IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エアクリーナ 図1
  • 特開-エアクリーナ 図2
  • 特開-エアクリーナ 図3
  • 特開-エアクリーナ 図4
  • 特開-エアクリーナ 図5
  • 特開-エアクリーナ 図6
  • 特開-エアクリーナ 図7
  • 特開-エアクリーナ 図8
  • 特開-エアクリーナ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072856
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20230518BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20230518BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20230518BHJP
   B62J 40/00 20200101ALI20230518BHJP
【FI】
F02M35/10 301J
F02M35/024 511C
F02M35/10 101E
F02M35/16 L
F02M35/10 301V
B62J40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185548
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】福井 章仁
(72)【発明者】
【氏名】八木 慎太郎
(57)【要約】
【課題】エアフィルタへの水の付着を抑えてエアフィルタ内の空気をスムーズに流す。
【解決手段】エアクリーナ(50)は、車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナには、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室に配置されたエアフィルタ(57)と、吸気室に空気を取り込むインレットチューブ(62)と、吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブ(82)と、が設けられている。インレットチューブが前後方向に延び、側面視にてインレットチューブの底壁を下方に湾曲させてインレットチューブの排出口(64)よりも下方に凹曲部(71)が形成され、当該凹曲部に水抜き孔(72)が形成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、
吸気室が形成されたエアクリーナケースと、
前記吸気室に配置されたエアフィルタと、
前記吸気室に空気を取り込むインレットチューブと、
前記吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブと、を備え、
前記インレットチューブが前後方向に延び、側面視にて前記インレットチューブの底壁を下方に湾曲させて前記インレットチューブの排出口よりも下方に凹曲部が形成され、当該凹曲部に水抜き孔が形成されていることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
側面視にて前記インレットチューブの上壁を下方に湾曲させて凸曲部が形成され、前記水抜き孔が前記凸曲部の下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記水抜き孔が前記エアフィルタの高さ方向の中心よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記インレットチューブの吸入口の下縁が前記水抜き孔よりも下方に位置し、前記吸入口の下縁と前記水抜き孔の間には前記インレットチューブの底壁を上方に突出させて凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記インレットチューブの延在方向に直交する断面視にて、前記凹曲部が谷形状に形成されており、当該凹曲部の谷底に前記水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項6】
前記インレットチューブの側方にはバッテリが位置し、当該バッテリがバッテリケースによって保持されており、
前記バッテリケースの外縁のフランジによって前記水抜き孔が下側から覆われていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、エンジン後方にエアクリーナが配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のエアクリーナは、エアクリーナケースの後面にインレットチューブが取り付けられ、エアクリーナケースの前面にアウトレットチューブが取り付けられている。インレットチューブからエアクリーナケースに空気が取り込まれ、エアクリーナ内に配置されたエアフィルタによって空気が濾過される。