(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073710
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】棚受金具、棚板設置方法、および、棚板の設置構造
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20230519BHJP
F16B 12/46 20060101ALI20230519BHJP
A47B 96/06 20060101ALI20230519BHJP
A47B 55/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
E04F19/08 102J
F16B12/46 A
E04F19/08 102B
A47B96/06 K
A47B96/06 B
A47B55/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186337
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河原 朋宏
【テーマコード(参考)】
3B067
3J024
【Fターム(参考)】
3B067AA07
3B067AB00
3B067BA01
3J024AA12
3J024CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主に、棚受金具をシンプルな形状にして機能性や汎用性を高め得るようにする。
【解決手段】壁面に、棚板を取付ける棚受金具4に関する。水平な横面部21と、横面部21の端部から下方へ延びる縦面部22と、を有するL字断面の金具本体23を有する。横面部21は、棚板に固定具で当接固定するための第1取付孔25を有する。縦面部22は、壁面に別の固定具で当接固定するための第2取付孔27および第3取付孔28を有する。第1取付孔25は、横面部21の延設方向29へ延びる長孔とされる。第2取付孔27および第3取付孔28は、縦面部22の幅方向31および上下方向12に位置をズラして形成される。第2取付孔27は、第3取付孔28よりも上側に位置して、上下方向12に延びる長孔とされる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に、棚板を取付ける棚受金具であって、
水平な横面部と、該横面部の端部から下方へ延びる縦面部と、を有するL字断面の金具本体を有し、
前記横面部は、前記棚板に固定具で当接固定するための第1取付孔を有すると共に、
前記縦面部は、前記壁面に別の固定具で当接固定するための第2取付孔および第3取付孔を有しており、
前記第1取付孔は、前記横面部の延設方向へ延びる長孔とされ、
前記第2取付孔および前記第3取付孔は、前記縦面部の幅方向および上下方向に位置をズラして形成されると共に、
前記第2取付孔は、前記第3取付孔よりも上側に位置して、前記上下方向に延びる長孔とされていることを特徴とする棚受金具。
【請求項2】
請求項1に記載の棚受金具であって、
前記横面部は、前記縦面部よりも短くなっており、
前記第1取付孔は、前記横面部の幅中央に形成され、
前記第2取付孔は、前記横面部の上部から中心までの寸法が、電動工具を使用可能な最小限距離になっていることを特徴とする棚受金具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の棚受金具を用いた棚板設置方法であって、
前記壁面に前記金具本体を位置出しして仮固定する仮固定工程と、
仮固定した前記金具本体を、一旦、前記壁面から外して、前記壁面にクロスを貼った後に、前記壁面に付け直す再取付工程と、
付け直した前記金具本体の高さを調整して前記壁面に本固定する本固定工程と、
本固定した前記金具本体の上に前記棚板を載置し、該棚板と前記壁面との間の隙間を調整して前記棚板を前記金具本体に取付ける棚板取付工程とを行うことを特徴とする棚板設置方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の棚受金具を用いた棚板の設置構造であって、
平面視矩形状の前記棚板が複数枚連接され、
各前記棚板は、隣接する前記棚板と接する境界部の近傍の位置を、前記金具本体によってそれぞれ支持されると共に、
