(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072857
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20230518BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20230518BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F02M35/024 521B
F02M35/024 511A
F02M35/16 M
F02M35/024 511C
F02D35/00 360F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185549
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】福井 章仁
(72)【発明者】
【氏名】金子 誠
(57)【要約】
【課題】エアクリーナに設けられた吸気温センサの検出精度を向上させる。
【解決手段】エアクリーナ(50)は車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナには、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室にて吸気温を検出する吸気温センサ(95)と、吸気室に空気を取り込むインレットチューブ(62)と、吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブ(82)と、が設けられている。アウトレットチューブの上流部(91)が吸気室に突き出しており、当該アウトレットチューブの上流部の周壁に貫通孔(92)が形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、
吸気室が形成されたエアクリーナケースと、
前記吸気室にて吸気温を検出する吸気温センサと、
前記吸気室に空気を取り込むインレットチューブと、
前記吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブと、を備え、
前記アウトレットチューブの上流部が前記吸気室に突き出しており、当該アウトレットチューブの上流部の周壁に貫通孔が形成されていることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
上面視にて前記吸気温センサの検出部が前記アウトレットチューブの吸入口よりも下流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
上面視にて前記吸気温センサの検出部が前記貫通孔と前記吸入口の間に位置していることを特徴とする請求項2に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記吸気温センサの検出部が前記貫通孔よりも前記吸入口に近づけられていることを特徴とする請求項3に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記アウトレットチューブには前記吸入口に向かって広がる傘部が形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエアクリーナ。
【請求項6】
前記アウトレットチューブの上流部の車幅方向内側の周壁と車幅方向外側の周壁のうち、前記吸気温センサ側である周壁に単一の前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項7】
前記吸気温センサは前記エアクリーナケースの上壁に取り付けられており、
上面視にて前記吸気温センサは前記アウトレットチューブの側方に位置し、当該吸気温センサの検出部が前記アウトレットチューブよりも上方に位置していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項8】
前記アウトレットチューブが複数のアウトレットチューブであり、
上面視にて隣り合うアウトレットチューブの間に前記吸気温センサが位置し、当該隣り合うアウトレットチューブの貫通孔が対向していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、エンジン後方にエアクリーナが配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のエアクリーナは、エアクリーナケースの後面にインレットチューブが取り付けられ、エアクリーナケースの前面にアウトレットチューブが取り付けられている。インレットチューブからエアクリーナケースに空気が取り込まれ、エアクリーナ内に配置されたフィルタによって空気が濾過される。そして、エアクリーナからアウトレットチューブにクリーンな空気が入り込み、アウトレットチューブを通じてクリーンな空気がスロットルボディに送り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアクリーナはシート下方で車体フレームの内側の狭いスペースに配置されている。このため、エアクリーナに対する吸気温センサの配置箇所も限られている。