(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007494
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】レシプロコンプレッサおよびレシプロコンプレッサを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
F04B49/10 331C
F04B49/10 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022102661
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】A 50536/2021
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(71)【出願人】
【識別番号】304033177
【氏名又は名称】ヘルビガー ウィーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hoerbiger Wien GmbH
【住所又は居所原語表記】Seestadtstrasse 25,AT-1220 Wien,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス コアンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ティノ リントナー-ズィルヴェスター
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート フリッツ
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA24
3H145AA25
3H145BA44
3H145CA06
3H145CA21
3H145DA11
3H145EA14
3H145EA26
3H145EA38
3H145EA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動作に必要な程度まで潤滑剤量を減らすことができる、レシプロコンプレッサおよびレシプロコンプレッサを動作させる方法を提供する。
【解決手段】潤滑剤供給システムには、シリンダ2のシリンダ摺動面における潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量Sを検出する少なくとも1つの潤滑剤センサ15が設けられており、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、レシプロコンプレッサ1の動作中に潤滑剤供給システムを少なくとも1回、所定の較正動作モードにおいて動作させ、較正動作モードの実行中に検出された潤滑剤膜-測定量に基づいて潤滑剤膜状態値を求めるように構成されており、かつ潤滑剤供給システム-制御ユニットは、較正動作モードの終了後に、レシプロコンプレッサの動作中に、求められた潤滑剤膜状態値に応じて、導入されるべき潤滑剤量を制御するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロコンプレッサ(1)用の潤滑剤供給システムであって、
前記潤滑剤供給システムは、前記レシプロコンプレッサ(1)の、内部でピストン(3)が往復運動することができるシリンダ(2)のシリンダ摺動面に潤滑剤を導入し、
導入されるべき潤滑剤量を制御する潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)が設けられている、潤滑剤供給システムにおいて、
前記シリンダ(2)の前記シリンダ摺動面における潤滑剤膜(11)の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量(S)を検出する少なくとも1つの潤滑剤センサ(15)が設けられており、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記レシプロコンプレッサ(1)の動作中に前記潤滑剤供給システムを少なくとも1回、所定の較正動作モードにおいて動作させ、前記較正動作モードの実行中に検出された前記潤滑剤膜-測定量(S)に基づいて潤滑剤膜状態値(SZ)を求めるように構成されており、かつ
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記較正動作モードの終了後に、前記レシプロコンプレッサ(1)の動作中に、求められた前記潤滑剤膜状態値(SZ)に応じて、前記導入されるべき潤滑剤量を制御するように構成されている、
ことを特徴とする、潤滑剤供給システム。
【請求項2】
前記潤滑剤センサ(15)は超音波センサであり、
前記潤滑剤センサ(15)の時間分解能は、好ましくは、0.01°~5°のクランク角度である、請求項1記載の潤滑剤供給システム。
【請求項3】
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記ピストン(3)のピストンストローク中に、前記ピストン(3)のピストンリング(6i)が前記潤滑剤センサ(15)のセンサ領域にある時点で検出された、前記潤滑剤膜-測定量(S)のセンサ値(Pi)、好ましくは、前記ピストンストローク中に検出された、前記潤滑剤膜-測定量(S)の極小値を、前記潤滑剤膜状態値(SZ)を求めるために使用するように構成されている、請求項1または2記載の潤滑剤供給システム。
【請求項4】
前記潤滑剤供給システムは、前記シリンダ(2)への前記潤滑剤の断続的な導入を行うように構成されており、好ましくはポンプツーポイントシステムとして、ディバイダ・ブロックシステムとして、またはコモンレールシステムとして構成されており、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記潤滑剤の断続的な導入の頻度および/または各注入の注入量を変えることによって、前記潤滑剤量を制御するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の潤滑剤供給システム。
【請求項5】
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記潤滑剤膜状態値(SZ)を更新し、前記潤滑剤量を更新された前記潤滑剤膜状態値(SZ)に合うように調整するために、定められたサイクルで前記較正動作モードを繰り返すように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の潤滑剤供給システム。
【請求項6】
前記較正動作モードの持続時間は、少なくとも10回、好ましくは少なくとも100回、特に好ましくは少なくとも1000回の、前記レシプロコンプレッサ(1)のクランクシャフト回転または同等の時間である、請求項1から5までのいずれか1項記載の潤滑剤供給システム。
【請求項7】
前記較正動作モードでは、それぞれ異なる潤滑剤量(Mi)を伴う少なくとも2つの連続する時間範囲(Zi)が定められており、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、少なくとも2つの前記時間範囲(Zi)中に検出された前記潤滑剤膜-測定量(S)の時間経過において、極大値(Pa_max)および極小値(Pa_min)を求め、ここから、前記潤滑剤量を制御するために、前記潤滑剤膜状態値(SZ)を求めるように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の潤滑剤供給システム。
【請求項8】
所定の持続時間を有する第1の時間範囲(Z1)と、前記第1の時間範囲(Z1)に続く、所定の持続時間を有する第2の時間範囲(Z2)とが定められており、
前記第1の時間範囲(Z1)中に導入される前記潤滑剤量(M1)は、前記シリンダ摺動面において完全に湿った潤滑剤膜が生じるように定められており、前記第2の時間範囲(Z2)中に導入される前記潤滑剤量(M2)は、前記シリンダ摺動面において乾いた摺動が生じるように定められており、
