(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072181
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】有機性廃棄物処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/08 20060101AFI20230517BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C02F11/08 ZAB
C02F11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184560
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】小城 和高
(72)【発明者】
【氏名】吉川 潤
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】仕入 英武
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA07
4D059AA23
4D059BA12
4D059BA56
4D059BC02
4D059BJ08
4D059BK11
4D059BK12
4D059CA07
4D059CA11
4D059CB01
4D059DA43
4D059DA44
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】有機物を含む処理対象物の可溶化処理の効率を向上させる。
【解決手段】実施形態の有機性廃棄物処理システムは、消化設備と、可溶化設備と、を備える。可溶化設備は、可溶化設備に消化汚泥を供給する供給部と、消化汚泥または可溶化汚泥を貯留する第1可溶化槽、および、第2可溶化槽と、第1可溶化槽に貯留されている消化汚泥または可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って第2可溶化槽に移すための経路、および、第2可溶化槽に貯留されている可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って第1可溶化槽に移すための経路を含む循環経路と、を有する。循環経路には、第1可溶化槽に貯留されている前記消化汚泥または前記可溶化汚泥、もしくは第2可溶化槽に貯留されている可溶化汚泥を加圧して循環経路に流す加圧部と、加圧部によって循環経路に流された消化汚泥または可溶化汚泥に対してオゾンを供給するオゾン発生部と、が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む処理対象物を消化して消化汚泥とバイオガスを生成する消化設備と、
前記消化汚泥を可溶化して可溶化汚泥を生成する可溶化設備と、
を備え、
前記可溶化設備は、
前記可溶化設備に前記消化汚泥を供給する供給部と、
前記消化汚泥または前記可溶化汚泥を貯留する第1可溶化槽、および、第2可溶化槽と、
前記第1可溶化槽に貯留されている前記消化汚泥または可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って前記第2可溶化槽に移すための経路、および、前記第2可溶化槽に貯留されている可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って前記第1可溶化槽に移すための経路を含む循環経路と、を有し、
前記循環経路には、
前記第1可溶化槽に貯留されている前記消化汚泥または前記可溶化汚泥、もしくは前記第2可溶化槽に貯留されている前記可溶化汚泥を加圧して前記循環経路に流す加圧部と、
前記加圧部によって前記循環経路に流された前記消化汚泥または前記可溶化汚泥に対してオゾンを供給するオゾン発生部と、
が設けられている有機性廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記循環経路には、
前記オゾン発生部から供給されたオゾンと、前記加圧部によって前記循環経路に流された前記消化汚泥または前記可溶化汚泥と、を混合するとともに、圧力変動によって前記消化汚泥または前記可溶化汚泥に含まれる固形物を破砕する破砕器が、さらに設けられている請求項1に記載の有機性廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記循環経路には、
前記破砕器の下流に位置し、前記破砕器から出た前記消化汚泥または前記可溶化汚泥に対して過酸化水素を供給する過酸化水素供給部が、さらに設けられている請求項2に記載の有機性廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記循環経路には、