エアクリーナ内の空気の流れから外れた箇所に吸気温センサが配置されると、吸気温センサによって正確な吸気温を検出できないおそれがあった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、吸気温センサの検出精度を向上させることができるエアクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のエアクリーナは、車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室が形成されたエアクリーナケースと、前記吸気室にて吸気温を検出する吸気温センサと、前記吸気室に空気を取り込むインレットチューブと、前記吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブと、を備え、前記アウトレットチューブの上流部が前記吸気室に突き出しており、当該アウトレットチューブの上流部の周壁に貫通孔が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のエアクリーナによれば、インレットチューブからアウトレットチューブに空気の主流が形成されるが、アウトレットチューブの貫通孔から空気が流れ出して、空気の主流から外れた箇所にも空気の流れが作り出される。空気の主流から外れた箇所に吸気温センサが配置されても、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】
図5のエアクリーナをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図7】
図5のエアクリーナをB-B線に沿って切断した断面斜視図である。
【
図8】
図5のエアクリーナからアッパーケースを外した上面図である。
【
図9】本実施例のエアクリーナ内の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のエアクリーナは車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナのエアクリーナケースには吸気室が形成されており、吸気室の吸気温が吸気温センサによって検出されている。吸気室にはインレットチューブを通じて空気が取り込まれ、吸気室からアウトレットチューブを通じて空気が送り出される。アウトレットチューブの上流部が吸気室に突き出しており、当該アウトレットチューブの上流部の周壁に貫通孔が形成されている。インレットチューブからアウトレットチューブに空気の主流が形成されるが、アウトレットチューブの貫通孔から空気が流れ出して、空気の主流から外れた箇所にも空気の流れが作り出される。空気の主流から外れた箇所に吸気温センサが配置されても、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、パイプ・板金によって形成されるダイヤモンド型の車体フレーム10に、エンジン40や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン40の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン40の前部が支持されている。エンジン40が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン40の上方に位置するタンクレール14になっており、タンクレール14によって燃料タンク31が下方から支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン40の後方に位置するボディフレーム15になっており、ボディフレーム15の下半部にはスイングアーム25が揺動可能に支持されている。ボディフレーム15の上半部にはアッパーレール22及びロアレール23から成るシートレール21が取り付けられている。アッパーレール22の上部には、燃料タンク31の後方においてライダーシート32及びピリオンシート33が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク34が操舵可能に支持されている。フロントフォーク34の下部には前輪35が回転可能に支持されており、前輪35の上部はフロントフェンダ(不図示)に覆われている。スイングアーム25はボディフレーム15から後方に向かって延びている。スイングアーム25の後端には後輪36が回転可能に支持され、後輪36の上方はリアフェンダ(不図示)に覆われている。後輪36にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン40が連結されており、変速機構を介してエンジン40からの動力が後輪36に伝達されている。
【0014】
エンジン40の後方にはエアクリーナ50が配置されている。エンジン40の後方ではメインフレーム12のフレーム幅やシートレール21のレール幅によってエアクリーナの配置スペースが制限され、エンジン40の要求出力を確保するためにエアクリーナ50の容量を確保することが難しい。吸気温センサによってエアクリーナ50内の吸気温が検出されるが、エアクリーナ50の容量やスムーズな空気の流れを満足するように、空気の主流から外れた箇所に吸気温センサが配置されると検出精度が低下する。そこで、本実施例では、エアクリーナ50の空気の主流から外れた箇所にも空気の流れを作り出して吸気温センサの検出精度を向上させている。