前記棚板間の前記境界部を、棚受アームによって支持されていることを特徴とする棚板の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棚受金具と、この棚受金具を用いた棚板設置方法、および、棚板の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、収納スペースに棚板を設置する場合、収納スペースの壁面に横長の受桟を取付けて、受桟の上に棚板を載置固定するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、受桟を用いて棚板を設置する場合、棚板の各辺を支えるのに、棚板の各辺のそれぞれに応じた長さの受桟が複数本必要になると共に、壁面に対する受桟の取付けに接着剤とビスが必要になるなどしていた。そのため、受桟を用いる場合には、使用する部品点数が多くなり、現地での受桟の加工などが必要になり、また、受桟の接着剤とビスとによる湿式併用固定となるため手間と時間がかかるなどしていた。
【0004】
そこで、受桟の代わりに金具(棚受金具)を用いて棚板を設置することも行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-200611号公報
【特許文献2】特開2015-161109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載された棚受金具は、棚板の先端側の位置に対してのみ使うものとなっていたので、使用できる位置が限られていた。また、上記棚受金具は、形状や構造が複雑となっているため、汎用性が低かった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
壁面に、棚板を取付ける棚受金具であって、
水平な横面部と、該横面部の端部から下方へ延びる縦面部と、を有するL字断面の金具本体を有し、
前記横面部は、前記棚板に固定具で当接固定するための第1取付孔を有すると共に、
前記縦面部は、前記壁面に別の固定具で当接固定するための第2取付孔および第3取付孔を有しており、
前記第1取付孔は、前記横面部の延設方向へ延びる長孔とされ、
前記第2取付孔および前記第3取付孔は、前記縦面部の幅方向および上下方向に位置をズラして形成されると共に、
前記第2取付孔は、前記第3取付孔よりも上側に位置して、前記上下方向に延びる長孔とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、棚受金具をシンプルな形状にして機能性や汎用性を高めることなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施例1にかかる収納スペースの正面図である。
【
図1E】
図1Bの収納スペースのハンガーパイプ部分の拡大図である
【
図2A】実施例1の変形例にかかる収納スペースの正面図である。
【
図4】棚受金具の部品図である。このうち、(a)は棚受金具の正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【
図5】最小限距離を説明するための、棚段の端部の部分拡大側面図である。
【
図6】棚板設置方法の仮固定工程と、再取付工程と、本固定工程とを示す図である。
【
図7】壁面との隙間を調整して棚受金具に棚板を取付ける状態(棚板取付工程)を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は(a)の部分拡大平面図、(c)は部分拡大側面図である。
【
図8】奥壁に棚受金具を取付けた状態(他辺部金具取付工程)を示す平面図である。
【
図9A】実施例2にかかる収納スペース(I字配置)の棚段部分を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図9B】
図9Aの棚段の境界部部分および棚受アームを示す部分拡大図である。このうち、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【
図10】実施例2の他の変形例(L字配置)にかかる収納スペースの棚段部分を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図11】実施例2の別の変形例(U字配置)にかかる収納スペースの棚段部分を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図12】比較例にかかる棚受用の金具およびその周辺を部分拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図12は、この実施の形態を説明するためのものである。
