(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074288
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】複写防止媒体
(51)【国際特許分類】
B42D 25/30 20140101AFI20230522BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B42D25/30 100
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187161
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早坂 哲
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB14
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA36
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA42
2H113CA44
2H113DA47
2H113DA48
2H113DA53
2H113DA54
2H113DA57
2H113DA58
2H113EA07
(57)【要約】
【課題】原本と複写物とを励起光照射下の肉眼での観察により区別可能とする。
【解決手段】光透過性基材が、第1面と、第1面と反対側の面の第2面とを有し、前記光透過性基材が紫外線吸収性を有し、前記第1面は交互に配列した複数の第1着色部及び複数の第1非着色部を備え、前記第2面は、交互に配列した複数の第2着色部及び複数の第2非着色部を備え、前記第1着色部は第1反射光を反射させ、前記第2着色部は第2着色光を反射させ、前記第1着色部は、第1着色顔料及び励起光により発色する第1蛍光顔料を含んだ第1着色層を有し、前記第2着色部は前記第1着色部とは異なる色の第2着色顔料及び第2蛍光顔料を含んだ第2着色層を備えた複写防止媒体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材が、第1面と、第1面と反対側の面の第2面とを有し、前記光透過性基材が紫外線吸収性を有し、
前記第1面は交互に配列した複数の第1着色部及び複数の第1非着色部を備え、
前記第2面は交互に配列した複数の第2着色部及び複数の第2非着色部を備え、
前記第1非着色部及び第2非着色部の幅が5μm以上100μm以下の範囲内にある複写防止媒体。
【請求項2】
前記第1着色部は第1着色光を反射させ、前記第2着色部は第2着色光を反射させ、前記第1着色部は、第1着色顔料及び励起光により発色する第1蛍光顔料を含んだ第1着色層を備え、前記第2着色部は前記第1着色顔料とは異なる色の第2着色顔料と、前記第1蛍光顔料とは異なる色の第2蛍光顔料を含んだ第2着色層を備えた請求項1に記載の複写防止媒体。
【請求項3】
前記第2着色部は光透過性基材を介して第1非着色部と向かい合うように配置し、前記第2非着色部は光透過性基材を介して第1着色部と向かい合うように配置していることを特徴とする請求項1または2に記載の複写防止媒体。
【請求項4】
前記第1非着色部の幅は、前記第1非着色部と光透過性基材を介して向かい合った前記第2着色部の幅と比較してより小さく、
前記第2非着色部の幅は、前記第2非着色部と光透過性基材を介して向かい合った前記第1着色部の幅と比較してより小さい請求項3に記載の複写防止媒体。
【請求項5】
前記第1着色部及び前記第1非着色部は、線形状を有し、幅方向へ交互に配列し、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、線形状を有し、前記幅方向へ交互に配列した請求項3に記載の複写防止媒体。
【請求項6】
前記第1着色部、前記第1非着色部、前記第2着色部及び前記第2非着色部は直線形状を有している請求項3に記載の複写防止媒体。
【請求項7】
前記第1着色部、前記第1非着色部、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、曲線形状を有している部分を含んだ請求項3に記載の複写防止媒体。
【請求項8】
前記第1着色部は、入れ子状の配列パターンを形成し、前記第2着色部は、前記第1着色部に対応して、入れ子状の配列パターンを形成した請求項3に記載の複写防止媒体。
【請求項9】
前記第1着色部及び前記第1非着色部は市松模様状に配列し、前記第2着色部及び前記第2非着色部は市松模様状に配列した請求項3に記載の複写防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカラー複写機の性能向上に伴って、株券及び債券等の有価証券類や各種証明書の偽造が容易になってきている。このためこれら物品には、複写物との判別を可能とした複写防止媒体が使用されることがある。
【0003】
複写防止媒体は、カラー複写機などによる偽造を防止又は牽制するための偽造防止技術が適用された記録媒体である。複写防止媒体としては、例えば、カラー複写機を用いて得られる複写物に、原本には見られない特定の文字や絵柄などのパターンを表示させるものがある。
【0004】
複写防止媒体における偽造防止技術の1つとして、例えばR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の発光を有する蛍光顔料を含む3種の蛍光インクを用いて、複写防止媒体の基材上の画像に対応するRGB画像データを印刷することにより、基材上に蛍光体画像を形成し、白色光下では視認されないが、励起光照射下でRGB光として発色させ、加法混色によって画像に対応した蛍光画像が視認できるようにする画像形成方法が提案されている(特許文献1参照)
【0005】
また複写防止媒体の基材上に画像を設け、この画像が励起光照射下で第1残光時間をもって第1色を発光する第1蛍光体と、第1残光時間より長い第2残光時間をもって第2色を発光する第2蛍光体とを含む複写防止媒体も提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
