IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マルナカの特許一覧

特開2023-73711ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル
<>
  • 特開-ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル 図1
  • 特開-ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル 図2
  • 特開-ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル 図3
  • 特開-ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073711
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20230519BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B23K9/32 E
B23K9/29 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186339
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000247971
【氏名又は名称】株式会社マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】中島 一夫
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001LA03
4E001LA05
4E001LH06
4E001NA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アーク溶接で発生するスパッタの飛散を抑制できるノズルカバーと、溶接ノズルと、カバー付き溶接ノズルを提供する。
【解決手段】溶接ノズル1の外周に装着される筒状の内カバー11の外周に筒状の外カバー10があり、外カバー10にエア供給口13があり、内カバー11と外カバー10の間にエア供給口13と連通するエア流路12があり、エア流路12の下端がエア出口14となっている。内カバー11の先端側に外側に裾拡がりとなる拡散部15があり、拡散部15は外カバー10の先端及びエア出口14よりも先方まで突出しており、エア供給口13から供給されて前記エア流路内12を通過してエア出口14から噴出されるエアが拡散部15により外側に拡散されるようにしたノズルカバー2。前記溶接ノズルの外周に前記ノズルカバーを備えたカバー付き溶接ノズル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスシールドアーク溶接用の溶接ノズルに脱着可能なノズルカバーであり、
前記ノズルカバーは、溶接ノズルの外周に装着される筒状の内カバーの外周に筒状の外カバーがあり、
前記外カバーにエア供給口があり、
前記内カバーと外カバーの間に、前記エア供給口と連通するエア流路があり、
前記エア流路の下端がエア出口となっており、
内カバーの先端側に、外側に裾拡がりとなる拡散部があり、拡散部は外カバーの先端及びエア出口よりも先方まで突出しており、
前記エア供給口から供給されて前記エア流路内を通過してエア出口から噴出されるエアが、前記拡散部によりその外側に拡散されるようにした、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項2】
請求項1記載のノズルカバーにおいて、
拡散部がエア出口の外側まで突出する裾拡がりである、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のノズルカバーにおいて、
拡散部が内カバーの先端側全周又はほぼ全周に形成されている、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項4】
ガスシールドアーク溶接用の溶接ノズルであり、
前記溶接ノズルの先端側外周面に、当該外周面の外側に突出するリング状の鍔と、凹溝の双方又は一方が一又は二以上あり、
二以上の鍔又は凹溝は、溶接ノズルの軸方向に間隔をあけて設けられている、
ことを特徴とする溶接ノズル。
【請求項5】
ガスシールドアーク溶接用の溶接ノズルであり、
前記溶接ノズルの外周にノズルカバーが脱着可能に装備され、
前記溶接ノズルが請求項4記載の溶接ノズルであり、
前記ノズルカバーが請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノズルカバーであり、
前記溶接ノズルの先端又は溶接ノズルの鍔又は凹溝が、ノズルカバーの拡散部よりも先方に突出している、
