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特開2023-7433X方向及びY方向の両方向での焦点スポット運動の検出及び補正のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007433
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】X方向及びY方向の両方向での焦点スポット運動の検出及び補正のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A61B6/03 321J
A61B6/03 320H
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094786
(22)【出願日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】17/361,699
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ビジュ・ジャコブ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA21
4C093CA13
4C093CA35
4C093EB22
4C093EC60
4C093FC27
4C093GA05
(57)【要約】
【課題】X線焦点スポットの運動を推定する方法を提供する。
【解決手段】本方法の動作は、X線源のX線焦点スポットから多数のチャンネルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作を含んでおり、チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有している。この方法の動作はまた、放射線検出器のアイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、アイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX線の方向に沿ったY方向でのX線焦点スポット運動とを、チャンネルの部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作を含んでいる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線焦点スポットの運動を推定する方法であって、
X線源の前記X線焦点スポットから複数のチャンネルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作であって、前記チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、当該それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有する、取得する動作と、
前記放射線検出器のアイソセンタに対する前記X線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、前記アイソセンタに対する前記X線焦点スポットについての前記X線の方向に沿ったY方向でのX線焦点スポット運動とを、前記チャンネルの前記部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作と
を備えた方法。
【請求項2】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルは前記アイソセンタから等距離に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記X方向でのそれぞれの合計X線焦点スポット運動を推定する動作をさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記それぞれの合計X線焦点スポット運動は、前記X方向での固有のX線焦点スポット運動と、前記X方向での見かけのX線焦点スポット運動との総和を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記X方向での前記固有のX線焦点スポット運動は、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについて同じである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記X方向での前記それぞれの見かけのX線焦点スポット運動は反対称である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記それぞれの見かけのX線焦点スポット運動は各々、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記Y方向でのそれぞれのX線焦点運動と、ファン角度のそれぞれの正弦との積である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記X方向及び前記Y方向でのX線焦点スポット運動の前記各推定に基づいて焦点スポット運動補正を算出する動作と、
アーティファクト又は他の画像ムラを補正し又は除去するように、画像再構成又は再構成後の工程の部分として前記焦点スポット運動補正を用いる動作と
をさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
動作時にX線焦点スポットからX線を放出するように構成されたX線源と、
複数のコリメータ・ブレードを含むコリメータと、
各々が当該放射線検出器のチャンネルに対応している複数のピクセルを含む放射線検出器であって、前記チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、当該それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有する、放射線検出器と、
処理回路と
を備えたイメージング・システムであって、前記処理回路は、
前記X線源から前記放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作と、
