(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074612
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電力系統安定化システム、電力系統安定化システム用コンピュータプログラムおよび電力系統安定化方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230523BHJP
H02J 3/24 20060101ALI20230523BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/24
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187611
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 直也
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
(72)【発明者】
【氏名】星野 友祐
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB13
5G064CB14
5G064DA01
5G066AA03
5G066AB02
5G066AD01
5G066AD07
5G066AE09
5G066HB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】必要な制御量に対し不足することや過剰となることが軽減され、適切な電制量を算出する電力系統安定化システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力系統安定化システム1において、中央演算装置10は、電力系統9における、制御対象とする電源を遮断した場合の電力系統の安定性を解析するシミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部104と、事故様相毎の電力系統の安定運用維持するために遮断する電源の組合せと電源の発電出力の合計値である制御量を示す制御テーブルD13を作成する制御テーブル設定部105と、潮流計算過渡安定度計算部により算出されたオンライン演算実績値に基づき、潮流値に対する電制量を算出する相関式を導出する整定情報導出部202と、を有する。整定情報導出部は、現在までに作成された複数のオンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した階段状の相関式により電制量を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統で事故が発生した場合の安定性について解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部と、
前記潮流計算過渡安定度計算部により行われた前記解析シミュレーションに基づき、事故発生時に前記電力系統の安定性を維持するために遮断する電源の組合せと前記電源の出力の合計値である制御量を示す制御テーブルを作成する制御テーブル設定部と、
前記潮流計算過渡安定度計算部により算出された前記制御量と前記解析シミュレーションにかかる潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、前記潮流値から電制量を算出するための整定情報を導出する整定情報導出部と、を有し、
前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を算出する潮流値と制御量との相関関係を表す階段状の相関式を導出する、
電力系統安定化システム。
【請求項2】
前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値のうち、前記潮流値の範囲における最大の制御量に基づき階段状の相関式を導出する、
請求項1に記載の電力系統安定化システム。
【請求項3】
前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値のうち、前記潮流値の範囲において、現在時刻と同一の時間帯に属する前記オンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を導出する、
請求項1に記載の電力系統安定化システム。
【請求項4】
前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値のうち、前記潮流値の範囲において、現在の日時に近い日時に作成された前記オンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を導出する、
請求項1に記載の電力系統安定化システム。
【請求項5】
電力系統で事故が発生した場合の安定性について解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部と、
前記潮流計算過渡安定度計算部により行われた前記解析シミュレーションに基づき、事故発生時に前記電力系統の安定性を維持するために遮断する電源の組合せと前記電源の出力の合計値である制御量を示す制御テーブルを作成する制御テーブル設定部と、
前記潮流計算過渡安定度計算部により算出された前記制御量と前記解析シミュレーションにかかる潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、前記潮流値から電制量を算出するための整定情報を導出する整定情報導出部と、を有し、
前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を算出する潮流値と制御量との相関関係を表す階段状の相関式を導出する、
中央演算装置と、
前記電力系統における潮流の変化を検出した場合に、前記整定情報導出部により作成された補正制御整定情報に基づき、前記制御テーブル設定部により作成された前記制御テーブルを補正し補正後制御テーブルを作成する補正制御対象決定部を有し、
補正制御対象決定部により作成された前記補正後制御テーブルにかかる前記電制量により前記電源の制御を行う、
中央制御装置と、
を備えた、電力系統安定化システム。
【請求項6】
前記中央制御装置は、前記整定情報導出部により作成された補正制御整定情報に基づき、前記中央演算装置に異常が発生した場合におけるバックアップ制御で用いる電制対象電源を示したリストであるバックアップ制御用制御テーブルを作成するバックアップ制御選択部を有し、前記中央演算装置に異常が発生した場合に、前記バックアップ制御選択部により作成された前記バックアップ制御用制御テーブルに基づいて制御を行う、
請求項5に記載の電力系統安定化システム。
【請求項7】
前記電力系統安定化システムは、前記電力系統における潮流の変化を検出する端末装置を備え、
前記中央制御装置は、前記電力系統における潮流の変化を前記端末装置により検出する、
請求項5または6に記載の電力系統安定化システム。
【請求項8】
コンピュータに、
電力系統で事故が発生した場合の安定性について解析シミュレーションを実行させる潮流計算過渡安定度計算ステップと、
前記潮流計算過渡安定度計算ステップにより行われた前記解析シミュレーションに基づき、事故発生時に前記電力系統の安定性を維持するために遮断する電源の組合せと前記電源の出力合計である制御量を示す制御テーブルの作成を実行させる制御テーブル設定ステップと、
前記潮流計算過渡安定度計算ステップにより算出された前記制御量と前記解析シミュレーションにかかる潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、前記潮流値から電制量を算出するための整定情報の導出を実行させる整定情報導出ステップと、を有するプログラムであって、
前記整定情報導出ステップは、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を算出する潮流値と制御量との相関関係を表す階段状の相関式の導出を実行させる、
電力系統安定化システム用コンピュータプログラム。
【請求項9】
電力系統で事故が発生した場合の安定性について解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算手順と、
前記潮流計算過渡安定度計算手順により行われた前記解析シミュレーションに基づき、事故発生時に前記電力系統の安定性を維持するために遮断する電源の組合せと前記電源の出力合計である制御量を示す制御テーブルを作成する制御テーブル設定手順と、
前記潮流計算過渡安定度計算手順により算出された前記制御量と前記解析シミュレーションにかかる潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、前記潮流値から電制量を算出するための整定情報を導出する整定情報導出手順と、を有し、
前記整定情報導出手順は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を算出する潮流値と制御量との相関関係を表す階段状の相関式を導出する、
電力系統安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力の発送電を行う複数の電力機器を制御し、電力系統で落雷などの事故が発生した場合に、電源制限などの制御を行って電力系統の安定運用を維持する電力系統安定化システム、電力系統安定化システム用コンピュータプログラムおよび電力系統安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、発電所、変電所および負荷とこれらを結ぶ電線路により構成される。電力系統は、発電電力を負荷に送る電力設備網であり、発電所から負荷端までの発電機器および送変電機器を含む。電力系統にかかる電力は、火力,原子力,水力などの電源により発電される。複数の電源で発電された電力が、送変電設備を介し負荷に供給される。電力系統の安定運用と電力品質は、複数の発電機器および送変電機器が適切に制御されることにより維持される。落雷などにより電力系統に事故が発生した場合であっても、電源に対する電源制限などの制御が適切に行われ、電力系統の安定した運用が維持されることが好ましい。電力系統に設けられた電力機器の制御を行う電力系統安定化システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-085834号公報
【特許文献2】特開2020-145880号公報
【特許文献3】特開2011-061911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、再生可能エネルギーにより発電を行う再生可能エネルギー電源が、多数導入されている。再生可能エネルギー電源の出力は、気象状況などに応じ短時間に急峻に変動する場合がある。電力系統における電力の状況を測定した時刻と、系統モデルを作成し制御対象を選択した後に、実際に電力系統に事故が発生し電力機器の制御を行う時刻との間に時間差が生じる。この時間差の間に、例えば再生可能エネルギー電源の出力が急峻に変動した場合、電力系統における電力の状況を測定した時刻における潮流と、実際に電力機器の制御を行う時刻における潮流は異なるものとなる。このため、電力系統における電力の状況を測定した時刻における系統情報を用いて選択された制御対象の電源制限では、実際に電力機器の制御を行う時刻において必要とされる制御量に対し不足または過剰となる場合があり、精度よく電力系統の安定化制御を行うことができないとの問題点があった。制御量が不足する場合、電力系統の安定運用を維持できない恐れがあった。