前記第1の時間範囲(Z1)の前記持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、前記第1の時間範囲中に導入される前記潤滑剤量(M1)は、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の90~200%であり、前記第2の時間範囲(Z2)の前記持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、前記第2の時間範囲(Z2)中に導入される前記潤滑剤量(M2)は、コンプレッサ製造業者によって設定された前記潤滑剤量の0%である、請求項7記載の潤滑剤供給システム。
【請求項9】
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、求められた前記極大値(Pa_max)と求められた前記極小値(Pa_min)との間の差値(ΔPa)を求め、前記極大値(Pa_max)と求められた前記差値(ΔPa)とから潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)を求め、前記潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)を潤滑剤膜状態値(SZ)として使用するように構成されており、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニットは、前記レシプロコンプレッサ(1)の動作中に、前記較正動作モードの終了後に、前記潤滑剤膜-測定量(S)が前記極小値(Pa_min)と前記潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)との間にある潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲(17)にある場合に、前記潤滑剤を導入するように前記潤滑剤供給システムを駆動制御するように構成されている、請求項7または8記載の潤滑剤供給システム。
【請求項10】
前記潤滑剤供給システムに、潤滑剤供給箇所(12)に供給された潤滑剤量を検出するための潤滑剤量-検出ユニット(16)が設けられており、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記潤滑剤膜センサ(15)から得られた前記潤滑剤膜-測定量(S)と、前記潤滑剤量-検出ユニットから得られた前記潤滑剤量とを比較するように構成されており、これによって、前記2つの値を整合性に関して検査することおよび/または前記潤滑剤供給システムの漏れを検出することができる、請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑剤供給システム。
【請求項11】
複数のシリンダ(2)を有するレシプロコンプレッサ(1)であって、
各シリンダ(2)において、それぞれ1つのピストン(3)が往復運動をすることができ、前記複数のシリンダ(2)に潤滑剤を供給する潤滑剤供給システムを有しており、
前記複数のシリンダ(2)にそれぞれ、前記潤滑剤を前記シリンダ(2)のシリンダ摺動面に導入する、少なくとも1つの潤滑剤供給箇所(12)が設けられている、レシプロコンプレッサ(1)において
前記潤滑剤供給システムは請求項1から10までのいずれか1項に従って構成されている、
ことを特徴とするレシプロコンプレッサ(1)。
【請求項12】
少なくとも1つのシリンダ(2)に複数の潤滑剤供給箇所(12)および/または複数の潤滑剤センサ(15)が設けられており、
好ましくは、複数の潤滑剤供給箇所(12)および/または複数の潤滑剤センサ(15)は、前記少なくとも1つのシリンダ(2)の周方向において設けられており、かつ/または複数の潤滑剤供給箇所(12)および/または複数の潤滑剤センサ(15)は、前記少なくとも1つのシリンダ(2)の軸線方向において設けられている、請求項11記載のレシプロコンプレッサ(1)。
【請求項13】
内部でピストン(3)が往復運動する少なくとも1つのシリンダ(2)を備えるレシプロコンプレッサ(1)を動作させる方法であって、
潤滑剤供給システムによって、前記少なくとも1つのシリンダ(2)のシリンダ摺動面に潤滑剤を供給し、
供給される前記潤滑剤の潤滑剤量を、潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)によって制御する、方法において、
少なくとも1つの潤滑剤センサ(15)を用いて、前記シリンダ(2)の前記シリンダ摺動面における潤滑剤膜(11)の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量(S)を検出し、
前記潤滑剤供給システムを前記レシプロコンプレッサ(1)の動作中に前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)によって少なくとも1回、所定の較正動作モードにおいて動作させ、
前記較正動作モードの実行中に検出された前記潤滑剤膜-測定量(S)に基づいて潤滑剤膜状態値(SZ)を求め、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記較正動作モードの終了後に、前記レシプロコンプレッサ(1)の動作中に、求められた前記潤滑剤膜状態値(SZ)に応じて、導入されるべき前記潤滑剤量を制御する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
潤滑剤センサ(15)として超音波センサを使用し、
前記潤滑剤センサの時間分解能は、好ましくは、0.01°~5°のクランク角度である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ピストン(3)のピストンストローク中に、前記ピストン(3)のピストンリング(6)が前記潤滑剤センサ(15)の領域にある時点で検出された、前記潤滑剤膜-測定量(S)のセンサ値(Pi)、好ましくは、前記ピストンストローク中に検出された、前記潤滑剤膜-測定量(S)の極小値を、前記潤滑剤膜状態値(SZ)を求めるために使用する、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記潤滑剤を前記シリンダ(2)へ断続的に導入し、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、前記潤滑剤の断続的な導入の頻度および/または各注入の注入量を変えることによって、前記潤滑剤量を制御する、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記潤滑剤膜状態値(SZ)を更新し、前記潤滑剤量を更新された前記潤滑剤膜状態値(SZ)に合うように調整するために、定められたサイクルで前記較正動作モードを繰り返し、かつ/または前記較正動作モードを、少なくとも10回、好ましくは少なくとも100回、特に好ましくは少なくとも1000回の、前記レシプロコンプレッサ(1)のクランクシャフト回転または同等の時間にわたって実行する、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記較正動作モードにおいて、少なくとも2つの連続する時間範囲(Zi)において、それぞれ異なる潤滑剤量(Mi)を前記シリンダ(2)に導入し、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニット(14)は、少なくとも2つの前記時間範囲(Zi)中に検出された前記潤滑剤膜-測定量(Mi)の時間経過において、極大値(Pa_max)および極小値(Pa_min)を求め、ここから、前記潤滑剤量を制御するために、前記潤滑剤膜状態値(SZ)を求める、請求項13から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
