(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071699
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】局所用組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230516BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20230516BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230516BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230516BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230516BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230516BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230516BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230516BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230516BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230516BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230516BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20230516BHJP
C07K 14/485 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K14/33
C12N5/10
C12N1/21
C12P21/02 C
A61P17/00
A61P17/16
A61P19/00
A61P1/00
A61P21/00
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/12
A61K38/16
C12N9/02
C07K14/485
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019075
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2020524670の分割
【原出願日】2018-07-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/093810
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520025002
【氏名又は名称】シャンハイテック ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAITECH UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジア
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ビャオ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボツリヌス毒素(BoNT)等の治療用ペプチドに融合した1つ又は複数のジンクフィンガーモチーフを含む、キメラポリペプチドを提供する。
【解決手段】BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又はBoNT重鎖のC末端に位置する第1のジンクフィンガーモチーフを含み、BoNT重鎖は、BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又はBoNT軽鎖にジスルフィド結合を介して結合している、キメラポリペプチドを提供する。キメラポリペプチドは、2つ以上のジンクフィンガーモチーフを含むことができ、被験体に経皮で効率良く送達される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、(b)前記BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又は前記BoNT重鎖のC末端に位置する第1のジンクフィンガーモチーフとを含み、前記BoNT重鎖は、前記BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又は前記BoNT軽鎖にジスルフィド結合を介して結合している、キメラポリペプチド。
【請求項2】
2000個以下のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記BoNT軽鎖と前記第1のジンクフィンガーモチーフとが、同じペプチド鎖上にある、請求項1又は2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記BoNT軽鎖と前記第1のジンクフィンガーモチーフとが、異なるペプチド鎖上にある、請求項1又は2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記BoNT軽鎖又は前記BoNT重鎖のC末端に位置する更に1つのジンクフィンガーモチーフを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記BoNT軽鎖又は前記BoNT重鎖のC末端に位置する更に2つのジンクフィンガーモチーフを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記ジンクフィンガーモチーフが、直接又はペプチドリンカーを介して連結している、請求項5又は6に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記BoNT軽鎖のN末端に位置する第2のジンクフィンガーモチーフを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記BoNT軽鎖のN末端に位置する更に1つ又は2つのジンクフィンガーモチーフを更に含む、請求項8に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記ジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つが、Cys2-His2ジンクフィンガーモチーフである、請求項1~9のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記ジンクフィンガーモチーフが、前記ジンクフィンガーモチーフのアルファ-ヘリカルフラグメントの残基1、2、3、又は6に少なくとも1つのアラニンを含む、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記ジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つが、配列番号1及び5~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記ジンクフィンガーモチーフが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記第1のジンクフィンガーが、BoNT軽鎖又はBoNT重鎖のC末端から200アミノ酸残基以下離れている、請求項1~13のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、前記BoNT軽鎖のN末端に位置する3つのジンクフィンガーモチーフとを含む第1の鎖と、(b)BoNT重鎖と、前記BoNT
重鎖のC末端に位置する3つのジンクフィンガーモチーフとを含む第2の鎖とを含み、前記BoNT軽鎖がジスルフィド結合を介して前記BoNT軽鎖に結合している、二本鎖ポリペプチド。
【請求項16】
N末端からC末端に、3つのジンクフィンガーモチーフ、ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖、BoNT重鎖、及び更に3つのジンクフィンガーモチーフを含む、キメラポリペプチド。
【請求項17】
前記BoNTが、BoNT A、B、C、D、E、F、若しくはG、又はそれらと少なくとも90%の配列同一性を有する変異体から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
前記BoNTが、BoNTのサブタイプA1~A10、B1~B8、E1~E9、及びF1~F7から選択される、請求項17に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
前記BoNTが、BoNT Aである、請求項17に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
前記BoNT軽鎖が、配列番号8のアミノ酸配列又は配列番号8と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記BoNT重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列又は配列番号9と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号10~17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む一本鎖ポリペプチド、又は前記アミノ酸配列から処理された二本鎖ポリペプチドを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフとを含む、キメラポリペプチド。
【請求項24】
前記ジンクフィンガーモチーフが、前記BoNT軽鎖のC末端に位置し、且つ、前記BoNT軽鎖から200アミノ酸残基しか離れていない、請求項23に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
