(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074159
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
B41M5/52 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186963
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】本橋 晃
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111CA03
2H111CA04
2H111CA05
2H111CA23
2H111CA30
2H111CA41
2H111CA43
2H111CA45
(57)【要約】
【課題】発色特性およびブロッキング抑制において優れた熱転写シートを提供する。
【解決手段】熱転写シート1は、紙を含んで構成された基材10と、基材の第一面10aに形成された接着層20と、接着層と接合された断熱層30と、断熱層上に形成された下地層40と、下地層上に形成された受像層50と、基材において、第一面と反対側の第二面10bに形成された第一ポリオレフィン層60と、第一ポリオレフィン層上に形成された第二ポリオレフィン層70とを備える。受像層は、ガラス転移点が40℃以下の樹脂を10質量パーセント以上90質量パーセント以下含む。第二ポリオレフィン層の算術平均粗さSRaは1.0μm以上5.0μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を含んで構成された基材と、
前記基材の第一面に形成された接着層と、
前記接着層と接合された断熱層と、
前記断熱層上に形成された下地層と、
前記下地層上に形成された受像層と、
前記基材において、前記第一面と反対側の第二面に形成された第一ポリオレフィン層と、
前記第一ポリオレフィン層上に形成された第二ポリオレフィン層と、
を備え、
前記受像層は、ガラス転移点が40℃以下の樹脂を10質量パーセント以上90質量パーセント以下含み、
前記第二ポリオレフィン層の算術平均粗さSRaが1.0μm以上5.0μm以下である、
熱転写シート。
【請求項2】
前記接着層は、溶剤で溶解できる接着剤からなる、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記第一ポリオレフィン層および前記第二ポリオレフィン層が共押出加工により形成されている、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記第二ポリオレフィン層の密度が0.93g/cm3以上である、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記断熱層が二軸延伸フィルムからなる、
請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記第一ポリオレフィン層および前記第二ポリオレフィン層の厚さの和をa、前記断熱層の厚さをbとしたときの比率b/aが0.3~2.0の範囲内である、
請求項1に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シート、より詳しくは、転写対象に意匠性を付与するための熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
文字又は画像等を被転写体に形成する印刷方式として、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が知られている。
昇華型熱転写方式は、熱転写リボンの染料層と、熱転写シートの受像層とを互いに重ね合わせ、次いで、電気信号により発熱が制御されるサーマルヘッドによって熱転写リボンを加熱することで、染料層中の染料を昇華させて受像層へ移行させ、受像層上に所望の文字、画像等を形成させる方式である。
昇華型熱転写方式は、昇華型の染料を用いて濃度階調を自由に調節できることから、自然画を比較的忠実に再現することができる。このため、昇華型熱転写用の熱転写シートも、一般プリンタ用、アミューズメント用、証明写真の自動販売機用などの様々な用途で写真印画用紙として使用されている。
【0003】
熱転写シートの基本的な構成として、紙を用いた基材シート上に、染料を受容する受像層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱転写シートには、さまざまな要求特性があり、重要な特性として、発色特性、受像紙加工時のブロッキング抑制がある。
発色特性においては、より自然な画質を実現するために、あらゆる諧調においてシアン、マゼンタ、イエローの印画濃度がバランスよく発色していることが望まれ、高いコントラストを得るためには、高い印画濃度を保持していることが要求される。
熱転写シートは、一般にロールトゥロール加工を経て製造されるが、受像層の樹脂層が軟化しやすい樹脂などを用いると、加工において受像紙の背面側に接触した受像層が転写されてしまうブロッキングが発生し、製造が困難となる。このため、熱転写シートにおいてブロッキング抑制は重要である。
【0006】
本発明は、発色特性およびブロッキング抑制において優れた熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、紙を含んで構成された基材と、基材の第一面に形成された接着層と、接着層と接合された断熱層と、断熱層上に形成された下地層と、下地層上に形成された受像層と、基材において、第一面と反対側の第二面に形成された第一ポリオレフィン層と、第一ポリオレフィン層上に形成された第二ポリオレフィン層とを備える熱転写シートである。
受像層は、ガラス転移点が40℃以下の樹脂を10質量パーセント以上90質量パーセント以下含む。
第二ポリオレフィン層の算術平均粗さSRaは1.0μm以上5.0μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱転写シートは、発色特性およびブロッキング抑制において優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の熱転写シート1を示す模式断面図である。