【0005】
電力系統における電力の状況を測定した時刻と、実際に電力機器の制御を行う時刻との間に生じる時間差を短縮することも考えられるが、実現するためには系統情報取得の高速化や中央演算装置の処理能力向上などが必要であり多大なるコストアップを伴う。したがって、制御量が不足しないように、制御対象の電力機器を追加または選択し直すことによって制御量を補正することが好ましい。
【0006】
本実施形態は、必要とされる制御量に対し、不足することが軽減されるとともに過剰となることが軽減された適切な電制量を算出することができる電力系統安定化システム、電力系統安定化システム用コンピュータプログラムおよび電力系統安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の電力系統安定化システムは、次のような特徴を有する。
(1)電力系統における、制御対象とする電源を遮断した場合の電力系統の安定性の解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部を有する。
(2)前記潮流計算過渡安定度計算部により行われた解析シミュレーションの結果に基づき、事故様相ごとの遮断する前記電源の組合せと前記電源の発電出力の合計値である制御量を示す制御テーブルを作成する制御テーブル設定部を有する。
(3)前記潮流計算過渡安定度計算部により算出された事故様相ごとの遮断する前記電源と前記制御量および潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、潮流値と電制量との相関関係を表す相関式を導出する整定情報導出部を有する。
(4)前記整定情報導出部は、現在までに作成された複数の前記オンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した電制量を算出する階段状の相関式を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの構成を示す図
【
図2】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの制御テーブルを説明する図
【
図3】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムに関する従来技術における補正制御整定情報を説明する図
【
図4】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの補正後の制御テーブルを説明する図
【
図5】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムに関する従来技術における補正制御整定情報の例を示す図
【
図6】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの補正制御整定情報の例を示す図
【
図7】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの補正制御整定情報の導出を説明する図
【
図8】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの補正制御整定情報を説明する図
【
図9】第1実施形態にかかる中央演算装置のプログラムのフローを示す図
【
図10】第1実施形態にかかる中央制御装置のプログラムのフローを示す図
【
図11】第1実施形態の第1の変形例にかかる電力系統安定化システムの補正制御整定情報の例を示す図
【
図12】第1実施形態の第2の変形例にかかる電力系統安定化システムの補正制御整定情報の例を示す図
【
図13】第2実施形態にかかる電力系統安定化システムの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1を参照して本実施形態の一例として、電力系統安定化システム1について説明する。一例として電力系統安定化システム1は、中央演算装置10、事故検出端末装置20、制御端末装置30、中央制御装置40により構成される。電力系統安定化システム1は、電力系統9、給電情報網8に接続される。中央演算装置10は、「中央演算装置(事前演算部)」と称される場合があり、その際、中央制御装置40は、「中央演算装置(事後制御部)」と称される場合がある。なお、中央演算装置10および中央制御装置40は、それぞれの機能を統合してひとつの装置として構成される場合がある(例えば、特許文献3)。本実施形態において、事故検出端末装置20、制御端末装置30を総括して端末装置と呼ぶ場合がある。後述する整定情報導出部202により算出された補正制御整定情報D12を用いて算出した電源制限の制御量を「電制量」と呼ぶ。また、電力系統9を安定化するために遮断の対象となる電源を「電制対象となる電源」、「制御対象とする電源」、「制御対象となる電源」または単に「電制対象」、「制御対象」と呼ぶ場合がある。
【0010】
(電力系統9)
電力系統9は、電源で発電された電力を負荷に供給する電力供給網である。電力系統9は、電力の発送電を行う複数の電力機器により構成される。電力機器は、一例として電源、遮断器、断路器、母線、送電線、変圧器、調相設備(図中不示)により構成される。
【0011】
電源は、電力を発電し出力する発電設備である。電源は、水力、火力、原子力などにより電力を発電する発電機である。電源は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより電力を発電する再生可能エネルギー電源であってもよい。複数の電源が電力系統9に配置される。
【0012】
遮断器は、電源により発電された電力が送電線や変圧器、母線を介して送電される流れを遮断する機器である。電力系統安定化システム1で電源制限を行う際、遮断器を制御することによって電源を電力系統9から遮断する。遮断器は、制御端末装置30を介し中央制御装置40により制御される。遮断器が制御され、電力系統9において電源制限(以降、電制と呼ぶ)が行われる。
【0013】
「電制」とは、電力系統9から電源を遮断することを言う。「電制」を「遮断」または「解列」と呼ぶ場合がある。「電制量」とは、電制される電源の出力電力を言う。「電制量」を「制御量」と呼ぶ場合がある。
【0014】
(給電情報網8)
給電情報網8は、通常、マイクロ波無線や光ファイバなどを用いた専用通信回線により構成される。給電情報網8を介し、電力系統9に配置された計測装置(図中不示)と中央演算装置10との間の通信が行われる。計測装置は、電力機器である電源、遮断器、断路器、母線、送電線、変圧器の状態を計測する。計測装置は、変電所や発電所に設置される。計測装置により計測された系統情報D81が、給電情報網8を介し中央演算装置10に送信される。給電情報網8は、有線により通信を行うものであってもよいし、無線により通信を行うものであってもよい。
【0015】
(事故検出端末装置20)
事故検出端末装置20は、接点情報入力回路、電圧電流入力回路、有効電力測定回路、送受信回路などをディジタルリレーで構成した端末装置である。事故検出端末装置20は、電力系統9における系統情報D21、事故情報D22を中央制御装置40に送信する。事故検出端末装置20は、想定事故を検出できる変電所などに複数配置される。
【0016】
系統情報D21は、事故検出端末装置20により検出された電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。系統情報D21は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。オンオフ情報とは、遮断器や断路器などの導通、遮断を示す情報である。計測情報とは、電源の出力、負荷、送電線や変圧器、母線を流れる有効電力(以下、潮流値と称す)、各電気所の母線電圧に関する情報を含む。事故検出端末装置20は、接点情報入力回路により遮断器や断路器などのオンオフ情報を取り込む。また、電圧電流入力回路により取り込んだ電圧電流情報を用いて有効電力測定回路により、電源の出力、負荷、送電線の有効電力を測定し、系統情報D21を作成する。
【0017】
事故情報D22は、電力系統9における電力機器に発生した事故に関する情報である。例えば、送電線に事故が発生した場合、事故にかかる電力機器および事故様相を示す情報である。事故検出端末装置20は、接点情報入力回路により、例えば事故除去リレー(電力系統に設置された保護装置,図中不示)の動作信号、遮断器のオンオフ情報を取り込み、事故情報D22を作成する。
【0018】
(制御端末装置30)
制御端末装置30は、接点情報入力回路、接点情報出力回路、電圧電流入力回路、有効電力測定回路、送受信回路などをディジタルリレーで構成した端末装置である。制御端末装置30は、中央制御装置40から受信した制御指令D44に基づいて、接点情報出力回路により遮断器を制御し、指定された電源を電力系統9から遮断する。制御端末装置30は、系統情報D31を出力する。制御端末装置30は、電制対象となる電源がある発電所などに複数配置される。
【0019】
系統情報D31は、制御端末装置30により検出された電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。系統情報D31は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。オンオフ情報とは、遮断器や断路器などの導通、遮断を示す情報である。計測情報とは、電源の出力、負荷、潮流値、各電気所の母線電圧に関する情報を含む。制御端末装置30は、接点情報入力回路により遮断器や断路器などのオンオフ情報を取り込む。また、電圧電流入力回路により取り込んだ電圧電流情報を用いて有効電力測定回路により、電源の出力、負荷、送電線の有効電力を測定し、系統情報D31を作成する。
【0020】
(中央演算装置10)
中央演算装置10は、系統情報D81を受信し、演算により制御テーブルD13、補正制御整定情報D12を作成し、出力する装置である。中央演算装置10は、コンピュータなどにより構成される。中央演算装置10は、給電情報網8および中央制御装置40に接続される。中央演算装置10は、一般送配電事業者の中央給電指令所などに設置される。
【0021】
制御テーブルD13は、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力の合計値である制御量を示すテーブルである。制御テーブルD13は、想定される全ての事故様相について電制対象の電源と制御量を記録する。
【0022】
補正制御整定情報D12は、監視対象の潮流値と、事故が発生した際に電力系統の安定運用を維持するために必要とされる制御量との関係を示す情報である。補正制御整定情報D12は、想定される全ての事故様相について作成される。
