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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074626
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】建装材、建物構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20230523BHJP
   G03B 21/60 20140101ALI20230523BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20230523BHJP
   G02F 1/15 20190101ALN20230523BHJP
【FI】
E04H1/12 308
G03B21/60
G02F1/13 505
G02F1/15 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187643
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 忠祐
【テーマコード(参考)】
2E025
2H021
2H088
2K101
【Fターム(参考)】
2E025DA04
2E025DA11
2E025DA12
2H021BA01
2H088EA34
2H088GA10
2K101AA22
2K101DA01
2K101DC02
2K101DC13
2K101DC43
2K101DC44
2K101DC46
2K101EK05
(57)【要約】
【課題】表示装置の設置により部屋の意匠性が損なわれる印象をユーザーに与えることを抑制する。
【解決手段】サンルームの内外を区画する上壁を構成する第1建装材12は、光透過性の内側パネル21及び光透過性の外側パネル22と、内側パネル21及び外側パネル22の間に配置され、サンルーム内に映像を表示する表示装置24とを備える。内側パネル21には、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられている。内側パネル21は、調光シートの透過率を独立して変更可能である複数の領域を有している。その領域は、表示装置24に重なる領域である調光領域A1と、表示装置24に重ならない領域である調光領域A2とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の部屋の内外を区画する壁部に適用される建装材であって、
間隔をあけて配置される光透過性の内側パネル及び光透過性の外側パネルと、
前記内側パネル及び前記外側パネルの間に配置され、前記部屋内に映像を表示する表示装置とを備え、
前記内側パネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、
前記内側パネルは、前記調光シートの前記透過率を独立して変更可能である複数の領域を有し、
前記領域は、前記表示装置に重なる領域と、前記表示装置に重ならない領域とを含むことを特徴とする建装材。
【請求項2】
前記外側パネルは、光透過性のパネルであり、
前記外側パネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、
前記外側パネルは、前記調光シートの前記透過率が低い状態であり、前記内側パネルに入射する外光を遮る遮光状態と、前記調光シートの前記透過率が高い状態であり、前記内側パネルに外光を入射させる採光状態とを切り替え可能である請求項1に記載の建装材。
【請求項3】
前記内側パネル及び前記外側パネルの一方又は両方は、透明基材層と、前記透明基材層に積層された光学薄膜層とを備える請求項1又は請求項2に記載の建装材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の建装材により形成される第1壁により区画される部屋を備える建物構造。
【請求項5】
前記部屋を区画する、前記第1壁とは別の第2壁を備え、
前記第2壁の少なくとも一部は、光透過性のパネルにより形成され、
前記第2壁を形成するパネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、