治療用ペプチドと、前記治療用ペプチドのC末端に位置する少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフとを含み、前記ジンクフィンガーモチーフのN末端が、前記治療用ペプチドのC末端から100アミノ酸残基しか離れていない、キメラポリペプチド。
【請求項26】
前記治療用ペプチドが、上皮成長因子(EGF)及びスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)からなる群から選択される、請求項25に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
請求項1~24のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドを含む製剤を局所に又は筋肉内に適用することを含む、BoNT軽鎖を哺乳動物に投与する方法。
【請求項28】
前記局所適用は、皮膚、又は眼、耳、鼻、口、唇、尿道口、肛門、若しくは舌の粘膜に対してである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記局所適用は、破壊された皮膚の角質層に対してである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記破壊が、前記製剤の送達に使用される針又は極微針を用いて行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記局所適用は、哺乳動物の顔又は首の皮膚に対してである、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤が、クリーム、ゲル、又はスプレーを含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物は、顔の皺、ジストニア、痙縮、片側顔面痙攣、多汗症、又は唾液分泌過多症の処置の必要がある、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~26のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項35】
請求項34に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項36】
細菌細胞である、請求項35に記載の細胞。
【請求項37】
前記細菌細胞が、ボツリヌス菌細胞である、請求項36に記載の細胞。
【請求項38】
昆虫細胞である、請求項35に記載の細胞。
【請求項39】
前記昆虫細胞が、スポドプテラ細胞である、請求項38に記載の細胞。
【請求項40】
前記ポリヌクレオチドにコードされるタンパク質を発現する条件下で、請求項35~39のいずれか一項に記載の細胞を培養することを含む、タンパク質を産生する方法。
【請求項41】
請求項1~26のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド及び薬学的に適切な担体を含む、製剤。
【請求項42】
薬剤を試験動物に投与し、前記試験動物をトレッドミル又は平均台の上に置き、移動距離、足跡の大きさ、又は前記平均台を渡る時間を測定することを含み、コントロールと比較した前記移動距離、前記足跡の大きさ、又は前記平均台を渡る時間が、筋肉麻痺に対する前記薬剤の作用を反映する、筋肉麻痺に対する薬剤の作用を試験する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ボツリヌス神経毒(BoNT)は、クロストリジウム属ボツリヌス菌及び関連種により産生される天然の神経毒である。BoNTには7つの既知の血清型、A、B、C1、D、E、F、及びGがある。BoNTは、一本鎖ポリペプチドとして細菌から放出され、その後、1つのジスルフィド結合で結合している100kDaの重鎖及び50kDaの軽鎖に自己切断する。重鎖は、ボツリヌス毒素をシナプス前神経末端に誘導し、軽鎖の細胞質への内在化を媒介する。ボツリヌスの軽鎖は、SNARE(可溶性N-エチルマレイミド感受性融合付着タンパク質受容体)複合タンパク質を特異的に切断するメタロプロテアーゼである。
【0002】
SNAREは、哺乳動物細胞では60種類超のメンバーからなる大きなタンパク質スーパーファミリーである。コアのSNARE複合体は、シナプトブレビン(ベシクル関連膜タンパク質、VAMPとも呼ばれる)及びシンタキシン-1それぞれに由来する1つずつのヘリックスと、シナプトソーム関連タンパク質25(SNAP-25)に由来する2つのヘリックスとを含む、4α-ヘリックスバンドルである。これらのSNAREタンパク質由来の4つのヘリックスは、お互いを包み込んで、コイルドコイル4次構造を構築する。シンタキシン-1は、SNAP-25のN末端ヘリックスに結合し、シナプトブレビンヘリックスは、SNAP-25のC末端ヘリックスに結合する。SNARE複合体の主な役割は、小胞融合、例えば、ニューロンにおけるシナプス小胞とシナプス前膜との融合を媒介することである。
【0003】
BoNTは、3つのコアSNAREタンパク質の1つ、シナプトブレビン、シンタキシン-1、又はSNAP-25を特異的に切断する。これら3つのタンパク質のいずれかを不活化すると、コアSNARE複合体の形成、又はSNAREスーパー複合体におけるコアSNARE複合体と他の構成成分との相互作用が破壊される。SNAREスーパーコンプレックスの機能の遮断は、小胞と細胞膜との融合を阻み、それにより、神経伝達物質であるアセチルコリンの軸索終末からの放出を阻害し、筋肉麻痺へと導く。
【0004】
BoNTは、地球上で最も強力な天然毒素であり、わずか50ng程度の物質でヒトのボツリヌス症を引き起こす。自然界において、BoNTは、主に野生及び家畜動物に感染し、無脊椎動物を通じて広まる。毒素の起源に応じて、ヒトのボツリヌス症は、5つのクラス:食餌性ボツリヌス症、乳児ボツリヌス症、吸入ボツリヌス症、医原性ボツリヌス症(BoNTの過剰な臨床用量に起因する)、及び創傷ボツリヌス症(主に薬物注射に起因する)に分類される。最初の2つは、最も一般的に見られるヒトのボツリヌス症である。
【0005】
BoNTの治療的使用は、アラン・B・スコットにより1960年代後半に最初に提案され、1977年に斜視の子供達に対して実施された。BoNTの並外れた特異性により、BoNTは神経終末の活動亢進を特徴とするヒトの疾患に対して効果的な薬剤となっている。BoNTの治療的使用のうち最も多い割合は、ジストニア、痙縮、片側顔面痙攣、多汗症(過剰な発汗)、唾液分泌過多症(過剰な唾液)等の神経障害である。BoNTのもう1つの重要な用途は、排尿筋・括約筋筋失調、特発性排尿筋過活動、神経因性排尿筋過活動、尿閉、裂肛、前立腺肥大症等の泌尿器疾患の治療である。稀ではあるが、BoNTは消化器疾患及び耳鼻咽喉科疾患の治療に使用することができる。BoNTAは、65歳以上の成人患者における中等度から重度の眉間の皺の治療用として、2002年に米国(US)食品医薬品局(FDA)により承認された。2005年以降、BoNTAは、最も広く使用されている非侵襲的な医師のほう助による美容処置となっている。患者全体の満足度は80%を超えているが、注射用BoNTAは、痛み、注射痕、圧痛、出血、及び
あざ等の多くの難点がある。特に、目尻の皺又は外眼角の領域へのBoNTAの注射は、薄い皮膚及び表層の血管によるあざの高リスクを伴う可能性がある。一部の治療では、最大の効果を得るために複数回の注射が必要である。
【発明の概要】
【0006】
1つの実施形態において、本発明は、(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、(b)BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又はBoNT重鎖のC末端に位置する第1のジンクフィンガーモチーフとを含み、BoNT重鎖は、BoNT軽鎖のC末端に位置するか、又はBoNT軽鎖にジスルフィド結合を介して結合している、キメラポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、2000個以下のアミノ酸残基を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、BoNT軽鎖と第1のジンクフィンガーモチーフとは、同じペプチド鎖上にある。いくつかの実施形態において、BoNT軽鎖と第1のジンクフィンガーモチーフとは、異なるペプチド鎖上にある。
【0008】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、BoNT軽鎖のN末端に位置する第2のジンクフィンガーモチーフを更に含む。いくつかの実施形態において、第1のジンクフィンガーモチーフ及び第2のジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つが、少なくとももう1つのフィンガーモチーフに連結している。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つが、Cys2-His2ジンクフィンガーモチーフである。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフが、ジンクフィンガーモチーフのアルファ-ヘリカルフラグメントの残基1、2、3、又は6に少なくとも1つのアラニンを含む。
【0009】
1つの例の実施形態において、(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、前記BoNT軽鎖のN末端に位置する3つのジンクフィンガーモチーフとを含む第1の鎖と、(b)BoNT重鎖と、前記BoNT重鎖のC末端に位置する3つのジンクフィンガーモチーフとを含む第2の鎖とを含み、BoNT軽鎖がジスルフィド結合を介してBoNT軽鎖に結合している、二本鎖ポリペプチドを提供する。同様に、1つの実施形態において、N末端からC末端に、3つのジンクフィンガーモチーフ、ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖、ボツリヌス毒素(BoNT)重鎖、及び更に3つのジンクフィンガーモチーフを含む、キメラポリペプチドを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つが、配列番号1及び5~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフが、配列番号1のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のジンクフィンガーが、BoNT軽鎖又はBoNT重鎖のC末端から200アミノ酸残基以下離れている。
