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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074842
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】包装食品
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20230523BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20230523BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B65D77/20 H
B65D77/00 B
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187990
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 礼
(72)【発明者】
【氏名】小出 晋也
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC02A
3E067CA04
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA11
3E067EA32
3E067EB22
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
3E086AD05
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB51
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】紙基材を含み、水蒸気等のガスバリア性に優れた蓋体を備え、開封性及び耐落下性に優れた包装食品を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る包装食品40は、フランジが形成され、開口が設けられている容器本体12と、耐水性を有する機能層6と、印刷層5と、紙基材4と、支持層2と、ヒートシール層1とをこの順序で含んだ蓋体10であって、前記紙基材の質量は前記蓋体に含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記開口を覆い、前記ヒートシール層を介して前記フランジにヒートシールされている蓋体とを備えた食品用包装容器20と、前記食品用包装容器に収容された食品30とを備え、前記支持層の破断強度は、前記蓋体と前記容器本体との間の剥離強さより大きく、前記蓋体と前記容器本体とのヒートシール部分の幅は2乃至12mmの範囲内にあり、前記蓋体と前記容器本体との剥離強さは4乃至32N/15mmの範囲内にある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジが形成され、開口が設けられている容器本体と、
耐水性を有する機能層と、印刷層と、紙基材と、支持層と、ヒートシール層とをこの順序で含んだ蓋体であって、前記紙基材の質量は前記蓋体に含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記開口を覆い、前記ヒートシール層を介して前記フランジにヒートシールされている蓋体と
を備えた食品用包装容器と、
前記食品用包装容器に収容された食品とを備え、
前記支持層の破断強度は、前記蓋体と前記容器本体との間の剥離強さより大きく、
前記蓋体と前記容器本体とのヒートシール部分の幅は2乃至12mmの範囲内にあり、
前記蓋体と前記容器本体との剥離強さは4乃至32N/15mmの範囲内にある包装食品。
【請求項2】
前記蓋体に含まれる、前記紙基材以外の層を、プラスチックからなる層と、その他の層とに分類した場合に、前記紙基材の質量は、前記プラスチックからなる層の合計質量及び前記その他の層の合計質量と比較してより大きい請求項1に記載の包装食品。
【請求項3】
前記紙基材と前記ヒートシール層との間にガスバリア性を有するガスバリア層を更に含んだ請求項1又は2に記載の包装食品。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、無機酸化物層及び樹脂含有層の少なくとも一方からなる請求項3に記載の包装食品。
【請求項5】
前記ガスバリア層を前記紙基材と前記支持層との間に含む請求項3又は4に記載の包装食品。
【請求項6】
前記紙基材は、一方の面に前記ガスバリア層を有するバリア紙である請求項3乃至5の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項7】
前記紙基材は、一方の面にコート層を有する塗工紙であり、前記印刷層は前記コート層上に設けられている請求項1乃至6の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項8】
前記紙基材は坪量が40乃至100g/mの範囲内にある請求項1乃至7の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項9】
前記ヒートシール層はイージーピール性を有するシーラントである請求項1乃至8の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項10】
前記ヒートシール層はヒートシールニスからなる請求項1乃至8の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項11】
前記ヒートシール層の面積当たりの質量は2乃至50g/mの範囲内にある請求項1乃至10の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項12】
前記機能層は、面積当たりの質量が0.2g/m以上である請求項1乃至11の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項13】
前記支持層の厚さは5乃至40μmの範囲内にある請求項1乃至12の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項14】
前記フランジはリブを有している請求項1乃至13の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項15】
前記食品用包装容器の内部空間は、酸素ガス、窒素ガス及び炭酸ガスを含む混合ガスで充填されている請求項1乃至14の何れか1項に記載の包装食品。
【請求項16】
前記食品用包装容器はチルド食品用包装容器又は冷凍食品用包装容器である請求項1乃至15の何れか1項に記載の包装食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の核家族化による世帯構成の変化やライフスタイルの変化に加えて、流通及び冷凍・冷蔵技術の進歩に支えられて、コンビニエンスストアやスーパマーケットなどで販売されている調理又は加工済みチルド食品及び冷凍食品の需要が伸びている。それと同時にチルド食品及び冷凍食品を収容する包装容器の需要も伸びている。
【0003】
一方、プラスチックごみの削減が進められている中、環境負荷が小さく、再生可能な資源である紙を基材に使用した食品用包装容器の需要が高まっている。チルド食品を収容する包装容器にも、基材として紙を使用した紙製の包装容器を使用することが求められている。
【0004】
紙製の包装容器の一例として、特許文献1には、胴部材と底板部材とからなる耐熱性紙製容器が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ヒートシール層を内面に有する蓋体を、ヒートシール層を容器本体の開口周縁部に対向させてヒートシールしてなる易開封性容器において、蓋体の基材として紙を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-78868号公報