【0023】
中央演算装置10は、系統情報取得部101、系統モデル作成部102、選択対象リスト作成部103、潮流計算過渡安定度計算部104、制御テーブル設定部105、オンライン演算実績情報記録部201、整定情報導出部202、整定情報記録部203を有する。系統情報取得部101、系統モデル作成部102、選択対象リスト作成部103、潮流計算過渡安定度計算部104、制御テーブル設定部105、オンライン演算実績情報記録部201、整定情報導出部202、整定情報記録部203は、コンピュータ内の演算部または、ソフトウェアモジュールにより構成される。
【0024】
これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0025】
また、中央演算装置10は、記憶部204、記憶部205、記憶部206を有する。記憶部204、記憶部205、記憶部206は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体にて構成される。記憶部204は、オンライン演算実績情報D11を記憶する。記憶部205は、補正制御整定情報D12を記憶する。記憶部206は、制御テーブルD13を記憶する。
【0026】
これらの構成要素のうち一部または全部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などにより構成されていてもよい。
【0027】
以下の説明において、系統情報取得部101、系統モデル作成部102、選択対象リスト作成部103、潮流計算過渡安定度計算部104、制御テーブル設定部105の各々により実行される処理を、オンライン事前演算、またはオンライン演算と呼ぶ場合がある。
【0028】
系統情報取得部101は、給電情報網8に接続される。系統情報取得部101は、予め定められた周期で給電情報網8から系統情報D81を受信する。系統情報D81は、電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。系統情報D81は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。オンオフ情報とは、遮断器や断路器などの導通、遮断を示す情報である。計測情報とは、電源の出力、負荷、潮流値、各電気所の母線電圧に関する情報を含む。系統情報取得部101は、受信した系統情報D81を系統モデル作成部102に送信する。
【0029】
系統モデル作成部102は、系統情報取得部101にて受信した系統情報D81に基づき、系統モデルを作成する。系統モデルは、電力系統9をモデル化したデータである。系統モデル作成部102は、作成した系統モデルを選択対象リスト作成部103に送信する。
【0030】
選択対象リスト作成部103は、系統情報D81に基づき選択対象リストを作成する。選択対象リストは、制御することが可能な電源のリストである。選択対象リスト作成部103は、制御端末装置が設置された電源の運転状態から制御可否を判定して選択対象リストを作成し、選択対象リストを潮流計算過渡安定度計算部104に送信する。電源の運転状態とは、遮断器のオンオフ状態や電源の出力の大きさなどである。
【0031】
潮流計算過渡安定度計算部104は、系統モデル作成部102により作成された系統モデルと、選択対象リスト作成部103により作成された選択対象リストに基づき、解析シミュレーションを行う。潮流計算過渡安定度計算部104は、電力系統で事故が発生した場合の安定性について解析シミュレーションを行い、結果が不安定の場合は電制する電源を順次追加し、結果が安定となる制御内容(電制する電源の組合せ)を決定する。解析シミュレーションは、制御対象とする電源を遮断した場合における電力系統9の動きについて過渡安定度計算により行われる。潮流計算過渡安定度計算部104は、算出された解析シミュレーション結果を、制御テーブル設定部105、オンライン演算実績情報記録部201に送信する。
【0032】
制御テーブル設定部105は、潮流計算過渡安定度計算部104により算出された解析シミュレーション結果を制御テーブルD13に記録する。制御テーブルD13は、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力の合計値である制御量を示すテーブルである。制御テーブルD13は、想定される全ての事故様相の電制対象電源と制御量を記録する。制御テーブル設定部105は、潮流計算過渡安定度計算部104により行われた解析シミュレーションに基づき、事故発生時に電力系統の安定性を維持する、遮断する電源の組合せと制御量を示す制御テーブルD13を作成する。制御テーブル設定部105は、制御テーブルD13を記憶部206に記憶させる。
【0033】
記憶部206は、データベースとして構成される。記憶部206は、制御テーブル設定部105により作成された制御テーブルD13を蓄積して記憶する。記憶部206に記憶された制御テーブルD13は、中央制御装置40に送信される。
【0034】
オンライン演算実績情報記録部201は、潮流計算過渡安定度計算部104により算出された解析シミュレーション結果、制御テーブル設定部105により作成された制御テーブルD13に基づき、オンライン演算実績情報D11を作成する。オンライン演算実績情報D11は、オンライン事前演算により周期的に求められた解析シミュレーションの結果の各々を示す情報である。
【0035】
オンライン演算実績情報D11は、解析シミュレーションの結果の各々をオンライン演算実績値として含む。オンライン演算実績情報D11は、例えば、監視対象潮流値と、制御の内容に関する情報とを対応付けた情報である。オンライン演算実績情報記録部201は、オンライン演算実績情報D11を整定情報導出部202に送信するとともに記憶部204に記憶させる。
【0036】
記憶部204は、データベースとして構成される。記憶部204は、オンライン演算実績情報記録部201により作成されたオンライン演算実績情報D11を蓄積して記憶する。記憶部204に記憶されたオンライン演算実績情報D11は、整定情報導出部202に送信される。
【0037】
整定情報導出部202は、オンライン演算実績情報記録部201により作成され記憶部204に蓄積して記憶されたオンライン演算実績情報D11に基づき、補正制御整定情報D12を導出する。補正制御整定情報D12は、監視対象の潮流値と事故発生時に電力系統の安定運用維持に必要とされる電制量との関係を示す情報である。補正制御整定情報D12は、想定される全ての事故様相について作成される。整定情報導出部202は、潮流計算過渡安定度計算部104により算出された制御量と解析シミュレーションに用いた系統モデルにおける監視対象の潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、潮流値から電制量を算出するための補正制御整定情報D12を導出する。整定情報導出部202は、現在までに作成された複数のオンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を算出する潮流値と制御量の階段状の相関式を導出する。整定情報導出部202は、補正制御整定情報D12を整定情報記録部203に送信する。
【0038】
整定情報記録部203は、整定情報導出部202により導出された補正制御整定情報D12を記憶部205に記憶させる。
【0039】
記憶部205は、データベースとして構成される。記憶部205は、整定情報導出部202により導出された補正制御整定情報D12を記憶する。記憶部205に記憶された補正制御整定情報D12は、中央制御装置40に送信される。
【0040】
(中央制御装置40)
中央制御装置40は、系統情報D21、事故情報D22、系統情報D31に基づき電源を選択し、補正制御整定情報D12、制御テーブルD13に基づき制御指令D44を作成し、出力する装置である。中央制御装置40は、制御対象となる電源を遮断する制御指令D44を制御端末装置30に送信する。
【0041】
また、中央制御装置40は、中央演算装置10に異常が発生した場合のバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。中央制御装置40は、潮流変化に対応した補正後制御テーブルD43を作成する。中央制御装置40は、バックアップ制御用制御テーブルD42または補正後制御テーブルD43に基づき制御指令D44を作成し、制御端末装置30に送信する。
【0042】
中央制御装置40は、送受信回路などを備えたディジタルリレーなどにより構成される。中央制御装置40は、事故検出端末装置20、制御端末装置30、中央演算装置10に接続される。中央制御装置40は、一般送配電事業者の変電所などに設置される。
【0043】
中央制御装置40は、系統情報取得部301、選択対象リスト作成部302、バックアップ制御選択部303、異常検出部304、制御テーブル切替部305、潮流変化検出部401、補正制御対象決定部402、事故情報受信部500、制御指令出力部600を有する。
【0044】
これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0045】
また、中央制御装置40は、記憶部306、記憶部307、記憶部403、記憶部404、記憶部405を有する。記憶部306、記憶部307、記憶部403、記憶部404、記憶部405は、半導体メモリのような記憶媒体にて構成される。記憶部306は、バックアップ制御用相関式D41を記憶する。記憶部307は、バックアップ制御用制御テーブルD42を記憶する。記憶部403は、補正制御整定情報D12を記憶する。記憶部404は、制御テーブルD13を記憶する。記憶部405は、補正後制御テーブルD43を記憶する。
【0046】
これらの構成要素のうち一部または全部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などにより構成されていてもよい。
【0047】
系統情報取得部301は、事故検出端末装置20、制御端末装置30に接続される。系統情報取得部301は、予め定められた周期で事故検出端末装置20から系統情報D21を、制御端末装置30から系統情報D31を受信する。系統情報D21、系統情報D31は、電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。系統情報D21、系統情報D31は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。系統情報取得部301は、受信した系統情報D21、系統情報D31を選択対象リスト作成部302、潮流変化検出部401に送信する。
【0048】
選択対象リスト作成部302は、系統情報取得部301から系統情報D21、系統情報D31を受信する。系統情報D21、系統情報D31は、電力系統9における制御対象となる電源に関する情報を含む。選択対象リスト作成部302は、系統情報D21、系統情報D31に基づき、制御することが可能な電源のリストである選択対象リストを作成する。選択対象リスト作成部302は、選択対象リストをバックアップ制御選択部303に送信する。
【0049】
