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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072171
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】防振装置及び防振システム
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20230517BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230517BHJP
   F16M 11/12 20060101ALI20230517BHJP
   F16M 11/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
F16F15/08 X
F16F15/02 A
F16M11/12 E
F16M11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184544
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 準一
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AB14
3J048BA09
3J048CB09
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】ゲルダンパーの第1の方向と直交する方向への揺れを従来よりも抑制可能とする。
【解決手段】 防振装置1は、ゲルダンパー10と、ゲルダンパー10の外周面のうちの第1の方向における一部に取り付けられたカバー部材20と、外力が加わっていない場合でのゲルダンパー10の第1の方向における全長に対して長さが短く、ゲルダンパー10が非接触且つカバー部材20が第1の方向に摺動可能に嵌め込まれたガイド部32と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルダンパーと、
前記ゲルダンパーの外周面のうちの第1の方向における一部に取り付けられたカバー部材と、
外力が加わっていない場合での前記ゲルダンパーの前記第1の方向における全長に対して長さが短く、当該ゲルダンパーが非接触且つ前記カバー部材が当該第1の方向に摺動可能に嵌め込まれたガイド部と、
を備えた防振装置。
【請求項2】
前記ゲルダンパーは、前記外周面のうちの前記第1の方向における一部分に突出部を有し、
前記カバー部材は、前記突出部のうちの少なくとも一部に取り付けられた
ことを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記突出部に対し、前記第1の方向に沿うスリットが形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の防振装置。
【請求項4】
前記第1の方向は、前記ゲルダンパーの前記ガイド部への嵌め込み方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の防振装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の防振装置と、前記ゲルダンパーに置かれた電子機器の傾きを修正する傾き修正装置とを備え、
前記傾き修正装置は、
前記ゲルダンパーが置かれる載置台と、
前記載置台を前記第1の方向に移動可能とする移動機構と、
前記ゲルダンパーに置かれた電子機器の傾きに関するパラメータを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記電子機器の傾きを修正するよう前記移動機構を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする防振システム。
【請求項6】
前記検出部は、前記電子機器の傾きを計測する傾斜センサである
ことを特徴とする請求項5記載の防振システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記第1の方向に沿って複数設けられ、前記電子機器が対向したか否かを検出する位置センサである