【0011】
いくつかの実施形態において、BoNTが、BoNT A、B、C、D、E、F、G、又はそれらと少なくとも90%の配列同一性を有する変異体から選択される。いくつかの実施形態において、BoNTが、BoNTのサブタイプA1~A10、B1~B8、E1~E9、及びF1~F7から選択される。いくつかの実施形態において、BoNTが、BoNT Aである。いくつかの実施形態において、BoNT軽鎖が、配列番号8のアミノ酸配列又は配列番号8と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ配列を含む。いくつかの実施形態において、BoNT重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列又は配列番号9と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドが、配列番号10~17からなる群
から選択されるアミノ酸配列を含む一本鎖ポリペプチド、又は前記アミノ酸鎖から処理された二本鎖ポリペプチドを含む。
【0013】
また、1つの実施形態において、ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフとを含む、キメラポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、2000以下のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフは、BoNT軽鎖のC末端に位置し、且つ、BoNT軽鎖から200アミノ酸残基しか離れていない。
【0014】
本発明の別の実施形態は、治療用ペプチドと、治療用ペプチドのC末端に位置する少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフとを含み、ジンクフィンガーモチーフのN末端が、治療用ペプチドのC末端から100アミノ酸残基しか離れていない、キメラポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、治療用ペプチドが、上皮成長因子(EGF)及びスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)からなる群から選択される。
【0015】
医薬品の製造のための使用及び治療方法も提供する。いくつかの実施形態において、本発明のキメラBoNTポリペプチドを含む製剤を局所適用することを含む、BoNT軽鎖を哺乳動物被験体に投与する方法を提供する。いくつかの実施形態において、投与は、代わりに筋肉内とすることもできる。
【0016】
いくつかの実施形態において、局所適用は、皮膚、又は眼、耳、鼻、口、唇、尿道口、肛門、若しくは舌の粘膜に対してである。いくつかの実施形態において、局所適用は、破壊された皮膚の角質層に対してである。いくつかの実施形態において、破壊が、製剤の送達に使用される針又は極微針を用いて行われる。いくつかの実施形態において、局所適用は、被験体の顔又は首の皮膚に対してである。いくつかの実施形態において、製剤は、クリーム、ゲル、又はスプレーを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、被験体は、顔の皺、ジストニア、痙縮、片側顔面痙攣、多汗症、又は唾液分泌過多症の処置の必要がある。
【0018】
また、特定の実施形態において、本発明のキメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞、及びポリペプチドを含む製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例で試験された種々のBoNTA融合タンパク質の構造を示す。
【
図2】
図2は、パネルAとBにより、大腸菌から発現したBoNTA-CPP組み換え融合タンパク質の精製結果を示す。(A)TAT及びPep-1では、タンパク質の発現及び精製の収率が良好ではなかった。(B)BoNTA-ZFP(タンパク質番号6)は、タンパク質の発現及び精製の収率が良好だった。
【
図3】
図3は、細胞透過性BoNTAタンパク質のin vitroでの活性のSNAPtideアッセイの結果を示す。ポジティブコントロールは、市販の組み換えBoNTA軽鎖(BoNTA-LC、R&Dシステムズ)である。Mockは、SNAPtideのみの反応である。
【
図4】
図4は、細胞浸透性BoNTAタンパク質で処置したヒト皮膚線維芽細胞の細胞溶解のSNAPtideアッセイの結果を示す。ネガティブコントロールは、市販の組み換えBoNTA-LC(R&Dシステムズ)である。
【
図5】
図5は、細胞浸透性BoNTAタンパク質のin vivoでの効果の代表的な画像を示す。
【
図6】
図6は、細胞透過性BoNTAタンパク質で処置したマウスの指外転(digit abduction)の散布図である。A:0.9%NaCl生理食塩水で処置。B:BOTOXを注射。C:極微針での前処置後、BOTOXで処置。D:極微針での前処置後、細胞浸透性BoNTA-ZFP(タンパク質番号6)で処置。E:極微針での前処置なしで、細胞透過性BoNTA-ZFP(タンパク質番号6)で処置。
【
図7】
図7は、昆虫細胞におけるBoNTA-ZFP(タンパク質番号6)の発現を示す。M:タンパク質マーカー。T:全細胞溶解物。S:可溶性フラクション。+:ローディングコントロール。
【
図8】
図8は、BoNTA-ZFPの筋肉麻痺作用を分析するためのトレッドミル実験の試験結果を示す。
【
図9】
図9は、BoNTA-ZFPの筋肉麻痺作用を分析するための平均台実験の試験結果を示す。
【
図10】
図10は、BoNTA-ZFPの筋肉麻痺作用を分析するための足跡実験の試験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
用語「1つ(a)」又は「1つ(an)」の実体は、その実体の1つ又は複数を指すことに留意されたい。例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1つ又は複数の抗体を表すと理解される。従って、用語「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1つ又は複数」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、単一の「ポリペプチド」並びに複数の「ポリペプチド」を包含するよう意図されており、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)により線状に結合されるモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(複数可)を指し、特定の長さの産生物を指すものではない。そのため、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖(複数可)を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、又はそれらと互換的に使用してもよい。用語「ポリペプチド」はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は非天然型アミノ酸による修飾を制限なく含む、ポリペプチドの発現後修飾の産生物を指すことも意図する。ポリペプチドは、天然の生物源に由来しても、組み換え技術により産生されてもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成を含め、任意の様式で生成されてよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、細胞、DNA又はRNA等の核酸に関する用語「単離された」は、それぞれ高分子の自然源に存在する他のDNA又はRNAから分離された分子を指す。また、本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、組み換えDNA技術により産生された場合の細胞材料、細菌材料、若しくは培地、又は化学合成された場合の前駆体化学物質又は他の化学物質を実質的に含まない核酸又はペプチドを指す。更に、「単離された核酸」は、断片として自然発生せず、自然の状態では発見されない核酸断片を含むことが意図される。また、用語「単離された」は、本明細書において、他の細胞タンパク質又は組織から単離された細胞又はポリペプチドを指すために使用される。単離されたポリペプチドは、精製されたポリペプチドと組み換えポリペプチドの両方を包含することが意図される
【0023】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドに係る用語「組み換え
」は、天然に存在しないポリペプチド又はポリヌクレオチドの一種を意図し、限定されない例は、通常は同時に生じないポリヌクレオチド又はポリペプチドを組み合わせて作製することができる。
【0024】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較のために並べることが可能な各配列中の位置を比較することにより、決定することができる。比較した配列のある位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められている場合、これらの分子はその位置においては相同である。配列間の相同性の程度は、配列が共有する対合又は相同的位置の数の関数である。「無関係」又は「非相同的」配列は、本発明の配列の1つと40%未満の同一性、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0025】
ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域(或いは、ポリペプチド又はポリペプチド領域)が、別の配列と特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、8」%、85%、90%、95%、98%、又は99%)の「配列の同一性」を有するとは、位置合せをしたときに、2つの配列の比較においてその割合の塩基(又はアミノ酸)が同じであることを意味する。
【0026】
用語「同等の核酸又はポリヌクレオチド」は、核酸又はその相補鎖のヌクレオチド配列とある程度の相同性又は配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸の相同体は、二本鎖核酸又はその相補鎖とある程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むことを意図する。1つの態様において、核酸の相同体は、核酸又はその相補鎖とハイブリダイズすることができる。同様に、「同等のポリペプチド」とは、参照ポリペプチドのアミノ酸配列とある程度の相同性又は配列同一性を有するポリペプチドを指す。いくつかの態様において、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%である。いくつかの態様において、同等のポリペプチド又はポリヌクレオチドは、参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドと比較して、1、2、3、4、又は5つの付加、欠損、置換、及びそれらの組み合わせを有する。いくつかの態様において、同等の配列は、参照配列の活性(例えば、エピトープ結合)又は構造(例えば、塩橋)を保持する。
【0027】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で、実施することができる。一般に、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション反応は、約40℃で、約10×SSC又は同等のイオン強度/温度の溶液で行われる。中程度ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、典型的には、約50℃、約6×SSCで行われ、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、一般に、約60℃、約1×SSCで行われる。又はイブリダイゼーション反応は、当業者に周知の「生理学的条件」下で行うこともできる。生理的条件の非限定的な例は、細胞内で通常見出される温度、イオン強度、pH、及びMg2+の濃度である。
【0028】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);及びポリヌクレオチドがRNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)の特定の配列で構成される。従って、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。このアルファベット表現は、中央処理ユニットを備えたコンピューターのデータベースに入力し、機能ゲノミクス及び相同性検索等のバイオインフォマティクスアプリケーションに使用することができる。用語「多型」は、遺伝子又はその部分の1つ超の形の共存を指す。少なくとも2つの異なる形、即ち、2つの異なるヌクレオチド配列がある遺伝子の部分は、「遺伝子の多型領域」と称される。多型領域は、単一のヌクレオチドであり得、その同一性は、異なる対立遺伝子で異なる。
【0029】
用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド又はそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマーの形を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知又は未知の任意の機能を実施する可能性がある。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体等の修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリーの前又は後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素により中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識化構成要素とのコンジュゲーション等により、重合後更に修飾することができる。この用語はまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。別段に特定又は要求されない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態、及び二本鎖形態を構成することが公知であるか又は予測される2つの相補的な一本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0030】
ポリヌクレオチドに適用する用語「コードする」は、天然の状態で又は当業者に周知の方法で操作されたときに、転写及び/又は翻訳されて、ポリペプチド及び/又はその断片に対するmRNAを産生することができる場合、そのポリペプチドを「コードする」と言われるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、そのような核酸の相補鎖であり、そこからコード配列を推定することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子間で形成される共有結合性結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成するか、又は第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」又は「処置」は、治療的処置と予防的又は防止的手段の両方を指し、目的は、望ましくない皺等の望ましくない生理学的変化又は障害を防止又は遅くする(減らす)ことである。有益な又は所望の臨床結果には、検出可能又は検出不可能に関わらず、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的に関わらず)が挙げられるが、それらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けなかった場合の予想される生存と比較して、生存の延長を意味し得る。処置を必要とするものとしては、状態若しくは障害をすでに有するもの、加えて、状態若しくは障害を有する傾向にあるもの、又は状態若しくは障害が防止されるべきであるものが挙げられる。
【0033】
「被験体」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後診断、又は治療が望まれる任意の被験体、特に哺乳動物被験体を意味する。哺乳動物被験体には、ヒト、家畜動物、農場動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、雌ウシ等が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者へ」又は「処置を必要とする被験体」等の句は、例えば、検出のために、診断手順のために、及び/又は処置のために使用される本発明の抗体又は組成物の投与から利益を得るであろう、哺乳動物被験体等の被験体を含む。
【0035】
ジンクフィンガーモチーフを有するキメラポリペプチド
BoNTタンパク質の経皮送達は、市場で必要とされている。タンパク質の経皮送達は本質的に困難であり、特に皮膚の通過が困難である。皮膚は、表皮及び真皮として知られる細胞の2つの層で構成される。皮膚の最上層である表皮は、基底と分化したケラチノサイトとで構成される層状の扁平上皮である。ケラチノサイトは、表皮の主要な細胞型である。基底層のケラチノサイトは、有糸分裂を通じて増殖し、複数の細胞分化段階を経て、無核細胞になる。無核又は分化したケラチノサイトは、高度に組織化された組織構造であり、病原体等の侵入物質に対する保護バリアを提供するケラチンタンパク質及び脂質を分泌する。
【0036】
経皮BoNT組成物の開発は成功していなかった。しかしながら、本発明は、BoNTポリペプチドを1つ又は複数のジンクフィンガーモチーフ(又はジンクフィンガータンパク質ドメイン、又はZFP)に融合させることにより、BoNTの皮膚浸透を可能にすることができることを示す。ジンクフィンガータンパク質は、天然の転写因子であり、標的ゲノム遺伝子座を認識するように再プログラムすることができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ-キメラタンパク質は、N末端ZFPドメインとC末端Fok Iエンドヌクレアーゼドメインとを含み、本質的に細胞透過性であることが示されている。一部のZFPは、Cys2-His2ドメインを含む。Cys2-His2ZFPは、ββα構造を有する約30のアミノ酸で構成される。
【0037】
この発見は驚くべきことであり、少なくとも以下の理由から予想外である。第一に、動物の皮膚を横切って大きなタンパク質を効率的に送達する能力は、それ自体が驚くべきことであり、予想外である。特に、ZFPの細胞透過活性は、エネルギー依存的であることが知られていた。これは、皮膚の最外層であり、死んだ角質細胞から形成される角質層において、あるとしてもごく限られた効率であると予測されたことを意味し、死んだ角質細胞は、物理的又は化学的手段で破壊されても、依然として、典型的な生物学的分子に対して乗り越えられないバリアを構成する。
【0038】