前記放射線検出器のアイソセンタに対する前記X線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、前記アイソセンタに対する前記X線焦点スポットについてのY方向でのX線焦点スポット運動とを、前記チャンネルの前記部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作と
を含む動作を実行するように構成されている、イメージング・システム。
【請求項10】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルは前記アイソセンタから等距離に位置する、請求項9に記載のイメージング・システム。
【請求項11】
前記処理回路は、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記X方向でのそれぞれの合計X線焦点スポット運動を推定する動作をさらに含んでいるさらなる動作を実行するように構成されている、請求項9に記載のイメージング・システム。
【請求項12】
前記それぞれの合計X線焦点スポット運動は、前記X方向での固有のX線焦点スポット運動と、前記X方向での見かけのX線焦点スポット運動との総和を含んでいる、請求項11に記載のイメージング・システム。
【請求項13】
前記X方向での前記固有のX線焦点スポット運動は、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについて同じである、請求項12に記載のイメージング・システム。
【請求項14】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記X方向での前記それぞれの見かけのX線焦点スポット運動は反対称である、請求項13に記載のイメージング・システム。
【請求項15】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記それぞれの見かけのX線焦点スポット運動は各々、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記Y方向でのそれぞれのX線焦点運動と、ファン角度のそれぞれの正弦との積である、請求項14に記載のイメージング・システム。
【請求項16】
前記処理回路は、
前記X方向及び前記Y方向でのX線焦点スポット運動の前記各推定に基づいて焦点スポット運動補正を算出する動作と、
アーティファクト又は他の画像ムラを補正し又は除去するように、画像再構成又は再構成後の工程の部分として前記焦点スポット運動補正を用いる動作と
をさらに含んでいるさらなる動作を実行するように構成されている、請求項9に記載のイメージング・システム。
【請求項17】
プロセッサ実行可能なコードを含む非一過性のコンピュータ可読の媒体であって、前記プロセッサ実行可能なコードはプロセッサにより実行されると、
X線源のX線焦点スポットから複数のチャンネルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作であって、前記チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、当該それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有する、取得する動作と、
前記チャンネルの部分集合のうち前記放射線検出器のアイソセンタの両側に配設された第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてそれぞれのチャンネル利得を同時に測定する動作と、
前記アイソセンタに対する前記X線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、前記アイソセンタに対する前記X線焦点スポットについてのY方向でのX線焦点スポット運動とを、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記それぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作と
を前記プロセッサに行なわせる、非一過性のコンピュータ可読の媒体。
【請求項18】
前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルは前記アイソセンタから等距離に位置する、請求項17に記載の非一過性のコンピュータ可読の媒体。
【請求項19】
前記プロセッサ実行可能なコードは、前記プロセッサにより実行されると、前記第一のチャンネル及び前記第二のチャンネルについての前記X方向でのそれぞれの合計X線焦点スポット運動を推定する動作であって、該それぞれの合計X線焦点スポット運動は、前記X方向での固有のX線焦点スポット運動と、前記X方向での見かけのX線焦点スポット運動との総和を含んでいる、推定する動作を前記プロセッサに行なわせる、請求項17に記載の非一過性のコンピュータ可読の媒体。
【請求項20】
前記プロセッサ実行可能なコードは、前記プロセッサにより実行されると、
前記X方向及び前記Y方向でのX線焦点スポット運動の前記各推定に基づいて焦点スポット運動補正を算出する動作と、
アーティファクト又は他の画像ムラを補正し又は除去するように、画像再構成又は再構成後の工程の部分として前記焦点スポット運動補正を用いる動作と
を前記プロセッサに行なわせる、請求項17に記載の非一過性のコンピュータ可読の媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は一般的には、X線を用いた撮像手法に関し、さらに具体的には、X線放出点とX線検出器素子との整列不正に関係する問題に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムのようなX線を用いたイメージング・システムでは、患者又は物品(例えば小包及び製造品等)のような対象の関心領域を撮像するために、対象へ向けてX線ビームが放出される。ビームは典型的には、対象を通過するにつれて減弱する。続いて、減弱したビームは、検出器素子のアレイを有する放射線検出器に入射する。減弱したビームに応じて、アレイの各検出器素子は、対象の内部の情報を表わすそれぞれの電気信号を発生する。これらの電気信号をデータ処理ユニットによって処理して、対象の関心領域を表わす画像を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