ことを特徴とする請求項5記載の防振システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記移動機構のうち、前記ゲルダンパーの沈み込みが生じていない側の移動機構を、前記第1の方向における下向きに移動させる
ことを特徴とする請求項5から請求項7のうちの何れか1項記載の防振システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振装置及び防振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動に弱い部品を有する電子機器に対する防振対策として、ゲル状のダンパー(ゲルダンパー)が使用される場合がある(例えば特許文献1参照)。ゲルダンパーは、ゴムのような弾力性のある樹脂エラストマー材料から成り、材料の配分により柔らかいものから固いものまで作られる。ゲルダンパーは、荷重及び共振周波数が調整されることで振動を効果的に軽減し、減衰させる効果がある。このゲルダンパーは、粘着性があり、土台と電子機器との間に挟まれることで安定した防振効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-021443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲルダンパーとしては、第1の方向(例えば重力方向)の振動を十分に吸収及び減衰させるために所定の厚さ(例えば20~25mm程度)を有するものが用いられる。しかしながら、この厚さがある分、ゲルダンパーは第1の方向と直交する方向(例えば水平方向)の振動に対しては自由度が大きい状態になる。振動の周波数が高い高周波振動の場合は、加振の振幅が小さいのでさほど問題とならないが、例えば10Hz以下などの低周波振動では一般に加振の振幅が大きく、ゲルダンパーの水平方向の揺れが大きくなる。このようなゲルダンパーの水平方向の揺れは、電子機器に搭載されている精密部品に悪影響を及ぼしかねず、改善が求められていた。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ゲルダンパーの第1の方向と直交する方向への揺れを従来よりも抑制可能な防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る防振装置は、ゲルダンパーと、ゲルダンパーの外周面のうちの第1の方向における一部に取り付けられたカバー部材と、外力が加わっていない場合でのゲルダンパーの第1の方向における全長に対して長さが短く、ゲルダンパーが非接触且つカバー部材が第1の方向に摺動可能に嵌め込まれたガイド部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、ゲルダンパーの第1の方向と直交する方向への揺れを従来よりも抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る防振装置の構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る防振装置の構成例を示す図である。
図3図3A図3Dは、実施の形態1におけるゲルダンパーの他の構成例を示す図である。
図4図4A及び図4Bは、実施の形態1におけるカバー部材の他の構成例を示す図である。
図5】実施の形態1におけるゲルダンパーの沈み込みの様子を示す図である。
図6図6A及び図6Bは、実施の形態1におけるガイド部の他の構成例を示す図である。
図7図7A図7Cは、従来の防振装置の構成例を示す図である。
図8】実施の形態1における水平方向の振動の周波数と、計測される加速度との関係を示すグラフである。
図9】実施の形態1における規制範囲及び非規制範囲を示す図である。
図10図10A図10Cは、実施の形態2におけるゲルダンパーの構成例を示す図である。
図11図11A及び図11Bは、実施の形態1及び実施の形態2の課題を説明する図である。
図12】実施の形態3に係る傾き修正装置の構成例を示す図である。
図13】実施の形態3に係る傾き修正装置の構成例を示す斜視図である。
図14図14A図14Cは、実施の形態3に係る傾き修正装置の動作の概要を説明する図である。
図15】実施の形態3に係る傾き修正装置の動作例を示す図(傾き状態)である。
図16】実施の形態3に係る傾き修正装置の動作例を示す図(修正後の状態)である。
図17】実施の形態3に係る傾き修正装置の動作例を示す図(再修正後の状態)である。
図18】実施の形態4に係る傾き修正装置の構成例を示す図である。