第二に、ZFPは亜鉛依存性メタロプロテアーゼであり、ボツリヌス毒素の活性は、プロテアーゼ阻害剤及び亜鉛キレート剤によって阻害される可能性があるため、亜鉛を必要とすることも知られている。ZFP及びBoNTは、どちらも亜鉛イオンの取り込みを必要とするため、融合タンパク質中にZFP及びBoNTの両方が存在すると、それらの間の干渉を引き起こし、それにより活性が低下するか、又は不活化すらする疑いがあった。
【0039】
これに関して、本発明者らは、BoNTのC末端方向でZFPを融合することにより、このような干渉を回避又は低減することができることを構想した。加えて、又は代わりに、二要素(bipartite)(タンデム)ZFPの使用により、確実にZFPの活性を維持することができた。
【0040】
第三に、実施例で実証されたように、BoNT-ZFP融合タンパク質は、細菌細胞から大量に発現され、これは、BoNTを、一般に研究される2つの細胞透過性ペプチド、TAT又はPep-1と融合させた場合よりもはるかに高かった。この効果への示唆はなく、予想外でもあった。
【0041】
最後に、発現したBoNT-ZFP融合タンパク質は、高い酵素活性を示した(例えば、
図3参照)だけでなく、細胞メンバーを越えて細胞内空間に入った後も、当該活性を保持した(例えば、
図4参照)。更に、in vivo設定で用いた場合、好ましくは極微針で処置した動物の皮膚に局所適用したBoNTA-ZFP融合タンパク質は、注射したBoNTAと同様に筋肉麻痺をもたらした。そのような治療効果が局所製剤で達成される
ことは当該技術分野において予想されていなかったため、このこともまた、驚くべきことであった。
【0042】
従って、本発明の1つの実施形態において、(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、(b)BoNT軽鎖のC末端に位置するジンクフィンガーモチーフとを含むキメラ(又は融合)ポリペプチドを提供する。
【0043】
また、1つの実施形態において、(a)ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と、(b)BoNT重鎖と、(c)BoNT重鎖のC末端に位置するジンクフィンガーモチーフとを含むキメラ(又は融合)ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、軽鎖と重鎖とは同じペプチド鎖上にある。いくつかの実施形態において、軽鎖は、重鎖のN末端側にある。いくつかの実施形態において、軽鎖は、重鎖のC末端側にある。いくつかの実施形態において、軽鎖と重鎖とは異なるペプチドペプチド鎖上にあり、ジスルフィド結合で結合している。
【0044】
また、いくつかの実施形態において、ボツリヌス毒素(BoNT)軽鎖と少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフとを含むキメラポリペプチドを提供する。1つの実施形態において、キメラポリペプチドは更にBoNT重鎖を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチド全体のサイズは、5000アミノ酸残基以下、或いは、4000アミノ酸残基以下、3000アミノ酸残基以下、2000アミノ酸残基り、1800アミノ酸残基以下、1600アミノ酸残基以下、1500アミノ酸残基以下、1400アミノ酸残基以下、1300アミノ酸残基以下、1200アミノ酸残基以下、1100アミノ酸残基以下、1000アミノ酸残基以下、900アミノ酸残基以下、800アミノ酸残基以下、700アミノ酸残基以下、600アミノ酸残基以下、500アミノ酸残基以下、450アミノ酸残基以下、400アミノ酸残基以下、350アミノ酸残基以下、300アミノ酸残基以下、250アミノ酸残基以下、又は200アミノ酸残基以下である。
【0046】
ボツリヌス毒素には少なくとも7つのタイプがあり、タイプA-Gと名付けられている。タイプA及びBは、ヒトの病気を引き起こすことができ、商業的にも医学的にも使用されている。タイプC~Gは、あまり一般的ではない。ボツリヌス毒素タイプA及びBは、過過剰活性筋肉を特徴とする様々な筋肉の痙攣及び疾患を治療するために医学の分野で使用される。各BoNT血清型には、サブタイプがある場合がある。例えば、次のサブタイプが知られている:BoNT A1~A10、B1~B8、E1~E9、F1-F~7。
【0047】
用語BoNT、又はBoNTの特定のタイプ、又はBoNTのサブタイプは、それらの等価のポリヌクレオチド、例えば、あるレベル(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、又は99%)の配列同一性を有するポリヌクレオチド、又は1つ又は複数のアミノ酸残基の付加、欠損、又は置換により修飾されたポリヌクレオチドも同様に包含する。いくつかの実施形態において、置換は、同類アミノ酸置換である。
【0048】
「同類アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝状側鎖を有するアミノ酸(例えば、ト
レオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、ポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基に置き換えられることが好ましい。別の実施形態において、アミノ酸鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/又は組成が異なる構造的に類似の鎖に置き換えることができる。
【0049】
同類アミノ酸置換の非限定的な例を、以下の表に提供する。表中、0以上の類似性スコアは、2つのアミノ酸間の同類置換を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0050】
いくつかの実施形態において、BoNTペプチドは、天然のBoNTペプチドからの上記置換を1つのみ、2つのみ、又は3つのみ含む。
【0051】
BoNT軽鎖の非限定的な例としては、配列番号8(BoNT A軽鎖)及び配列番号8と少なくとも90%(或いは、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%)の配列同一性を有するアミノ配列が挙げられる。BoNT重鎖の非限定的な例としては、配列番号9(BoNT A重鎖)及び配列番号9と少なくとも90%(或いは、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%)の配列同一性を有するアミノ配列が挙げられる。配列番号8及び9のアミノ酸配列は、以下の表2に提供する。
【表2】
【0052】
「ジンクフィンガーモチーフ」は、折り畳みを安定させるための1つ又は複数の亜鉛イオンの配位を特徴付とする、小さなタンパク質構造モチーフである。一般に、ジンクフィンガーは、システイン残基とヒスチジン残基との組み合わせに亜鉛イオンを配位させる。これらの残基の数及び順序を用いて、異なるタイプのジンクフィンガーを分類することができる(例えば、Cys2His2、Cys4、及びCys6)。更に別の方法では、ジンクフィンガータンパク質を、折り畳まれたドメイン内のタンパク質主鎖の全体的な形状に基づいて、折り畳みグループに分類する。ジンクフィンガーの最も多い折り畳み群は、Cys2His2(クラシックジンクフィンガー)、トレブルクレフ(treble clef)、亜鉛リボン、gagナックル、Zn2/Cys6、及びTAZ2ドメイン等である。
【0053】
Cys2His2折り畳み群は、単純なββα折り畳みを採用し、アミノ酸配列モチーフ:X2-Cys-X2,4-Cys-X12-His-X3,4,5-Hisを有する。
【0054】
個々のジンクフィンガードメインは、タンデムリピートとして、タンパク質のDNA結合ドメインを含む2つ、3つ、又はそれ以上のフィンガーで生じ得る。
【0055】
ジンクフィンガーモチーフは、修飾してDNA結合能を除去又は低減することができる。例えば、修飾Cys
2His
2は、ジンクフィンガーモチーフのアルファ-ヘリカルフラグメントの残基1、2、3、又は6に少なくともアラニンを含む。ジンクフィンガーモチーフの非限定的な例を以下の表3に示す。表3の配列の一部、配列番号1及び5~7は、単独のジンクフィンガーモチーフであるが、その他少数(ジンクフィンガーモチーフのタンデム)の配列番号2~4は、複数の連結ジンクフィンガーモチーフを含む。2つ以上のジンクフィンガーがタンデムで用いられる場合、それらは、互いにすぐ隣に位置するか、又はペプチドリンカーを介して結合することができる。即ち、1、2、又は3アミノ酸残基から2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸残基の長さの短いペプチドである。配列番号1の修飾アラニン残基に下線を引き、太字で示す。
【表3】
【0056】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、BoNT軽鎖のN末端側に位置するジンクフィンガーモチーフを更に含む。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、BoNT重鎖のN末端側にジンクフィンガーモチーフを更に含む。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、二本鎖ポリペプチドであり、BoNT軽鎖のC末端側にジンクフィンガーモチーフ(或いは、2つのジンクフィンガー又は3つのジンクフィンガーのタンデム)を含む。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、二本鎖ポリペプチドであり、BoNT軽鎖のC末端側にジンクフィンガー(或いは、2つのジンクフィンガー又は3つのジンクフィンガーのタンデム)と、BoNT重鎖のN末端側にジンクフィンガー(或いは、2つのジンクフィンガー又は3つのジンクフィンガーのタンデム)を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフの少なくとも1つは、少なくとも1つ又は2つ以上のジンクフィンガーモチーフに連結して、二要素又は三要素(tripartite)ジンクフィンガーモチーフ(例えば、タンデムジンクフィンガーモチーフ)を形成する。いくつかの実施形態において、タンデムジンクフィンガーモチーフは、これらの間に、ゼロ、1、2、3、4、又は5アミノ酸残基有する。