そして、エアクリーナからアウトレットチューブにクリーンな空気が入り込み、アウトレットチューブを通じてクリーンな空気がスロットルボディに送り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4121392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエアクリーナはシート下方に配置されており、インレットチューブの吸入口が車体フレームの内側に開口している。空気の流れを良くするためには、インレットチューブの吸入口の開口面積を大きくする必要があるが、吸入口からエアクリーナに侵入した水によってエアフィルタが湿ると空気の流れが悪化する場合がある。インレットチューブを曲げることで水の侵入を抑えることも考えられるが、車体フレームの内側の狭いスペースではインレットチューブの曲げが急になって吸気抵抗が大きくなるという不具合がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、エアフィルタへの水の付着を抑えて空気をスムーズに流すことができるエアクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のエアクリーナは、車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室が形成されたエアクリーナケースと、前記吸気室に配置されたエアフィルタと、前記吸気室に空気を取り込むインレットチューブと、前記吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブと、を備え、前記インレットチューブが前後方向に延び、側面視にて前記インレットチューブの底壁を下方に湾曲させて前記インレットチューブの排出口よりも下方に凹曲部が形成され、当該凹曲部に水抜き孔が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のエアクリーナによれば、インレットチューブの底壁を下方に湾曲させてインレットチューブの排出口よりも下方に凹曲部を形成したことで、インレットチューブに侵入した水が凹曲部に当たって吸気室のエアフィルタに向かい難くなる。凹曲部によってインレットチューブ内の水が水抜き孔に集まり易くなって、水抜き孔を通じてインレットチューブ内から水を排水することができる。また、インレットチューブの凹曲部によってインレットチューブからエアフィルタに向かう空気の流れが妨げられることがない。よって、インレットチューブの吸入口の開口面積を増やしても、エアフィルタへの水の付着が抑えられてエアクリーナの空気をスムーズに流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例のエンジン周辺の左側面図である。
図3】本実施例のエンジン周辺の上面図である。
図4】本実施例のエアクリーナの側面図である。
図5】本実施例のエアクリーナの上面図である。
図6図5のエアクリーナをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7図5のエアクリーナをB-B線に沿って切断した断面図である。
図8図3のエンジン周辺をC-C線に沿って切断した断面図である。
図9】本実施例のエアクリーナ内の空気及び水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のエアクリーナは、車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナのエアクリーナケースには吸気室が形成されており、吸気室にはエアフィルタが配置されている。吸気室にはインレットチューブを通じて空気が取り込まれ、吸気室からアウトレットチューブを通じて空気が送り出される。インレットチューブが前後方向に延びており、側面視にてインレットチューブの底壁を下方に湾曲させて凹曲部が形成されている。凹曲部がインレットチューブの排出口よりも下方に位置しており、インレットチューブに侵入した水が凹曲部に当たって吸気室のエアフィルタに向かい難くなる。凹曲部には水抜き孔が形成されており、凹曲部によってインレットチューブ内の水が水抜き孔に集まり易くなって、水抜き孔を通じてインレットチューブ内から水を排水することができる。また、インレットチューブの凹曲部によってインレットチューブからエアフィルタに向かう空気の流れが妨げられることがない。よって、インレットチューブの吸入口の開口面積を増やしても、エアフィルタへの水の付着が抑えられてエアクリーナの空気をスムーズに流すことができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、パイプ・板金によって形成されるダイヤモンド型の車体フレーム10に、エンジン40や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン40の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン40の前部が支持されている。