前記破砕器の下流に位置し、前記オゾンおよび破砕された前記固形物を含む前記消化汚泥または前記可溶化汚泥が噴射入力され、乱流によって前記オゾンおよびと破砕された前記固形物との接触を増加させる溶解反応部が、さらに設けられている請求項2に記載の有機性廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、有機性廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を含む有機性廃棄物を処理するシステムが知られている。このようなシステムは、例えば、オゾンで廃棄物を酸化した後、嫌気性消化することでメタン等を含むバイオガスを生成して利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のシステムでは、可溶化設備において、可溶化槽が1台であるため、可溶化処理前の汚泥と可溶化処理後の汚泥が可溶化槽の内部において混在する。このため、可溶化処理を一度も受けない汚泥が生じたり、可溶化処理を複数回受ける汚泥が生じたり、汚泥によって可溶化処理を受ける程度に偏りが発生することで、可溶化処理の効率が低下している可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、可溶化処理の効率を向上可能な有機性廃棄物処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の有機性廃棄物処理システムは、有機物を含む処理対象物を消化して消化汚泥とバイオガスを生成する消化設備と、前記消化汚泥を可溶化して可溶化汚泥を生成する可溶化設備と、を備える。前記可溶化設備は、前記可溶化設備に前記消化汚泥を供給する供給部と、前記消化汚泥または前記可溶化汚泥を貯留する第1可溶化槽、および、第2可溶化槽と、前記第1可溶化槽に貯留されている前記消化汚泥または可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って前記第2可溶化槽に移すための経路、および、前記第2可溶化槽に貯留されている可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って前記第1可溶化槽に移すための経路を含む循環経路と、を有する。前記循環経路には、前記第1可溶化槽に貯留されている前記消化汚泥または前記可溶化汚泥、もしくは前記第2可溶化槽に貯留されている前記可溶化汚泥を加圧して前記循環経路に流す加圧部と、前記加圧部によって前記循環経路に流された前記消化汚泥または前記可溶化汚泥に対してオゾンを供給するオゾン発生部と、が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の有機性廃棄物処理システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態において、過酸化水素の添加量と添加位置に関する回分消化試験の結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、従来技術の有機性廃棄物処理システムの全体構成図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態等について説明する。以下の例示的な実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が部分的に省略される。実施形態に含まれる部分は、他の実施形態の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態と同様である。
【0009】
(従来技術)
理解を助けるために、従来技術についてあらためて説明する。
図3は、従来技術の有機性廃棄物処理システム100の全体構成図を模式的に示す図である。
【0010】
有機性廃棄物処理システム100では、可溶化設備14に関連する主な工程として、次の3つの工程が行われる。まず、符号(11)に示す汚泥引抜工程である。次に、符号(12)に示す可溶化工程である。最後に、符号(13)に示す汚泥返送工程である。
【0011】
しかしながら、この有機性廃棄物処理システム100では、可溶化設備14において、可溶化槽34が1台であるため、可溶化処理前の汚泥と可溶化処理後の汚泥が可溶化槽の内部において混在する。このため、可溶化処理を一度も受けない汚泥が生じたり、可溶化処理を複数回受ける汚泥が生じたり、汚泥によって可溶化処理を受ける程度に偏りが発生することで、可溶化処理の効率が低下している可能性があるという問題がある。