図1に示すように、熱転写シート1は、基材10と、接着層20と、断熱層30と、下地層40と、受像層50と、第一ポリオレフィン層60と、第二ポリオレフィン層70とを備えている。
接着層20、断熱層30、下地層40、および受像層50は、基材10の第一面10a上にこの順で設けられている。第一ポリオレフィン層60および第二ポリオレフィン層70は、第一面10aと反対側の第二面10b上にこの順で設けられている。
【0011】
基材10としては、上質紙、中質紙、クラフト紙、アート紙、コート紙等の各種の紙を使用できる。基材10の厚さは、熱転写シートの用途等に基づいて適宜設定できる。一例を挙げると、その範囲は10μm~250μm程度であり、15μm~200μm程度が好ましい。
【0012】
基材10の厚さについては、強度や耐熱性等を考慮すると、4.5マイクロメートル(μm)以上36μm以下の範囲のものが使用可能である。より好ましくは、12μm以上16μm以下程度の厚さが好ましい。基材10が薄すぎるとレリーフ層(後述)の形成時に不具合が起こりやすくなる。また、基材10が厚すぎると、曲面への追従性や転写効率が低下しやすくなる。
【0013】
断熱層30は、多数の微細な空隙を有しており、サーマルヘッドからの熱印加時の断熱性、およびクッション性等を熱転写シート1に付与する。断熱層を形成する樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂材料を適宜選択することができる。断熱性とクッション性の観点からは、発泡ポリプロピレン樹脂が好ましい。
断熱層30の厚さは、印画物としてのコシ(剛性)、強度、耐熱性等を考慮して適宜設定できる。一例を挙げると、その範囲は10μm~100μm程度であり、20μm~50μm程度が好ましい。
【0014】
接着層20は、基材10と断熱層30とを接合する。接着層20の材料としては、ポリエステルポリオ―ル、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等の樹脂や、これらの樹脂をイソシアネートで架橋した重合体等を例示でき、溶剤で溶解できるものが好ましい。
接着層20の厚さは適宜設定できる。一例を挙げると、その範囲は0.5μm~10μm程度であり、1μm~5μm程度が好ましい。
本実施形態において、基材10と断熱層30とは、接着層20となる接着剤を用いたドライラミネーションにより接合されている。
【0015】
下地層40は、断熱層30と受像層50との密着性を向上させ、熱転写シート1の印画後の保存性を向上する。
下地層40の主な材料は樹脂であり、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、およびこれら樹脂の共重合体等を例示できる。これらの材料は、単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
下地層40の厚さは、適宜設定できる。一例を挙げると、その範囲は0.1μm~3μm程度であり、0.2μm~1μm程度が好ましい。
【0016】
受像層50は、ガラス転移点(Tg)が40℃以下の樹脂を少なくとも10質量%(wt%)以上90wt%以下含む。
受像層50に好適に用いることのできる材料としては、特許第4829127号に記載のものを挙げることができる。
【0017】
受像層50は、塩化ビニル成分、ポリエステル成分、シリコーン成分等を含有してもよい。
塩化ビニル成分を含むバインダ樹脂として、塩化ビニル-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、塩化ビニル-アクリル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル-スチレン共重合体等を例示できる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0018】
ポリエステル成分を含むバインダ樹脂の一例として、非晶質ポリエステル、飽和共重合ポリエステル、結晶質ポリエステル等を例示できる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0019】
シリコーン成分としては、エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルなどの反応性を有する変性シリコーンや、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの非反応性シリコーンオイル等を例示できる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0020】
受像層50は、信頼性やにじみなどに悪影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて造膜助剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光染料、等の各種添加剤を含有してもよい。
受像層50の厚さは、0.1μm以上10μm以下とでき、1μm以上5μm以下程度が好ましい。受像層50が薄くなると印画濃度が低下する傾向があり、受像層50が厚くなると、製造コストが増加したり、膜のクラック等が生じやすくなったりする傾向があるため、印画画質等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0021】
第一ポリオレフィン層60および第二ポリオレフィン層70は、材料樹脂を用いた共押出により基材10の第二面10b上に形成できる。
第一ポリオレフィン層60は、成形性を考慮すると低密度ポリエチレン(LDPE)を主成分とする樹脂材料で形成することが好ましい。
第二ポリオレフィン層70は、使用時にプリンタの各機構と接触する部位であるため、プリント搬送性に影響する。良好な搬送性を実現する観点からは、高密度ポリエチレン(HDPE)を主成分とする樹脂材料で形成されることが好ましい。この樹脂材料には、成形性を調節するために、LDPEを適宜混合してもよい。
