11から離れた壁に沿って設置されるのが好ましい。乳幼児を座らせておくためのベビーキープは、大便器12で用を足している使用者が乳幼児を注視することができるように、大便器12の前面に設置されるのが好ましい。車椅子を使用している使用者が車椅子に乗車したまま容易に方向転換することができるように、多機能トイレ10には、一般的な車椅子の回転円19以上の空間が確保されるのが好ましい。このように、多機能トイレ10に便器と設置物を配置する際には、想定される使用者の属性に応じた様々な配慮が必要となる。
【0013】
図1(b)は、多機能トイレを含むトイレ室の例を示す。トイレ室30には、大便器と手すりのみが設置された通常の個室に加えて、ベビーキープが設置された個室、おむつ交換台が設置された個室などが設けられる。通行人がトイレ室30の内部を見えにくいようにする、トイレ室30内において出入口から奥へ向かう人と奥から出入口へ向かう人とが行き来しやすいようにする、などのトイレ室30に一般的に必要とされる配慮に加えて、車椅子に乗車している人、乳幼児を連れている人、ベビーカーなどの付随物を持ち込む人、オストメイトなどが利用しやすいようにするための配慮が必要となる。
【0014】
図2は、実施の形態に係る設計支援方法の手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、主に、図1(b)に示した多機能トイレを含むトイレ室の設計を支援する方法について説明する。
【0015】
S10において、設計支援装置は、トイレ室30に関する情報を取得する。S12において、設計支援装置は、トイレ室30のサービスレベルに関する設置者の要望を取得する。
【0016】
図3は、設計支援装置が提示する表示画面の例を示す。設計支援装置は、図3に示した表示画面において、トイレ室30の形状、間口サイズ、奥行きサイズ、男性トイレと女性トイレの位置関係、出入口ドアの種類、想定される使用者の人数、及び設置者が要望するサービスレベルを取得する。サービスレベルは、待ち時間に対する使用者の意識や評価などを3段階のレベルに分類したものである。レベル1は、ゆとりのある数の便器を設置してなるべく待たないトイレにしたい場合に該当し、レベル2は、標準的な数の便器を設置してほどほどのトイレにしたい場合に該当し、最低限度の数の便器を設置してなるべく広々としたトイレにしたい場合に該当する。
【0017】
S14において、設計支援装置は、取得した情報に基づいて、トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する。設計支援装置は、空気調和・衛生工学会により提唱される器具数算定ロジックにしたがって、トイレ室の設置場所ごとにそこで想定される使用者の人数を基準として適正な便器の数を算定する。トイレ室の設置場所が、寄宿舎や病院の病棟などのように収容人数が限られている建物である場合、設計支援装置は、その建物の最大収容人数を、想定される使用者の人数とする。トイレ室の設置場所が、事務所、百貨店、量販店など、不特定の人が使用する建物である場合、設計支援装置は、床面積あたりの収容人員密度などを参考にして、想定される使用者の人数を予測する。例えば、事務所の場合、想定される使用者の人数は、人員密度[人/m]×執務面積×男女比率と予測される。百貨店の場合、想定される使用者の人数は、人員密度[人/m]×執務面積×男女比率と予測される。
【0018】
図4及び図5は、適正な便器の数を算定するためのグラフを示す。図4は、事務所にトイレ室が設置される場合のグラフを示し、図5は、百貨店又は量販店にトイレ室が設置される場合のグラフを示す。設計支援装置は、想定される使用者の人数とサービスレベルに基づいて、グラフから適正な便器の数を算定する。なお、サービスレベルの「P(>a)<p」などの表示は、「待ち時間がa秒以上である確率がp未満」であることを示す。
【0019】
S16において、設計支援装置は、トイレ室30に設置される設置物に関する情報を取得する。S18において、設計支援装置は、配慮事項に関する情報を取得する。
【0020】
