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特開2023-73017着色剤樹脂組成物を用いた固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073017
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】着色剤樹脂組成物を用いた固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230518BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G02B5/22
G03F7/004 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185812
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA09
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA29
2H225AC33
2H225AC63
2H225AD06
2H225AM32P
2H225AM92P
2H225AN39P
2H225AN92P
2H225AN94P
2H225BA12P
2H225CA15
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】良好なパターン形成が可能で、ポストベークした場合でも熱ダレ等を伴って変形したり、パターンプロファイルが悪化したりしない固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】波長700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤と、ポリマーと、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、溶媒とを含む着色剤含有感光性組成物を、基板上に直接または他の層を介して塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を、所定のホールパターンを有するマスクを介して露光する工程と、露光された塗布膜をアルカリ現像液で現像処理する工程とを備え、パターンの90%の高さにおけるパターンの幅をTとし、パターンの30%の高さにおけるパターンの幅をSとしたとき、比T/Sが0.6以上であって、比S/Zが1以上1.3以下であることを特徴とする、固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤と、ポリマーと、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、溶媒とを含む着色剤含有感光性組成物を、基板上に直接または他の層を介して塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を、所定のホールパターンを有するマスクを介して露光する工程と、
露光された前記塗布膜をアルカリ現像液で現像処理する工程とを備え、
現像処理により得られたパターンの基板の垂直方向における高さをhとし、
前記基板の垂直方向の、前記パターンの90%の高さにおける前記パターンの幅をTとし、前記基板の垂直方向における前記パターンの30%の高さにおける前記パターンの幅をSとしたとき、比T/Sが0.6以上であって、比S/Zが1以上1.3以下であることを特徴とする、固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記着色剤含有感光性組成物の23℃における現像液に対する溶解速度が、100nm/sec以上であること特徴とする、請求項1に記載の固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーの重量平均分子量は、8,000以上20,000以下であって、酸価が、80KOHmg/mg以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記波長700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤は、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、オキソノール色素であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤樹脂組成物を用いた固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色の光を検出することができる(例えば、特許文献1を参照)。また、固体撮像素子の他の例として、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備えたものがある。カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出することができる(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
近年、デジタルカメラなどに使用されているCMOSイメージセンサーの固体撮像素子に赤外光カットフィルターが適用されている。固体撮像素子における赤外光カットフィルターは、赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度を高め、固体撮像素子において取り込まれるカラー画像においてノイズが低減され、色再現性が良好となる。また、赤外光を積極的に利用する固体撮像素子も期待されている。赤外光を利用した固体撮像素子には暗視カメラなどがあるが、カラー画像との組み合わせにおいては赤外光透過フィルターと赤外光カットフィルターが搭載されたものとなる。その場合は、赤外光の取り込みと除去を光電変換素子ごとに行うため、赤外光を透過させる画素に対してだけ開口するようなホールパターンの赤外光カットフィルターが必要となる。
【0004】
