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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071878
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】圧電振動素子及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
H03H9/19 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032541
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2019096817の分割
【原出願日】2019-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】浪川 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動特性の良好な圧電振動素子及び圧電デバイスを提供する。
【解決手段】板形状を有している、圧電振動素子の水晶片121において、薄部121aは、第1平面124A及び第2平面を有している。第1平面124Aは、水晶片121の厚み方向´の一方側+Y´に面している。第2平面は、厚み方向の他方側-Y´に面している。厚部121cは、第3平面126A及び第4平面を有している。第3平面126Aは、厚み方向の一方側+Y´に面しており、第1平面124Aよりも厚み方向の一方側+Y´に位置している。第4平面は、厚み方向の他方側-Y´に面している。第3平面126Aの薄部121a側の縁部126Aaに、第3平面126Aに対して厚み方向の他方側-Y´に窪んでいるとともに、平面視で縁部126Aaにおいて薄部121a側から厚部121c側へ窪んでいる複数の第1凹部128Aが位置している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板形状を有している圧電片と、
前記圧電片に重なっている第1金属パターンと、
を有しており、
前記圧電片は、
平面視において前記板形状の一部の領域を含んでいる薄部と、
平面視において前記板形状の他の一部の領域を含んでいる、前記薄部よりも厚い厚部と、を有しており、
前記薄部は、
前記板形状の厚み方向の一方側に面している第1平面と、
前記厚み方向の他方側に面している第2平面と、を有しており、
前記厚部は、
前記厚み方向の前記一方側に面しており、前記第1平面よりも前記一方側に位置している第3平面と、
前記厚み方向の前記他方側に面している第4平面と、を有しており、
前記圧電片は、前記第3平面の前記薄部側の第1縁部に、前記第3平面に対して前記厚み方向の前記他方側へ窪んでいるとともに、平面視で前記第1縁部において前記薄部側から前記厚部側へ窪んでいる複数の第1凹部を有しており、
前記第1縁部は、平面視において所定方向に沿う特定縁部を含み、
前記第1金属パターンは、
前記第1平面に位置している励振電極と、
前記第3平面に位置している引出部と、
前記励振電極から、前記特定縁部に向かって延びて、前記引出部に接続されている配線と、を有しており、
前記複数の第1凹部は、前記特定縁部に沿って、前記配線の幅に対応する長さの第1範囲よりも長い範囲に亘って並んでいる2以上の第1凹部を含み、当該2以上の第1凹部は、前記第1範囲よりも外側に全体が位置する第1凹部を含んでいる
圧電振動素子。
【請求項2】
前記複数の第1凹部は、前記第1金属パターンを含むいずれの金属パターンも重なっていない第1凹部を含んでいる
請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記圧電片は、ATカットの水晶片であり、
前記特定縁部は、前記水晶片の、X軸に平行な中心線に交差しており、
前記2以上の第1凹部は、前記特定縁部に沿って、前記中心線の両側に亘って並んでいる
請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記特定縁部に位置している全ての前記第1凹部の位置関係が前記中心線に対して線対称である
請求項3に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記引出部は、前記厚部から、前記2以上の第1凹部を経由して、前記薄部に至っており、かつ前記特定縁部に沿う方向の幅が、前記配線の幅よりも大きい
請求項1~4のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記圧電片は、ATカットの水晶片であり、
平面視において
前記薄部は、矩形状であり、
前記第1縁部は、前記薄部の2以上の辺にそれぞれ対応する、前記特定縁部を含む、2以上の部分縁部を有しており、
前記圧電片は、少なくとも2つの前記部分縁部それぞれに沿って、前記複数の第1凹部を有している
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記圧電片は、少なくとも、X軸方向において互いに対向する2つの前記部分縁部それぞれに沿って、前記複数の第1凹部を有している
請求項6に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
平面視において前記板形状のうちの前記薄部から前記厚部までの領域を含んでいる、前記厚部側ほど厚くなっている中間部を更に有しており、
前記中間部は、
前記厚み方向の前記一方側に面しており、前記薄部側に対して前記厚部側が前記一方側に位置する向きで前記第1平面に対して傾斜している第1中間面と、
前記厚み方向の前記他方側に面している第2中間面と、を有しており、
前記第1凹部は、前記第1中間面に対しても前記厚み方向の前記他方側へ窪んでいる
請求項1~7のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項9】
前記第4平面は、前記第2平面よりも前記厚み方向の前記他方側に位置しており、
前記第2中間面は、前記薄部側に対して前記厚部側が前記他方側に位置する向きで前記第2平面に対して傾斜しており、
前記第4平面の前記薄部側の第2縁部に、前記第4平面及び前記第2中間面に対して前記厚み方向の前記一方側へ窪んでいるとともに、平面視で前記第2縁部において前記薄部側から前記厚部側へ窪んでいる第2凹部が位置している
請求項8に記載の圧電振動素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の圧電振動素子と、
前記圧電振動素子と対向している対向面を有している基体と、
前記圧電振動素子と前記対向面との間に介在して両者を接合している接合材と、
前記基体に接合されて前記圧電振動素子を密閉している蓋体と、
を有している圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電振動素子及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスとして、例えば、水晶振動子及び水晶発振器が知られている。これらの圧電デバイスは、交流電圧の印加によって振動する振動素子を有している。振動素子は、板状の圧電片(例えば水晶片)と、圧電片の1対の主面(板形状の最も広い面。板形状の表裏。以下、同様。)に設けられた1対の励振電極とを有している。1対の励振電極は、圧電片に交番電圧を印加する。
【0003】
特許文献1及び2では、板状の圧電片の形状として、平面視において互いに異なる領域を構成する、薄部及び厚部を有する形状を開示している。これらの文献において、薄部は、励振電極が設けられる部位であり、平板状である。厚部は、薄部に対して外周側に位置しており、薄部よりも厚い。
【0004】
特許文献1では、圧電片をパッケージに接合する接合材を収容する凹部又は段差部を厚部に形成することを提案している。凹部は、平面視において厚部の縁部から離れている。また、段差部は、厚部としての凸部を形成することによって構成されている。また、特許文献2では、薄部と厚部との間に振動の伝搬を抑制するスリットを形成することを提案している。スリットは、平面視において厚部の縁部を切り欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-171591号公報
【特許文献2】特開2018-110447号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係る振動素子用圧電片は、板形状を有している圧電片であって、平面視において前記板形状の一部の領域を含んでいる薄部と、平面視において前記板形状の他の一部の領域を含んでいる、前記薄部よりも厚い厚部と、を有しており、前記薄部は、前記板形状の厚み方向の一方側に面している第1平面と、前記厚み方向の他方側に面している第2平面と、を有しており、前記厚部は、前記厚み方向の前記一方側に面しており、前記第1平面よりも前記一方側に位置している第3平面と、前記厚み方向の前記他方側に面している第4平面と、を有しており、前記第3平面の前記薄部側の第1縁部に、前記第3平面に対して前記厚み方向の前記他方側へ窪んでいるとともに、平面視で前記第1縁部において前記薄部側から前記厚部側へ窪んでいる第1凹部が位置している。
【0007】
本開示の一態様に係る圧電振動素子は、上記振動素子用圧電片と、前記板形状の前記厚み方向の前記一方側に面している第1面に少なくとも位置している第1金属パターンと、前記板形状の前記厚み方向の前記他方側に面している第2面に少なくとも位置している第2金属パターンと、を有しており、前記第1金属パターンは、前記第1凹部の内面を経由して前記第1平面から前記第3平面に跨っている部分を有している。
【0008】
本開示の一態様に係る圧電デバイスは、上記圧電振動素子と、前記第1面又は前記第2面である第1対向面と対向している第2対向面を有している基体と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に介在して両者を接合している接合材と、前記基体に接合されて前記圧電振動素子を密閉している蓋体と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る水晶デバイスの斜視図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3図1の水晶デバイスの水晶素子の斜視図。
図4図3の水晶素子の水晶片の一部拡大側面図。
図5図3の水晶素子の水晶片の平面図。
図6図5の領域VIを拡大して示す斜視図。
図7図5のVII-VII線における断面図。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は水晶素子の製造方法の一例を示す模式的な断面図。
図9図9(a)、図9(b)及び図9(c)は厚部に係る変形例を示す模式的な平面図。
図10図10(a)及び図10(b)は水晶素子の構成に係る変形例を示す模式的な断面図。