このような複写防止媒体における印刷物では、第1色と第2色の混合色と、第2色とを呈する2段階の色の変化を示すことになるが、基材上のある1面においての2段階の色の変化のみで、画像からの発光する光にセキュリティ性を確実にもたせることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-35089号公報
【特許文献2】特開2005-67043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、白色光下で視認できる画像の色と、励起光照射下で視認できる一方の面の画像の色とその裏面である他方の画像の色と、それぞれ異なる3種の色の変化を観察者に視認させ、原本と複写物との区別を肉眼での観察により可能とする高いセキュリティ性を有した複写防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための複写防止媒体は、光透過性基材が、第1面と、第1面と反対側の面の第2面とを有し、前記光透過性基材が紫外線吸収性を有し、
前記第1面は交互に配列した複数の第1着色部及び複数の第1非着色部を備え、
前記第2面は交互に配列した複数の第2着色部及び複数の第2非着色部を備え、
前記第1非着色部及び第2非着色部の幅が5μm以上100μm以下の範囲内にある複写防止媒体である。
【0010】
前記第1着色部は第1着色光を反射させ、前記第2着色部は第2着色光を反射させ、前記第1着色部は、第1着色顔料及び励起光により発色する第1蛍光顔料を含んだ第1着色層を備え、前記第2着色部は前記第1着色顔料とは異なる色の第2着色顔料と、前記第2蛍光顔料とは異なる色の第2蛍光顔料を含んだ第2着色層を備えた複写防止媒体である。
【0011】
前記第2着色部は光透過性基材を介して第1非着色部と向かい合うように配置し、前記第2非着色部は光透過性基材を介して第1着色部と向かい合うように配置していることを特徴とする複写防止媒体である。
【0012】
上記の複写防止媒体における真偽判別部の画像領域を白色光下で観察した場合、原本及びカラー複写機による複写物は、透明基材を介して前記第1着色部と前記第2着色部の混色がされた色を観察者は視認し、原本とその複写物とは肉眼での観察により区別はつかない。
【0013】
そこで上記の複写防止媒体における真偽判別部の画像領域を、励起光照射下で前記第1面の前記第1着色部の反射光により観察した場合、前記第1着色部の蛍光着色光の色のみを観察者は視認する。これは原本においては紫外線吸収性を有する光透過性基材を介しているため、前記第2面の前記第2着色部の反射光の影響を受けず、混色された色としてではなく、前記第1着色部の蛍光着色光の色のみを観察者は視認することとなる。
【0014】
同様に上記の複写防止媒体における真偽判別部の画像領域を、励起光照射下で前記第2面の前記第2着色部の反射光による観察した場合、前記第2着色部の蛍光着色光の色のみを観察者は視認し、前記第1面の前記第1着色部の反射光による混色の影響を受けない。
【0015】
前記第1着色部の第1蛍光顔料と前記第2着色部の第2蛍光顔料の色が異なるため、複写防止媒体における原本の励起光照射下での前記第1面からの観察される色と前記第2面からの観察される色も異なる。
【0016】
一方で、カラー複写機による複写物においては、紫外線吸収性を有していない光透過性基材を介しており、前記第1面及び前記第2面から励起光照射下で観察すると、それぞれの逆面側からの反射光による混色の影響を受ける。原本と複写物とで比較した場合に、前記第1面から観察される色の差を視認でき、原本と複写物とを肉眼での観察により区別可能となる。同様に前記第2面からの観察においても、原本と複写物とで視認できる色の差により、肉眼での観察で区別可能となる。
【0017】
以上の通り、上記の複写防止媒体の原本とその複写物とは、白色光下で視認できる画像の色と、励起光照射下で視認できる一方の面の画像の色とその裏面である他方の画像の色とをそれぞれ比較し、肉眼での観察により区別可能となる。
【0018】
前記第1及び第2の非着色部の幅は5μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。5μmより小さい場合は製造的に困難で、100μmより大きい場合、観察者は白色光下で視認できる画像の色を混色の画像として認識しなくなるため本発明の効果が十分に得られない。
【0019】
上記課題を解決する複写防止媒体の更に他の側面によると、第1非着色部の幅と第2非着色部の幅は、等しくてもよく、異なっていてもよい。第1非着色部は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。同様に、第2非着色部は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。
【0020】
上記課題を解決する複写防止媒体の更に他の側面によると、前記第2着色部及び前記第2非着色部はそれぞれ前記第1非着色部及び前記第1着色部と光透過性基材を介して向かい合った上記側面の何れかに係る複写防止媒体が提供される。
【0021】
この構成を採用した場合、複写防止媒体の第1面から観察した場合に視認できる観察画像において、第1非着色部の位置で第2着色部の少なくとも一部が見える。また、複写防止媒体の第2面から観察した場合に視認できる観察画像において、第2非着色部の位置で第1着色部の少なくとも一部が見える。それ故、複写防止媒体の第1面又は第2面から観察した場合に、上述した効果がより確実に得られる。
【0022】
上記課題を解決する複写防止媒体の更に他の側面によると、前記第1非着色部の幅は、前記第1非着色部と光透過性基材を介して向かい合った前記第2着色部の幅と比較してより小さく、
前記第2非着色部の幅は、前記第2非着色部と光透過性基材を介して向かい合った前記第1着色部の幅と比較してより小さい上記側面に係る複写防止媒体が提供される。
【0023】
この構成を採用した場合、複写防止媒体の第1面又は第2面から観察した場合に、上述した効果が更に確実に得られる。
【0024】