前記第2壁を形成するパネルは、前記調光シートの前記透過率が低い状態であり、前記部屋内に入射する外光を遮る遮光状態と、前記調光シートの前記透過率が高い状態であり、前記部屋内に外光を入射させる採光状態とを切り替え可能である請求項4に記載の建物構造。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の建物構造を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋内に映像を表示する表示装置を備える建装材、建物構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、スクリーンに映像を投影する表示装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-038293号公報
【特許文献2】特開2020-087049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記表示装置は、部屋を区画する壁の内面をスクリーンとして映像を投影するように使用される場合がある。この場合、上記表示装置は、部屋内に設置された支持台の上に置かれたり、部屋を区画する壁に固定されたりすることにより部屋内に設置される。このとき、設置された上記表示装置が見えてしまうことに起因して、部屋の意匠性が損なわれる印象をユーザーに与えることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する建装材は、建物の部屋の内外を区画する壁部に適用される建装材であって、間隔をあけて配置される光透過性の内側パネル及び光透過性の外側パネルと、前記内側パネル及び前記外側パネルの間に配置され、前記部屋内に映像を表示する表示装置とを備え、前記内側パネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、前記内側パネルは、前記調光シートの前記透過率を独立して変更可能である複数の領域を有し、前記領域は、前記表示装置に重なる領域と、前記表示装置に重ならない領域とを含む。
【0006】
上記構成によれば、内側パネルにおける表示装置に重ならない領域に取り付けられた調光シートの透過率を高くすることにより、建装材を介して部屋内に外光を取り込むことができる状態になる。また、内側パネルにおける表示装置に重ならない領域に取り付けられた調光シートの透過率を低くすることにより、建装材の内面は、調光シート及び内側パネルの各色に基づく色調の壁面となる。
【0007】
いずれの状態においても、内側パネルにおける表示装置に重なる領域に取り付けられた調光シートの透過率を低くすることにより、部屋内から表示装置を見え難くすることができる。そのため、表示装置が見えてしまうことに起因して、部屋内の意匠性が損なわれる印象をユーザーに与えることを抑制できる。また、上記構成によれば、建装材の内部に表示装置が収容されるため、部屋内の空間をより広く利用できる。
【0008】
上記建装材において、前記外側パネルは、光透過性のパネルであり、前記外側パネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、前記調光シートの前記透過率が低い状態であり、前記外側パネルは、前記内側パネルに入射する外光を遮る遮光状態と、前記調光シートの前記透過率が高い状態であり、前記内側パネルに外光を入射させる採光状態とを切り替え可能であることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、外側パネルに取り付けられた調光シートの透過率を低くすることにより、外側から部屋を見た場合においても、表示装置を見え難くすることができる。また、内側パネル及び外側パネルに取り付けられた調光シートの両方の透過率を低くすることにより、建装材全体の透過率をより低下させることができる。
【0010】
上記建装材において、前記内側パネル及び前記外側パネルの一方又は両方は、透明基材層と、前記透明基材層に積層された光学薄膜層とを備えることが好ましい。
上記構成とした場合には、光学薄膜層によって任意の波長の光の反射率又は透過率を調整することによって、部屋内から内側パネルを見た場合に、光学薄膜層に基づく色又は模様を有する有色透明の内側パネルとなる。同様に、部屋の外側から外側パネルを見た場合に、光学薄膜層に基づく色又は模様を有する有色透明の外側パネルとなる。これにより、内側パネル及び外側パネルの意匠性が向上する。また、内側パネルが有色透明であることにより、内側パネルにおける表示装置に重なる領域に取り付けられた調光シートの透過率を低くしたときに表示装置を見え難くする効果が高められる。
【0011】
上記課題を解決する建物構造は、上記建装材により形成される第1壁により区画される部屋を備える。