図11図11(a)及び図11(b)は実装構造に係る変形例を示す模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る水晶デバイスについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同様に、図面相互の寸法比率等についても必ずしも一致していない。
【0011】
(水晶デバイスの概略構成)
図1は、実施形態に係る水晶デバイス100の斜視図である。図2は、II-II線における断面図である。なお、水晶デバイス100は、いずれの方向が上下方向又は水平方向とされてもよいが、以下の説明では、便宜上、図1及び図2の紙面上方を上方として、上面等の用語を用いることがある。
【0012】
水晶デバイス100は、例えば、全体として略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスの寸法は、適宜な大きさとされてよい。一例を挙げると、長辺又は短辺の長さは、0.6mm以上2.0mm以下であり、上下方向の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下である。水晶デバイス100は、例えば、その下面を不図示の実装基体(例えば回路基板)の上面に対向させて表面実装される。
【0013】
水晶デバイス100は、例えば、一定の周波数で信号強度(例えば電圧及び/又は電流)が振動する発振信号の生成に寄与する振動子として構成されている。水晶デバイス100は、例えば、発振信号の生成に利用される振動を生じる水晶素子120と、水晶素子120をパッケージングしているパッケージ103とを有している。
【0014】
パッケージ103は、例えば、水晶素子120を支持する基体110と、基体110に接合されて水晶素子120を封止する蓋体130とを有している。水晶素子120は、例えば、導電性接着剤140によって基体110に接合されて支持されている。パッケージ103の内部空間は、例えば、真空とされ、又は適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。
【0015】
基体110は、例えば、水晶素子120を収容する凹部を有する形状とされている。別の観点では、基体110は、平板状の基板部110aと、基板部110aの上面の縁部に沿って設けられている枠部110bとを有している。基板部110aおよび枠部110bからなる基体110は、セラミック材料等の絶縁材料からなる。蓋体130は、例えば、金属から構成され、枠部110bの上面にシーム溶接等により接合される。
【0016】
パッケージ103は、水晶素子120と、水晶デバイス100が実装される不図示の実装基体とを電気的に接続するための導体を有している。例えば、パッケージ103は、水晶素子120を実装するための搭載パッド111と、水晶デバイス100を実装基体に実装するための実装端子112と、両者を接続する不図示の配線導体とを有している。
【0017】
搭載パッド111は、基板部110aの上面に位置する導電層により構成されている。実装端子112は、基板部110aの下面に位置する導電層により構成されている。不図示の配線導体は、基板部110aを上下に貫通する貫通導体を含んで構成されている。これらの導体の材料は、例えば、金属である。
【0018】
水晶素子120は、導電性接着剤140によって搭載パッド111に接合されている。これにより、水晶素子120は、基体110に支持されているとともに、パッケージ103に電気的に接続されている。より詳細には、水晶素子120は、例えば、その一端側において搭載パッド111と接合されて、片持ち梁状に支持されている。導電性接着剤140は、例えば、金属からなるフィラーを混ぜ込んだ熱硬化性樹脂によって構成されている。
【0019】
実装端子112は、例えば、不図示の実装基体のパッドとはんだによって接合される。これにより、水晶デバイス100は、実装基体に支持されるとともに電気的に接続される。
【0020】
(水晶素子の概略構成)
図3は、水晶素子120の斜視図である。なお、図中の+Y´方向は、図2の紙面上方に対応しており、+X方向は、図2の紙面右方に対応している。ただし、図示の例の水晶素子120は、概略、X軸に平行な中心線に関して180°回転対称の構成であり、+Y´方向が図2の紙面下方(基板部110a側)に対応していてもよい。また、X軸の正負と、水晶素子120の形状との対応関係は、図示の対応関係と逆であっても構わない。
【0021】
水晶素子120は、板状の水晶片121と、水晶片121に設けられている第1金属パターン123A及び第2金属パターン123B(以下、「金属パターン123」といい、両者を区別しないことがある。)とを有している。1対の金属パターン123によって水晶片121に電圧が印加されることによって水晶素子120は振動する。なお、板状は、例えば、互いに反対側に面する1対の面が他の面よりも広い形状ということができる。
【0022】
水晶片121は、例えば、いわゆるATカット板によって構成されている。すなわち、水晶においてX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上50°以下(一例として、35°15′)回転させて直交座標系XY´Z´を定義したとき、水晶片121は、XZ´平面に基本的に平行な1対の主面(第1面121e及び第2面121f)を有する板状である。
【0023】
水晶片121は、例えば、平面視において互いに異なる領域を構成している、薄部121a、中間部121b及び厚部121cを有している。薄部121aは、発振信号の生成に寄与する振動を生じる部分であり、XZ´平面に平行な平板状である。厚部121cは、例えば、基体110への接合に利用される部分であり、薄部121aよりも厚い。中間部121bは、薄部121aと厚部121cとの間の部分であり、厚部121c側ほど厚くなっている。
【0024】
1対の金属パターン123それぞれは、例えば、薄部121aに電圧を印加する励振電極123a、外部から電圧が印加される引出部123b、及び励振電極123aと引出部123bとを接続する配線123cを有している。1対の励振電極123aは、例えば、薄部121aの両主面に設けられている。1対の引出部123bは、厚部121cの少なくとも下面において(図示の例では上面においても)2つ並んで設けられている。配線123cは、水晶片121の主面及び側面等に設けられている。金属パターン123は、金属等からなる導電性材料により形成されている。
【0025】
水晶素子120は、薄部121aを基板部110aの上面に対向させて、基体110の凹部内に収容される。1対の引出部123bは、基体110の基板部110aに設けられている1対の搭載パッド111に1対の導電性接着剤140により接着される。1対の励振電極123aは、1対の配線123c、1対の引出部123bおよび1対の導電性接着剤140によって、基体110に設けられている1対の搭載パッド111と電気的に接続されている。ひいては、1対の励振電極123aは、基板部110aに設けられている実装端子112のいずれか2つと電気的に接続されている。
【0026】
上記の2つの実装端子112は、不図示の発振回路によって交番電圧が印加される。ひいては、1対の励振電極123aによって薄部121aに交番電圧が印加される。これにより、薄部121aは、いわゆる厚み滑り振動を生じる。この振動は、発振回路によって発振信号の生成に利用される。このとき、発振回路は、例えば、水晶片121の厚み滑り振動のうち基本波振動を利用する。
【0027】
(水晶片の概略形状)
図4は、水晶片121の一部を拡大して示す側面図である。なお、図4は、後述する第1凹部128A及び第2凹部128B等が設けられていない部分の断面図と捉えられても構わない。
【0028】
図3及び図4に示す水晶片121(その全体)の平面形状等は適宜に設定されてよい。図示の例では、水晶片121の平面形状は、Z´軸及びX軸に平行な辺を有する矩形状とされている。水晶片121の他の平面形状としては、例えば、円形及び楕円形を挙げることができる。また、矩形の4辺のうちいずれか1つ以上を外側に膨らむ曲線状(例えば円弧)にした形状を挙げることができる。
【0029】
なお、矩形は、正方形及び狭義の長方形を含む。また、矩形又は矩形状というとき、特に断りが無い限り、角部が面取りされているなど、厳密に正方形又は長方形でなくてもよいものとする。水晶片121の平面形状以外の他の形状の説明においても同様である。
【0030】
水晶片121の平面形状において、X軸方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)が長手方向であってもよいし(図示の例)、Z´軸方向が長手方向であってもよいし、Z´軸方向の長さとX軸方向の長さとが同等であってもよい。図示の例では、水晶片121は、X軸方向を長手方向としている。換言すれば、水晶片121は、X軸に平行な長辺と、Z´軸に平行な短辺とを有している。
【0031】
(薄部)
薄部121aは、平面視において、少なくとも水晶片121の内側の領域を含んでいる。ここでいう内側の領域は、水晶片121の外縁から離れている領域である。より詳細には、例えば、薄部121aは、水晶片121の平面視における図心(中心)を含む領域を含んでいてよい。確認的に記載すると、図心は、その点を通る任意の軸に対する断面一次モーメントが0になる点である。
【0032】
薄部121aの平面形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、薄部121aの平面形状は、Z´軸及びX軸に平行な辺を有する矩形状とされている。薄部121aの他の平面形状としては、例えば、円形及び楕円形を挙げることができる。また、矩形の4辺のうちいずれか1つ以上を外側に膨らむ曲線状(例えば円弧)にした形状を挙げることができる。
【0033】
薄部121aの平面形状において、X軸方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)が長手方向であってもよいし、Z´軸方向が長手方向であってもよいし(図示の例)、Z´軸方向の長さとX軸方向の長さとが同等であってもよい。図示の例では、薄部121aは、Z´軸方向を長手方向としている。換言すれば、薄部121aは、Z´軸方向に平行な長辺と、X軸に平行な短辺とを有している。
【0034】
薄部121aは、例えば、水晶片121の面積(平面透視における面積)のうち、比較的広い部分を占めている。例えば、薄部121aは、水晶片121の面積の1/2以上を占めている。ただし、薄部121aは、水晶片121の面積の1/2未満を占めるだけであってもよい。
【0035】
薄部121aは、XZ´平面に平行な平板状であるから、XZ´平面に平行な主面(第1平面124A及び第2平面124B)を有している。第1平面124Aは、+Y´側(水晶片121の厚み方向の一方側)に面しており、Y´軸(厚み方向)に直交している。第2平面124Bは、-Y´側(水晶片121の厚み方向の他方側)に面しており、Y´軸(厚み方向)に直交している。別の観点では、第1平面124A及び第2平面124Bは互いに平行である。
【0036】
(厚部)