取得されたデータからの画像の再構成は一般的には、X線光子が、X線放出焦点スポットからそれぞれの光子が検出された位置の検出器素子まで直線経路を走行したとの仮定に基づく。しかしながら、1又は複数のコリメート要素又はプレート(例えばポスト・ペイシェント[検出器前面]散乱防止グリッド)に関するX線焦点スポットの整列不正又は移動のため、CTイメージング・システムのようなイメージング・システムの臨床的利用に不利となる画像アーティファクトを生ずる場合がある。このことの影響は、コリメータ・ブレードのピッチがチャンネル(すなわちピクセル)のピッチよりも大きいようなシステムでより重大になる場合があり、異なるチャンネルがそれぞれのコリメータ・ブレードによる「影」の状態によって異なる程度まで影響を受け得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当初から請求される主題の範囲に沿った幾つかの実施形態を以下にまとめる。これらの実施形態は請求される主題の範囲を限定するためのものではなく、可能な実施形態の簡単な概要を掲げることのみを意図する。実際に、本発明は、以下に述べる実施形態と同様である場合も異なる場合もある多様な形態を包含し得る。
【0005】
一実施形態では、X線焦点スポットの運動を推定する方法が提供される。本方法の動作は、X線源のX線焦点スポットから多数のチャンネルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作を含んでおり、チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有している。この方法の動作はまた、放射線検出器のアイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、アイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX線の方向に沿ったY方向でのX線焦点スポット運動とを、チャンネルの部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作を含んでいる。
【0006】
もう一つの実施形態では、イメージング・システムが提供される。このイメージング・システムは、動作時にX線焦点スポットからX線を放出するように構成されたX線源と、多数のコリメータ・ブレードを含むコリメータと、各々が当該放射線検出器のチャンネルに対応している多数のピクセルを含む放射線検出器であって、チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有する、放射線検出器と、を含んでいる。イメージング・システムはまた、下記の動作を実行するように構成された処理回路を含んでいる。これらの動作は、X線源から放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作を含んでいる。これらの動作はまた、放射線検出器のアイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、アイソセンタに対するX線焦点スポットについてのY方向でのX線焦点スポット運動とを、チャンネルの部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作を含んでいる。
【0007】
さらにもう一つの実施形態では、プロセッサ実行可能なコードを含む非一過性のコンピュータ可読の媒体が提供され、プロセッサ実行可能なコードはプロセッサにより実行されると、下記の動作をプロセッサに行なわせる。これらの動作は、X線源のX線焦点スポットから多数のチャンネルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データを取得する動作を含んでおり、チャンネルの部分集合の各々のチャンネルが、それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有している。これらの動作はまた、チャンネルの部分集合のうち放射線検出器のアイソセンタの両側に配設された第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてそれぞれのチャンネル利得を同時に測定する動作を含んでいる。これらの動作はさらに、アイソセンタに対するX線焦点スポットについてのX方向でのX線焦点スポット運動と、アイソセンタに対するX線焦点スポットについてのY方向でのX線焦点スポット運動とを、第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定する動作を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のこれら及び他の特徴、観点、及び利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めばさらに十分に理解されよう。全図面を通して、類似の文字は類似の部分を表わす。
【0009】
図1】本開示の幾つかの観点による計算機式断層写真法イメージング・システムの構成要素を示す図である。
図2】本開示の幾つかの観点によるコリメータ・ブレードを配設した検出器のチャンネルの概略側面図である。
図3】本開示の観点によるコリメータ・ブレードを配設した検出器のチャンネルのもう一つの概略側面図である。
図4】本開示の幾つかの観点によるコリメート付き放射線検出器の状況における整列したX線焦点スポット及び整列していないX線焦点スポットを模式的に示す図である。
図5】本開示の幾つかの観点によるX線焦点スポット運動がピクセル利得に及ぼす影響を模式的に示す図である。
図6】本開示の幾つかの観点によるX線焦点スポットのX運動による利得感度関数のグラフ図である。
図7】本開示の幾つかの観点によるX線焦点スポットのY運動誘発によるX線焦点スポットの見かけのX運動の模式図である。
図8】本開示の幾つかの観点によるX線焦点スポットのY運動誘発によるX線焦点スポットの見かけのX運動のグラフ図である。
図9】本開示の幾つかの観点による傾斜したコリメータ・プレートを有するチャンネルについてY運動誘発によるX運動がX運動利得感度に対して及ぼす影響のグラフ図である。
図10】本開示の幾つかの観点によるX方向での合計X線焦点スポット偏移に応じた検出器のチャンネルについての線形傾斜付き利得応答の模式図及びグラフ図である。