【0015】
図2から
図8を参照して、エンジンの周辺構成及びエアクリーナについて説明する。
図2は本実施例のエンジン周辺の左側面図である。
図3は本実施例のエンジン周辺の上面図である。
図4は本実施例のエアクリーナの側面図である。
図5は本実施例のエアクリーナの上面図である。
図6は
図5のエアクリーナをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7は
図5のエアクリーナをB-B線に沿って切断した断面斜視図である。
図8は
図5のエアクリーナからアッパーケースを外した上面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、エンジン40は、2気筒エンジンであり、上下割構造のクランクケース41を有している。クランクケース41の上部にはシリンダ42、シリンダヘッド43、シリンダヘッドカバー44が取り付けられている。クランクケース41の左側面には、マグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー45が取り付けられている。マグネトカバー45の後方には、ドライブスプロケット(不図示)を側方から覆うスプロケットカバー46が取り付けられている。クランクケース41の右側面にはクラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー47が取り付けられている。
【0017】
シリンダヘッド43の後面にはスロットルボディ48が接続され、スロットルボディ48の上流(後側)にはエアクリーナ50が接続されている。エアクリーナ50は、エンジン40の後方で一対のメインフレーム12及び一対のシートレール21の内側に配置されている。上記したように、一対のメインフレーム12の後部は一対のボディフレーム15になっており、この一対のボディフレーム15の内側にエアクリーナ50の前端部が位置付けられている。ボディフレーム15の上半部は後方に向かって斜め下方に傾いており、ボディフレーム15の後方のエアクリーナケース51も斜め下方に傾けられている。
【0018】
ボディフレーム15の上半部の後縁には上側ブラケット16及び下側ブラケット17が形成されている。上側ブラケット16にはシートレール21のアッパーレール22が接続され、下側ブラケット17にはシートレール21のロアレール23が接続されている。アッパーレール22はエアクリーナケース51の上半部の側方を横切って後方に延びており、ロアレール23はエアクリーナケース51の下半部の側方を横切って斜め後方に延びている。アッパーレール22及びロアレール23の前側はブリッジパイプ24を介して連結され、アッパーレール22及びロアレール23の後側は車両後部にて連結されている。
【0019】
エアクリーナケース51の前部はアッパーレール22から上方にはみ出しており、前部のはみ出し部分はライダーシート32(
図1参照)の内側の空間に収容されている。エアクリーナケース51の後部はロアレール23から下方にはみ出しており、後部のはみ出し部分はエアクリーナケース51内の吸気室56(
図6参照)を拡張させる拡張部65になっている。エアクリーナケース51の拡張部65はスイングアーム25(
図1参照)の上方に位置付けられ、スイングアーム25の揺動範囲を避けるように拡張部65が後方に延びている。シートレール21の下側スペースを利用してエアクリーナケース51の容積が拡張されている。
【0020】
エアクリーナケース51の拡張部65の上方には、バッテリケース38及びバッテリ37が配置されている。バッテリケース38はブリッジ19を介して一対のシートレール21に支持されている。バッテリケース38は上面を開口したボックス状に形成されており、バッテリケース38の内側には直方体状のバッテリ37が保持されている。上面視にてエアクリーナ50の一対のインレットチューブ62が湾曲しており、一対のインレットチューブ62の間にバッテリ37が位置付けられている。エアクリーナ50の拡張部65の上側スペースを利用してバッテリ37の配置スペースが確保されている。
【0021】
図4から
図6に示すように、エアクリーナ50のエアクリーナケース51は、上下割りのアッパーケース52及びロアケース53と、アッパーケース52の後面に取り付けられたフィルタカバー54とを有している。アッパーケース52及びロアケース53は前方から後方に向かって斜め下方に広がっており、フィルタカバー54はアッパーケース52の後側でドーム状に膨出している。アッパーケース52の後面に形成された開口55を通じて、アッパーケース52及びロアケース53の内部空間とフィルタカバー54の内部空間が連なって、エアクリーナケース51の内側に吸気室56が形成されている。
【0022】
アッパーケース52の後面の開口55にはエアフィルタ57が配置されており、フィルタカバー54によってエアフィルタ57が後方から覆われている。エアフィルタ57の上部が下部よりも車両前方になるように、アッパーケース52の上面に沿ってエアフィルタ57が傾けられている。エアフィルタ57によって吸気室56がダーティサイド58とクリーンサイド59に分けられている。すなわち、エアフィルタ57よりも上流側のフィルタカバー54によってダーティサイド58が形成され、エアフィルタ57よりも下流側のアッパーケース52及びロアケース53によってクリーンサイド59が形成されている。