図19】実施の形態4に係る傾き修正装置の構成例を示す斜視図である。
図20】実施の形態4に係る傾き修正装置の動作例を示す図(傾き状態)である。
図21】実施の形態4に係る傾き修正装置の動作例を示す図(修正後の状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1,2は実施の形態1に係る防振装置1の構成例を示す図である。防振装置1は、ゲルダンパー10と、カバー部材20と、ガイド部32とを備える。防振装置1では、ゲルダンパー10の上に電子機器50が載置される。
【0010】
ゲルダンパー10は、本体部11と、本体部11の外周面から外方に突出した突出部12とを有している。突出部12は、本体部11の外周面のうちの第1の方向における一部分に形成されている。なお、実施の形態1では、第1の方向は、ゲルダンパー10がガイド部32に嵌め込まれる際の嵌め込み方向である。図1、2の例では、第1の方向は、ゲルダンパー10のガイド部32への嵌め込み方向であり、かつ重力方向である。
【0011】
なお、図1,2では、ゲルダンパー10の本体部11が樽状に形成され、突出部12が円筒状に形成されているが、ゲルダンパー10の形状はこれに限られない。例えば、ゲルダンパー10は、図3Aに示すように、本体部11が角柱状に形成され、突出部12が角筒状に形成されていてもよい。また、ゲルダンパー10は、例えば図3Bに示すように、本体部11が角柱状に形成され、突出部12が円筒状に形成されていてもよいし、図3Cに示すように、本体部11が樽状に形成され、突出部12が角筒状に形成されていてもよい。また、ゲルダンパー10は、例えば図3Dに示すように、全体がそろばんの玉状に形成されていてもよい。この場合、ゲルダンパー10は、例えば突出部12が円盤状に形成され、この突出部12を本体部11が第1の方向に沿って挟み込むような形状に構成される。
【0012】
カバー部材20は、例えば金属又は樹脂で形成され、図1,2に示すように、ゲルダンパー10の突出部12のうちの少なくとも一部に取り付けられる。より具体的には、カバー部材20は、ゲルダンパー10の突出部12の外周面のうち、第1の方向に沿う面の少なくとも一部に取り付けられる。例えば、図1,2では、カバー部材20はリング状に形成され、突出部12の外周面のうちの第1の方向に沿う面に対し、周方向の全周にわたって取り付けられる。
【0013】
カバー部材20は、図1,2に示すように、突出部12の外周面のうちの第1の方向に沿う面に取り付けられることで、この面をカバーし、この面と、後述するガイド部32の内周面とが貼り付いてしまうことを防止する。
【0014】
なお、カバー部材20の形状は、図1,2で示すようなリング状に限らず、例えば図4Aに示すような、リング状の一部が切り欠かれた形状であってもよいし、図4Bに示すような、複数の円弧状の部材に分割された形状であってもよい。いずれにしても、カバー部材20は、突出部12の外周面のうちの第1の方向に沿う面の少なくとも一部に取り付けられることで、この面と、後述するガイド部32の内周面とが貼り付いてしまうことを防止できる形状であればよい。
【0015】
ガイド部32は、底面31と一体に形成され、底面31とともに、ゲルダンパー10が置かれる載置台30に取り付けられている。底面31及びガイド部32は、例えば金属又は樹脂で形成される。
【0016】
ガイド部32は、図2に示すように、外力が加わっていない場合でのゲルダンパー10の第1の方向における全長に対して長さが短く形成されている。また、ガイド部32には、図1,2に示すように、ゲルダンパー10が非接触、且つカバー部材20が第1の方向に摺動可能に嵌め込まれている。図1,2では、ガイド部32は、例えばゲルダンパー10の突出部12の形状及びカバー部材20の形状に対応したリング状に形成されている。これにより、ゲルダンパー10は、図5に示すように、電子機器50の重量、あるいは第1の方向の振動によって、第1の方向に沈み込むことができる。
【0017】
なお、ガイド部32の形状は、図1,2に示したものに限られない。例えば、ガイド部32は、少なくとも、外力が加わっていない場合でのゲルダンパー10の第1の方向における全長に対して長さが短く、ゲルダンパー10が非接触且つカバー部材20が第1の方向に摺動可能に嵌め込まれる形状であればよい。
【0018】