エンジン40が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン40の上方に位置するタンクレール14になっており、タンクレール14によって燃料タンク31が下方から支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン40の後方に位置するボディフレーム15になっており、ボディフレーム15の下半部にはスイングアーム25が揺動可能に支持されている。ボディフレーム15の上半部にはアッパーレール22及びロアレール23から成るシートレール21が取り付けられている。アッパーレール22の上部には、燃料タンク31の後方においてライダーシート32及びピリオンシート33が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク34が操舵可能に支持されている。フロントフォーク34の下部には前輪35が回転可能に支持されており、前輪35の上部はフロントフェンダ(不図示)に覆われている。スイングアーム25はボディフレーム15から後方に向かって延びている。スイングアーム25の後端には後輪36が回転可能に支持され、後輪36の上方はリアフェンダ(不図示)に覆われている。後輪36にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン40が連結されており、変速機構を介してエンジン40からの動力が後輪36に伝達されている。
【0014】
エンジン40の後方にはエアクリーナ50が配置されており、エアクリーナ50のインレットチューブ62が後方に延びている。インレットチューブ62の吸入口を大きくしてエアクリーナ50の空気の流れを良くするためには、エアフィルタ57(図6参照)が湿らないようにエアクリーナ50への水の侵入を抑える必要がある。エンジン40の後方の狭いスペースでは、車両後方からの水の侵入を防ぐように吸入口の向きを上方や側方等に向けることが難しい。そこで、本実施例のエアクリーナ50には、空気の流れを妨げることなく、エアフィルタ57に向かう水を捕捉して排水可能なインレットチューブ62が用いられている。
【0015】
図2から図8を参照して、エンジンの周辺構成及びエアクリーナについて説明する。図2は本実施例のエンジン周辺の左側面図である。図3は本実施例のエンジン周辺の上面図である。図4は本実施例のエアクリーナの側面図である。図5は本実施例のエアクリーナの上面図である。図6図5のエアクリーナをA-A線に沿って切断した断面図である。図7図5のエアクリーナをB-B線に沿って切断した断面図である。図8図3のエンジン周辺をC-C線に沿って切断した断面図である。
【0016】
図2及び図3に示すように、エンジン40は、2気筒エンジンであり、上下割構造のクランクケース41を有している。クランクケース41の上部にはシリンダ42、シリンダヘッド43、シリンダヘッドカバー44が取り付けられている。クランクケース41の左側面には、マグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー45が取り付けられている。マグネトカバー45の後方には、ドライブスプロケット(不図示)を側方から覆うスプロケットカバー46が取り付けられている。クランクケース41の右側面にはクラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー47が取り付けられている。
【0017】
シリンダヘッド43の後面にはスロットルボディ48が接続され、スロットルボディ48の上流(後側)にはエアクリーナ50が接続されている。エアクリーナ50は、エンジン40の後方で一対のメインフレーム12及び一対のシートレール21の内側に配置されている。上記したように、一対のメインフレーム12の後部は一対のボディフレーム15になっており、この一対のボディフレーム15の内側にエアクリーナ50の前端部が位置付けられている。ボディフレーム15の上半部は後方に向かって斜め下方に傾いており、ボディフレーム15の後方のエアクリーナケース51も斜め下方に傾けられている。
【0018】
ボディフレーム15の上半部の後縁には上側ブラケット16及び下側ブラケット17が形成されている。上側ブラケット16にはシートレール21のアッパーレール22が接続され、下側ブラケット17にはシートレール21のロアレール23が接続されている。アッパーレール22はエアクリーナケース51の上半部の側方を横切って後方に延びており、ロアレール23はエアクリーナケース51の下半部の側方を横切って斜め後方に延びている。アッパーレール22及びロアレール23の前側はブリッジパイプ24を介して連結され、アッパーレール22及びロアレール23の後側は車両後部にて連結されている。
【0019】
エアクリーナケース51の前部はアッパーレール22から上方にはみ出しており、前部のはみ出し部分はライダーシート32(図1参照)の内側の空間に収容されている。エアクリーナケース51の後部はロアレール23から下方にはみ出しており、後部のはみ出し部分はエアクリーナケース51内の吸気室56(図6参照)を拡張させる拡張部65になっている。エアクリーナケース51の拡張部65はスイングアーム25(図1参照)の上方に位置付けられ、スイングアーム25の揺動範囲を避けるように拡張部65が後方に延びている。シートレール21の下側スペースを利用してエアクリーナケース51の容積が拡張されている。