【0023】
フィルタカバー54の左右側壁61には一対のインレットチューブ62が取り付けられている。一対のインレットチューブ62は、フィルタカバー54の左右側壁61から車両後方に延びており、一対のインレットチューブ62によって車両後方からダーティサイド58に空気が取り込まれる。インレットチューブ62の吸入口63は車両後方に向けられており、インレットチューブ62の排出口64は車幅方向内側に向けられている。一対のインレットチューブ62が一対のシートレール21(
図3参照)の内側に位置付けられ、一対のインレットチューブ62の間隔は拡張部65の横幅と略一致している。
【0024】
ロアケース53の前壁81には一対のアウトレットチューブ82が取り付けられている。一対のアウトレットチューブ82はロアケース53の前壁81を貫通して前後に延びており、一対のアウトレットチューブ82によってクリーンサイド59からエンジン40(
図1参照)に空気が送り出されている。アウトレットチューブ82の吸入口83は車両後方に向けられており、アウトレットチューブ82の排出口84は車両前方に向けられている。一対のアウトレットチューブ82は一対のメインフレーム12(
図3参照)の内側に位置付けられ、一対のアウトレットチューブ82は一対のスロットルボディ48(
図2参照)に接続されている。
【0025】
インレットチューブ62及びアウトレットチューブ82はエアクリーナケース51の上側に取り付けられている。上記したように、インレットチューブ62がフィルタカバー54に取り付けられ、アウトレットチューブ82がロアケース53の前壁81に取り付けられ、側面視にてフィルタカバー54とロアケース53の前壁81がエアフィルタ57を介して前後方向で対向している。インレットチューブ62の排出口64とアウトレットチューブ82の吸入口83が略同じ高さに位置しているため、インレットチューブ62からアウトレットチューブ82にダイレクトに空気が流れ易くなる。
【0026】
エンジン40の低回転時及び定常走行時には、インレットチューブ62の排出口64からアウトレットチューブ82の吸入口83に向かう空気の主流が形成されている。一対のアウトレットチューブ82の上流部91が吸気室56に突き出しており、上流部91の周壁には貫通孔92が形成されている。エアクリーナケース51内には、上記した空気の主流の他にも、貫通孔92からアウトレットチューブ82の吸入口83に向かう空気の流れが形成されている。アッパーケース52の上壁には、貫通孔92から流れ出た空気の吸気温を検出する吸気温センサ95が取り付けられている。吸気温センサ95の検出結果は燃料噴射量の制御に用いられる。
【0027】
アッパーケース52の上壁はアッパーレール22よりも上方にはみ出している(
図2参照)。アッパーケース52の上壁の一部が窪んでおり、アッパーケース52の窪みに吸気温センサ95が斜め上方を向くように配置されている。吸気温センサ95の基端側はケース外に露出し、吸気温センサ95の先端側の検出部96がケース内に入り込んでいる。アッパーレール22の上面には燃料タンク31用の取付ブラケット18(
図2参照)が設けられおり、取付ブラケット18の下方に吸気温センサ95が位置付けられている。このように、取付ブラケット18の下方スペースを利用してアッパーケース52に吸気温センサ95が配置されている。
【0028】
また、アッパーケース52の前部にはブリーザニップル85が形成されており、ブリーザニップル85にはエンジン40から延びるブリーザホース(不図示)が接続される。ロアケース53の前部には二次エアニップル87が形成されており、二次エアニップル87には排気系へ延びる二次エアホース(不図示)が接続されている。ロアケース53の底部にはドレンプラグ88が設けられており、ドレンプラグ88からエアクリーナケース51内の水が排出される。
【0029】
図7及び
図8に示すように、ロアケース53の前壁81には左右に離間して一対のアウトレットチューブ82が取り付けられている。一対のアウトレットチューブ82の上流部91(後側)はエアフィルタ57に向かって延びており、一対のアウトレットチューブ82の下流部93(前側)はスロットルボディ48(
図3参照)に接続されている。一対のアウトレットチューブ82の長さが異なっており、右側のアウトレットチューブ82よりも左側のアウトレットチューブ82が長く形成されている。一対のアウトレットチューブ82の長さの違いによってエンジン40の出力特性が調整されている。
【0030】
一対のアウトレットチューブ82の吸入口83はエアフィルタ57の中央に向けられている。一対のアウトレットチューブ82には吸入口83に向かって広がる傘部94が形成されており、傘部94によってアウトレットチューブ82の吸入口83が拡大されている。一対のアウトレットチューブ82の長さが異なり、一対のアウトレットチューブ82の傘部94が前後にずれているため、エアフィルタ57の中央で一対の傘部94が干渉することがない。上面視にて一対のアウトレットチューブ82の間には吸気温センサ95が配置されており、一対のアウトレットチューブ82の上流部91の周壁に貫通孔92が形成されている。
【0031】