記憶部306は、バックアップ制御用相関式D41を記憶する。バックアップ制御用相関式D41は、中央演算装置10に異常が発生した場合のバックアップ制御を行うための相関式である。バックアップ制御用相関式D41は、潮流値と必要とされる制御量の関係を示す相関式である。バックアップ制御用相関式D41は、電力系統安定化システム1の運用者により予め記憶部306に設定され記憶される。
【0050】
バックアップ制御選択部303は、選択対象リスト作成部302から受信した選択対象リスト、系統情報D21、記憶部306に記憶されたバックアップ制御用相関式D41に基づきバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。バックアップ制御用制御テーブルD42は、中央演算装置10に異常が発生した際に中央制御装置40で行うバックアップ制御で制御対象となる電源を想定事故様相ごとに示したリストである。バックアップ制御選択部303は、バックアップ制御用制御テーブルD42を記憶部307に記憶させる。
【0051】
記憶部307は、バックアップ制御選択部303により作成されたバックアップ制御用制御テーブルD42を記憶する。
【0052】
潮流変化検出部401は、系統情報取得部301から系統情報D21、系統情報D31を受信する。潮流変化検出部401は、系統情報D21、系統情報D31に基づき潮流変化を検出する。潮流変化検出部401は、電力系統9における電力の状況を測定した時刻における潮流に対する、実際に系統事故が発生して電制を行う直前の時刻における潮流の変化を、潮流変化として検出する。潮流変化検出部401は、検出した潮流変化を補正制御対象決定部402に送信する。
【0053】
記憶部403は、中央演算装置10の記憶部205から補正制御整定情報D12を受信し記憶する。
【0054】
記憶部404は、中央演算装置10の記憶部206から制御テーブルD13を受信し記憶する。
【0055】
補正制御対象決定部402は、潮流変化検出部401により検出された潮流変化、記憶部403に記憶された補正制御整定情報D12、記憶部404に記憶された制御テーブルD13に基づき、補正後制御テーブルD43を作成する。補正後制御テーブルD43は、潮流変化に対応した、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力合計値である制御量を示すテーブルである。補正制御対象決定部402は、補正後制御テーブルD43を記憶部405に記憶させる。
【0056】
記憶部405は、補正制御対象決定部402から補正後制御テーブルD43を受信し記憶する。
【0057】
異常検出部304は、中央演算装置10の異常を検出する。異常検出部304は、中央演算装置10によるオンライン演算処理を監視し、オンライン演算処理の過程において発生する伝送や演算にかかる異常を検出する。異常検出部304は、検出した異常を制御テーブル切替部305に送信する。中央演算装置10の異常は、例えば制御テーブルD13を中央演算装置10から受信できないことで検出する。
【0058】
制御テーブル切替部305は、記憶部405に記憶された補正後制御テーブルD43、記憶部307に記憶されたバックアップ制御用制御テーブルD42のうち一方を選択し、制御指令出力部600に送信する。異常検出部304により異常が検出された場合、バックアップ制御用制御テーブルD42が選択され、異常検出部304により異常が検出されていない場合、補正後制御テーブルD43が選択される。
【0059】
事故情報受信部500は、事故検出端末装置20から事故情報D22を受信し、制御指令出力部600に送信する。事故情報D22には、事故発生箇所および事故様相が含まれる。
【0060】
制御指令出力部600は、事故情報受信部500から事故情報D22を受信し、制御指令D44を出力する。制御指令出力部600は、事故情報受信部500から受信した事故情報D22に基づき制御対象における事故様相を判別し、制御テーブル切替部305により選択された補正後制御テーブルD43またはバックアップ制御用制御テーブルD42に基づき制御対象を選択し制御指令D44を作成する。制御指令出力部600は、制御指令D44を制御端末装置30に送信する。
【0061】
以上が、本実施形態にかかる電力系統安定化システム1の構成である。
【0062】
[1-2.作用]
次に、
図1~10に基づき本実施形態の電力系統安定化システム1の動作の概要を説明する。
図9は、中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合のプログラムのフローを示す図である。
図9に示すプログラムは、中央演算装置10に内蔵される。
図10は、中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合のプログラムのフローを示す図である。
図10に示すプログラムは、中央制御装置40に内蔵される。電力系統安定化システム1は、下記の動作および演算を行う。
【0063】
(中央演算装置10の動作)
中央演算装置10は、系統情報D81を受信し、演算により制御テーブルD13、補正制御整定情報D12を導出し、出力する。中央演算装置10は、予め定められた周期により給電情報網8から系統情報D81を受信し、最新の電力系統9の状態を反映させて、制御テーブルD13、補正制御整定情報D12を更新する。
【0064】
系統情報D81にかかる最新の電力系統9の状態に基づき、制御テーブルD13が作成される。制御テーブルD13は、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力値の合計である制御量を示すテーブルである。
【0065】
中央演算装置10は、解析シミュレーションの結果にかかるオンライン演算実績情報D11を作成する。オンライン演算実績情報D11は、解析シミュレーションの結果の各々をオンライン演算実績値として含む。オンライン演算実績情報D11に基づき、補正制御整定情報D12が作成される。補正制御整定情報D12は、監視対象の潮流値と必要とされる電制量との関係を示す情報である。中央演算装置10の動作の詳細は以下の通りである。
【0066】
中央演算装置10は、系統情報取得部101により、予め定められた周期で給電情報網8から系統情報D81を受信する。系統情報D81は、電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。電力系統9に配置された計測装置により、電力機器である電源、遮断器、断路器、送電線、変圧器、母線の状態が計測され、系統情報D81として給電情報網8を介し中央演算装置10に送信される。
【0067】
系統情報D81は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。オンオフ情報とは、遮断器や断路器などの導通、遮断を示す情報である。計測情報とは、電源の出力、負荷、潮流値、各電気所の母線電圧に関する情報を含む。系統情報取得部101は、受信した系統情報D81を系統モデル作成部102に送信する。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS101により実行される。
【0068】
中央演算装置10は、系統モデル作成部102により、系統情報取得部101にて受信した系統情報D81に基づき、系統モデルを作成する。系統モデルは、電力系統9をモデル化したデータで、ノードとブランチ、発電機や発電機の制御機器などを表す各種モデルから構成される。
【0069】
ノードは母線、発電機、負荷をデータ化したものであり、識別情報であるノード番号を有する。ノード番号に対応した、電源および負荷の有効電力と無効電力、母線電圧などの情報がノードに関する情報に含まれる。ブランチは送電線、変圧器をデータ化したものであり、識別情報であるブランチ番号を有する。ブランチ番号に対応した、接続先のノード番号(始端ノードと終端ノード)、運用回線数、インピーダンスなどの情報がブランチに関する情報に含まれる。発電機ノードには発電機や発電機の制御機器などを表す各種モデルが設定される。負荷ノードには電力需要(有効電力と無効電力)の大きさや、その電圧特性および周波数特性などが設定される。
【0070】
系統モデル作成部102は、事故発生前に受信した系統情報D81と系統設備に関するデータとに基づき、状態推定計算を行い、その時点の系統状態を表す系統モデルを作成する。系統設備に関するデータは予め中央演算装置10に設定され、記憶される。系統モデル作成部102は、作成した系統モデルを選択対象リスト作成部103に送信する。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS102により実行される。
【0071】
中央演算装置10は、選択対象リスト作成部103により、系統情報D81に基づき選択対象リストを作成する。選択対象リストは、制御することが可能な電源のリストである。選択対象リストは、系統情報D81に含まれた制御対象となる電源に関する情報に基づき作成される。
【0072】
制御対象となる電源に関する情報は、対象となる電源の有効電力出力値や、制御することが可能な電源であるかを示す情報である。例えば、現在稼動中で発電出力が所定の値を超え、系統運用者が遮断対象から除外していないなど、所定の条件を満たす電源が、制御することが可能な電源とされる。選択対象リスト作成部103は、制御することが可能な電源のリストである選択対象リストを潮流計算過渡安定度計算部104に送信する。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS103により実行される。
【0073】
中央演算装置10は、潮流計算過渡安定度計算部104により、系統モデル作成部102にて作成された系統モデルと、選択対象リスト作成部103にて作成された選択対象リストに基づき、解析シミュレーションを行う。解析シミュレーションは、制御対象とする電源を遮断した場合における電力系統9の安定性を確認するためのものであり、潮流計算と過渡安定度計算により行われる。潮流計算過渡安定度計算部104は、最初に系統モデル作成部102により作成された系統モデルに基づき潮流計算を行う。
【0074】
潮流計算により、送電線や変圧器に流れる潮流値(有効電力Pと無効電力Q)および母線電圧の大きさVと位相δが算出される。潮流計算過渡安定度計算部104は、潮流計算による算出結果に基づき、事故発生後に制御対象とする電源を遮断した場合における電力系統9の動きについて、過渡安定度計算によるシミュレーションを行う。
【0075】
シミュレーションは、あらかじめ設定された複数の想定事故について行われる。潮流計算過渡安定度計算部104は、制御対象となる電源の選択を変化させ、系統が安定となる結果を得るまで繰り返し過渡安定度計算を行い個々の電源および電源の組合せを算出する。潮流計算過渡安定度計算部104は、解析シミュレーション結果を、制御テーブル設定部105、及びオンライン演算実績情報記録部201に送信する。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS104により実行される。
【0076】