【0020】
エアクリーナケース51の拡張部65の上方には、バッテリケース38及びバッテリ37が配置されている。バッテリケース38はブリッジ19を介して一対のシートレール21に支持されている。バッテリケース38は上面を開口したボックス状に形成されており、バッテリケース38の内側には直方体状のバッテリ37が保持されている。上面視にてエアクリーナ50の一対のインレットチューブ62が湾曲しており、一対のインレットチューブ62の間にバッテリ37が位置付けられている。エアクリーナ50の拡張部65の上側スペースを利用してバッテリ37の配置スペースが確保されている。
【0021】
図4から図6に示すように、エアクリーナ50のエアクリーナケース51は、上下割りのアッパーケース52及びロアケース53と、アッパーケース52の後面に取り付けられたフィルタカバー54とを有している。アッパーケース52及びロアケース53は前方から後方に向かって斜め下方に広がっており、フィルタカバー54はアッパーケース52の後側でドーム状に膨出している。アッパーケース52の後面に形成された開口55を通じて、アッパーケース52及びロアケース53の内部空間とフィルタカバー54の内部空間が連なって、エアクリーナケース51の内側に吸気室56が形成されている。
【0022】
アッパーケース52の後面の開口55にはエアフィルタ57が配置されており、フィルタカバー54によってエアフィルタ57が後方から覆われている。エアフィルタ57の上部が下部よりも車両前方になるように、アッパーケース52の上面に沿ってエアフィルタ57が傾けられている。エアフィルタ57によって吸気室56がダーティサイド58とクリーンサイド59に分けられている。すなわち、エアフィルタ57よりも上流側のフィルタカバー54によってダーティサイド58が形成され、エアフィルタ57よりも下流側のアッパーケース52及びロアケース53によってクリーンサイド59が形成されている。
【0023】
フィルタカバー54の左右側壁61には一対のインレットチューブ62が取り付けられている。一対のインレットチューブ62は、フィルタカバー54の左右側壁61から車両後方に延びており、一対のインレットチューブ62によって車両後方からダーティサイド58に空気が取り込まれる。インレットチューブ62の吸入口63は車両後方に向けられており、インレットチューブ62の排出口64は車幅方向内側に向けられている。一対のインレットチューブ62が一対のシートレール21(図3参照)の内側に位置付けられ、一対のインレットチューブ62の間隔は拡張部65の横幅と略一致している。
【0024】
ロアケース53の前壁81には一対のアウトレットチューブ82が取り付けられている。一対のアウトレットチューブ82はロアケース53の前壁81を貫通して前後に延びており、一対のアウトレットチューブ82によってクリーンサイド59からエンジン40(図1参照)に空気が送り出されている。アウトレットチューブ82の吸入口83は車両後方に向けられており、アウトレットチューブ82の排出口84は車両前方に向けられている。一対のアウトレットチューブ82は一対のメインフレーム12(図3参照)の内側に位置付けられ、一対のアウトレットチューブ82はスロットルボディ48の一対の吸気通路に接続されている。
【0025】
インレットチューブ62及びアウトレットチューブ82はエアクリーナケース51の上側に取り付けられている。上記したように、インレットチューブ62がフィルタカバー54に取り付けられ、アウトレットチューブ82がロアケース53の前壁81に取り付けられ、側面視にてフィルタカバー54とロアケース53の前壁81がエアフィルタ57を介して前後方向で対向している。インレットチューブ62の排出口64とアウトレットチューブ82の吸入口83が略同じ高さに位置しているため、インレットチューブ62からアウトレットチューブ82にダイレクトに空気が流れ易くなる。
【0026】
また、アッパーケース52の前部にはブリーザニップル85が形成されており、ブリーザニップル85にはエンジン40から延びるブリーザホース(不図示)が接続される。ブリーザニップル85の近辺には吸気温センサ86が取り付けられており、吸気温センサ86の検出結果はエンジン40(図1参照)に対する燃料噴射量の制御に用いられる。ロアケース53の前部には二次エアニップル87が形成されており、二次エアニップル87には排気系へ延びる二次エアホース(不図示)が接続されている。ロアケース53の底部にはドレンプラグ88が設けられており、ドレンプラグ88からエアクリーナケース51内の水が排出される。
【0027】
図7に示すように、インレットチューブ62の底壁及び上壁が下向きに反るように湾曲している。インレットチューブ62の底壁が下方に湾曲されて排出口64よりも下方に凹曲部71が形成され、インレットチューブ62の上壁が下方に湾曲されて凸曲部73が形成されている。凹曲部71の最低位置はインレットチューブ62の排出口64(図6参照)の下縁よりも下方に位置しており、凸曲部73の最低位置はインレットチューブ62の排出口64の上縁よりも下方に位置している。インレットチューブ62内の空気は排出口64に向かってスムーズに流れるが、インレットチューブ62の壁面に付着した水は排出口64に向かい難くなっている。