この場合、アウトレットチューブ82の上流部91の車幅方向内側の周壁と車幅方向外側の周壁のうち、吸気温センサ95側である車幅方向内側の周壁に貫通孔92が形成されている。貫通孔92からの空気の流れが吸気温センサ95側に向けられている。また、上面視にて吸気温センサ95の検出部96がアウトレットチューブ82の吸入口83よりも下流側(前側)かつ貫通孔92よりも上流側(後側)に位置している。すなわち、吸気温センサ95の検出部96がアウトレットチューブ82の吸入口83と貫通孔92の間に位置している。インレットチューブ62からアウトレットチューブ82に向かう空気の主流が吸気温センサ95によって妨げられることがない。
【0032】
エアクリーナケース51内には、インレットチューブ62からアウトレットチューブ82に向かう空気の主流以外にも、アウトレットチューブ82の貫通孔92から吸入口83に向かう空気の流れが作られる。この貫通孔92から吸入口83に向かう吸気の流れの途中に、吸気温センサ95の検出部96が位置付けられて吸気温センサ95の検出精度が向上されている。吸気温センサ95の検出部96が貫通孔92よりも吸入口83に近づけられている。上面視にて貫通孔92から吸入口83に向かうほど空気が車幅方向に拡散するので、吸入口83に近づけられるにつれて吸気温センサ95のレイアウト自由度が向上される。
【0033】
また、吸入口83付近には傘部94が形成されており、吸気温センサ95の検出部96が傘部94に近づけられている。貫通孔92から吸入口83に向かう空気の一部は傘部94によって滞留する。特に、一対のアウトレットチューブ82の傘部94同士が近づけられており、傘部94同士が近づけられた箇所では空気の滞留が起こり易くなっている。吸気温センサ95の検出部96が一対のアウトレットチューブ82の傘部94の間に向けられている。吸気温センサ95の検出部96によって滞留した空気の吸気温が検出されて、吸気温センサ95の検出精度が向上されている。
【0034】
一対のアウトレットチューブ82の貫通孔92は対向しており、貫通孔92からの空気の流れを吸気温センサ95の検出部96に向け易くなっている。吸気温センサ95はアッパーケース52の上壁に取り付けられており、吸気温センサ95の検出部96がアウトレットチューブ82よりも上方に位置している。エアクリーナケース51の上部に吸気温センサ95が設けられるため、車輪に巻き上げられた泥や水等から吸気温センサ95が保護される。また、一対のアウトレットチューブ82の間の広い空間を利用して、貫通孔92から吸入口83に向かう空気の流れを吸気温センサ95の検出部96に検出させ易くなる。
【0035】
図9を参照して、エアクリーナの空気の流れについて説明する。
図9は本実施例のエアクリーナ内の空気の流れを示す図である。
【0036】
図9に示すように、上面視にて一対のインレットチューブ62の排出口64と一対のアウトレットチューブ82の吸入口83の間に空気の主流F1が形成されている。吸気温センサ95の検出部96は一対のアウトレットチューブ82の吸入口83よりも下流側(前側)に配置されており、吸気温センサ95の検出部96によって空気の主流F1が妨げられることがない。空気の主流F1が一対のアウトレットチューブ82に入り込むと、一対のアウトレットチューブ82の貫通孔92から吸入口83に向けて空気が流れている。このように、エアクリーナ50には空気の主流F1から外れた箇所にも空気の流れF2が形成されている。
【0037】
一対のアウトレットチューブ82の間に吸気温センサ95が配置され、上面視にて一対のアウトレットチューブ82の貫通孔92と傘部94の間に吸気温センサ95の検出部96が位置付けられている。空気の流れF2の一部は一対のアウトレットチューブ82の傘部94に遮られて、一対のアウトレットチューブ82の傘部94付近で滞留している。吸気温センサ95の検出部96が一対のアウトレットチューブ82の傘部94側に向けられており、一対の傘部94付近で滞留した空気の吸気温が吸気温センサ95の検出部96によって検出されて吸気温センサ95の検出精度が向上されている。
【0038】
以上、本実施例によれば、インレットチューブ62からアウトレットチューブ82に空気の主流が形成されるが、アウトレットチューブ82の貫通孔92から空気が流れ出して、空気の主流から外れた箇所にも空気の流れが作り出される。空気の主流から外れた箇所に吸気温センサ95が配置されても、吸気温センサ95の検出精度を向上させることができる。
【0039】
なお、本実施例では、エンジンとして2気筒エンジンを例示したが、エンジンの種類は特に限定されない。
【0040】
また、本実施例では、エアクリーナが一対のインレットチューブ及び一対のアウトレットチューブを備えているが、インレットチューブ及びアウトレットチューブの本数は限定されない。例えば、エアクリーナが単一のインレットチューブ及び単一のアウトレットチューブを備えていてもよいし、エアクリーナが3本以上のインレットチューブ及び3本以上のアウトレットチューブを備えていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、エアフィルタが傾けられて配置されているが、エアフィルタは傾けられていなくてもよい。例えば、エアフィルタが縦向きに配置されていてもよい。
【0042】
