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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072583
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】遠隔監視装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20230517BHJP
【FI】
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185252
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真史
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直孝
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB56
3H178BB73
3H178CC25
3H178DD54X
3H178EE01
3H178EE32
(57)【要約】
【課題】風車内で記録した記録データに識別情報を自動で付加し、蓄積された膨大な記録データの解析を容易にして、作業員を直接派遣しなくても風車内の状態を遠隔で容易に把握する遠隔監視技術を提供する。
【解決手段】遠隔監視装置は、作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定した指定信号42を多関節アーム50aの制御部35aに送信する送信部と、制御部35aから多関節アーム50aに出力された制御信号45を取得する取得部と、この制御信号45に基づいて作業ツール37の作業対象となる構造物32を識別する識別部と、作業ツール37が出力した記録データ46を収集する収集部と、構造物32の識別情報44を記録データ46に付加して付記ファイル48として保存させる付加部と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルで作業する作業ツールと、
支持する前記作業ツールの作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を制御する作業ロボットと、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を指定した指定信号を前記作業ロボットの制御部に送信する送信部と、
指定された前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を実行する前記作業ロボットの制御信号を前記制御部から取得する取得部と、
前記制御信号に基づいて前記作業ツールの作業対象となる構造物を識別する識別部と、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方の指定された前記作業ツールが出力した記録データを収集する収集部と、
前記構造物の識別情報を前記記録データに付加して保存させる付加部と、を備える遠隔監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ロボットは、複数のリンクを角度変位可能なジョイントで連結させた多関節アームで構成される遠隔監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ロボットは、ドローンで構成される遠隔監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遠隔監視装置において、
前記構造物と前記制御信号との相関関係を示す相関テーブルを登録する登録部と、
前記相関テーブルに照らし、受信した前記制御信号に対応する前記構造物の前記識別情報が前記記録データに付加される遠隔監視装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ツールの前記作業位置及び前記作業姿勢をマニュアル操作で指定した前記指定信号を送信させる操作部を備える遠隔監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ツールの前記作業位置及び前記作業姿勢を予め指定したの複数の前記指定信号に基づく演算をオート操作で実行させる操作部を備える遠隔監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ツールは、カメラ、センサ及び工具の少なくともひとつである遠隔監視装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遠隔監視装置において、
前記作業ツール及び前記作業ロボットを監視する固定カメラが前記ナセルに設けられている遠隔監視装置。
【請求項9】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルで作業ツールに作業させるステップと、
支持する前記作業ツールの作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を作業ロボットに制御させるステップと、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を指定した指定信号を前記作業ロボットの制御部に送信するステップと、
指定された前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を実行する前記作業ロボットの制御信号を前記制御部から取得するステップと、
前記制御信号に基づいて前記作業ツールの作業対象となる構造物を識別するステップと、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方の指定された前記作業ツールが出力した記録データを収集するステップと、
前記構造物の識別情報を前記記録データに付加して保存させるステップと、を含む遠隔監視方法。
