(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073522
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20230518BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20230518BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060320
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2020036212の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2018165795
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(57)【要約】
【課題】反射波の到来方向を測定する精度を向上させる電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、送信波に基づく送信信号及び送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、第2サンプルに基づいて反射波の到来方向を推定する制御部を備える。制御部は、第1サンプルを、ビート信号のうち、第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとし、第2サンプルを、第1サンプルのうち、第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定する制御部を備える電子機器であって、
前記制御部は、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとし、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとする、電子機器。
【請求項2】
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定するステップと、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとするステップと、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとするステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項3】
コンピュータに、
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定するステップと、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとするステップと、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとするステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年9月5日に日本国に特許出願された特願2018-165795の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と対象物との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの対象物に反射した反射波を受信することで、対象物との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0004】
また、送信した電波が反射された反射波を受信することで、反射波が到来する方向を測定(推定)する技術も、種々提案されている。例えば特許文献1及び特許文献2は、到来波方向の推定を精度良く行い得るレーダの技術を提案している。また、例えば特許文献3及び特許文献4は、到来波方向の推定を行う際のデータ又は演算量を低減し得るレーダの技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-162688号公報
【特許文献2】特開2011-137650号公報
【特許文献3】特開2009-162689号公報
【特許文献4】特開2012-163403号公報
【発明の概要】
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定する制御部を備える。
前記制御部は、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとし、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとする。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定するステップと、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとするステップと、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとするステップと、
を含む。
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御プログラムは、コンピュータに、
送信波に基づく送信信号及び前記送信波が反射された反射波に基づく受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第1サンプルを生成し、前記第1サンプルに第2のフーリエ変換処理を行った結果に基づいて第2サンプルを生成し、前記第2サンプルに基づいて前記反射波の到来方向を推定するステップと、
前記第1サンプルを、前記ビート信号のうち、前記第1のフーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとするステップと、
前記第2サンプルを、前記第1サンプルのうち、前記第2の高速フーリエ変換処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとするステップと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
【
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】一実施形態において設定される閾値を説明する図である。
【
図7】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】一実施形態において設定される閾値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述のように反射波の到来方向を測定する技術において、測定の精度を向上させることが望ましい。本開示の目的は、反射波の到来方向を測定する精度を向上させる電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することにある。一実施形態によれば、反射波の到来方向を測定する精度を向上させる電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の対象物の方向を測定(推定)することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、移動体の例として乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業車、消防車、救急車、警察車両、除雪車、道路を清掃する清掃車、ドローン、及び歩行者など、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。