【特許文献2】特開2006-151475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙基材を含み、水蒸気等のガスバリア性に優れた蓋体を備え、開封性及び耐落下性に優れた包装食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、フランジが形成され、開口が設けられている容器本体と、耐水性を有する機能層と、印刷層と、紙基材と、支持層と、ヒートシール層とをこの順序で含んだ蓋体であって、前記紙基材の質量は前記蓋体に含まれる他の何れの層の質量よりも大きく、前記開口を覆い、前記ヒートシール層を介して前記フランジにヒートシールされている蓋体とを備えた食品用包装容器と、前記食品用包装容器に収容された食品とを備え、前記支持層の破断強度は、前記蓋体と前記容器本体との間の剥離強さより大きく、前記蓋体と前記容器本体とのヒートシール部分の幅は2乃至12mmの範囲内にあり、前記蓋体と前記容器本体との剥離強さは4乃至32N/15mmの範囲内にある包装食品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙基材を含み、水蒸気等のガスバリア性に優れた蓋体を備え、開封性及び耐落下性に優れた包装食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る包装食品の一例を概略的に示す断面図。
図2】蓋体の一例を概略的に示す部分断面図。
図3図1に示す包装食品を概略的に示す上面図。
図4】一変形例に係る蓋体を概略的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面をより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装食品の一例を概略的に示す断面図である。
包装食品40は、食品用包装容器20に食品30を収容してなるものである。収容される食品30は、特に限定されるものではないが、チルド食品又は冷凍食品であることが好ましい。チルド食品及び冷凍食品は、例えば、調理又は加工済みの食品である。チルド食品及び冷凍食品は、例えば、焼き魚、煮魚、又は総菜である。
【0013】
食品用包装容器20は、開口が設けられている容器本体12と、上記開口を覆う蓋体10とを備えている。
【0014】
容器本体12は、例えば、有底筒状である。容器本体12は、ここでは、底部と胴部(又は側壁部)とフランジ121とを備えている。フランジ121は、胴部の上方開口の位置で外側へ向けて広がっている。ここでは、フランジ121は、リブ1211を有している。フランジ121がリブ1211を有している場合、フランジ121の強度が高くなるため、蓋体と容器本体とをヒートシールしやすい。なお、リブ1211は省略してもよい。
【0015】
容器本体12は、例えば、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含む。容器本体12は、そのガスバリア性を高めるために、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の成分を更に含んでいてもよい。また、容器本体12は、添加剤、例えば、加工性、意匠性、及び化学的耐久性の向上を目的とした添加剤を更に含んでいてもよい。
【0016】
容器本体12は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。この多層構造は、二層構造であってもよく、3以上の層を含むものであってもよい。後者の場合、多層構造は、ガスバリア層、例えば上述したエチレン-ビニルアルコール共重合体等の成分を含んだ層を中間層として含んでいてもよい。
【0017】
容器本体12には、紙を用いることもできる。内容物が液状物を含む場合、容器本体12には、紙基材と、これに液状物が浸み込むのを防止するべく、その内容物側の面に設けられた、樹脂等からなる層とを含んだ多層構造を採用することができる。紙基材を含んだ容器本体12の材料としては、例えば、紙葉、紙粉、パルプ、又は古紙を使用することができる。容器本体12への成形には、紙パックの製造において行うような紙葉を含むシートの折り曲げや貼り付けによる方法、金型を使用したシートのプレス成型、及びパルプモールドなどの汎用技術を利用可能である。容器本体12に紙を用いることで、食品用包装容器20の全体で、その製造及び廃棄に伴う二酸化炭素の排出量の低減を図ることが可能となり、それ故、環境への負荷が小さくなる。
【0018】
図2は、蓋体10の一例を概略的に示す部分断面図である。蓋体10は、容器本体12内への内容物を収容後に、後述するヒートシール層1を介してフランジ121にヒートシールされる。このヒートシールにおいて、シール温度、シール圧力、及びシール時間は、適宜設定することができる。
【0019】
蓋体10は、ヒートシール層1と、支持層2と、ガスバリア層3と、紙基材4と、印刷層5と、耐水性を有する機能層(耐水性層)6とをこの順序で含んでいる。このように蓋体10は、ガスバリア層3を紙基材4と支持層2との間に含むが、本実施形態に係る蓋体は、ガスバリア層3を紙基材4とヒートシール層1との間に含んでいてもよい。変形例として、ガスバリア層3は支持層2とヒートシール層1との間に介在してもよい。なお、ガスバリア層3は省略してもよい。
蓋体10が含んでいる各層について、以下に説明する。
【0020】
(紙基材)
蓋体10は、紙基材4を含んでいる。紙基材4の質量は、蓋体10が含んでいる他の何れの層の質量よりも大きい。蓋体10の質量に占める紙基材4の質量の割合は、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、50%超であることが更に好ましい。この割合は、一例によれば80%以下であり、他の例によれば70%以下であり、更に他の例によれば65%以下である。
【0021】
蓋体10が含んでいる紙基材4以外の層を、プラスチックからなる層とその他の層とに分類した場合に、紙基材4の質量は、プラスチックからなる層の合計質量及びその他の層の合計質量と比較してより大きいことが好ましい。この場合、日本国では、蓋体10を、容器包装リサイクル法上の紙として扱うことができる。
【0022】
ここで、上記の分類は、「容器包装リサイクル法 説明資料」に従う。即ち、「プラスチック」は、高分子を必須成分として含み、加工時に流動性を利用して賦形及び製品化した材料である。塗料及び接着剤は、「賦形」の概念と無関係であるため、プラスチックには含まれない。従って、図2に示す例では、支持層2及びこれに貼り合わされたヒートシール層1は、「プラスチックからなる層」である。また、図2に示す例では、インキから形成された印刷層5、塗工によって形成された機能層6、及び接着剤からなる接着層(図示せず)は、「その他の層」である。
【0023】
一方、ガスバリア層3については以下のように場合分けして分類する。すなわち、図2に示す例において、ガスバリア層3が紙基材4上に塗工や蒸着によって形成された層である場合、上記説明資料に沿えば「紙基材」として扱うことも可能であるが、ここでは「その他の層」として扱う。例えば、紙基材4が、その一方の面にガスバリア層3が塗工や蒸着されたバリア紙である場合、ガスバリア層3は「その他の層」である。また、バリア層に少なくとも押出加工等の溶融成型により作製された高分子フィルムを使用した場合は、「プラスチックからなる層」である。これに対し、図1に示す例において、ガスバリア層3が支持層2上に塗工、蒸着又は溶融成形によって形成された層である場合は、支持層2と同じ「プラスチックからなる層」である。例えば、支持層2が、その一方の面にガスバリア層3が形成されたガスバリアフィルムである場合、ガスバリア層3は「プラスチックからなる層」である。
【0024】
紙基材4の坪量、即ち、面積当たりの質量は、20乃至500g/mの範囲内にあることが好ましく、40乃至100g/mの範囲内にあることがより好ましい。紙基材4の坪量を大きくすると、蓋体が硬くなり、開封性が低下する傾向にある。坪量を小さくすると、蓋体の強度が低下する。
【0025】
なお、紙基材4の坪量を大きくすると、蓋体10の質量に占める紙基材4の質量の割合も大きくなる。しかしながら、紙基材4の坪量を大きくすると、紙基材4の製造や蓋体10の廃棄に伴う二酸化炭素の排出量が増加する。
【0026】
紙基材4は、植物由来のパルプを主成分とするものであれば特に制限はない。紙基材4としては、例えば、上質紙、中質紙、微塗工紙などの塗工紙、片艶紙、晒及び未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)が挙げられる。