【請求項10】
コンピュータに、
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルで作業ツールに作業させるステップ、
支持する前記作業ツールの作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を作業ロボットに制御させるステップ、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を指定した指定信号を前記作業ロボットの制御部に送信するステップ、
指定された前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を実行する前記作業ロボットの制御信号を前記制御部から取得するステップ、
前記制御信号に基づいて前記作業ツールの作業対象となる構造物を識別するステップ、
前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方の指定された前記作業ツールが出力した記録データを収集するステップ、
前記構造物の識別情報を前記記録データに付加して保存させるステップ、を実行させる遠隔監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洋上風力発電用の風車を遠隔監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上の沖合に風車を設置し風力発電を実施する洋上風力発電所は、洋上の安定した風を用いて発電できる利点がある。しかし、洋上に設置した風車の設備の保守管理は、作業員を頻繁に訪問させると、船舶の手配や移動日数などの関係で、コスト高になる。このような洋上風力発電の保守管理にかかるコストを低減し、電気料金に転嫁されないようにすることが望まれている。そこで、風力発電所の設備を遠隔で監視して、洋上風力発電所を直接訪問せずに、機器や設備の状態確認や障害検知することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-112631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような洋上風力発電所の遠隔監視の強化をさらに推し進めるため、作業ロボットにカメラを搭載し自由に移動させ、点検したい機器の映像を重点的に撮影等して記録することが考えられる。このようなカメラや温度センサ等といって作業ツールを利用して風車内を記録した記録データは、風車外にあるデータベースに無線送信され、蓄積され、機器の状態分析への活用が期待される。
【0005】
しかしながら、このように風車内で作業ツールを利用しデータベースに蓄積した記録データは、そのままでは画像や温度等の単純な記録にすぎない。このため無秩序に蓄積された膨大な記録データから、風車内の状態を把握することは困難であるといえる。そこで、このような記録データを有効に活用するためには、それぞれの記録データに対し「どこでどんな情報を記録したのか」といった識別情報を付加することが望まれる。しかし、多様な記録データに対し作業員が識別情報を手動で付加するとなると、極めて作業が煩雑で非効率で現実的でない。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、風車内で記録した記録データに識別情報を自動で付加し、蓄積された膨大な記録データの解析を容易にして、作業員を直接派遣しなくても風車内の状態を遠隔で容易に把握する遠隔監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る遠隔監視装置において、風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルで作業する作業ツールと、支持する前記作業ツールの作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を制御する作業ロボットと、前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を指定した指定信号を前記作業ロボットの制御部に送信する送信部と、指定された前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方を実行する前記作業ロボットの制御信号を前記制御部から取得する取得部と、前記制御信号に基づいて前記作業ツールの作業対象となる構造物を識別する識別部と、前記作業位置及び前記作業姿勢の少なくとも一方の指定された前記作業ツールが出力した記録データを収集する収集部と、前記構造物の識別情報を前記記録データに付加して保存させる付加部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、風車内で記録した記録データに識別情報を自動で付加し、蓄積された膨大な記録データの解析を容易にして、作業員を直接派遣しなくても風車内の状態を遠隔で容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)(B)本発明の実施形態が適用される風車の全体図。
図2】第1実施形態に係る遠隔監視装置の機構部が設置されたナセルの内部概念図。
図3】第1実施形態に係る遠隔監視装置のデータ処理部のブロック図。
図4】作業ロボットである多関節アームを示す拡大図。
図5】第2実施形態に係る遠隔監視装置のデータ処理部のブロック図。
図6】ナセル内の構造物と作業ロボットの制御信号との相関関係を示す相関テーブル。
図7】第3実施形態に係る遠隔監視装置の機構部が設置されたナセルの内部概念図。
図8】ナセル内における作業ツールの作業位置及び作業姿勢を指定する操作部のユーザーインターフェース画面。