【0013】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図3)などの他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、複数の送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の対象物(例えば
図1に示す対象物200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該対象物によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該対象物を検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の対象物200を検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の対象物200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、対象物200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、対象物200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。本開示において、センサ5が検出する対象物は、無生物の他に、人又は動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する対象物は、レーダ技術により検知される、人、物及び動物などを含む物標を含む。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれか、若しくは双方でよい。移動体100の内部とは、例えば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、又は車内の空間内などがある。移動体100の外部とは、例えば、移動体100のボディの表面、バンパーの表面、又はヘッドライトの表面などがある。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)以外の周波数帯の電波を送信するとしてもよい。
【0023】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。少なくとも1以上のECUにより構成されるとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A~30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、
図2に示すように、距離FFT処理部12、速度FFT処理部14、到来角推定部16、及び判定処理部18を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、送信アンテナ25Aと送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。また、送信部20における他の機能部についても、例えば位相制御部23A及び23Bのように、同種の複数の機能部を特に区別しない場合、A及びBのような記号を省略することにより、当該機能部を総称することがある。
【0028】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0033】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0034】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0035】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2など、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。
【0043】
シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。上述のように、センサ5は、例えば送信アンテナ25A及び送信アンテナ25Bのように、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体において容易に開けられない構造の筐体に収められているとしてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24A及び増幅器24Bが1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25A及び送信アンテナ25Bのように2つの送信アンテナ25を備え、この2つの送信アンテナ25によって送信波Tを送信する。したがって、
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ2つずつ含んで構成される。具体的には、電子機器1は、位相制御部23A及び位相制御部23Bのように2つの位相制御部23を含んで構成される。また、
図2に示す電子機器1は、増幅器24A及び増幅器24Bのように2つの増幅器24を含んで構成される。
【0049】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25を備えているが、一実施形態に係る電子機器1が備える送信アンテナ25の数は、例えば3つ以上のように、任意の複数としてよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ25と同じ数の増幅器24を備えてよい。また、この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ25と同じ数の位相制御部23を備えてよい。
【0050】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の対象物200に反射したものである。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0051】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の対象物200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。
【0052】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのような部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0053】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0054】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0055】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0056】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部12に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部12に供給されてよい。
【0057】
距離FFT処理部12は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、対象物200との間の距離を推定する。距離FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。距離FFT処理部12及び速度FFT処理部14は、離散フーリエ変換、又はフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0058】