前記赤外光カットフィルターは、ガラスに赤外光を吸収する無機物を添加することで形成される赤外光カットフィルター、ガラス上に赤外光を吸収する物質を塗布することで形成される赤外光カットフィルター、または、着色剤として赤外光吸収色素を含む樹脂組成物から成る赤外光カットフィルターがある。加工性や厚みの観点から、ガラスからなるカットフィルターよりも樹脂組成物から成る赤外光カットフィルターが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-060176号公報
【特許文献2】特開2018-060910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物に含有される着色剤は、有機色素を顔料化し、樹脂組成物中に分散させる場合と、有機色素を染料として樹脂組成物中に溶解させる場合がある。有機色素を顔料化して分散させた樹脂組成物においては、顔料粒子の微分散化および分散状態の保持が重要であるが、顔料の再凝集化による粗大異物の増加や粘度の増加といった課題がある。一方、染料として有機色素を溶解させた樹脂組成物においては、分散過程を省略することが可能である。また、フィルターを形成した場合の表面のざらつきや、粒子による凹凸の影響が少ない。
【0007】
しかし、染料として有機色素を溶解させた樹脂組成物を用いて赤外光を透過させる部分が設けられたフィルターを形成する場合において、基材との接地面積が増加する方向にパターンが変形する「裾引き」や、ポストベークを行なった際にパターンの角が丸まる「熱ダレ」が発生してしまい、パターン断面のプロファイルが矩形な形状を得られない問題がある。裾引きや熱ダレは微小なパターンの変形であり、従来のような大きな画素では問題とならないが、微細画素では画素間距離が短くなるために膜厚減や混色を伴って赤外光カットフィルターの性能を十分に発揮できない。特に高精細化が求められる固体撮像素子用の赤外線カットフィルターにおいては、画素のパターンプロファイルは重要な要素の一つである。
【0008】
一方、ポストベークの際のパターン変形の問題は、上記の有機色素を顔料化して分散させた樹脂組成物においては、硬化膜内に熱安定性のある顔料が分散していることで光硬化膜全体の耐熱性が高く、また「フィラー効果」によって形状が崩れにくいパターンが得られ、上記のようなパターン変形の問題は生じにくい。
【0009】
本発明は、良好なパターン形成が可能で、ポストベークした場合でも熱ダレ等を伴って変形したり、パターンプロファイルが悪化したりしない固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法は、波長700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤と、ポリマーと、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、溶媒とを含む着色剤含有感光性組成物を、基板上に直接または他の層を介して塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を、所定のホールパターンを有するマスクを介して露光する工程と、露光された塗布膜をアルカリ現像液で現像処理する工程とを備え、現像処理により得られたパターンの基板の垂直方向における高さをhとし、基板の垂直方向の、パターンの90%の高さにおけるパターンの幅をTとし、基板の垂直方向におけるパターンの30%の高さにおけるパターンの幅をSとしたとき、比T/Sが0.6以上であって、比S/Zが1以上1.3以下であることを特徴とする。
【0011】
上記固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法において、着色剤含有樹脂組成物の23℃における現像液に対する溶解速度が、100nm/sec以上であること特徴とする。
【0012】
上記固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法において、ポリマーの重量平均分子量は、8,000以上20,000以下であって、酸価が、80KOHmg/mg以上であることを特徴とする。
【0013】
上記固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法において、波長700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤は、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、オキソノール色素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好なパターン形成が可能で、ポストベークした場合でも熱ダレ等を伴って変形したり、パターンプロファイルが悪化したりしない固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る赤外線カットフィルターの部分平面図。
図2図1のA―A’線での部分断面図。
図3】走査型電子顕微鏡にて撮影した図1のA―A’線での部分断面。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光の中で特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る赤外線カットフィルターの部分平面図であり、図2は、図1のA―A’線での部分断面図であり、図3は、走査型電子顕微鏡にて撮影した図1のA―A’線での部分断面である。本実施形態に係る赤外線カットフィルターは、基板1上に所定のホールパターンを有するマスクを用いて、画素パターン2を備える着色剤含有樹脂組成物が積層される。本実施形態の固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法は、後述の赤外光を吸収する着色剤として溶解させた樹脂組成物を、基板の上に直接または他の層を介して塗布し、その後プレベークして塗布膜を形成する工程(塗膜形成工程)と、形成された塗布膜上に特定のパターンを露光する工程(露光工程)と、露光された前記塗布膜をアルカリ現像液で現像処理する工程(現像工程)と、現像処理で得られたパターンが、六角形上のパターンであることで構成したものである。これらの工程を経ることで、ポストベークした場合でもパターンプロファイルの良好な画素パターンが設けられてなる固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製することができる。