例えば、カバー部材20が図4Aに示すような、リング状の一部が切り欠かれた形状である場合、ガイド部32は、図2に示すようなリング状であってもよいし、図6Aに示すような、リング状の周方向の一部が切り欠かれた形状であってもよい。また、カバー部材20が図4Bに示すような、複数の円弧状の部材に分割された形状である場合、ガイド部32は、図6Aに示すような形状であってもよいし、図6Bに示すような、複数の円弧状の部材に分割された形状であってもよい。
【0019】
なお、ここでは、ゲルダンパー10は、外周面のうちの第1の方向における一部分に突出部12を有し、突出部12のうちの少なくとも一部にカバー部材20が取り付けられた例を説明したが、突出部12は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。その場合、カバー部材20は、ゲルダンパー10の外周面のうちの第1の方向における一部に取り付けられていればよい。ただし、ゲルダンパー10は、本体部11をガイド部32から離間させて本体部11とガイド部32とを確実に非接触とするため、突出部12を有していた方が好ましい。
【0020】
次に、実施の形態1に係る防振装置1の効果について、図7に示す従来の防振装置と比較しながら説明する。
【0021】
従来の防振装置は、例えば図7Aに示すように、ゲルダンパー100と、載置台300とを含んで構成され、載置台300の上にゲルダンパー100が置かれ、ゲルダンパー100の載置面に電子機器50が載置されている。
【0022】
ゲルダンパー100は、第1の方向(例えば重力方向)の振動を十分に吸収及び減衰させるために、例えば20~25mm程度の厚さを有している。したがって、ゲルダンパー100は、第1の方向の振動に対しては、図7Bに示すように、第1の方向に沿って圧縮及び伸長を繰り返すことで振動を効果的に減衰させる。この場合、ゲルダンパー100の安定性は、第1の方向における圧縮方向及び伸長方向の双方で良好である。
【0023】
その一方、ゲルダンパー100は厚さがある分、第1の方向に直交する第2の方向(例えば水平方向)の振動に対しては自由度が大きい状態となり、図7Cに示す符号Pの範囲、すなわちゲルダンパー100の厚さの範囲で第2の方向に大きく揺れやすい。
【0024】
ここで、図8は、第2の方向の振動の周波数(Hz)と、計測される加速度(m/s)との関係を示すグラフである。図8において、符号801はゲルダンパー100の載置面に載置された電子機器50の加速度を示し、符号802は載置台300の加速度を示している。符号801に示すように、周波数が10Hz以下などの低周波振動の領域(符号Q)では、その他の周波数領域よりも電子機器50の加速度が大きい。そのため、符号Qの領域では、加振の振幅も大きくなり、ゲルダンパー100の第2の方向の揺れが大きくなる傾向がある。なお、周波数が10Hzを超える領域(符号R)では、ゲルダンパー100の共振点を除いて加速度は小さく、ゲルダンパー100の揺れは安定する。
【0025】
これに対し、実施の形態1に係る防振装置1では、図9に示すように、ゲルダンパー10の第2の方向への振動が規制される範囲S(以下、「規制範囲」ともいう。)と、ゲルダンパー10の第2の方向への振動が規制されない範囲T(以下、「非規制範囲」ともいう。)とが形成される。
【0026】
規制範囲Sは、ゲルダンパー10がガイド部32内に嵌入している範囲であり、非規制範囲Tは、ガイド部32の上端縁からゲルダンパー10の載置面までの間の範囲で、ゲルダンパー10がガイド部32から露出している範囲である。
【0027】
ゲルダンパー10は、第2の方向の振動に対しては、規制範囲Sにおいて、ガイド部32によりゲルダンパー10全体の第2の方向への大幅な揺れが規制される。また、非規制範囲Tでは、ゲルダンパー10のガイド部32からの露出部分が第2の方向の振動に追従して振動することにより、第2の方向の振動を減衰させる。一方、第1の方向の振動に対しては、ゲルダンパー10は、規制範囲Sと非規制範囲Tとを含む符号Uの範囲で振動を吸収し、良好な減衰効果を発揮することができる。
【0028】
なお、上記の説明では、第1の方向は、ゲルダンパー10のガイド部32への嵌め込み方向であり、かつ重力方向である場合を例に説明したが、第1の方向はこれに限らず、少なくともゲルダンパー10のガイド部32への嵌め込み方向であればよい。また、上記の説明では、第1の方向に直交する方向を第2の方向としたが、この場合の直交は厳密な意味での直交に限らず、直交からわずかにずれた方向をも含む。
【0029】