図9】実施形態に係る遠隔監視方法の工程及び遠隔監視プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態が適用される風車20の全体図である。図1(A)は着床式の洋上設置方式の一例を示し、図2(B)は浮体式の洋上設置方式の一例を示している。このように図1(A)(B)に示す風車20は洋上設置方式を示しているが、各実施形態が適用される風車は陸上設置方式であることを妨げない。このように風車20は、ブレード25と、タワー26と、ナセル30と、ハブ21を備えている。
【0011】
ブレード25は、ハブ21でロータ軸27(図2)に連結されるように放射状に配置されている。これらのブレード25は、風の流動エネルギーを効率よく回転エネルギーに変換できるよう、風の流入方向に対しピッチ角が調節される。このピッチ角を調整するモータやブレーキ、非常用電源などの駆動機構(図示略)がハブ21内に設けられている。
【0012】
図1(A)に示す着床式におけるタワー26は、海底に築かれ海面から露出する基礎28の上面に、鉛直方向に沿って建築されている。図1(B)に示す浮体式におけるタワー26は、海底に築かれた基礎24に係留索23を介して繋がれた浮体22に、海面から露出するように接続されている。
【0013】
図2は第1実施形態に係る遠隔監視装置の機構部31aが設置されたナセル30の内部概念図である。このようにナセル30は、ロータ軸27を風向きに自動的に追従させるヨー駆動部(図示略)を介して、タワー26の頂部に設けられている。
【0014】
そして、このナセル30には、各種の構造物32(32a,32b)が収容されている。そのような構造物32としては、主軸受(図示略)に支持されたロータ軸27に接続して回転数を増速させる増速器32aや、回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機32bが例示されている。なお増速器32aや発電機32bは例示であって、ナセル30内の構造物32は、これらに限定されない。
【0015】
第1実施形態に係る遠隔監視装置の機構部31aは、ナセル30の内部で作業する作業ツール37と、ナセル30の内部において支持する作業ツール37の作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を設定する作業ロボット50(多関節アーム50a)と、を備えている。さらにナセル30には、データ処理部10から指定信号42を入力し作業ロボット50の制御信号45を生成する制御部35a(35)が設けられている。
【0016】
主な作業ツール37であるカメラとしては、光学カメラ、赤外線カメラ、サーモカメラ、マルチスペクトル、ハイパースペクトルを採用することが考えられ、また360度カメラを採用することも考えられる。その他の作業ツール37としては、ミリ波レーダーやレーザー等を用いた距離計測器、振動や加速度、温度、におい、音響などの状態量を計測するセンサが挙げられる。また、それぞれ異なる種類のカメラやセンサを作業ツール37として複数支持してもよい。
【0017】
図3は第1実施形態に係る遠隔監視装置のデータ処理部10A(10)を示すブロック図である。このように遠隔監視装置のデータ処理部10Aは、作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定した指定信号42を作業ロボット50(多関節アーム50a)の制御部35a(35)に送信する送信部12と、を備えている。
【0018】
さらにデータ処理部10Aは、指定された作業位置及び作業姿勢を実行する作業ロボット50(多関節アーム50a)の制御信号45を制御部35aから取得する取得部15と、この制御信号45に基づいて作業ツール37(カメラ)の作業対象(撮影対象)となる構造物32を識別する識別部17と、を備えている。
【0019】
さらにデータ処理部10Aは、作業位置及び作業姿勢の指定された作業ツール37(カメラ)が出力した記録データ46(画像データ)を収集する収集部16と、構造物32の識別情報44を記録データ46に付加して付記ファイル48として保存させる付加部と、を備えている。
【0020】
図4は作業ロボット50である多関節アーム50aを示す拡大図である。このように多関節アーム50aは、複数のリンク51(511,512,513)を、角度θ(θ123)を変位させるジョイント52(521,522,523)で連結して構成される。
【0021】
また多関節アーム50aは、基端部においてステージ55がレール36を移動するように構成され、広範囲に亘りナセル30の内部で作業することができる。またレール36の構成としては、走行のみでなく、横行と上下方向のテレスコピック機構などを組み合わせた3次元移動が可能な構成をとることもできる。なお多関節アーム50aは、レール36に替えて、移動ロボット(図示略)に設けられる場合もある。
【0022】
また作業ロボット50は、ナセル30の内部のみに限らず、タワー26の内部やハブ21の内部も作業ツール37で作業できる。この場合、タワー26の継目のボルトの締結具合や、その内部に配置されている構造物32に対して作業を行える。
【0023】
第1実施形態で示されるマニュアル操作部43aでは、作業ツール37のナセル30内の座標系における作業位置及び作業姿勢を作業者がマニュアル操作で指定する。つまり、作業対象(撮影対象)となる構造物32に対し、作業ツール37(カメラ)の適切な作業位置及び作業姿勢が、操作により指定される。
【0024】
なおナセル30の内部には、固定カメラ38が設けられており、ナセル30の内部を俯瞰して、作業ツール37及び作業ロボット50の動きを監視することができる。この固定カメラ38から受信部11で受信した映像データ41を表示部47で表示させながら、マニュアル操作部43aを操作することができる。
【0025】
またマニュアル操作部43aは、レーザスキャンデータや3DCADデータなどから構築された3次元データを用いて、指定信号42を操作・指定することもできる。このようなマニュアル操作で任意に指定された指定信号42は、送信部12から制御部35aに送信される。
【0026】