上記課題を解決する複写防止媒体の更に他の側面によると、前記第1着色部及び前記第1非着色部は、線形状を有し、幅方向へ交互に配列し、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、線形状を有し、前記幅方向へ交互に配列した上記側面の何れかに係る複写防止媒体が提供される。
【0025】
この複写防止媒体においては、前記第1着色部、前記第1非着色部、前記第2着色部及び前記第2非着色部は直線形状を有していてもよい。或いは、前記第1着色部、前記第1非着色部、前記第2着色部及び前記第2非着色部は、曲線形状を有している部分を含んでいてもよい。或いは、前記第1着色部は、入れ子状の配列パターンを形成し、前記第2着色部は、前記第1着色部に対応して、入れ子状の配列パターンを形成していてもよい。
【0026】
これらの場合、第1及び第2着色部の幅は、線の長さ方向に沿って一定であってもよく、変化していてもよい。また、隣り合った第1着色部は、幅が等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0027】
第1非着色部の幅は、線の長さ方向に沿って一定であってもよく、変化していてもよい。また、複数の第1非着色部の幅はそれぞれ等しくてもよく、異なっていてもよい。同様に、第2非着色部の幅は、線の長さ方向に沿って一定であってもよく、変化していてもよい。また、複数の第2非着色部の幅はそれぞれ等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0028】
或いは、上記課題を解決する複写防止媒体の更に他の側面によると、前記第1着色部及び前記第1非着色部は市松模様状に配列し、前記第2着色部及び前記第2非着色部は市松模様状に配列した上記側面の何れかに係る複写防止媒体が提供される。
【0029】
光透過性基材は、可視光透過性を有している。光透過性基材は、好ましくは、無色透明又は無色半透明である。例えば、光透過性基材は、白色光で照明した場合に、入射光を着色させることなしに透過させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複写防止媒体を概略的に示す平面図。
【
図2】
図1に示す複写防止媒体の一部を拡大して示す断面図。
【
図3】
図1に示す複写防止媒体の第1面の一部を拡大して示す平面図。
【
図4】
図3に示す第1面の一部を拡大して示す平面図。
【
図5】
図1に示す複写防止媒体の第2面の一部を拡大して示す平面図。
【
図6】
図5に示す裏面の一部を拡大して示す平面図。
【
図7】
図1に示す複写防止媒体の第1面を白色光で照明した場合の観察一例を概略的に示す図。
【
図8】
図1に示す複写防止媒体が
図7の条件下で表示する画像を示す図。
【
図9】
図1に示す複写防止媒体の第2面を白色光で照明した場合の観察一例を概略的に示す図。
【
図10】
図1に示す複写防止媒体が
図9の条件下で表示する画像を示す図。
【
図12】
図1に示す複写防止媒体の第1面を励起光で照明した場合の観察一例を概略的に示す図。
【
図14】
図1に示す複写防止媒体の第2面を励起光で照明した場合の観察一例を概略的に示す図。
【
図16】第1変形例に係る複写防止媒体の第1着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図17】第1変形例に係る複写防止媒体の第2着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図18】第2変形例に係る複写防止媒体の第1着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図19】第2変形例に係る複写防止媒体の第2着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本解決手段の一実施形態に係る複写防止媒体を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示す複写防止媒体の一部を拡大して示す断面図である。
図3は、
図1に示す複写防止媒体の第1面の一部を拡大して示す平面図である。
図4は、
図3に示す第1面の一部を拡大して示す平面図である。
図5は、
図1に示す複写防止媒体の第2面の一部を拡大して示す平面図である。
図6は、
図5に示す第2面の一部を拡大して示す平面図である。なお、各図において、X方向及びY方向は、複写防止媒体1の表示面に平行であり且つ互いに直交する方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向、即ち、複写防止媒体1の厚さ方向である。
【0033】
図1に示す複写防止媒体1は、商品券である。複写防止媒体1は、商品券以外の有価証券であってもよい。或いは、複写防止媒体1は、身分証明書などの証明書又は識別カードであってもよい。
【0034】
複写防止媒体1は、
図2に示す光透過性基材11、第1着色層12及び第2着色層13と、
図1に示す印刷層14とを含んでいる。
【0035】
光透過性基材11は、ポリマーフィルムを使用できる。ポリマーフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン(PE)、及びトリアセチルセルロース(TAC)などの光透過性が高い樹脂からなるフィルムが好適である。光透過性基材11には、複写防止媒体の用途に応じて適当なものを選択する。ここでは、一例として、光透過性基材11は、無色透明なポリマーフィルムであるとする。
【0036】
光透過性基材11は、長辺がX方向に平行な長方形状を有している。光透過性基材11は、他の形状を有していてもよい。
【0037】
光透過性基材11がポリマーフィルムである場合、全光線透過率は、87%以上93%以下であることが好ましい。全光線透過率に上限値はないが、ポリマーフィルムの屈折率を考慮すると、93%より高い全光線透過率のポリマーフィルムを得るのは製造的に困難である。ここで、「全光線透過率」は、JISK7375:2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に規定される方法によって得られる値である。