【0027】
紙基材4は、少なくとも一方の面にコート層を有する塗工紙であることが好ましい。即ち、紙基材4は、片面塗工紙であるか又は両面塗工紙であることが好ましい。塗工紙のコート層が設けられた面は、コート層が設けられていない紙の表面と比較して、平滑性に優れている。
【0028】
紙基材4が一方の面にコート層を有する塗工紙である場合、印刷層5は、例えば、コート層上に設けることができる。この場合、高い画質の画像を印刷層5に表示させることが容易である。また、コート層を設けることにより、機能層6の下地表面も平滑になるため、機能層6の耐水性も向上する。また、コート層を設けた場合、印刷層5の材料や機能層6の材料が紙基材4へ染みこむことを抑制することができる。
【0029】
紙基材4が一方の面にコート層を有する塗工紙である場合、ガスバリア層3は、例えば、コート層上に設けることができる。こうすることにより、紙基材4に対するガスバリア層3の密着性が向上する。また、コート層の平滑性により接着剤を含む接着層を均一に形成し易くなるため、紙基材4に対するガスバリア層3の接着性が向上し、かつ接着剤の使用量を低減できる。また、バリア性の発現に必要なガスバリア層3の厚みを低減できる。
【0030】
紙基材4として、両面にコート層を有する塗工紙を使用すると、高い画質の画像を印刷層5に表示させることが容易になり、機能層6の耐水性を向上させることができる。また、紙基材4とガスバリア層3との間で優れた密着性を実現することが容易になる。
【0031】
コート層は、樹脂を含んでいる。コート層が含む樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合させたエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、及びフマル酸等の不飽和カルボン酸で変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、及びスチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2以上を組み合わせて使用してもよく、2以上を共重合させて使用してもよい。コート層は、添加剤、例えば、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、及び酸化チタン等の充填材を更に含有していてもよい。
【0032】
コート層の厚さは、0.5乃至50μmの範囲内にあることが好ましく、1乃至15μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0033】
(支持層)
支持層2は、蓋体10の強度を向上させる。
支持層2は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン・ビニルアルコール共重合、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリビニルアルコール樹脂、オレフィン樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂を含む。支持層2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0034】
支持層2は、無延伸フィルムであってもよく、2軸延伸フィルムなどの延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムである場合、二軸延伸フィルムを利用することが好ましい。二軸延伸により、フィルム面内の方向に対する破断強度等の諸物性の変動が1軸延伸に比べて小さくなるためである。
【0035】
支持層2は、硬化剤、フィラー、アンチブロッキング剤、及び帯電防止剤などの添加剤を更に含むことができる。また、支持層2の材料として、紫外線及び電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化するものを使用することもできる。
【0036】
支持層2は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリアミドの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。具体的には、支持層2は、ポリブチレンテレフタレートからなる層であるか、ポリアミドからなる層であるか、又は、それらの少なくとも一方を含んだ積層体であることが好ましい。ポリアミドは、例えば、脂肪族骨格を含んでいる。ポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、及びナイロン46などのナイロンである。
【0037】
支持層2がポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリアミドの少なくとも一方を含む場合、支持層2の質量に占める、ポリブチレンテレフタレート及びポリアミドの合計質量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。支持層2の厚さを一定とした場合、この割合を大きくすると、蓋体の突き刺し強度が高くなる。
【0038】
支持層2の厚さは、4乃至50μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至40μmの範囲内にあることがより好ましく、12乃至25μmの範囲内にあることがさらに好ましい。支持層2を厚くすると、蓋体の突き刺し強度を高めることが容易になるが、蓋体10の質量に占める紙基材4の質量の割合を大きくすることが難しくなる。
【0039】
支持層2の破断強度は、蓋体10と容器本体12との間の剥離強さよりも大きい。ここで、支持層2の破断強度が蓋体10と容器本体12との間の剥離強さよりも大きいことは、MD(Machine Direction)における支持層2の破断強度が蓋体10と容器本体12との間の剥離強さよりも大きく、且つ、TD(Transverse Direction)における支持層2の破断強度が蓋体10と容器本体12との間の剥離強さよりも大きいことを意味している。
【0040】
支持層2の破断強度は、JIS Z1707:2019「食品包装用プラスチックフィルム通則」に規定された測定方法で得られる引張力である。なお、この引張力(N/15mm)は、試験片が破壊した時の最大力を、試験片の幅15mm相当の力(N/15mm)に換算した値である。蓋体10と容器本体12との間の剥離強さについては後述する。
【0041】
支持層2の破断強度が、蓋体10と容器本体12との間の剥離強さよりも大きい場合、蓋体10を容器本体12から剥離する際に、紙剥けを生じ難い。例えば、支持層2の破断強度が30N/15mmより大きい場合、剥離強さが30N/15mm程度までは紙剥け発生を抑制できる。ここで、「紙剥け」とは、蓋体10を容器本体12から剥離した場合に、紙基材4の凝集破壊が生じて、蓋体10の一部が容器本体12に残留することである。紙剥けを生じると、容器本体12に収容された内容物を取り出せない、又は取り出し難くなることがある。
【0042】
剥離強さは、包装容器の用途や目的に応じて調整される。例えば、易開封性を付与するために、剥離強さを小さくする場合がある。それ故、支持層2の破断強度は、30N/15mm超である必要はない。支持層2の破断強度は、特に限定されないが、10乃至100N/15mmの範囲内にあることが好ましく、25乃至85N/15mmの範囲内にあることがより好ましい。上述の破断強度を大きくすると、紙剥けを抑制するために積層体を補強する効果が大きくなる。但し、破断強度を大きくするべく支持層2を厚くすると、支持層2の製造や蓋体10の廃棄に伴う二酸化炭素の排出量及びコストが増加する。
【0043】
(ガスバリア層)
ガスバリア層3は、酸素バリア性及び水蒸気バリア性などのガスバリア性を有している。ガスバリア層3は、後述する包装食品において、容器外部の酸素、水蒸気、及び香気成分等のガスが容器内へ侵入するのを抑制する。これにより、ガスバリア層3は、包装食品において、内容物である食品の劣化を抑制する。また、ガスバリア層3は、包装食品において、内容物の臭気成分等が容器外部へ拡散するのを抑制する。ガスバリア層3は、一例によれば、温度30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度が0.1乃至100cc/m/day/atmである。