図6及び図7は、設計支援装置が提示する表示画面の例を示す。図6は、男性トイレの設置物及び配慮事項を取得するための表示画面を示し、図7は、女性トイレの設置物及び配慮事項を取得するための表示画面を示す。図6に示した表示画面において、設計支援装置は、男性トイレの個室に設置する大便器、ライニング、手すり、紙巻器の有無、数、種類、小便器コーナーに設置する小便器、ライニング、手すり、間仕切り、汚垂石の有無、数、種類、洗面器コーナーに設置する洗面器、ライニング、鏡、間仕切りの有無、数、種類、ハンドドライヤー/ペーパーホルダー、小物ロッカー、掃除用具入れの有無、数、種類、及び配慮事項を取得する。図7に示した表示画面において、設計支援装置は、女性トイレの個室に設置する大便器、ライニング、手すり、紙巻器の有無、数、種類、洗面器コーナーに設置する洗面器、ライニング、鏡、間仕切りの有無、数、種類、パウダーコーナー/スタイリングコーナーに設置する鏡の有無、数、種類、ハンドドライヤー/ペーパーホルダー、小物ロッカー、掃除用具入れの有無、数、種類、及び配慮事項を取得する。
【0021】
S20において、設計支援装置は、トイレ室30に設置される同じ種類の便器及び設置物をグループ化し、それぞれの便器及び設置物のグループを図形埋め込みアルゴリズムによりトイレ室30に配置することにより、進化的アルゴリズムにおける初期集団を生成する。
【0022】
図8は、設計支援装置が便器及び設置物のグループをトイレ室に配置する方法を説明するための図である。設計支援装置は、変形BL(Bottom Left)法により便器及び設置物のグループを、大便器、小便器、配置物の順にトイレ室に配置する。1段目は、大便器の配置例を示す。大便器は、出入口から見て奥側に優先的に配置される。2段目は、小便器の配置例を示す。小便器は、大便器の逆側の出入口から見て奥側に優先的に配置される。3段目は、洗面器の配置例を示す。洗面器は、出入口から見て手前側に優先的に配置される。設計支援装置は、便器及び設置物の種類に応じた配置規則に基づいて、不適切な配置の候補が生成されないように制約を設けてもよいし、不適切な配置の候補を排除してもよい。
【0023】
S22において、設計支援装置は、便器の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。評価基準は、想定される使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性を表す基準を含む。設計支援装置は、複数の基準のうち優先される基準の評価値が高い個体を優先して次世代に保存する。進化的アルゴリズムの詳細については後述する。
【0024】
S24において、設計支援装置は、生成された配置の候補に関する評価結果を生成する。設計支援装置は、進化的アルゴリズムの評価値から算出された評価点と、配置の候補に関する説明文を評価結果として生成する。説明文は、配置の候補に含まれる配置物の種類などに応じて自動的に生成されてもよい。例えば、ユニバーサルシート17が設置されている候補の場合は「介助ができる」、オストメイト対応トイレ18が設置されている候補の場合は「オストメイトの方に配慮した」、フックが設置されており回転円半径が所定値以上である候補の場合は「車椅子利用者に配慮した」という文を自動生成し、それらの文を組み合わせて説明文を生成してもよい。
【0025】
S26において、設計支援装置は、生成された配置の候補と評価結果を提示する。
【0026】
図9は、設計支援装置が提示する表示画面の例を示す。図9に示した表示画面において、生成された複数の配置の候補と、それぞれの候補の評価結果が表示される。
【0027】
S28において、設計支援装置は、生成された配置の候補の三次元シミュレーションを表示する。設計支援装置は、生成された配置の候補の三次元形状データをレンダリングすることにより、トイレ室30の画像を生成して表示する。
【0028】
図10は、設計支援装置が提示する表示画面の例を示す。図10に示した表示画面において、配置の候補の画像が表示される。この表示画面において、設計支援装置は、指示に応じて、又は自動的に、設置場所の内部で視点位置を変更して画像を表示する。設計支援装置は、指示に応じて、ユニバーサルシートなどの可動な設置物が動かされた場合の画像を表示する。設計支援装置は、想定される使用者がトイレ室に入室してから便器又は設置物を使用して退室するまでの使用者から見た動画像又は使用者の動線を表す画像を表示する。設計支援装置は、想定される使用者又は付随物と便器又は設置物との干渉の有無又は程度を表す画像を表示する。
【0029】