所定の持続時間を有する第1の時間範囲(Z1)と、前記第1の時間範囲(Z1)に続く、所定の持続時間を有する第2の時間範囲(Z2)とを定め、
前記第1の時間範囲(Z1)中に導入される前記潤滑剤量(M1)を、前記シリンダ摺動面において完全に湿った潤滑剤膜が生じるように定め、前記第2の時間範囲(Z2)中に導入される前記潤滑剤量(M2)を、前記シリンダ摺動面において乾いた摺動が生じるように定め、
前記第1の時間範囲(Z1)の前記持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、前記第1の時間範囲中に導入される前記潤滑剤量(M1)は、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の90~200%であり、前記第2の時間範囲(Z2)の前記持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、前記第2の時間範囲中に導入される前記潤滑剤量(M2)は、コンプレッサ製造業者によって設定された前記潤滑剤量の0%である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
求められた前記極大値(Pa_max)と求められた前記極小値(Pa_min)との間の差値(ΔPa)を求め、前記極大値(Pa_max)と求められた前記差値(ΔPa)とから潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)を求め、前記潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)を潤滑剤膜状態値(SZ)として使用し、
前記潤滑剤供給システム-制御ユニットは、前記較正動作モードの終了後に、前記潤滑剤膜-測定量(S)が前記極小値(Pa_min)と前記潤滑剤膜境界値(Pa_grenz)との間にある潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲(17)にある場合に、潤滑剤を導入するように前記潤滑剤供給システムを駆動制御する、請求項18または19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロコンプレッサ用の潤滑剤供給システムであって、この潤滑剤供給システムは、レシプロコンプレッサの、内部でピストンが往復運動することができるシリンダのシリンダ摺動面に潤滑剤を導入し、導入されるべき潤滑剤量を制御する潤滑剤供給システム-制御ユニットが設けられている、潤滑剤供給システムに関する。本発明はさらに、潤滑剤供給システムを備えるレシプロコンプレッサ、ならびに内部でピストンが往復運動する少なくとも1つのシリンダを備えるレシプロコンプレッサを動作させる方法であって、潤滑剤供給システムによって、少なくとも1つのシリンダのシリンダ摺動面に潤滑剤が供給され、供給される潤滑剤の潤滑剤量は、潤滑剤供給システム-制御ユニットによって制御される、方法に関する。
【0002】
レシプロ機械、特に潤滑剤が供給されるレシプロコンプレッサでは、シリンダへの確実な潤滑剤供給は、信頼性の高い動作のために極めて重要である。原則として、各シリンダには1つ以上の潤滑剤供給箇所があり、これらの潤滑剤供給箇所を介して、潤滑剤をシリンダに導入することができる。潤滑剤供給箇所には、多くの場合、中央の潤滑剤供給システムによって潤滑剤が供給される。シリンダに潤滑剤を可能な限り正確に調量配分することは、信頼性の高い動作のために不可欠である。潤滑剤の量が少なすぎると、コンプレッサの可動部品、特に、ピストンロッドをシールするピストンリングまたはシールパッキンのパッキンリングにおける摩耗が増加する。摩耗が増加すると、結果として、これらの部品の耐用年数が短くなり、ひいてはコンプレッサの可用性が低下する。逆に、潤滑剤の量が多すぎると、通常は、オイル付着作用に基づいて、コンプレッサバルブ等の部品の耐用年数が短くなり、これとならんで、触媒コンバータ等の、コンプレッサの後に接続されている機器の耐用年数が短くなる。さらに、潤滑剤の量が多いと、当然、潤滑剤の消費に基づいて、動作コストが増加するだけでなく、圧縮されたプロセス流から余分な潤滑剤を除去するために、特別なセパレータ等の付加的な装備が必要になるため、資本投入コストが高くなる。
【0003】
既知の潤滑剤供給システムは、多くの場合、各レシプロ機械用の所定の潤滑剤量に基づいている。これらの所定の潤滑剤量は、典型的に、コンプレッサのタイプ、サイズおよびプロセスパラメータに応じてコンプレッサ製造業者から提供され、経験的なデータもしくは簡略化された計算モデルに基づいている。これらの計算モデルには不確実性があり、コンプレッサのすべての構造様式および動作条件をカバーするために、通常は、相応に控えめに選択されている安全係数が設定されており、したがって、通常は、必要以上の潤滑剤が供給されてしまう。動作時のシリンダへのそのような「過剰な潤滑剤供給」は、上述の理由のためにレシプロコンプレッサを動作させる者にとって当然不利であり、したがって望ましくない。
【0004】
したがって、本発明の課題は、シリンダへの過剰な潤滑剤供給が回避され、動作に必要な程度まで潤滑剤量を減らすことができる、レシプロコンプレッサおよびレシプロコンプレッサを動作させる方法を提供することである。
【0005】
上述の課題は、冒頭で述べた潤滑剤供給システムを次のようにすることによって解決される。すなわち、シリンダのシリンダ摺動面における潤滑剤膜の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量を検出する少なくとも1つの潤滑剤センサが設けられており、潤滑剤供給システム-制御ユニットが、レシプロコンプレッサの動作中に潤滑剤供給システムを少なくとも1回、所定の較正動作モードにおいて動作させ、較正動作モードの実行中に検出された潤滑剤膜-測定量に基づいて潤滑剤膜状態値を求めるように構成されており、さらに、較正動作モードの終了後に、レシプロコンプレッサの動作中に、求められた潤滑剤膜状態値に応じて、導入されるべき潤滑剤量を制御するように構成されていることである。これによって、潤滑剤膜厚の測定および測定結果の評価に基づいて、シリンダスリーブにおける潤滑剤膜の状態を自動的に検出し、これに基づいて適切な潤滑剤量を自動的に提供する潤滑剤供給システムが得られる。これによって、従来の潤滑剤供給システムと比較して、必要とされる潤滑剤量を大幅に減らすことができるため、シリンダへの過剰な潤滑剤供給は行われない。
【0006】
潤滑剤センサは、好ましくは超音波センサであり、ここでは潤滑剤センサの時間分解能は、好ましくは、0.01°~5°のクランク角度である。これによって、シリンダ摺動面に直接アクセスする必要なく、潤滑剤膜-測定量を容易に検出することが可能になる。たとえば、超音波センサを既存のシリンダの外側に容易に配置することができる。
【0007】
潤滑剤供給システム-制御ユニットは、好ましくは、ピストンのピストンストローク中に、ピストンのピストンリングが潤滑剤センサのセンサ領域にある時点で検出された、潤滑剤膜-測定量のセンサ値、好ましくは、ピストンストローク中に検出された、潤滑剤膜-測定量の極小値を、潤滑剤膜状態値を求めるために使用するように構成されている。これによって、ピストンリングの領域における現下の潤滑剤膜厚を推測することができ、これに基づいて、必要な潤滑剤量を求めることができる。
【0008】
好ましくは、潤滑剤供給システムは、シリンダへの潤滑剤の断続的な導入を行うように構成されており、好ましくはポンプツーポイントシステムとして、ディバイダ・ブロックシステムとして、またはコモンレールシステムとして構成されており、潤滑剤供給システム-制御ユニットは、潤滑剤の断続的な導入の頻度および/または各注入の注入量を変えることによって、潤滑剤量を制御するように構成されている。これによって、確立されている潤滑剤供給システムを使用し、相応に較正することが可能になる。
【0009】