【0028】
凹曲部71にはインレットチューブ62の底壁を貫通した水抜き孔72が形成されており、凹曲部71で捕捉された水が水抜き孔72に集まり易くなっている。水抜き孔72の上方には凸曲部73が位置付けられており、凸曲部73で捕捉された水が凹曲部71に落下して、水抜き孔72に水が集まり易くなっている。水抜き孔72を通じて水が排出されてインレットチューブ62の排水性が向上されている。インレットチューブ62に侵入した水がエアフィルタ57(図6参照)に向かい難くなることで、エアフィルタ57への水の付着が抑えられてエアクリーナ50の空気の流れがスムーズになっている。
【0029】
このとき、凹曲部71及び凸曲部73は吸入口63から排出口64に向かう空気の流れを妨げない程度の曲率で湾曲しており、凹曲部71及び凸曲部73によってインレットチューブ62の吸気抵抗が大幅に増えることがない。インレットチューブ62から水抜き孔72を通じて一部の空気が流れ出しているが、吸入口63から排出口64に向かう空気の流れに過度に影響しない程度に水抜き孔72の内径が小さく形成されている。また、インレットチューブ62の吸入口63が排出口64よりも大きく形成されており、吸入口63からインレットチューブ62に空気が入り込み易くなっている。
【0030】
インレットチューブ62の吸入口63の下縁は水抜き孔72よりも下方に位置している。吸入口63の下縁と水抜き孔72の間には、インレットチューブ62の底壁を上方に突出させて凸部75が形成されている。凸部75は吸入口63の下縁付近で上向きに反るように湾曲しており、インレットチューブ62の吸入口63の開口面積を増やしても、吸入口63付近で凸部75によって水の侵入が妨げられている。インレットチューブ62の吸入口63付近で凸部75に水が捕捉されると、一部の水は凸部75から凹曲部71に向かって移動し、水抜き孔72に水が集められてインレットチューブ62の排水性が向上される。
【0031】
また、本実施例のように、高さ制限がある一対のシートレール21の内側にエアクリーナ50が配置されていると、エアフィルタ57(図6参照)とインレットチューブ62の排出口64の位置を高さ方向でずらすことができない。このため、インレットチューブ62の水抜き孔72がエアフィルタ57の高さ方向の中心よりも下方に位置付けられている。凹曲部71に溜まった水が空気の流れに乗って排出口64(図6参照)側に移動しても、エアフィルタ57の高さ方向の中心よりも高い位置には水が付着し難くい。よって、エアフィルタ57に全体的に水が付着せず、湿ったエアフィルタ57によって空気の流れが妨げられない。
【0032】
図8に示すように、インレットチューブ62の延在方向に直交する断面視にて、インレットチューブ62は、鋭角部分を下方に向けた直角台形の断面形状を有している。直角台形の鋭角部分は車幅方向内側に位置付けられており、この直角台形の鋭角部分によって凹曲部71の底壁が谷形状に形成されている。凹曲部71の谷底には水抜き孔72が形成されており、凹曲部71の谷形状によって水抜き孔72に水が集められてインレットチューブ62の排水性が向上されている。側面視及び断面視のいずれにおいても、凹曲部71の最低位置に水抜き孔72が形成されている。
【0033】
インレットチューブ62の車幅方向内側にはバッテリ37が位置している。上記したように、バッテリ37はボックス状のバッテリケース38によって保持されている。バッテリケース38の外縁から車幅方向外側にフランジ39が広がっており、インレットチューブ62の水抜き孔72の下方にフランジ39が位置している。インレットチューブ62とフランジ39が僅かな隙間を空けて対向し、フランジ39によってインレットチューブ62の水抜き孔72が下側から覆われている。水抜き孔72への侵入経路がフランジ39によって遮られて、水抜き孔72からインレットチューブ62内への水の侵入が抑えられている。
【0034】
図9を参照して、エアクリーナ内の空気及び水の流れについて説明する。図9は本実施例のエアクリーナ内の空気及び水の流れを示す図である。図9(A)はエアクリーナ内の空気及び水の流れを側方から見た図、図9(B)はエアクリーナ内の空気及び水の流れを後方から見た図をそれぞれ示している。
【0035】
図9(A)に示すように、側面視にてエアフィルタ57の上部が下部よりも車両前方になるように傾いている。インレットチューブ62の排出口64がエアフィルタ57の表面中央に対向しており、アウトレットチューブ82の吸入口83がエアフィルタ57の裏面上部に対向している。傾いたエアフィルタ57の表面中央と裏面上部が略同じ高さであるため、エアフィルタ57を挟んでインレットチューブ62の排出口64とアウトレットチューブ82の吸入口83が対向している。インレットチューブ62の吸入口63が広く形成されており、吸入口63から空気が取り込まれ易くなっている。
【0036】