【0058】
BoNT軽鎖、重鎖、及びジンクフィンガーモチーフ間の距離は、所望や必要に応じて調整することができる。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーは、隣接するBoNT軽鎖又は重鎖のN末端又はC末端から200アミノ酸残基以下離れている。いくつかの実施形態において、距離は、0~約150、5~100、10~75、10~50、10~40、10~30、10~20、20~150、20~100、20~50、又は50~100のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列(例えば、アラニンの、グリシンの、又はそれらの組み合わせの)を挿入することにより距離がもたらされる。
【0059】
キメラポリペプチド配列の非限定的な例を、配列番号10~17に提供する(表3)。これらの配列のいくつかは、BoNT軽鎖及びBoNT重鎖の両方を含み、これらの配列は、非切断一本鎖型及び非切断二本鎖型の両方を包含する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0060】
更に、本技術は、上皮成長因子(EGF)及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等の他の治療用ペプチドにも制限なく適用することができると考えられる。従って、1つの実施形態において、本発明は、治療用ペプチド及び少なくとも1つのジンクフィンガーモチーフを含むキメラポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフは、治療用ペプチドのC末端側に位置する。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフは、治療用ペプチドから100アミノ酸残基しか(或いは、90、80、70、60、50、40、30、20、10、又は5アミノ酸残基しか)離れていない。いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフは、もう1つのジンクフィンガーモチーフに連結して、二要素ジンクフィンガーモチーフを形成する。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、治療用ペプチドのN末端側とC末端側の両方にジンクフィンガーモチーフ(又は二要素ジンクフィンガーモチーフ)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、治療用ペプチドは、EGF及びSODから選択され、それらの配列例を表5に示す。また、ジンクフィンガーモチーフの例、スペーサー配列の例、及びジンクフィンガーモチーフと治療用ペプチド間の距離も本明細書で説明する。
【表5】
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、治療薬、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的反応修飾物質、医薬品、又はPEGにコンジュゲートしてもよい。ポリペプチドは、放射性標識等の検出可能な標識を含むことができる治療薬、免疫調節薬、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療又は診断薬、薬物又は毒素であってよい細胞毒性薬、超音波増強剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、及び当該技術分野で知られている他のそのような薬剤にコンジュゲート又は融合してもよい。
【0063】
ポリペプチドは、化学発光化合物にカップリングすることにより、検出可能に標識することができる。次いで、化学発光タグ化抗原結合ポリペプチドの有無を、化学反応の過程で生じる発光の有無を検出することにより決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、芳香族(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルである。
【0064】
また、ポリペプチドは、ランタニド系列の152Eu又は他の金属等の蛍光発光金属を用いて検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート基を用いて、抗体に結合させることができる。
【0065】
また、本発明は、単離したポリヌクレオチド又はポリペプチドをコードする核酸分子、本発明のポリペプチドの変異体又は誘導体を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子又は別のポリヌクレオチド分子上に、ポリペプチド、その変異体
又は誘導体の重鎖及び軽鎖全体をコードしていてもよい。更に、本発明のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子又は別のポリヌクレオチド分子上に、ポリペプチド、その変異体又は誘導体の重鎖及び軽鎖の一部をコードしていてもよい。
【0066】
融合ポリペプチド又はそのドメインをコードするポリヌクレオチドは、「発現ベクター」に挿入することができる。用語「発現ベクター」は、プラスミド、ウイルス、又は本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むように設計することができる、当該技術分野で知られている他の媒体等の遺伝的構築物を指す。そのような発現ベクターは、典型的には、宿主細胞において挿入された遺伝的配列の転写を促進するプロモーター配列を含むプラスミドである。発現ベクターは、典型的には、複製の起源及びプロモーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を可能にする遺伝子(例えば、抗生物質抵抗性遺伝子)を含む。誘導性及び構成的プロモーターを含む種々のプロモーターを本発明で使用することができる。典型的には、発現ベクターは、宿主細胞と互換性のある種由来のレプリコンサイト及び制御配列を含む。
【0067】
ポリヌクレオチドによる宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションは、当業者に周知の従来技術を用いて実施することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合、DNAを取り込むことが可能なコンピテント細胞は、当該技術分野で公知のCaCl2、MgCl2、又はRbCl法を用いて調製することができる。或いは、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクション等の物理的手段を使用することができる。エレクトロポレーションは、高電圧の電気インパルスにより細胞内にポリヌクレオチドを移入することができる。更に、当該技術分野で周知の方法を用いて、プロトプラスト融合によりポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することができる。エレクトロポレーション及びリポフェクション等の真核細胞を形質転換するための適切な方法もまた、公知である。
【0068】
本発明に包含される「宿主細胞」は、本発明のポリヌクレオチドが、融合ポリペプチド又はその機能ドメインを発現するために用いることができる任意の細胞である。また、この用語には、宿主細胞の子孫が含まれる。有用な宿主細胞としては、細菌細胞(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum))、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ(Spodoptera))、植物細胞、及び動物細胞が挙げられる。本発明の融合ポリペプチドは、原核生物において融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させることにより生成することができる。これらとしては、本発明の融合ポリペプチドをコードする組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNAベクターにより形質転換された細菌等の微生物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又はエレクトロポレーションにより達成することができる。
【0069】
構築物は、BoNTタンパク質が自然に産生される場であるボツリヌス菌で発現することができる。BoNTの軽鎖及び/又は重鎖を含むキメラタンパク質を昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)Sf9)で効率的に産生することができることは、本発明の驚くべき発見である。従って、1つの実施形態において、宿主細胞は、鱗翅目(Lepidoptera)細胞、ヤガ科(Noctuidae)細胞、スポドプテラ細胞、及びヨトウガ細胞等の昆虫細胞とすることができる。
【0070】
組み換えタンパク質の長期にわたる高収量産生には、通常、安定した発現が使用される。複製のウイルス起源を含む発現ベクターを用いるよりもむしろ、宿主細胞を、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位等)及び選択可能なマーカーにより制御された、本発明の融合ポリペプチドをコードするcDNAで、形質転換することができる。選択可能なマーカーは、選択的殺傷
剤に対する耐性を付与し、異種ポリヌクレオチドの安定した組み込みにより、耐性細胞の成長を可能にする。そのような耐性細胞が増殖してフォーカスを形成し、次いでそのフォーカスは、細胞株にクローン化し、拡大することができる。
【0071】
処置方法及び使用
本明細書で説明するように、本発明のジンクフィンガーモチーフ含有キメラ(融合)ポリペプチドは、効果的に経皮送達することができる。従って、キメラポリペプチドは、融合した治療用タンパク質に応じて、治療用途を有する。
【0072】