距離FFT処理部12は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「第1のFFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部12は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部12は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部12は、第1のFFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の対象物200があると判断してもよい。距離FFT処理部12は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の対象物との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、第1のFFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われた結果は、速度FFT処理部14に供給されてよい。
【0059】
速度FFT処理部14は、距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、対象物200との相対速度を推定する。速度FFT処理部14は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部14は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0060】
速度FFT処理部14は、距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「第2のFFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部14は、距離FFT処理部12から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部14は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の対象物との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に第1のFFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して第2のFFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、第2のFFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の対象物200との相対速度を測定(推定)することができる。距離のFFT処理を行った結果に対して速度のFFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部14によって第2のFFT処理が行われた結果は、到来角推定部16に供給されてよい。
【0061】
到来角推定部16は、速度FFT処理部14によってFFT処理が行われた結果に基づいて、所定の対象物200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の対象物200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、電子機器1は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、第2のFFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。速度のFFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部16によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、例えば制御部10からECU50などに出力されてよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0062】
判定処理部18は、演算処理に用いる各値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する処理を行う。例えば、判定処理部18は、距離FFT処理部12及び速度FFT処理部14において処理が行われた結果におけるピークが、それぞれ所定の閾値以上であるか否かを判定してよい。
【0063】
例えば、判定処理部18は、距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われた結果におけるピークが、第1閾値以上になるか否かを判定してもよい。すなわち、判定処理部18は、送信信号及び受信信号に基づいて生成されたビート信号について第1のFFT処理を行った結果におけるピークが、第1閾値以上になるか否かを判定してもよい。第1閾値の設定については、さらに後述する。このようにして、ビート信号について第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上であると判定される場合、当該ビート信号を「第1サンプル」としてカウントしてもよい。当該ビート信号を「第1サンプル」としてカウントするとは、判定処理部18が、ビート信号について第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上であるサンプルを選択することを意味する。
【0064】
また、例えば、判定処理部18は、速度FFT処理部14によって第2のFFT処理が行われた結果におけるピークが、第2閾値以上になるか否かを判定してもよい。すなわち、判定処理部18は、上述の第1サンプルについて第2のFFT処理を行った結果におけるピークが、第2閾値以上になるか否かを判定してもよい。第2閾値の設定については、さらに後述する。このようにして、第1サンプルについて第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上であると判定される場合、当該第1サンプルを「第2サンプル」としてカウントしてもよい。当該ビート信号を「第2サンプル」としてカウントするとは、判定処理部18が、ビート信号について第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上であるサンプルを選択することを意味する。
【0065】
上述のように、到来角推定部16は、速度FFT処理部14によってFFT処理が行われた結果に基づいて、所定の対象物200から反射波Rが到来する方向を推定する。また、速度FFT処理部14は、距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われたビート信号に対して第2のFFT処理を行う。この場合、距離FFT処理部12は、送信信号及び受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のFFT処理を行った結果に基づいて、判定処理部18による判定処理に従って、第1サンプルを生成してよい。また、速度FFT処理部14は、第1サンプルに第2のFFT処理を行った結果に基づいて、判定処理部18による判定処理に従って、第2サンプルを生成してよい。そして、到来角推定部16は、生成された第2サンプルに基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定してもよい。例えば、電子機器1は、第2サンプルから求める共分散行列に基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定してもよい。