制御部35a(35)は、入力された指定信号42に基づいて、作業ツール37が所望の作業位置及び作業姿勢を取るような、作業ロボット50のジョイント52及びステージ55の制御信号45(θ123,x)を演算する。制御部35aで演算された制御信号45(θ123,x)に基づいて作業ロボット50は、オープンループ制御され、作業ツール37は指定された作業位置及び作業姿勢をとる。
【0027】
これにより作業対象となる構造物32に作業ツール37をアプローチさせることができる。この作業ツール37がカメラである場合は、様々な位置・姿勢から、必要な箇所のみフォーカスして、構造物32の記録データ46(画像データ)を得ることができる。また注目すべき構造物32が複数ある場合も、作業ツール37(カメラ)の位置・姿勢を変えて、それぞれにアプローチさせることができる。
【0028】
なお、ジョイント52やステージ55に角変位センサや直線変位センサを取り付け、制御信号45(θ123,x)をフィードバックして再演算する場合もある。このようにして演算した制御信号45(θ123,x)をそれぞれのジョイント52及びステージ55に出力するとともに、データ処理部10の取得部15にも取得させる。
【0029】
制御部35aは、さらに、作業ロボット50に支持させた作業ツール37のON/OFFを含めた動作制御や、作業ツール37が出力する記録データ46を外部伝送する役割も果たす。このようにして制御部35aから転送された作業ツール37(カメラ)の記録データ46(画像データ)は、データ処理部10の収集部16に収集される。
【0030】
ところで、取得部15で取得された制御信号45(θ123,x)は、作業ツール37の作業位置及び作業姿勢に一意的に関連付けられている。このため、識別部17では、この制御信号45に基づいて、作業ツール37(カメラ)が作業対象(撮影対象)とする構造物32を識別する。
【0031】
付加部18では、制御信号45から識別された構造物32の識別情報44を、作業ツール37の記録データ46に付加する。識別情報44が付加された記録データ46は、付記ファイル48として保存され、新たな記録データ46が収集される毎に蓄積されていく。この付記ファイル48は、ネットワーク(図示略)を介して他のサーバに転送することができる。
【0032】
これにより、ナセル30の作業ツール37で記録した記録データ46に、作業対象とした構造物32の識別情報44が自動で付与される。これにより、記録データ46の視認性や、データ分析に利用する際の利便性が向上するとともに、これまで識別情報44の付与に携わっていた人間の労力を削減できる。
【0033】
(第2実施形態)
次に図5を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態に係る遠隔監視装置のデータ処理部10B(10)を示すブロック図である。なお、図5において図3と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0034】
第2実施形態に係るデータ処理部10Bは、上述した第1実施形態のデータ処理部10Aの構成と対比して、下記の点で相違する。すなわち、第1実施形態のマニュアル操作部43aに替えて、オート操作部43bが設けられている点である。このオート操作部43bは、作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定した指定信号42が予め複数準備されている。
【0035】
そして制御部35bでは、複数の指定信号42から制御信号45の各々を演算し、指定されたタイミングで、作業ロボット50を実行させる。これにより、事前に作業ツール37の巡回経路を規定した複数の指定信号42を登録させておき、作業ロボット50aは規定された巡回経路に沿って作業ツール37をオート操作し、記録データ46を収集するといったことができる。この場合、付記ファイル48には、それぞれの指定信号42に対応する異なる構造物32の識別情報44が付加されている。
【0036】
さらに第2実施形態に係るデータ処理部10Bは、第1実施形態のデータ処理部10Aの構成と対比して、識別部17において相関テーブル40を用いて、構造物32を識別する点で相違する。
【0037】
図6はナセル30内の構造物32と作業ロボット50の制御信号45との相関関係を示す相関テーブル40である。すなわち、データ処理部10Bでは、このような相関テーブル40を登録する登録部を備えている。そして、識別部17はこの相関テーブル40に照らし、制御信号45に対応する構造物32を識別する。そして、付加部18は、この識別情報44を記録データ46に付加して、作業対象の構造物32に関連付けする。
【0038】
また、相関テーブル40は作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定した指定信号42の情報を基に構築することもできる。この場合、識別部17では制御信号45からの情報を基に作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を演算により算出し、相関テーブル40と照らして対応する構造物32を識別する。
【0039】
このような、作業対象の構造物32と作業ロボット50の制御信号45とを関係付けする手段としては、このような相関テーブル40を利用する他に機械学習を利用することが考えられる。
【0040】
(第3実施形態)
次に図7を参照して本発明における第3実施形態について説明する。図7は第3実施形態に係る遠隔監視装置の機構部31bが設置されたナセル30の内部概念図である。なお、図7において図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0041】
第3実施形態に係る機構部31bは、上述した第1実施形態の機構部31aの構成と対比して、下記の点で相違する。すなわち作業ロボット50が、第1実施形態の多関節アーム50aに替えて、ドローン50bで構成されている点である。第3実施形態の制御部35b(35)は、入力した指定信号42に従って、作業ツール37の作業位置及び作業姿勢が自律制御されるような作業ロボット50(ドローン50b)の制御信号45を演算する。