ことを特徴とするカバー付き溶接ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスシールドアーク溶接用のノズル(以下「溶接ノズル」という。)の外周に被せることのできるカバー(以下「ノズルカバー」という。)と、溶接ノズルと、溶接ノズルの外周にノズルカバーが装着されたカバー付き溶接ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接はさまざまな産業分野で幅広く利用されている。アーク溶接は溶接棒(又はワイヤ)が溶ける消耗電極式(溶極式)と、溶けない非消耗電極式(非溶極式)の二種類の方式に大別できる。また、アーク溶接には作業者が溶加材(溶接棒)を交換する手溶接と、溶接棒が自動的に供給される自動溶接がある。いずれの方式であっても、アーク溶接ではシールドガスによって溶接箇所を囲って大気から保護している。本発明のノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズルは前記いずれの方式のアーク溶接にも適用できるものである。
【0003】
アーク溶接する場合、スパッタが発生して作業現場の周囲に飛散する。飛散したスパッタが近くにあるネジや金属部品等に付着すると、ネジや金属部品が使用できなくなることがある。この問題を解決すべく、スパッタの付着防止装置が開発されている。主な例として特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-83282号公報
【特許文献2】特開平6-122089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アーク溶接時に発生するスパッタの飛散を抑制できるノズルカバーと、溶接ノズルと、カバー付き溶接ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[ノズルカバー]
本発明のノズルカバーは、溶接ノズルに脱着可能なノズルカバーであり、溶接ノズルの外周に装着して、外部から圧縮空気(エア)を送ってそのエアを噴出できるカバーであり、筒状の内カバーの外周に筒状の外カバーがあり、内カバーと外カバーの間にエア流路があり、外カバーにエア流路と連通しているエア供給口があり、エア流路の下端がエア出口であり、内カバーの先端側に、外側に裾拡がりとなる拡散部があり、拡散部が外カバーの先端部及びエア出口よりも先方まで突出しているものである。
【0007】
[溶接ノズル]
本発明の溶接ノズルは、溶接ノズルの先端側外周にリング状の鍔と凹溝の双方又はいずれか一方を一又は二以上備えたものである。鍔又は凹溝が二以上の場合はそれらを溶接ノズルの先端側軸方向に間隔をあけて設ける。鍔と凹溝の双方を設ける場合は凹溝を鍔よりもノズルの先端側に設けるのが望ましい。
【0008】
[カバー付き溶接ノズル]
本発明のカバー付き溶接ノズルは、溶接ノズルの外周に前記ノズルカバーを脱着可能に取り付けたものである。この場合、溶接ノズルの先端側がノズルカバーの拡散部よりも先方に突出するように取り付ける。
【発明の効果】
【0009】
[ノズルカバー]
本発明のノズルカバーは、内カバーの先端側に、外側に裾拡がりとなる拡散部を備えているので、ノズルカバーのエア出口から噴出されるエアが、ノズルカバーの拡散部により外側に拡散されて、アーク溶接により生ずるスパッタの飛散を抑制することができ、スパッタが溶接箇所の付近にあるネジや金属部品等に付着しにくくなる。
【0010】
[溶接ノズル]
本発明の溶接ノズルは、鍔と凹溝の双方又はいずれか一方を備えているので、ノズルカバーのエア出口から噴出されるエアが、溶接ノズルのガス通路の出口側に回り込みにくくなる。このため、ガス通路の出口から噴出されるシールドガスの噴出に悪影響が及びにくくなる。
【0011】
[カバー付き溶接ノズル]
本発明のカバー付き溶接ノズルは、前記溶接ノズルに前記ノズルカバーが装着されているので、前記ノズルカバーと溶接ノズルの双方の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のカバー付き溶接ノズルの断面図。
図2】本発明のカバー付き溶接ノズルであって、鍔付きノズルの断面図。
図3】本発明のカバー付き溶接ノズルであって、溝付きノズルの断面図。
図4】本発明のカバー付き溶接ノズルであって、鍔と溝が付いたノズルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
図1は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態1であり、溶接ノズル1の外周にノズルカバー2を取り付けてある。
【0014】
[溶接ノズル]
図1の溶接ノズル1は汎用品であり、先細りの外筒3の上部に連結孔4があり、外筒3の内部に溶接チップ5があり、外筒3の内周面と溶接チップ5の外周面との間にシールドガスが流れるガス通路6があり、ガス通路6の下端がガス出口7である。連結孔4の内周面にはトーチ本体(図示せず)を脱着可能なネジ4aが切られている。溶接チップ5の中心部には溶接ワイヤー8を通すことができる。