上記建物構造において、前記部屋を区画する、前記第1壁とは別の第2壁を備え、前記第2壁の少なくとも一部は、光透過性のパネルにより形成され、前記第2壁を形成するパネルには、可視光の透過率を変更できる調光シートが取り付けられており、前記第2壁を形成するパネルは、前記調光シートの前記透過率が低い状態であり、前記部屋内に入射する外光を遮る遮光状態と、前記調光シートの前記透過率が高い状態であり、前記部屋内に外光を入射させる採光状態とを切り替え可能であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1壁及び第2壁の複数の壁から採光が可能となり、部屋の採光範囲を広く確保することができる。また、第2壁の光透過性のパネルに取り付けられた調光シートの透過率を低くすることにより、第2壁の内面も調光シート及び光透過性のパネルの各色に基づく色調の壁面となる。そのため、遮光モードとしたときに、第1壁の内面と第2壁の内面を統一感のある色調とすることが容易である。
【0013】
上記課題を解決する建物は、上記建物構造を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示装置の設置により部屋の意匠性が損なわれる印象をユーザーに与えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】サンルームの斜視図である。
図2】第1建装材の断面図である。
図3】内側パネル(第2建装材)の断面図である。
図4】外側パネルの断面図である。
図5】各調光領域を示す第1建装材及び第2建装材の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の建装材を、建物に設けられるサンルームの壁部に適用した一実施形態について説明する。なお、以下に記載する透過率及び光透過性はそれぞれ、可視光の透過率及び可視光の光透過性を意味する。また、内側及び外側はそれぞれ、サンルームの内面側及びサンルームの外面側を意味する。
【0017】
[サンルーム]
図1に示すように、サンルーム10は、例えば、住宅の建物Tのテラスなどに設置される。サンルーム10は、透明な壁部により区画された部屋であり、透明な壁部を通じて外光である太陽光を取り入れることができる。そのため、サンルーム10は、室内において風雨を避けつつも、屋外に居るような感覚を得られる空間を提供するための建物構造として用いられている。
【0018】
サンルーム10は、枠組11、第1建装材12、床材13、及び第2建装材14a~14dを備えている。枠組11は、サンルーム10の形状に応じて立体的に形成された枠部材である。第1建装材12は、枠組11の上部に固定された透明なパネル状の部材であり、サンルーム10の上面を区画する上壁である。床材13は、サンルーム10の床を構成する下壁であり、枠組11の下部に固定されている。第2建装材14a~14dは、枠組11の側部に固定された透明なパネル状の部材であり、サンルーム10の側面を区画する側壁である。なお、本実施形態においては、建物構造を構成する第1壁は上壁であり、第2壁は、各側壁である。また、いずれかの側壁には、図示しない出入口が設けられている。
【0019】
[第1建装材]
第1建装材12は、サンルーム10の上部を構成する部位であり、上部においてサンルーム10の内外を区画する。
【0020】
図2に示すように、第1建装材12は、サンルーム10の天井の内面を形成する内側パネル21と、サンルーム10の上部外壁を形成する外側パネル22とを備えている。内側パネル21及び外側パネル22は、上下方向、即ち、上壁の厚さ方向に間隔をあけて対向するように配置されている。したがって、第1建装材12は、厚さ方向に間隔をあけて配置される内側パネル21と外側パネル22とによる二重壁構造を有し、二重壁構造をなす内側パネル21と外側パネル22との間には、収容室Sが形成されている。内側パネル21と外側パネル22との間隔Hは、例えば、10mm以上200mm以下である。内側パネル21と外側パネル22との間における両パネルの周縁部には、スペーサ23が配置されている。スペーサ23は、内側パネル21と外側パネル22との間隔を保持する部材である。
【0021】
図1及び図2に示すように、内側パネル21と外側パネル22との間の収容室Sにおける一つの隅部には、サンルーム10内に映像を表示する表示装置24が収容されている。表示装置24としては、例えば、サンルーム10の壁部の内面をスクリーンとして映像を投影する投影装置、サンルーム10内に浮遊立体映像を結像させる立体映像映写機、TFT画面やLCD画面等の映像を表示する画面を備える表示装置が挙げられる。