中央演算装置10は、制御テーブル設定部105により、潮流計算過渡安定度計算部104にて算出された解析シミュレーション結果を制御テーブルD13に記録する。
図2に制御テーブルD13の例を示す。制御テーブルD13は、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力値の合計である制御量を示すテーブルである。制御テーブルD13は、想定される全ての事故様相の内容が記録される。
【0077】
制御テーブルD13は、オンライン事前演算が周期的に実行され、想定事故発生に備えて周期的に更新される。例えば30秒周期によりオンライン事前演算が行われ、制御テーブルD13が更新される。制御テーブルD13は、想定事故様相ごとの制御対象とする電源の組合せと制御量を示す。制御テーブル設定部105は、制御テーブルD13をオンライン演算実績情報記録部201に送信するとともに記憶部206に記憶させる。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS105により実行される。
【0078】
記憶部206は、制御テーブル設定部105により記録された制御テーブルD13を記憶する。
【0079】
中央演算装置10は、オンライン演算実績情報記録部201により、潮流計算過渡安定度計算部104にて算出された解析シミュレーション結果、制御テーブル設定部105にて記録された制御テーブルD13に基づき、オンライン演算実績情報D11を作成する。オンライン演算実績情報D11は、オンライン事前演算により周期的に求められた解析シミュレーションの結果の各々を示す情報である。オンライン演算実績情報D11は、解析シミュレーションの結果の各々をオンライン演算実績値として含む。オンライン演算実績情報D11は、例えば、監視対象潮流値と、制御の内容に関する情報とを対応付けた情報である。
【0080】
監視対象潮流値は、想定事故の過酷度と相関が強い系統情報であり、例えば、想定事故の対象送電線における事故発生前の潮流値(有効電力)である。監視対象潮流値は、潮流計算過渡安定度計算部104による系統情報を用いた潮流計算により算出される。
【0081】
制御の内容に関する情報は、想定事故が発生した場合に生じる不安定な現象を安定化させるための制御の内容である。例えば、制御の内容に関する情報は、制御対象として選択された電源の名称や、制御対象とする電源を遮断した場合において、電力系統9から電気的に遮断される電力量(制御量)に関する情報である。
【0082】
本実施形態では、一例として制御の内容に関する情報は、制御対象とする電源を遮断した場合において電力系統9から電気的に遮断される電力量であるものとする。
【0083】
オンライン演算実績情報記録部201は、潮流計算過渡安定度計算部104にて算出された解析シミュレーション結果から監視対象潮流値を抽出するとともに、制御テーブル設定部105にて記録された制御テーブルD13に基づき制御対象の選択結果とを抽出する。オンライン演算実績情報記録部201は、監視対象潮流値値と、この監視対象潮流値に対応する制御対象の選択結果を抽出する度に、オンライン演算実績情報D11を作成する。オンライン演算実績情報記録部201は、オンライン演算実績情報D11を整定情報導出部202に送信するとともに記憶部204に蓄積して記憶させる。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS201により実行される。
【0084】
記憶部204は、オンライン演算実績情報記録部201により作成されたオンライン演算実績情報D11を蓄積して記憶する。
【0085】
中央演算装置10は、整定情報導出部202により、オンライン演算実績情報記録部201にて作成され記憶部204に記憶されたオンライン演算実績情報D11に基づき、補正制御整定情報D12を導出する。補正制御整定情報D12は、監視対象の潮流値と必要とされる電制量との関係を示す情報である。必要とされる電制量は、電制対象となる電源にかかる出力の合計値である。補正制御整定情報D12は、想定される全ての事故様相について作成される。
【0086】
従来技術において、補正制御整定情報D12にかかる想定事故様相ごとの監視対象潮流値と必要とされる制御量との関係は、一次式により表されることが一般的であった。例えば、従来技術において、監視対象潮流値と必要とされる制御量との関係は、y=a・x+b などの一次式による相関式にて表されていた。xは監視対象潮流値、yは必要とされる制御量である。a、bは係数である。従来技術における、想定事故様相ごとの監視対象潮流値と必要とされる制御量との関係を
図3に示す。
【0087】
従来技術における電制量の算出について、
図5に基づき説明する。
図5においてL0は、監視対象潮流値と必要とされる制御量との関係を表す近似直線である。近似直線L0は、記憶部204に記憶されたオンライン演算実績情報D11に基づき、最小二乗法などにより算出される。
図5において複数の白丸はオンライン演算実績値であり、オンライン演算実績情報D11の個々を示す。近似直線L0は、監視対象潮流値と必要とされる制御量との関係の近似を表す。
【0088】
従来技術において、近似直線L0を平行移動させた直線が、補正制御整定情報L1とされていた。補正制御整定情報L1にかかる直線は、近似直線L0の傾きを保ちつつ、必要とされる制御量に対し一括りとなる監視対象潮流値に対して、最も厳しい値となる大きい制御量を有するように作成される。作成された直線が、補正制御整定情報L1とされていた。補正制御整定情報L1は、監視対象潮流値に基づき電制量を算出するために用いられる。
【0089】
図5に示す補正制御整定情報L1に基づき、電制量を算出する場合、監視対象潮流値に対し制御量が過剰となる。オンライン演算実績値である白丸の分布に示すとおり、実際の監視対象潮流値と電制量の関係が階段状に分布するため、全てのオンライン演算実績情報D11における制御量を上回る必要とされる電制量を補正制御整定情報L1にかかる直線を用いて算出した場合、更に制御量が電制量を上回るように制御対象となる電源が選択される。このため、制御対象となる電源の出力合計である制御量は、オンライン演算実績情報D11の制御量より大きくなる。
図5において、制御対象となる電源の出力合計である制御量を黒丸、個々のオンライン演算実績情報D11の制御量を白丸により示す。
【0090】
電制量は、補正制御整定情報L1にかかる直線に基づき算出される。しかしながら、電制量と最小制御量との間には、差M0が生じる。また、必要とされる制御量と電制量との間には、差M1が生じる。必要とされる制御量を上回るように電制対象となる電源が選択されるためである。
【0091】
図5の例において、補正制御整定情報L1にかかる直線に基づき電制量を算出する場合、監視対象潮流値P2に対応した理想的な制御量はC1である。しかしながら、電制対象として選択可能な電源の出力は大きく離散値であるため、制御量がC1となる電源の組み合わせは存在しない。このため、制御量がC1以上となる電源の組み合わせの中で、最も制御量がC1に近い電源の組み合わせが選択されることとなる。
【0092】
図5の例において、最も制御量がC1に近い電源の組み合わせに対応する制御量として、C2が選択される。監視対象潮流値P2の近傍では、制御量として、C2が選択されることとなる。その結果、必要とされる制御量に対し電制量が過剰となる。
【0093】
また、電源を遮断せずに安定化が図れると判断された監視対象潮流値に対して、制御対象が選択されてしまう場合がある。
図5において、0≦x≦P1の領域は、オンライン演算実績情報D11により制御対象がないと判断された領域である。しかし、補正制御整定情報L1にかかる直線に基づき電制対象となる電源を選択した場合、0≦x≦P1の領域において、必要とされる制御量は、正の値となり、必要とされる制御量に対応する制御対象が選択されてしまう。監視対象潮流値に対応する必要とされる制御量のうち、
図5にハッチングにより示された領域M0およびM1に対応する電制量は、必要とされない過剰な制御である。
【0094】
このように、従来技術における電力系統安定化システム1では、潮流急変時でも不足制御とならないように補正制御整定情報L1にかかる相関式を作成し、さらに補正制御整定情報L1にかかる相関式を用いて補正制御情報を作成し、補正制御を行っていた。補正制御整定情報L1にかかる相関式は、一次式であるため、不足制御とならないようにマージンを有する電制量を算出した場合、制御量が過剰となる。また、相関式を求める際に使用するデータサンプルが少ない場合、精度が低い相関式が作成され、電制量の精度の低下が懸念される。相関式を求める際に使用するデータサンプルとは、オンライン演算により算出された補正制御情報の実績値である。
【0095】
上記問題点を改善するため、本実施形態にかかる整定情報導出部202は、補正制御整定情報L1にかかる相関式に代替し、監視対象潮流値に対応し段階的に設定された電制量を有する補正制御整定情報D12にかかる相関式に基づき制御量を算出する。
【0096】
本実施形態にかかる整定情報導出部202は、オンライン演算実績情報記録部201により作成され記憶部204に記憶されたオンライン演算実績情報D11に基づき、補正制御整定情報D12を導出する。補正制御整定情報D12は、監視対象潮流値と電制量の関係を階段状の相関式により表した情報である。
【0097】
整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲における最大の制御量に基づき階段状の関数を作成して電制量を算出し、階段状の相関式を作成する。
【0098】
整定情報導出部202により導出された補正制御整定情報D12の例を
図6に示す。整定情報導出部202による補正制御整定情報D12の導出について、
図7に基づき説明する。
図7は、補正制御整定情報D12の導出過程を示している。
図7の縦軸は制御量、横軸は監視対象潮流値を示す。
【0099】
オンライン演算実績情報記録部201により作成されたオンライン演算実績情報D11に基づき、
図7に示すように個々のオンライン演算実績値がプロットされる。
図7に示す白丸が個々のオンライン演算実績値である。個々のオンライン演算実績値以上の電制量が段階的に補正制御整定情報D12として導出される。
図7においてN0が補正制御整定情報D12にかかる電制量である。
【0100】
図7においてL1は、従来技術による補正制御整定情報を示している。従来技術による補正制御整定情報L1は、y=a・x+b などの一次式による相関式にて表されていた。xは監視対象潮流値、yは必要とされる制御量である。a、bは係数である。
【0101】
本実施形態にかかる整定情報導出部202は、補正制御整定情報L1に代替し、監視対象潮流値に対応し段階的に設定された電制量を有する相関式を補正制御整定情報D12として導出する。補正制御整定情報D12は、
図8に示すように、想定事故様相ごとの監視対象潮流値Pと電制対象の発電機出力の合計(制御量)の相関を示すとともに、監視対象潮流値Pと必要とされる制御量の相関を示す。監視対象潮流値Pと必要とされる制御量の相関式は、例えばy=0(0<x≦P1)、y=C0(P1<x≦P2)、・・・ のような階段状の相関式により表される。
【0102】