以上のように、実施の形態1によれば、防振装置1は、ゲルダンパー10と、ゲルダンパー10の外周面のうちの第1の方向における一部に取り付けられたカバー部材20と、外力が加わっていない場合でのゲルダンパー10の第1の方向における全長に対して長さが短く、ゲルダンパー10が非接触且つカバー部材20が第1の方向に摺動可能に嵌め込まれたガイド部32とを備えた。これにより、防振装置1は、ゲルダンパー10の第1の方向と直交する方向への揺れを従来よりも抑制可能となる。
【0030】
また、ゲルダンパー10は、外周面のうちの第1の方向における一部分に突出部12を有し、カバー部材20は、突出部12のうちの少なくとも一部に取り付けられている。これにより、防振装置1は、ゲルダンパー10をガイド部32に対して確実に非接触とすることができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、ゲルダンパー10の第1の方向と直交する方向への揺れを従来よりも抑制可能な防振装置1の例を説明した。実施の形態2では、突出部12に対し、第1の方向に沿うスリットが形成されている防振装置の例を説明する。なお、実施の形態2においても、第1の方向は、ゲルダンパー10がガイド部32に嵌め込まれる際の嵌め込み方向である。
【0032】
図10は、実施の形態2に係る防振装置1におけるゲルダンパー10の構成例を示す図である。実施の形態2に係る防振装置1では、例えば図10A図10Cに示すように、ゲルダンパー10の突出部12に対し、第1の方向に沿うスリット41が形成されている。なお、図10A図10Cでは、右側の図がゲルダンパー10の斜視図であり、左側の図がゲルダンパー10の上面図である。
【0033】
例えば、図10Aでは、第1の方向に沿うスリット41であって、突出部12の外周面から本体部11の手前までの深さのスリット41が、突出部12の周方向に等間隔に8つ形成されている。また、図10Bでは、第1の方向に沿うスリット41であって、突出部12の外周面から本体部11まで達する深さのスリット41が、突出部12の周方向に等間隔に4つ形成されている。また、図10Cでは、図10A図10Bとを組み合わせた形状のスリット41が形成されている。
【0034】
このように、突出部12に対して、第1の方向に沿うスリット41が形成されることで、突出部12の容積が低減し、第1の方向と直交する方向におけるゲルダンパー10の柔軟性を実施の形態1よりも向上させることができる。なお、この場合の直交も、厳密な意味での直交に限らず、直交からわずかにずれた方向をも含む。
【0035】
なお、突出部12に形成されるスリット41の形状及び数は、図10A図10Cに示したものに限られない。例えば、形成するスリット41の数を多くしたり、スリット41の深さを深くすれば、第1の方向と直交する方向におけるゲルダンパー10の柔軟性は高まるが、その分だけ、第1の方向と直交する方向に振動する低周波振動については押さえが効きにくくなり、当該方向へのゲルダンパー10の揺れは大きくなる。一方で、高周波振動に対する特性は向上する。一方、例えば形成するスリット41の数を少なくしたり、スリット41の深さを浅くして、第1の方向と直交する方向におけるゲルダンパー10の柔軟性を低減させると、当該方向への揺れは小さくなるが、高周波振動に対する振動の吸収力が弱くなる。したがって、スリット41の形状及び数は、ゲルダンパー10の載置面に載置される電子機器50の仕様、あるいは防振装置の設置場所等に応じて適宜決定するのが望ましい。
【0036】
なお、上記では、突出部12にスリット41が形成される例を説明したが、スリット41はこれに限らず、突出部12と本体部11との双方に形成されていてもよい。
【0037】
以上のように、実施の形態2によれば、突出部12に対し、第1の方向に沿うスリット41が形成されている。これにより、防振装置1は、第1の方向と直交する方向におけるゲルダンパー10の柔軟性を実施の形態1よりも向上させることができる。
【0038】
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置1に加え、ゲルダンパー10上に置かれた電子機器50の傾きを修正可能とする傾き修正装置を備えた防振システムについて説明する。
【0039】