【0022】
図3に示すように、内側パネル21は、光透過性を有する有色透明のパネルであり、透明基材層21aと、透明基材層21aの内側の表面及び外側の表面の一方又は両方に積層された光学薄膜層21bとを備えている。図3では、一例として、透明基材層21aの外側の表面のみに光学薄膜層21bが積層されている場合を図示している。
【0023】
透明基材層21aは、無色透明又は有色透明の層である。透明基材層21aを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂等の透明樹脂、ガラスが挙げられる。軽量化の観点においては、透明樹脂を用いることが好ましい。強度向上の観点においては、ガラスを用いることが好ましい。透明基材層21aの厚さは、特に限定されるものでなく、所望の強度及び所望の透明度が確保される厚さに適宜、設定される。なお、透明基材層21aの厚さの一例は、0.1mm以上30mm以下である。
【0024】
光学薄膜層21bは、内側パネル21に対して、特定の色調や模様を付与するための構成である。光学薄膜層21bとしては、例えば、屈折率の異なる複数種類の層が積層された誘電体多層膜が挙げられる。誘電体多層膜の各層を構成する材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化インジウムなどが挙げられる。誘電体多層膜を構成する層の種類は、例えば、2層以上であり、誘電体多層膜の層数は、例えば、5層以上である。
【0025】
誘電体多層膜を構成する各層の膜厚及び材質、並びに誘電体層の層数は、誘電体多層膜の光学特性に応じて設計される。誘電体多層膜の光学特性としては、例えば、光の干渉により構造色を生じさせる特性、特定の波長の光の透過率又は反射率を相対的に高めることにより、特定の波長の光に基づく色を内側パネル21に付与する特性、内側パネル21をハーフミラーとして機能させる特性が挙げられる。
【0026】
図4に示すように、外側パネル22は、光透過性を有する有色透明のパネルであり、透明基材層22aと、透明基材層22aの内側の表面及び外側の表面の一方又は両方に積層された光学薄膜層22bとを備えている。図4では、一例として、透明基材層22aの内側の表面のみに光学薄膜層22bが積層されている場合を図示している。
【0027】
透明基材層22aに関する構成は、透明基材層21aと同様である。透明基材層22aは、透明基材層21aと同じであってもよいし、異なっていてもよい。光学薄膜層22bは、外側パネル22に対して、特定の色調や模様を付与するための構成である。光学薄膜層22bに関する構成は、光学薄膜層21bと同様である。光学薄膜層22bは、光学薄膜層21bと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
[第2建装材]
第2建装材14a~14dは、サンルーム10の側壁を構成する部位であり、側部においてサンルーム10の内外を区画する。
【0029】
第2建装材14a~14dは、光透過性を有する透明のパネルである。第2建装材14a~14dの構成は、内側パネル21と同様である。図3に示すように、第2建装材14は、透明基材層14eと、透明基材層14eの内側の表面及び外側の表面の一方又は両方に積層された光学薄膜層14fとを備えている。図3では、第2建装材14の符号を括弧で示すとともに、一例として、透明基材層14eの外側の表面のみに光学薄膜層14fが積層されている場合を図示している。
【0030】
[調光用シート]
図3及び図4に示すように、第1建装材12の内側パネル21の内面、外側パネル22の外面、及び第2建装材14の内面には、調光シート30が取り付けられている。調光シート30は、透過率を変更可能に構成されている調光シートである。
【0031】
調光シート30が有する透過率の変更は、調光シート30に印加される駆動電圧の変更によって行われる。調光シート30の種類は、液晶調光シートの他に、エレクトロクロミックシートを含む。液晶調光シートは、駆動電圧の印加による液晶分子の配向制御によって透過率が制御される。エレクトロクロミックシートは、駆動電圧の印加によるエレクトロクロミック材料の電荷制御によって透過率が制御される。高透過率を有した状態での調光シート30の色は、無色透明、又は有色透明である。低透過率を有した状態での調光シート30の色は、無彩色、又は有彩色である。
【0032】