厚部121cは、平面視において水晶片121の外周側の領域の少なくとも一部を含んでいる。別の観点では、厚部121cは、中間部121bを挟んで薄部121aの外縁の少なくとも一部と隣り合っている。厚部121cと薄部121aの外縁とが隣り合う長さ(薄部121aの外縁に沿う方向の長さ)は、後述の変形例(図9(a)~図9(c))からも理解されるように適宜に設定されてよい。図示の例では、厚部121cは、矩形状の薄部121aの1辺に亘って薄部121aと隣り合っている。
【0037】
厚部121cと薄部121aとが中間部121bを挟んで隣り合う方向は、X軸方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)であってもよいし(図示の例)、Z´軸方向であってもよい。また、別の観点では、上記隣り合う方向は、薄部121aの短手方向であってもよいし(図示の例)、薄部121aの長手方向であってもよい。さらに、上記隣り合う方向と水晶片121の長手方向との関係も任意である。
【0038】
厚部121cの平面形状(本段落においては概略形状。例えば、後述する第1凹部128A及び第2凹部128B等を無視したときの形状。)及び寸法等は適宜に設定されてよい。例えば、厚部121cは、一定の幅で薄部121aの外縁に沿うような形状であってもよいし(図示の例)、薄部121a側の縁部の形状と、薄部121aとは反対側の縁部の形状とが互いに異なるような形状であってもよい。図示の例では、厚部121cは、薄部121aの1辺に平行な長辺を有する矩形状とされている。
【0039】
厚部121cと薄部121aとが中間部121bを挟んで互いに隣り合っている方向に直交する方向(図示の例ではZ´軸方向)において、厚部121cは、薄部121aに対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、上記隣り合っている方向(図示の例ではX軸方向)における厚部121cの長さも任意である。図示の例では、厚部121cのX軸方向の長さは、薄部121aのX軸方向の長さよりも短い。
【0040】
厚部121cは、例えば、薄部121aと同様に、XZ´平面に平行な平板状である。ただし、厚部121cは、板状と概念できる広さを有しない形状であってもよい。厚部121cは、薄部121aと同様に、XZ´平面に平行な主面(第3平面126A及び第4平面126B)を有している。第3平面126Aは、+Y´側(水晶片121の厚み方向の一方側)に面しており、Y´軸(厚み方向)に直交している。第4平面126Bは、-Y´側(水晶片121の厚み方向の他方側)に面しており、Y´軸(厚み方向)に直交している。別の観点では、第3平面126A及び第4平面126Bは互いに平行である。さらに別の観点では、第3平面126A及び第4平面126Bは、第1平面124A及び第2平面124Bと平行である。
【0041】
厚部121cは、既述のように薄部121aよりも厚い。より詳細には、厚部121cは、薄部121aに対して厚み方向(Y´軸方向)の両側に高くなっている。別の観点では、厚み方向の一方側(+Y´側)に面している第3平面126Aは、前記一方側に面している第1平面124Aよりも前記一方側に位置している。また、厚み方向の他方側(-Y´側)に面している第4平面126Bは、前記他方側に面している第2平面124Bよりも前記他方側に位置している。
【0042】
厚み方向(Y´軸方向)において、薄部121aの厚部121cに対する位置は任意である。例えば、第1平面124Aから第3平面126Aまでの厚み方向における高さをH1とする。第2平面124Bから第4平面126Bまでの厚み方向における高さをH2とする。このとき、H1は、H2よりも小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、例えば、下記式のいずれかが成り立ってもよい。
2/3×H2≦H1≦3/2×H2
4/5×H2≦H1≦6/5×H2
9/10×H2≦H1≦11/10×H2
【0043】
(中間部)
中間部121bは、平面視において薄部121aから厚部121cまでの領域を含んでいる。別の観点では、中間部121bは、薄部121aに一体的につながっているとともに、厚部121cに一体的につながっており、これにより、薄部121aと厚部121cとをつないでいる。
【0044】
中間部121bは、例えば、概略、薄部121aから厚部121cまでの領域のみからなる(他の領域を殆ど含まない)。また、中間部121bは、例えば、概略、厚部121cの薄部121a側の縁部の全体に亘っている。
【0045】
従って、既述の、厚部121cが薄部121aと隣り合う方向(図示の例ではX軸方向)、及び厚部121cが薄部121aの外縁と隣り合う長さ(薄部121aの外縁に沿う方向の長さ。図示の例では薄部121aの1辺に相当する長さ)についての説明は、中間部121bが薄部121aと隣り合う方向、及び中間部121bが薄部121aの外縁と隣り合う長さに援用されてよい。
【0046】
また、中間部121bの平面形状(本段落においては概略形状。例えば、後述する第1貫通孔122等を無視したときの形状。)は、既述の薄部121a及び厚部121cの平面形状についての説明から類推可能である。すなわち、薄部121aの縁部の形状の説明は、中間部121bの薄部121a側の縁部の形状に援用されてよい。厚部121cの薄部121a側の縁部の形状の説明は、中間部121bの厚部121c側の縁部の形状に援用されてよい。図示の例では、中間部121bの平面形状は、薄部121aの厚部121c側の1辺と、厚部121cの薄部121a側の1辺とを有する矩形状である。
【0047】
ただし、中間部121bは、平面視において、薄部121aと厚部121cとの間に位置していない部分を有していたり、厚部121cの薄部121a側の縁部の全体に亘っていなかったりしてもよい。
【0048】
中間部121bの平面視における寸法は適宜に設定されてよい。例えば、厚部121cと薄部121aとが中間部121bを介して互いに隣り合っている方向に直交する方向(図示の例ではZ´軸方向)において、中間部121bは、薄部121a及び/又は厚部121cに対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、上記隣り合っている方向(図示の例ではX軸方向)における中間部121bの長さも任意である。図示の例では、中間部121bのX軸方向の長さは、厚部121cのX軸方向の長さよりも短い。
【0049】
中間部121bは、既述のように厚部121c側ほど厚くなっている。具体的には、中間部121bは、厚部121c側ほど厚くなるように第1中間面125A及び第2中間面125Bを有している。第1中間面125Aは、厚み方向の一方側(+Y´側)に面しており、薄部121a側に対して厚部121c側が前記一方側に位置する向きで第1平面124Aに対して傾斜している。第2中間面125Bは、厚み方向の他方側(-Y´側)に面しており、薄部121a側に対して厚部121c側が前記他方側に位置する向きで第2平面124Bに対して傾斜している。
【0050】
第1中間面125Aの第1平面124Aに対する傾斜角θ1、及び第2中間面125Bの第2平面124Bに対する傾斜角θ2は適宜に設定されてよい。例えば、傾斜角θ1及び傾斜角θ2は、互いに同等であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。なお、ここでいう傾斜角θ1及びθ2が同等は、例えば、両者の角度の差が3°以下又は1°以下の場合を含んでよいものとする。また、例えば、傾斜角θ1及びθ2は、45°未満であってもよいし、45°以上であってもよい。
【0051】
(薄部、中間部及び厚部の境界)
第1平面124Aと第1中間面125Aとは互いに交差している。別の観点では、図4に示すような側面視若しくは断面視において、第1平面124A及び第1中間面125Aは角部を構成している。なお、角部は、極めて微視的に見た場合に、曲線を有していたり、段差を有していたりしてもよい。この場合の曲線の長さ又は段差の高さは、例えば、0.1μm未満である。また、第1平面124Aと第1中間面125Aとは、微視的に見なくても、両者の間に曲線が介在していたり、両者の間に段差が存在したりしてもよい。第1平面124Aと第1中間面125Aとの境界について説明したが、上記の説明は、第2平面124Bと第2中間面125Bとの境界に援用されてよい。
【0052】
第1中間面125Aの薄部121a側の縁部125Aaと、第2中間面125Bの薄部121a側の縁部125Baとは、中間部121bと薄部121aとが隣り合う方向(図示の例ではX軸方向)における位置が一致していてもよいし、互いにずれていてもよい(図示の例)。位置が一致しているという場合、例えば、0.1μm未満のずれが存在してもよい。また、ずれ量は適宜に設定されてよく、例えば、0.5μm以上又は1μm以上とされてよい。
【0053】
なお、図示の例のように、縁部125Aaと縁部125BaとのX軸方向における位置が異なる態様において、X軸に直交する平面で薄部121aと中間部121bとの境界を概念する場合、当該境界は、縁部125Aaから縁部125Baまでの間の適宜な位置とされてよい。例えば、当該境界は、2つの縁部のうち薄部121a側(+X側)に位置する縁部(図示の例では縁部125Aa)とされてよい。平板状であるのは、縁部125Aaよりも+X側だからである。
【0054】
微視的に見ると、例えば、第3平面126Aと第1中間面125Aとは、互いに交差していない。より詳細には、図4に示す例では、第3平面126Aと第1中間面125Aとの間には段差127Aが形成されている。別の観点では、厚み方向の一方側(+Y´側)に面している第1中間面125Aにおいて、厚部121c側の縁部125Abは、前記一方側に面している第3平面126Aよりも厚み方向の他方側(-Y′側)に位置している。段差127Aの高さh1は、例えば、1μm未満である。
【0055】
同様に、微視的に見ると、例えば、第4平面126Bと第2中間面125Bとは互いに交差していない。より詳細には、図4に示す例では、第4平面126Bと第2中間面125Bとの間には段差127Bが形成されている。別の観点では、厚み方向の前記他方側(-Y´側)に面している第2中間面125Bにおいて、厚部121c側の縁部125Bbは、前記他方側に面している第4平面126Bよりも前記一方側(+Y´側)に位置している。段差127Bの高さh2は、例えば、1μm未満である。
【0056】
段差127A及び127Bは、例えば、比較的小さいとともに、概ね、水晶片121の平面に対して直交している。従って、第3平面126Aの中間部121b側の縁部126Aaと、第1中間面125Aの厚部121c側の縁部125Abとは、平面視において概ね一致する。同様に、第4平面126Bの中間部121b側の縁部126Aaと、第2中間面125Bの厚部121c側の縁部125Bbとは、平面視において概ね一致する。
【0057】
なお、段差127A及び127Bは構成されていなくてもよい。以下の説明では、特に断りが無い限り、段差127A及び127Bの存在は無視するものとする。
【0058】
第3平面126Aの縁部126Aaと、第4平面126Bの縁部126Baとは、厚部121cと中間部121bとが隣り合う方向(図示の例ではX軸方向)における位置が一致していてもよいし、互いにずれていてもよい(図示の例)。位置が一致しているという場合、例えば、0.1μm未満のずれが存在してもよい。また、ずれ量は適宜に設定されてよく、例えば、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上又は2μm以上とされてよい。