実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置1では、ゲルダンパー10は、図11に示すように、重量物を支えている間に沈み込みが徐々に進む。例えば、ゲルダンパー10は、初期状態では30mm程度の厚みであったとしても、数か月経過すると20~25mm程度の厚みになることがある。このゲルダンパー10の沈み込みによる防振効果への影響はないが、沈み込みにより電子機器50が傾くため、安定性が悪くなる。これにより、電子機器50によっては動作に影響する場合がある。なお、ゲルダンパー10の沈み込みの度合いは、加えられている荷重だけではなく、温度又は湿度等の環境によっても変化する。
【0040】
なお、電子機器50内の部品配置は、電気的な機能ブロックで決まるため、重量バランスは考慮されていない。そのため、電子機器50では、重量の偏りがでる。電子機器50に搭載される重量物としては、例えばトランス又は蓄電池等が挙げられる。また、PCも電源部品が重いユニットである。
【0041】
このように、電子機器50の防振対策として複数のゲルダンパー10を用いると、それぞれのゲルダンパー10にかかる荷重が一定ではないため、時間の経過と共にそれぞれの沈み込み量に差が出てきて電子機器50が傾くことになる。また、精密機器又は精密電子部品を含む電子機器50では、傾きが一定以上(許容値以上)となると、誤動作につながる可能性がある。例えば、ハードディスク又は光ディスクは水平又は垂直であることが使用条件とされている。また、蓄電池等についても液体が入っている場合には水平であることが望ましい。このように、精密機器又は精密電子部品を含む電子機器50は、水平で使うことが望ましいため、傾きを修正する必要が生じる。
【0042】
なお、ゲルダンパー10を電子機器50の重心を考慮した配置にすれば、沈み込みのばらつきが少なくなる。しかしながら、この配置は必ずしも防振効果のよい配置ではないため、採用できない。すなわち、ゲルダンパー10の配置はどこを押さえるかが防振効果に影響する。例えば、内部部品を固定しているねじの付近にゲルダンパー10を配置したり、振動に弱い部品付近にゲルダンパー10を配置した方が効果的な場合がある。
【0043】
そこで、実施の形態3では、実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置に対し、傾き修正装置を付加して、電子機器50の傾きを修正可能とする防振システムについて説明する。なお、実施の形態3では、第1の方向は、ゲルダンパー10がガイド部32に嵌め込まれる際の嵌め込み方向であり、かつ重力方向である。
【0044】
図12、13は実施の形態3に係る防振システムの構成例を示す図である。防振システムは、防振装置と、傾き修正装置とを含んで構成される。このうち、防振装置は、実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置1と同様であるためその説明を省略し、ここでは傾き修正装置について詳しく説明する。
【0045】
傾き修正装置は、防振装置におけるゲルダンパー10の上に置かれた電子機器50の傾きを修正する。なお、防振装置は、1つの電子機器50に対して1つ以上設けられる。
図12,13に示す電子機器50は、四隅に対向する位置に配置された4つの防振装置におけるゲルダンパー10の上に置かれている。なお、4つの防振装置は、すべて実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置1である必要はなく、例えば電子機器50の対角線上の2か所に対向する位置に、実施の形態1又は実施の形態2で説明した防振装置1が配置され、残りの2か所に対向する位置には、図7で説明したような従来の防振装置が配置されていてもよい。
【0046】
傾き修正装置は、図12,13に示すように、載置台30、移動機構6、検出部7及び制御部8を備えている。なお図13では、移動機構6及び制御部8並びにその接続線の図示を省略している。
【0047】
載置台30は、ゲルダンパー10が置かれる台である。また、載置台30には、底面31が取り付けられる。載置台30は、1つの電子機器50に対して、2つ以上設けられる。図1,2では、ゲルダンパー10毎に載置台30が設けられた場合を示している。
【0048】
移動機構6は、載置台30を第1の方向に移動可能とする。図12,13では、移動機構6は、モータ61及びねじ機構62を有する。
【0049】
ねじ機構62は、モータ61により駆動されることで、載置台30を第1の方向に移動させる。図12,13では、ねじ機構62が、長ねじ及び雌ねじ部から構成されている。雌ねじ部は、載置台30に形成され、上記長ねじが螺合する部位である。図12,13に示すねじ機構62は、モータ61により長ねじが回転されることで、当該長ねじに雌ねじ部を介して接続された載置台30を第1の方向に移動させる。