【0018】
基板1は、例えば、シリコンなどの光電変換素子基板、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等を用いることができる。また、基板1上には、必要により反射防止膜や、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは基板表面の平坦化の為に、下塗り層を設けてもよい。
【0019】
露光工程は、塗膜形成工程において形成された塗布膜に、マスク等を介して特定のパターンを露光する。例えばマスクパターンとしては、未露光部が四角形となるホールパターンのマスクが用いられる。ここでホールパターンとは、コンタクトホールなどのホールを有するパターンなど孤立の抜きパターンである。露光の際に使用される放射線としては、特にg線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。
【0020】
現像工程は、露光された塗布膜をアルカリ現像液で現像処理する工程である。アルカリ現像液は、塗布膜の未露光部(放射線非照射部)を溶解可能であり、かつ、露光部(放射線照射部)を溶解しないものであればいかなるものも用いることができる。アルカリ性現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ現像液、またはテトラヒドロキシアンモニウム等の有機アルカリ現像液を使用することができる。また、塗布膜への濡れ性を高めるために、界面活性剤を現像液に含むことも好ましく行われる。アルカリ現像液濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。アルカリ現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。現像時間は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗膜の厚さなどによって異なるが、通常10~600秒間、好ましくは30~300秒間、より好ましくは60~150秒間である。現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレ-法、シャワー現像法などのいずれでもよい。
【0021】
図2に示すように現像工程で得られた画素パターン2は、A-A´断面において六角形状を有する。ここで、パターン断面の評価方法について説明する。現像後の画素パターン2の断面を走査型電子顕微鏡にて一定倍率で撮影し、画像を取得する。取得した画像において、基板1に対して垂直方向の画素パターン2の高さhと、画素パターン2の高さの90%(0.9×h)の高さにおける幅Tと、画素パターン2の高さの30%(0.3×h)の高さにおける幅Sを計測しT/Sを算出する。次いで、幅Sと画素パターン2の高さの0%(0×h)の高さにおける幅Zを計測しS/Zを算出する。T/S比が0.6以上であって、S/Z比が1.1以上1.3以下であることにより、予め六角形の形状となり、ポストベーク処理した場合に熱ダレや裾引きが発生しても断面形状の矩形性を保つことができる。しかしT/S比が0.6未満の場合、ポストベーク処理後の断面形状の矩形性を得ることができない。またS/Z比が1.1未満の場合においても、ポストベーク処理によって裾引きが発生し、断面形状の矩形性を得ることができない。S/Z比が1.3超の場合、現像が進み基板1から画素パターンが剥がれる可能性がある。
【0022】
ここで、着色剤含有樹脂組成物の23℃における現像液に対する溶解速度は、100nm/sec以上であることが好ましい。溶解速度が100nm/sec未満であると六角形状のパターンが得られず、ポストベーク処理によって裾引きが大きく発生し、断面の矩形性を保つことができない。
【0023】
溶解速度の測定方法を示す。着色剤含有樹脂組成物をシリコンウエハー上に塗布する。次に90℃で2分間プレベークし、膜厚5.0μm±0.25μmのプレベーク膜を形成する。プレベーク膜を23±1℃のアルカリ現像液に30sec浸漬する。浸漬前後の膜厚を測定することにより、「(浸漬前膜厚-浸漬後膜厚)/浸漬時間」として溶解速度を算出することができる。また、溶解速度の測定には公知の装置を使用することができ、例えば、溶解速度モニター装置を用いることができる。
【0024】
現像工程の後には、ポストベーク処理を設けることができる。ここでの加熱温度は、100~300℃が好ましく、120~250℃が好ましい。また、加熱時間としては3分から15分程度が好ましい。
【0025】
本実施形態に係る固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法は、厚さが2μm以下、好ましくは1μm以下であり、画素サイズが5μm以下、好ましくは3μm以下である画素パターンを形成する場合に特に好適である。
【0026】
本実施形態に係る固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法においては、700nmから1000nmの波長領域に吸収極大を有する着色剤と、ポリマーと光重合開始剤と、光重合性モノマーと、溶媒とを含む着色剤含有樹脂組成物が用いられる。この着色剤含有樹脂組成物は、必要に応じ添加物など他の成分を用いて構成することができる。
【0027】
[着色剤]
樹脂組成物に含有される着色剤は、波長700nmから1000nmの間に吸収極大を有するものであれば、限定されるものではないが、例えば、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、オキソノール色素、ピロメテン色素が挙げられる。
【0028】
[ポリマー]