【0012】
そこで、以下では、可溶化処理の効率を向上可能な有機性廃棄物処理システムについて説明する。
【0013】
(実施形態)
図1は、実施形態の有機性廃棄物処理システム10の全体構成を模式的に示す図である。有機性廃棄物処理システム10は、下水等に含まれる有機性廃棄物から嫌気性消化によってメタンと二酸化炭素とを生成して有機物を除去する。有機性廃棄物処理システム10は、嫌気性消化によって生成したメタンが約60%含まれるバイオガスをエネルギーとして回収して利用する。例えば、有機性廃棄物処理システム10は、バイオガスに含まれるメタンをガスボイラーで熱に変換して、後述する第1消化槽20、第2消化槽22の加温に利用する。また、有機性廃棄物処理システム10は、バイオガスに含まれるメタンを発電設備90のガス発電機での発電に利用し、発電した電力を有機性廃棄物処理システム10内で利用することにより、購入電力量を低減し、または、売電することで利益を得る。
【0014】
図1に示すように、有機性廃棄物処理システム10は、消化設備12と、可溶化設備14と、制御装置95と、を備える。
【0015】
消化設備12は、有機物を含む有機性廃棄物(処理対象物。汚泥ともいう。)を嫌気性消化してメタンを含むバイオガスを生成するとともに、有機物を除去した消化後の汚泥を排出する。消化設備12は、第1消化槽20と、第2消化槽22とを有する。
【0016】
第1消化槽20は、例えば、有機性廃棄物処理システム10の最も上流側であって、可溶化設備14の上流側に設けられている。第1消化槽20は、嫌気性微生物を内部に含み、外部から供給される有機性廃棄物を嫌気性微生物によって嫌気性消化する。嫌気性微生物は、加水分解菌、酸生成菌、及び、メタン生成菌等である。例えば、第1消化槽20では、加水分解菌によって、有機性廃棄物に含まれる炭水化物、タンパク質、脂質等の高分子有機物が低分子有機物へと分解される。次に、第1消化槽20では、酸生成菌によって低分子有機物が酢酸、プロピオン酸等の低級脂肪酸へと分解される。第1消化槽20では、メタン生成菌によって低級脂肪酸がメタンと二酸化炭素とに分解され、そしてバイオガスが生成される。第1消化槽20は、有機性廃棄物が嫌気性消化さることで生成されたバイオガスを発電設備90等へ送るとともに、一部の有機物が除去された残りである消化後の汚泥(消化汚泥)を可溶化設備14へと送る。なお、第1消化槽20は、破線の矢印で示すように、消化汚泥の一部を可溶化設備14ではなく第2消化槽22へと供給してもよい。
【0017】
第2消化槽22は、可溶化設備14の下流側に設けられている。第2消化槽22は、可溶化設備14から送られる可溶化された汚泥(可溶化汚泥)を、第1消化槽20と同様の消化方法によって嫌気性消化する。第2消化槽22は、可溶化汚泥を嫌気性消化して生成したバイオガスを発電設備90等へ送るとともに、可溶化汚泥から有機物が除去された残りの汚泥(消化汚泥)を脱水設備92等に排出する。
【0018】
可溶化設備14は、汚泥を可溶化して可溶化汚泥を生成する。具体的には、可溶化設備14は、消化設備12から送られる消化汚泥を可溶化及び液化して消化設備12へ供給する。可溶化設備14は、供給ポンプ30(供給部)と、循環経路32と、第1可溶化槽35と、第2可溶化槽37と、加圧ポンプ36(加圧部)と、オゾン発生装置42(オゾン発生部)と、破砕器44と、過酸化水素注入装置38(過酸化水素供給部)と、注入ポンプ40(過酸化水素供給部)と、溶解反応部46と、排出ポンプ48と、制御弁B1~B6と、を有する。
【0019】
供給ポンプ30は、消化設備12の第1消化槽20と第1可溶化槽35とに接続されている。供給ポンプ30は、第1消化槽20に貯留されている消化汚泥を可溶化設備14の第1可溶化槽35へと供給する。
【0020】
循環経路32は、第1可溶化槽35に貯留されている消化汚泥または可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って第2可溶化槽37に移すための経路、および、第2可溶化槽37に貯留されている可溶化汚泥を循環させて可溶化処理を行って第1可溶化槽35に移すための経路を含む。
【0021】
第1可溶化槽35および第2可溶化槽37は、循環経路32上に配置され、第1可溶化槽35は消化汚泥または可溶化汚泥を、そして第2可溶化槽37は可溶化汚泥を、それぞれ貯留する。なお、第1可溶化槽35と第2可溶化槽37は、物理的に同じ構成であることが好ましい。
【0022】
第1可溶化槽35は、第1消化槽20と、第2消化槽22と、に接続されている。第1可溶化槽35は、供給ポンプ30を介して第1消化槽20から送られる消化汚泥を一時的に貯留する。また、第1可溶化槽35は、溶解反応部46から受け取った可溶化汚泥を一時的に貯留する。第1可溶化槽35は、可溶化汚泥を、循環経路32か第2消化槽22のいずれかへ送る。