【0059】
なお、図示の例のように、縁部126Aaと縁部126BaとのX軸方向における位置が異なる態様において、X軸に直交する平面で厚部121cと中間部121bとの境界を概念する場合、当該境界は、2つの縁部間の適宜な位置とされてよい。例えば、当該境界は、2つの縁部のうち厚部121c側(-X側)に位置する縁部(図示の例では縁部126Ba)とされてよい。平板状であるのは、縁部126Baよりも-X側だからである。
【0060】
(水晶片の寸法の一例)
水晶片121の各種の寸法は適宜に設定されてよい。以下に、一例を示す。水晶片121のX軸方向における長さは、500μm以上1500μm以下である。水晶片121(薄部121a)のZ′軸方向における長さは400μm以上700μm以下である。薄部121aのX軸方向における長さは、250μm以上1000μm以下(ただし、水晶片121のX軸方向における長さよりも短い)である。薄部121aの厚さt1は、16μm以下である。これは、ATカット板において厚み滑り振動の基本波振動を利用する場合、概ね100MHz以上の周波数に相当する。厚部121cの厚さt3は、50μm以下である。
【0061】
(第1貫通孔)
図3に示すように、水晶片121は、薄部121aと厚部121cとの間に(少なくとも一部が)位置する第1貫通孔122を有している。第1貫通孔122は、水晶片121の一方の主面側から他方の主面側へ貫通している。この第1貫通孔122は、例えば、水晶素子120の表裏の導通に寄与する。
【0062】
第1貫通孔122の位置、形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1貫通孔122は、中間部121bに位置している。ただし、第1貫通孔122は、厚部121cに位置していてもよいし、中間部121b及び厚部121cの双方に跨っていてもよい。また、第1貫通孔122の縁部の一部は、中間部121bの縁部の一部と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0063】
図示の例では、第1貫通孔122は、薄部121aと厚部121cとが隣り合う方向に直交する方向(Z´軸方向)に延びるスリット状とされている。その長さは、例えば、薄部121aのZ´軸方向の長さの1/4以上又は1/3以上である。また、第1貫通孔122は、例えば、薄部121aのZ´軸方向の範囲に対して、概ね中央に位置している。また、スリット状の第1貫通孔122は、中間部121bの幅(X軸方向の長さ)と概ね同等の幅(例えば前者の8割以上)を有している。第1貫通孔122は、XZ´断面(開口)の形状及び寸法がY´軸方向(貫通方向)において一定であってもよいし、変化していてもよい。
【0064】
(凹部)
図5は、水晶片121の平面図である。図6は、図5の領域VIを拡大して示す斜視図である。図7は、図5のVII-VII線における断面図である。図5では、薄部121a(及び/又は第1平面124A)の中心CP(図心)を通り、薄部121aの1辺(水晶片121の長辺)に平行な中心線CLも示している。
【0065】
図3図5図7に示すように、水晶片121は、第3平面126A(厚部121c)の薄部121a側の縁部126Aaに位置している1以上(図示の例では複数(10個))の第1凹部128Aを有している。第1凹部128Aは、第3平面126Aに対して窪んでいる。また、第1凹部128Aは、平面視においても、縁部126Aaにおいて窪んでいる。
【0066】
同様に、図7に示すように、また、図3図5図6から類推されるように、水晶片121は、第4平面126B(厚部121c)の薄部121a側の縁部126Baに位置している1以上(図示の例では複数(10個))の第2凹部128Bを有している。第2凹部128Bは、第4平面126Bに対して窪んでいる。また、第2凹部128Bは、平面視においても、縁部126Baにおいて窪んでいる。
【0067】
なお、本実施形態の説明において、凹部、凹状及び窪む等の語は、貫通孔を意味しないものとする。すなわち、凹部は有底である。また、平面視において、縁部126Aa(126Ba)は、第3面126A(第4面126B)の縁部のうち第1凹部128A(第2凹部128B)を除いた部分として定義されてもよいし、第1凹部128A(第2凹部128B)を含む部分とされてもよい。以下の説明では、基本的には、前者とするが、便宜上、後者であるかのように説明することもある。
【0068】
既に述べたように、水晶素子120の構成は、X軸に平行な不図示の中心線に対して180°回転対称とされてよい。従って、以下では、第1凹部128A及び第2凹部128Bを代表して第1凹部128Aについて説明する。以下の説明は、基本的に、第2凹部128Bに援用されてよい。
【0069】
第1凹部128Aの数、位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1凹部128Aの数は複数とされている。複数の第1凹部128Aは、第3平面126Aの薄部121a側の縁部126Aaに沿って並んでいる。複数の第1凹部128Aの配置は、中心線CLに対して線対称であってもよいし(図示の例)、線対称でなくてもよい。なお、複数の第1凹部128Aの配置が線対称という場合、中心線CL上に位置する第1凹部128Aが存在しても構わない。複数の第1凹部128Aのピッチは、その並びの全体で、又は対称軸(中心線CL)の両側(+Z´側及び-Z´側)のそれぞれで、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。図示の例では、対称軸の両側それぞれで第1凹部128Aのピッチは一定であり、かつ対称軸の両側のピッチは互いに同等である。
【0070】
複数の第1凹部128Aの形状及び寸法は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。図示の例では、複数の第1凹部128Aは、基本的に、互いに同一の形状及び寸法とされることが想定されている。ただし、一部の第1凹部128Aは、第1貫通孔122から離れており、他の一部の第1凹部128Aは、第1貫通孔122に重なっている(別の観点では第1貫通孔122につながっている)。これにより、両者の間で形状及び寸法の相違が生じている。以下の説明では、まず、第1貫通孔122に重なっていない第1凹部128Aの形状及び寸法について説明し、次に、第1貫通孔122と重なっている第1凹部128Aの形状及び寸法について説明する。
【0071】
(第1貫通孔から離れている凹部の形状及び寸法)
平面視において、第1凹部128Aの薄部121a側の端部は、例えば、第1平面124Aに到達していてもよいし(図示の例)、到達していなくてもよい。図示の例では、より詳細には、第1凹部128Aの薄部121a側の端部は、第1中間面125Aと第1平面124Aとの縁部に位置していると捉えられてよい。
【0072】
また、第1凹部128Aにおいて、第3平面126AのY´方向の位置からの深さは、一定であってもよいし、変化していてもよい(図示の例)。別の観点では、第1凹部128Aの内面は、第3平面126Aに対して傾斜している領域を有していてもよいし(図示の例)、有していなくてもよい。図示の例では、より詳細には、水晶片121の厚み方向の一方側(+Y´側)に開口している第1凹部128Aは、薄部121a側ほど他方側(-Y´側)に位置している傾斜面(符号省略)を有している。この傾斜面の第1平面124Aに対する傾斜角は、例えば、第1中間面125Aの傾斜角θ1と概ね同等である。
【0073】
また、第1凹部128Aの薄部121a側の端部、別の観点では、第1凹部128Aのうち、第3平面126AのY´方向の位置から最も深い(低い)部分は、例えば、水晶片121の厚み方向(Y´方向)において、第1平面124Aに対して、同等の高さに位置していてもよいし(図示の例)、第1平面124Aが面する側(+Y´側)に位置していてもよいし、その反対側に位置していてもよい。図示の例では、第1凹部128Aの内面のうち最も低い位置にある領域は、第1平面124Aと面一になっている。別の観点では、第1凹部128Aは、水晶片121の厚み方向(Y´方向)において、第1平面124Aから第3平面126Aまでの高さH1(図4)と同等の大きさを有している。
【0074】
また、平面視において、第1凹部128Aは、薄部121aと厚部121cとが(中間部121bを介して)隣り合う方向(X方向)の長さが、当該方向に直交する方向(Z´軸方向)の長さに対して、長くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、短くてもよい。また、平面視において、第1凹部128Aが第3平面126Aの薄部121a側の縁部126Aaに対して窪む深さは、第1凹部128Aの縁部126Aaに沿う方向(Z´方向)の長さに対して、長くてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、短くてもよい。
【0075】
また、平面視において、第1凹部128Aの全体の形状、又は第1凹部128Aのうち第3平面126Aの縁部126Aaに対して窪んでいる部分の形状は、例えば、矩形状であってもよいし、楕円形であってもよいし、長円形(長方形の短辺を外側に膨らむ曲線状とした形状)であってもよい。図示の例では、第1凹部128Aの全体形状は、概略、水晶片121の4辺に平行な4辺を有する矩形状とされている。ただし、第1凹部128Aの厚部121c側の1辺は、外側に膨らむ曲線状とされている。換言すれば、第1凹部128Aの厚部121c側の端部は丸みを帯びている。
【0076】
(第1貫通孔とつながっている凹部の形状及び寸法)
第1貫通孔122とつなっている第1凹部128Aは、上記の第1貫通孔122から離れている第1凹部128Aから第1貫通孔122との重なり分を除去した形状及び寸法を有している。従って、上記の第1貫通孔122から離れている第1凹部128Aの形状及び寸法についての説明は、適宜に第1貫通孔122とつながっている第1凹部128Aの形状及び寸法に適用されてよい。
【0077】
図5及び図6では、第1貫通孔122とつながっている第1凹部128Aは、X方向の中途部分がZ´方向の長さ全体に亘って第1貫通孔122によって除去されている。ただし、第1凹部128Aは、第1貫通孔122によって、薄部121a側の端部が除去されていてもよいし、厚部121c側の端部が除去されていてもよいし、Z´方向の一部が除去されていてもよい。
【0078】
図示の例では、第1貫通孔122は、第1中間面125Aの薄部121a側の縁部125Aaよりも厚部121c側に位置している、又はそのような設計思想で形成されている。しかし、水晶片121の製造方法によっては、第1貫通孔122がエッチングに影響を及ぼすことなどにより、第1中間面125Aは、第1貫通孔122に対して薄部121a側に隣接する部分を有さない場合がある。別の観点では、設計思想としては、第1凹部128AのX方向の中途部分と第1貫通孔122とが重なる場合であっても、第1凹部128A又は第1中間面125Aとみなせる部分が第1貫通孔122よりも薄部121a側に形成されない場合がある。この場合は、第1貫通孔122に対して厚部121c側に位置している部分のみによって、第1凹部128Aが構成される。