インレットチューブ62の底壁には凹曲部71が形成されており、インレットチューブ62の上壁には凸曲部73が形成されている。凹曲部71及び凸曲部73が緩やかに湾曲しているため、インレットチューブ62の吸入口63に空気が取り込まれても、凹曲部71及び凸曲部73の湾曲形状によって空気の流れが妨げられることがない。よって、インレットチューブ62の吸入口63から排出口64に向かってスムーズに空気が流れている。雨天時等にはインレットチューブ62の吸入口63に空気と共に水が取り込まれるが、凹曲部71及び凸曲部73の湾曲形状によって水が捕捉される。
【0037】
インレットチューブ62の底壁では、凸部75から水抜き孔72までの凹曲部71の上流側が下り坂になっており、水抜き孔72から排出口64までの凹曲部71の下流側が上り坂になっている。凹曲部71の上流側の下り坂に水が付着すると、矢印A1に示すように下り坂から水抜き孔72に向かって下流側(前側)に水が移動する。凹曲部71の下流側の上り坂に水が付着すると、矢印A2に示すように上り坂から水抜き孔72に向かって上流側(後側)に水が移動する。また、インレットチューブ62の吸入口63付近は、矢印A3に示すように凸部75によって水が入り込み難くなっている。
【0038】
インレットチューブ62の上壁では、吸入口63から頂部74までの凸曲部73の上流側が下り坂になっており、頂部74から排出口64までの凸曲部73の下流側が上り坂になっている。凸曲部73の上流側の下り坂に水が付着すると、矢印A4に示すように下り坂から頂部74に向かって下流側(前側)に水が移動する。凸曲部73の下流側の上り坂に水が付着すると、矢印A5に示すように上り坂から頂部74に向かって上流側(後側)に水が移動する。また、凸曲部73の頂部74から凹曲部71に向けて水が流れ落ちて、凹曲部71の水抜き孔72に向かって水が移動する。
【0039】
図9(B)に示すように、インレットチューブ62に直交する断面視にて、インレットチューブ62の底壁が車幅方向外側から車幅方向内側に向けて低くなるように傾斜している。断面視にて凹曲部71がV字の谷形状に形成されており、この谷形状の谷底に水抜き孔72が形成されている。よって、凹曲部71の斜面に水が付着すると、矢印A6に示すように斜面から水抜き孔72に向かって車幅方向内側に水が移動する。矢印A1-A6に示すように、凹曲部71及び凸曲部73によって水抜き孔72に水が集められて、水抜き孔72を通じてインレットチューブ62から水が効果的に排水される。
【0040】
図9(A)に示すように、インレットチューブ62の排出口64の下縁がエアフィルタ57の高さ方向の中心よりも下方に位置している。このため、凹曲部71の下流側の上り坂を水が上って、排出口64からエアフィルタ57に向かって水が排出されても、矢印A7に示すようにエアフィルタ57の高さ方向の中心よりも上側には水が付着し難くなっている。すなわち、インレットチューブ62の排出口64からアウトレットチューブ82の吸入口63に向かう空気の主流Fを避けた位置でエアフィルタ57に水が付着する。よって、湿ったエアフィルタ57によってエアクリーナ50内の空気の主流Fが妨げられることがない。
【0041】
以上、本実施例によれば、インレットチューブ62の底壁及び上壁を下方に湾曲させたことで、インレットチューブ62に侵入した水が吸気室56のエアフィルタ57に向かい難くなる。インレットチューブ内の水が水抜き孔72に集まり易くなって、水抜き孔72を通じてインレットチューブ内から水が排水される。また、インレットチューブ62の湾曲形状によってインレットチューブ62からエアフィルタ57に向かう空気の流れが妨げられることがない。よって、インレットチューブ62の吸入口63の開口面積を増やしても、エアフィルタ57への水の付着が抑えられてエアクリーナ50の空気をスムーズに流すことができる。
【0042】
なお、本実施例では、エンジンとして2気筒エンジンを例示したが、エンジンの種類は特に限定されない。
【0043】
また、本実施例では、エアクリーナが一対のインレットチューブ及び一対のアウトレットチューブを備えているが、インレットチューブ及びアウトレットチューブの本数は限定されない。例えば、エアクリーナが単一のインレットチューブ及び単一のアウトレットチューブを備えていてもよいし、エアクリーナが3本以上のインレットチューブ及び3本以上のアウトレットチューブを備えていてもよい。
【0044】
また、本実施例では、インレットチューブの上壁に凸曲部が形成されているが、少なくともインレットチューブの底壁に凹曲部が形成されていれば、インレットチューブの上壁に凸曲部が形成されていなくてもよい。
【0045】
また、本実施例では、インレットチューブの延在方向に直交する断面視にて、インレットチューブが直角台形状に形成されているが、断面視にてインレットチューブの凹曲部の断面形状が谷形状に形成されていればよい。
【0046】
また、本実施例では、側面視にてインレットチューブの凹曲部の最低位置に水抜き孔が形成されているが、凹曲部であれば水抜き孔が最低位置以外の箇所に形成されていてもよい。
【0047】