このうち、
図1A~
図8は実施例1およびその変形例、
図9A~
図11は実施例2およびその変形例、
図12は比較例である。
【実施例0012】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0013】
建物の内部に収納スペース1を設ける。例えば、収納スペース1を、
図1A~
図1E(または、
図2A~
図2Cの変形例)に示すような、壁面2に棚板3を設置した、収納棚などとする。なお、
図1A~
図1E(または、
図2A~
図2C)の収納スペース1については後述する。
【0014】
この際、収納スペース1では、壁面2に対して、棚板3を、棚受金具4を用いて取付けるようにする。
【0015】
ここで、建物は、どのようなものであっても良い。建物は、例えば、ユニット建物などとすることができる。ユニット建物は、工場で予め製造した箱型の建物ユニットを建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物である。
【0016】
収納スペース1は、建物に対して作り付け状態で設置されるクローゼットなどとするのが好ましい。
【0017】
収納スペース1の壁面2は、建物の内壁や仕切壁などが使用される。収納スペース1の壁面2は、例えば、向かって奥側に位置する奥壁5と、奥壁5の両側に位置して奥側から手前側へ延びる一対の平行な側壁6とで構成される。
【0018】
壁面2は、例えば、取付枠7に、内装下地ボード8を取付け、内装下地ボード8の表面にクロス9を貼ったものなどとされる。取付枠7は、上下の横枠と、左右の縦枠とを有する矩形状のものとされ、その内部には、ほぼ水平な受桟11(横桟)を、上下方向12に間隔を有して複数段有している。
【0019】
棚板3は、収納スペース1を上下に仕切るほぼ水平な板材であり、棚段を形成する。棚板3は、収納スペース1にあった大きさの、平面視ほぼ長方形状などに形成される。棚板3の手前側の縁部には、化粧用の前框13を取付けることができる。
【0020】
なお、
図1A~
図1Eの収納スペース1は、棚板3を1段設けて、棚板3の下にほぼ水平なハンガーパイプ14を取付けたものとされている。ハンガーパイプ14は、パイプ取付金具15を介してネジ16で棚板3に取付けられる。
【0021】
また、
図2A~
図2Cの収納スペース1は、棚板3を上下に2段以上設けたものとされている。図では、上段の棚板3よりも下段の棚板3のほうが広幅となっている。但し、上下の棚板3の大きさの関係はこれに限るものではない。
【0022】
棚受金具4は、棚板3を受ける金具であり、収納スペース1は、基本的に、棚受金具4のみにて棚板3を取付けたものとするのが好ましい。なお、棚受金具4は、壁面2の内部の受桟11や取付枠7の縦枠などに対して取付ける。そのために、受桟11は、棚板3を取付ける位置に設置される。
【0023】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えても良い。
【0024】
(1)
図3(
図4)に示すように、棚受金具4は、
水平な横面部21と、横面部21の端部から下方へ延びる縦面部22と、を有するL字断面の金具本体23を有する。
横面部21は、棚板3に固定具24(
図5)で当接固定するための第1取付孔25を有する。
縦面部22は、壁面2に別の固定具26(
図5)で当接固定するための第2取付孔27および第3取付孔28を有する。
第1取付孔25は、横面部21の延設方向29へ延びる長孔とされる。
第2取付孔27および第3取付孔28は、縦面部22の幅方向31および上下方向12に位置をズラして形成される。
第2取付孔27は、第3取付孔28よりも上側に位置して、上下方向12に延びる長孔とされている。
【0025】
ここで、棚受金具4は、収納スペース1の壁面2に棚板3を取付けるのに使う金具であり、棚板3の下面を下から受ける。棚受金具4は、メッキ仕上げのものとしても良いが、壁面2のクロス9と同じ色または同系統の色に着色したものを使用するのが好ましい。
【0026】
横面部21は、壁面2からほぼ水平方向に突出するように設置される横の面であり、棚板3の下面に接して、棚板3を下側から支持する。
【0027】
端部は、横面部21の、壁面2の側に位置する端末部分である。
【0028】