【0079】
また、図示のように、第1凹部128AのX方向の中途部分が第1貫通孔122によって除去されている場合においても、第1貫通孔122に対して厚部121c側に位置している部分を第1凹部128Aとして概念してよい(第1貫通孔122よりも薄部121a側の凹部は無視されてよい。)。本実施形態の説明では、そのような捉え方をして、第1凹部128Aの薄部121a側の端部が第1貫通孔122につながっている等と表現することがある。
【0080】
第1貫通孔122から離れている第1凹部128Aにおいては、その内面の最も低い領域(別の観点では薄部121a側の端部)は、既述のように、第1平面124Aにつながり、Y´方向の高さは第1平面124Aと同等とされた。一方、第1貫通孔122につながっている第1凹部128Aにおいては、その内面の最も低い部分(別の観点では薄部121a側の端部)は、第1平面124Aにはつながっておらず、また、第1平面124Aよりも高い位置(+Y´側の位置)に位置している。
【0081】
(第2貫通孔)
図3及び図5に示すように、水晶片121は、厚部121cに位置する第2貫通孔129を有している。第2貫通孔129は、水晶片121の一方の主面側から他方の主面側へ貫通している。この第2貫通孔129は、例えば、水晶素子120の表裏の導通に寄与する。
【0082】
第2貫通孔129の数、位置、形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、第2貫通孔129は、2つ設けられている。2つの第2貫通孔129は、中心線CLの両側に位置している。2つ(又は3以上)の第2貫通孔129の位置は、中心線CLに対して線対称であってもよいし、線対称でなくてもよい。また、複数の第2貫通孔129の形状及び大きさは、互いに同一(及び/又は線対称)であってもよいし、互いに異なっていてもよい。2つの第2貫通孔129同士の距離(及び/又はZ´方向における距離)は、例えば、厚部121cのZ´方向の長さの1/3以上であってもよいし(図示の例)、これよりも短くてもよい。
【0083】
第2貫通孔129は、例えば、厚部121cの縁部126Aa及び126Baに沿う方向(Z´方向)において、第1凹部128A及び第2凹部128Bが配列されている範囲と重なる位置に設けられている。第2貫通孔129は、第1貫通孔122とは異なり、第1凹部128A及び第2凹部128Bから離れている。より詳細には、図示の例では、第2貫通孔129は、第1凹部128A及び第2凹部128Bに対して、薄部121aとは反対側(-X側)に離れている。ただし、第2貫通孔129は、第1凹部128A及び第2凹部128Bとつながっていてもよい。第2貫通孔129は、例えば、第1凹部128A及び第2凹部128B(又は縁部126Aa及び126Ba)との距離よりも、厚部121cの薄部121aとは反対側の縁部との距離が短くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、長くてもよい。
【0084】
図示の例では、第2貫通孔129は、平面視において、第1貫通孔122のアスペクト比(スリットの長さ/スリットの幅)よりもアスペクト比が小さい形状とされている。このような形状としては、正多角形状(正方形状を含む)、正方形に近い長方形状、円形状又円形に近い楕円状を挙げることができる。平面視において、第2貫通孔129の最大径は、例えば、第1貫通孔122の長さよりも小さく、また、第1貫通孔122の幅よりも小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。第2貫通孔129は、XZ´断面(開口)の形状及び寸法がY´軸方向(貫通方向)において一定であってもよいし、変化していてもよい。
【0085】
(金属パターン)
図2及び図3に示す金属パターン123は、単一の材料からなる1層の金属層によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料からなる複数の金属層が積層されて構成されていてもよい。金属層の材料としては、例えば、ニッケル、クロム、ニクロム、チタン、金若しくは銀又はこれらを含む合金を挙げることができる。
【0086】
1対の励振電極123aは、既述のように薄部121aに電圧を印加すべく、薄部121aの両主面(124A及び124B)に位置している。1対の励振電極123aは、例えば、平面透視において概ね互いに過不足なく重なる位置、形状及び大きさで設けられている。ただし、互いに重複しない部位が存在しても構わない。平面視における励振電極123aの位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。
【0087】
例えば、励振電極123aは、薄部121aの中央側の領域に位置している。別の観点では、励振電極123aは、薄部121aの外縁から離れて位置している。励振電極123aの中心は、例えば、薄部121aの中心とZ´軸方向において一致している。また、励振電極123aの中心は、薄部121aの中心に対して、X軸方向において、+X側に位置していてもよいし(図示の例)、一致していてもよいし、-X軸側に位置していてもよい。励振電極123aは、例えば、薄部121aの面積の1/3以上を占めている。
【0088】
また、例えば、励振電極123aの形状は、薄部121aの形状と類似する形状であってもよいし(図示の例)、異なる形状であってもよい。前者としては、例えば、図示の例のように、薄部121aの形状が矩形状であるのに対して、励振電極123aの形状が薄部121aの長辺と平行な長辺を有する矩形状である(少なくとも一方は正方形であってもよい。)態様を挙げることができる。また、後者としては、薄部121aの形状が矩形状であるのに対して、励振電極123aの形状が円形、楕円形又は多角形(四角形を除く)である態様を挙げることができる。
【0089】
1対の引出部123bは、既述のように、パッケージ103の搭載パッド111と接合されるべく、厚部121cの少なくとも下面に設けられている。その具体的な位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。例えば、1対の引出部123bは、水晶片121のX軸に平行な中心線CL(図5)に対して、概略、線対称及び/又は180°回転対称の位置、形状及び大きさで設けられている。別の観点では、1対の引出部123bは、Z´軸方向に並んで設けられている。
【0090】
1対の配線123cは、既述のように、1対の励振電極123aと1対の引出部123bとを個別に接続するように水晶片121の表面の適宜な位置に設けられている。その具体的な位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。例えば、1対の配線123cは、水晶片121のX軸に平行な中心線CLに対して、概略、180°回転対称の位置、形状及び大きさで設けられている。
【0091】
また、引出部123b及び配線123cは、図示の例のように、必ずしも明確に区別できなくても構わない。以下では、引出部123b及び配線123cの位置、形状及び大きさについて、金属パターン123の語を用いて説明することがある。
【0092】
引出部123bは、厚部121cの下面に位置する部分だけでなく、上面に位置する部分も有しており、下面に位置する部分とつながっている。これにより、例えば、引出部123bの剥がれ低減及び/又は1対の金属パターン123の対称性向上等が図られる。
【0093】
水晶片121の一方の主面に位置する励振電極123aと、当該励振電極123aに電気的に接続される引出部123bのうち水晶片121の他方の主面に位置する部分とは、適宜に接続されてよい。図示の例では、このような接続を実現する部分として、金属パターン123(引出部123b及び配線123c)は、水晶片121の表面のうち、側面(Z´軸に交差する面)に位置する部分、端面(-X側に面する面)に位置する部分、第1貫通孔122の内面に位置する部分、及び第2貫通孔129の内面に位置する部分を含んでいる。
【0094】
1対の金属パターン123のいずれも、第1貫通孔122の内面に位置している部分を有している。ただし、両者は、例えば、第1貫通孔122の長手方向(Z´方向)の一方側と他方側とに離れていることによって、電気的に分離されている(短絡されていない。)。
【0095】
また、1対の金属パターン123の一方は、2つの第2貫通孔129の一方にのみ位置している。1対の金属パターン123の他方は、2つの第2貫通孔129の他方にのみ位置している。各金属パターン123の第2貫通孔129に位置する部分は、例えば、第2貫通孔129の内面全体を覆っている。なお、金属パターン123は、第2貫通孔129において、層状ではなく、第2貫通孔129に充填された状態(柱状)となっていてもよい。
【0096】
1対の金属パターン123のそれぞれは、水晶片121の主面において、(中間部121bを経由して)薄部121aと厚部121cとに跨っている。別の観点では、各金属パターン123は、厚部121cの縁部126Aa及び126Baの少なくとも一方(図示の例では双方)に跨っている。金属パターン123は、このような境界に跨っている部分において、幅(Z´軸方向の長さ)が比較的大きくされている。例えば、当該幅は、水晶片121の幅(Z´軸方向)の1/6以上である。また、例えば、当該幅は、第1貫通孔122から水晶片121の一方の側面(Z´軸に交差する面)に亘る大きさである。また、例えば、当該幅は、金属パターン123のうちの厚部121cと中間部121bとの境界よりも-X側に位置している一部(引出部123b)の幅よりも大きい。
【0097】
第1平面124Aに励振電極123aを有している第1金属パターン123Aは、例えば、複数の第1凹部128Aの一部の内面を経由して、第1平面124Aから第3平面126Aに跨っている部分を有している。別の観点では、第1金属パターン123Aにおいて、励振電極123aと引出部123bとは、前記一部の第1凹部128Aの内面に位置する部分によって接続されている。なお、例えば、第1金属パターン123Aが引出部123bを-Y´側にのみ有している態様等において、第1金属パターン123Aの前記一部の第1凹部128Aの内面に位置する部分は省略されてもよい。また、第2金属パターン123Bは、例えば、複数の第1凹部128Aの他の一部の内面を経由して、第1平面124Aから第3平面126Aに跨っている部分を有している。ただし、当該部分は、省略されても構わない。
【0098】
上記と同様に、第2平面124Bに励振電極123aを有している第2金属パターン123Bは、例えば、複数の第2凹部128Bの一部の内面を経由して、第2平面124Bから第4平面126Bに跨っている部分を有している。別の観点では、第2金属パターン123Bにおいて、励振電極123aと引出部123bとは、前記一部の第2凹部128Bの内面に位置する部分によって接続されている。なお、第2金属パターン123Bが引出部123bを+Y´側にのみ有している態様等において、第2金属パターン123Bの前記一部の第2凹部128Bの内面に位置する部分は省略されてもよい。また、第1金属パターン123Aは、例えば、複数の第2凹部128Bの他の一部の内面を経由して、第2平面124Bから第4平面126Bに跨っている部分を有している。ただし、当該部分は、省略されても構わない。