潤滑剤供給システム-制御ユニットは、有利には、潤滑剤膜状態値を更新し、潤滑剤量を更新された潤滑剤膜状態値に合うように調整するために、定められたサイクルで較正動作モードを繰り返すように構成されている。これによって、場合によってはより多くのまたはより少ない潤滑剤量を必要とする、動作中に発生する変化を考慮に入れることができる。これはたとえばピストンリングの摩耗である。
【0010】
較正動作モードの持続時間は、好ましくは、少なくとも10回、好ましくは少なくとも100回、特に好ましくは少なくとも1000回の、レシプロコンプレッサのクランクシャフト回転または同等の時間である。これによって、潤滑剤膜のさまざまな状態を設定および評価するのに十分な時間が与えられる。
【0011】
好ましくは、較正動作モードでは、それぞれ異なる潤滑剤量を伴う少なくとも2つの連続する時間範囲が定められており、潤滑剤供給システム-制御ユニットは、少なくとも2つの時間範囲中に検出された潤滑剤膜-測定量の時間経過において、極大値および極小値を求め、ここから、潤滑剤量を制御するために、潤滑剤膜状態値を求めるように構成されている。特に好ましくは、ここでは、所定の持続時間を有する第1の時間範囲と、第1の時間範囲に続く、所定の持続時間を有する第2の時間範囲とが定められており、第1の時間範囲中に導入される潤滑剤量は、シリンダ摺動面において完全に湿った潤滑剤膜が生じるように定められており、第2の時間範囲中に導入される潤滑剤量は、シリンダ摺動面において乾いた摺動が生じるように定められている。第1の時間範囲の持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、第1の時間範囲中に導入される潤滑剤量は、好ましくは、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の90~200%である。第2の時間範囲の持続時間は、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であり、第2の時間範囲中に導入される潤滑剤量は、好ましくは、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の0%である。これによって、さまざまな潤滑剤膜条件がシミュレートされ、一般に適用可能な代表的な潤滑剤膜状態値を求めるために使用される。
【0012】
有利には、潤滑剤供給システム-制御ユニットは、求められた極大値と求められた極小値との間の差値を求め、極大値と求められた差値とから潤滑剤膜境界値を求め、この潤滑剤膜境界値を潤滑剤膜状態値として使用するように構成されている。潤滑剤供給システム-制御ユニットは、好ましくは、さらに、レシプロコンプレッサの動作中に、較正動作モードの終了後に、潤滑剤膜-測定量が極小値と潤滑剤膜境界値との間にある潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲にある場合に、潤滑剤を導入するように潤滑剤供給システムを駆動制御するように構成されている。これによって、一方では、検出された潤滑剤膜-測定量の検出された絶対値に実質的に関連しない差分評価方法が得られ、さらには、潤滑剤の導入をアクティブ化するための簡単な指標が得られる。
【0013】
潤滑剤供給システムには、好ましくは、潤滑剤供給箇所に供給された潤滑剤量を検出するための潤滑剤量-検出ユニットも設けられており、潤滑剤供給システム-制御ユニットは、潤滑剤膜センサから得られた潤滑剤膜-測定量と、潤滑剤量-検出ユニットから得られた潤滑剤量とを比較するように構成されており、これによって、これら2つの値を整合性に関して検査することおよび/または潤滑剤供給システムの漏れを検出することができる。これによって、潤滑剤センサの機能を検査し、潤滑剤管路における漏れを検出することが可能になる。これに基づいて、コンプレッサのスイッチを切る、または潤滑剤供給を従来の過剰な潤滑剤供給に切り替える等の特定のアクションを実行することができ、これによって動作の信頼性を高めることができる。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも1つの潤滑剤センサを用いて、シリンダのシリンダ摺動面における潤滑剤膜の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量を検出し、潤滑剤供給システムをレシプロコンプレッサの動作中に潤滑剤供給システム-制御ユニットによって少なくとも1回、所定の較正動作モードにおいて動作させ、較正動作モードの実行中に検出された潤滑剤膜-測定量に基づいて潤滑剤膜状態値を求め、潤滑剤供給システム-制御ユニットは、較正動作モードの終了後に、レシプロコンプレッサの動作中に、求められた潤滑剤膜状態値に応じて、導入されるべき潤滑剤量を制御する、方法によって解決される。
【0015】
本発明を、限定的ではなく概略的に、例として本発明の有利な構成を示す
図1~
図4を参照して以降でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】レシプロコンプレッサのシリンダの断面図である。
【
図2】クランク角度に対して、検出された潤滑剤膜-測定量が記載されているグラフを示す図である。
【
図3a】レシプロコンプレッサのコンプレッサ回転に対して、検出された潤滑剤膜-測定量の時間経過が記載されているグラフを示す図である。
【
図3b】レシプロコンプレッサのコンプレッサ回転に対して、潤滑剤量のパーセンテージが記載されているグラフを示す図である。
【
図4】レシプロコンプレッサのクランク角度に対してプロットされた、検出された潤滑剤膜-測定量が記載されているグラフを示す図である。
【0017】
図1には、レシプロコンプレッサ1のシリンダ2の簡略化された断面図が示されている。シリンダ2内には、ピストン3が既知の様式で配置されており、ピストン3は、シリンダ内で上死点OTと下死点UTとの間で往復運動することができる。ピストン3は、既知の様式で、コネクティングロッド(図示せず)、クロスヘッド(図示せず)およびピストンロッド4を介して、クランクシャフト(図示せず)によって駆動され得る。当然、レシプロコンプレッサ1の他の構造様式も可能であろう。これは、たとえば、クロスヘッドおよびピストンロッド4を用いない、コネクティングロッドによるピストン3の直接的な駆動である。図示の例では、シリンダ2内に、シリンダスリーブ5、いわゆるライナが配置されており、その内周面には、ピストン3のためのシリンダ摺動面が形成されている。
【0018】
しかし、基本的には、シリンダスリーブ5を伴わない構成も可能であり、この場合には、シリンダ摺動面がシリンダ2の内周面に直接的に設けられている。当然、レシプロコンプレッサ1は複数のシリンダ2を有することができ、各シリンダ2において、それぞれ1つのピストン3が往復運動をすることができ、この場合には複数のピストン3が共通のクランクシャフトによって駆動されてよい。1つまたは複数のピストンリング6をピストン3に設けることができ、これらはピストン3の周面における適切な周方向の溝に配置されている。本発明の範囲において、ピストンリング6は、一般に、種々異なる機能を有するピストンリングを意味すると理解されるべきである。たとえば、ピストンリング6は、シールリング、サポートリングまたはスクレーパリングとして構成されていてよい。シールリングは、たとえば、差圧に対してシールするように構成されているが、サポートリングは通常、シール作用を有しておらず、シリンダスリーブにおけるピストン3の負荷を支持するように構成されている。また、スクレーパリングは、シリンダ摺動面から潤滑剤膜をこすり落とすように構成されている。
【0019】