【0038】
光透過性基材11がポリマーフィルムである場合、ヘーズは、4%以下であることが好ましい。ヘーズに下限値はないが、通常は0.1%以上である。ここで、「ヘーズ」は、JISK7136:2000「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に規定される方法によって得られる値である。
【0039】
また、光透過性基材11は、紫外線吸収性を有している。紫外線吸収性を付与する方法に特に制限はなく、光透過性基材11の樹脂材料に紫外線吸収剤を添加する方法、成膜した光透過性基材11に含浸する方法、成膜した光透過性基材11に塗布する方法等が用いられる。
【0040】
成膜した光透過性基材11に塗布する方法としては紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0041】
塗工により形成する場合、紫外線吸収層の厚みを薄くすることが好ましい。前記紫外線吸収層の厚みとしては、0.01μm以上1,000μm以下が好ましく、0.02μm以上500μm以下がより好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、紫外線吸収量が足りなくなることがあり、1,000μmを超えると、可視光の透過率が下がることがある。前記紫外線吸収層における紫外線吸収剤の含有量としては、用いる紫外線吸収剤によって異なり、一概に規定することができないが、本複写防止媒体の効果を損なうことのない紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
【0042】
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
市販されている紫外線吸収性を有する光透過性基材11としては、例えば、テイジン製のテトロンフィルム等の紫外線吸収PETフィルムなどが挙げられる。
【0044】
光透過性基材11は、第1面とその反対側の面である第2面とを有している。第1面及び第2面は、それぞれ、
図2における光透過性基材11の上面及び下面である。
【0045】
光透過性基材11の第1面に設けられている第1着色層22は、第1面で交互に配列した複数の第1着色部121及び第1非着色部122からなっている。第1着色部121は、第1着色顔料と第1蛍光顔料とを含んでおり、白色光で照明した場合に第1着色顔料にて第1着色光を反射させ、励起光で照明した場合に第1蛍光顔料にて第1蛍光着色光を反射させる。第1非着色部122は、第1面より白色光で照明した場合に、白色光を着色させずに透過させ、励起光で照明した場合は光透過性基材11の紫外線吸収性により第2面への透過を抑制する。一例によれば、第1非着色部122は、第1着色部121間に挟まれた空間である。他の例によれば、第1非着色部122は、第1着色部121間の隙間を埋め込んだ、無色の透明材料からなる。
【0046】
光透過性基材11の第2面に設けられている第2着色層23は、第2面で交互に配列した複数の第2着色部131及び第2非着色部132を含んでいる。第2着色部131は、前記第1着色顔料とは異なる色の第2着色顔料と、第1蛍光顔料とは異なる色の第2蛍光顔料とを含んでおり、白色光で照明した場合に第2着色顔料にて第2着色光を反射させ、励起光で照明した場合に第2蛍光顔料に係る第2蛍光着色光を反射させる。第2非着色部132は、第2面より白色光で照明した場合に、白色光を着色させずに透過させ、励起光で照明した場合は光透過性基材11の紫外線吸収性により第1面への透過を抑制する。一例によれば、第2非着色部132は、第2着色部131間に挟まれた空間である。他の例によれば、第2非着色部132は、第2着色部131間の隙間を埋め込んだ、無色の透明材料からなる。
【0047】
第1着色部121及び第2着色部131の厚さは、0.3μm以上であることが好ましい。第1着色部121及び第2着色部131を0.3μm未満にすると、光透過性基材11に対する密着力が不十分となる可能性がある。
【0048】
第1着色部121及び第2着色部131は、印刷によって形成することができる。例えば、先ず、光透過性基材11の第1面に第1着色部121を印刷によって形成する。次に、位置合わせを適宜行い、光透過性基材11の第2面に第2着色部131を印刷によって形成する。印刷する順番は第2着色部131から行ってもよい。印刷法は、スクリーン印刷、スクリーンオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、及び反転印刷などの公知の印刷法から、形成すべき第1着色部121及び第2着色部131の寸法や間隙に応じて適宜選定する。
【0049】
白色照明下で視認される第1着色部121及び第2着色部131は、着色顔料とポリマーとを含むことができる。着色顔料としては、当該分野で知られている有機顔料、無機顔料又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0050】
無機顔料としては、金属;二酸化チタン、亜鉛華、及び鉄黒に代表される酸化物;水酸化物;硫化物;セレン化物;フェロシアン化物;クロム酸塩;硫酸塩;炭酸塩;ケイ酸塩;燐酸塩;及び炭素等がある。有機顔料としては、炭素化合物、ニトロソ系化合物;ニトロ系化合物;アゾ系化合物;レーキ系顔料、フタロシアニン系化合物、及び縮合多環材料等がある。
【0051】
ポリマーは、無色透明の樹脂又は着色した樹脂からなる。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド(PI)等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、メタクリル酸・スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミド(PI)を用いることが可能である。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアルキド等の当該分野でよく知られている熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0053】