樹脂組成物に含有されるポリマーとしては、たとえば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー硬化性樹脂、または、これらの樹脂を2つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、または、これらの樹脂を1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。中でも透明性の良好なアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、または、これらの樹脂を1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0031】
活性エネルギー硬化性樹脂としては、たとえば、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基などの反応性置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基およびエポキシ基などの反応性置換基を有するアクリル化合物もしくはメタクリル化合物または桂皮酸を反応させて、先の線状高分子にアクリロイル基もしくはメタクリロイル基またはスチリル基光架橋性基を導入してなるものを使用することができる。また、スチレン-無水マレイン酸共重合体およびα-オレフィン-無水マレイン酸共重合体などの酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル化合物またはメタクリル化合物によってハーフエステル化してなるものを使用してもよい。
【0032】
ポリマーは数種類のモノマーやオリゴマーを共重合させて得られる。ポリマーを生成するモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートなどの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0033】
ポリマーは、アルカリ現像液に溶解するように酸性基を有するモノマーを共重合させたものであることが望ましい。酸性基としてはカルボキシル基が主に用いられ、カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などであってもよい。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2-メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2‐メタクリロイロキシエチル)などであってもよい。不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどであってもよい。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ポリマーは、現像液に対して溶解性が良好なものでないと、少量で微細なパターンを作製することはできない。そこでポリマーの酸価が80KOHmg/mg以上であるものが好ましい。酸価がこの値より小さいと、現像液への溶解性が低下するため、現像工程に時間を要し、生産性に欠けることとなる。尚、ここでいう酸価は、ポリマー1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、通常は水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた滴定により求めることができる。
【0035】
ポリマーの重量平均分子量は8,000ないし20,000の範囲内にあることが好ましい。重量平均分子量が8,000未満であると、感光性組成物中に低分子量の化合物のみになってしまい、露光部の硬化度が小さく良好なパターン形状が得られない。20,000を超えると現像液への溶解性が劣り、やはり良好なパターンが得られない。
【0036】
[光重合開始剤]
樹脂組成物に含有される光重合開始剤としては、たとえば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、および、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン系光重合、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2、4-ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-クロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシーナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(ピペロニル)-6-トリアジン、および2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0037】
[光重合性モノマー]
樹脂組成物に含有される光重合性モノマーとしては、3官能以上の官能基数を持つアクリルモノマーを主成分としているものを使用する。たとえば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=2)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=2)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性シトリアクリレート、または、これらの化合物を1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。より好ましくは3官能アクリルモノマー、またはそれに親水性を付与し現像性を高める為にEO(エチレンオキサイド)やPO(プロピレンオキサイド)等を組み入れたアクリルモノマーを用いることである。
【0038】
[溶剤]
樹脂組成物に含有される溶剤としては、たとえば、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤、または、これらの化合物を1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0039】
[他の成分]