調光シート30の型式は、ノーマル型又はリバース型である。ノーマル型の調光シート30は、調光シート30の通電時に、相対的に高い透過率を有する一方で、調光シート30の非通電時に、相対的に低い透過率を有する。リバース型の調光シート30は、調光シート30の通電時に、相対的に低い透過率を有する一方で、調光シート30の非通電時に、相対的に高い透過率を有する。
【0033】
調光シート30は、調光シート30の面方向に広がる第1透明電極、第2透明電極、及び調光層を備える。調光シート30は、第1透明電極、調光層、第2透明電極の順に積層されており、調光層は、第1透明電極と第2透明電極とに挟まれている。
【0034】
第1透明電極と第2透明電極とは、光透過性を有する。第1透明電極の光透過性は、調光シート30を通した物体の視覚認識を可能にする。第2透明電極の光透過性もまた、調光シートを通した物体の視覚認識を可能にする。各透明電極を構成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種が挙げられる。
【0035】
液晶調光シートが備える調光層は、液晶組成物を含む。液晶組成物に含まれる液晶分子としては、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。液晶組成物の保持型式は、高分子分散型やカプセル型などである。高分子分散型は、高分子層のなかに分散している多数の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子分散型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備える高分子ネットワーク型を含む。高分子ネットワーク型は、網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
【0036】
リバース型の液晶調光シートは、調光層と第1透明電極との間、及び調光層と第2透明電極との間に配向膜をさらに備える。配向膜を構成する材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウムなどの無機化合物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
配向膜は、例えば、垂直配向膜、水平配向膜である。垂直配向膜は、第1透明電極と接する面とは反対側の面、及び第2透明電極と接する面とは反対側の面に対して垂直になるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。水平配向膜は、第1透明電極と接する面とは反対側の面、及び第2透明電極と接する面とは反対側の面に対してほぼ平行となるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。
【0038】
エレクトロクロミックシートが備える調光層は、エレクトロクロミック材料と電解質とを含む。エレクトロクロミック材料としては、例えば、ポリアニリン誘導体、ビオロゲン、金属フタロシアニン、フェナントロリン錯体などの有機化合物、三酸化タングステンや二酸化インジウムなどの無機化合物から選択される一種が挙げられる。電解質としては、例えば、リチウム塩やカリウム塩などの液体電解質、高分子固体電解質が挙げられる。
【0039】
[調光シートの配置]
図5に示すように、調光シート30は、第1建装材12の内側パネル21の内面、外側パネル22の外面、及び第2建装材14の内面における特定範囲である調光領域A1~A4に取り付けられている。なお、図5においては、内側パネル21と外側パネル22とを別々に図示している。
【0040】
調光領域A1は、内側パネル21における表示装置24に重なる範囲を含む、内側パネル21の一隅部の範囲である。
調光領域A2は、内側パネル21における調光領域A1以外の範囲である。つまり、内側パネル21における表示装置24に重ならない範囲である。
【0041】
調光領域A3は、外側パネル22の全面となる範囲である。
調光領域A4は、第2建装材14a~14dそれぞれの全面となる範囲である。
各調光シート30は、上記の調光領域ごとに独立して透過率を変更可能である。調光領域A4については、各第2建装材14に対して、調光シート30が1枚ずつ取り付けられており、第2建装材14ごとに調光シート30の透過率を独立して変更可能である。
【0042】
[調光制御部]
図1に示すように、サンルーム10は、各調光シート30の透過率を制御する調光制御部31を備えている。調光制御部31は、各調光シート30の各第1透明電極及び各第2透明電極に電気的に接続されている。調光制御部31は、調光シート30の透過率を、上記の調光領域A1~A4の調光領域単位で独立して制御する。なお、調光領域A4については、調光制御部31は、第2建装材14ごとに調光シート30の透過率を独立して制御する。