これら以外にも、樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチル(POM)、ポリアミド(PA)、及びポリフェニルサルフィド(PPS)等のエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックを用いることも可能である。この他にも、電離放射線によって硬化する樹脂、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポシキ樹脂、ポリエステル樹脂、及びチオール樹脂を用いることが可能である。
【0054】
第1着色部121と第2着色部131は、光散乱粒子を更に含むことができる。光散乱粒子としては、真球形状粒子又は不定型形状粒子を用いる。光散乱粒子の材料は、有機物及び無機物の何れであってもよい。
【0055】
光散乱粒子に使用可能な有機物は、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体若しくはその架橋体、メラミン-ホルマリン縮合物、ウレタン樹脂、ポリエステル、シリコン樹脂、フッ素粒子、エポキシ樹脂、及びこれらの共重合体である。光散乱粒子に使用可能な無機物は、例えば、スメクタイト、カオリナイト、及びタルク等の粘土化合物;シリカ、チタニア、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウム等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸ストロンチウム等の無機炭酸塩;塩化バリウム及び塩化ストロンチウム等の無機塩化物;硫酸バリウム及び硫酸ストロンチウム等の無機硫酸塩;硝酸バリウム及び硝酸ストロンチウム等の無機硝酸塩;水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化ストロンチウム等の無機水酸化物;並びにガラスである。
【0056】
紫外線照射下で視認される第1着色部121及び第2の着色部131は、蛍光顔料により蛍光発色する。蛍光顔料に使用する蛍光体としては、蛍光発色させる色に応じて、無機蛍光体および有機蛍光体のいずれかを選択することができる。赤色光を発光する無機蛍光体としては、例えば、Y2O3:Eu、YVO4:Eu、3.5MgO、0.5mgF、2GeO2:Mn、(Y,Gd)Bo3:Eu、Y(P,V)O4:Eu等が挙げられる。緑色光を発光する無機蛍光体としては、例えば、ZnO:Zn、Zn3SiO2:Mn、Zn3S:Cu,Al、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Zn2SiO4:Mn、ZnS:Ag,Cu、(Zn,Cd)S:Cu、ZnS:Cu、Gd2O2:Tb、La2O2S:Tb、Y2SiO5:Ce,Tb、Zn2GeO4:Mn、CeMgAl11O13:Tb、SrGa2S4:Eu2+、ZnS:Cu,CO、MgO・nB2O3:Ce,Tb、LaOBr:Tb,Tm、La2O2S:Tb、ZnS:Cu(Mn)等が挙げられる。また、青色光を発光する無機蛍光体としては、例えば、ZnS:Ag、CaWO4、Y2SiO5:Ce、ZnS:Ag,Ga,Cl、Ca2B5O3Cl:Eu2+、BaMgAl14O23:Eu2+、Sr3(PO2)3Cl:Eu等が挙げられる。
【0057】
一方、有機蛍光体としては、例えば、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセイン、エオシン等の色素、アントラセン等のベンゼン環を持つ化合物等が挙げられる。
【0058】
第1着色部121及び第2着色部131を形成するのに使用するインクは、上記の成分に加えて、溶剤を更に含むことができる。溶剤は、例えば、ドデカン又はテトラデカンである。溶剤として、他の化合物又は組成物を使用してもよい。例えば、速乾性インキでは、メチルエチルケトン(MEK)、エタノール及びアセトンのように、沸点が低く、常温で揮発するものを溶剤として使用することができる。水性インキでは、水(精製水)を溶剤として使用することができる。オイル系インキでは、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、及び高級アルコールのように常温で揮発し難いオイルを溶剤として使用することができる。
【0059】
印刷層14は、光透過性基材11の第1面に設けられている。印刷層14は、例えば、文字、模様、図形、写真、又はそれらの組み合わせを表示する。
【0060】
印刷層14は、光透過性基材11の第2面に更に設けることができる。或いは、印刷層14は、光透過性基材11の第1面に設ける代わりに、第2面に設けることもできる。或いは、印刷層14は、省略することもできる。
【0061】
印刷層14は、
図1に示すように、開口部である窓Wを有している。複写防止媒体1の窓Wに対応した部分は、複写防止媒体1の真偽判別に利用する真偽判別部である。
【0062】
光透過性基材11の第1面は、窓Wの位置に、
図2及び
図3に示す第1印刷領域R1A及び第1非印刷領域R1Bを有している。他方、第2面は、窓Wの位置に、
図2及び
図5に示す第2印刷領域R2A及び第2非印刷領域R2Bを有している。
【0063】
ここでは、第1印刷領域R1Aは、第1着色部と第1非着色部で形成されており、文字列「COPY」に対応したパターンとなっている。第1非印刷領域R1Bは第1印刷領域R1A以外の領域である。また、ここでは、第2印刷領域R2Aは、文字列「COPY」の鏡像に対応したパターンであり、第2非印刷領域R2Bはその反転パターンである。
【0064】
第1着色層12は、光透過性基材11の第1面にあって、窓Wの位置に設けられている。第1着色層12は、
図2及び
図3に示す第1非印刷領域R1B上には設けられておらず、第1印刷領域R1A上に設けられている。
【0065】
第1着色層12は、
図2及び
図4に示すように、第1面で交互に配列した第1着色部121及び第1非着色部122を含んでいる。第1着色部121及び第1非着色部122は、線形状を各々が有し、幅方向へ交互に配列している。ここでは、第1着色部121及び第1非着色部122は、X方向へ伸びた形状を各々が有しており、Y方向へ交互に配列している。