【0015】
[ノズルカバー]
図1のノズルカバー2は、外カバー10の内側に内カバー11が外れないように圧入されており、外カバー10と内カバー11の間にエア流路12がある。エア流路12は外カバー10の外側のエア供給口13と連通しており、下端がエア出口14となっていて、エア供給口13から供給される圧縮空気(エア)がエア流路12内を通ってエア出口14から噴出(エアブロー)されるようにしてある。
【0016】
内カバー11は溶接ノズル1の外周に装着できる内径の筒状であり、外カバー10の内側に外れないように圧入してある。内カバー11の先端側には外側に裾広がりとなっている拡散部15がある。拡散部15は外カバー10の先端部16及びエア出口14よりも先方まで突出しており、エア出口14の外側まで突出して裾拡がりになっており、エア出口14から噴出されるエアが衝突して外側に拡散されるようにしてある。拡散部15の拡がり角度αは衝突したエアが外側に拡散し易い角度に設計することができる。拡散部15は内カバー11の先端側全周又はほぼ全周に設けるのが望ましい。
【0017】
外カバー10の上部には固定部17がある。図1では固定部17をネジとしてある。そのネジは締め付けるとその先端が内カバー11に圧接して、内カバー11を溶接ノズル1の外筒3に押し付けて、ノズルカバー2が溶接ノズル1から外れないようになる。固定部17のネジの締め付けを緩めるとネジの先端が内カバー11から離れ、溶接ノズル1の外筒3への内カバー11の押圧が解放されて、ノズルカバー2を溶接ノズル1から取り外すことができるようになる。固定部17はノズルカバー2を溶接ノズル1に固定できるものであれば、他の構造、例えば、内径を拡張・縮小可能なバンド、その他の器具であってもよい。
【0018】
[カバー付き溶接ノズル]
図1はカバー付き溶接ノズルであり、汎用の溶接ノズル1の外周に、前記した構造のノズルカバー2を被せて取り付けてある。図1では、ノズルカバー2を溶接ノズル1の上部外周に被せて、溶接ノズル1の先端側をノズルカバー2の拡散部15よりも先まで突出させてある。このように突出させることにより、溶接トーチを少し斜めに傾けて溶接作業をしても、ノズルカバー2が溶接部材に当接しないようにしてある。
【0019】
図1のカバー付き溶接ノズルの動作]
図1のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、溶接ノズル1のガス通路6に外部からシールドガス(例えば、CO)が供給されて、ガス出口7から噴出される。このとき、ノズルカバー2のエア供給口13からエア流路12に高圧のエアが供給され、そのエアがエア出口14から噴出される(エアブローされる)。噴出されたエアはノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散されて、ガス出口7から噴出されるシールドガスには影響せず、アーク溶接により発生するスパッタの飛散を抑制する。このため、スパッタが遠方まで飛散しにくくなり、溶接箇所の近くにあるネジや金属部品等に落下するスパッタが減少し、ネジや金属部品の不良化を防止することができる。また、飛散するスパッタがノズルカバー2のエア出口14から噴出されるエアにより冷やされるので、スパッタがネジや金属部品等に落下してもそれらに付着しにくくなり、付着しても剥離し易くもなる。
【0020】
(実施形態2)
図2は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態2であり、図1の場合と同様に溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。
【0021】
図2の溶接ノズル1は、基本的構成において図1の溶接ノズル1と同様であり、溶接ノズル1の外筒3の先端側に鍔20を設けたことにおいて異なる。
【0022】
図2の溶接ノズル1は軸方向先端側に間隔をあけて三個の鍔20を設けてある。鍔20はノズルカバー2のエア出口14から噴出されるエアが、溶接ノズル1のガス出口7側に回り込むのを防止するための回り込み防止用である。図2の三個の鍔20の大きさ(突出寸法)、間隔等は前記回り込み防止ができるように設計してある。大きさは全て同じではなく、上段のものを下段のものよりも大きくするとか、その逆とする等してもよい。鍔20はリングを溶接ノズル1の先端部に溶接するなどして取り付けることができるが、汎用のCリングを溶接ノズル1の先端側に設けた凹溝に嵌めるなどして取り付けることもできる。鍔20の数は一個だけ又は二個以上の任意数とすることもできる。二個以上の場合は溶接ノズル1の軸方向に間隔をあけて取り付ける。
【0023】
図2のカバー付き溶接ノズルの動作]