【0043】
調光制御部31は、サンルーム10に設けられる操作部又はリモコンなどの操作部材(図示略)に対するユーザーの操作に基づいて、サンルーム10が取り得るモードの切り替えを行う。サンルーム10が取り得るモードは、例えば、採光モード、遮光モード、表示モード、及び自由選択モードである。これらの各モードは、調光領域A1~A4の調光領域単位における調光シート30の透過率の組み合わせがそれぞれ異なっている。
【0044】
採光モードは、サンルーム10内に外光を取り込む形態である。採光モードを選択する操作がなされた場合、調光制御部31は、調光領域A1に位置する部分が不透明となり、かつ調光領域A2~A4に位置する部分が透明となるように調光シート30に電圧を印加する。
【0045】
採光モードにおいて、内側パネル21における表示装置24に重なる範囲である調光領域A1は、透過率の低い遮蔽状態になる。このとき、内側パネル21の調光領域A1は、サンルーム10内から見て、内側パネル21及び調光シート30の各色に基づく色調の壁部に見えるようになる。そして、内側パネル21及び調光シート30によって、サンルーム10内のユーザーから表示装置24が目隠しされた状態となることで、サンルーム10内から表示装置24が見え難くなる。
【0046】
なお、内側パネル21の色調は特に限定されるものではないが、調光シート30が透過率の低い遮蔽状態であるときに、サンルーム10内から見て、グレイ、スモーク色、シルバーなどの色となる色調とした場合には、表示装置24を見え難くする効果がより顕著に得られる。また、基本モードにおける内側パネル21の表面状態は、例えば、調光シート30が透過率の低い遮蔽状態であるときに、グロス調やマット調に見える表面状態である。
【0047】
遮光モードは、サンルーム10内に取り込まれる外光を大きく低下させる形態である。遮光モードを選択する操作がなされた場合、調光制御部31は、調光領域A1~A4が不透明となるように調光シート30に電圧を印加する。
【0048】
遮光モードにおいては、調光領域A1~A4が透過率の低い遮蔽状態になるため、サンルーム10内から見て、上壁内面及び各側壁の内面が内側パネル21又は第2建装材14と調光シート30との各色に基づく色調の壁部に見えるようになる。そのため、遮光モードは、例えば、サンルーム10を、外光を取り込む窓のない部屋として利用する場合に選択される。また、遮光モードでは、サンルーム10外から内部が見え難くなるため、サンルーム10のプライバシーを保護する場合にも遮光モードは有用である。第2建装材14の色調は、例えば、調光シート30が透過率の低い遮蔽状態であるときに、グレイ、スモーク色、シルバーに見える色調である。また、第2建装材14の表面状態は、例えば、調光シート30が透過率の低い遮蔽状態であるときに、グロス調、マット調に見える表面状態である。
【0049】
また、遮光モードにおいても、内側パネル21における表示装置24に重なる範囲である調光領域A1は、透過率の低い遮蔽状態になる。そのため、採光モードと同様に、サンルーム10内から表示装置24が見え難くなる。
【0050】
表示モードは、表示装置24による映像をサンルーム10内に表示するための形態である。表示モードを選択する操作がなされた場合、調光制御部31は、調光領域A1に位置する部分が透明となり、かつ調光領域A2~A4に位置する部分が不透明となるように調光シート30に電圧を印加する。
【0051】
表示モードにおいては、内側パネル21における調光領域A1は、透過率の高い表示状態になる。そのため、内側パネル21の調光領域A1を介して、表示装置24による映像をサンルーム10内に表示することができる。このとき、調光領域A2~A4は、透過率の低い遮光状態になる。これにより、サンルーム10内は、上壁及び側壁を通じて外光が入射しない暗い状態になるため、表示装置24による映像が見やすくなる。また、調光領域A4である第2建装材14の内面は、不透明の状態になるため、表示装置24による映像を表示するスクリーンとして利用できる。
【0052】
自由選択モードは、調光領域A1~A4の調光領域単位で調光シート30の透過率をユーザーが任意に設定できるモードである。自由選択モードにおいては、ユーザーにより、調光領域A1~A4から調光領域を選択する操作、及び選択した調光領域の透過率を設定する設定操作が行われる。そして、自由選択モードを選択する操作及び上記設定操作がなされた場合、調光制御部31は、選択された調光領域の透過率が設定された状態となるように調光シート30に電圧を印加する。