また、本実施例では、エアフィルタが傾けられて配置されているが、エアフィルタは傾けられていなくてもよい。例えば、エアフィルタが縦向きに配置されていてもよい。
【0048】
また、本実施例では、エアフィルタの高さ方向の中心よりも下方に水抜き孔が位置しているが、エアフィルタの高さ方向の中心と水抜き孔の高さ方向の位置関係は特に限定されない。
【0049】
また、本実施例では、インレットチューブの吸入口付近に凸部が形成されているが、インレットチューブには凸部が形成されていなくてもよい。
【0050】
また、本実施例では、エアクリーナケースには吸気室を拡張させた拡張部が形成されているが、エアクリーナケースには拡張部が形成されていなくてもよい。エアクリーナケースには吸気室が形成されていればよく、エアクリーナケースの形状は特に限定されない。
【0051】
また、エアクリーナは、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0052】
以上の通り、本実施例のエアクリーナ(50)は、車体フレーム(10)の内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室に配置されたエアフィルタ(57)と、吸気室に空気を取り込むインレットチューブ(62)と、吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブ(82)と、を備え、インレットチューブが前後方向に延び、側面視にてインレットチューブの底壁を下方に湾曲させて前記インレットチューブの排出口よりも下方に凹曲部(71)が形成され、当該凹曲部に水抜き孔(72)が形成されている。この構成によれば、インレットチューブの底壁を下方に湾曲させてインレットチューブの排出口(64)よりも下方に凹曲部を形成したことで、インレットチューブに侵入した水が凹曲部に当たって吸気室のエアフィルタに向かい難くなる。凹曲部によってインレットチューブ内の水が水抜き孔に集まり易くなって、水抜き孔を通じてインレットチューブ内から水を排水することができる。また、インレットチューブの凹曲部によってインレットチューブからエアフィルタに向かう空気の流れが妨げられることがない。よって、インレットチューブの吸入口の開口面積を増やしても、エアフィルタへの水の付着が抑えられてエアクリーナの空気をスムーズに流すことができる。
【0053】
本実施例のエアクリーナにおいて、側面視にてインレットチューブの上壁を下方に湾曲させて凸曲部(73)が形成され、水抜き孔が凸曲部の下方に位置している。この構成によれば、インレットチューブの上壁を下方に湾曲させて凸曲部を形成したことで、インレットチューブに侵入した水が吸気室のエアフィルタに向かい難くなる。凸曲部に付着した水が凹曲部に落下して、水抜き孔に水が集まり易くなって排水性がさらに向上される。
【0054】
本実施例のエアクリーナにおいて、水抜き孔がエアフィルタの高さ方向の中心よりも下方に位置している。この構成によれば、凹曲部に溜まった水が空気の流れに乗って排出口側に移動しても、エアフィルタの高さ方向の中心よりも高い位置には水が付着し難い。よって、エアフィルタに全体的に水が付着せず、湿ったエアフィルタによって空気の流れが妨げられ難くなる。
【0055】
本実施例のエアクリーナにおいて、インレットチューブの吸入口(63)の下縁が水抜き孔よりも下方に位置し、吸入口の下縁と水抜き孔の間にはインレットチューブの底壁を上方に突出させて凸部(75)が形成されている。この構成によれば、インレットチューブの吸入口の開口面積を増やしても、凸部によって吸入口の奥方に水が浸入し難くなる。また、凸部と凹曲部によって水抜き孔に水が集まり易くなって排水性が向上される。
【0056】
本実施例のエアクリーナにおいて、インレットチューブの延在方向に直交する断面視にて、凹曲部が谷形状に形成されており、当該凹曲部の谷底に水抜き孔が形成されている。この構成によれば、凹曲部の谷形状によって水抜き孔に水が集まり易くなってさらに排水性が向上される。
【0057】
本実施例のエアクリーナにおいて、インレットチューブの側方にはバッテリ(37)が位置し、当該バッテリがバッテリケース(38)によって保持されており、バッテリケースの外縁のフランジ(39)によって水抜き孔が下側から覆われている。この構成によれば、フランジによって水抜き孔からインレットチューブ内への水の侵入を防ぐことができる。
【0058】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0059】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0060】
10:車体フレーム
37:バッテリ
38:バッテリケース
39:フランジ
50:エアクリーナ
51:エアクリーナケース
56:吸気室
57:エアフィルタ
62:インレットチューブ
63:インレットチューブの吸入口
64:インレットチューブの排出口
71:凹曲部
72:水抜き孔
73:凸曲部
75:凸部
82:アウトレットチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9