【0042】
なおドローン50bを自律飛行させるため、制御部35bでの制御信号45の演算に必要な、作業ツール37の実位置・実姿勢の情報は、公知の方法により取得される。具体的には、固定カメラ38でドローン50bを撮影する方法(例えば、ドローン50b側にARマーカを貼付し、固定カメラ38で認識)、ドローン50bに搭載したカメラでナセル30に固定した基準ブロック(図示略)を撮影する方法、制御部35bから発信する測位用電波をドローン50bに送受信させる方法、VisualSLAMやLiDAR-SLAMのような自己位置推定手法などが考えられる。
【0043】
第1実施形態及び第2実施形態の作業ロボット50は、多関節アーム50a及びドローン50bのいずれか一方が単体で例示されている。これら作業ロボット50として、多関節アーム50a及びドローン50bの両方が配置される場合もある。また、作業ロボット50は、複数で構成されて協調制御される場合もある。
【0044】
ドローン50bは、平時は、ナセル30の内部に設けられたヘリポートに常駐し、給電等が行われている。さらに第1実施形態の多関節アーム50aの先端でドローン50bを把持してナセル30内を移動し、タワー26上端からドローン50bをリリースしてドローン50bのみでタワー26内の点検を実施することができる。
【0045】
図8は、ナセル30内における作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定する操作部43のユーザーインターフェース画面である。つまり、図8に示す操作画面においてポイント指定すると、作業ツール37が対応する位置・姿勢をとるような指定信号42が、送信部12から制御部35に送信される。
【0046】
第3実施形態によれば、作業ロボット50にドローン50bを用いることで、多関節アーム50aよりもナセル30内の移動自由度が向上する。これにより、作業対象となる構造物3が増え、収集される記録データ46の種類も増す。これら記録データ46に、構造物32の識別情報44が自動で付与されることにより、記録データ46の視認性や、データ分析に利用する際の利便性が向上する。さらに、これまで識別情報44の付与に携わっていた人間の労力を削減できる。
【0047】
図9のフローチャートに基づいて実施形態に係る遠隔監視方法の工程及び遠隔監視プログラムのアルゴリズムを説明する(適宜、図2図3参照)。ナセル30の内部における作業ツール37の作業位置及び作業姿勢を指定した指定信号42を送信部12から作業ロボット50の制御部35に送信する(S11)。
【0048】
この指定信号42に基づいて作業ロボット50を動作させ(S12)、作業位置及び作業姿勢を設定し(S13)、作業ロボット50が支持する作業ツール37(カメラ)に作業(撮影)をさせる(S14)。これと同時に、作業ロボット50の制御信号45を制御部35から取得する(15)。そして、この制御信号45に基づいて作業ツール37の作業対象(撮影対象)となる構造物32を識別する(S16)。
【0049】
さらに同時に、作業位置及び作業姿勢の指定された作業ツール37(カメラ)が出力した記録データ46(画像データ)を収集する(S17)。そして、構造物32の識別情報44を記録データ46に付加して付記ファイル48として保存し、蓄積していく(S18,S19 No Yes,END)。
【0050】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の遠隔監視装置によれば、作業ロボットの制御信号に基づいて作業ツールの作業対象となる構造物を識別することで、風車内で記録した記録データに作業対象の識別情報を自動で付加することができる。これにより、蓄積された膨大な記録データの解析を容易にして、作業員を直接派遣しなくても風車内の状態を遠隔で容易に把握することが可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0052】
以上説明した遠隔監視装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このため遠隔監視装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、遠隔監視プログラムにより動作させることが可能である
【0053】
また遠隔監視プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る遠隔監視プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、遠隔監視装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10(10A,10B)…データ処理部、11…受信部、12…送信部、15…取得部、16…収集部、17…識別部、18…付加部、20…風車、21…ハブ、22…浮体、23…係留索、24…基礎、25…ブレード、26…タワー、27…ロータ軸、28…基礎、30…ナセル、31(31a,31b)…機構部、32(32a,32b)…構造物、32a…増速器(構造物)、32b…発電機(構造物)、35(35a,35b)…制御部、36…レール、37…作業ツール、38…固定カメラ、40…相関テーブル、41…映像データ、42…指定信号、43(43a,43b)…操作部、43a…マニュアル操作部(操作部)、43b…オート操作部(操作部)、44…識別情報、45…制御信号、46…記録データ、47…表示部、48…付記ファイル、50(50a,50b)…作業ロボット、50a…多関節アーム(作業ロボット)、50b…ドローン(作業ロボット)、51…リンク、52…ジョイント、55…ステージ。
図1
図2
図3
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図9