【0022】
熱転写シート1は、製造時にロール状に巻き取られるため、巻き取られた際に受像層50と第二ポリオレフィン層70とが接触する。したがって、第二ポリオレフィン層70は、熱連射シートがロール状で保管等される際のブロッキングに影響する。
発明者は、ブロッキングを抑制できる基材10の第二面10b側の樹脂層の構成について検討する中で、同一の樹脂材料で形成された2層構造の樹脂層であっても、ブロッキング抑制効果が異なることを発見した。さらに検討すると、2層の樹脂を共押出する際のエンボスロールが異なるとブロッキング抑制効果が変化することが分かった。
共押出により形成される樹脂層の表面には、エンボスロールの表面形状が転写されるため、樹脂層の表面の表面粗さはエンボスロールの表面粗さと概ね同様となる。発明者は、種々のエンボスロールを用いた検討により、第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを1.00μm~5.00μmの範囲とすることで、ブロッキングを好適に抑制できることを見出した。そして、このような第一ポリオレフィン層60および第二ポリオレフィン層70と、上述した構成の受像層50とを組み合わせることにより、発色特性およびブロッキング抑制の両方に優れた熱転写シートの実現に成功した。
【0023】
本発明の熱転写シートについて実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、実施例および比較例の内容によって何ら制限されない。
文中における「部」は、とくにことわらない限り質量部を意味する。
【0024】
(実施例1)
基材10として、両面グロスコート紙(坪量150g/m2)を準備した。この紙は、両面に塗布量10g/m2の塗工が実施され、コート層が設けられている。
【0025】
基材10の一方の面に、共押出し成形によって第一ポリオレフィン層60(厚さ15μm)および第二ポリオレフィン層70(厚さ15μm)を形成した。共押出し成形時のエンボスロールを選択することにより、第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを2.0μmに制御した。
第一ポリオレフィン層60の樹脂材料はLDPEである。第二ポリオレフィン層70の樹脂材料は、HDPE、LDPE、および帯電防止ポリオレフィンを、16:3:1の比率でドライブレンドし、密度を0.94g/cm3以上に調整したものを用いた。
【0026】
基材10のもう一方の面に、接着剤(タケネートA525/A56)を使用して接着剤厚さが3.0μmの接着層20を形成し、発泡された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)を、断熱層30としてドライラミネートによりと基材10と接合した。その後、40℃、2日のエージングを実施し、接着層20を硬化させた。
【0027】
続いて、断熱層30上に、ウレタン系塗料(第一工業製薬社製 スーパーフレックス210)を乾燥後膜厚が1μmとなるように塗工し、下地層40を形成した。さらに、下地層40上に下記組成のインキ1を乾燥後膜厚が3μmとなるようにグラビア印刷にて塗工し、受像層50を形成した。
<インキ1>
ポリエステル樹脂(東洋紡社製 MD-1480:固形分25%、Tg20℃) 9.7部
塩化ビニルアクリルエマルジョン(日信化学工業社製 ビニブラン690:固形分54%、Tg45℃) 40部
シリコーンオイル(信越化学工業社製 KF-353) 2部
水 8部
以上により、実施例1に係る熱転写受像シートを得た。
【0028】
(実施例2)
インキ1に代えて下記組成のインキ2を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ2>
ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロン630:Tg7℃) 5部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC:Tg70℃) 15部
シリコーンオイル(信越化学工業社製 KF-1005) 1部
メチルエチルケトン(MEK) 40部
トルエン(TOL) 40部
【0029】
(実施例3)
インキ1に代えて下記組成のインキ3を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例3に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ3>
ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロンGK-140:Tg20℃) 5部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 15部
シリコーンオイル(KF-1005) 1部
MEK 40部
TOL 40部
【0030】
(実施例4)
インキ1に代えて下記組成のインキ4を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例4に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ4>
スチレン-アクリル系ブロック共重合体(藤倉化成社製 アクリベースMS-2003-1:Tg20℃) 5部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 15部
シリコーンオイル(KF-1005) 1部
MEK 40部
TOL 40部
【0031】
(実施例5)
エンボスロールを変更して第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを1.0μmとした点を除き、実施例2と同様の手順で実施例5に係る熱転写受像シートを得た。
【0032】
(実施例6)