【0099】
金属パターン123のうち、第1凹部128A及び第2凹部128Bに位置している部分は、例えば、これらの凹部の内面に重なる層状に形成されている。ただし、当該部分は、第1凹部128A及び第2凹部128Bに充填された状態となっていても構わない。
【0100】
1対の金属パターン123のそれぞれは、水晶片121の側面(Z´軸に交差する面)においても、厚部121cと中間部121bとの境界に跨っている。例えば、金属パターン123は、厚部121c及び中間部121bの側面の全面に亘っている。一方、水晶片121の側面は、厚部121cから中間部121bに亘って面一である。別の観点では、段差は存在しない。従って、例えば、厚部121cから中間部121bにかけての接続の信頼性が向上している。さらに、金属パターン123(引出部123b及び配線123c)は、中間部121bと薄部121aとの境界に跨る部分においても、水晶片121の側面に位置している。
【0101】
(水晶素子の製造方法)
水晶素子120は、公知の種々の製造方法を応用して作製されてよい。以下では、その一例について説明する。
【0102】
図8(a)~図8(d)は、水晶素子120の製造方法の一例を示す模式的な断面図である。なお、この図では、製造工程の進行に伴って、部材の形状が変化するが、便宜上、変化の前後で同一の符号を付す。
【0103】
まず、複数の水晶片121が多数個取りされる、水晶からなるウェハ150を用意する。ウェハ150は、上述したATカット板のカット角で切り出されたものであり、また、厚部121cの厚さと同等の厚さを有している。
【0104】
次に、図8(a)に示すように、ウェハ150の両主面にエッチングマスク(151及び152)を形成する。エッチングマスクは、例えば、ウェハ150に重なる第1マスク151と、第1マスク151に重なる第2マスク153とを有している。
【0105】
第1マスク151は、水晶片121(薄部121a、中間部121b及び厚部121c)となる領域と、複数の水晶片121の周囲の枠状部150a(捨て代)となる領域とに重なっている。ただし、第1マスク151は、第1貫通孔122及び第2貫通孔129が形成される領域には重なっていない。第1マスク151は、例えば、金属膜によって構成されている。
【0106】
第2マスク152は、厚部121cとなる領域と、枠状部150aに重なっている。ただし、第2マスク152は、第1凹部128A及び第2凹部128Bが形成される領域には重なっていない。第2マスク152は、例えば、レジストによって構成されている。
【0107】
次に、図8(b)に示すように、エッチングマスクを介してウェハ150を両主面側からエッチングする。エッチングは、例えば、ウェハ150を薬液に浸すウェットエッチングである。これにより、水晶片121となる領域の周囲がエッチングされ、さらには、水晶片121を囲む貫通孔(スリット)が形成される。すなわち、水晶片121の外形が形成される。また、第1貫通孔122及び第2貫通孔129も形成される。
【0108】
ただし、水晶片121の周囲の一部(連結部150b)は残されており、水晶片121は、枠状部150aに連結された状態が維持されている。すなわち、ウェハ状態は維持されている。連結部150bは、適宜な位置に設けられてよく、例えば、水晶片121のうち-X側に面する端面のZ´軸方向の両端に設けられている。図示の例では、連結部150bは、連結部150b上の開口が小さくされ、エッチングストップが生じることによって残されている。この他、連結部150bは、エッチングマスクによって覆われていることによって残されてもよい。
【0109】
次に、図8(c)に示すように、第1マスク151のうち、第2マスク152から露出している部分を薬液等によって除去する。換言すれば、ウェハ150のうち、薄部121a、中間部121b、第1凹部128A及び第2凹部128Bとなる領域をエッチングマスクから露出させる。
【0110】
次に、図8(d)に示すように、再度、エッチングマスクを介してウェハ150を両主面側からエッチングする。エッチングは、例えば、ウェハ150を薬液に浸すウェットエッチングである。
【0111】
このエッチングによって、薄部121aとなる領域は、厚部121cとなる領域よりも薄くなる。また、中間部121bとなる領域は、水晶のエッチングに対する異方性に起因して、厚部121c側ほど厚くなる。すなわち、この製造方法の例では、第1中間面125A及び第2中間面125Bは、水晶のウェットエッチングによって現れる結晶面によって構成されている。
【0112】
また、厚部121cのうち、エッチングマスクから露出している領域も薄くなる。これにより、第1凹部128A及び第2凹部128Bのうち、平面視において、第3平面126Aの縁部126Aa及び第4平面126Bの縁部126Baにおいて薄部121a側から厚部121c側へ窪む部分(凹部の平面視における底側の部分)が形成される。
【0113】
エッチングマスクにおいて、上記の窪む部分を露出させている切欠きは、第1中間面125A及び第2中間面125Bと同様に水晶片121に形成される傾斜面を薄部121a側から厚部121c側へシフトさせる作用を奏する。別の観点では、上記の傾斜面は、第1中間面125A及び第2中間面125Bに対して深くなる位置へシフトする。これにより、第3平面126A及び第4平面126Bに対して傾斜する内面を含み、かつ第1中間面125A及び第2中間面125Bに対しても窪む第1凹部128A及び第2凹部128Bが形成される。
【0114】
エッチング時間を比較的長くすることなどにより、中間部121bの結晶面がエッチングされる。ひいては、中間部121bの傾斜面(第1中間面125A及び第2中間面125B)は、厚部121cの主面(第3平面126A及び第4平面126B)よりも低くなる。換言すれば、段差127A及び127Bが形成される。
【0115】
エッチングマスクにおいて、厚部121cとなる領域に重なる部分のうち、中間部121bとなる領域側の縁部のX軸方向における位置は、ウェハ150の一方主面のエッチングマスクと他方主面のエッチングマスクとで、互いに異ならされてよい。これにより、第3平面126Aの中間部121b側の縁部126AaのX軸方向における位置と、第4平面126Bの中間部121b側の縁部126BaのX軸方向における位置とを互いに異ならせることができる。
【0116】
その後、特に図示しないが、エッチングマスクは除去され、金属パターン123が形成される。金属パターン123は、例えば、水晶片121の表面に形成されたマスクを介して金属が成膜されることによって形成されてよい。また、金属パターン123は、水晶片121の全面又は大部分に金属が成膜された後、マスクを介してエッチングが行われることによって形成されてもよい。成膜は、スパッタリング等の適宜な方法によってなされてよい。
【0117】
金属パターン123の形成後、水晶片121は、連結部150bを折ったり、切ったりすることなどにより、枠状部150aと分離される(個片化される。)。なお、個片化の際及び/又は個片化後において、厚部121cは、水晶素子120の保持に利用されてよい。例えば、厚部121cが吸着保持されることによって、水晶素子120が冶具に保持されてよい。
【0118】
以上のとおり、本実施形態では、板形状を有している圧電片(水晶片121)は、薄部121aと、厚部121cとを有している。薄部121aは、平面視において水晶片121の板形状の一部の領域を含んでいる。厚部121cは、平面視において水晶片121の板形状の他の一部の領域を含んでおり、薄部121aよりも厚い。薄部121aは、第1平面124A及び第2平面124Bを有している。第1平面124Aは、水晶片121の厚み方向の一方側(+Y´側)に面している。第2平面124Bは、厚み方向の他方側(-Y´側)に面している。厚部121cは、第3平面126A及び第4平面126Bを有している。第3平面126Aは、前記一方側(+Y´側)に面しており、第1平面124Aよりも前記一方側(+Y´側)に位置している。第4平面126Bは、前記他方側(-Y´側)に面している。第3平面126Aの薄部121a側の第1縁部(縁部126Aa)に、第3平面126Aに対して厚み方向の前記他方側(-Y´側)に窪んでいるとともに、平面視で縁部126Aaにおいて薄部121a側から厚部121c側へ窪んでいる第1凹部128Aが位置している。
【0119】
従って、例えば、第1平面124A及び第3平面126Aに跨って金属パターン123が位置しているときに、金属パターン123の導通の信頼性が向上する。具体的には、以下のとおりである。第3平面126Aの縁部126Aaは、角部となりやすく、及び/又は段差127Aが形成されやすい。この場合、金属パターン123が薄くなりやすく、及び/又は水晶片121から受ける応力が大きくなりやすい。その結果、縁部126Aaにおいて断線が生じる蓋然性が高くなる。また、例えば、スパッタリングで金属パターン123を形成するときに、水晶片121へ向かって飛ばされる金属粒子から見て厚部121cによって影となる領域が生じることも断線の蓋然性を高くする要因となる。縁部126Aaにおいて断線が生じると、例えば、水晶素子120におけるクリスタルインピーダンスが高くなり、特性が低下する。しかし、縁部126Aaに第1凹部128Aが形成されることによって、(第1凹部128Aによって窪んだ部分の長さも含めた)縁部126Aaの長さが長くなり、ひいては、金属パターン123の縁部126Aaに跨る長さが長くなる。その結果、縁部126Aaの一部において生じた断線が生じても、導通が確保される。また、第1凹部128Aによって、金属パターン123は、種々の方向において縁部126Aaに跨ることになる。その結果、スパッタリングに際して特定の方向から見て影になる部分が生じても、他の部分においては影とならない。この観点においても導通が確保される。このように導通が確保されることによって、例えば、水晶素子120の特性が低下する蓋然性が低減される。
【0120】
また、例えば、薄部121a及び厚部121cの一方(本実施形態では薄部121a)が振動に供される振動部であり、他方が固定に供される固定部である場合において、固定部が振動部に及ぼす影響が低減される。具体的には、例えば、縁部126Aaが直線状であると、振動部から縁部126Aaのその長さ方向の種々の位置に到達した波が、同一方向へ同一の位相で反射され、その結果、反射波がノイズとして現れる蓋然性が高くなる。しかし、第1凹部128Aによって縁部126Aaに湾曲部又は屈曲部が形成されていることより、反射波の方向及び/又は位相が分散されやすくなる。
【0121】