整定情報導出部202は、オンライン演算実績情報D11における必要とされる制御量が所定の閾値を越えて階段状に変化するポイント(以下、立ち上がりポイントと称する)に応じて、監視対象潮流値と電制量との関係を示す補正制御整定情報D12を導出する。
【0103】
また、整定情報導出部202は、例えば、監視対象潮流値と必要とされる制御量のデータが十分に蓄積されていないなどの理由により、オンライン演算実績情報D11が少数である場合、あらかじめ設定された必要とされる制御量に基づき、監視対象潮流値と電制量との関係を示す補正制御整定情報D12をあらかじめ設定する。
【0104】
整定情報導出部202は、オンライン演算実績情報D11における立ち上がりポイントから、次の立ち上がりポイントまでの間を、オンライン演算実績情報D11に示される制御対象の選択結果に対応した一定の電制量とする補正制御整定情報D12を導出する。これにより、従来技術における補正制御整定情報L1に基づく電制量に比べ、
図5における領域M0やM1に対応する制御量のような過剰な制御量を低減させた、適切な電制量が選択される。
【0105】
整定情報導出部202は、導出した補正制御整定情報D12を整定情報記録部203に送信する。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS202により実行される。
【0106】
中央演算装置10は、整定情報記録部203により、整定情報導出部202にて導出された補正制御整定情報D12を記憶部205に記憶させる。中央演算装置10がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS203により実行される。
【0107】
記憶部205は、整定情報導出部202により導出された補正制御整定情報D12を記憶する。
【0108】
(中央制御装置40の動作)
中央制御装置40は、系統情報D21、事故情報D22、系統情報D31に基づき電源を選択し、補正制御整定情報D12、制御テーブルD13に基づき制御指令D44を作成し、出力する。中央制御装置40は、制御対象となる電源を遮断する制御指令D44を制御端末装置30に送信する。
【0109】
また、中央制御装置40は、中央演算装置10に異常が発生した際のバックアップ制御に用いるバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。中央制御装置40は、潮流変化に対応した補正後制御テーブルD43を作成する。中央制御装置40は、バックアップ制御用制御テーブルD42または補正後制御テーブルD43に基づき制御指令D44を作成し、制御端末装置30に送信する。
【0110】
中央制御装置40は、周期的に事故検出端末装置20から系統情報D21を、制御端末装置30から系統情報D31を受信し、最新の電力系統9の状態を検出し、潮流が急変した場合に不足電制とならないように補正を行い、制御対象の選択結果を更新する。
【0111】
中央制御装置40は、想定事故が実際に発生した場合に、中央演算装置10により事前に作成された制御テーブルD13に基づき、電制対象となる電源を遮断する制御指令D44を制御端末装置30に送信する。
【0112】
また、バックアップ制御機能として、中央制御装置40は、中央演算装置10に異常が発生した場合に、事前に作成されたバックアップ制御用制御テーブルD42に基づき、電制対象となる電源を遮断する制御指令D44を作成し、制御端末装置30に送信する。中央演算装置10に異常が発生した場合、中央制御装置40は、バックアップ制御用制御テーブルD42に代替し、バックアップ制御用制御テーブルD42に基づき制御指令D44を作成し制御端末装置30に送信する。
【0113】
中央制御装置40は、系統情報取得部301により、予め定められた周期で事故検出端末装置20から系統情報D21を、制御端末装置30から系統情報D31を受信する。系統情報D21、系統情報D31は、電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。
【0114】
電力系統9に配置された事故検出端末装置20により、事故検出端末装置20が設置された電気所における電力機器の状態が計測され、系統情報D21として中央制御装置40に送信される。電力系統9に配置された制御端末装置30により、制御端末装置30が設置された電気所における電力機器の状態が計測され、系統情報D31として中央制御装置40に送信される。系統情報D21にかかる情報と系統情報D31にかかる情報は、重複する場合がある。
【0115】
系統情報D21、系統情報D31は、電力系統9の接続状態および電力の需給状態に関する情報である。系統情報D21、系統情報D31は、例えば、電力系統9における電力機器のオンオフ情報や、電力の需給状態に関する計測情報を含む。
【0116】
オンオフ情報とは、遮断器や断路器などの導通、遮断を示す情報である。計測情報とは、電源の出力、負荷、潮流値、各電気所の母線電圧に関する情報を含む。系統情報取得部301は、受信した系統情報D21、系統情報D31を選択対象リスト作成部302、潮流変化検出部401に送信する。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS301により実行される。
【0117】
中央制御装置40は、選択対象リスト作成部302により、系統情報取得部301から系統情報D21、系統情報D31を受信する。系統情報D21、系統情報D31は、電力系統9における制御対象となる電源に関する情報を含む。選択対象リスト作成部302は、系統情報D21、系統情報D31に基づき、制御することが可能な電源のリストである選択対象リストを作成する。制御することが可能な電源とは、例えば、現在稼動中で出力が所定の値を超え、系統運用者が遮断対象から除外していないなど、所定の条件を満たす電源である。選択対象リスト作成部302は、選択対象リストをバックアップ制御選択部303に送信する。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS302により実行される。
【0118】
記憶部306は、バックアップ制御用相関式D41を記憶している。バックアップ制御用相関式D41は、中央演算装置10に異常が発生した際にバックアップ制御を行うための相関式である。バックアップ制御用相関式D41は、潮流値と必要とされる制御量の関係を示す相関式である。バックアップ制御用相関式D41は、運用者により予め記憶部306に設定され記憶される。
【0119】
バックアップ制御用相関式D41は、一例として潮流値と必要とされる制御量との関係を、想定された事故様相ごとにy=a・x+b などの一次式により表した相関式である。xは、事故点送電線の潮流値、yは必要とされる制御量yである。a、bは係数である。記憶部306に、係数aと切片bが整定値として記憶される。
【0120】
中央制御装置40は、バックアップ制御選択部303により、選択対象リスト作成部302から受信した選択対象リスト、記憶部306に記憶されたバックアップ制御用相関式D41に基づきバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。バックアップ制御用制御テーブルD42は、中央演算装置10に異常が発生した際に行うバックアップ制御で用いる想定事故様相ごとの制御対象電源を示したリストである。
【0121】
バックアップ制御選択部303は、バックアップ制御用相関式D41に基づき必要とされる制御量を算出し、選択対象リスト作成部302にて作成された選択対象リストに基づき、必要とされる制御量を上回る制御量となるように制御対象を選択し、バックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。バックアップ制御選択部303は、バックアップ制御用制御テーブルD42を記憶部307に記憶させる。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS303により実行される。
【0122】
記憶部307は、バックアップ制御選択部303により作成されたバックアップ制御用制御テーブルD42を記憶する。
【0123】
中央制御装置40は、潮流変化検出部401により、系統情報取得部301から系統情報D21、系統情報D31を受信する。潮流変化検出部401は、系統情報D21、系統情報D31に基づき潮流変化を検出する。潮流変化とは、電力系統9における電力の状況を測定した、オンライン事前演算を行う時刻における潮流と、実際に電力機器の制御を行う時刻の直前における潮流との変化である。
【0124】
潮流変化検出部401は、例えば、オンライン事前演算で用いる系統モデルを作成する際に使用した潮流断面と、現在の潮流断面を比較して、オンライン事前演算時より潮流が増加した場合、潮流変化を検出する。潮流変化の検出は、例えば1秒などの一定周期で繰り返し実施される。潮流変化検出部401は、検出した潮流変化を補正制御対象決定部402に送信する。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS401により実行される。
【0125】
記憶部403は、中央演算装置10の記憶部205から補正制御整定情報D12を受信し記憶している。
【0126】
記憶部404は、中央演算装置10の記憶部206から制御テーブルD13を受信し記憶している。
【0127】
中央制御装置40は、補正制御対象決定部402により、潮流変化検出部401により検出された潮流変化、記憶部403に記憶された補正制御整定情報D12、記憶部404に記憶された制御テーブルD13に基づき、補正後制御テーブルD43を作成する。補正後制御テーブルD43は、潮流変化に対応した、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力合計である制御量を示すテーブルである。補正制御対象決定部402は、補正後制御テーブルD43を記憶部405に記憶させる。
【0128】
補正制御対象決定部402は、潮流変化検出部401により検出された潮流変化を受信し、補正制御にかかる制御量が制御テーブルD13に記録されている制御量より大きい場合、制御対象の補正を行う。具体的には、補正制御対象決定部402は、記憶部403に記憶された補正制御整定情報D12を参照して、電制量が必要とされる制御量より大きくなるように電制対象発電機を追加し、制御テーブルD13を補正し補正後制御テーブルD43を作成する。
【0129】
補正後制御テーブルD43の例を
図4に示す。補正後制御テーブルD43は、事故発生時に電制対象となる電源と、前記電源の出力合計である制御量を示すテーブルである。補正後制御テーブルD43は、想定される全ての事故様相について作成される。
【0130】
補正制御対象決定部402は、潮流変化検出部401により潮流増加が検出されない場合、中央演算装置10により作成された制御テーブルD13を補正せずに、補正後制御テーブルD43として記憶部405に記憶させる。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS402により実行される。
【0131】
記憶部405は、補正制御対象決定部402から補正後制御テーブルD43を受信し記憶する。