縦面部22は、上下方向12に向けて設置される縦の面であり、壁面2に接した状態で、棚受金具4を壁面2に固定する。縦面部22は、横面部21と同じ幅寸法や同じ板厚に形成されるのが好ましい。
【0029】
金具本体23は、棚受金具4の主要部分であり、短冊状の金属板を、中間部で面外方向へほぼ90度に折曲げた形状のコーナー金具となっている。
【0030】
固定具24は、横面部21に対して棚板3を下から上へ向けて固定する部材である。固定具24は、一般的なネジなどを使用することができる。固定具24は、横面部21に棚板3を取付けたときに、棚板3を貫通しない程度の長さとされる。固定具24は、メッキ仕上げのものとしても良いが、全体または少なくとも頭部を、棚受金具4と同じ色にするのが好ましい。
【0031】
第1取付孔25は、棚板3を横面部21に下側から固定するための固定具24を通す孔であり、横面部21と面直な上下方向12の貫通孔である。
【0032】
別の固定具26は、縦面部22を壁面2に対して横に固定する部材である。別の固定具26は、皿ネジなどを使用するのが好ましい。皿ネジは、円錐状の頭部を有するネジである。頭部の表面は、(工具差込み用の溝を除いて)基本的に平坦面となっている。別の固定具26は、縦面部22を壁面2に取付けたときに、受桟11を貫通しない程度の長さとされる。別の固定具26は、メッキ仕上げのものとしても良いが、全体または少なくとも頭部を、棚受金具4と同じ色に着色するのが好ましい。
【0033】
第2取付孔27は、金具本体23を壁面2に対して横方向に固定するための別の固定具26を通す孔であり、縦面部22と面直な水平方向の貫通孔である。第2取付孔27は、手前側の縁部に、皿ネジの頭部の円錐面と合致する形状のテーパ面32を有している。
【0034】
第3取付孔28は、金具本体23を壁面2に対して横方向に固定するための別の固定具26を通す孔であり、縦面部22と面直な水平方向の貫通孔である。第3取付孔28は、手前側の縁部に、皿ネジの頭部の円錐面と合致する形状のテーパ面32を有している。
【0035】
延設方向29は、横面部21の幅方向31と直交する水平な方向である。なお、縦面部22の延設方向は、縦面部22の幅方向31と直交する方向であり、横面部21の延設方向29とは異なって、上下方向12となっている。
【0036】
第1取付孔25の長孔は、横面部21に対して、幅方向31と直交する水平な方向に延びる長円形状をしている。
【0037】
幅方向31は、横面部21および縦面部22の横幅の方向である。
【0038】
上下方向12は、真上と真下とを結ぶ方向である。
【0039】
第2取付孔27の長孔は、縦面部22に対して、ほぼ上下に延びる長円形状をしている。
【0040】
第3取付孔28は、第2取付孔27と同様の長孔にしても良いが、この実施例では、丸孔とされる。
【0041】
第2取付孔27と第3取付孔28は、上下方向12および幅方向31の両方にほぼ重ならない位置に形成される。
【0042】
(2)棚受金具4では、横面部21は、縦面部22よりも短くなっていても良い。
第1取付孔25は、横面部21の幅中央に形成されても良い。
第2取付孔27は、横面部21の上部から中心までの寸法が、電動工具43を使用可能な最小限距離44(
図5)になっていても良い。
【0043】
ここで、横面部21が、縦面部22よりも短いとは、横面部21の延設方向29の長さ41が、縦面部22の延設方向の長さ42よりも小さくなっていることである(横面部21の長さ41<縦面部22の長さ42、
図3)。
【0044】
横面部21の幅中央に形成されるとは、第1取付孔25の中心が、横面部21の両幅端部から等距離の位置に形成されていることである(距離45=距離46、
図4(c))。これにより、横面部21は、左右対称になって、左右反対勝手で使用可能になる。
【0045】
電動工具43は、例えば、電動ドライバーなどのような動力付きの工具である。
【0046】
最小限距離44は、電動工具43の本体43aの頂部から電動工具43の本体43aに取付けたドライバービットなどの交換工具43bの中心までの上下方向12の寸法である。具体的には、最小限距離44は、20mm前後(例えば、18mm~24mmの間)などに設定するのが好ましい。なお、第1取付孔25についても、横面部21の壁面2側の端部から第1取付孔25の中心までの寸法を、ほぼ最小限距離44に設定しても良い。また、必要な調整量を考慮した場合、第1取付孔25は、第2取付孔27よりも長くするのが好ましい。例えば、第1取付孔25を8mm、第2取付孔27を10mmなどとするのが好ましい。