また、別の観点では、第3平面126Aから第1中間面125Aへの高さの変化(例えば高さh1)をZ´軸方向に平均化して考えたときに、縁部126Aaが直線状である態様に比較して、第1凹部128Aによって、高さの変化が緩やかになると捉えることができる。これにより、水晶片121内の応力の変化が緩やかになる。その結果、例えば、固定部の応力が振動部の応力に所定の周波数で特異的に影響を及ぼす蓋然性が低減される。また、境界条件が緩やかになるから、上述した反射波の低減も期待される。
【0122】
本実施形態では、水晶片121は、中間部121bを更に有している。中間部121bは、平面視において水晶片121の板形状のうちの薄部121aから厚部121cまでの領域を含んでおり、厚部121c側ほど厚くなっている。中間部121bは、第1中間面125A及び第2中間面125Bを有している。第1中間面125Aは、厚み方向の前記一方側(+Y´側)に面しており、薄部121a側に対して厚部121c側が前記一方側(+Y´側)に位置する向きで第1平面124Aに対して傾斜している。第2中間面125Bは、厚み方向の前記他方側(-Y´側)に面している。第1凹部128Aは、第1中間面125Aに対しても厚み方向の前記他方側(-Y´側)に窪んでいる。
【0123】
この場合、例えば、中間部121bが設けられておらず、厚部121cと薄部121aとが直接に連結されている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、厚部121cから薄部121aへの厚さの変化を緩やかにすることができる。従って、例えば、振動部(本実施形態では薄部121a)から固定部(本実施形態では厚部121c)への伝わる振動が反射する蓋然性を低減することができる。
【0124】
本実施形態では、平面視において複数の第1凹部128Aが第3平面126Aの薄部121a側の縁部126Aaに沿って並んでいる。
【0125】
この場合、例えば、上記の振動部から固定部へ伝わる振動を分散させる効果等が向上する。また、例えば、縁部126Aaに沿う長さが比較的大きい1つの第1凹部128Aが設けられている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、水晶片121の強度確保の観点において有利である。これは、一つに、水晶片121自体の体積が確保されることに起因する。また、第1凹部128A内に位置する金属パターン123(及び/又は導電性接着剤140)による補強の効果が向上することにも起因する。
【0126】
本実施形態では、平面視において第1凹部128Aの厚部121c側の端部が丸みを帯びている。
【0127】
この場合、例えば、平面視において、第1凹部128Aの内面のうち薄部121a側に面する領域は、当該領域内の位置によって向きが異なるから、既述の断線が生じる蓋然性を低減させたり、反射波を分散させたりする効果が向上する。また、Z´軸方向に平均化して考えたときに厚みの変化が緩やかになるという効果も向上する。
【0128】
本実施形態では、平面視において、薄部121aは矩形状である。平面視において、第3平面126Aの縁部126Aaは、薄部121aの4辺のうちいずれか1辺(本実施形態では-X側の長辺)に沿う縁部である。平面視において、薄部121aの中心CPを通り、前記1辺に直交する仮想線(中心線CL)を仮定したときに、縁部126Aaに位置している全ての第1凹部128Aの位置関係が中心線CLに対して線対称である。
【0129】
この場合、例えば、振動部の振動バランスを向上させることができる。その結果、例えば、水晶素子120の特性を向上させることができる。
【0130】
本実施形態では、薄部121aは、平面視において水晶片121の板形状の内側の領域を含んでいる。厚部121cは、平面視において水晶片121の板形状の外周側の少なくとも一部の領域を含んでいる。
【0131】
すなわち、薄部121aは、振動部であり、厚部121cは固定部であるということができる。この場合、通常、励振電極123aは、振動部の外縁から離れて形成され、振動部の内部でエネルギー閉じ込め効果を得ることが意図される。換言すれば、固定部としての厚部121cが振動に及ぼす影響は低減される。そして、第1凹部128Aによって、上記のように反射波等がノイズとして現れる蓋然性が低減されることによって、厚部121cが振動に及ぼす影響は更に低減されることになる。その結果、発振信号の周波数についての精度が高い振動子を実現することができる。
【0132】
本実施形態では、平面視における薄部121aと厚部121cとの間の位置にて、第1貫通孔122が水晶片121の板形状を厚み方向(Y´方向)に貫通している。少なくとも2つの第1凹部128Aの薄部121a側の端部が第1貫通孔122につながっている。
【0133】
この場合、まず、第1貫通孔122は、例えば、水晶片121の表裏の導通に寄与でき、また、薄部121aと厚部121cとの間の振動の伝搬を低減することにも寄与できる。少なくとも2つの第1凹部128Aが第1貫通孔122につながっていると、第1貫通孔122に共に位置している互いに電位が異なる1対の金属パターン123を2つの第1凹部128A内に位置させることができる。これにより、例えば、第1凹部128Aに金属パターン123の体積を確保して表裏の導通の信頼性を向上させつつ、両者の短絡の蓋然性を低減することができる。また、第1凹部128Aの位置においては、第1貫通孔122の内面(+X側に面する領域)のY´方向の長さが減じられるから、この観点においても表裏の導通の信頼性が向上する。
【0134】
本実施形態では、第4平面126Bは、第2平面124Bよりも厚み方向の前記他方側(-Y´側)に位置している。第2中間面125Bは、薄部121a側に対して厚部121c側が前記他方側(-Y´側)に位置する向きで第2平面124Bに対して傾斜している。第4平面126Bの薄部121a側の第2縁部(縁部126Ba)に、第4平面126B及び第2中間面125Bに対して厚み方向の前記一方側(+Y´側)に窪んでいるとともに、平面視で縁部126Baにおいて薄部121a側から厚部121c側へ窪んでいる第2凹部128Bが位置している。
【0135】
すなわち、厚部121cは、薄部121aに対して、厚み方向の一方側だけでなく、厚み方向の両側に高くなっており、双方に凹部(第1凹部128A及び第2凹部128B)が形成されている。この場合、例えば、上述した凹部が設けられていることによる反射波の分散等の効果が水晶片121の両面で得られる。その結果、振動のバランスが向上し、特性が向上する。
【0136】
本実施形態では、平面視において第1凹部128Aから離れた位置にて、第2貫通孔129が厚部121cを厚み方向(Y´方向)に貫通している。
【0137】
この場合、例えば、金属パターン123の一部を第2貫通孔129に位置させることによって水晶片121の両面の導通を図ることができる。また、例えば、薄部121aから厚部121cへ伝わる振動は、第1凹部128Aによって散乱されて、さらに第2貫通孔129によって散乱される。従って、厚部121cが薄部121aに及ぼす影響を多段で低減することができる。第1凹部128Aは、貫通孔ではないことから、このように多段での散乱を狙っても、水晶片121の強度低下は低減される。
【0138】
(変形例)
以下、図9(a)~図11(b)を参照して、いくつかの変形例について説明する。なお、以下の説明では、基本的に、実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及がない事項については、実施形態と同様とされたり、実施形態から類推されたりしてよい。また、実施形態の構成と対応する構成については、実施形態と相違点があっても、便宜上、同一の符号を付すことがある。
【0139】
図9(a)~図9(c)はそれぞれ、変形例に係る水晶片の平面図である。実施形態では、厚部21cは、矩形状の薄部21aの1辺に沿う形状とされた。ただし、厚部は、薄部の2辺以上に沿っていてもよい。図9(a)~図9(c)の水晶片は、そのような2辺以上に亘る厚部を有している。具体的には、以下のとおりである。
【0140】
図9(a)に示す水晶片221は、薄部221aの2辺に沿って厚部221c(及び中間部221b)を有している。換言すれば、厚部221cは、L字に形成されている。なお、厚部221cがL字に構成されていると捉えるのではなく、直線状の厚部221cが合計で2つ設けられていると捉えられてもよい。以下の説明では、便宜上、厚部221cのうち薄部221aの1辺に沿う部分を厚部221cの1辺等ということがある。
【0141】
実施形態の第1凹部128A又は第2凹部128Bに対応する凹部228は、例えば、厚部221cの2辺それぞれに設けられている。ただし、凹部228は、1辺のみに設けられていてもよい。図示の例では、各辺において、複数の凹部228は、中心点CPを通り、各辺に直交する中心線(CL1又はCL2)に対して線対称に配置されている。さらに、図示の例では、2辺全体の複数の凹部228が、中心点CPを通り、対角線の方向に延びる仮想線CL3に対して線対称に配置されている。もちろん、複数の凹部228の配置は、非対称であっても構わない。
【0142】
図9(b)に示す水晶片321は、薄部321aの3辺に沿って厚部321c(及び中間部321b)を有している。換言すれば、厚部321cは、U字に形成されている。なお、厚部321cがU字に構成されていると捉えるのではなく、直線状の厚部321cが合計で3つ設けられていると捉えられてもよい。以下の説明では、便宜上、厚部321cのうち薄部321aの1辺に沿う部分を厚部321cの1辺等ということがある。
【0143】
実施形態の第1凹部128A又は第2凹部128Bに対応する凹部328は、例えば、厚部321cの3辺それぞれに設けられている。ただし、凹部328は、1辺のみ又は2辺のみに設けられていてもよい。図示の例では、各辺において、複数の凹部328は、中心点CPを通り、各辺に直交する中心線(CL1又はCL2)に対して線対称に配置されている。さらに、図示の例では、3辺全体の複数の凹部328が、中心点CPを通り、1辺(図示の例では長辺)に直交する仮想線CL2に対して線対称に配置されている。もちろん、複数の凹部328の配置は、非対称であっても構わない。
【0144】
図9(c)に示す水晶片421は、薄部421aの4辺に沿って厚部421c(及び中間部421b)を有している。換言すれば、厚部421cは、矩形の環状に形成されている。なお、厚部421cが矩形の環状に構成されていると捉えるのではなく、直線状の厚部421cが合計で4つ設けられていると捉えられてもよい。以下の説明では、便宜上、厚部421cのうち薄部421aの1辺に沿う部分を厚部421cの1辺等ということがある。
【0145】
実施形態の第1凹部128A又は第2凹部128Bに対応する凹部428は、例えば、厚部421cの4辺それぞれに設けられている。ただし、凹部428は、1辺のみ、2辺のみ又は3辺のみに設けられていてもよい。図示の例では、各辺において、複数の凹部428は、中心点CPを通り、各辺に直交する中心線(CL1又はCL2)に対して線対称に配置されている。さらに、図示の例では、4辺全体の複数の凹部428が、中心点CPを通り、いずれかの辺に直交する仮想線(CL1又はCL2)に対して線対称に配置されている。もちろん、複数の凹部428の配置は、非対称であっても構わない。
【0146】