【0044】
ガスバリア層3は、例えば、金属層、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの2以上の組み合わせである。電子レンジによるマイクロ波加熱が想定される場合、ガスバリア層3は、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの組み合わせであることが好ましい。
【0045】
ガスバリア層3は、塗工によって形成したものであってもよく、溶融成形によって形成したものであってもよく、無機酸化物を蒸着したものであってもよい。或いは、ガスバリア層3は、アルミニウム箔などの金属箔であってもよく、アルミニウムなどの金属を蒸着したものであってもよい。
【0046】
無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化ホウ素、又は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化イットリウムなどの金属酸化物を使用できる。
【0047】
樹脂含有層は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0048】
樹脂含有層を溶融成形によって形成する場合、例えば、Tダイやインフレーションなどの押出成形技術を利用することができる。溶融成形では、例えば、上記樹脂又は上記樹脂と添加剤との混合物を加熱溶融し、Tダイやインフレーション等によりガスバリア層3をフィルムやシートに加工する。このフィルム又はシートを紙基材4又は支持層2の少なくとも一方と貼り合わせる。
【0049】
ガスバリア層3は、一方の面にガスバリア層3を有する支持層2からなるガスバリアフィルムを使用することにより、蓋体10の紙基材4と支持層2との間に介在させてもよい。この場合、ガスバリアフィルムを、ガスバリア層3と紙基材4とが向き合うように紙基材4に貼り合わせる。ガスバリア層3が樹脂含有層である場合、ガスバリアフィルムは支持層2とともに、共押出によって形成したものであってもよい。
【0050】
ガスバリア層3は、一方の面にガスバリア層3を有する紙基材4からなるバリア紙を使用することにより、蓋体10の紙基材4と支持層2との間に介在させてもよい。バリア紙を構成する紙基材4は、少なくとも一方の面にコート層を有する塗工紙であってもよい。バリア紙を構成する紙基材4が一方の面のみにコート層を有する場合、ガスバリア層3はコート層上に設けられていてもよいし、コート層が形成されていない紙基材4の面上に設けられていてもよい。
【0051】
ガスバリア層3の厚さは、一例によれば0.01乃至30μmの範囲内にあり、他の例によれば0.1乃至12μmの範囲内にある。
【0052】
(印刷層)
印刷層5は、蓋体10を商業製品として実用に供するために形成される層である。印刷層5は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、及び塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダ樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤等の添加剤が添加されているインキにより構成される層であって、文字及び絵柄等のパターンを表示している。印刷層5の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、及びシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、及びグラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0053】
印刷層5の厚さは、特に限定されるものではなく、一例によれば0.1乃至5μmの範囲内にあり、他の例によれば0.2乃至1μmの範囲内にある。
【0054】
(耐水性を有する機能層)
耐水性を有する機能層(耐水性層)6は、包装食品において、結露等による水分や油等の容器外部の液体が蓋体に浸透するのを抑制して、この液体が印刷層5及び紙基材4等の層に到達することを抑制する層である。機能層6は、容器外部の液体が印刷層5及び紙基材4等の層に到達するのを抑制することで、例えば、これらの層の劣化、破壊又は密着性の低下を防ぐ。
【0055】
一例によれば、機能層6は、印刷層5の上に形成されることにより、蓋体10のうち機能層6から紙基材4までの部分である部分積層シートの吸水度を制御する。機能層6は、以下に記載するコッブ法による蓋体の吸水度を、20g/m以下にする耐水性を有していることが好ましい。
【0056】
ここで、吸水度とは、JIS P8140:1998「紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法」に規定された方法において、測定面を機能層6の表面とし、試験片と水との接触時間300秒とした場合に得られる吸水度である。この吸水度は、上記の通り20g/m以下であることが好ましく、10g/m以下であることがより好ましく、5g/m以下であることが更に好ましい。この吸水度の下限値は、理想的には0g/mである。一例によれば、この吸水度は1g/m以上である。
【0057】
機能層6は、オーバープリントニス層(以下において、「OPニス層」という。)であることが好ましい。
機能層6は、一例によれば、耐水性樹脂を含有する。耐水性樹脂としては、上述した吸水度を実現可能な樹脂であれば、制限なく使用することができる。耐水性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、又はウレタン系樹脂を使用することができる。機能層6は、例えば、耐水性樹脂を含有する塗料を、印刷層5が形成された紙基材4上に公知の方法で塗工することにより得ることができる。上記塗料は、耐水性樹脂に加え、顔料、染料、硬化剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、及び易滑剤等の添加剤や溶剤等を更に含有することができる。
【0058】
機能層6は、十分な耐水性を維持できるように、高い耐磨耗性及び耐擦傷性を有していることが好ましい。このような観点から、機能層6の厚さ及びその材料である塗料の塗布量は、通常のOPニス層の厚さ及び通常のOPニスの塗布量より大きいことが好ましい。ここで、「塗布量」は、面積当たりの固形分質量である。
【0059】
例えば、図2に示す蓋体10において、機能層6を形成するための塗料は、その塗布量が0.2g/m以上となるように塗工することが好ましく、2.0g/m以上となるように塗工することがより好ましい。この塗料は、その塗布量が、例えば、10g/m以下となるように塗工する。機能層6の厚さは、0.2μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。機能層6の厚さは、例えば、10μm以下である。なお、機能層6は、ラミネートによって印刷層5上に設けてもよい。
【0060】
(ヒートシール層)
ヒートシール層1は、食品用包装容器20の容器本体12への蓋体10のヒートシールを可能とし、これにより容器を密封できるものであればよい。蓋体10の容器本体12からの剥離しやすさは、例えば、ヒートシール層1の剥離機構、例えば、界面剥離、又は凝集破壊や、後述する剥離強さに応じて調整することが可能である。ヒートシール層1としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene-vinyl acetate;EVA)、アイオノマー樹脂、又は、その他のポリオレフィン類からなるフィルムが使用される。ヒートシール層1は、好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene;LLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene;VLDPE)、又はポリプロピレンのいずれかを少なくとも含む層である。
【0061】
ヒートシール層1として、イージーピール機能(簡易剥離機能)をもったシーラント層も使用することができる。イージーピール性とは、再剥離性及び易開封性に優れることを示す。
【0062】