図11】本開示の幾つかの観点によるX線焦点スポット運動を検出して補正する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1又は複数の特定の実施形態について記載する。これらの実施形態の簡潔な記載を掲げる試みにおいて、実際の具現化形態の全ての特徴が明細書に記載されている訳ではない。このようなあらゆる実際の具現化形態の開発時には、どの工学的プロジェクト又は設計プロジェクトとも同じく、開発者特有の目標を達成するために、具現化形態毎に異なり得るシステム関連の制約事項及び業務関連の制約事項の遵守等のように、具現化形態特有の多くの決定を下さねばならないことを認められたい。また、かかる開発努力は複雑で時間が掛かるかもしれないが、それでも本開示の利益を得る当業者にとっては設計、製造、及び製品化の定型業務であることを認められたい。
【0011】
本発明の主題の様々な実施形態の要素について述べるに当たり、単数不定冠詞、定冠詞、「該」及び「前記」等の用語は、当該要素の1又は複数が存在することを意味するものとする。また「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」及び「有している(having)」の各用語は包括的であるものとし、所載の要素以外に付加的な要素が存在し得ることを意味する。さらに、以下の議論でのあらゆる数値例は非限定的であるものとし、従って、付加的な数値、範囲、及び百分率が、開示される実施形態の範囲内にある。
【0012】
以下の議論の観点は医用撮像の状況で掲げられる場合があるが、本発明の手法はかかる医学的状況に限定されないことを認められたい。実際に、かかる医学的状況での実例及び説明の記載は、実世界での具現化形態及び応用の例を挙げることにより議論を容易にするためだけのものである。但し、本発明のアプローチはまた、製造部品若しくは製造物品の非破壊検査(すなわち品質管理応用若しくは品質審査応用)、並びに/又は小荷物、箱、及び手荷物等の非侵襲検査(すなわちセキュリティ応用若しくはスクリーニング応用)に用いられる産業用計算機式断層写真法(CT)のための断層画像再構成のような他の状況でも用いられ得る。一般的には、本発明のアプローチは、X線放出点の整列不正が、付設された散乱防止要素又はコリメーション要素(例えばブレード)を有する検出器素子のアレイとの整列不正を起こし得るような任意の撮像状況若しくはスクリーニング状況、又は画像処理分野において有用であり得る。
【0013】
本書で議論されるように、取得されたX線透過データからの画像の再構成は一般的には、X線光子が、X線放出焦点スポットからそれぞれの光子が検出された位置の検出器素子まで直線経路を走行したとの仮定に基づく。しかしながら、1又は複数のコリメート要素又はプレート(例えば検出器前面散乱防止グリッド)に関するX線焦点スポットの整列不正又は移動のため、CTイメージング・システムのようなイメージング・システムの臨床的利用に不利となる画像アーティファクトを生ずる場合がある。このことの影響は、コリメータ・ブレードのピッチがチャンネル(すなわちピクセル)のピッチよりも大きいようなシステムではより顕著であり得る。
【0014】
開示される手法は、走査の過程中にX線焦点スポット整列不正によって生じて、著しい画像アーティファクトを生じ得るチャンネル利得誤差を検出して補正するために用いられ得る。本書に記載される手法の従来の手法に対する一つの利益は、焦点スポットずれの検出用の付加的なハードウェアを要求しないことである。代わりに、本書に記載される方法は、製造時の各々のブレードの静的な整列不正を、X線焦点スポットずれ又は整列不正を推定して補正する部分として考慮に入れる。この態様で、焦点スポット運動による画像アーティファクトのリスクが低下し、また焦点スポット運動を検出するための高経費のハードウェアの解の必要性が回避される。
【0015】
以上の議論を踏まえて、図1は、本書で議論される構造及びアプローチに従って画像データを取得して処理するイメージング・システム10の実施形態を示す。図示の実施形態では、システム10は、X線投影データを取得して、表示及び解析のために投影データを再構成して容積測定(ボリュメトリック)再構成にするように設計された計算機式断層写真法(CT)システムである。CTイメージング・システム10は、撮像セッション中に1又は複数のエネルギ・スペクトルでのX線発生を可能にする1又は複数のX線管又は固体放出構造のような1又は複数のX線源12を含んでいる。
【0016】
幾つかの具現化形態では、線源12は、X線ビーム20を方向制御するのに用いられ得るプリ・ペイシェント・コリメータ及び/又はフィルタ・アセンブリ22の近傍に配置されることができ、これらのプリ・ペイシェント・コリメータ及び/又はフィルタ・アセンブリ22は、X線ビーム20を方向制御して、X線ビーム20の高強度領域の形状を画定し(角度外れ放出を限定すること等による)且つ/若しくは広がりを画定し、またX線ビーム20のエネルギ・プロファイルを制御し若しくは画定し、且つ/又は他の場合には関心領域の内部に位置しない患者24の部分へのX線曝射を限定する。実用では、フィルタ・アセンブリ又はビーム整形器22は、線源12と被撮像容積との間でガントリに内蔵され得る。
【0017】
X線ビーム20は、着目する被検体(例えば患者24)又は物体(例えば製造部品、手荷物、及び小包等)が配置されている領域を通過する。被検体はX線光子20の少なくとも一部を減弱させて減弱したX線光子26を生じ、これらの減弱したX線光子26は、m×nアレイとして配置された複数の検出器素子(例えばピクセル)によって形成されるピクセル型検出器アレイ28に入射する。図示の例では、減弱したX線光子26はコリメータ18(例えば散乱防止グリッド)を通過した後に検出器アレイ28に到達する。本書で議論されるように、コリメータ18は、検出器アレイ28の表面に実質的に垂直に整列した複数のブレード又は他の要素から成っていてよく、外れ角度で走行するX線光子26(例えば散乱X線)が検出器アレイ28に到達しないように制限し又は阻止する減弱性材料で形成され得る。検出器アレイ28に到達した電気信号は検出され処理されて、1又は複数の投影データセットを生成する。図示の例では、検出器28はシステム制御器30に結合されており、システム制御器30は、検出器28によって発生されるディジタル信号の取得を指揮する。