【0047】
縦面部22は、最小限距離44に、第2取付孔27の下半分の長さと、第3取付孔28の直径とを足したよりも僅かに長い程度の長さ42となっている。また、横面部21は、最小限距離44に、第1取付孔25の半分の長さを足したよりも僅かに長い程度の長さ42となっている。
【0048】
より具体的には、縦面部22は、40mm前後(例えば、36mm~42mmの間)の長さなどに設定するのが好ましい。横面部21は、30mm前後(例えば、28mm~32mmの間)の長さなどに設定するのが好ましい。
【0049】
以下、上記棚受金具4を用いた棚板設置構造について説明する。
【0050】
この棚板設置構造では、棚受金具4は、壁面2に対して以下のようにして設置される。
【0051】
上記したように、収納スペース1の壁面2は、向かって奥側に位置する奥壁5と、奥壁5の両側に位置して手前側へ延びる一対の側壁6とを有している。
収納スペース1の奥壁5と、一対の側壁6とによって囲まれた空間の内部に棚板3が設置される。
【0052】
棚板3は、例えば、1枚で、収納スペース1の内部に1つの段を形成することができる大きさのものを使用する。即ち、棚板3は、収納スペース1の断面に対して丁度合う大きさ(幅および長さ)の板とされる。そのために、平面視矩形状の棚板3は、奥壁5の幅(収納スペース1の幅)とほぼ同じかそれよりも僅かに短い長さの一対の長辺3a,3bと、側壁6の幅(収納スペース1の奥行)とほぼ同じかそれよりも短い長さの一対の短辺3c,3dとを有している。そして、収納スペース1に向かって手前側となる長辺3aには、前框13が取付けられる。例えば、向かって奥側の長辺3bは、奥壁5に向けて、奥壁5と近接するように設置され、短辺3c,3dは、側壁6に向けて、側壁6と近接するように設置される。
【0053】
なお、
図2A~
図2Cに示すように、収納スペース1の内部に、複数の棚段を上下方向12に隔てて形成する場合には、棚板3は、上下方向12に異なる高さの位置に、それぞれ設置する。各棚板3は、高さが異なる受桟11に対して取付けられる。
【0054】
そして、棚受金具4は、1枚の棚板3に対して少なくとも3個以上使用し、3個以上の棚受金具4で棚板3を支持する。そして、3個以上の複数の棚受金具4は、棚板3に対し、その棚板3の重心を内側に取囲む多角形を形成するような位置に設置される。
【0055】
具体的には、棚受金具4は、棚板3の奥壁5および一対の側壁6に臨む3つの辺(例えば、長辺3bおよび短辺3c,3d)のうちの少なくとも2つ以上、または3つ全てに対して、取付けられる。
【0056】
例えば、棚受金具4を3個のみ設ける場合、1個の棚受金具4を、棚板3の長辺3bに沿った位置に設ける。また、1個の棚受金具4を、どちらかの短辺3c,3dに沿った位置に設ける。残りの1個の棚受金具4は、上記した2個の棚受金具4との関係で棚板3の重心を内側に取囲む三角形を形成するように、いずれかの辺に沿った位置に設置する。
【0057】
この場合、3個の棚受金具4は、可能であれば、全ての辺(例えば、長辺3bおよび短辺3c,3d)に対して設けるのが好ましい。しかし、棚受金具4は、状況によっては、長辺3bに2箇所、および、どちらか一方の短辺3c,3dに1箇所設けるようにしたり、または、長辺3bに1箇所、どちらか一方の短辺3c,3dに2箇所設けるようにしたりしても良い。
【0058】
これにより、最も少ない数の棚受金具4で、棚板3を効率良く支持することができる。更に、棚受金具4を3個よりも多く設けるようにすれば、棚板3をより強固かつ確実に支持することができる。
【0059】
なお、この実施例では、棚受金具4は、棚板3の両方の短辺3c,3dに対して2箇所ずつ、そして、長辺3bに対して1箇所またはそれ以上、合わせて5個以上設けるようにしている。
【0060】
この場合、短辺3c,3dの2箇所の棚受金具4は、短辺3c,3dの両端部の近傍に、互いに離して設けられる。また、長辺3bの1箇所以上の棚受金具4は、長辺3bの長さによって設置個数や位置が決められる。例えば、長辺3bが短い場合には、中央に1箇所設けられる。長辺3bが長い場合には、互いに離した状態で2箇所以上設けられる。長辺3bを支持する複数の棚受金具4は、長辺3bに対してほぼ対称的な位置に設置するのが好ましい。
【0061】
(3)以下、上記棚受金具4を用いた棚板設置方法について説明する。