図11は、実施の形態に係る設計支援装置50の構成を示す。設計支援装置50は、通信装置51、表示装置52、入力装置53、記憶装置80、及び制御装置60を備える。設計支援装置50は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0030】
通信装置51は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置51は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。表示装置52は、制御装置60により生成される画面を表示する。表示装置52は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置53は、設計支援装置50の使用者による指示入力を制御装置60に伝達する。入力装置53は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置52及び入力装置53は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0031】
記憶装置80は、制御装置60により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置80は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置80には、設置物情報データベース81、配置規則保持部82、及び三次元形状データ保持部83が格納される。
【0032】
設置物情報データベース81は、トイレ室に設置可能な設置物に関する情報を格納する。設置物情報データベース81は、設置物の種類、名称、型番、色、寸法、重量、価格、施工条件、配置制約、想定される使用者の属性などに応じた設置の要否、配慮事項などの情報を格納する。設置条件は、設置物を施工するために必要な空間などの条件を含む。配置制約は、設置物の前後、上下、左右などに必要なクリアランスや、他の設置物との位置関係などの制約を含む。配慮事項は、想定される使用者がトイレ室を使用する際に必要とされる配慮事項を含む。
【0033】
配置規則保持部82は、トイレ室の形状及び大きさと、トイレ室に設置される設置物の種類及び数に応じて、トイレ室に便器と設置物を配置するための配置規則を複数保持する。配置規則は、設置物の施工条件、配置制約、配慮事項などを含む。配置規則は、必ず充足する必要がある規則と、充足しなくてもよいが優先される規則を含んでもよい。複数の規則に優先順位が割り当てられ、優先順位の高い規則が充足された配置の候補が優先的に生成されてもよい。
【0034】
三次元形状データ保持部83は、トイレ室の内部の空間の三次元形状データと、トイレ室に設置可能な設置物のそれぞれの三次元形状データを保持する。設置物が開閉、伸縮、回動などの動作が可能である場合、三次元形状データ保持部83は、可動な設置物が動作したときの三次元形状データを更に保持する。設置物の三次元形状データは、生成された配置の候補における使用者の動作や可動な設置物の動作などをシミュレーションするために使用される。三次元形状データ保持部83は、設置物の配置の候補を生成する際の計算のために、設置物を包絡する直方体(バウンディングボックス)の二次元又は三次元形状データを保持してもよい。これにより、計算負荷を低減させることができる。
【0035】
制御装置60は、設置場所情報取得部61、設置物情報取得部62、器具数算定部63、配置候補生成部64、配置候補提示部65、画像生成部66、画像表示部67、配置編集部68、及びデータ出力部69を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
設置場所情報取得部61は、便器が設置される設置場所に関する情報を取得する。設置場所情報取得部61は、設置場所の形状、寸法、扉の位置、形状、寸法、トイレ室30のサービスレベルに関する設置者の要望などの情報を取得する。設置場所情報取得部61は、設置場所の2次元CADデータ又は3次元CADデータなどの設計データを取得してもよい。
【0037】
設置物情報取得部62は、設置場所に便器とともに設置される設置物に関する情報を取得する。設置物情報取得部62は、設置場所に設置される設置物の種類、数、形状、寸法、重量などの情報を取得する。
【0038】