【0018】
システム制御器30は、濾波、検査、及び/又は較正の各プロトコルを実行するようにイメージング・システム10の動作を指揮し、取得されたデータを処理することができる。X線源12に関して、システム制御器30は、X線検査系列のために電力信号、焦点スポット位置信号、及び制御信号等を供給する。幾つかの実施形態によれば、システム制御器30は、検査の過程にわたり、フィルタ・アセンブリ22の動作、CTガントリ(若しくは他のX線源12及び検出器28が取り付けられている構造的支持体)の動作、並びに/又は患者支持体の並進及び/若しくは傾きを制御することができる。
【0019】
加えて、システム制御器30は、モータ制御器36を介して、被検体24及び/又はイメージング・システム10の構成要素を移動させるためにそれぞれ用いられる線形配置サブシステム32及び/又は回転サブシステム34の動作を制御することができる。例えば、CTシステムでは、放射線源12及び検出器28は対象(例えば患者24)の周りを回転して、一定範囲の角度のビューにわたりX線透過データを取得する。このように、実世界の具現化形態では、イメージング・システム10は、関心走査域全体を網羅する複数の角度位置(例えば360°、及び180°+ファン・ビーム角(α)等)の各々に対応するX線透過データを生成するように構成されている。
【0020】
システム制御器30は、信号処理回路と、付設されているメモリ回路とを含み得る。かかる実施形態では、メモリ回路は、X線源12及び/又はフィルタ・アセンブリ22を含めてイメージング・システム10を動作させるため、また検出器28によって取得されるディジタル測定を処理するために、本書で議論されるステップ及び工程に従ってシステム制御器30によって実行されるプログラム、ルーチン、及び/又は符号化されたアルゴリズムを記憶することができる。一実施形態では、検出器28のアイソセンタに対するX方向及び検出器28のアイソセンタに対するY方向の両方向でのX線焦点スポット運動に対するアルゴリズムが、メモリ回路に記憶されてプロセッサによって実行され得る。一実施形態では、システム制御器30はプロセッサ型システムの全て又は部分として具現化され得る。
【0021】
線源12は、システム制御器30の内部に含まれるX線制御器38によって制御され得る。X線制御器38は、電力信号、タイミング信号、並びに/又は焦点スポット寸法及びスポット位置を線源12に与えるように構成され得る。加えて、幾つかの実施形態では、X線制御器38は、システム10の内部の異なる位置に位置する管又は放出子が互いに同期して又は互いに独立に動作し得るように、或いは撮像セッション中に異なるエネルギ・プロファイルの間で線源を切り替えるべく動作し得るように、線源12を選択的に作動させるように構成され得る。
【0022】
また、システム制御器30はデータ取得システム(DAS)40を含み得る。DAS40は、検出器28の読み出し電子回路によって収集される検出器28からのディジタル信号のようなデータを受け取る。次いで、DAS40は、コンピュータ42のようなプロセッサ型システムによって後に行なわれる処理のためにデータを変換し且つ/又は処理することができる。本書で議論される幾つかの具現化形態では、検出器28の内部の回路が、検出器のアナログ信号をディジタル信号へ変換した後にデータ取得システム40へ伝送することができる。コンピュータ42は、コンピュータ42によって処理されたデータ、コンピュータ42によって処理されるべきデータ、又はコンピュータ42の画像処理回路44によって実行されるべき命令を記憶し得る1又は複数の非一過性のメモリ装置46を含んでいてもよいし、かかるメモリ装置46と連絡していてもよい。例えば、コンピュータ42のプロセッサは、コンピュータ42のメモリ、プロセッサのメモリ、ファームウェア、又は同様の実例であってよいメモリ46に記憶された1組又は複数組の命令を実行することができる。例として述べると、コンピュータ42の画像処理回路44は、診断画像を形成するように構成され得る。一実施形態では、診断画像は、複数のピクセル102から得られてX線焦点スポットの運動又は整列不正について補正された複数の信号に適用される画像再構成手法を用いて得られる実時間画像である。一実施形態では、診断画像は、X線焦点スポットの運動又は整列不正について補正されて医療従事者を支援するために表示装置50に表示されるCT画像である。
【0023】
コンピュータ42はまた、操作者ワークステーション48を介して操作者によって与えられた命令及び走査パラメータ等に応じて、システム制御器30によって実行可能にされる特徴(すなわち走査動作及びデータ取得)を制御するように構成され得る。システム10はまた、操作者ワークステーション48に結合された表示器50を含むことができ、表示器50は、関連システム・データ、撮像パラメータ、生の撮像データ、及び再構成されたデータ又は画像等を操作者が観察することを可能にする。加えて、システム10は、操作者ワークステーション48に結合されて任意の望まれる測定結果を印刷するように構成されたプリンタ52を含み得る。表示器50及びプリンタ52はまた、コンピュータ42に直接接続されていてもよいし(図1に示すように)、操作者ワークステーション48を介して接続されていてもよい。さらに、操作者ワークステーション48は、医用画像保管通信システム(PACS)54を含んでいてもよいしPACS54に接続されていてもよい。PACS54は、遠隔システム若しくはクライアント56、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、又は内外網に結合されることができ、異なる位置の第三者が画像データを入手し得るようにしている。
【0024】
全体的なイメージング・システム10の以上の議論を踏まえて、図2へ移ると、従来の検出器28及びコリメータ18構成の一例が側断面図として示されている。この例では、検出器28は、読み出しチャンネルに各々対応しているピクセル82から成るアレイを含むものとして示されている。かかる一つの例では、ピクセル・ピッチは約1mmであってよい。各々のピクセルが別個にコリメートされるように、一組のコリメータ・ブレード80が、ピクセル82のアレイに付設されているように示されている。ブレード80は、ピクセルの連結箇所に配置されているように示されており、ブレード80に帰属され得る影が主にこれらの連結箇所に位置するようにして、ピクセル82の作用域の大半が、ブレードによって生成される影を相対的に有しないようにしている。この態様で、各々のピクセル82が、コリメータ・ブレード80によって相対的に一貫して一様に影響を受ける。具体的には、X線放出焦点スポットが整列不正を起こしている場合に、整列不正に帰属され得る隣り合ったチャンネルの間での利得変化の差が相対的に小さい。