【0062】
上記棚受金具4を用いた棚板設置方法は、
図6に示すように、壁面2に金具本体23を位置出しして仮固定する仮固定工程と、
仮固定した金具本体23を、一旦、壁面2から外して、壁面2にクロス9を貼った後に、壁面2に付け直す再取付工程と、
付け直した金具本体23の高さ52を調整して壁面2に本固定する本固定工程と、
図7に示すように、本固定した金具本体23の上に棚板3を載置し、棚板3と壁面2との間の隙間53,54を調整して棚板3を金具本体23に取付ける棚板取付工程とを順に行うようにする。
【0063】
ここで、壁面2は、最初は、クロス9を貼る前の内装下地ボード8の表面が露出した状態となっている。仮固定工程では、内装下地ボード8の表面に対して、金具本体23を、縦面部22を位置出しして仮固定する。位置出しは、金具本体23の高さ52と、壁面2の端部から金具本体23までの距離55や、金具本体23の内側部間の間隔56などで行う。金具本体23仮固定は、第2取付孔27のみを使って行うのが好ましい。
【0064】
クロス9は、壁紙のことである。クロス9は、建物のプランや内装の状況などに応じて適宜選択したものが使用され、壁面2の仕上げ時に内装下地ボード8の表面に対して貼り付けられる。壁面2にはクロス9がほぼ必須のものとして取付けられる。
【0065】
再取付工程では、クロス9を貼る直前に、金具本体23を、一旦内装下地ボード8から外す。そして、内装下地ボード8の表面に対してクロス9を貼るときに、クロス9に対して、金具本体23を仮固定した位置をマーキングし、内装下地ボード8の表面へクロス9を貼った後に、マーキングを目印にして金具本体23の縦面部22を壁面2に再固定する。壁面2への再固定は、まず、第2取付孔27のみを使って行うのが好ましい。
【0066】
高さ52は、金具本体23の上下方向12の正確な位置である。
【0067】
本固定工程では、長孔とされた第2取付孔27を使って正確に金具本体23の高さ52の微調整を行い、正確な高さ52が出たら、第2取付孔27と第3取付孔28を使って金具本体23の壁面2への本固定を行う。
【0068】
金具本体23の本固定は、第2取付孔27と第3取付孔28に、皿ネジなどの別の固定具26を使用する。これにより、別の固定具26の頭部が金具本体23の縦面部22の表面と面一になるので、別の固定具26を目立たなくできる。
【0069】
隙間53,54は、棚板3の辺(短辺3c,3dおよび長辺3b)と壁面2(奥壁5および側壁6)との間にそれぞれ形成される非接触用の空間である。棚板3の取付けの際に、壁面2に棚板3が接触すると、棚板3によってクロス9が損傷して、クロス9の貼り直しとなる。そのため、棚板3は、壁面2に接触させずに設置できるように、収納スペース1に対して僅かに小さめに作られる。この際、クロス9を損傷しないで作業ができ、しかも、棚段の見栄えを損なわないような、最小限の大きさの隙間53,54が確保されるように、棚板3の大きさが設定される。
【0070】
棚板3は、各部の隙間53,54がそれぞれ均一かつ均等となるように収納スペース1に設置される。隙間53,54の調整は、同じ高さ52に取付けられた金具本体23の複数の横面部21の上に棚板3を載せた状態で、棚板3を横面部21に沿って横へ移動することで行う。よって、全ての金具本体23を同じ高さ52に揃えて棚板3を支持できるようにすることは、隙間53,54を調整する作業にとって非常に重要となる。また、棚板3を各部の隙間53,54を均一に揃えて設置することは、収納スペース1の外観品質を向上する上で非常に重要になる。
【0071】
棚板取付工程では、長孔とされた第1取付孔25を使って、正確な隙間53,54に設定された棚板3を、隙間53,54を保ったまま固定具24で下側から固定する。固定中にズレた場合や、固定を二段階で行う場合などには、長孔とされた第1取付孔25を使って、途中で隙間53,54の最終調整を行う。この際、棚板3と横面部21との間に浮きが生じないように、棚板3を上から押さえながら固定する(力F)。固定具24は下側からの取付けとなるため、外部から固定具24の頭部が目立ち難くなるので、特に、皿ネジを使わなくても良い。
【0072】
以上の棚板設置方法では、例えば、両側の側壁6に対して棚板3の短辺3c,3dを、棚受金具4を用いて取付けるようにする。
【0073】
次に、