また、本実施例では、上面視にて吸気温センサの検出部が貫通孔と吸入口の間に位置しているが、吸気温センサの検出部は空気の主流を強く妨げない箇所に位置していればよい。例えば、空気の主流を強く妨げない箇所であれば、吸気温センサの検出部がアウトレットチューブの吸入口よりも上流側に位置していてもよい。また、吸気温センサの検出部が貫通孔よりも下流側に位置していてもよい。
【0043】
また、本実施例では、アウトレットチューブに傘部が形成されているが、吸気室から空気を送り出し可能であればアウトレットチューブの形状は特に限定されない。例えば、アウトレットチューブに傘部が形成されていなくてもよい。
【0044】
また、本実施例では、アウトレットチューブの車幅方向内側の周壁に貫通孔が形成されているが、吸気温センサがアウトレットチューブよりも車幅方向外側にあるときには、アウトレットチューブの車幅方向内側の周壁に貫通孔が形成されてもよい。
【0045】
また、本実施例では、エアクリーナケースの上壁に吸気温センサが取り付けられているが、エアクリーナケースの底壁に吸気温センサが取り付けられていてもよい。
【0046】
また、本実施例では、一対のアウトレットチューブの貫通孔が対向しているが、一対のアウトレットチューブの貫通孔が対向していなくてもよい。
【0047】
また、本実施例では、一対のアウトレットチューブが異なる長さに形成されているが、一対のアウトレットチューブが同じ長さに形成されていてもよい。
【0048】
また、エアクリーナは、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0049】
以上の通り、本実施例のエアクリーナ(50)は、車体フレーム(10)の内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室にて吸気温を検出する吸気温センサ(95)と、吸気室に空気を取り込むインレットチューブ(62)と、吸気室から空気を送り出すアウトレットチューブ(82)と、を備え、アウトレットチューブの上流部(91)が吸気室に突き出しており、当該アウトレットチューブの上流部の周壁に貫通孔(92)が形成されている。この構成によれば、インレットチューブからアウトレットチューブに空気の主流が形成されるが、アウトレットチューブの貫通孔から空気が流れ出して、空気の主流から外れた箇所にも空気の流れが作り出される。空気の主流から外れた箇所に吸気温センサが配置されても、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【0050】
本実施例のエアクリーナにおいて、上面視にて吸気温センサの検出部(96)がアウトレットチューブの吸入口(83)よりも下流側に位置している。この構成によれば、吸気温センサによって空気の主流を遮ることなく、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【0051】
本実施例のエアクリーナにおいて、上面視にて吸気温センサの検出部が貫通孔と吸入口の間に位置している。この構成によれば、貫通孔から吸入口に向かう空気の流れが作り出され、この吸気の流れの途中に吸気温センサの検出部が位置付けられて検出精度が向上される。
【0052】
本実施例のエアクリーナにおいて、吸気温センサの検出部が貫通孔よりも吸入口に近づけられている。この構成によれば、上面視にて貫通孔から吸入口に向かうほど空気が車幅方向に拡散するので、吸入口に近づくにつれて吸気温センサのレイアウト自由度が向上される。
【0053】
本実施例のエアクリーナにおいて、アウトレットチューブには吸入口に向かって広がる傘部(94)が形成されている。この構成によれば、傘部によって貫通孔から流れ出した空気が滞留し易くなり、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【0054】
本実施例のエアクリーナにおいて、アウトレットチューブの上流部の車幅方向内側の周壁と車幅方向外側の周壁のうち、吸気温センサ側である周壁に単一の貫通孔が形成されている。この構成によれば、貫通孔からの空気の流れを吸気温センサの検出部に向け易くなり、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【0055】
本実施例のエアクリーナにおいて、吸気温センサはエアクリーナケースの上壁に取り付けられており、上面視にて吸気温センサはアウトレットチューブの側方に位置し、当該吸気温センサの検出部がアウトレットチューブよりも上方に位置している。この構成によれば、エアクリーナケースの上部に吸気温センサが設けられるため、車輪に巻き上げられた泥や水等から吸気温センサが保護される。アウトレットチューブの側方の広い空間を利用して、貫通孔からの空気の流れを吸気温センサの検出部に検出させ易くなる。
【0056】
本実施例のエアクリーナにおいて、アウトレットチューブが複数のアウトレットチューブであり、上面視にて隣り合うアウトレットチューブの間に吸気温センサが位置し、当該隣り合うアウトレットチューブの貫通孔が対向している。この構成によれば、隣り合うアウトレットチューブの貫通孔からの空気の流れを吸気温センサに向け易くなり、吸気温センサの検出精度を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0058】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。