【0025】
図3に移ると、より小さいピクセル82(例えばピクセル・ピッチが1mm未満)を有するより高い空間分解能の検出器28の一例が示されている。ピクセルがより小さいので、各々のチャンネルがそれぞれのコリメータ・ブレードによって分離される訳ではない。代わりに、図示のように、各々のコリメータ・ブレード80が、多数のピクセル82(すなわちチャンネル)にコリメーションを与えることができ、幾つかのピクセル82がブレード80によって接触され又はブレード80に直に隣接し、他のピクセル82はブレード80に隣接しない。呼応して、X線焦点スポット整列不正が生じた場合には、X線焦点スポット整列不正による隣り合ったチャンネルの間での利得変化の差が、関連ブレード80に配置の相違があるため大きくなる場合がある。すなわち、高分解能検出器では、X線焦点スポット整列不正が大きい利得変化を招き得る。
【0026】
概念的にこのことを図4に示しており、同図ではコリメートされた検出器28の状況で、整列したX線焦点スポット83(左図)と整列不正を起こしたX線焦点スポット83(右図)とを並列に比較して示している。左図に示すように、X線焦点スポット83がブレード80と整列しているとき(ブレード80を通って延在する縦方向の軸85によって示す)には、ブレード80が投げかける影87は全体的に対称で最小である。反対に、右図に示すように、X線焦点スポット83がブレード80に関して整列不正を起こしているときには、ブレード80が投げかける影87は異なるピクセル82(図ではチャンネルCH-1、CH-2、CH-3として示す)に関して対称でなく、X線焦点スポット83が整列しているときに対して影87の寸法が増大し得る。
【0027】
以上の議論を踏まえて、コリメータ・ブレード80とX線焦点スポット83との整列不正は、臨床的画質に不利な画像アーティファクトを生じ得る。具体的には、検出器レベルでの整列不正の影響は、図4に示すようなX線焦点スポットのコリメータ・ブレードの影生成による小さい乍ら影響の大きい個々のチャンネルの利得変化の出現である。すなわち、それぞれの検出器チャンネルでのコリメータ・ブレードの影の漸増的変化がチャンネル利得の変化の差を招き、これにより画像アーティファクトを生じ得る。図2から図4に関して示すように、この影響は、コリメータ・ブレード80のピッチがピクセル(すなわちチャンネル)のピッチよりも大きく、コリメータ・ブレードを上に有するピクセルとかかるブレードを上に有しないピクセルとが存在するような状況でさらに顕著になり得る。検出して補正を施さなければ、X線焦点スポット整列不正によるこれらの変化は、対象による減弱の変化と誤解釈されて、これにより画像アーティファクトを招き得る。
【0028】
実用では、X線焦点スポット整列不正には2種類があり得る。静的な整列不正は、本書で用いられる場合には、コリメータ・ブレードの偏向又は傾斜に関するもののような製造公差によるものと理解されることができ、検出器較正によってある程度まで補正され得る。しかしながら、動的な整列不正は動作中に発生する熱的力及び機械的力によって走査の過程中に生じ得る。動的な整列不正は検出が困難で、呼応して補正が難しい場合がある。
【0029】
以上を踏まえて、本書で議論される手法は、図3に示すようなより高分解能の形式のシステムを含め、走査の過程中にX線焦点スポット整列不正に帰属可能なチャンネル利得誤差を検出して補正するために用いられ得る。具体的には、本書に開示される手法は、X線焦点スポットずれの検出のために付加的なハードウェアを用いずに実行され得る。
【0030】
図5及び図6に示すように、コリメータ・ブレードが存在するピクセルは、X線焦点スポット整列不正(例えば運動)による影響を受ける。図5は、X線焦点スポット84(S(x,線源検出器間距離(SDD))として表わされる)と、ピクセル又はチャンネル88の上に配設された傾斜したコリメータ・ブレード86とを示している。X線焦点スポット84が傾斜コリメータ・ブレード86の左(左図に示す)から傾斜コリメータ・ブレード86の右(右図に示す)に偏移すると、ブレード86によって投げかけられる影90(例えばピクセル88が失う信号)は寸法及び形状が変化する(すなわちピクセル又はチャンネルの利得も変化する)。点焦点スポットの場合には、傾斜コリメータ・ブレード86を有するピクセル88が経験するピクセル利得gは、以下のX運動利得感度関数g(x,θ)によって表わされ、式中、wはプレート幅を表わし、hはプレート高さを表わし、pはピクセル又はチャンネルのピッチを表わし、θはコリメータ・ブレード86の傾斜を表わす。
【0031】
(1)g(x,θ)
≒1+[h/(p・SDD)]x-(1+h/2SDD)(w/p)
-(1+h/SDD)(h/p)θ
x<xmin=SDD・tanθ-(w/2)cosθ
(2)g(x,θ)
≒1-(1+h/SDD)(w/p)
min<x<xmax
(3)g(x,θ)
≒1-[h/(p・SDD)]x-(1+h/2SDD)(w/p)
+(1+h/SDD)(h/p)θ
x>xmax=SDD・tanθ+(w/2)cosθ
【0032】
図6は、異なる傾斜角(θ)でコリメータ・ブレードを上に配設させて有する特定のピクセルについてのX運動利得感度関数のグラフ92を示す。グラフ92は、利得感度を表わすY軸94と、X方向でのX線焦点スポット偏移を表わすX軸94とを含んでいる。プロット98、100、102、104、及び106について、コリメータ・ブレードは異なる傾斜角(θ)にある(分の端数として表わす)。図示のように、ピクセル利得はX方向での大きい偏移についてはX線焦点スポット位置の一次関数となる(プロット98、100、102、104、及び106の勾配部分又は傾斜した部分によって表わされる)一方で、プロット98、100、102、104、及び106の平坦部によって表わされるX方向のより小さい偏移についてはピクセル利得は一定である。これらの形状はプロット98、100、102、104、及び106について同じであるが、プロット98、100、102、104、106はプレート傾斜角に基づいて偏移している。プロット98、100、102、104、及び106の傾きはプレート傾斜角には独立である。