【0132】
中央制御装置40は、異常検出部304により、中央演算装置10の異常を検出する。異常検出部304は、中央演算装置10によるオンライン演算処理を監視し、オンライン演算処理の過程において発生する伝送や演算にかかる異常を検出する。
【0133】
異常検出部304は、例えば、系統情報取得部101における系統情報D81の受信にかかる異常や、潮流計算過渡安定度計算部104におけるオンライン事前演算処理における異常を検出する。異常検出部304は、検出した異常を制御テーブル切替部305に送信する。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS304により実行される。
【0134】
中央制御装置40は、制御テーブル切替部305により、記憶部405に記憶された補正後制御テーブルD43、記憶部307に記憶されたバックアップ制御用制御テーブルD42のうち一方を選択し、制御指令出力部600に送信する。異常検出部304により異常が検出された場合、バックアップ制御用制御テーブルD42が選択され、異常検出部304により異常が検出されていない場合、補正後制御テーブルD43が選択される。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS305により実行される。
【0135】
中央制御装置40は、事故情報受信部500により、事故検出端末装置20から事故情報D22を受信し、制御指令出力部600に送信する。事故情報D22には、事故発生箇所および事故様相が含まれる。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS500により実行される。
【0136】
中央制御装置40は、制御指令出力部600により、事故情報受信部500から事故情報D22を受信し、制御指令D44を出力する。制御指令出力部600は、事故情報受信部500から受信した事故情報D22に基づき発生した事故様相を判別し、制御テーブル切替部305により選択された補正後制御テーブルD43またはバックアップ制御用制御テーブルD42に基づき制御対象を選択し制御指令D44を作成する。
【0137】
制御指令出力部600は、選択した制御対象となる電源を遮断する制御指令D44を作成する。制御指令出力部600は、制御指令D44を制御端末装置30に送信する。中央制御装置40がソフトウェアモジュールにより構成される場合、上記の処理はステップS600により実行される。
【0138】
制御端末装置30は、受信した制御指令D44に基づき、制御対象となる電源を遮断する制御を行う。
【0139】
以上が、本実施形態にかかる電力系統安定化システム1の動作である。
【0140】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、中央演算装置10は、電力系統9における、制御対象とする電源を遮断した場合の制御量の解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部104と、潮流計算過渡安定度計算部104により行われた解析シミュレーションに基づき、事故様相ごとの遮断する電源の組合せと前記電源の発電出力の合計値である制御量を示す制御テーブルD13を作成する制御テーブル設定部105と、潮流計算過渡安定度計算部104により算出された遮断する電源と制御量および潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき、潮流値に対する電制量を算出する整定情報導出部202と、を有し、整定情報導出部202は、現在までに作成された複数のオンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した階段状の相関式を導出することにより、必要とされる制御量に対し、不足することが軽減されるとともに過剰となることが軽減された適切な電制量を算出することができる中央演算装置10を提供することができる。
【0141】
本実施形態によれば、電力系統9の状態が変化し必要とされる制御量が急変した場合であっても、階段状の相関式による補正制御整定情報D12に基づき適切な電制量を算出することができる。これにより、従来技術における一次関数により算出された電制量よりも、過剰な制御を抑制した電制量を算出することが可能となる。また、相関式を求めるときに使用するオンライン演算実績情報D11のデータ数が少ない場合であっても、予め設定した階段状の相関式に基づいて電制量を算出することができる。
【0142】
(2)本実施形態によれば、整定情報導出部202は、現在までに作成された複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲における最大の制御量に基づき階段状の相関式を作成し、電制量を算出するので、必要とされる制御量に対し、不足することが軽減されるとともに過剰となることが軽減された適切な電制量を算出することができる中央演算装置10を提供することができる。
【0143】
整定情報導出部202は、オンライン演算実績情報D11における立ち上がりポイントから、次の立ち上がりポイントまでの間を、オンライン演算実績情報D11に示された制御対象の選択結果に対応した一定の電制量を算出し補正制御整定情報D12を作成する。算出された電制量は、潮流値の範囲における最大の電制量であるので、不足することが軽減された適切な電制量が算出される。
【0144】
[1-4.変形例]
(1)第1の変形例
上記実施形態において、整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲における最大の制御量に基づき潮流値と電制量の相関を表す階段状の関数を導出し、導出した階段状の相関式を補正制御整定情報D12として作成するものとした。しかしながら、整定情報導出部202による階段状の相関式の導出は上記に限られない。
【0145】
整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲において、現在時刻と同一の時間帯に属するオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して電制量を算出し、階段状の相関式にて補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0146】
第1の変形例にかかる整定情報導出部202の動作について、
図11に基づき説明する。オンライン演算実績情報D11にかかるオンライン演算実績値は、時間帯ごとに区分けされて作成され、記憶部205に蓄積され記憶される。複数の各オンライン演算実績値は、時間帯のデータを含む。
【0147】
1日の24時間が、3時間ごとの8つの時間帯に区分けされている場合について説明する。各時間帯は、
図11(b)に示すとおりに区分けされているものとする。例えば、現在時刻が、16:00である場合、整定情報導出部202は、16:00が含まれる時間帯6にかかるオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して補正制御整定情報D12を作成する。
【0148】
同一の時間帯にかかるオンライン演算実績値が複数存在する場合、同一の時間帯にかかるオンライン演算実績値のうち最新の日時に作成されたオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0149】
または、同一の時間帯にかかるオンライン演算実績値が複数存在する場合、同一の時間帯にかかる複数のオンライン演算実績値のうち最大の制御量または、制御量の平均値に基づき補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0150】
現在時刻と同一の時間帯に属するオンライン演算実績値が存在しない場合、現在時刻に近い時間帯にかかるオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0151】
時間帯は、曜日、祝祭日、季節ごとに定められたものであってもよい。
【0152】
整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲において、現在時刻と同一の時間帯に属するオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して電制量を算出し、階段状の相関式にて補正制御整定情報D12を作成するので、当該時間帯における系統状態の傾向を反映した潮流値と制御量の相関を用いて電制量を算出するので、より精度よく、補正制御整定情報D12にかかる電制量を算出することができる。
【0153】
整定情報導出部202は、現在時刻と同一の時間帯に属するオンライン演算実績値に基づき電制量を算出するので、電制量にかかる制御量が不足することを軽減することができるとともに、制御量が過剰となることを軽減することができる。
【0154】
(2)第2の変形例
整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲において、現在の日時に近い日時に作成されたオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して電制量を算出し、階段状の相関式にて補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0155】
第2の変形例にかかる整定情報導出部202の動作について、
図12に基づき説明する。オンライン演算実績情報D11にかかる複数の各オンライン演算実績値は、作成された日時に関するデータを含む。
【0156】
図12(b)に示す各オンライン演算実績値は、A、B、C・・・Hの順に、現在の日時に近い日時に作成されたものとする。整定情報導出部202は、現在の日時に最も近い日時に作成された[A]のオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して、補正制御整定情報D12を作成する。
【0157】
整定情報導出部202は、現在の日時に近い日時に作成された複数のオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して、補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。例えば、整定情報導出部202は、現在の日時に近い日時に作成された複数のオンライン演算実績値A、B、Cの制御量の平均値に基づき階段状の相関式を作成して、補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0158】
または、整定情報導出部202は、各オンライン演算実績値A、B、C・・・Hに、現在の日時に近い日時に作成された順に重み付けし、複数のオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して、補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。例えば、整定情報導出部202は、各オンライン演算実績値A、B、C・・・Hに、現在の日時に近い日時に作成されたオンライン演算実績値の比重が大きくなるように設定された重み付け係数を乗算し、複数のオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して、補正制御整定情報D12を作成するようにしてもよい。