【0053】
次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。
(1)サンルーム10の内外を区画する上壁を構成する第1建装材12は、光透過性の内側パネル21及び光透過性の外側パネル22と、内側パネル21及び外側パネル22の間に配置され、サンルーム10内に映像を表示する表示装置24とを備える。内側パネル21には、可視光の透過率を変更できる調光シート30が取り付けられている。内側パネル21は、調光シート30の透過率を独立して変更可能である複数の領域を有している。その領域は、表示装置24に重なる領域である調光領域A1と、表示装置24に重ならない領域である調光領域A2とを含む。
【0054】
上記構成によれば、内側パネル21の調光領域A2に取り付けられた調光シート30の透過率を高くすることにより、第1建装材12を介してサンルーム10内に外光を取り込むことができる状態になる。また、内側パネル21の調光領域A2に取り付けられた調光シート30の透過率を低くすることにより、第1建装材12の内面は、調光シート30及び内側パネル21の各色に基づく色調の壁面となる。
【0055】
いずれの状態においても、内側パネル21の調光領域A1に取り付けられた調光シート30の透過率を低くすることにより、サンルーム10内から表示装置24を見え難くすることができる。そのため、表示装置24が見えてしまうことに起因して、サンルーム10内の意匠性が損なわれる印象をユーザーに与えることを抑制できる。また、上記構成によれば、第1建装材12の内部に表示装置24が収容されるため、サンルーム10内の空間をより広く利用できる。
【0056】
(2)外側パネル22は、光透過性のパネルである。外側パネル22には、可視光の透過率を変更できる調光シート30が取り付けられている。外側パネル22は、調光シート30の透過率が低い状態であり、内側パネル21に入射する外光を遮る遮光状態と、調光シート30の透過率が高い状態であり、内側パネル21に外光を入射させる採光状態とを切り替え可能である。
【0057】
上記構成によれば、外側パネル22に取り付けられた調光シート30の透過率を低くすることにより、外側からサンルーム10を見た場合においても、表示装置24を見え難くすることができる。また、内側パネル21及び外側パネル22に取り付けられた調光シート30の両方の透過率を低くすることにより、第1建装材12全体の透過率をより低下させることができる。
【0058】
(3)内側パネル21及び外側パネル22は、透明基材層21a,22aと、透明基材層21a,22aに積層された光学薄膜層21b,22bとを備える。
上記構成によれば、サンルーム10内から内側パネル21を見た場合に、光学薄膜層21bに基づく色又は模様を有する有色透明の内側パネル21となる。同様に、サンルーム10の外側から外側パネル22を見た場合に、光学薄膜層22bに基づく色又は模様を有する有色透明の外側パネル22となる。これにより、内側パネル21及び外側パネル22の意匠性が向上する。また、内側パネル21が有色透明であることにより、遮蔽状態においてサンルーム10内側から表示装置24を見え難くする効果が高められる。
【0059】
(4)サンルーム10は、第1建装材12により形成される上壁と、第2建装材14a~14dにより形成される側壁とを備える。第2建装材14は、光透過性のパネルにより形成されている。第2建装材14~14dを形成するパネルには、可視光の透過率を変更できる調光シート30が取り付けられている。第2建装材14~14dは、調光シート30の透過率が低い状態であり、サンルーム10内に入射する外光を遮る遮光状態と、調光シート30の透過率が高い状態であり、サンルーム10内に外光を入射させる採光状態とを切り替え可能である。
【0060】
上記構成によれば、複数の壁から採光が可能となり、サンルーム10における採光範囲を広く確保することができる。また、第2建装材14~14dに取り付けられた調光シート30の透過率を低くすることにより、第2建装材14~14dの内面も調光シート30及び第2建装材14~14dの各色に基づく色調の壁面となる。そのため、遮光モードとしたときに、第1建装材12の内面と第2建装材14~14dの内面を統一感のある色調とすることができる。