【0033】
図7に示すように、幾つかのピクセル又はチャンネルについては、検出器のアイソセンタ(ISO)に対するY方向(矢印108によって示すX線の方向に沿った方向)でのX線焦点スポットの運動が、アイソセンタに対するX方向(矢印110によって示す検出器の円弧に沿った方向)での見かけの運動を経験し得る。検出器の端により近いチャンネルのようなアイソセンタからさらに離隔したチャンネル(例えば図7のチャンネルi及びj)は、X方向での見かけの運動を経験し得る。アイソセンタにより近いチャンネルは、X方向での無視可能な見かけの運動を経験し得る。図7では、チャンネルi及びjはファン角度-γ及び+γにおいてアイソセンタから等距離に位置する。アイソセンタにおけるチャンネルをチャンネルISOと表記し得る。チャンネルi、j、及びISOは、上に傾斜コリメータ・ブレードを配設させて含んでいる。Y方向での運動によるX方向での見かけの運動の誘発は、ファン角度γの正弦に比例し、次式によって表わされ得る。
【0034】
(4)x(運動)≒y・sin(γ)
式中、xはX線焦点スポットについてのX方向での見かけの運動を表わし、yはY方向での運動を表わす。
【0035】
図8は、Y方向でのX線焦点スポットの運動に応じて検出器のチャンネルが経験するX方向でのX線焦点スポットの見かけの運動の式(4)を用いたグラフ112を示す。グラフ112は、X方向でのX線焦点スポットの見かけの運動を表わすY軸114と、検出器のチャンネルを表わすX軸116(例えばアイソセンタはチャンネル400の近傍に位置する)とを含んでいる。プロット118、120、及び122は、Y方向でのX線焦点スポットの異なる運動の量を表わす。グラフ112に示すように、Y運動誘発によるX線焦点スポットの見かけのX運動(式(4)を介して決定される)は非対称関数である。グラフ112に示すように、X線焦点スポットのY運動が存在していると、アイソセンタからの距離が増すにつれて見かけのX運動は増大する(アイソセンタの左右両方で)。X線焦点スポットのY運動が存在していると、見かけのX運動はアイソセンタの左右で距離が等しければ同じであるが、方向が異なる。また、グラフ112に示すように、X線焦点のY運動の大きさが増すにつれて、所与のチャンネルについての見かけのX運動は増大する。
【0036】
図7に戻り、アイソセンタに対するX方向及びY方向の両方向でのX線焦点スポット運動は以下の式で表わされ、チャンネルi及びjそれぞれについてX方向での正味又は合計の焦点スポット運動(x)を生じる。
【0037】
(5)x=x+x=x±y・sin(γ)
Y運動誘発によるチャンネル利得gが、アイソセンタからの当該チャンネルの距離に対して有する非対称依存性を利用して、以下の式によってX線焦点スポットのX運動及びY運動の両方を抽出することができる。
【0038】
(6)(g-g)/2 から x(Y運動) が得られる。
(7)(g+g)/2 から x(X運動) が得られる。
【0039】
X線焦点スポットのX運動及びY運動の両方を抽出する又は検出するためのこのY運動誘発によるチャンネル利得gがアイソセンタからの当該チャンネルの距離に対して有する非対称依存性を図9に示す。グラフ124は、Y運動誘発によるX運動(見かけのX運動)を図7の検出器のチャンネルi及びj、並びにアイソセンタに位置するチャンネルISOについて示す。グラフ124は、X運動を表わすY軸126と、検出器のチャンネルを表わすX軸128(例えばアイソセンタはチャンネル400の近傍に位置する)とを含んでいる。グラフ124は、チャンネルi、ISO、及びjそれぞれについてのY運動誘発によるX運動x、x、及びxを示している。グラフ130は、グラフ124に示すY運動誘発によるX運動に応じた利得感度(及び線形利得応答)をチャンネルi、j、及びISOについて示す。グラフ130は、利得感度を表わすY軸132と、X方向での焦点スポット偏移を表わすX軸134とを含んでいる。チャンネルi、j、及びISOについての利得感度はそれぞれg、g、及びgである。傾斜コリメータ・プレートを有するチャンネル(例えばチャンネルi、ISO、及びj)の線形利得応答を利用して、X線焦点スポットのX運動及びY運動を検出することができる。
【0040】
以上で議論したこれらの関係に基づいて、X線焦点スポットのX運動及びY運動を検出するアルゴリズムを用いることができる。具体的には、X運動及びY運動は、二つの同時測定から独立に推定され得る。図10は、X方向での合計X線焦点スポット偏移に応じた線形傾斜付き利得応答をチャンネルi及びjについて示すグラフ136に対して図7の模式図を関係付けることにより、以下の議論に用いられる定義の幾つかを示す。チャンネルi及びjについてのそれぞれの合計X運動は下記の通りである。
【0041】
(8)x=xXi+xYi
(9)x=xXj+xYj
式中、x及びxはそれぞれ、固有のX運動及び見かけのX運動を表わす。チャンネルi及びjについてのそれぞれの傾斜ブレード利得応答(例えば線形利得応答)は、下記の通りである(それぞれグラフ136のプロット138及び140として示す)。
【0042】
(10)g=m+c
(11)g=m+c
式中、mは傾きを表わし、cはy切片を表わす。これらの式は、対称性のためさらに単純化され得る。例えば、固有のX運動は∀iについて同じであり、従って下記の通りとなる。
【0043】
(12)xXi=xXj=x
(13)xYi=y・sin(γ)=-xYi=x
また、X線焦点スポットのY運動は反対称であり、従って下記の通りとなる。
(14)x=x-x
(15)x=x+x
さらに、傾きm及びmは同じであり、従って下記の通りとなる。
【0044】
(16)m=m=m=h/(p・SDD)
これらの式に基づいて、X線焦点スポットのX運動及びY運動の両方を独立に推定することができる。X運動は以下の式を用いて推定され得る。
【0045】
【数1】
Y運動は以下の式を用いて推定され得る。
【数2】
【0046】

式中、
【0047】
【数3】