【0050】
検出部7は、ゲルダンパー10の上に置かれた電子機器50の傾きに関するパラメータを検出する。図12,13では、検出部7として、傾斜センサ71が用いられている。
傾斜センサ71は、電子機器50の上に置かれ、電子機器50の傾きを計測する。
【0051】
制御部8は、検出部7による検出結果に基づいて、電子機器50の傾きを修正するよう移動機構6を制御する。この際、例えば、制御部8は、移動機構6のうち、電子機器50のうちの沈み込みが生じていない側の移動機構6を第1の方向における下方向(重力方向下向き)に移動させる。
なお、図12,13では、制御部8は、傾斜センサ71により検出された電子機器50の傾きに基づいて、当該電子機器50の傾きを修正するよう移動機構6を制御する。
【0052】
なお、制御部8は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0053】
次に、図12,13に示す実施の形態3に係る傾き修正装置の動作例について説明する。
図14Aに示すように、電子機器50をゲルダンパー10の上に置いた直後(初期状態)では、ゲルダンパー10の沈み込みの差は少なく、電子機器50はほぼ水平に設置される。なお、ゲルダンパー10は自己接着性がある。
【0054】
しかしながら、図14Bに示すように、時間の経過又は周囲温度の影響等により、荷重の大きくかかっているゲルダンパー10の沈み込み量が増えていく(ゲルダンパー10は圧縮される)。この際、通常、電子機器50内部の重量物の配置から一定の方向へ沈み込みが発生する。これにより、電子機器50に傾きが生じる。図14Bでは、符号1401に示すように、左側のゲルダンパー10で、より大きな沈み込みが生じている。
そこで、図14Cに示すように、実施の形態3に係る傾き修正装置では、この欠点をゲルダンパー10の載置台30の高さを変化させることで補う。図14Cでは、符号1402に示すように、右側のゲルダンパー10の位置を低くすることで、左右のゲルダンパー10の高さの違いを解消している。
【0055】
すなわち、実施の形態3に係る傾き修正装置では、図15に示すように、電子機器50の沈み込みが一定以上(例えば3mm以上)発生すると、検出部7が、その傾きに関するパラメータを検出する。実施の形態3に係る傾き修正装置では、検出部7として傾斜センサ71が用いられており、傾斜センサ71は電子機器50の傾きを直接計測する。
【0056】
そして、図16に示すように、制御部8は、検出部7による検出結果に基づいて、電子機器50の傾きを解消するよう移動機構6を制御する。この際、例えば、制御部8は、移動機構6のうち、沈み込み(傾斜)を検出した側とは反対側の移動機構6を駆動させ、載置台30を下げるように制御する。図15,16に示す構成では、制御部8は、モータ61をオンし、長ねじを回転させて載置台30を所定の位置まで(沈み込みのない側を)下げることで、電子機器50を水平にする。
【0057】
なお、図17に示すように、沈み込みが再度発生した場合には、実施の形態3に係る傾き修正装置は、上記と同様の処理を繰り返す。これにより、電子機器50の水平が維持される。
【0058】
なお、電子機器50に対してゲルダンパー10が複数用いられている場合、制御部8は、最も沈み込んだゲルダンパー10の位置に合わせて、調整を行う。
【0059】
また、図15~17では、制御部8が、移動機構6のうち、沈み込み(傾斜)を検出した側とは反対側の移動機構6を駆動させ、載置台30を下げるように制御することで、電子機器50を水平にする場合を示した。しかしながら、これに限らず、制御部8が、移動機構6のうち、沈み込み(傾斜)を検出した側の移動機構6を駆動させ、載置台30を上げるように制御することで、電子機器50を水平にしてもよい。
【0060】
以上のように、実施の形態3によれば、傾き修正装置は、載置台30を、第1の方向に移動可能とする移動機構6と、ゲルダンパー10に置かれた電子機器50の傾きに関するパラメータを検出する検出部7と、検出部7による検出結果に基づいて、電子機器50の傾きを修正するよう移動機構6を制御する制御部8とを備えた。これにより、実施の形態3における傾き修正装置は、ゲルダンパー10に置かれた電子機器50の傾きを修正可能となる。
【0061】
実施の形態4.