当然、すべての構造様式がピストン3に設けられていなくてもよく、たとえば、たとえばシールリングの形態のピストンリング6だけが設けられていてもよい。示されている例では、3つのピストンリング6a、6b、6cが設けられており、ここでは第1のピストンリングおよび第3のピストンリング6a、6cがシールリングとして構成されており、第2のピストンリング6bはサポートリングとして構成されている。しかし、より多くのまたはより少ないピストンリング6が設けられていてもよく、たとえば、オイルスクレーパリングも設けられていてよい。ここでは、サポートリング6bが、シールリング6a、6cよりも広い幅(軸線方向において)を有していることが見て取れる。これは通常のケースである。さらに、サポートリング6bが配置されている、ピストン3の溝は、サポートリング6bが溝の底に、直接的に載るように構成されている。したがって、サポートリング6bは、ピストン3の負荷をより良好に支持することができるようにするために、シールリング6a、6cとは対照的に、実質的に半径方向において動かない。これに対して、シールリング6a、6cは、より良好なシールを生じさせることができるようにするために、各溝内で半径方向に移動することができる。一般に、ピストンリング6は、当然、半径方向において、ピストン3を超えるある程度の突出部を有することもできるが、見やすくするために、これは
図1に示されていない。
【0020】
シリンダ2内には、既知の様式で、ピストン3によって画定される圧縮チャンバ7が構成されており、この圧縮チャンバ7には吸入弁8および圧力弁9が配置されている。膨張行程中、ピストン3は上死点OTから下死点UTへと移動し、圧縮行程中、ピストン3は下死点UTから上死点OTへと移動する。膨張行程中、圧縮されるべき気体媒体、たとえば空気またはプロセスガスが、吸入弁8を介して圧縮チャンバ7内に吸引され得る。圧縮行程中、圧縮チャンバ7内の媒体は圧縮され、圧力弁9を介して圧縮チャンバ7から排出される。吸入弁8と圧力弁9とは、
図1に、単に概略的な回路記号として示されており、異なる構造を有していてよい。
【0021】
複数の吸入弁8および圧力弁9がシリンダに設けられていてもよい。吸入弁8および圧力弁9は、必ずしもシリンダ2の端面に配置されている必要はなく、たとえば、圧縮チャンバ7内のシリンダ2の周面に設けられていてもよい。たとえば、吸入弁8および圧力弁9は既知の自動リング弁として構成されていてよく、場合によっては、弁を開いたままにするためにアンローダが設けられていてもよい。アンローダは、コンプレッサ1の容量を調整するために、適切なコンプレッサ制御ユニット10によって駆動制御されてよい。
【0022】
レシプロコンプレッサ1はさらに、少なくとも1つのシリンダ2に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給システムを有している。潤滑剤供給システムは、このために、シリンダ2ごとに、シリンダ2に潤滑剤を導入するための少なくとも1つの潤滑剤供給箇所12を有している。潤滑剤は、相対的に移動する構成部分間、特にピストン3もしくはピストンリング6とシリンダ摺動面との間の摩擦を最小限に抑えるために、シリンダ2内に潤滑剤膜11を形成する。当然、潤滑剤をシリンダ2内に可能な限り均一に分配できるようにするために、複数の潤滑剤供給箇所12を設けることもでき、これらは、たとえば、軸線方向および/または周方向で互いに間隔を置いて、シリンダ2に分配配置されていてよく、これはたとえば
図1において、潤滑剤供給箇所12a、12bによって示されている。ピストンリング6の構造設計に応じて、たとえば、各ピストンリング6が潤滑剤供給箇所12に達する前に、ピストンリング6が潤滑剤供給箇所12の領域にある間、または場合によっては、各ピストンリング6が潤滑剤供給箇所12を通過した後にも、圧縮行程および/または膨張行程において潤滑剤供給箇所12を介して潤滑剤の導入が行われるのは、有利であり得る。導入の時点は、実質的に、使用されている潤滑剤供給システムに関連する。
【0023】
いわゆる「ディバイダ・ブロック」システム、「ポンプツーポイント」システムおよび「コモンレール」システムを含む、さまざまな潤滑剤供給システムが従来技術において知られている。「ディバイダ・ブロック」システムでは、潤滑剤を搬送するための中央搬送ユニットと、シリンダ2の潤滑剤供給箇所12に潤滑剤を分配するためのいわゆる「ディバイダ・ブロック」とが設けられている。中央搬送ユニットによって搬送された潤滑剤量は、いわゆる「ディバイダ・ブロック」に供給され、ここで分割されて、個々の潤滑剤供給箇所12に搬送される。ここで潤滑剤は、通常、個々の注入によって断続的にシリンダ2に導入される。導入されるべき潤滑剤の潤滑剤量は、ここでは、中央搬送ユニットの適切な制御によって制御される。たとえば、中央搬送ユニットがピストンポンプとして構成されている場合、搬送量を、回転数および/または場合によってはピストンストロークによって制御することができる。ここで、コンプレッサ1の動作時の潤滑剤量の変更は、たとえば、ポンプ回転数を変更すること等によって、潤滑剤の断続的な個々の注入の頻度を変更することによって行われ得る。しかし、中央搬送ユニットによって、潤滑剤量は、使用可能なすべての潤滑剤供給箇所12に対して一定の比率でのみ変更可能である。ここでは通常、異なる潤滑剤供給箇所12または異なるシリンダ2に対する異なる潤滑剤量は不可能である。
【0024】
「ポンプツーポイント」システムでは、各潤滑剤供給箇所12または各シリンダ2に、固有の搬送ユニット、たとえばピストンポンプが割り当てられている。搬送ユニットの構造設計、たとえばピストンポンプのストロークもしくはシリンダ容積に応じて、相応する潤滑剤量が、通常は同様に個々の注入を介して断続的に、割り当てられている潤滑剤供給箇所12に搬送される。通常、搬送ユニット、特にピストンポンプは、共通のカムシャフトを介して駆動される。コンプレッサ1の動作中の潤滑剤量の変更は、たとえば、カムシャフトの回転数を調整することによって、潤滑剤の個々の注入の頻度を変更することによって行われ得る。ここでも潤滑剤量の変更は、通常、すべての潤滑剤供給箇所12に対して一定の比率でのみ行われる。しかし、多くの「ポンプツーポイント」システムでは、たとえば、ピストンポンプの調整可能なストロークによって、搬送量を個別に変更することもできる。その結果、各潤滑剤供給箇所12において、または各シリンダ2に対して、潤滑剤量を個別に調整することができる。潤滑剤量を変更するために、たとえば、適切な位置調整機器を搬送ユニットに設けることができる。位置調整機器は、たとえば、ピストンポンプのストロークを手動で位置調整するように構成されていてよい、またはストロークを位置調整するための適切なアクチュエータが設けられていてよく、これによって、導入される潤滑剤量を注入ごとに変更することができる。
【0025】
この他にいわゆる「コモンレール」システムも存在しており、ここでは潤滑剤は高圧ポンプによって圧力アキュムレータに搬送され、圧力アキュムレータから、電気的に駆動制御可能なインジェクタを用いて、各潤滑剤供給箇所12または各シリンダ2に圧力管路を介して個別に供給され得る。上述したシステムと比較して、このようなシステムは、潤滑剤の導入の制御において、極めて高い自由度を提供する。特に、断続的な注入の頻度を変えることによってだけでなく、注入ごとに導入される潤滑剤量を極めて正確かつ可変的に制御することによっても、潤滑剤量を変えることができる。さらに、各潤滑剤供給箇所12または各シリンダ2における導入の時点を、個々に、高圧ポンプの動作とは実質的に無関係に調整することができる(圧力アキュムレータに十分な圧力がある限り)。これによって、たとえば、ピストン3が複数のピストンリング6を有しているレシプロコンプレッサ1において、1回のピストンストローク内で複数回の注入を行うことが可能になり、この結果、各ピストンリング6に所期のように特定の潤滑剤量を供給することが可能になる。
【0026】
すべての潤滑剤供給システムにおいて、潤滑剤導入、たとえば、注入の時点および/または注入ごとの潤滑剤量および/または注入の頻度は、通常、適切な潤滑剤供給システム-制御ユニット14を介して制御される。潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、別個のハードウェアおよび/またはソフトウェアとして構成されていてよい、または、たとえば、コンプレッサ制御ユニット10等の上位の制御ユニットに統合されていてもよい。