【0066】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。このように複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、これらのアンテナを例えば8本の仮想アンテナアレイとしてよい。このように、電子機器1は、仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを送受信してよい。
【0067】
図4~
図7は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する。以下、電子機器1は、ミリ波方式のFMCWレーダとして構成される例について説明する。
【0068】
図4は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図4に示す動作は、例えば電子機器1が、移動体100の周囲に存在する所定の対象物200を検出し、当該対象物200から反射波Rが到来する方向(到来角θ)を推定する際に開始してよい。
【0069】
図4に示す動作が開始すると、電子機器1の制御部10は、送信部20の送信アンテナ25からチャープ信号を送信するように制御する(ステップS1)。具体的には、制御部10は、信号生成部21に送信信号(チャープ信号)の生成を指示する。そして、制御部10は、チャープ信号が、シンセサイザ22、位相制御部23、及び増幅器24を得て、送信アンテナ25から送信波Tとして送信されるように制御する。
【0070】
ステップS1においてチャープ信号が送信されると、制御部10は、受信部30の受信アンテナ31からチャープ信号を受信するように制御する(ステップS2)。ステップS2においてチャープ信号が受信されると、制御部10は、送信チャープ信号と受信チャープ信号を掛け合わせることにより、ビート信号を生成するように受信部30を制御する(ステップS3)。具体的には、制御部10は、受信アンテナ31から受信されたチャープ信号が、LNA32により増幅され、ミキサ33によって送信チャープ信号と掛け合わされるように制御する。ステップS1からステップS3までの処理は、例えば既知のミリ波方式のFMCWレーダの技術を採用することで行ってよい。
【0071】
ステップS3においてビート信号が生成されると、制御部10は、生成された各チャープ信号から、上述の第1サンプルを生成する(ステップS4)。
【0072】
以下、ステップS4の処理について、さらに説明する。
図5は、
図4におけるステップS4の処理をより詳細に説明するフローチャートである。
【0073】
図4に示すステップS4の処理が開始すると、距離FFT処理部12は、
図5に示すように、ステップS3で生成されたビート信号に第1のFFT処理を行う(ステップS11)。上述のように、ステップS11の処理が行われると、各周波数に対応する信号強度(電力)が得られる。ステップS11において、距離FFT処理部12は、AD変換部35から供給されるデジタルのビート信号に、第1のFFT処理を行ってよい。
【0074】
ステップS11においてビート信号に第1のFFT処理が行われたら、判定処理部18は、生成されたビート信号のうち、第1のFFT処理が行われた結果におけるピークが第1閾値以上になるか否かを判定する(ステップS12)。
【0075】
ここで、第1閾値の設定について説明する。
図6は、第1閾値の設定の一例について説明する図である。
【0076】
図6は、例えばステップS11においてビート信号に第1のFFT処理を行った結果の一例を示す図である。
図6において、横軸は周波数fを示し、縦軸は信号強度(電力)Pを示している。
図6に示す例において、周波数がfr1の領域及び周波数がfr2の領域にあるとき、信号強度はPaに近い値を示している。また、
図6に示す例において、周波数がf1のとき、信号強度はピークの値P(f1)を示している。
【0077】
一実施形態において、判定処理部18は、例えば電力のピーク値P(f1)を検出することができるように、電力の閾値Pthを設定する。ここで、閾値Pthは、例えば電力がピークの値P(f1)になるときの周波数f1を含む周辺領域以外の領域fr1及び/又は領域fr2のときの電力の平均値に基づいて設定してよい。例えば、
図6において、周波数が領域fr1及び/又は領域fr2のとき、信号強度の平均はほぼPaに近い値を示している。そこで、電力がピークの値P(f1)になるときの周波数f1を含む周辺領域以外の領域fr1及び/又は領域fr2のときの電力の平均値を例えばPaとする。この場合、電力の平均値Paに所定の値を加えたものを、電力の閾値Pthとして設定してよい。また、電力の閾値Pthを設定する際には、電力がピークの値P(f1)になるときの周波数f1を含む周辺領域において、ガードバンドを除くようにしてもよい。
【0078】
このように、電力の閾値Pthを設定することにより、判定処理部18は、ビート信号について第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上であるか否かを判定することができる。
【0079】
図5に示すステップS12においては、ビート信号について第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上であるか否かが判定される。ステップS12においてピークが第1閾値以上であると判定される場合、判定処理部18は、ステップS13における動作を行って、
図5に示す処理を終了する。一方、ステップS12においてピークが第1閾値未満であると判定される場合、判定処理部18は、ステップS13における動作を行わずに、
図5に示す処理を終了する。
【0080】
ステップS13において、判定処理部18は、第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上であると判定されたビート信号を、第1サンプルとしてカウントする。例えば、ステップS13において、判定処理部18は、後の処理のため、第1サンプルを、記憶部40又は制御部10の内部メモリなどに記憶してもよい。ステップS11において、第1のFFT処理が行われるビート信号は、例えば1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1など)を単位としてよい。したがって、ステップS13において、第1サンプルとしてカウントされるのは、1つのチャープ信号を単位としてよい。
【0081】
以上のようにして、距離FFT処理部12は、
図4に示すステップS4において、1つのチャープ信号から、第1サンプルを生成してよい。
【0082】
ステップS4において第1サンプルが生成されたら、判定処理部18は、1つのサブフレームに含まれるチャープ信号の全てに対してステップS4の処理が行われたか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、判定処理部18は、例えば1つのサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に含まれる8つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1~c8)に対してステップS4の処理が行われたか否かを判定してよい
【0083】
ステップS5において1つのサブフレームに含まれるチャープ信号のうち未だステップS4の処理が行われていないものがあると判定される場合、制御部10は、ステップS1に戻って処理を続行する。
【0084】
一方、ステップS5において1つのサブフレームにおけるチャープ信号が全てに対してステップS4の処理が行われたと判定される場合、制御部10は、ステップS6の処理を行う。ステップS6に進む場合とは、例えば
図3に示すサブフレーム1に含まれる8つのチャープ信号(c1~c8)の全てに対して第1のFFT処理が行われたことを意味する。そして、ステップS6に進む場合、前述の8つのチャープ信号(c1~c8)のうち、第1のFFT処理が行われた結果におけるピークが第1閾値以上となるものが、第1サンプルとしてカウントされる。