器具数算定部63は、設置場所情報取得部61により取得された情報に基づいて、トイレ室に設置することが推奨される便器の数を算定する。
【0039】
配置候補生成部64は、設置場所情報取得部61により取得された情報及び設置物情報取得部62により取得された情報に基づいて、器具数算定部63により算定された数の便器及び設置物の配置の候補を生成する。配置候補生成部64は、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。
【0040】
進化的アルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、進化的プログラミング、進化戦略など、既知の任意のアルゴリズムが使用されてもよい。以下、遺伝的アルゴリズムにより配置の候補を生成する例について説明する。遺伝的アルゴリズムに関する既知の技術の詳細については、適宜説明を省略する。
【0041】
配置候補生成部64は、まず、トイレ室30に設置される同じ種類の便器及び設置物をグループ化し、それぞれの便器及び設置物のグループを図形埋め込みアルゴリズムによりトイレ室30に配置することにより、進化的アルゴリズムにおける初期集団を生成する。各個体の染色体は、グループの種類、形状、位置、及びグループ内における便器及び設置物の種類、形状、配置位置などを含む。染色体は、車椅子の回転円の中心座標を含んでもよい。各個体の遺伝子のそれぞれは、0~nの整数で表現される。すなわち、配置位置の座標は、単位移動量の整数倍とされ、回転円の中心座標は、単位ベクトルの整数倍とされる。これにより、計算負荷を低減することができるので、最適な配置の候補を短時間で精度良く探索することができる。
【0042】
配置候補生成部64は、配置規則保持部82に保持された配置規則に基づいて各個体に含まれるグループの配置パターンを生成する。配置候補生成部64は、設置物情報取得部62により取得された設置物の種類に応じて、それらの設置物のそれぞれを配置するための配置パターンを生成し、生成された配置パターンを組み合わせることにより全ての設置物を配置するための配置パターンを生成する。配置候補生成部64は、配置パターンをランダムに生成してもよいし、設置場所情報取得部61により取得された設置場所の情報と、設置物情報取得部62により取得された設置物の情報に基づいて、それらに適合した配置パターンを優先的に生成してもよい。配置候補生成部64は、各個体の配置位置の移動量、回転円の中心座標、大便器、洗面器、オストメイト対応トイレ、及びハンドドライヤーが設置される壁の位置を所定の条件にしたがって、又はランダムに設定する。
【0043】
配置候補生成部64は、各個体の適合度として、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を算出する。評価基準は、配慮を必要とする使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性を表す配慮事項評価基準を含む。配慮事項評価基準は、使用者の属性に応じて複数設定されてもよい。例えば、車椅子を使用している使用者の利便性を表す配慮事項評価基準として、車椅子に乗車したまま扉から便器付近まで移動するための空間が十分に確保されているか、車椅子が方向転換するための空間が十分に確保されているか、車椅子と便器との間で移動するための空間が十分に確保されているか、車椅子と便器との間で移動する際に手が届く範囲に手すりが有るか、車椅子に乗車したまま手を洗うことが可能な洗面器が有るか、などの基準が含まれてもよい。また、乳幼児を連れている使用者の利便性を表す基準として、乳幼児を座らせておくためのベビーキープが有るか、ベビーキープが便器から手が届く範囲に有るか、おむつ交換台があるか、おむつ交換台の周囲に十分な空間が確保されているか、などの基準が含まれてもよい。また、ストーマを保有している使用者の利便性を表す基準として、オストメイト対応トイレが有るか、オストメイト対応トイレに洗浄用のシャワーが有るか、などの基準が含まれてもよい。また、ベビーカーやキャリーバッグなどの付随物を持ち込む使用者の利便性を表す基準として、付随物を置いておくための十分な空間が確保されているか、付随物を持ち込むための動線が確保されているか、などの基準が含まれてもよい。評価基準は、更に、便器及び設置物の間の干渉の有無又は程度、便器及び設置物を施工、保守、又は清掃する際の作業効率などを含んでもよい。配置候補生成部64は、複数の評価基準のそれぞれに重みを付けて評価値を算出し、各個体の適合度とする。複数の評価基準のそれぞれの重みは、サービスレベルに応じて設定されてもよい。例えば、サービスレベルが1である場合は、空きスペースが確保されていることよりも、便器の数が多いことを優先してもよい。また、サービスレベルが3である場合は、便器の数が多いことよりも、空きスペースが確保されていることを優先してもよい。