【0023】
第2可溶化槽37は、第2消化槽22に接続されている。また、第2可溶化槽37は、溶解反応部46から受け取った可溶化汚泥を一時的に貯留する。第2可溶化槽37は、可溶化汚泥を、循環経路32か第2消化槽22のいずれかへ送る。
【0024】
また、制御弁B1~B6は、図示の位置に配置され、制御装置95からの指示によって開状態か閉状態のいずれかを維持する(詳細は後述)。
【0025】
加圧ポンプ36は、循環経路32上に配置され、第1可溶化槽35に貯留されている消化汚泥または可溶化汚泥、もしくは第2可溶化槽37に貯留されている可溶化汚泥を加圧して循環経路32に流す。
【0026】
オゾン発生装置42は、加圧ポンプ36によって循環経路32に流された消化汚泥または可溶化汚泥に対してオゾンを供給する。具体的には、次の通りである。オゾン発生装置42は、破砕器44に接続されている。オゾン発生装置42は、破砕器44を流れる汚泥にオゾンを供給する。例えば、オゾン発生装置42は、450mg/L以下の添加量でオゾンを汚泥に供給することが好ましい。
【0027】
破砕器44は、循環経路32上に配置され、オゾン発生装置42から供給されたオゾンと、加圧ポンプ36によって循環経路32に流された消化汚泥または可溶化汚泥と、を混合するとともに、圧力変動によって消化汚泥または可溶化汚泥に含まれる固形物を破砕する。破砕器44は、加圧ポンプ36の下流側と、オゾン発生装置42と、循環経路32における注入ポンプ40の接続先の上流側に接続されている。破砕器44は、例えば、エジェクター(圧力変動管路ともいう)である。破砕器44は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンを吸引する。破砕器44は、加圧ポンプ36で加圧され汚泥、即ち消化汚泥または可溶化汚泥と、オゾンとを混合する。破砕器44は、オゾンの供給による圧力変動によって生じたせん断力により汚泥中の固形物を破砕して低分子化するとともに、オゾンをマイクロバブル化する。破砕器44は、マイクロバブル化したオゾンが混合された汚泥を下流に送る。
【0028】
過酸化水素注入装置38は、循環経路32上で破砕器44の下流に配置され、破砕器44から出た消化汚泥または可溶化汚泥に対して過酸化水素を供給する。具体的には、次の通りである。過酸化水素注入装置38は、循環経路32を流れる汚泥に注入して供給するための過酸化水素を生成する。例えば、過酸化水素注入装置38は、過酸化水素を含む液状の過酸化水素水を汚泥に供給する。
【0029】
注入ポンプ40は、過酸化水素注入装置38に接続されるとともに、循環経路32における破砕器44の下流側と溶解反応部46の上流側との間の位置に接続されている。注入ポンプ40は、過酸化水素注入装置38から供給された過酸化水素を、破砕器44から出た汚泥に注入する。例えば、注入ポンプ40は、添加量が100ppm以下となる流量で過酸化水素を汚泥へ供給する。
【0030】
溶解反応部46は、循環経路32において破砕器44の下流に配置され、オゾン、過酸化水素および破砕された固形物を含む消化汚泥または可溶化汚泥が噴射入力され、乱流によってオゾン、過酸化水素およびと破砕された固形物との接触を増加させる。具体的には、次の通りである。溶解反応部46は、ノズル50と、溶解反応タンク54と、乱流部材52と、を有する。ノズル50は、溶解反応タンク54内に設置され、破砕器44から延びる循環経路32に接続されている。ノズル50は、破砕器44から送られる消化汚泥または可溶化汚泥を溶解反応タンク54内に噴射する。乱流部材52は、溶解反応タンク54内に設置されている。乱流部材52は、溶解反応タンク54内に噴射された消化汚泥または可溶化汚泥の流れを乱す。これにより、乱流部材52は、マイクロバブル状のオゾンと混合汚泥内の固形物との接触を増加させ、消化汚泥または可溶化汚泥中の有機物の細胞壁をオゾンの酸化力によって破壊し、細胞内部の炭水化物及びタンパク質の可溶化を促進する。また、過酸化水素と汚泥内の固形物との接触を増加させることによっても汚泥の可溶化を促進する。溶解反応タンク54は、消化汚泥または可溶化汚泥を内部で加圧する。溶解反応タンク54は、第1可溶化槽35および第2可溶化槽37と接続されている。溶解反応タンク54は、可溶化汚泥を第1可溶化槽35または第2可溶化槽37へ送る。
【0031】
排出ポンプ48は、消化設備12の第2消化槽22と、第1可溶化槽35および第2可溶化槽37とに接続されている。排出ポンプ48は、第1可溶化槽35または第2可溶化槽37内の可溶化汚泥を第2消化槽22へと供給する。
【0032】