図2のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときも、図1の場合と同様に行う。このとき、エア出口14から噴出されるエアがノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散されるため、図1の場合と同様の効果がある。更には、溶接ノズル1の先端側に回り込むエアは鍔20により回り込みが抑制されるため、ガス出口7まで回り込むエアの量は低減され、ガス出口7から噴出されるシールドガスには影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【0024】
(実施形態3)
図3は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態3であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。
【0025】
図3の溶接ノズル1は、基本的構成において図1の場合と同じであるが、溶接ノズル1の外筒3の先端側に凹溝30を設けたことにおいて異なる。
【0026】
図3の溶接ノズル1は軸方向先端側に間隔をあけて三個の凹溝30を設けてある。凹溝30はノズルカバー2のエア出口14から噴出されるエアが、溶接ノズル1のガス出口7側に回り込むのを防止するための回り込み防止用である。図3の三個の凹溝30はいずれもリング状(環状)であり、深さ、幅、間隔等は前記回り込み防止ができるように設計してある。深さ、広さは全て同じではなく、上段のものを下段のものよりも深く、広くするとか、その逆とする等してもよい。凹溝30は螺旋状であってもよい。凹溝30の数は一個でも二個以上の任意数でもよい。
【0027】
図3のカバー付き溶接ノズルの動作]
図3のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1図2の場合と同様に行う。このとき、エア出口14から噴出されるエアはノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散されるため、図1の場合と同様の効果がある。更には、溶接ノズル1の先端側に噴出されたエアは凹溝30により、溶接ノズル1のガス出口7側への回り込みが抑制されるため、ガス出口7から噴出されるシールドガスには影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【0028】
(実施形態4)
図4は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態4であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。
【0029】
図4の溶接ノズル1は、基本的構成において図1の場合と同じであるが、溶接ノズル1の外筒3の先端側に鍔20と凹溝30の双方を設けたことにおいて異なる。
【0030】
図4の溶接ノズル1は軸方向先端側に間隔をあけて二個の凹溝30と一個の取り付け溝21を設け、取り付け溝21に鍔20を取り付けてある。凹溝30及び鍔20はノズルカバー2のエア出口14から噴出されるエアが、溶接ノズル1のガス出口7側に回り込むのを防止するための回り込み防止用である。図4の二個の凹溝30は図3の凹溝30と同様にリング状(環状)であるが、前記回り込みを防止できれば、螺旋状であってもよい。図4の鍔20は図2の鍔20と同様のものである。凹溝30の数、鍔20の数は任意数とすることができる。取り付け溝21は図3の最上段の凹溝30のように、下の二個の凹溝30よりも浅く、狭くするとCリングを取り付けやすい。
【0031】
図4のカバー付き溶接ノズルの動作]
図4のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1図3の場合と同様に行う。このときも、エア出口14から噴出されるエアがノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散されるため、図1の場合と同様の効果がある。更には、溶接ノズル1の先端側に噴出されたエアは鍔20と凹溝30の双方により、溶接ノズル1のガス出口7側への回り込みが抑制されるため、ガス出口7から噴出されるシールドガスには影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
前記実施形態1~4は、本発明の一例である。本発明は、本発明の課題を解決可能な範囲で設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 溶接ノズル
2 ノズルカバー
3 外筒
4 連結孔
4a ネジ
5 溶接チップ
6 ガス通路
7 ガス出口
8 溶接ワイヤー
10 外カバー
11 内カバー
12 エア流路
13 エア供給口
14 エア出口
15 拡散部
16 (外カバーの)先端部
17 固定部
20 鍔
21 取り付け溝
30 凹溝
図1
図2
図3
図4