BoNT軽鎖を含むキメラポリペプチドは、任意選択でBoNT重鎖を更に含み、広範な美容及び治療用途がある。美容用途の場合、このようなキメラポリペプチドは、皺を処置し、口角又は上唇のラインを調整するのに有用である。治療においては、キメラポリペプチドは、ジストニア、痙縮、片側顔面痙攣、多汗症(過剰な発汗)、唾液分泌過多症(過剰な唾液)等の神経障害の処置に有用である。また、キメラポリペプチドは、排尿筋・括約筋筋失調、特発性排尿筋過活動、神経因性排尿筋過活動、尿閉、裂肛、良性前立腺肥大症等の泌尿器疾患に使用される場合がある。更なる適応として、消化器疾患、耳鼻咽喉科疾患、又はその他の医学的症状がある。いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドは、顔の皺、ジストニア、痙縮、片側顔面痙攣、多汗症、又は唾液分泌過多症の処置に用いられる。
【0073】
他の例では、EGFを含むキメラポリペプチドを、糖尿病性足潰瘍等の状態を処置するために、又は一般的な創傷治癒に使用することができる。更に別の例では、SODペプチドを含むキメラポリペプチドを、皮膚へのフリーラジカルによる損傷、例えば、乳癌のための放射線後の線維症を軽減するために使用することができる。
【0074】
キメラポリペプチドの局所適用は、被験体の皮膚部位、例えば、皮膚、又は眼、耳、鼻、口、唇、尿道口、肛門、若しくは舌の粘膜に行うことができる。特定の部分の例としては、制限されず、顔、首、頭、脚、肩、背中、手のひら、足、鼠径部、腋窩、肘、腕、膝、臀部、胴部、及び骨盤等が挙げられる。同様に、キメラポリペプチドは、これらの部分で筋肉内投与することもできる。
【0075】
従って、いくつかの実施形態において、ジンクフィンガーモチーフを含むキメラペプチド、及び哺乳動物被験体に対する治療用ペプチドを含む製剤を局所的に又は筋肉内に適用することを含む、治療用ペプチド(例えば、BoNT、EGF、又はSOD)を哺乳動物被験体に投与する方法を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態において、局所適用が皮膚の角質層に対する場合、角質層が破壊されることが好ましい。角質層の破壊は、実施例に示されるように、極微針等の針を用いて実施してもよい。或いは、適用を筋肉内にすることができる。
【0077】
特定の患者に対する特定の投与量及び治療レジメンは、使用する特定のポリペプチド、その変異体又は誘導体、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別、及び食生活、並びに投与時間、排泄率、薬物の組み合わせ、及び治療中の特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存する。医療従事者によるそのような因子の判断は、当該技術分野の通常のスキルの範囲内である。また、量は、治療を受ける個々の患者、投与の経路、製剤の種類、使用される化合物の特性、疾患の重症度、及び所望の効果に依存する。使用量は、当該技術分野で周知の薬理学的及び薬物動態学的原理により決定することができる。
【0078】
組成物
本発明はまた、医薬品組成物を提供する。そのような組成物は、有効量のキメラポリペ
プチド及び許容可能な担体を含む。
【0079】
特定の実施形態において、用語「薬学的に許容される」は、動物、特にヒトでの使用のために米国連邦政府又は州政府の規制機関により承認されること又は米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方に列挙されることを意味する。更に、「薬学的に許容される担体」は、一般に、非毒性固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意の補助製剤を指す。
【0080】
用語「担体」は、治療薬を共に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等の、石油、動物、植物又は合成起源のものを含めた、水及び油等の無菌液体とすることができる。医薬組成物を静脈内投与する場合は、水が好ましい担体である。また、生理食塩水及びデキストロース水溶液及びグリセロール溶液は、特に注射用液剤のための液体担体として用いることもできる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。所望する場合は、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等)も含むことができる。また、ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張性調節剤も想定される。これらの組成物は、ゲル、クレーム、スプレー、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態をとることができる。組成物は、伝統的な結合剤及びトリグリセリド等の担体を用いて、坐薬として製剤化することができる。
【0081】
また、特定の実施形態において、キメラポリペプチド、又はその組成物若しくは製剤、及びキメラポリペプチド、組成物、又は製剤の使用についての説明書を含む、キット及びパッケージを提供する。いくつかの実施形態において、キット又はパッケージは、キメラポリペプチド、組成物、又は製剤を送達するための針又は極微針を更に含む。上述のように、極微針は、皮膚の角質層を破壊し、それにより送達を改善するのに役立てることができる。
【0082】
動物試験方法
現在、ラット指外転スコア(DAS)アッセイは、BoNT誘導性骨格筋麻痺の評価のための主要な生理学的モデルである。このアッセイは、完全に客観的ではなく、誤差が生じやすい。いくつかの実施形態において、本発明は、動物のBoNT誘導性骨格筋麻痺を定量的に測定するための新しい方法を説明する。
【0083】
1つの例では、動物を、試験薬剤を与える前又は後にトレッドミルに置く。トレッドミルが開始されると、動物は、最長30分の稼働時間で身体的に可能な限り長く移動するように強制される。動作の持続、距離、又は時間は、試験薬剤の効果を定量的に反映することができる(試験薬剤を与えない動物等の適切なコントロールを用いて)。
【0084】
別の例では、動物を平均台に置き、もう一方の端に向かって歩くように動物を導く。バランスを保つ能力の低下をもたらす筋肉麻痺は、動物が平均台を渡るのにかかる時間に反映される。
【0085】
更に別の例では、動物の足跡を測定し、立っている間又は歩いている間(トレッドミル上等)に測定する。足跡のサイズもまた、麻痺の程度の定量的測定となり得る。
【実施例0086】
実施例1:大腸菌からのBoNTA-CPP融合タンパク質の発現及び精製
この実験は、BoNTA-CPP(細胞浸透性ペプチド)融合タンパク質を大腸菌細胞から発現及び精製できることを示している。
【0087】
方法
タンパク質発現
異なるBoNTA構築物を含むpET28bベクター(タンパク質番号1~8、
図1)を、BL21(DE3)大腸菌細胞に形質転換した。これらの構築物の配列は、配列番号10-17に示す。His
6:ヒスチジンタグ;BoNTA-LC:BoNT A軽鎖;BoNTA-HC:BoNT A重鎖;ZFP
2:タンデムジンクフィンガーペプチド(配列番号1);TAT:転写ペプチドの転写活性化因子;Pep-1:pep-1ペプチド。TAT及びPep-1は、細胞浸透性ペプチド(CPP)として知られている。
【0088】
単一コロニーを、寒天プレートから採取し、50μg/mLのカナマイシンと90μMのZnCl2とを添加した10mLの溶原培地(LB培地)で37°Cで一晩培養した。翌日、10mLのスターター培養物を、50μg/mLのカナマイシンと90μMのZnCl2とを添加した1リットルのLB培地に接種し、増殖させてOD600を0.8にした。タンパク質の発現を、0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)により25°Cで4時間誘導した。細胞ペレットを、5,000rpmで10分間の遠心分離により収集した。
【0089】
タンパク質精製
2リットルの培養物からの細胞ペレット(約30グラム)を200mLのBoNTA溶解バッファー(20mM HEPES、pH7.0、500μM NaCl、0.01%Triton X-100、1×プロテアーゼ混合物(ロシュ)、及び10%グリセロール)に再懸濁し、氷上で3回超音波分解した。溶解した細胞を、25,000gで1時間、4°Cで遠心分離し、上清を新しいチューブに移した。この上清に1mL(沈定体積((settled volume))の平衡Ni-NTA樹脂(Qiagen)を添加した。His6タグを含むBoNTAタンパク質を、30分間回転させて樹脂と結合させた。樹脂をカラムに移し、フロースルーは廃棄した。樹脂を50mLのBoNTA洗浄バッファー(20mM HEPES、pH7.0、500mM NaCl及び10%グリセロール、20mMイミダゾール)で洗浄し、次いで、50mLのBoNTA溶出バッファー(20mM HEPES、pH7.0、500mM NaCl及び10%グリセロール、300mMイミダゾール)で溶出した。次いで、溶出画分を濃縮した後、開始バッファー(20mM TrisHCl、pH8.5)及び終了バッファー(20mM TrisHCl、pH8.5、1M NaCl)を用いてイオン交換により更に精製した。最適な純度の画分を再度合わせ、スピン濃縮により濃縮し、10%グリセロールを添加した後、更なる使用のために-80℃で保存した。
【0090】
結果及びデータ分析
ワンステップアフィニティー精製では、ごく低純度(only modest purity)のタンパク質を得た。第2段階のイオン交換後、純度が大幅に向上した。総収量は、1リットルの培養当たり0.1mgと推定され、最終産物の純度は90%だった(
図2パネルA-B)。驚くべきことに、ZFPを用いた融合タンパク質は、細胞浸透性ペプチドを用いた融合よりも高いタンパク質発現及び精製をもたらした(TAT及びPep-1、
図2、パネルA)。
【0091】
この実施例は、BoNTA-CPP融合タンパク質を、大腸菌からの組み換えタンパク質として発現させ、アフィニティー精製及びその後のイオン交換により精製することがで
きることを示している。
【0092】
実施例2:BoNTA-CPP融合タンパク質によるボツリヌス基質の切断