図1では、「コモンレール」システムが単に例として示されており、ここでは各潤滑剤供給箇所12に1つの電気的に駆動制御可能なインジェクタ13が設けられている。このインジェクタ13は、たとえば、電磁インジェクタまたはピエゾインジェクタとして構成されていてよい。インジェクタは、電気的な線路等の任意の適切な通信接続を介して中央の潤滑剤供給システム-制御ユニット14と接続されている。上述したように、圧力アキュムレータおよび高圧ポンプも設けられているが、見やすくするために、これらは
図1に示されていない。高圧ポンプは、好ましくは、同様に潤滑剤供給システム-制御ユニット14によって制御される。潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、たとえば、潤滑剤供給システムの制御に関連する、レシプロコンプレッサ1の動作パラメータBPを得るために、コンプレッサ制御ユニット10と通信することができる。このような動作パラメータBPは、たとえば、コンプレッサ1の動作状態に関する現下のデータを含んでいてよく、これはたとえば負荷信号L、回転数信号N、クランク角度信号°KW、潤滑剤温度T等である。潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、潤滑剤供給システムを制御する際に、これらの動作パラメータBPを考慮に入れることができる。
【0027】
冒頭で述べたように、潤滑剤量はこれまでは通常、製造業者の指示に基づいて制御されていたため、多くの場合、過剰な潤滑剤供給、すなわち必要以上の過度に多くの潤滑剤量の導入が生じていた。これを回避するために、本発明によれば、潤滑剤供給システムの自動較正が設定されており、これによって、潤滑剤量を実際の需要に合うように調整することができる。このために、潤滑剤供給システム内に、少なくとも1つの潤滑剤センサ15が、シリンダ2のシリンダ摺動面における潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚を表す潤滑剤膜-測定量Sを検出するために設けられている。潤滑剤膜-測定量Sは、実質的に、潤滑剤センサ15のセンサ領域におけるシリンダ摺動面における潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚に対する尺度である。潤滑剤センサ15は、適切な通信接続部を介して潤滑剤供給システム-制御ユニット14と接続されており、これによって、潤滑剤膜-測定量Sが、たとえば適切な電気的な測定線路を介して潤滑剤供給システム-制御ユニット14に伝送される。潤滑剤センサ15として、好ましくは音響センサ、特に超音波センサが設けられている。潤滑剤センサ15は、たとえば、シリンダ2の外側の適切な箇所に配置されていてよい。
【0028】
潤滑剤センサ15は、好ましくは、ピストン3の各ピストンリング6が、ピストンストロークごとに1回、潤滑剤センサ15のセンサ領域に位置するように、軸線方向に配置されており、その結果、潤滑剤膜厚を、各ピストンリング6の領域において検出することができる。潤滑剤供給箇所12が複数ある場合と同様に、複数の潤滑剤センサ15も、周方向および/または軸線方向で互いに間隔を置いてシリンダ2に配置されていてよい。これは、特に大型コンプレッサの場合に有利であり得、これによってシリンダ2のシリンダ摺動面の十分に大きい領域をカバーすることができる。潤滑剤膜-測定量Sを検出する潤滑剤センサ15、特に超音波センサの時間分解能は、たとえば0.01°~5°のクランク角度であり得る。
【0029】
本発明によれば、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、レシプロコンプレッサ1の動作中に所定の較正動作モードにおいて潤滑剤供給システムを少なくとも1回動作させ、較正動作モードの実行中に検出された潤滑剤膜-測定量Sに基づいて潤滑剤膜状態値SZを求めるように構成されている。較正動作モードの終了後、すなわちレシプロコンプレッサ1の動作中の潤滑剤供給システムの通常動作中に、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、求められた潤滑剤膜状態値SZに応じて、導入されるべき潤滑剤量を制御する。
【0030】
上述のように、潤滑剤供給システムは、好ましくは、潤滑剤を断続的に導入するように、好ましくはポンプツーポイントシステムとして、ディバイダ・ブロックシステムとしてまたはコモンレールシステムとして構成されている。潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、求められた潤滑剤膜状態値SZに応じて、たとえば潤滑剤の断続的な導入の頻度を変更することによって、潤滑剤量を調整することができ、これによって、製造業者の設定と比較して潤滑剤量を減らすことができる。しかし潤滑剤供給システムが相応に構成されている場合、たとえばコモンレールシステムでは、シリンダ2に導入される(総)潤滑剤量を、場合によっては、頻度の変更に対して付加的または択一的に、インジェクタ13の注入ごとの潤滑剤量を変更することによっても変更することができる。ポンプツーポイントシステムまたはディバイダ・ブロックシステムの場合、上述のように、たとえば、各潤滑剤供給システムの搬送ポンプの回転数を上げることによって、頻度を変更することができる。
【0031】
好ましくは、ピストン3のピストンストローク中に、ピストン3のピストンリング6が潤滑剤センサ15のセンサ領域にある時点で検出された、潤滑剤膜-測定量Sのセンサ値Piが、潤滑剤膜状態値SZを求めるために使用される。好ましくは、
図2に示されているように、ここではそれぞれ潤滑剤膜-測定量Sの極小値が使用される。
図2では、レシプロコンプレッサ1(および潤滑剤供給システム)の通常動作時の、ピストン3の上死点OTと下死点UTとの間のクランク角度°KWに対する、潤滑剤センサ15の検出された潤滑剤膜-測定量Sの例示的な経過が示されている。ここではピストン3は、
図1に示された構成に相応し、相応に3つのピストンリング6a、6b、6cを有している。しかし、当然、より多くのピストンリング6またはより少ないピストンリング6が設けられていてもよい。示されている曲線は、クランク角度に対する潤滑剤センサ15の測定信号に相応している。
図2から見て取れるように、ピストンリング6iの数iに応じて、潤滑剤膜-測定量Sの特徴的な時間経過が生じ、これは、シリンダ2のシリンダ摺動面における潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚に対する尺度として使用され得る。
【0032】
曲線はここで、ピストンリング6iごとに局部的な極小値を有しており、この極小値は、各ピストンリング6iが潤滑剤センサ15のセンサ領域にある場合に、シリンダ摺動面における潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚に比例する。示されている例では、これは、極小値Pa、Pb、Pcであり、これらは本発明の範囲において、以降で、概して、PEAK値Piと称される。PEAK値Pa、Pb、Pcの各ピストンリング6a、6b、6cへの割り当ては、ピストン3でのそれらの配置に相応に生じる。これらのPEAK値Pa、Pb、Pc(概してPi)はここで、本発明では、
図3aと
図3bとに基づいて以降に説明するように、潤滑剤供給システムの較正動作モードにおいて、潤滑剤膜状態値SZを求めるために使用され得る。
【0033】