エンボスロールを変更して第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを5.0μmとした点を除き、実施例2と同様の手順で実施例6に係る熱転写受像シートを得た。
【0033】
(実施例7)
インキ1に代えて下記組成のインキ5を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例7に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ5>
ポリエステルポリオール樹脂(クラレ社製 クラレポリオールP-2010:Tg-15.2℃) 5部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 15部
シリコーンオイル(KF-1005) 1部
MEK 40部
TOL 40部
【0034】
(実施例8)
インキ1に代えて下記組成のインキ6を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例8に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ6>
ポリエステル樹脂(MD-1480) 40部
塩化ビニルアクリルエマルジョン(ビニブラン690) 2.3部
シリコーンオイル(KF-353) 2部
水 8部
【0035】
(実施例9)
インキ1に代えて下記組成のインキ7を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例9に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ7>
ポリエステル樹脂(バイロン630) 2部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 18部
MEK 40部
TOL 40部
【0036】
(実施例10)
インキ1に代えて下記組成のインキ8を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例10に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ8>
ポリエステル樹脂(バイロン630) 18部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 2部
MEK 40部
TOL 40部
【0037】
(実施例11)
インキ1に代えて下記組成のインキ9を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例11に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ9>
ポリエステル樹脂(バイロンGK-140) 2部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 18部
MEK 40部
TOL 40部
【0038】
(実施例12)
インキ1に代えて下記組成のインキ10を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例12に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ10>
ポリエステル樹脂(バイロンGK-140) 18部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 2部
MEK 40部
TOL 40部
【0039】
(実施例13)
インキ1に代えて下記組成のインキ11を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例13に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ11>
スチレン-アクリル系ブロック共重合体(アクリベースMS-2003-1) 2部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 18部
MEK 40部
TOL 40部
【0040】
(実施例14)
インキ1に代えて下記組成のインキ12を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例14に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ12>
スチレン-アクリル系ブロック共重合体(アクリベースMS-2003-1) 18部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 2部
MEK 40部
TOL 40部
【0041】
(実施例15)
インキ1に代えて下記組成のインキ13を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例15に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ13>
ポリエステルポリオール樹脂(クラレポリオールP-2010) 2部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 18部
MEK 40部
TOL 40部
【0042】
(実施例16)
インキ1に代えて下記組成のインキ14を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例16に係る熱転写受像シートを得た。
<インキ14>
ポリエステルポリオール樹脂(クラレポリオールP-2010) 18部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 2部
MEK 40部
TOL 40部
【0043】
(比較例1)
インキ1に代えて下記組成のインキAを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1に係る熱転写受像シートを得た。
<インキA>
塩化ビニルエマルジョン(日信化学工業社製 ビニブラン985:固形分40%、Tg80℃) 90部