この実験は、発現BoNTA-CPP融合タンパク質がBoNT基質SNAP-25に対して活性を有することを示している。
【0093】
SNAPtide(商標)アッセイを用いたボツリヌス活性試験
SNAPtide(ミリポア、Cat.No.567333-200NMOL)を、反応バッファー(20mM、pH7.4、0.25mM ZnCl2、5mM DTT、0.05%Tween-20)で5μMに希釈した。各組み換えBoNTA-ZFP融合タンパク質(200nM;タンパク質番号1~8)を、SNAPtideを含む反応バッファーに添加した。反応は、37°Cで40分間インキュベートした。蛍光を、プレートリーダーを用いて励起波長320nm及び発光波長420nmで記録した。SNAPtideは、BoNTAの細胞内基質であるSNAP-25に由来する短いペプチドだった。SNAPtideは、BoNTAの切断部位、並びに蛍光色素基及び消光基の両方を含んでいた。ペプチドの切断により、蛍光色素が遊離し、蛍光が活性化される。反応ポジティブコントロールは、R&Dシステムズから購入した市販の組み換えBoNTA軽鎖(BoNTA-LC)タンパク質(Cat.No.4489-ZN-010)とした。全てのデータについて、3回再現した。
【0094】
結果及びデータ分析
図3のデータは、平均±標準偏差で示され、片側スチューデントのt検定により分析されている。市販のBoNTA-LCを含めた全ての試験サンプルが、SNAPtideコントロール群よりも有意に(p<0.05)高いシグナルを有している。
図3に示すように、ZFPのシングル末端及び2要素融合は、どちらも、SNAP-25由来のペプチド基質に対するBoNTAの活性を保持した。
【0095】
実施例3:BoNTA-ZFP融合タンパク質の細胞透過活性アッセイ
この実験は、選択したBoNTA-ZFP融合タンパク質が、ヒトの皮膚線維芽細胞(hDF)を効果的に透過できることを示している。
【0096】
組み換えBoNTA-ZFP融合タンパク質によるhDF細胞の形質導入
hDF細胞を、ポリリジンでコーティングされた6ウェルプレートに播種した。播種から24時間後に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した。BoNTA-ZFPタンパク質(タンパク質番号5及び6)及びコントロールタンパク質(R&D BoNTA-LC、R&Dシステムズの市販のBoNTA軽鎖)を、DMEM無血清培地で希釈した。細胞を、BoNTA-ZFPタンパク質(0.15μM)及びBoNTA-LC(0.5μM)で37°Cで2時間処理した。次いで、細胞を0.5mg/mLのヘパリンを添加したPBSで3回洗浄して表面結合タンパク質を除去した後、トリプシン処理で採取した。収集した細胞を超音波分解により溶解し、BoNTA活性を上記のように分析した。
【0097】
結果及びデータ分析
図4に示すデータは、平均±標準偏差で示され、片側スチューデントのt検定により分析されている。BoNTA-ZFPタンパク質(タンパク質番号5及び6)で処置したhDF細胞は、コントロール群よりも有意に高いシグナル(p<0.05)で明らかなBoNTA活性を示した。これは、BoNTA-ZFPタンパク質が細胞を効果的に透過できることを示している。
【0098】
実施例4:マウスにおけるBoNTA-ZFPタンパク質のin vivo活性
この実験は、無傷の又は極微針で処理したマウスの皮膚に適用した場合に、BoNTA-ZFP融合タンパク質が、指外転を特徴とする筋肉麻痺を引き起こすことを示している。
【0099】
指外転実験
体重約36gの15匹のC57雌マウスを、ランダムに5つの群に分けた(n==3)。全てのマウスにおいて、左脚はコントロールとして処置せず、右脚を異なる薬物で処置した。処置前にマウスに麻酔をかけた。mock群(A)では、マウスに保存バッファー(20mM HEPES、pH7.0、300mM NaCl及び10%グリセロール)を投与した。BOTOX(アラガン)注射群(B)では、BOTOXを指示通りに0.9%NaCl生理食塩水で再構成し、5μLの45U/mL溶液を右脚に注射した。群Cでは、マウスの脚及び足を極微針ローラー(RoHS MR20、0.2mm、ハウス使用)で前処置した後、60μLの45U/mL BOTOXを局所適用した。群Dでは、マウスの脚及び足を極微針ローラー(RoHS MR20、0.2mm、ハウス使用)で前処置した後、保存バッファー(20mM HEPES、pH7.0、300mM NaCl及び10%グリセロール)中のBoNTA-ZFPタンパク質(タンパク質番号6)0.05mg/mLを60μL、局所適用した。群Eでは、保存バッファー(20mM HEPES、pH7.0、300mM NaCl及び10%グリセロール)中のBoNTA-ZFPタンパク質0.05mg/mLを60μL、局所適用した。極微針ローラー処置は、脚及び足を3回ローリングすることにより適用した。局所適用の場合は、脚及び足に薬物を均一に広げ、マッサージした後、風乾した。これを、全ての溶液が投与されるまで数回繰り返した。指外転は、0日目にマウスが目覚めた後、記録し、その後、続く4日間、毎日記録した。
【0100】
結果及びデータ分析
注射BOTOXと、極微針による前処置を伴うBoNTA-ZFPは、どちらも、コントロール群Aよりも有意に高いスコア(p<0.05;スチューデントのt検定)で、注目すべき指外転を示した(
図5)。BoNTA-ZFPの直接適用は、最小限の効果だった。指外転スコア(DAS)は、3人の別の研究者により盲検で評価した。DASは、2日目でピーク値に達した(
図6)。従って、この実施例は、マウスの皮膚に適用した場合、細胞透過性BoNTA-ZFPは、NAP-25切断のin vivo活性を示す筋肉麻痺を引き起こすことを示している。
【0101】
実施例5:昆虫細胞での発現
この実験は、BoNTA-ZFP融合タンパク質を昆虫細胞で高収率で発現できることを示している。天然のBoNTがバクテリアのクロストリジウム属ボツリヌス菌(原核生物)から産生されることを考慮すると、昆虫細胞(真核生物)からのBoNTAの大量産生は実に驚くべきことである。
【0102】
方法
タンパク質番号6(配列番号15)を含むpFastBacベクターを、バキュロウイルス(BV)にパッケージ化した。タンパク質番号6の組み換えタンパク質を含むBVを用いて、ヨトウガSf9昆虫細胞を感染させた。細胞生存率が60%未満となったとき、細胞を収穫した。約1mLの培養物を遠心分離して、細胞を収集した。これらの細胞を1mLのPBS緩衝液に再懸濁し、超音波分解した。約10μLの細胞溶解物をSDS-PAGEで分離した。タンパク質を抗His抗体を用いて検出し、画像化した。
【0103】
結果及びデータ分析
可溶性BoNTA-ZFは、総タンパク質のほぼ100%に近い(
図7)。タンパク質の量は、ローディングコントロール(5μgタンパク質)と比較して1μgであると定量
した(
図7)。従って、発現収量は、1リットルの培養物当たり100mgであると計算される。
【0104】
実施例6:筋肉内注射により筋肉麻痺が生じる
方法
種々の用量のBoNTA-ZFPを、ハミルトン注射器を用いて、右腓腹筋に筋肉内注射した。筋肉麻痺を、実施例4で説明したようにモニターした。
【0105】
結果及びデータ分析
BoNTA-ZFP(タンパク質番号6)の1又は3ngの筋肉内注射により、明らかな指外転がもたらされた。全てのマウスでスコア4に到達した(各群n=3)。
【0106】
実施例7:トレッドミル試験
この実施例では、薬剤の筋肉麻痺作用を測定する方法を試験する。自発的な実施中の研究と比較して、この方法は、細胞浸透性BoNTA-ZFPの筋肉麻痺作用を客観的に反映することができる。
【0107】
方法
BoNTA-ZFPを、実施例4で説明したように、CJ57雌マウスに局所適用した。マウスに、以下の一連の角度及び速度の設定を受けさせた:0°/5m/分、3°/8m/分、6°/11m/分、9°/14m/分、12°/17m/分、12°/20m/分。マウスを各ステップで5分間維持した。合計距離を計測した。
【0108】
結果及びデータ分析
Botox注射又は局所BoNTA-ZFPで処置したマウスは、緩衝生理食塩水の場合と比較して、トレッドミル実験で運動能力の低下を示した(
図8)。
【0109】
実施例8:平均台試験
この実施例では、薬剤の筋肉麻痺作用を測定する別の方法を試験する。
【0110】
方法
BoNTA-ZFPを、実施例4で説明したように、CJ57雌マウスに局所適用した。マウスに平均台実験を受けさせた。マウスが平均台を通過する時間を計測した。
【0111】
結果及びデータ分析
Botox注射又は局所BoNTA-ZFPで処置したマウスは、緩衝生理食塩水の場合と比較して、平均台実験で運動能力の低下を示した(
図9)。
【0112】
実施例9:足跡試験
この実施例では、薬剤の筋肉麻痺作用を測定する別の方法を試験する。
【0113】
方法
BoNTA-ZFPを、実施例4で説明したように、CJ57雌マウスに局所適用した。マウスに足跡分析実験を受けさせた。足跡の幅を記録した。
【0114】
Botox注射又は局所BoNTA-ZFPで処置したマウスは、緩衝生理食塩水の場合と比較して、足跡分析で接触面積の減少を示した(
図10)。
【0115】
実施例8~10は、試験薬剤の筋肉麻痺作用を測定するためのこれらの試験の有効性と定量的性質を示している。
【0116】
本発明は、本発明の個々の態様の単一の説明として意図される記載された特定の実施形態によって範囲が限定されることはなく、機能的に同等である組成物又は方法は本発明の範囲内にある。本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、種々の改変及び変更を本発明の方法及び組成物に行うことができることは、当業者に明らかであろう。そのような改変は添付のクレームの範囲内に入るように意図される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内であれば、本発明の改変及び変更を包含することを意図する。
【0117】
本明細書で挙げた全ての出版物及び特許出願は、各個々の出版物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されるのと同じように、参照により本明細書に組み込まれる。