【0085】
ステップS5において1つのサブフレームに含まれるチャープ信号の全てに対してステップS4の処理が行われたと判定される場合、制御部10は、生成された第1サンプルから、上述の第2サンプルを生成する(ステップS6)。
【0086】
以下、ステップS6の処理について、さらに説明する。
図7は、
図4におけるステップS6の処理をより詳細に説明するフローチャートである。
【0087】
図4に示すステップS6の処理が開始すると、速度FFT処理部14は、
図7に示すように、ステップS4において生成された第1サンプルに第2のFFT処理を行う(ステップS21)。ステップS21において、速度FFT処理部14は、距離FFT処理部12によって第1のFFT処理が行われた結果に、第2のFFT処理を行ってよい。
【0088】
ステップS21において第2のFFT処理が行われたら、判定処理部18は、第2のFFT処理が行われた第1サンプルのうち、第2のFFT処理が行われた結果におけるピークが第2閾値以上になるか否かを判定する(ステップS22)。
【0089】
ここで、第2閾値の設定について説明する。
図8は、第2閾値の設定の一例について説明する図である。
【0090】
図8は、例えばステップS21において第1サンプルに第2のFFT処理を行った結果の一例を示す図である。
図8において、横軸は速度vを示し、縦軸は信号強度(電力)Pを示している。
図8に示す例において、速度がvr1の領域及び速度がvr2の領域にあるとき、信号強度はP’aに近い値を示している。また、
図8に示す例において、速度がv1のとき、信号強度はピークの値P’(v1)を示している。
【0091】
一実施形態において、判定処理部18は、例えば電力のピーク値P’(v1)を検出することができるように、電力の閾値P’thを設定する。ここで、閾値P’thは、例えば電力がピークの値P’(v1)になるときの速度v1を含む周辺領域以外の領域vr1及び/又は領域vr2のときの電力の平均値に基づいて設定してよい。例えば、
図8において、速度が領域vr1及び/又は領域vr2のとき、信号強度の平均はほぼP’aに近い値を示している。そこで、電力がピークの値P’(v1)になるときの速度v1を含む周辺領域以外の領域vr1及び/又は領域vr2のときの電力の平均値を例えばP’aとする。この場合、電力の平均値P’aに所定の値を加えたものを、電力の閾値P’thとして設定してよい。また、電力の閾値P’thを設定する際には、電力がピークの値P’(v1)になるときの速度v1を含む周辺領域において、ガードバンドを除くようにしてもよい。
【0092】
このように、電力の閾値P’thを設定することにより、判定処理部18は、第1サンプルについて第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上であるか否かを判定することができる。
【0093】
図7に示すステップS22においては、第1サンプルについて第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上であるか否かが判定される。ステップS22においてピークが第2閾値以上であると判定される場合、判定処理部18は、ステップS23における動作を行って、
図7に示す処理を終了する。一方、ステップS22においてピークが第2閾値未満であると判定される場合、判定処理部18は、ステップS23における動作を行わずに、
図7に示す処理を終了する。
【0094】
ステップS23において、判定処理部18は、第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上であると判定された第1サンプルを、第2サンプルとしてカウントする。例えば、ステップS23において、判定処理部18は、後の処理のため、第2サンプルを、記憶部40又は制御部10の内部メモリなどに記憶してもよい。ステップS21において、第2のFFT処理が行われる第1サンプルは、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号(例えば
図3に示すc1~c8)を単位としてよい。したがって、ステップS23において、第2サンプルとしてカウントされるのは、1つのサブフレームに含まれるチャープ信号を単位としてよい。
【0095】
以上のようにして、速度FFT処理部14は、
図4に示すステップS6において、1つのサブフレームに含まれるチャープ信号から、第2サンプルを生成する。
【0096】
ステップS6において第2サンプルが生成されたら、判定処理部18は、1つのフレームに含まれる全てのサブフレームのチャープ信号に対してステップS6の処理が行われたか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、判定処理部18は、1つのフレーム(例えば
図3に示すフレーム1)に含まれる16のサブフレーム(
図3に示すサブフレーム1~サブフレーム16)のチャープ信号の全てに対してステップS6の処理が行われたか否かを判定してよい。
【0097】
ステップS7において1つのフレームに含まれるチャープ信号のうち未だステップS6の処理を行っていないものがあると判定される場合、制御部10は、ステップS1に戻って処理を続行する。
【0098】
一方、ステップS7において1つのフレームに含まれる全てのサブフレームのチャープ信号に対してステップS6の処理が行われたと判定される場合、制御部10は、ステップS8の処理を行う。ステップS8に進む場合とは、例えば
図3に示すフレーム1に含まれる16のサブフレーム(サブフレーム1~サブフレーム16)について第2のFFT処理が行われたことを意味する。そして、ステップS8に進む場合、前述の16のサブフレームに含まれる第1サンプルのうち、第2のFFT処理が行われた結果におけるピークが第2閾値以上となるものが、第2サンプルとしてカウントされる。
【0099】
ステップS8において、到来角推定部16は、生成された第2サンプルに基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定する(ステップS8)。ステップS8において、到来角推定部16は、例えば第2サンプルから求める共分散行列に基づいて、反射波Rの到来方向を推定してもよい。
【0100】
例えば、上述した送信信号の1フレーム(16サブフレーム)において第2のFFT処理が行われた結果におけるピークが第2閾値以上となる第2サンプルのピークの複素信号(cx)を使って、到来方向(到来角θ)を推定するための共分散行列を求めてよい。この場合、共分散行列crの演算は、例えば以下の式(1)に従って行ってもよい。
【数1】
【0101】
ここで、cxは速度フーリエ変換後のピークの複素信号を表し、conj(cx)はcxの共役複素数を表す。また、k,lはアンテナの番号を表し、Nは共分散行列のサンプル数を表すものとする。
【0102】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1は、送信信号及び受信信号に基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定する。一実施形態に係る電子機器1は、送信信号及び受信信号に基づいて生成されたビート信号に第1のFFT処理を行った結果に基づいて、第1サンプルを生成してよい。ここで、第1サンプルは、例えばチャープ信号の集合としてよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、第1サンプルに第2のFFT処理を行った結果に基づいて、第2サンプルを生成してよい。ここで、第2サンプルは、例えばサブフレームの集合としてよい。そして、一実施形態に係る電子機器1は、第2サンプルに基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定することができる。ここで、電子機器1は、第2サンプルから求める共分散行列に基づいて、反射波Rの到来方向を推定してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、第2サンプルから求める共分散行列に基づいて、反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定してもよい。