【0066】
第1着色部121は、白色光で照明した場合に第1着色光を反射させる。第1着色部121は、第1着色顔料と第1蛍光顔料とポリマーとを含んだインクから形成される。
【0067】
第1着色部121の幅W1aは、第1着色部121の長さ方向に沿って一定である。また、隣り合った第1着色部121は、幅W1aが互いに等しい。幅W1aは、5μm以上100μm以下の範囲内にある。
【0068】
第1非着色部122は、白色光で照明した場合に、白色光を着色させずに透過させる。ここでは、第1非着色部122は、隣り合った第1着色部121間の空間である。
【0069】
第1非着色部122の幅W1bは、第1非着色部122の長さ方向に沿って一定である。また、隣り合った第1非着色部122は、幅W1bが互いに等しい。
【0070】
幅W1bは、5μm以上100μm以下の範囲内にある。ここでは、幅W1bは、幅W1aと比較してより小さい。なお、幅W1aと幅W1bとの和は、第1着色部121又は第1非着色部122の配列のピッチP1である。
【0071】
第2着色層13は、光透過性基材11の第2面にあって、窓Wの位置に設けられている。第2着色層13は、
図2及び
図5に示す第2非印刷領域R2B上には設けられておらず、第2印刷領域R2A上に設けられている。
【0072】
第2着色層13は、
図2及び
図6に示すように、第2面で交互に配列した第2着色部131及び第2非着色部132を含んでいる。第2着色部131及び第2非着色部132は、第1着色部及び第1非着色部に対応して第2面で交互に配列している。第2着色部131及び第2非着色部132は、線形状を各々が有し、幅方向へ交互に配列している。ここでは、第2着色部131及び第2非着色部132は、X方向へ伸びた形状を各々が有しており、Y方向へ交互に配列している。
【0073】
第2着色部131は、白色光で照明した場合に、第2着色光を反射させる。第2着色部131は、第1着色光とは色が異なる第2着色顔料と第2蛍光顔料とポリマーとを含んだインクから形成される。
【0074】
第2着色部131の幅W2aは、第2着色部131の長さ方向に沿って一定である。また、隣り合った第2着色部131は、幅W2aが互いに等しい。
【0075】
幅W2aは、5μm以上100μm以下の範囲内にある。ここでは、幅W2aは、幅W1aと等しい。
【0076】
第2非着色部132は、白色光で照明した場合に、白色光を着色させずに透過させる。ここでは、第2非着色部132は、隣り合った第2着色部131間の空間である。
【0077】
第2非着色部132の幅W2bは、第2非着色部132の長さ方向に沿って一定である。また、隣り合った第2非着色部132は、幅W2bが互いに等しい。
【0078】
幅W2bは、5μm以上100μm以下の範囲内にある。ここでは、幅W2bは、幅W2aと比較してより小さい。また、ここでは、幅W2bは、幅W1bと等しい。なお、幅W2aと幅W2bとの和は、第2着色部131又は第2非着色部132の配列のピッチP2である。
【0079】
図2に示すように、第2着色部131は、第1非着色部122と光透過性基材11を介して向かい合っている。また、第1着色部121は、第2非着色部132と光透過性基材11を介して向かい合っている。第1面に対して平行な平面への正射影において、第2着色部131の各々の中心線は、その第2着色部131と向き合った第1非着色部122の中心線と一致している。また、この正射影において、第1着色部121の各々の中心線は、その第1着色部121と向き合った第2非着色部132の中心線と一致している。
【0080】
本解決手段における複写防止媒体1の原本とカラー複写機による複写物2は、肉眼による観察で区別可能である。これについて、以下に説明する。
【0081】
図7は、
図1に示す複写防止媒体1が表示する反射画像を観察している様子の一例を概略的に示す図である。
図8は、
図1に示す複写防止媒体1が
図7の条件下で表示する画像を示す図である。
【0082】
図7では、複写防止媒体1の第1面を光源LSからの照明光ILが斜め方向から照明し、複写防止媒体1が射出する反射光RLを観察者OBが観察するように、光源LS及び複写防止媒体1を配置している。なお、照明光ILは白色光である。
【0083】
この条件下では、第2着色層13の表示への寄与は、第1着色層12の表示への寄与と比較して小さい。即ち、第1着色光の表示への寄与は、第2着色光の表示への寄与と比較して大きい。従って、この条件下で観察者OBが視認する画像I2における文字列「COPY」に対応した領域の色は、第2着色光の色よりも、第1着色光の色に近い混色の色として視認される。
【0084】
一方で
図9に示す複写防止媒体1の第2面からの観察においては、第1着色層12の表示への寄与は、第2着色層13の表示への寄与と比較して小さい。即ち、第2着色光の表示への寄与は、第1着色光の表示への寄与と比較して大きい。従って、この条件下で
図10に示す観察者OBが視認する画像I3における反転した文字列「COPY」に対応した領域の色は、第1着色光の色よりも、第2着色光の色に近い混色の色として視認される。
【0085】
第1着色部121と第2非着色部132及び、第1非着色部122と第2着色部131が1:1の関係性で印刷されている画像領域からなる条件下では、第1面からの観察では、第1着色層12の表示への寄与は、第2着色層13の表示への寄与と同程度となり、一方で第2面からの観察では、第2着色層13の表示への寄与は、第1着色光12の表示への寄与も同程度となる。従って、観察者OBが視認する画像I3における字列「COPY」に対応した領域の色は、どちらも面から観察しても同じ色の混色として視認される。
【0086】
観察者OBが視認する画像I3における字列「COPY」に対応した領域の色は、第1着色部121と第2非着色部132及び、第1非着色部122と第2着色部131で構成される画像領域に占める割合によって変化し、画像領域の第1面からの観察と、第2面からの観察とで、同色でも異なっている色でもよい。
【0087】
これに対し、カラー複写機による複写物2において