【0061】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・収容室S内に収容される構成は、表示装置24に限定されない。例えば、収容室S内に、赤外線センサやモーションセンサなどの検知装置を収容し、この場合、検知装置の検出結果に基づいて、表示装置24及び各調光シート30を制御する構成としてもよい。また、収容室S内に、表示装置24及び各調光シート30を制御するためのリモコンなどの操作部材を取り出し可能に収容する収容部を設けてもよい。この場合、内側パネル21における収容部に重なる部分も調光領域A1の一部とすることが好ましい。また、調光制御部31を収容室S内に収容してもよい。
【0062】
・各調光シート30を制御するための操作部の構成は特に限定されるものではない。例えば、第1建装材12の内側パネル21の内面側の一部として操作部を設けてもよい。
・各調光シート30は、相対的に透過率の高い状態と、相対的に透過率の低い状態の2段階のみで透過率を変更できるものであってもよいし、多段階又は無段階で透過率を変更できるものであってもよい。
【0063】
・調光シート30は、内側パネル21の内側の表面及び外側の表面のいずれか一方に取り付けられていてもよいし、内側の表面及び外側の表面の両方に取り付けられていてもよい。外側パネル22及び第2建装材14に取り付けられる調光シート30についても同様である。
【0064】
・上記実施形態では、調光シート30により独立して透過率を制御できる調光領域として、調光領域A1~A4を設けていたが、上記調光領域の設置数及び配置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、調光領域A2~A4を更に複数の調光領域に分割してもよい。
【0065】
・調光シート30は、設定された調光領域ごとに1枚ずつ配置してもよいし、隣り合う2以上の調光領域に対して1枚の調光シート30を配置してもよい。
・光学薄膜層21b、22b,14bを省略してもよい。また、光学薄膜層21b、22b,14bに代えて、有色透明の樹脂シートを積層してなる層、又は透明基材層21a,22a,14aの表面にキャスト法により成形された有色透明の樹脂層を設けてもよい。
【0066】
・サンルーム10が取り得るモードは、上記実施形態に記載したモードに限定されるものではなく、上記実施形態に記載したモードの一部又は全部を省略してもよいし、その他のモードを設けてもよい。
【0067】
・外側パネル22に取り付けられる調光シート30を省略してもよい。
・第1建装材12は、サンルーム10の上壁全体を構成するものであってもよいし、上壁の一部、例えば、上壁の一部に設けられた窓を構成するものであってもよい。
【0068】
・第1建装材12により構成される壁は、サンルーム10の上壁に限定されるものではなく、サンルーム10の側壁であってもよいし、サンルーム10の下壁であってもよい。また、サンルーム10における複数の壁を第1建装材12により構成してもよい。
【0069】
・第2建装材14により構成される壁は、サンルーム10の側壁に限定されるものではなく、サンルーム10の上壁であってもよいし、サンルーム10の下壁であってもよい。
・第1建装材12及び第2建装材14a~14dが適用される建物の部屋は、サンルーム10に限定されるものではない。サンルーム10以外の部屋としては、例えば、展望室、ショールーム、イベントブース、結婚式場、映画館、プラネタリウムが挙げられる。
【0070】
・第1建装材12が適用される建物の部屋は、当該部屋を区画する壁として、第2建装材14により構成される壁を備えていない部屋であってもよい。上記部屋の一例は、第1建装材12により構成される壁のみにより区画される部屋である。また、上記部屋の一例は、当該部屋を区画する壁のうち、第1建装材12により構成される壁以外の壁が一般的な建物に適用される公知の壁、天井、又は床である部屋である。
【0071】
・第1建装材12及び第2建装材14は、建物の部屋の壁そのものに限定されるものではなく、特定の部屋を区画するための構成であればよい。例えば、第1建装材12及び第2建装材14a~14dは、部屋の壁に設けられた窓枠に取り付けられる窓パネルであってもよいし、パーテーションなどの間仕切り材であってもよい。なお、上記窓パネルとしては、例えば、部屋の上壁に取り付けられる天窓を構成する窓パネルが挙げられる。また、上記窓パネルは、開閉可能に設けられるものであってもよいし、開閉不能に固定されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
A1~A4…調光領域
10…サンルーム
12…第1建装材
14a~14d…第2建装材
14a,21a,22a…透明基材層
14b,21b,22b…光学薄膜層
21…内側パネル
22…外側パネル
24…表示装置
30…調光シート
図1
図2
図3
図4
図5