図8に示すように、奥壁5に対して棚板3の長辺3bを、棚受金具4を用いて取付ける(他辺部金具取付工程)。この奥壁5に対する、長辺3bの棚受金具4による取付けは、上記によって正確な高さ52や隙間53,54で固定された棚板3に対して行われる。そのため、棚板3の長辺3bに対する取付けは、調整作業が不要であるため短辺3c,3dに対する取付けよりも格段に容易かつ正確に行うことができる。
【0074】
以上により、壁面2に全ての棚受金具4が取付けられ、棚受金具4のみによって、収納スペース1に棚板3が精度良く設置される。
【0075】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0076】
(作用効果 1)棚受金具4は、壁面2に棚板3を取付けるための金具である。棚受金具4は、横面部21と縦面部22とを有するL字断面の金具本体23でできている。金具本体23は、縦面部22を壁面2に対して当接固定する。すると、横面部21が、壁面2から水平に突出した状態となるので、横面部21に上から棚板3を乗せて棚板3を支持し、この状態で棚板3を下側から固定することが可能になる。これにより、棚板3が金具本体23を介して壁面2に設置される。
【0077】
棚板3の壁面2への固定は、金具本体23とネジなどの固定具24や、皿ネジなどの別の固定具26のみで済むので、棚板3の取付けに必要な部品(例えば、横長の受桟11など)を削減して、部品数の最小化を図ることができる。
【0078】
また、棚受金具4は、横面部21と縦面部22のみのシンプルで取扱い易い形状となっているため、同じ金具本体23を、棚板3の各辺のどの位置にでも使うことができる。そのため、棚受金具4は、汎用性を有しており、全体としての部品の共通化が得られ、部品の製造や加工や現場での施工も容易になる。また、棚受金具4は、接着剤などを用いない乾式工法での棚板3の取付けが可能であるため、棚板3の設置がし易く、短時間で施工できる。
【0079】
更に、棚受金具4は、棚板3の各辺の支持に同じ(シンプルな)金具本体23を用いることで、金具本体23自体や、棚板3と壁面2との隙間53,54などを外部から目立たないようにできる。
【0080】
加えて、棚受金具4は、長孔とされた第1取付孔25によって、棚板3の横位置を容易に調整できる(横位置調整機能)。
【0081】
また、棚受金具4は、第2取付孔27および第3取付孔28の位置を、上下にズラした位置に形成することで、壁面2の内部に設置された受桟11の割れを防止できる。
【0082】
そして、棚受金具4は、上側の第2取付孔27を上下方向12に延びる長孔とすることで、棚板3の高さ52を正確に調整できる(高さ52の調整機能)。
【0083】
そのため、棚受金具4は、シンプルな形状でありながらも、一つで、高さ52の調整と隙間53,54の調整との両方ができるため、複数の調整機能を備えた高機能な部材になる。
【0084】
(作用効果 2)棚受金具4は、横面部21が縦面部22よりも短くなっている。これにより、棚受金具4は、全体的に縦長の形状になり、壁面2への取付けの安定性を高めたり、棚板3からの荷重を壁面2に有効に伝えたりし易いものとなる。
【0085】
また、第1取付孔25は、横面部21の幅中央に形成されている。これにより、棚受金具4は、左右どちら向きにしても使用できるようになる。よって、左右反対勝手のものを用意する必要がなく、その分、必要な部品点数が少なくなる。
【0086】
そして、第2取付孔27は、横面部21の上部から中心までの寸法が、電動工具43を使用可能な最小限距離44になっている。これにより、棚受金具4の大きさを最小限にまで小さくすることができる。また、棚受金具4を最小限の大きさにしつつも、電動工具43を使った取付けが可能になる。
【0087】
これに対し、例えば、
図12の比較例のような金具61を使用して、収納スペース1の壁面2に棚板3を取付けた場合には、以下のような問題が生じる。
【0088】
即ち、比較例の金具61は、横面部61aの方が縦面部61bよりも長くなっている。そのため、全体的に金具61が横長形状になっているので、棚板3を安定して支持させること、および、棚板3からの荷重を壁面2にうまく伝えさせることが難しい。
【0089】
また、比較例の金具61は、第1取付孔61cが横面部61aの端寄りの位置に設けられているので、左右反対勝手に使用することができず、左取付け用と右取付け用とを別々に用意する必要があり、その分、必要な部品点数が倍になる。
【0090】
更に、比較例の金具61は、第2取付孔61dと第3取付孔61eの両方が丸孔になっているため、高さ52の調整ができないので、棚板3を正確な高さ52に取付けるのが難しい。