しかし、基本的に、当然、潤滑剤膜-測定量Sの冗長的な検出を可能にするために、複数の潤滑剤センサ15を潤滑剤供給システム内に設けることもできる。これらの潤滑剤センサ15は、たとえば、周方向でシリンダ2に特定の角度で互いに間隔を置いて配置されていてよく、かつ/または軸線方向で互いに間隔を置いてシリンダ2に配置されていてよい。好ましくは、当然、ここでも各潤滑剤センサ15は、ピストン3の利用可能なすべてのピストンリング6iが、ピストンストローク中に1回、各潤滑剤センサ15のセンサ領域に位置するように配置されている。周方向における位置が異なり、かつシリンダ2における軸線方向の位置が同じである2つの潤滑剤センサ15は、たとえば、潤滑剤膜-測定量Sの質的に等しい曲線をもたらすだろう。しかしこれらの経過は、局所的に異なる、潤滑剤膜11の潤滑剤膜厚のために、量的に互いに異なっている可能性がある。しかし、PEAK値Piは同じクランク角度位置に位置するだろう。これに対して、軸線方向における位置が異なり、かつ周方向における位置が同じである2つの潤滑剤センサ15は、たとえば、潤滑剤膜-測定量Sの質的および量的に互いに異なる経過をもたらすだろう。この場合、PEAK値Piは互いに異なるクランク角度位置に位置するだろう。しかし、以降でより詳細に説明する、PEAK値経過の有利な差分評価方法は、PEAK値Piの互いに異なる絶対値を再び補填するだろう。
【0034】
たとえば、PEAK値Piは、クランクシャフトの回転ごとに1回、またはピストンストロークごとに1回検出され、潤滑剤供給システム-制御ユニット14に格納されてよい。しかし、基本的には、次のことでも十分である可能性がある。すなわち、PEAK値Piが中断されずに、すなわちクランクシャフトの各回転または各ピストンストロークに対して検出されて、時間経過の評価のために格納されるのではなく、PEAK値Piがたとえば、数回のクランクシャフトの回転またはたとえば1~60秒の時間の定められた中断持続時間で中断されて検出されることである。
【0035】
潤滑剤供給システムの例示的な較正動作モードを、
図3aおよび
図3bに基づいて、以降で説明する。ここで
図3bは、コンプレッサ1のクランクシャフト回転に対する、較正動作モード中にシリンダ2に導入された潤滑剤量の時間経過を示している。
図3aでは、第1のピストンリング6aの例に即して、コンプレッサ1のクランクシャフト回転に対する、
図3bに示された、導入された潤滑剤量に基づいて生じる、格納されたPEAK値Paの時間経過が示されている。較正動作モードの持続時間は、ここではたとえば、レシプロコンプレッサ1の少なくとも10回のクランクシャフト回転、好ましくは少なくとも100回のクランクシャフト回転、特に好ましくは少なくとも1000回のクランクシャフト回転であり得る。クランクシャフトの回転は時間に比例するので、基本的には、横軸に時間がプロットされていてもよい。
【0036】
本発明によれば、較正動作モードは、レシプロコンプレッサ1の動作中に、たとえば、最初の使用時の慣らし運転段階の後またはコンプレッサ1でのサービス活動の後に、少なくとも1回実行される。慣らし運転段階は典型的に、12~36時間の動作時間に相応する。しかし、当然、更新された潤滑剤膜状態値SZを求めて、潤滑剤量を更新された潤滑剤膜境界値SZに合うように調整するために、較正動作モードを、定められたサイクルで数回繰り返すこともできる。これによって、動作中に生じるさまざまな摩耗状態を考慮に入れることができる。これらの摩耗状態は通常、潤滑剤需要の変化に関連している。
【0037】
較正動作モードでは、好ましくは、それぞれ異なる潤滑剤量Miを伴う少なくとも2つの連続する時間範囲Ziが定められており、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、少なくとも2つの時間範囲中に検出された潤滑剤膜-測定量Sの時間経過において、特にPEAK値Piの時間経過において、極大値Pi_maxおよび極小値Pi_minを求め、ここから、潤滑剤量を制御するために使用される潤滑剤膜状態値SZ(
図4)を求める。好ましくは、極大値Pi_maxおよび極小値Pi_minならびに対応する検出時点が求められ、(少なくとも一時的に)格納される。格納は、一般にたとえば、たとえば潤滑剤供給システム-制御ユニット14または上位のコンプレッサ制御ユニット10に統合されていてよい適切なメモリユニットにおいて行われ得る。時間範囲Ziおよび時間範囲Ziにおいて導入される潤滑剤量Miは、完全に湿った潤滑剤膜から部分的に湿った潤滑剤膜を経て、乾いた摺動まで、シリンダ摺動面にさまざまな摩擦状態、ひいてはこれに伴う摩耗状態が生じるように定められる。潤滑剤量Mは、ここで、
図3bのグラフにおいて縦軸に、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量のパーセンテージで示されている。
【0038】
示されている較正動作モードでは、所定の持続時間を有する第1の時間範囲Z1と、第1の時間範囲Z1に続く、所定の持続時間を有する第2の時間範囲Z2とが、単に例として定められている。第1の時間範囲Z1中に導入される潤滑剤量M1は、ここでは好ましくは、シリンダ摺動面において完全に湿った潤滑剤膜が生じるように定められている。これに対して、第2の時間範囲Z2中に導入される潤滑剤量M2は、好ましくは、シリンダ摺動面において乾いた摺動が生じるように定められている。たとえば、第1の時間範囲Z1の持続時間は、少なくとも5回のクランクシャフト回転であってよく、第1の時間範囲Z1中に導入される潤滑剤量M1は、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の90~200%であってよい。結果として、極大値Pa_maxは通常、第1の時間範囲Z1にあり、極小値Pa_minは通常、第2の時間範囲Z2にある。
図3aから見て取れるように、第1の時間範囲Z1と第2の時間範囲Z2との間の移行において、PEAK値Paの経過において特徴的な低下が生じている。
【0039】
第2の時間範囲Z2の持続時間も、好ましくは、少なくとも5回のクランクシャフト回転であるが、当然、格段に長くてもよく、たとえば、10回のクランクシャフト回転、100回のクランクシャフト回転または1000回のクランクシャフト回転であってよい。第2の時間範囲Z2中に導入される潤滑剤量M2は、好ましくは、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量の0%であり、したがって潤滑剤は導入されない。第2の時間範囲Z2の終わりに、潤滑剤量Mは、たとえば、第3の時間範囲Z3によって示されているように、最初に、コンプレッサ製造業者によって設定された潤滑剤量M3まで再び増加されてよい。基本的には、較正動作モードは第2の時間範囲Z2の後に終了し、この時点から、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、較正動作モード中に求められた潤滑剤膜状態値SZ(
図4)を、レシプロコンプレッサ1の動作中の潤滑剤量の制御に使用することができる。
【0040】
有利には、
図3aに示されているように、最初に、求められた極大値Pa_maxと求められた極小値Pa_minとの間の差値ΔPaが求められる。極大値Pa_maxと求められた差値ΔPaとに基づいて今度は、潤滑剤膜境界値Pa_grenzが求められる。潤滑剤膜境界値Pa_grenzは、有利には、
図4に基づいて以降で説明するように、潤滑剤量を制御するための潤滑剤膜状態値SZとして使用され得る。境界値Pa_grenzは、たとえば、関係Pa_grenz=Pa_max-k*ΔPaに従って求められてよく、これは、10%~100%の範囲であり得るパーセンテージの係数Kを伴う。シリンダ2に複数の潤滑剤センサ15が設けられている場合には、潤滑剤膜状態値SZ、特に境界値Pi_grenzの評価および決定は、当然、好ましくは、各潤滑剤センサ15の潤滑剤膜-測定量Sに対して実行される。しかし、たとえば、複数の潤滑剤センサ15の極大値Pi_maxおよび極小値Pi_minの平均値を使用して、そこから平均境界値Pi_grenzを計算することもできる。同様に、平均値を複数の境界値Pi_grenzから形成することもでき、これに基づいて潤滑剤量を制御することができる。
【0041】
図4には、
図2と同様に、レシプロコンプレッサ1の通常動作、特に潤滑剤供給システムの通常動作中(較正動作モードの終了後もしくは較正動作モード以外)の、上死点OTと下死点UTとの間のピストンストロークに対する、検出された潤滑剤膜-測定量Sの経過が示されている。付加的に、