次に、有機性廃棄物処理システム10における動作(工程等)について説明する。なお、各構成が制御装置95によって制御される場合について、説明を簡略化するために、制御装置95による制御の記載は省略する。
【0033】
有機性廃棄物処理システム10において、汚泥引抜工程(
図1の符号(1))、可溶化工程A(符号(2))、可溶化工程B(符号(3))、汚泥返送工程A(符号(4))、汚泥返送工程B(符号(5))、およびその他の動作が行われる。以下、各工程およびその他の動作について説明する。
【0034】
まず、消化設備12の第1消化槽20では、外部から送られた有機物を含む有機性廃棄物が嫌気性消化され、メタンを含むバイオガスと、一部の有機物が除去された消化汚泥とが生成される。生成されたバイオガスは、第1消化槽20から発電設備90等に送られ、また生成された消化汚泥は、第1消化槽20から可溶化設備14の第1可溶化槽35へと送られる(汚泥引抜工程(符号(1)))。
【0035】
次に、可溶化工程A(符号(2))が行われる。具体的には、次の通りである。制御弁B1は開状態、制御弁B3は閉状態となっており、加圧ポンプ36は、第1可溶化槽35に貯留されている消化汚泥を加圧して、循環経路32に流す。破砕器44は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンを消化汚泥に混合する。注入ポンプ40は、過酸化水素注入装置38から供給された過酸化水素を消化汚泥に注入する。また、制御弁B2は開状態、制御弁B4は閉状態となっており、溶解反応部46から出た可溶化処理された消化汚泥は第2可溶化槽37へ送られる。
【0036】
第1可溶化槽35の消化汚泥の全量について可溶化工程A(符号(2))が終了したら、次に、可溶化工程B(符号(3))を行う。なお、第1可溶化槽35の消化汚泥の全量について可溶化工程A(符号(2))が終了したことは、例えば、第1可溶化槽35内に設置された液位センサ(不図示)による検知結果等により判定できる(第2可溶化槽37についても同様)。また、例えば、第1可溶化槽35の消化汚泥の全量について可溶化工程Aが終了したと判定された後、この第1可溶化槽35に可溶化工程Bにて可溶化された可溶化汚泥が送られてくると、液位センサの設定によっては、消化汚泥と可溶化汚泥とが混ざった状態になることがあるが、この状態も可溶化汚泥と呼ぶ。
【0037】
可溶化工程B(符号(3))については、次の通りである。制御弁B1は閉状態、制御弁B3は開状態となっており、加圧ポンプ36は、第2可溶化槽37に貯留されている可溶化汚泥を加圧して、循環経路32に流す。破砕器44は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンを可溶化汚泥に混合する。注入ポンプ40は、過酸化水素注入装置38から供給された過酸化水素を汚泥に注入する。また、制御弁B2は閉状態、制御弁B4は開状態となっており、溶解反応部46から出た可溶化処理された汚泥は第1可溶化槽35へ送られる。
【0038】
このような可溶化工程A(符号(2))と可溶化工程B(符号(3))を繰り返すことにより、汚泥によって可溶化処理を受ける程度に偏りが発生することがなくなり、可溶化処理の効果が十分に得られるようになる。なお、この繰り返し回数は、例えば、汚泥に入れるオゾンと過酸化水素の量から決定できる。ただし、この手法に限定されず、例えば、リアルタイムで汚泥の可溶化処理の進行度を計測して、その計測結果に基づいて可溶化工程A、Bを終了するタイミングを決定してもよい。
【0039】
可溶化工程A(符号(2))と可溶化工程B(符号(3))の繰り返しが可溶化工程B(符号(3))で終わる場合、次に、汚泥返送工程A(符号(4))が行われる。汚泥返送工程A(符号(4))において、制御弁B5は開状態、制御弁B6は閉状態となっており、排出ポンプ48の動作によって、第1可溶化槽35内の可溶化汚泥が第2消化槽22に送られる。
【0040】
また、可溶化工程A(符号(2))と可溶化工程B(符号(3))の繰り返しが可溶化工程A(符号(2))で終わる場合、次に、汚泥返送工程B(符号(5))が行われる。汚泥返送工程B(符号(5))において、制御弁B5は閉状態、制御弁B6は開状態となっており、排出ポンプ48の動作によって、第2可溶化槽37内の可溶化汚泥が第2消化槽22に送られる。
【0041】
汚泥返送工程A(符号(4))や汚泥返送工程B(符号(5))の後、第2消化槽22は、可溶化汚泥を嫌気性消化することによって、バイオガスと、有機物が可溶化汚泥から除去された消化汚泥とを生成する。第2消化槽22は、バイオガスを発電設備90等に送るとともに、消化された汚泥を脱水設備92等に送る。
【0042】
次に、