【0091】
よって、一見、実施例の棚受金具4と同じように見えても、比較例の金具61は、上記したような多くの問題点を有しているので、棚板3を、収納スペース1の壁面2に対してうまく正確に取付けることができない。これに対し、上記問題点を解消した実施例の棚受金具4は、比較例の金具61と比べて高い機能性や汎用性を有しており、収納スペース1の壁面2に棚板3を正確に取付けるのに最適である。
【0092】
(作用効果 3)棚板設置方法は、仮固定工程と、再取付工程と、本固定工程と、棚板取付工程と、を順に行って、棚板3を壁面2に取付けても良い。
【0093】
これにより、仮固定工程で、クロス9を貼って完成する前の壁面2(内装下地ボード8)に金具本体23を位置出しして仮固定することができる。
【0094】
再取付工程で、クロス9を貼った壁面2に対して、位置出ししたときと同じ状態となるように金具本体23を容易に付け直すことができる。
【0095】
本固定工程で、金具本体23の高さ52を正確に調整してクロス9が貼られた壁面2に本固定することができる。
【0096】
棚板取付工程で、正確な高さ52となった金具本体23の上に棚板3を載置して、棚板3と壁面2との間の隙間53,54を正確に調整すること、および、隙間53,54を調整した状態で棚板3を金具本体23に取付けることができる。以上により、クロス9を貼った壁面2に対して、クロス9を傷付けることなく、しかも、精度良く棚板3を設置することが容易にできる。
ここで、棚板3が複数枚連接されるとは、同じ棚段に、複数枚の棚板3が並べて設置されることである。または、複数枚の棚板3で、同一段の棚段を形成することである。
境界部71は、棚板3の辺のうち、隣接する棚板3の辺に突き合わせられる辺または辺の一部である。例えば、I字配置の場合には、境界部71は、互いに連接する棚板3の短辺3c,3dどうしの合わせ部となり、棚板3の短辺3c,3dと同じ長さで形成される。
また、2枚の棚板3によるL字配置の場合には、境界部71は、一方の棚板3の長辺3bの一部と、他方の棚板3の短辺3c,3dとの間の合わせ部となり、他方の棚板3の短辺3c,3dと同じ長さで形成される。
そして、3枚の棚板3によるU字配置の場合には、境界部71は、中間に位置する棚板3の長辺3bの一部と、残りの2枚の棚板3の短辺3c,3dとの間の2つの合わせ部となり、残りの2枚の棚板3の短辺3c,3dと同じ長さで形成される。
境界部71の近傍の位置とは、各棚板3の境界部71と隣接(または直交)する辺で、かつ、壁面2に接する辺(隣接辺)における、棚受アーム72の取付けに支障が生じない程度に、境界部71から離れた、境界部71に近い位置である。
棚受アーム72は、壁面2に対する取付面72aと、棚板3に対する支持面72bと、取付面72aと支持面72bとを連結するアーム本体72cと、を有している。取付面72aは、棚受アーム72の壁面2の側の端部に、壁面2と平行に形成される。支持面72bは、棚受アーム72の上縁部に、棚板3と平行に形成される。アーム本体72cは、側面視ほぼL字状や三角形状などとされる。支持面72bと取付面72aには、ネジ73,74を通すための取付孔が設けられる。
この場合、例えば、上記した棚板設置方法を用いて、各棚板3の、壁面2に面した2つの辺(長辺3bおよび短辺3c,3d)の下側に棚受金具4を取付けて、各棚板3を、各棚受金具4のみで互いに面一な状態に支持固定させるようにする。
その後、この状態で、境界部71の下側に棚受アーム72を取付けて、棚受アーム72で境界部71を下側から支持させるようにする(棚受アーム72取付工程)。これにより、隣接する棚板3は、面一状態で、棚受アーム72によって境界部71を支持される。
(作用効果 4)棚板3の設置構造は、平面視矩形状の棚板3が複数枚連接される場合に、各棚板3が、隣接する棚板3と接する境界部71の近傍の位置を、棚受金具4によってそれぞれ支持されると共に、棚板3間の境界部71を、棚受アーム72によって支持されても良い。
これにより、隣接する棚板3の境界部71の近傍の位置を、高さ52が同じとなるように棚受金具4によって、それぞれ正確に揃えることができる。そして、高さ52が揃えられて面一とされた両方の棚板3の境界部71を棚受アーム72で確実に支持して支持強度を高めることができる。そのため、隣接する棚板3間に段差が生じるのを防止しつつ、境界部71を、棚受アーム72によって強固に支持することができる。