図7及び
図9の条件下で観察すると、上記の領域で、
図11の示すドット状部221の色とドット状部231の色との減法混色によって生じる色を視認するため、複写防止媒体1の原本と複写物2とを互いから区別するのは肉眼では困難である。
【0088】
図12は、
図1に示す複写防止媒体1が表示する反射画像を励起光照射下で観察している様子を概略的に示す図である。
図13は、
図1に示す複写防止媒体1が
図12の条件下で表示する画像を示す図である。
【0089】
図12では、複写防止媒体1の第1面を励起光源LS’からの照明光IL’が斜め方向から照明し、複写防止媒体1が射出する反射光RL’を観察者OBが観察するように、光源LS’及び複写防止媒体1を配置している。
【0090】
この条件下では、第2着色層13の表示への寄与は、紫外線吸収剤を添加した光透過性基材11を介しているため、第1着色層12の表示へは寄与しない。従って、この条件下で観察者OBが視認する画像I2における文字列「COPY」に対応した領域の色15は、第1蛍光顔料による着色光のみとなる。
【0091】
これに対し、カラー複写機によって本発明と同様の蛍光顔料を含み複写した複写物2にて、
図12と同じ条件下で観察すると、紫外線吸収剤を添加していない光透過性基材を介しているため、第2着色層13の影響が第1着色層12の表示へ寄与する。従って、この条件下で観察者OBが視認する画像I2における文字列「COPY」に対応した領域の色は、第1蛍光顔料と第2蛍光顔料の混色による着色光となる。
【0092】
従って、このような色の相違を視認することにより、複写防止媒体1と複写物2とを互いから区別可能である。
【0093】
また、
図14に示す複写防止媒体1の第2面からの励起光源での観察についても同様で、第1着色層12の表示への寄与は、紫外線吸収剤を添加した光透過性基材11を介しているため、第2着色層13の表示へは寄与しない。従って、
図15に示すようにこの条件下で観察者OBが視認する画像I3における文字列「COPY」の反転に対応した領域の色16は、第2蛍光顔料による着色光のみとなる。
【0094】
これに対し、カラー複写機によって本発明と同様の蛍光顔料を含み複写した複写物2にて、
図14と同じ条件下で観察すると、紫外線吸収剤を添加していない光透過性基材を介しているため、第1着色層12の影響が第2着色層13の表示へ寄与する。従って、この条件下で観察者OBが視認する画像I3における文字列「COPY」の反転に対応した領域の色は、第2蛍光顔料と第1蛍光顔料の混色による着色光となる。
【0095】
従って、このような色の相違を視認することにより、どちらの面から観察しても複写防止媒体1と複写物2とを互いから区別可能である。
【0096】
複写防止媒体1には、様々な変形が可能である。例えば、上記の複写防止媒体1では、第1着色部121、第1非着色部122、第2着色部131及び第2非着色部132の各々は直線形状を有しているが、それらは曲線形状を有している部分を含んでいてもよい。例えば、第1着色部121、第1非着色部122、第2着色部131及び第2非着色部132の各々は、正弦波形状などの波形を有していてもよい。或いは、第1着色部121、第1非着色部122、第2着色部131及び第2非着色部132は、以下の形状を有していてもよい。
【0097】
図16は、第1変形例に係る複写防止媒体1の第1着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図17は、第1変形例に係る複写防止媒体1の第2着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
【0098】
図16において、第1着色部121は、入れ子状の配列パターンを形成している。具体的には、第1着色部121は、同心円状のパターンを形成している。
【0099】
図17において、第2着色部131は、第1着色部121に対応して、入れ子状の配列パターンを形成している。具体的には、第2着色部131は、第2着色部131及び第2非着色部132がそれぞれ第1非着色部122及び第1着色部121と向き合うように、同心円状のパターンを形成している。
【0100】
このような構成を採用したこと以外は上記の複写防止媒体1と同様の複写防止媒体も、上述した効果を奏する。
【0101】
上記の複写防止媒体1では、第1着色部121及び第1非着色部122は、線形状を各々が有し、幅方向へ交互に配列し、第2着色部131及び第2非着色部132は、線形状を各々が有し、幅方向へ交互に配列している。第1着色部121、第1非着色部122、第2着色部131及び第2非着色部132は、線形状を有していなくてもよい。
【0102】
図18は、第2変形例に係る複写防止媒体1の第1着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図19は、第2変形例に係る複写防止媒体1の第2着色層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
【0103】
図18において、第1着色部121及び第1非着色部122は市松模様状に配列している。
図20において、第2着色部131及び第2非着色部132は市松模様状に配列している。第2着色部131及び第2非着色部132は、それぞれ、第1非着色部122及び第1着色部121と向き合っている。
【0104】
このような構成を採用したこと以外は上記の複写防止媒体1と同様の複写防止媒体も、上述した効果を奏する。
【実施例0105】
以下に、本発明の具体例を記載する。
【0106】
<複写防止媒体の製造>
(実施例1)
図1を参照しながら説明した複写防止媒体1を、以下の方法により製造した。なお、印刷層14は省略した。
【0107】
先ず、光透過性基材11として、テイジン製のテトロンフィルムを準備した。次に、光透過性基材11の第1面に、市販されているシアン色のプロセスインキにB(青色)の発光をする蛍光顔料を混錬したインキを用いグラビアオフセット印刷により、第1着色層12を形成した。第1着色部121の幅W1a及び第1非着色部122の幅W1bの各々は20μmとした。
【0108】