ヒートシール層1は、例えば、ラミネートによって支持層2上に設ける。ヒートシール層1は、ヒートシールニスを支持層2上に塗布して形成することもできる。
【0063】
ヒートシール層1の面積当たりの質量は2乃至50g/mの範囲内にあることが好ましく、10乃至50g/mの範囲内にあることがより好ましく、20乃至40g/mの範囲内にあることが更に好ましい。ヒートシール層1の面積当たりの質量が小さすぎると、落下等の衝撃によってヒートシール部分が破損し、内容物が飛散しやすい。ヒートシール層1の面積当たりの質量が大きすぎると、開封性に優れないため、無理に力を加えて開封しようとした場合に、内容物が飛散するおそれがある。
【0064】
ヒートシール層1として、イージーピール機能をもったシーラント層を使用する場合、ヒートシール層1の面積当たりの質量は10乃至50g/mの範囲内にあることが好ましく、20乃至40g/mの範囲内にあることがより好ましい。
【0065】
ヒートシール層1として、ヒートシールニスを使用する場合、ヒートシールニスの面積当たりの質量は1乃至15g/mの範囲内にあることが好ましく、2乃至10g/mの範囲内にあることがより好ましい。
【0066】
ヒートシール層1の厚さは、特に限定されるものではない。ヒートシール層1の厚さは、一例によれば0.5乃至60μmの範囲内にあってよく、他の例によれば1乃至30μmの範囲内にあってよい。
【0067】
(接着層)
蓋体10は、1以上の接着層を更に含むことができる。
例えば、蓋体10は、ヒートシール層1と支持層2との間に、それらを接着する接着層を含んでいてもよい。或いは、蓋体10は、支持層2とガスバリア層3との間に、それらを接着する接着層を含んでいてもよい。或いは、蓋体10は、ガスバリア層3と紙基材4との間に、それらを接着する接着層を含んでいてもよい。或いは、蓋体10は、上述した接着層の2層以上を含んでいてもよい。
【0068】
接着層の材料には、これを介して接着する層の材料に応じて、必要な接着強度が得られる接着樹脂や接着剤を適宜選択して用いる。
【0069】
接着樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びメタロセン触媒を利用して重合したエチレン-αオレフィンとの共重合体などのポリエチレン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン-マレイン酸共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸共重合体;及びアイオノマー樹脂から選択される1種又は2種以上の樹脂を使用することができる。
【0070】
接着剤は、例えば、主剤及び溶剤を含む第1組成物と、硬化剤及び溶剤を含む第2組成物とを混合してなる接着剤組成物である。この接着剤から得られる接着層は、接着剤組成物中の主剤と硬化剤とが反応して生成された硬化物を含む。
【0071】
主剤の例としては、ポリオールを挙げることができる。硬化剤の例としては、イソシアネート化合物を挙げることができる。接着剤の例としては、エーテル系の二液反応型接着剤又はエステル系の二液反応型接着剤を挙げることができる。
【0072】
エーテル系の二液反応型接着剤の硬化物は、例えば、ポリエーテルポリウレタンである。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成する。
【0073】
エステル系の二液反応型接着剤の硬化物は、例えば、ポリエステルポリウレタン及びポリエステルである。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成する。
【0074】
二液反応型接着剤では、主剤としてアクリルポリオールを用いてもよい。また、上記の接着剤組成物は、加熱による溶融や低粘度化を生じるものであれば、溶剤を含んでいなくてもよい。
【0075】
この蓋体10は、面積当たりの質量が、50乃至160g/mの範囲内にあることが好ましく、60乃至140g/mの範囲内にあることがより好ましく、90乃至130g/mの範囲内にあることがより好ましい。この値を小さくすると、蓋体10の強度が低下する。この値が大きすぎると、蓋体10が硬くなり、開封性が低下する傾向にある。また、この値を大きくすると、コストが高くなるのに加え、製造及び排気に伴う二酸化炭素の排出量が増加する。
【0076】
上述した包装食品40の製造においては、蓋体10を容器本体12へヒートシールする前に、例えば、容器本体12内へ内容物を収容した後であって、蓋体10を容器本体12へヒートシールする前に、容器本体12内のガスを公知の方法で置換してもよい。例えば、容器本体12内に不活性ガスを充填してもよい。容器内のガス組成を適切に変更することで、細菌の増殖を抑えて品質保持期間を長くしたり、酸化防止により食品の風味や色彩等を長く維持したり、ビタミンの損失を防止したりすることができる。置換ガスは、内容物である食品の種類に応じて適宜選択する。置換ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス及び炭酸ガスの混合ガスが好適に用いられる。
【0077】
上述した包装食品40では、上記の通り、蓋体10と容器本体12との間の剥離強さは、蓋体10に含まれる支持層2の破断強度よりも小さい。この剥離強さは、4乃至32N/15mmの範囲内にあり、5乃至30N/15mmの範囲内にあることが好ましい。剥離強さが小さすぎる場合、例えば、4N/15mm未満である場合、落下等の衝撃によってヒートシール部分が破損し、内容物が飛散しやすい。剥離強さが大きすぎる場合、例えば、32N/15mmより大きい場合、開封性に優れないため、無理に力を加えて開封しようとした場合に、内容物が飛散するおそれがある。
【0078】
支持層2の破断強度と、蓋体10と容器本体12との間の剥離強さとの差は、5乃至60N/15mmの範囲内にあることが好ましく、10乃至40N/15mmの範囲内にあることがより好ましい。
【0079】
ここで、剥離強さは、以下に説明する試験片を用いたこと以外は、JIS Z0238:1998「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」に規定されるヒートシール強さの測定方法と同様の方法によって得られる値である。試験片は、食品用包装容器20のうち蓋体10とフランジ121とが重なり合っている部分から切り出したものである。試験片は、蓋体10とフランジ121とがヒートシールされている部分を含むように切り出す。試験片は、幅が15mmの短冊形状とする。試験片の長さ方向は、フランジ121の幅方向に平行とする。
【0080】
図3は、図1に示す包装食品40を概略的に示す上面図である。
図3に示す破線B1は、容器本体12の開口の輪郭を示す。領域R1は2本の一点鎖線で囲まれた領域である。領域R1は、蓋体10とフランジ121とのヒートシール部分を示す。図3に示すように、ヒートシール部分はフランジ121の形状に沿った形状を有している。図3に示すように、蓋体10はつまみ部分を有していてもよい。
【0081】
この包装食品40では、図4に示す領域R1の内側の輪郭と外側の輪郭との最短距離、即ち、蓋体10と容器本体12とのヒートシール部分の幅は2乃至12mmの範囲内にある。このヒートシール部分の幅は4乃至10mmの範囲内にあることがより好ましい。ヒートシール部分の幅が狭すぎる場合、例えば、幅が2mm未満である場合、落下等の衝撃によってヒートシール部分が破損し、内容物が飛散するおそれがある。ヒートシール部分の幅が広すぎる場合、例えば、幅が12mmより大きい場合、開封性に優れない。また、幅が広すぎる場合、フランジの幅も広くなるため、フランジの折れ等が生じることがあるため、ハンドリング性が低下しやすい。また、フランジの幅が広い場合、見栄えが低下するおそれや、包装食品を棚に陳列する際にデッドスペースが増加しやすい。
【0082】
また、上述した蓋体10がガスバリア層3を備える場合、このような蓋体10は高いガスバリア性を有している。更に、このような蓋体10は、ガスバリア性、特には酸素バリア性の低下を生じ難い。これについて、以下に説明する。
【0083】
食品用包装容器には、充填された食品の酸化を抑えるため、外部からの酸素の侵入を防ぐ酸素バリア性に優れていることが望まれることがある。そのような食品用包装容器では、その蓋体にも酸素バリア性が求められる。
【0084】