また、着色剤含有樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を入れることも行われる。添加剤としては、例えば充填剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を加えることかできる。これらの材料は複数用いられてもよい。
【0040】
本実施形態に係る固体撮像素子用赤外線カットフィルターの製造方法により得られた固体撮像素子用赤外線カットフィルターは、CMOSの固体撮像素子に好適であり、特に100万画素を超えるような高解像度のCMOS素子等に好適である。
【実施例0041】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0042】
(実施例1)
固体撮像素子用赤外線カットフィルター作製に用いる着色剤含有樹脂組成物1を調合した。
【0043】
<着色剤含有樹脂組成物1>
下記組成を混合して溶解し、着色剤含有感光組成物1を調合した。
・着色剤:FDN03(山田化学製) 2.5質部
・アルカリ可溶性ポリマー 14.7質量部
(重量平均分子量Mw=10,000、酸価100)
・光重合性モノマー:M-350(東亞合成製) 10.0質量部
・光開始剤:OXE-02(BASF製) 0.8質量部
・溶剤:PGMAC 72.0質量部
【0044】
<固体撮像素子用赤外線カットフィルター作製>
平坦化層を塗布したシリコンウエハー基板に上記組成で調合した着色剤含有樹脂組成物液1を、スピンコーターにて500rpmで塗布した後、90℃、2分間ホットプレートで加熱しプレベークを実施した。その後、未露光部が2.0μmの四角形となるホールパターンのマスクを用いて、露光機(キヤノン製:FPA-5510iZ)にて露光量2000J/mにて露光を実施した。その後、アルカリ現像液(ADEKA製:OD-260)にて現像を実施し、水洗、乾燥を行い、2.0μm角のホールパターンを得た。次にホットプレートを用いて上記ウエハーを230℃、5分間加熱することによってポストベークした。
【0045】
<着色剤含有感光組成物の溶解速度の測定>
シリコンウエハー基板に上記組成で調合した着色剤含有樹脂組成物液を、スピンコーターを用いて、プレベーク後の膜厚が5.0±0.25μmになるように回転数を調整して塗布した。次に90℃、2分間ホットプレートで加熱しプレベークを実施した。その後23±1℃のアルカリ現像液(ADEKA製:OD-260)で30sec間現像した。現像前後の膜厚差を現像時間で除することにより、溶解速度を算出した。着色材含有感光性組成物1の溶解速度は100nm/secであった。
【0046】
<パターン断面矩形性評価>
現像後に得られた画素パターン部分の断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー製:s-4800)にて30000倍で観察し、画像を撮影した。取得した画像の断面形状において、基板に対して垂直方向の画素パターンの高さh、画素パターンの高さの90%(0.9×h)の高さにおける幅T、画素パターンの高さの30%(0.3×h)の高さにおける幅Sを計測しT/Sを算出した。次いで、幅S幅Zを計測しS/Zを算出した。
【0047】
(実施例2)
着色剤含有感光組成物1の着色剤をD4773(東京化成工業製)へ変更した以外は実施例1と同様に固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製し、パターン断面矩形性評価を実施した。
【0048】
(実施例3)
着色剤含有感光組成物1のアルカリ可溶性ポリマーを重量平均分子量Mw=10,000、酸価120へ変更した以外は実施例1と同様に固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製し、着色剤含有感光組成物の溶解速度の測定およびパターン断面矩形性評価を実施した。実施例3の溶解速度は150nm/secであった。
【0049】
(比較例1)
着色剤含有感光組成物1のアルカリ可溶性ポリマーを重量平均分子量Mw=10,000、酸価65へ変更した以外は実施例1と同様に固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製し、着色剤含有感光組成物の溶解速度の測定およびパターン断面矩形性評価を実施した。比較例1の溶解速度は40nm/secであった。
【0050】
(比較例2)
着色剤含有感光組成物1のアルカリ可溶性ポリマーを重量平均分子量Mw=7,000、酸価100へ変更した以外は実施例1と同様に固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製し、着色剤含有感光組成物の溶解速度の測定およびパターン断面矩形性評価を実施した。比較例2の溶解速度は40nm/secであった。
【0051】
(比較例3)
着色剤含有感光組成物1のアルカリ可溶性ポリマーを重量平均分子量Mw=30,000、酸価100へ変更した以外は実施例1と同様に固体撮像素子用赤外線カットフィルターを作製し、着色剤含有感光組成物の溶解速度の測定およびパターン断面矩形性評価を実施した。比較例3の溶解速度は40nm/secであった。
【0052】
表1にアルカリ可溶性ポリマーおよび着色剤含有樹脂組成物特性と現像後の断面矩形性の結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表2にポストベーク後のパターンプロファイル観察結果を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
上記表1、2に示すように、実施例1~3の固体撮像素子用赤外線カットフィルターでは、現像後の断面においてT/S比が0.6以上、S/Z比が1.1以上1.3以下の矩形性を有し、ポストベーク後のパターンプロファイルを確認しても、良好な断面プロファイルが得られた。一方、比較例1~3の固体撮像素子用赤外線カットフィルターでは、現像後の断面におけるT/S比が0.6以上であり、S/Z比が1.1以上1.3以下の条件を満たさない為、ポストベークによる熱ダレ等に伴うパターンプロファイルの変形を充分に抑制することは困難であった。
【符号の説明】
【0057】
1…基板
2…画素パターン
3…ホールパターン
図1
図2
図3