【0044】
配置候補生成部64は、所定の確率で現世代の個体を突然変異させ、配置パターン又は配置位置を変更する。変更する遺伝子や変更量は、所定の規則にしたがって決定されてもよいし、ランダムに決定されてもよい。配置候補生成部64は、グループの形状、大きさ、位置などを変更してもよいし、グループに含まれる便器や設置物の種類、形状、数、配置位置などを変更してもよい。設置場所に関する情報が決まっている場合は、配置候補生成部64は、設置場所の形状や大きさなどを変更せずに、設置物の種類や数などを変更してもよい。設置物の種類や数が決まっている場合は、配置候補生成部64は、設置物の種類や数などを変更せずに、設置場所の形状や大きさなどを変更してもよい。配置候補生成部64は、現世代の個体からランダムにM個の組(親)を選択し、設定された交叉確率で2M個の子を生成してもよい。
【0045】
配置候補生成部64は、現世代の個体から適合度の低い個体を淘汰し、残った個体を次世代に保存する。配置候補生成部64は、適合度の高い現世代の個体を優先的に次世代に保存する。配置候補生成部64は、適合度の高い順に所定数の個体を次世代に保存してもよい。配置候補生成部64は、配慮事項評価基準の評価値が高い現世代の個体を優先的に次世代に保存してもよい。配置候補生成部64は、複数の配慮事項評価基準のそれぞれについて、評価値が高い順に所定数の個体を次世代に保存してもよい。配置候補生成部64は、ルーレット選択など、既知の任意の方法で次世代に保存する個体を選択してもよい。
【0046】
配置候補生成部64は、進化が収束するまで以上の手順を繰り返す。配置候補生成部64は、例えば、世代交代の回数が所定の回数を超えた場合、集団中の最大の適合度が閾値より大きくなった場合、集団全体の平均適合度が閾値より大きくなった場合、集団の適合度の増加率が閾値以下である世代が所定期間続いた場合などに、進化が収束したと判定してもよい。
【0047】
配置候補生成部64は、最終世代の個体のうち、評価値の高い順に所定数の個体を配置の候補とする。配置候補生成部64は、配慮事項評価基準の評価値が高い個体を配置の候補としてもよい。配置候補生成部64は、複数の配慮事項評価基準のそれぞれについて、評価値が高い順に所定数の個体を配置の候補としてもよい。
【0048】
配置候補生成部64は、複数の配慮事項評価基準のうち優先する基準の指定を受け付けてもよい。この場合、配置候補生成部64は、指定された配慮事項評価基準により高い重みを付けて評価値を算出してもよい。配置候補生成部64は、指定された配慮事項評価基準の評価値が高い個体を優先して次世代に保存してもよい。配置候補生成部64は、最終世代の個体のうち、指定された配慮事項評価基準の評価値が高い個体を配置の候補としてもよい。配置候補生成部64は、想定される使用者の属性に応じて優先すべき配慮事項評価基準を自動的に判定してもよい。例えば、高齢者施設などに設置されるトイレの場合、車椅子に乗車している使用者に対する配慮事項評価基準を優先してもよい。また、商業施設において乳幼児向けの玩具店の近傍に設置されるトイレの場合、ベビーカーなどの付随物を持ち込む使用者や、乳幼児を連れている使用者に対する配慮事項評価基準を優先してもよい。
【0049】
配置候補提示部65は、配置候補生成部64により生成された配置の候補を表示装置52に表示する。
【0050】
画像生成部66は、配置候補生成部64により生成された配置の候補にしたがって便器及び設置物を配置した設置場所の三次元形状データを生成し、生成した三次元形状データをレンダリングすることにより設置場所の画像を生成する。画像生成部66は、設置場所の内部の空間の三次元形状データと、設置物の三次元形状データを三次元形状データ保持部83から読み出して、配置の候補の三次元形状データを生成する。画像表示部67は、画像生成部66により生成された画像を表示装置52に表示する。
【0051】