紙を基材とする蓋体への酸素等に対するガスバリア性の付与には、例えば紙基材上に、ガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルムを設けることが多い。しかしながら、蓋体が金属層を含んだ食品用包装容器には、内容物充填後の金属探知機による金属異物の混入検査ができない、金属を含むため紙として焼却処理できず、古紙としても再利用できない、電子レンジにより加熱調理されることが想定されるチルド食品等の包装容器には使用できない、といった問題がある。
【0085】
ガスバリア層には、金属層を含まないものもある。そのようなガスバリア層としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンMXD-6などのポリアミド、及び、ポリアクリロニトリル等の樹脂を含んだものが使用されることが多い。金属層レスの蓋体は、上記の問題を回避し得る。
【0086】
チルド食品の流通及び保管温度は、食品別に最適な温度帯が設定されるが、一般には0乃至10℃の範囲内である。食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品は、その製造後、様々な流通経路を通って消費者の手に渡る。この過程において、例えば、消費者が店舗で包装食品を購入してから自宅の冷蔵庫に保管するまでの間や、消費者が包装食品を冷蔵庫から出してから調理を開始するまでの間、包装食品は常温環境下に置かれる。
【0087】
本発明者らは、蓋体が紙基材とガスバリア層とを含んだ食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品、特にはガスバリア層が樹脂含有層からなる包装食品は、冷蔵状態から常温環境下に晒された最初の数時間の間に、蓋体のガスバリア性、特には酸素バリア性が大きく低下することを見出した。これは、蓋体の質量に占める紙基材の質量の割合が大きい場合に顕著である。
【0088】
本発明者らは、上記の問題は、蓋体表面に生じる結露に起因するものであることをつきとめている。即ち、冷蔵環境下にあった包装物品が常温環境に晒されることにより、蓋体の外側表面に結露が生じ、その水分がガスバリア層に到達してガスバリア層が損傷を受ける。その結果、蓋体の酸素バリア性が低下する。
【0089】
上記の蓋体10は、耐水性を有している機能層6を含んでいる。それ故、この蓋体10を蓋材として使用した包装食品では、結露によって蓋体の外側表面に生じた水分はガスバリア層3に到達し難い。従って、この蓋体10を使用した包装食品では、蓋体の外側表面での結露に起因したガスバリア層3の損傷は生じ難く、酸素バリア性の低下を生じ難い。
【0090】
本発明者らは、特に、食品用包装容器にチルド食品を収容してなる包装食品は、蓋体が紙基材を含んでいる場合、蓋体を容器本体から剥離する際に紙剥けを生じ易いことを更に見出している。上記の通り、支持層2の破断強度を、蓋体と容器本体との間の剥離強さよりも大きくすることにより、紙剥けを生じ難くすることができる。
【0091】
なお、内容物がチルド食品である場合について上述した問題は、内容物が冷凍食品である場合にも生じ得る。ここで説明した構成は、内容物が冷凍食品である場合であっても、内容物がチルド食品である場合について上述したのと同様の効果を奏し得る。
【0092】
<変形例>
蓋体には、様々な変形が可能である。上述したように、蓋体は、ガスバリア層を紙基材とヒートシール層との間に含んでいてもよく、以下に図4を参照しながら説明するように、支持層とヒートシール層との間にガスバリア層を含んでいてもよい。なお、図2を参照しながら説明した事項は、単独で又は複数を組み合わせて、ここに記載する変形例に係る蓋体へ適用することができる。
【0093】
図4は、一変形例に係る蓋体を概略的に示す部分断面図である。
図4に示す蓋体11は、ガスバリア層3が支持層2とヒートシール層1との間に介在していること以外は、図2を参照しながら説明した蓋体10と同様である。
【0094】
即ち、蓋体11は、ヒートシール層1と、ガスバリア層3と、支持層2と、紙基材4と、印刷層5と、耐水性を有する機能層(耐水性層)6とをこの順序で含んでいる。この蓋体11、蓋体10について上述したのと同様の効果を奏する。
【実施例0095】
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
<1>包装食品の製造
(例1)
先ず、図2に示す蓋体10を、以下の方法により製造した。
先ず、紙基材4として、坪量が65g/mの片面塗工紙を準備した。この紙基材4のコート層が形成されていない面に、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として含有し、無機酸化物として層状化合物の(合成雲母)を添加した塗液をグラビア印刷法により、ガスバリア層3を形成した。これによりガスバリア層3と片面塗工紙の紙基材4とからなるバリア紙Aを得た。ガスバリア層3の面積当たりの質量は13g/mであった。このバリア紙Aのコート層上に、グラビア多色印刷機を使用して、印刷層5及び機能層6を順次形成した。印刷層5は、通常の印刷インキを使用して形成した。印刷インキの塗布量は1.0g/mとした。機能層6は、ニトロセルロース系樹脂とポリエチレン系の粒状ワックスとを主成分とするOPニス剤を使用して形成した。OPニス剤の塗布量は0.5g/mとした。
【0096】
次に、ガスバリア層3と紙基材4と印刷層5と機能層6とからなる積層体に、ドライラミネートによって支持層2を貼り合わせた。支持層2としては、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。ドライラミネートに当たっては、先ず、支持層2の一方の面に、グラビアコータを使用してドライラミネート剤を塗布して、接着層を形成した。ドライラミネート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。ドライラミネート剤の塗布量は3.0g/mとした。次いで、この接着層を間に挟んで、支持層2が紙基材4と向き合うように、上記積層体と支持層2とを貼り合わせた。
【0097】
その後、支持層2とガスバリア層3と紙基材4と印刷層5と機能層6とを含んだ積層体に、ドライラミネートによってヒートシール層1を貼り合わせた。ヒートシール層1としては、サポート層とイージーピール層とを含み、面積当たりの質量が27.6g/mであり、厚さが30μmであり、イージーピール層とは逆の面にコロナ処理が施されたイージーピール性を有するフィルムを使用した。ドライラミネートに当たっては、先ず、支持層2の面に、グラビアコータを使用してドライラミネート剤を塗布して、接着層を形成した。ドライラミネート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを含む二液反応型の接着剤を使用した。ドライラミネート剤の塗布量は3.0g/mとした。次いで、この接着層を間に挟んでヒートシール層1のコロナ処理された面と向き合うように、上記積層体とヒートシール層1とを貼り合わせた。このヒートシール層1は、イージーピール層の凝集破壊が生じることにより、容器本体から剥離可能となる。
【0098】
その後、これを40℃でエージングした。以上のようにして、図2に示す蓋体10を得た。
【0099】
次に、得られた蓋体を用いて、図1に示す包装食品40を製造した。ここでは、容器本体12として、樹脂シートをトレイ形状へ成形してなるものを使用し、容器本体12に200mlの水道水を充填した。容器本体12は、長辺方向の寸法が120mmであり、短辺方向の寸法が90mmである略長方形状の開口を有しており、高さが30mmであった。蓋体10のフランジ121へのヒートシールは、フランジ121の形状に沿うように作製した、幅が5mmのシールバーを使用し、160℃の温度及び0.2MPaの圧力を1.5秒間加えることにより行った。
【0100】
ここでは、樹脂シートとして、一対のポリプロピレン層と、それらの間に介在した、ポリプロピレンと4質量%のエチレン-ビニルアルコール共重合体との混合物からなる層とを含んだ三層構造のシートを使用した。
【0101】
以上のようにして、例1に係る包装食品40を製造した。
【0102】