その後、光透過性基材11の第2面に、市販されているマゼンタ色のプロセスインキにR(赤色)の発光をする蛍光顔料を混錬したインキを用いたグラビアオフセット印刷により、第2着色層13を形成した。第2着色部131の幅W2a及び第2非着色部132の幅W2bの各々は20μmとした。第2着色層13は、第2面に平行な平面への正射影において、第2着色部131の中心線及び第2非着色部132の中心線が、それぞれ、第1非着色部122の中心線及び第1着色部121の中心線と一致するように形成した。
【0109】
(実施例2)
以下の事項を除き、実施例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、第1着色部121の幅W1aを10μm、第1非着色部122の幅W1bを10μmとした。第2着色部131の幅W2aを10μm、第2非着色部132の幅W2bを10μmとした。
【0110】
(実施例3)
以下の事項を除き、実施例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、第1着色部121の幅W1aを90μm、第1非着色部122の幅W1bを90μmとした。第2着色部131の幅W2aを90μm、第2非着色部132の幅W2bを90μmとした。
【0111】
(比較例1)
以下の事項を除き、例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、第1着色部121の幅W1aを150μm、第1非着色部122の幅W1bを150μmとした。第2着色部131の幅W2aを150μm、第2非着色部132の幅W2bを150μmとした。
【0112】
(比較例2)
以下の事項を除き、実施例1と同様の方法により複写防止媒体1を製造した。即ち、本例では、光透過性基材11として、紫外線吸収性を有していない東レ製のルミラーを用いた。
【0113】
実施例1から実施例3並びに比較例1及び2に係る複写防止媒体1において採用した各寸法を、以下の表に示す。
【0114】
【0115】
<複写物の製造>
実施例1から実施例3並びに比較例1及び2に係る複写防止媒体1を東レ製のルミラーのフィルム上へインクジェット式のカラープリンタで印刷を行うことにより、複写物2を製造した。
【0116】
<評価1>
実施例1から実施例3並びに比較例1及び2に係る複写防止媒体1と、それらの複写物2について、白色光で照明した場合の第1面及び第2面からの肉眼での色の判別結果を、評価1として上記表に示す。
【0117】
<評価2>
実施例1から実施例3並びに比較例1及び2に係る複写防止媒体1とそれらの複写物2について、励起光で照明した場合の第1面及び第2面からの肉眼での色の判別結果を、評価2として上記表に示す。
【0118】
評価1及び2の判定として、複写防止媒体1と複写物2との真偽判別部の画像を肉眼で観察した場合に、それらを互いから観察される色の差より区別することができたときの評価を「〇」とし、それらを互いから区別することができなかったときの評価を「×」とした。
【0119】
実施例1から実施例3並びに比較例2に係る複写防止媒体1及び複写物2についての白色光下での観察では、第1着色部121及び第2着色部131の配列に由来する混色として画像を視認することができたが、肉眼ではその色の差を区別することはできなかった。
【0120】
一方で比較例1に係る複写防止媒体1及び複写物についての白色光下での観察では、第1着色部121の幅W1a及び第2着色部131の幅W2aが視認できるほど広く、目視でストライプ状に形成されているように観察され、混色ではなく2種の単色からなる印刷画像として視認できた。
【0121】
実施例1から実施例3に係る複写防止媒体1の励起光照射下での観察では、第1面からの観察では第1着色部121、第2面からの観察では第2着色部131に由来する単色として画像を視認することができ、複写物2では、第1面からの観察及び第2面からの観察においても第1着色部121及び第2着色部131の配列に由来する混色として画像を視認し、肉眼でその色の差を区別することができた。
【0122】
比較例1に係る複写防止媒体1の励起光照射下での観察では、第1面からの観察では第1着色部121、第2面からの観察では第2着色部131に由来する単色として画像を視認することができず、いずれの面での観察においても混色として視認し、複写防止媒体1と複写物2の判別ができなかった。これは比較例1に係る複写防止媒体1において紫外線吸収性を有している光透過性基材11を介しているとはいえ、その吸収性は100%ではなく、第1着色部121の幅W1a及び第2着色部131の幅W2aが視認できるほど広いため、観察面とは逆面からの反射光の影響により混色となって視認された。
【0123】
比較例2に係る複写防止媒体1及び複写物2についての励起光照射下での観察では、第1着色部121及び第2着色部131の配列に由来する混色として第1面、第2面の観察においてそれぞれ画像を視認し、肉眼では複写防止媒体1と複写物2の色の差を区別することはできなかった。
【0124】
以上、説明したように、実施例1から実施例3に係る複写防止媒体1の励起光照射下での観察において、第1面及び第2面からの観察でも、各面の着色部に由来する単色として画像を視認した。一方、複写物2では、第1面及び第2面からの観察でも、第1着色部及び第2着色部の配列に由来する混色として画像を視認し、肉眼で複写防止媒体1と複写物2の色の差を区別することができた。
1…複写防止媒体、2…複写物、11…光透過性基材、12…白色光下の第1着色層、13…白色光下の第2着色層、14…印刷層、15…励起光下の第1着色層、16…励起光下の第2着色層、21…光透過性基材、22…第1着色層、23…第2着色層、121…第1着色部、122…第1非着色部、131…第2着色部、132…第2非着色部、221…ドット状部、231…ドット状部、IL…照明光、LS…光源、OB…観察者、P1…ピッチ、P2…ピッチ、R1A…第1印刷領域、R1B…第1非印刷領域、R2A…第2印刷領域、R2B…第2非印刷領域、REF…拡散反射板、RL…反射光、TL…透過光、W…窓、W1a…第1着色部の幅、W1b…第1非着色部の幅、W2a…第2着色部の幅、W2b…第2非着色部の幅