シリコーンオイル(KF-353) 2部
水 8部
【0044】
(比較例2)
インキ1に代えて下記組成のインキBを用い、エンボスロールを変更して第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを0.5μmとした点を除き、実施例1と同様の手順で比較例2に係る熱転写受像シートを得た。
<インキB>
ポリエステル樹脂(バイロン630) 20部
シリコーンオイル(KF-1005) 1部
MEK 40部
TOL 40部
【0045】
(比較例3)
エンボスロールを変更して第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを5.3μmとした点を除き、比較例2と同様の手順で比較例3に係る熱転写受像シートを得た。
【0046】
(比較例4)
インキ1に代えて下記組成のインキCを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例4に係る熱転写受像シートを得た。
<インキC>
ポリエステル樹脂(MD-1480) 8部
塩化ビニルアクリルエマルジョン(ビニブラン690) 40部
シリコーンオイル(KF-353) 2部
水 8部
【0047】
(比較例5)
インキ1に代えて下記組成のインキDを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例5に係る熱転写受像シートを得た。
<インキD>
ポリエステル樹脂(MD-1480) 40部
塩化ビニルアクリルエマルジョン(ビニブラン690) 1部
シリコーンオイル(KF-353) 2部
水 8部
【0048】
(比較例6)
インキ1に代えて下記組成のインキEを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例6に係る熱転写受像シートを得た。
<インキE>
ポリエステルポリオール樹脂(クラレポリオールP-2010) 1部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 19部
MEK 40部
TOL 40部
【0049】
(比較例7)
インキ1に代えて下記組成のインキFを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例7に係る熱転写受像シートを得た。
<インキF>
ポリエステルポリオール樹脂(クラレポリオールP-2010) 1部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインC) 19部
MEK 40部
TOL 40部
【0050】
各例の熱転写シートに対し、以下の評価を行った。
<印画濃度>
各例の熱転写シートに対して、大日本印刷社製プリンタ DS40付属のリボンを使用し、ウェッジ製のシミュレーター印画評価装置でイエロー、マゼンタ、およびシアンの各色を用いた11ステップ画像を印画した。
各熱転写シートに印画された11ステップ画像のグレースケール上の最大諧調の濃度を濃度測定機にて測定し、OD(Optical Density)値が2.1を超えたものについて合格(〇)とし、OD値が2.1未満の場合は不合格(×)とした。
【0051】
<ブロッキング>
未印画状態の各例の熱転写シートに対し、ブロッキングテスターを用いてブロッキングの有無を確認した。熱転写シートを5枚重ねて一定の加重を掛けた状態で保存(40℃、2日)した。保存後、重ねた熱転写シートを1枚ずつ取り外した。このときに、下側の熱転写シートの受像層が上側の熱転写シートに付着したものが1枚でも見られた場合を不合格(×)とし、そのようなものが1枚もなかった場合を合格(〇)とした。
実施例のパラメータ(受像層におけるTg40℃以下の樹脂の比率、第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRa)および評価結果を表1に、比較例のパラメータおよび評価結果を表2に、それぞれ示す。完成した受像層には、シリコーンオイル、水、MEK、およびTOLは残留しないため、受像層におけるTg40℃以下の樹脂の比率はこれらを除いて算出されている。
【0052】
【0053】
【0054】
表1に示すように、いずれの実施例も、印画濃度およびブロッキング抑制の両方が良好であった。
受像層におけるTg40℃以下の樹脂比率が10wt%未満である比較例1、4、および6では、印画濃度が十分でなかった。
受像層におけるTg40℃以下の樹脂比率が90wt%を超える実施例では、印画濃度に問題はなかったものの、比較例3を除きブロッキングが発生した。このブロッキングは、第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaが2.0μmであっても抑制できなかった。比較例3は、印画濃度に問題はなく、ブロッキングも抑制できたが、第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaが5.0μmを超えていることにより、印画にゆがみを生じた。
以上より、受像層におけるTg40℃以下の樹脂比率を10wt%以上90wt%以下とし、かつ第二ポリオレフィン層70の算術平均粗さSRaを1.0μm~5.0μmとすることで、発色特性とブロッキング抑制とを両立できることが示された。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0056】
例えば、本発明に係る熱転写シートにおいて、断熱層と、第一ポリオレフィン層および第二ポリオレフィン層の厚さの和との比率は適宜設定できるが、第一ポリオレフィン層および第二ポリオレフィン層の厚さの和をa、断熱層の厚さをbとしたときの比率b/aが0.3~2.0の範囲内であることが好ましい。このようにすると、印画後のカールが抑制され、フラットな状態を保ちやすくなる利点がある。
【符号の説明】
【0057】
1 熱転写シート
10 基材
10a 第一面
10b 第二面
20 接着層
30 断熱層
40 下地層
50 受像層
60 第一ポリオレフィン層
70 第二ポリオレフィン層