(例2)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品40を製造した。即ち、本例では、支持層2として、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、面積当たりの質量が35g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。
【0103】
(例3)
先ず、図2に示す蓋体10を、以下の方法により製造した。
先ず、紙基材4として、坪量が52.3g/mの片面塗工紙を準備した。この紙基材4のコート層上に、グラビア多色印刷機を使用して、例1と同様の方法により印刷層5及び機能層6を順次形成した。
【0104】
次に、支持層2として、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。この支持層2の一方の面上に、酸化アルミニウムからなる無機酸化物膜を形成することにより、面積当たりの質量が16.8g/mのガスバリアフィルムを得た。
【0105】
次に、紙基材4と印刷層5と機能層6とからなる積層体に、ドライラミネートによって上記ガスバリアフィルムを貼り合わせた。ドライラミネートに当たっては、先ず、上記ガスバリアフィルムのガスバリア層3の面に、グラビアコータを使用してドライラミネート剤を塗布して、接着層を形成した。ドライラミネート剤としては、エステル系ポリオールとイソシアネート系硬化剤を含む二液反応型の接着剤とを使用した。ドライラミネート剤の塗布量は3.0g/mとした。次いで、この接着層を間に挟んで、ガスバリア層3が紙基材4と向き合うように、上記積層体と上記ガスバリアフィルムとを貼り合わせた。
【0106】
その後、例1と同様の方法により、支持層2とガスバリア層3と紙基材4と印刷層5と機能層6とを含んだ積層体に、上記接着層を間に挟んで支持層2がヒートシール層1と向き合うように、ヒートシール層1を貼り合わせた。
【0107】
その後、これを40℃でエージングした。以上のようにして、図2に示す蓋体10を得た。
【0108】
次に、得られた蓋体を用いたこと以外は、例1と同様の方法により、図1に示す包装食品40を製造した。
【0109】
(例4)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品40を製造した。即ち、本例では、支持層2とガスバリア層3と紙基材4と印刷層5と機能層6とを含んだ積層体に、ドライラミネートによってヒートシール層1を貼り合わせる代わりに、上記の積層体に、グラビア印刷法により、面積当たりの質量が3g/mとなるようにヒートシールニスを塗布した。これによってヒートシール層1を形成した。ヒートシールニスとしてはオレフィン系水系エマルジョンタイプを使用した。また、ヒートシール部分の幅を5mmから2mmに変更した。
【0110】
(例5)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品40を製造した。即ち、本例では、上述したバリア紙Aの代わりに、以下に説明するバリア紙Bを使用した。バリア紙Bは、紙基材4として、坪量が84g/mの片面塗工紙を備え、この紙基材4のコート層が形成されていない面に、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として含有し、無機酸化物として層状化合物の(合成雲母)を添加した塗液をグラビア印刷法によって形成したガスバリア層3を備える。また、支持層2として、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、面積当たりの質量が35g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。また、ヒートシール層1としては、サポート層とイージーピール層とを含み、面積当たりの質量が46.0g/mであり、厚さが50μmであり、イージーピール層とは逆の面にコロナ処理が施されたイージーピール性を有するフィルムを使用した。また、ヒートシール部分の幅を5mmから12mmに変更した。
【0111】
(比較例1)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品を製造した。即ち、本比較例では、支持層2とガスバリア層3と紙基材4と印刷層5と機能層6とを含んだ積層体に、ドライラミネートによってヒートシール層1を貼り合わせる代わりに、上記の積層体に、グラビア印刷法により、面積当たりの質量が1g/mとなるように上述したヒートシールニスを塗布した。これによってヒートシール層1を形成した。また、ヒートシール部分の幅を5μmから1μmに変更した。
【0112】
(比較例2)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品を製造した。即ち、本比較例では、バリア紙Aを使用する代わりに、上述したバリア紙Bを使用した。また、支持層2として、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、面積当たりの質量が35g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。また、ヒートシール層1としては、サポート層とイージーピール層とを含み、面積当たりの質量が46.0g/mであり、厚さが50μmであり、イージーピール層とは逆の面にコロナ処理が施されたイージーピール性を有するフィルムを使用した。また、ヒートシール部分の幅を5mmから14mmに変更した。
【0113】
(比較例3)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品を製造した。即ち、本比較例では、バリア紙Aを使用する代わりに、上述したバリア紙Bを使用した。また、支持層2として、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、面積当たりの質量が35g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。また、ヒートシール層1として、上述したイージーピール性を有するフィルムを使用する代わりに、厚さが50μmであり、面積当たりの質量が46g/mであるポリプロピレンからなるシーラントを使用した。また、ヒートシール部分の幅を5mmから12mmに変更した。
【0114】
(比較例4)
以下の点を除き、例1と同様の方法により、包装食品を製造した。即ち、本比較例では、支持層2として、厚さが12μmであり、面積当たりの質量が16.8g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用する代わりに、厚さが4μmであり、面積当たりの質量が5.6g/mである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。
【0115】
(比較例5)
支持層2を省略したこと以外は例1と同様の方法により、包装食品を製造した。
【0116】
<2>評価
(剥離強さの測定)
例1乃至5及び比較例1乃至5に係る包装食品における剥離強さを、上述した方法によって測定した。具体的には、先ず、包装食品40の長辺側のフランジにおいて蓋体10とフランジ121とが重なり合っている部分から、蓋体10とフランジ121とがヒートシールされている部分を含むように、試験片を3つ切り出した。試験片は、幅が15mmの短冊形状であり、その長さ方向がフランジ121の幅方向に平行である。次に、包装食品40の短辺側のフランジにおいても、上述した方法と同様の方法により試験片を3つ切り出した。
【0117】
次に、テンシロン万能試験機を使用して、各試験片のヒートシールされていないフランジ及び蓋体を試験機の掴み具に掴ませ、それら掴み具を互いから離れる方向へ移動させた。それら掴み具の相対移動速度、即ち、剥離速度は1000mm/分とした。各試験片について、その破断を生じるまでの間に加えた引張荷重の最大値を記録した。つかみの間隔は50mmとした。
【0118】
蓋体毎に、上述した長辺側のフランジから切り出した3つの試験片について得られた引張荷重の最大値を算術平均することによって、長辺における剥離強さを得た。また、蓋体毎に、上述した短辺側のフランジから切り出した3つの試験片について得られた引張荷重の最大値を算術平均することによって、短辺における剥離強さを得た。
【0119】
(破断強度の測定)