である。幾つかの実施形態では、X線焦点スポット運動を決定するのに利用される傾斜ブレード利得応答を有するチャンネルは、同じ傾斜角を有し得るが、チャンネルが検出器のアイソセンタの両側に位置するので反対の配向を有し得る。他の実施形態では、グラフ136に示すように、X線焦点スポット運動を決定するのに利用される傾斜ブレード利得応答を有するチャンネル(例えばチャンネルi及びj)は、反対の配向に加えて異なる傾斜角を有し得る。検出器のアイソセンタから等距離(例えばファン角度-γ及び+γ)にあるコリメータ・プレート付きチャンネルを利用することが好ましいが、幾つかの実施形態では、X線焦点スポット運動を決定するのに利用される傾斜ブレード利得応答を有するチャンネルは、検出器のアイソセンタから等距離に位置していなくてもよい。
【0048】
図11は、X線焦点スポット運動を検出して補正する方法142の流れ図を示す。方法142の1又は複数のステップは図1のCTイメージング・システム10によって行なわれ得る。方法142は、X線源のX線焦点スポットから多数のチャンネル又はピクセルを含む放射線検出器へ向けてX線を放出させることにより画像データ(例えばCT走査データ)を取得するステップを含んでいる(ブロック144)。チャンネルの第一の部分集合の各々のチャンネルが、それぞれのチャンネルの上に配置されたコリメータ・ブレードを有する一方で、チャンネルの第二の部分集合はコリメータ・ブレードによる妨げを有しない。方法142はまた、コリメータ・ブレードを上に配設させたチャンネルの部分集合のうち第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてそれぞれのチャンネル利得を同時に測定するステップを含んでいる(ブロック146)。チャンネル利得の測定は、画像データが取得されているのと同時に生じ得る。第一のチャンネル及び第二のチャンネル検出器のアイソセンタの両側に配設されている。幾つかの実施形態では、第一及び第二のチャンネルは、検出器のアイソセンタから等距離に配設されている。他の実施形態では、第一及び第二のチャンネルは検出器のアイソセンタから等距離ではない。幾つかの実施形態では、それぞれのチャンネル利得を測定するために、方法142は、チャンネル利得を決定し得る元となる第一のチャンネル及び第二のチャンネルの両方についてそれぞれのX方向についての合計X線焦点スポット運動を決定するステップを含んでいる。合計X線焦点スポット運動は、X方向での固有のX線焦点スポット運動と、X方向での見かけのX線焦点スポット運動(X線焦点スポットのY運動誘発による運動)との総和を含んでいる。方法142はさらに、アイソセンタに対するX方向及びY方向の両方向でのX線焦点スポット運動を、第一のチャンネル及び第二のチャンネルについてのそれぞれのチャンネル利得に基づいて独立に推定するステップを含んでいる(ブロック148)。方法142はさらにまた、X方向及びY方向でのX線焦点スポット運動の推定に基づいて焦点スポット運動補正ファクタ(1又は複数)を算出するステップを含んでいる(ブロック150)。方法142はさらにまた、アーティファクト又は他の画像ムラを補正し又は除去するために画像再構成又は再構成後の工程の部分として焦点スポット運動補正ファクタ(1又は複数)を用いるステップを含んでいる(ブロック152)。例として述べると、幾つかの実施形態では、信号補正を、コリメータ・プレートを上に配置させたピクセルに関連付けられるチャンネル、すなわち信号変化がコリメータ・ブレードの整列不正によるものであり得るようなチャンネルに限定することができる。代替的には、幾つかの実施形態では、X方向及びY方向でのX線焦点スポット運動の推定に基づいて、X線焦点スポット位置を能動的に制御し又は補正することもできる(例えば陽極へ向かう電子ビームを方向制御する磁石を介して)。
【0049】
開示された各実施形態の技術的効果は、X線焦点スポット運動に帰属可能な画像アーティファクトを減少させ又は消去すること等により、撮像動作時のX線焦点スポット運動の影響を減少させることが可能なCTイメージング・システムを提供することを含んでいる。X線焦点スポット運動の影響の推定及び/又は補正は付加的なハードウェアを用いずに達成される。
【0050】
本書に提示され請求される手法は、当技術分野を明白に改善する実用的性質を有する有形の物体及び具体的な実例について参照されまた適用され、このようなものとして、抽象的であったり、無形であったり、純粋に理論的であったりするものではない。さらに、本明細書の末尾に添付された任意の請求項が「[…作用を][果たすための]手段」又は「[…作用を][果たすための]ステップ」と表記された1又は複数の要素を含む場合には、かかる要素は米国特許法第112条(f)に従って解釈されるべきものとする。但し、他の任意の態様で表記された要素を含む任意の請求項については、かかる要素は米国特許法第112条(f)に従って解釈されるべきでないものとする。
【0051】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する均等構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0052】
10 イメージング・システム
12 X線源
18 コリメータ
20 X線ビーム
22 プリ・ペイシェント・コリメータ及び/又はフィルタ・アセンブリ
24 患者
26 減弱したX線光子
28 検出器アレイ
30 システム制御器
32 線形配置サブシステム
34 回転サブシステム
80 コリメータ・ブレード
82、88 ピクセル(チャンネル)
83、84 X線焦点スポット
85 縦方向の軸
86 傾斜コリメータ・ブレード
87、90 影
92 X運動利得感度関数のグラフ
94 Y軸(利得感度)
96 X軸(X線焦点スポット偏移)
98、100、102、104、106 プロット
108 Y方向
110 X方向
112 X方向でのX線焦点スポットの見かけの運動のグラフ
114 Y軸(X方向でのX線焦点スポットの見かけの運動)
116 X軸(検出器チャンネル)
118、120、122 プロット
124 Y運動誘発によるX運動(見かけのX運動)のグラフ
126 Y軸(X運動)
128 X軸(検出器チャンネル)
130 Y運動誘発によるX運動に応じた利得感度のグラフ
132 Y軸(利得感度)
134 X軸(X方向での焦点スポット偏移)
136 X方向での合計X線焦点スポット偏移に応じた線形傾斜付き利得応答のグラフ
138、140 プロット
142 X線焦点スポット運動を検出して補正する方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】