図2は、実施形態において、過酸化水素の添加量と添加位置に関する回分消化試験(40日)の結果を示すグラフである。この
図2を参照して、循環経路32における汚泥に対して、オゾンを供給する位置よりも過酸化水素を供給する位置のほうが下流であることのメリットについて説明する。
【0043】
(21)~(29)の条件は以下の通りである。
(21)未処理
(22)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:無し
(23)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:10ppm(供給位置はオゾンの直前)
(24)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:20ppm(供給位置はオゾンの直前)
(25)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:40ppm(供給位置はオゾンの直前)
(26)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:10ppm(供給位置はオゾンの直後)
(27)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:20ppm(供給位置はオゾンの直後)
(28)オゾン: 45mg/L、過酸化水素:40ppm(供給位置はオゾンの直後)
(29)オゾン:150mg/L、過酸化水素:無し
【0044】
図2において、棒グラフはガス発生量を示し、折れ線グラフは増産バイオガス量を示す。オゾンの添加量を同じにした(22)~(28)において、過酸化水素を添加した(23)~(28)のすべてについて、過酸化水素を未添加の(22)よりもガス発生量が多かった。また、(23)~(25)と(26)~(28)を比較すればわかるように、オゾンと過酸化水素の添加量がともに同じ場合、過酸化水素を供給する位置がオゾンを供給する位置よりも上流ではなく下流のときのほうが、増産バイオガス量が多くなっている。特に、(26)と(27)では、オゾンを多く添加した(29)よりも増産バイオガス量が多くなっている。
【0045】
したがって、これらのことから、循環経路32における汚泥に対して、オゾンを供給する位置よりも過酸化水素を供給する位置のほうが下流であるほうが、可溶化をより促進できると考えられる。
【0046】
このように、本実施形態の有機性廃棄物処理システム10によれば、可溶化槽として第1可溶化槽35と第2可溶化槽37の2つを設けることで、可溶化槽が1台だった従来技術と比較して、可溶化処理の効率を向上させることができる。つまり、可溶化工程A(
図1の符号(2))と可溶化工程B(符号(3))を繰り返すことにより、汚泥によって可溶化処理を受ける程度に偏りが発生することがなくなり、可溶化処理の効果が十分に得られるようになる。
【0047】
また、過酸化水素を汚泥に供給することで、製造コスト、運営コスト、材料コスト等が高価なオゾンの供給量を低減しつつ、可溶化処理の効率をより向上させることができる。
【0048】
また、循環経路32において過酸化水素の供給位置をオゾンの供給位置よりも下流にすることで、可溶化処理の効率をより向上させることができる。
【0049】
また、破砕器44がオゾンの供給によって生じた圧力変動によって汚泥内の固形物を粉砕しつつ汚泥とオゾンを混合することで、微小化した固形物とオゾンとの接触を高め、可溶化処理の効率をより向上させることができる。
【0050】
上述の各実施形態の各構成の配置、機能、個数、及び、数値等は適宜変更してよい。上述の各実施形態を組み合わせてもよい。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0052】
例えば、
図1における制御弁B1、B3の代わりに、1つの三方制御弁を用いてもよい。制御弁B2、B4や制御弁B5、B6についても同様である。
【0053】
また、
図1において、循環経路32に配置される各構成の配置(上流、下流の関係等)はこれに限定されず、他の配置であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…有機性廃棄物処理システム、12…消化設備、14…可溶化設備、20…第1消化槽、22…第2消化槽、30…供給ポンプ、32…循環経路、35…第1可溶化槽、36…加圧ポンプ、37…第2可溶化槽、38…過酸化水素注入装置、40…注入ポンプ、42…オゾン発生装置、44…破砕器、46…溶解反応部、48…排出ポンプ、50…ノズル、52…乱流部材、54…溶解反応タンク、90…発電設備、92…脱水設備、95…制御装置