例1乃至5及び比較例1乃至4で使用した支持層の破断強度を、上述した方法によって測定した。
【0120】
ここでは、各支持層から、長さ方向がMDに平行な3つの試験片と、長さ方向がTDに平行な3つの試験片とを切り出した。各試験片は、幅が15mmであり、長さが100mmである短冊形状とした。
【0121】
標線間距離は50mmとし、試験速度は1000mm/分とした。破断強度の測定は、テンシロン万能試験機を用いて行った。
【0122】
なお、例3で使用した支持層の破断強度は、例3で使用したバリアフィルムの破断強度とほとんど変わらなかった。
【0123】
(開封試験)
例1乃至5及び比較例1乃至5に係る包装食品40の各々において、任意の10個について、容器本体12の角から蓋体10を手で剥離した。その後、紙剥けが生じたか否かについて、及び開封性について評価した。
【0124】
(耐落下性の評価)
例1乃至5及び比較例1乃至5に係る包装食品の各々において、任意の10個について以下の方法により耐落下性を評価した。
具体的には、各包装食品を、包装食品が倒立した状態で1mの高さから落下させて包装食品が破れたか否かを評価した。
上記の測定及び試験の結果を、以下の表に纏める。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
上記表1の「開封性」と表記された欄において、「A」は、開封時において引っ掛かりを感じたこと、開封に力が必要であったと感じたこと、及び、開封時に蓋体が伸びたりちぎれたりしたことのうち何れにも該当しなかったことを示している。「B」は、開封時において引っ掛かりを感じたこと、開封に力が必要であったと感じたこと、及び、開封時に蓋体が伸びたりちぎれたりしたことのうち少なくとも1つに該当したことを示している。
【0128】
上記表1の「紙剥け」と表記された欄において、「A」は、ヒートシール層において凝集破壊を生じ、紙剥けを生じなかったことを示している。「B」は、紙剥けを生じたものの、シール部分又はその周りにのみ蓋材の一部が容器本体に残留したことを示している。「B」の場合、容器本体から内容物を取り出し可能である。「C」は、紙剥けを生じ、シール部分及びその周り以外の部分にも蓋材が容器本体に残留したことを示している。具体的には、「C」の場合、二重蓋を生じたか又は蓋体が裂けたことを示している。ここで、二重蓋とは、紙基材の凝集破壊が生じたことにより、主に紙基材とヒートシール層とを含んだ蓋体の一部が容器本体の開口部全体を又は殆どを覆うように容器本体に残留することである。「C」の場合、容器本体からの内容物の取り出し及び蓋体と容器本体との分別に手間がかかる。
【0129】
上記の表1及び2の「ヒートシール層」の「材質」の欄において、「EP」は、イージーピール性のシーラントを示し、「ニス」はヒートシールニスを示し、「PP」はポリプロピレンからなるシーラントを示す。
【0130】
上記表2の「耐落下性」の欄において、「A」は耐落下性の評価において、何れの包装食品も破損しなかったことを示している。「B」は耐落下性の評価において、少なくとも1つの包装食品が破損したことをしめしている。
【0131】
上記表2において、「質量」は、面積当たりの質量である。「質量比」と表記された欄における、「紙」、「プラスチック」及び「その他」の分類は、「容器包装リサイクル法 説明資料」に従うものであり、上掲で説明した通りである。
【0132】
上記表1及び2に示すように、例1乃至5及び比較例1に係る包装食品は、開封性に優れており、且つ紙剥けが生じなかった。しかしながら、比較例1に係る包装食品は耐落下性に優れていなかった。
【0133】
また、比較例2乃至5に係る包装食品は、開封性に優れなかった。更に、比較例4及び5に係る包装食品では紙剥けが生じた。
【0134】
<3>酸素バリア性の評価
<参考例>
紙基材としての片艶紙(坪量65g/m)の非艶面の主面上に、ポリビニルアルコールを主成分とする塗布膜(塗布量13g/m、厚さ10μm)からなるガスバリア層が積層された積層シートを用意した。
【0135】
紙基材のガスバリア層が形成された主面とは反対側の主面上に、印刷インクをグラビア印刷法により塗布量1g/mで塗布し、印刷層を積層した。印刷層の上に、ニトロセルロース系樹脂を主成分とするOPニス剤をグラビアコート法により塗布し、塗布量10g/m(乾燥状態)のOPニス層からなる機能層を積層した。
【0136】
次いで、ガスバリア層の上に、ポリエステル系主剤及び脂肪族イソシアネート系硬化剤を含む接着剤組成物をグラビアコート法により塗布し、塗布量2g/m(乾燥状態)の接着層を積層した。接着層の上に、ヒートシール層として厚さ30μm、27g/mの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主成分とする無延伸フィルムを積層することにより、蓋体用積層シートを得た。
【0137】
<比較例6>
参考例に対し、OPニス層からなる機能層を設けなかったこと以外は参考例1と同様の方法により蓋体用積層シートを製造した。
【0138】
(酸素透過度測定用の試験体の作製)
上記で得た参考例と比較例6の各蓋体用積層シートを、4cm×4cmの形状に切断したものを試験片とした。参考例と比較例6の各々について試験片を2つずつ用意した。中央部に直径25mmの孔を有するアルミフィルム2枚で試験片を挟んで、2つの孔が重なる配置となるよう接着剤で固定し積層することにより、蓋体用積層シートを挟持するアルミの積層体(以下において、「アルミ積層体」とも言う。)を得た。このアルミ積層体を、後述する酸素透過度の測定試験において、アルミニウム製のカップの蓋体として用いた。
【0139】
アルミニウム製のカップは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.7:2000 紙及び板紙-透湿度試験方法 B法に規定されているアルミニウム製透湿カップに準じたカップを用意した。このカップの開口部に、上記試験片を挟持したアルミ積層体を載せることにより蓋をし、締め具で固定することにより、以下に説明する試験で使用する環境保管用の試験体を合計4個作製した。
【0140】
(試験体の環境保管と酸素透過度の測定試験)
上記で得た各試験体を、まず温度5℃、湿度フリーの冷蔵環境下で12時間保管した。次いで、参考例1及び比較例6の各々における2つの試験体のうち一方を、温度40℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で1時間の環境保管を実施することにより、カップの外部側に位置する試験体の表面に強制的に結露を生じさせた。次いで、酸素透過度測定前の静置調整として、各試験体を温度24℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管した後、酸素透過度を測定した(条件2)。また、参考例及び比較例6の各々における他方の試験体については、上記冷蔵環境下で保管した後、上記高温高湿環境下での環境保管を実施することなく、上記静置調整を実施した後、酸素透過度を測定した(条件1)。
【0141】
酸素透過度の測定は、MOCON社製酸素透過率測定装置OX-TRAN2/20、温度30℃、相対湿度70%の条件により行った。結果を表3に示す。酸素透過度が低いほど酸素バリア性に優れることを示す。
【0142】
【表3】
【0143】
表3に示される測定値より、ガスバリア層及び機能層の両方を備えた蓋体用積層シートを用いた蓋体は、冷蔵環境下から高温高湿環境下に晒されても結露によるバリア性能の低下が制御され、酸素バリア性能の低下が飛躍的に改善されていることがわかる。消費者が店舗でチルド食品が収容された包装物品を購入してから自宅の冷蔵庫に保管するまでの時間や、消費者が包装物品を冷蔵庫から出して調理するまでの時間が通常1時間程度であることに鑑みると、ガスバリア層及び機能層の両方を備えた蓋体用積層シートを用いた蓋体は、チルド食品用包装容器における蓋体として極めて有効であることがわかる。
【0144】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0145】
1…ヒートシール層、2…支持層、3…ガスバリア層、4…紙基材、5…印刷層、6…耐水性を有する機能層、10、11…蓋体、12…容器本体、121…フランジ、1211…リブ、20…食品用包装容器、30…食品、40…包装食品、B1…破線、R1…領域。
図1
図2
図3
図4