【0159】
整定情報導出部202は、現在までに作成されたオンライン演算実績情報D11にかかる複数のオンライン演算実績値のうち、潮流値の範囲において、現在の日時に近い日時に作成されたオンライン演算実績値にかかる制御量に基づき階段状の相関式を作成して電制量を算出し、階段状の相関式にて補正制御整定情報D12を作成するので、現在の系統状態に近い系統状態における潮流値と制御量の相関を用いて電制量を算出するので、より精度よく、補正制御整定情報D12にかかる電制量を算出することができる。
【0160】
電力系統9における電源、遮断器、断路器、母線、送電線、変圧器、調相設備などの電力機器や、送電経路などの構成は、変更されている場合がある。このため、現在の日時に近くない日時に作成されたオンライン演算実績値は、現在の電力系統9の構成について作成されていない場合がある。
【0161】
整定情報導出部202は、現在の電力系統9の構成について、現在の日時に近い日時に作成されたオンライン演算実績値に基づき電制量を算出するので、より精度よく、補正制御整定情報D12にかかる電制量を算出することができる。これにより、電制量にかかる制御量が不足することを軽減することができるとともに、制御量が過剰となることを軽減することができる。
【0162】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成および作用]
第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1について説明する。第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1を
図13に示す。第1実施形態にかかる電力系統安定化システム1の中央制御装置40は、記憶部306を有していたが、第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1の中央制御装置40は、記憶部306を有していない点が相違する。第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1のその他の構成は、第1実施形態にかかる電力系統安定化システム1の構成と同じである。
【0163】
第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1は、中央演算装置10、事故検出端末装置20、制御端末装置30、中央制御装置40により構成される。第2実施形態にかかる中央演算装置10は、系統情報取得部101、系統モデル作成部102、選択対象リスト作成部103、潮流計算過渡安定度計算部104、制御テーブル設定部105、オンライン演算実績情報記録部201、整定情報導出部202、整定情報記録部203、記憶部204、記憶部205、記憶部206を有する。
【0164】
第2実施形態にかかる中央制御装置40は、系統情報取得部301、選択対象リスト作成部302、バックアップ制御選択部303、異常検出部304、制御テーブル切替部305、潮流変化検出部401、補正制御対象決定部402、事故情報受信部500、制御指令出力部600、記憶部307、記憶部403、記憶部404、記憶部405を有する。
【0165】
以下に、第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1の動作の概要を説明する。以下の説明において、第1実施形態にかかる電力系統安定化システム1と異なる動作について説明する。第1実施形態にかかる電力系統安定化システム1と同様の動作について、説明は省略する。
【0166】
第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1の中央制御装置40は、中央演算装置10により導出された補正制御整定情報D12を受信し、補正制御整定情報D12をバックアップ制御整定情報D45とし、バックアップ制御整定情報D45に基づきバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。
【0167】
第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1の中央制御装置40は、バックアップ制御用相関式D41を記憶する記憶部306を有しない。中央制御装置40の記憶部403は、中央演算装置10の記憶部205から補正制御整定情報D12を受信し記憶している。
【0168】
中央制御装置40は、バックアップ制御選択部303により、選択対象リスト作成部302から受信した選択対象リスト、記憶部403に記憶された補正制御整定情報D12に基づきバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。バックアップ制御選択部303は、補正制御整定情報D12をバックアップ制御整定情報D45とし、バックアップ制御整定情報D45に基づきバックアップ制御用制御テーブルD42を作成する。バックアップ制御用制御テーブルD42は、中央演算装置10に異常が発生した場合に必要とされる制御量と制御対象となる電源の関係を示したリストである。
【0169】
バックアップ制御選択部303は、系統情報取得部301を介して受信した系統情報D21、系統情報D31と、記憶部403に記憶された補正制御整定情報D12を用いて必要制御量を算出する。バックアップ制御選択部303は、選択対象リスト作成部302から受信した選択対象リストを用いて必要とされる制御量を上回る制御量となるようにバックアップ制御の電制対象発電機を選択し、バックアップ制御用制御テーブルD42を作成し記憶部307に記憶させる。バックアップ制御選択部303は、ソフトウェアモジュールにより構成されていてもよい。
【0170】
以上が、第2実施形態にかかる電力系統安定化システム1の構成および動作である。
【0171】
[2-2.効果]
(1)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1は、中央演算装置10と中央制御装置40とを備える。
【0172】
中央演算装置10は、電力系統9における、制御対象とする電源を遮断した場合の制御量の解析シミュレーションを行う潮流計算過渡安定度計算部104と、潮流計算過渡安定度計算部104により行われた解析シミュレーションに基づき、事故様相ごとの遮断する電源の組合せと前記電源の発電出力の合計値である制御量を示す制御テーブルD13を作成する制御テーブル設定部105と、潮流計算過渡安定度計算部104により算出された遮断する電源と制御量および潮流値を含むオンライン演算実績値に基づき潮流値に対する電制量を算出し、補正制御整定情報D12を作成する整定情報導出部202と、を有し、整定情報導出部202は、現在までに作成された複数のオンライン演算実績値に基づき、潮流値の範囲に対応した制御量を示す階段状の相関式を導出する。
【0173】
中央制御装置40は、電力系統9における潮流の変化を検出した場合に、整定情報導出部202により作成された補正制御整定情報D12に基づき、制御テーブル設定部105により作成された制御テーブルD13を補正し補正後制御テーブルD43を作成する補正制御対象決定部402を有し、補正制御対象決定部402により作成された補正後制御テーブルD43にかかる制御量により電源の制御を行う。
【0174】
これにより、必要とされる制御量に対し、不足することが軽減されるとともに過剰となることが軽減された適切な電制量を算出することができる電力系統安定化システム1を提供することができる。
【0175】
本実施形態によれば、電力系統9の状態が変化し必要とされる制御量が急変した場合であっても、中央制御装置40は、整定情報導出部202により作成された補正制御整定情報D12に基づき、制御テーブル設定部105により作成された制御テーブルD13を補正し、適切な制御量により電力系統9における制御対象とする電源を制御する。これにより不足することが軽減されるとともに過剰となることが軽減された適切な制御量により、電力系統9における電源を制御することができる。
【0176】
(2)本実施形態によれば、中央制御装置40は、整定情報導出部202により作成された補正制御整定情報D12に基づき、中央演算装置10に異常が発生した場合に行うバックアップ制御で電制する電源を示したリストであるバックアップ制御用制御テーブルD42を作成するバックアップ制御選択部303を有し、中央演算装置10に異常が発生した場合に、前記バックアップ制御選択部303により作成されたバックアップ制御用制御テーブルD42に基づいて電源の制御を行うので、中央演算装置10に異常が発生した場合であっても、適切な制御量により、電力系統9における電源を制御することができる。
【0177】
本実施形態によれば、補正制御整定情報D12がバックアップ制御用として用いられるので、バックアップ制御用の設定値をオフライン解析で設定する作業が不要となる。これにより電力系統安定化システム1の運用者による作業の負担が軽減される。
【0178】
(2)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1は、電力系統9における潮流の変化を検出する端末装置を備え、中央制御装置40は、電力系統9における潮流の変化を端末装置により検出するので、電力系統9における潮流の変化を迅速に精度よく検出することができる。これにより、電力系統9における潮流が急峻に変化した場合であっても、電力系統安定化システム1は、適切な制御量により電力系統9における電源を制御することができる。
【0179】
[3.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0180】
(1)上記実施形態において、系統情報取得部101は、給電情報網8から系統情報D81を受信するものとしたが、系統情報取得部101は、他の情報伝達媒体を介して系統情報D81を受信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0181】
1・・・電力系統安定化システム
10・・・中央演算装置
101・・・系統情報取得部
102・・・系統モデル作成部
103・・・選択対象リスト作成部
104・・・潮流計算過渡安定度計算部
105・・・制御テーブル設定部
201・・・オンライン演算実績情報記録部
202・・・整定情報導出部
203・・・整定情報記録部
204,205,206・・・記憶部
20・・・事故検出端末装置
30・・・制御端末装置
40・・・中央制御装置
301・・・系統情報取得部
302・・・選択対象リスト作成部
303・・・バックアップ制御選択部
304・・・異常検出部
305・・・制御テーブル切替部
401・・・潮流変化検出部
402・・・補正制御対象決定部
500・・・事故情報受信部
600・・・制御指令出力部
306,307,403,404,405・・・記憶部
8・・・給電情報網
9・・・電力系統