図12,13に示す実施の形態3に係る傾き修正装置では、検出部7として傾斜センサ71が用いられ、電子機器50の傾きに関するパラメータとして、電子機器50の傾きを計測する場合を示した。実施の形態4に係る傾き修正装置では、電子機器50の傾きに関するパラメータとして、電子機器50の位置を計測する場合を示す。
【0062】
図18,19は実施の形態4に係る傾き修正装置の構成例を示す図である。図18,19に示す実施の形態4に係る傾き修正装置は、図12,13に示す実施の形態3に係る傾き修正装置に対し、傾斜センサ71を複数の位置センサ72に変更している。図18,19に示す実施の形態4に係る傾き修正装置におけるその他の構成例は、図12,13に示す実施の形態3に係る傾き修正装置と同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。なお図19では、移動機構6及び制御部8並びにその接続線の図示を省略している。
【0063】
図18,19では、検出部7として、位置センサ72が用いられている。
位置センサ72は、電子機器50の周囲に、第1の方向に沿って異なる高さに複数置かれ、電子機器50が対向したか否かを検出する。図18,19では、電子機器50の左右それぞれに、複数の位置センサ72が用いられている。また、電子機器50には、左右に、位置センサ72の一端(センサ部)に接触可能な板部材73が取付けられている。そして、位置センサ72は、センサ部に板部材73が接触したか否かを判定することで、電子機器50が対向したか否かを検出する。
【0064】
また、図18,19に示す実施の形態4における制御部8は、位置センサ72による検出結果に基づいて、当該電子機器50の傾きを修正するよう移動機構6を制御する。
実施の形態4に係る傾き修正装置では、図20に示すように、電子機器50の沈み込みが一定以上(例えば3mm以上)発生すると、検出部7が、その傾きに関するパラメータを検出する。実施の形態4に係る傾き修正装置では、検出部7として複数の位置センサ72が用いられており、位置センサ72は電子機器50が対向したか否かを検出する。制御部8では、位置センサ72による検出結果から、電子機器50の傾き状態を把握可能である。
【0065】
そして、図21に示すように、制御部8は、検出部7による検出結果に基づいて、電子機器50の傾きを解消するよう移動機構6を制御する。この際、例えば、制御部8は、移動機構6のうち、沈み込み(位置の低下)を検出した側とは反対側の移動機構6を駆動させ、載置台30を下げるように制御する。図20,21に示す構成では、制御部8は、モータ61をオンし、長ねじを回転させて載置台30を所定の位置まで(位置の低下のない側を)下げることで、電子機器50を水平にする。
【0066】
なお、沈み込みが再度発生した場合には、実施の形態4に係る傾き修正装置は、上記と同様の処理を繰り返す。これにより、電子機器50の水平が維持される。
【0067】
なお、電子機器50に対してゲルダンパー10が複数用いられている場合、制御部8は、最も沈み込んだゲルダンパー10の位置に合わせて、調整を行う。
【0068】
また、図20,21では、制御部8が、移動機構6のうち、沈み込みを検出した側とは反対側の移動機構6を駆動させ、載置台30を下げるように制御することで、電子機器50を水平にする場合を示した。しかしながら、これに限らず、制御部8が、移動機構6のうち、沈み込みを検出した側の移動機構6を駆動させ、載置台30を上げるように制御することで、電子機器50を水平にしてもよい。
【0069】
なお、実施の形態3,4では、移動機構6がモータ61及びねじ機構62から成る場合を示した。しかしながら、これに限らず、移動機構6は、載置台30を第1の方向に移動可能な機構であればよい。
【0070】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 防振装置
6 移動機構
7 検出部
8 制御部
10 ゲルダンパー
11 本体部
12 突出部
20 カバー部材
30 載置台
31 底面
32 ガイド部
41 スリット
50 電子機器
61 モータ
62 ねじ機構
71 傾斜センサ
72 位置センサ
73 板部材
100 ゲルダンパー
300 載置台
S 規制範囲
T 非規制範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21