画像生成部66は、レンダリングした設置場所の画像において、視点位置及び視線方向を変更可能とする。画像生成部66は、想定される使用者の目の高さの位置に視点位置を設定して、使用者から見た設置場所の画像を生成する。画像生成部66は、例えば、成人男性、成人女性、子供、車椅子に乗車している人などの典型的な目の高さの位置に視点位置を設定する。画像生成部66は、入力装置53に入力された指示に応じて、又は自動的に、設置場所の内部で視点位置を変更して画像を生成する。これにより、使用者が実際にトイレ室を使用する際の動きをシミュレートして、配置の良否を検証することができる。
【0052】
画像生成部66は、想定される使用者が設置場所に入室してから便器又は設置物を使用して退室するまでの使用者から見た動画像又は使用者の動線を表す画像を生成する。画像生成部66は、想定される使用者が扉から便器又は設置物へ移動する動線と、便器又は設置物から別の設置物へ移動する動線と、退室するために扉へ移動する動線とを生成し、生成した動線に沿って視点位置を移動させながら動画像を生成する。
【0053】
画像生成部66は、想定される使用者又は付随物と便器又は設置物との干渉の有無又は程度を表す画像を生成する。画像生成部66は、三次元形状データ保持部83に保持された便器及び設置物の三次元形状データと、想定される使用者又は付随物の三次元形状データを使用して、干渉の有無又は程度を算出する。画像生成部66は、バウンダリーボックスの三次元形状データを用いて干渉を算出してもよいし、詳細な三次元形状データを用いて干渉を算出してもよい。画像生成部66は、使用者がトイレ室を使用する際の動線に沿って使用者と付随物の三次元形状データを移動させ、便器又は設置物との干渉の有無又は程度を算出する。
【0054】
配置編集部68は、画像生成部66により生成された画像上で便器又は設置物の設置位置を編集する。配置編集部68は、便器又は設置物の設置位置、種類、サイズなどの編集指示を入力装置53から受け付け、指示されたように便器又は設置物の設置位置、種類、サイズなどを変更する。これにより、配置候補生成部64により生成された配置の候補をベースとして、より配慮の行き届いた配置を容易に編集することができる。
【0055】
データ出力部69は、便器及び設置物が設置された設置場所のデータを出力する。データ出力部69は、設置された便器及び設置物の座標と三次元形状データなどに基づいて、設置場所の平面図、立面図などの図面、2次元CADデータ、3次元CADデータ、BIM(Building Information Modeling)データ、部品表などを生成して出力する。これにより、便器及び設置物を自動的に配置したトイレ室のデータを設計に活用することができるので、トイレ室の設計の効率を向上させることができる。
【0056】
設計支援装置50が、設計者が使用する端末装置からアクセス可能なサーバ装置として設けられる場合、配置候補提示部65及び画像表示部67は、2次元CADデータや3次元CADデータを閲覧するためのアプリケーションにより表示可能な形式で表示画像を提供してもよいし、ウェブブラウザにより表示可能な形式で表示画像を提供してもよい。
【0057】
以上、実施の形態に基づき本開示を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0058】
実施の形態の設計支援装置は、特定多数又は不特定の使用者が想定される施設などのトイレ室だけでなく、一般的な住宅のトイレや、公園や路上などに設置された公衆トイレなどを設計する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 多機能トイレ、11 扉、12 大便器、14 洗面器、15 紙巻器、16 ベビーキープ、17 ユニバーサルシート、18 オストメイト対応トイレ、19 回転円、30 トイレ室、50 設計支援装置、51 通信装置、52 表示装置、53 入力装置、60 制御装置、61 設置場所情報取得部、62 設置物情報取得部、63 器具数算定部、64 配置候補生成部、65 配置候補提示部、66 画像生成部、67 画像表示部、68 配置編集部、69 データ出力部、80 記憶装置、81 設置物情報データベース、82 配置規則保持部、83 三次元形状データ保持部。
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