図4には、事前に較正動作モードにおいて求められた極大値Pa_maxおよび極小値Pa_minならびに潤滑剤膜境界値Pa_grenzが示されている。極小値Pa_minと潤滑剤膜境界値Pa_grenzとの間のハッチング領域は、潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17を表している。潤滑剤供給システム-制御ユニット14が、検出された潤滑剤膜-測定量SのPEAK値Paが潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17にあること、すなわちPEAK値Paが潤滑剤膜境界値Pa_grenzに達するかまたはそれを下回っていることを識別すると、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、潤滑剤を導入するように潤滑剤供給システムを駆動制御する。
【0042】
これは、検出された潤滑剤膜-測定量SのPEAK値Paが潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17外にある(すなわち、境界値Pa_grenzを上回る)場合には、潤滑剤供給箇所12を介してシリンダ2に潤滑剤が導入されないことを意味している。検出された潤滑剤膜-測定量SのPEAK値Paが十分に低く、潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17内にある(これは潤滑剤膜11の不十分な潤滑剤膜厚に対する指標である)場合にはじめて、潤滑剤はシリンダ2に再び供給される。潤滑剤の注入プロセスが実行された後に、潤滑剤膜-測定量Sの特徴的な経過(
図4)は再びより平坦になり、PEAK値Paは境界値を上回る。使用される潤滑剤、注入プロセスにおいて導入される潤滑剤量ならびにレシプロコンプレッサ1の動作状態および摩耗状態等に応じて、潤滑剤膜-測定量Sの特徴的な経過がクランクシャフト回転にわたって再び変わり、これによってPEAK値Paは緩慢に再び潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17に近づく。
【0043】
PEAK値Paが潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17に戻るとすぐに、潤滑剤供給システム-制御ユニット14によって新たに、注入プロセスがトリガされ、さらに後続プロセスが続く。したがって、(総)潤滑剤量は、実質的に、個々の注入の頻度を調整することによって制御される。しかし、コモンレールシステムの場合には、頻度の変更に加えて、たとえば、注入ごとに導入される潤滑剤量も変えることができる。これに対して、ポンプツーポイントシステムおよびディバイダ・ブロックシステムの場合、注入ごとに導入される潤滑剤量は、実質的に搬送ユニットの構造設計、たとえばピストンポンプのシリンダ容積に関連しており、通常は変更できない。したがって、(総)潤滑剤量の調整は、通常、個々の注入の頻度を調整することによってのみ制御可能であり、これはたとえばピストンポンプの回転数を変更することによって行われる。
【0044】
第1のピストンリング6aに基づいた説明は、当然、単に例として理解されるべきであり、較正動作モードは、当然、複数のピストンリング6iに対して別々にも実行可能である。たとえば、較正動作モードでは、潤滑剤センサ15の潤滑剤膜-測定量Sの経過が各ピストンリング6iに対して相応に評価されてよく、これによって、潤滑剤量を制御するために、ピストンリング6iごとに各潤滑剤膜状態値SZiを求めることができる。たとえばここで、各境界値Pi_grenzを、ピストンリング6iごとに求めることができ、その結果、各ピストンリング6iに対して、対応する潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17iが求められる。ここで、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、レシプロコンプレッサ1の通常動作中、各PEAK値Piが、割り当てられている各潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17に位置するとすぐに、潤滑剤を導入するように潤滑剤供給システムを駆動制御することができる。ここでは当然、境界値Pi_grenzがそれぞれ異なっていてもよい。
【0045】
たとえば、あるピストンリング6iが別のピストンリング6iよりも高い潤滑剤需要を有している場合には、基本的には、次のことでも十分であり得る。すなわち、本発明による較正が、より高い潤滑剤需要を有するピストンリング6iに対してのみ実行されれば十分であり得る。したがって、境界値Pi_grenzは、1つのピストンリング6iに対してのみ求められ、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、割り当てられたPEAK値Piが求められた潤滑剤供給システム-アクティブ化範囲17iに位置するとすぐに、潤滑剤供給システムを相応に駆動制御するだろう。潤滑剤供給システムがこれに適している限り(たとえばコモンレールシステム)、潤滑剤の導入は、好ましくは、潤滑剤需要が最も高いピストンリング6iに正確に潤滑剤が供給されるように、タイミングがとられて制御される。ピストンリング6iの構造設計に応じて、潤滑剤の導入はピストンストローク中に、好ましくは、ピストンリング6iの前で、または直接的にピストンリング6iに向けて行われる。その結果、潤滑剤需要が比較的低い1つまたは複数のピストンリング6iは、十分な潤滑剤量を自動的に受け取る。レシプロコンプレッサ1が複数のシリンダ2を有している場合には、本発明による潤滑剤量の検出および評価は、好ましくは、各シリンダ2に対して個別に、各シリンダ2に少なくとも1つの潤滑剤センサ15を配置することによって行われる。
【0046】
さらに、潤滑剤供給箇所12に供給された潤滑剤量を検出するために、潤滑剤供給システム内に潤滑剤量-検出ユニットが設けられているのは有利であり得る。潤滑剤量-検出ユニットは、たとえば、
図1に示されているように、潤滑剤供給箇所12への供給ラインに統合されている適切な流量センサ16であってよい。流量センサ16は、潤滑剤量に比例する測定信号を伝送するために、好ましくは、潤滑剤供給システム-制御ユニット14と接続されている。しかし、たとえば、潤滑剤量-検出ユニットとして計算モデルが設けられていてもよく、これはたとえば潤滑剤供給システム-制御ユニット14に実装されていてよく、潤滑剤供給箇所12に供給された潤滑剤量を、潤滑剤供給システムの利用可能なパラメータに基づいて、たとえばピストンポンプのシリンダ容積およびポンプの回転数等に基づいて計算する。
【0047】
したがって、潤滑剤供給システム-制御ユニット14は、潤滑剤センサ15から得られた潤滑剤膜-測定量Sと潤滑剤量-検出ユニットから得られた潤滑剤量とを比較して、これら2つの値の整合性を検査することができる。これによってたとえば、これら2つの値の間のある程度の偏差が確認された場合に、潤滑剤センサ15の機能不全を推測することができる。同様に、この比較を使用して、潤滑剤供給システムの漏れを検出することができる。たとえば、流量センサ16が特定の予期されている値を出力し、潤滑剤センサ15によって検出された潤滑剤膜-測定量Sが値をとらない、または極めて低い値をとる場合には、漏れが存在している可能性がある。これは、たとえば、流量センサ16と潤滑剤供給箇所12との間に漏れがあることを意味し得る。たとえば、許容されないほど高い偏差が、量の測定と潤滑剤膜圧測定(もしくはここから導出された比肩し得る量)との間で確認されると、これはたとえば、レシプロコンプレッサのクリチカルな動作状態に対する指標として使用されてよく、場合によっては特定のアクション、たとえばアラーム信号またはコンプレッサの1のスイッチオフが開始され得る。
【外国語明細書】