図9(a)~図9(c)に示すように、薄部の2辺以上に対して厚部(及び中間部)が設けられる場合において、辺同士において厚部(及び/又は中間部)の形状及び/又は寸法は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、ここでは不図示の引出部123bが設けられる辺における厚部の幅(平面視における短手方向の長さ)は、他の辺における厚部の幅よりも大きくされてよい。
【0147】
図10(a)は、変形例に係る水晶素子520の構成を示す断面図であり、図2の一部に対応している。
【0148】
水晶素子520の水晶片521においては、厚部521c(及び中間部521b)は、薄部521aに対して、水晶片521の厚み方向の一方側にのみ高くなっている。そして、ここでは不図示であるが、第1凹部128A又は第2凹部128Bに対応する凹部が厚部521cの薄部521a側の縁部に形成されている。
【0149】
図10(b)は、変形例に係る水晶素子620の構成を示す断面図であり、図2の一部に対応している。
【0150】
この水晶素子620は、いわゆるメサ型のものとなっている。具体的には、例えば、水晶素子620の水晶片621においては、薄部621aは、水晶片621の外周側の領域を含み、より詳細には、水晶片621の全周に亘って水晶片621の外周側の領域を含んでいる。また、厚部621cは、平面視において水晶片621の内側の領域を含み、より詳細には、水晶片621の外縁全体から離れており、水晶片621の内側の領域のみからなる。1対の励振電極123aは、少なくとも厚部621cの両面に重なっている。1対の引出部123b(ここでは1つのみ図示)は、少なくとも薄部621aの一方の面に位置している。
【0151】
そして、ここでは不図示であるが、第1凹部128A又は第2凹部128Bに対応する凹部が厚部621cの薄部621a側の縁部に形成されている。なお、図10(b)の変形例は、中間部が構成されていない態様、又は中間部が比較的小さい態様の例ともなっている。
【0152】
図11(a)は、水晶素子720の実装構造の変形例を示す模式的な断面図であり、図2の一部に対応している。
【0153】
この変形例では、1対の励振電極123aのうち一方に電気的に接続されている引出部123bは、実施形態と同様に、導電性接着剤140によって搭載パッド111に接合されている。一方、1対の励振電極123aのうち他方に電気的に接続されている引出部123bは、ボンディングワイヤ160によって、ここでは不図示の搭載パッド111に接続されている。
【0154】
別の観点では、水晶素子420は、1つの導電性接着剤140によって支持されている。ただし、水晶素子420を支持するために、電気的接続に寄与しない接合材等が設けられていてもよい。2つの引出部123bは、互いに異なる主面に位置しており、紙面貫通方向の位置は、互いに重複していてもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0155】
図11(b)は、水晶素子820の実装構造の他の変形例を示す模式的な断面図であり、図2の一部に対応している。
【0156】
この変形例では、1対の励振電極123aに電気的に接続されている1対の引出部123bは、1対のボンディングワイヤ160によって、ここでは不図示の1対の搭載パッド111に接続されている。ただし、ここでは、1対のボンディングワイヤ160(及び引出部123b)の一方は、他方に隠れて不図示である。
【0157】
また、この変形例では、水晶素子820の支持は、導電性を有さない接着剤170によってなされている。すなわち、接着剤170は、導電性接着剤140とは異なり、導電性フィラーを含んでいない。従って、例えば、接着剤170は、相対的にヤング率が低い。その結果、例えば、水晶素子820の支持(固定)に起因する応力が水晶片121の振動に及ぼす影響は低減されている。
【0158】
なお、図示の例では、接着剤170は、水晶片121と基板部110aとに直接に接合されているが、金属パターン123及び/又は基板部110aに設けられたダミーのパッド等に接合されていてもよい。接着剤170は、1つのみであってもよいし、2以上設けられてもよく、その位置も任意である。
【0159】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0160】
上述した実施形態及び種々の変形例は適宜に組み合わされてよい。例えば、図10(a)に示した厚部が薄部に対して厚み方向の一方側にのみ高くなる構成は、図9(a)~図9(c)に示した2辺以上に亘って厚部が設けられる構成に適用されてもよい。また、例えば、図11(a)及び図11(b)の実装構造は、図10(a)に示した厚部が薄部に対して厚み方向の一方側にのみ高くなる構成に適用されてもよいし、図9(a)~図9(c)に示した2辺以上に亘って厚部が設けられる構成に適用されてもよい。図10(b)のメサ型の形状において中間部が設けられてもよいし、逆に、他の形状(薄部が振動部である形状)において中間部が省略されてもよい。
【0161】
圧電体は、水晶に限定されない。例えば、圧電体は、他の単結晶であってもよいし、多結晶からなるもの(例えばセラミック)であってもよい。また、圧電体は、厚み滑り振動の基本波振動を利用するものに限定されず、他の振動モードを利用するものであってもよいし、オーバートーン振動を利用するものであってもよい。また、厚み滑り振動を利用する水晶片のカットは、ATカットに限定されない。例えば、BTカットであってもよい。また、水晶片は、水晶のみからなるものに限定されず、水晶に金属等からなるドーパントを注入した材料からなるものも含むものとする。
【0162】
圧電デバイスは、圧電振動子に限定されない。例えば、圧電デバイスは、圧電振動素子に加えて、圧電振動素子に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC:Integrated Circuit)を有する発振器であってもよい。また、例えば、圧電デバイス(圧電振動子)は、水晶振動素子の他に、サーミスタ等の他の電子素子を有するものであってもよい。また、圧電デバイスは、恒温槽付のものであってもよい。
【0163】
圧電デバイスにおいて、圧電振動素子をパッケージングするパッケージの構造は、適宜な構成とされてよい。例えば、パッケージは、上面及び下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。また、パッケージは、基板状の基体(凹部を有していない基体)と、基体に被せられるキャップ状の蓋体とで構成されるものであってもよい。
【0164】
圧電振動素子は、片持ち梁状に支持されるものに限定されない。例えば、圧電振動素子は、両端が支持されるものであってもよい。
【0165】
本願からは、原出願でも開示されている以下の概念を抽出可能である。
(概念1)
板形状を有している圧電片であって、
平面視において前記板形状の一部の領域を含んでいる薄部と、
平面視において前記板形状の他の一部の領域を含んでいる、前記薄部よりも厚い厚部と、
を有しており、
前記薄部は、
前記板形状の厚み方向の一方側に面している第1平面と、
前記厚み方向の他方側に面している第2平面と、を有しており、
前記厚部は、
前記厚み方向の前記一方側に面しており、前記第1平面よりも前記一方側に位置している第3平面と、
前記厚み方向の前記他方側に面している第4平面と、を有しており、
前記第3平面の前記薄部側の第1縁部に、前記第3平面に対して前記厚み方向の前記他方側へ窪んでいるとともに、平面視で前記第1縁部において前記薄部側から前記厚部側へ窪んでいる第1凹部が位置している
振動素子用圧電片。
(概念2)
平面視において前記板形状のうちの前記薄部から前記厚部までの領域を含んでいる、前記厚部側ほど厚くなっている中間部を更に有しており、
前記中間部は、
前記厚み方向の前記一方側に面しており、前記薄部側に対して前記厚部側が前記一方側に位置する向きで前記第1平面に対して傾斜している第1中間面と、
前記厚み方向の前記他方側に面している第2中間面と、を有しており、
前記第1凹部は、前記第1中間面に対しても前記厚み方向の前記他方側へ窪んでいる
概念1に記載の振動素子用圧電片。
(概念3)
平面視において複数の前記第1凹部が前記第1縁部に沿って並んでいる
概念1又は2に記載の振動素子用圧電片。
(概念4)
平面視において前記第1凹部の前記厚部側の端部が丸みを帯びている
概念1~3のいずれか1つに記載の振動素子用圧電片。
(概念5)
平面視において、
前記薄部は矩形状であり、
前記第1縁部は、前記薄部の4辺のうちいずれか1辺に沿う縁部であり、
前記薄部の中心を通り、前記1辺に直交する仮想線を仮定したときに、前記第1縁部に位置している全ての前記第1凹部の位置関係が前記仮想線に対して線対称である
概念3に記載の振動素子用圧電片。
(概念6)
前記薄部は、平面視において前記板形状の内側の領域を含んでおり、
前記厚部は、平面視において前記板形状の外周側の少なくとも一部の領域を含んでいる
概念1~5のいずれか1つに記載に振動素子用圧電片。
(概念7)
平面視における前記薄部と前記厚部との間の位置にて、第1貫通孔が前記板形状を前記厚み方向に貫通しており、
少なくとも2つの前記第1凹部の前記薄部側の端部が前記第1貫通孔につながっている
概念3に記載の振動素子用圧電片。
(概念8)
前記第4平面は、前記第2平面よりも前記厚み方向の前記他方側に位置しており、
前記第2中間面は、前記薄部側に対して前記厚部側が前記他方側に位置する向きで前記第2平面に対して傾斜しており、
前記第4平面の前記薄部側の第2縁部に、前記第4平面及び前記第2中間面に対して前記厚み方向の前記一方側へ窪んでいるとともに、平面視で前記第2縁部において前記薄部側から前記厚部側へ窪んでいる第2凹部が位置している
概念2に記載の振動素子用圧電片。
(概念9)
平面視において前記第1凹部から離れた位置にて、第2貫通孔が前記厚部を前記厚み方向に貫通している
概念1~8のいずれか1つに記載の振動素子用圧電片。
(概念10)
概念1~8のいずれか1つに記載の振動素子用圧電片と、
前記板形状の前記厚み方向の前記一方側に面している第1面に少なくとも位置している第1金属パターンと、
前記板形状の前記厚み方向の前記他方側に面している第2面に少なくとも位置している第2金属パターンと、
を有しており、
前記第1金属パターンは、前記第1凹部の内面を経由して前記第1平面から前記第3平面に跨っている部分を有している
圧電振動素子。
(概念11)
概念10に記載の圧電振動素子と、
前記第1面又は前記第2面である第1対向面と対向している第2対向面を有している基体と、
前記第1対向面と前記第2対向面との間に介在して両者を接合している接合材と、
前記基体に接合されて前記圧電振動素子を密閉している蓋体と、
を有している圧電デバイス。
【符号の説明】
【0166】
100…水晶デバイス(圧電デバイス)、120…水晶素子(圧電振動素子)、121…水晶片(振動素子用圧電片)、121a…薄部、121c…厚部、124A…第1平面、124B…第2平面、126A…第3平面、126B…第4平面、126Aa…縁部(第1縁部)、128A…第1凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11