【0103】
また、上述のように、第1サンプルは、送信信号及び受信信号に基づいて生成されたビート信号のうち、第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものとしてもよい。ここで、第1閾値は、第1のFFT処理を行った結果におけるピークを含む所定の領域を除く領域に対応するパワー(電力)の平均に基づいて設定されてもよい。
【0104】
また、上述のように、第2サンプルは、第1サンプルのうち、第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものとしてもよい。ここで、第2閾値は、第2のFFT処理を行った結果におけるピークを含む所定の領域を除く領域に対応するパワー(電力)の平均に基づいて設定されてもよい。
【0105】
すなわち、一実施形態に係る電子機器1は、距離のフーリエ変換処理のピークが閾値以上になる距離について、複数(例えば8つ)のチャープ信号を使って速度のフーリエ変換処理を行う。そして、一実施形態に係る電子機器1は、速度のフーリエ変換処理のピークが閾値以上になる速度が何サブフレーム続くかをカウントする。このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、その閾値以上になる速度のフーリエ変換のピークの複素信号を使って相関行列を求めることにより、反射波の到来方向を推定する。
【0106】
一実施形態に係る電子機器1によれば、反射波Rの到来方向(到来角θ)を測定する精度を向上させることができる。
【0107】
従来のレーダ技術によって、送信された送信波Tが所定の対象物に反射した反射波Rの到来方向(到来角θ)を推定する場合、角度推定の誤差が大きくなることがある。特に、同一の距離かつ同一の相対速度の範囲に複数の反射物体が存在する場合、到来角θの角度推定誤差が大きくなってしまう。また、近年、高い角度分解能でアレーアンテナに入射する到来波の方向を推定するMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)のような固有空間解析をアレイレーダに適用する研究が行われている。しかしながら、このような方法によれば、ノイズが大きくなると、検出誤差が大きくなってしまう。
【0108】
これに対し、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えばMUSICのようなアルゴリズムを用いて計算する前に、ノイズを除去することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、反射波Rの到来方向の推定誤差を低減することができる。
【0109】
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、相対速度を求める第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になる場合に、第2サンプルとして採用する。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、同一の距離かつ同一の相対速度の対象物以外からの干渉波を低減することができる。
【0110】
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、反射波Rの到来方向を推定する際に演算する共分散行列に複数のサンプルを使用する。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、同一の距離かつ同一の相対速度となる範囲に、同時に複数の対象物が存在しても、それぞれからの反射波Rの到来方向を推定することができる。
【0111】
また、一般的に、レーダの技術を用いて、相対速度が速い対象物からの反射波Rの到来方向を推定する場合、当該対象物は、共分散行列を求めるチャープ信号を送受信する間、その距離の範囲に存在するとは限らない。一実施形態に係る電子機器1によれば、その距離の範囲における信号のみを採用して、対象物からの反射波Rの到来方向を推定する。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、反射波Rの到来方向の推定においてノイズ及び/又は干渉の影響を低減することができる。ここで、上記の「その距離」とは、距離FFTのステップで示される距離になる。対象物200とセンサ5との相対速度が速い場合、全てのサブフレーム時間内に、その距離ステップからとなりの距離ステップに移動してしまう場合がある。この場合、当該対象物は、共分散行列を求めるチャープ信号を送受信する間、その距離の範囲に存在しないこととなる。
【0112】
次に、他の実施形態について説明する。
【0113】
上述した実施形態において、送信信号及び受信信号に基づいて生成されたビート信号のうち、第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるもののみを、第1サンプルとした。また、上述した実施形態において、第1サンプルのうち、第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるもののみを、第2サンプルとした。しかしながら、一実施形態において、例えば、生成されたビート信号のうち、第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものが1つ以上の所定数あれば、当該ビート信号を含むサブフレーム全てのビート信号を第1サンプルとしてもよい。また、一実施形態において、例えば、生成された第1サンプルのうち、第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものが1つ以上の所定数あれば、当該第1サンプルを含むフレームにおける全ての第1サンプルを第2サンプルとしてもよい。
【0114】
このように、一実施形態において、第1サンプルは、ビート信号のうち、第1のFFT処理を行った結果におけるピークが第1閾値以上になるものが存在する場合、そのビート信号を含むサブフレームにおける全てのビート信号としてもよい。また、一実施形態において、第2サンプルは、第1サンプルのうち、第2のFFT処理を行った結果におけるピークが第2閾値以上になるものが存在する場合、その第1サンプルを含むフレームにおける全ての第1サンプルとしてもよい。
【0115】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0116】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
【0117】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えば制御部10のみを備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図3に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 電子機器
5 センサ
10 制御部
12 距離FFT処理部
14 速度FFT処理部
16 到来角推定部
18 判定処理部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 AD変換部
40 記憶部
50 ECU
100 移動体
200 対象物(物体)