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特開2023-75184出力装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075184
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】出力装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230523BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230523BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230523BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01C21/26
G08G1/09 D
G08G1/16 C
B60W40/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028548
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021063632の分割
【原出願日】2018-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017062427
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(57)【要約】      (修正有)
【課題】位置を高精度に算出するのに好適な出力装置を提供する。
【解決手段】車載機1の自動運転制御部18は、車両の進行方向及び車両の側面方向の位置精度を夫々取得する。また、自動運転制御部18は、地図DB10を参照することで、地物毎の当該地物の向きを夫々示す法線情報を取得する。そして、自動運転制御部18は、車両の進行方向及び側面方向のうち、位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように車両を制御するための制御情報を車両の電子制御装置に出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得部と、
地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得部と、
前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、
を備える出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の進行先に設置される地物をレーダやカメラを用いて検出し、その検出結果に基づいて自車位置を校正する技術が知られている。また、特許文献1には、レーダやカメラを用いて地物を認識する際、走行中の車両を、地物が検知しやすくなる位置に誘導する運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-048205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路周辺に存在する地物は、同一方向を向いて設置されているとは限らない。よって、位置推定に道路周辺の地物を用いる場合、レーダなどによって検出される地物の面の向きが異なることに起因して、位置精度に影響が生じることになる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、位置を高精度に算出するのに好適な出力装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、出力装置であって、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得部と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得部と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
請求項10に記載の発明は、出力装置が実行する制御方法であって、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得工程と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得工程と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力工程と、を有する。
【0008】
請求項11に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得部と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得部と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力部として前記コンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運転支援システムの概略構成図である。
図2】車載機の機能的構成を示すブロック図である。
図3】地図DBに含まれる地物情報のデータ構造の一例である。
図4】状態変数ベクトルを2次元直交座標で表した図である。
図5】予測ステップと計測更新ステップとの概略的な関係を示す図である。
図6】位置推定精度に基づく車両制御を示すフローチャートである。
図7】(A)は、ライダによるスキャンを実行中の車両の俯瞰図を示す。(B)と(C)は、レーザ光の照射点を明示した地物の拡大図である。
図8】片側3車線道路において道路の左側前方及び右側前方に地物が存在するときの車両の俯瞰図を示す。
図9】車両の進行方向よりも側面方向の位置推定精度が低いときの車両の俯瞰図を示す。
図10】道路の左側前方と右側前方とに法線方向が略同一の地物が存在するときの車両の俯瞰図を示す。
図11】道路の左側前方と右側前方とに法線方向が異なる地物が存在するときの車両の俯瞰図を示す。
図12】目標地物決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、出力装置は、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得部と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得部と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、を備える。
【0011】
地物の検出結果に基づき位置推定を行う場合、地物が向いている方向の位置精度が高くなる傾向がある。よって、この態様では、出力装置は、位置精度が低い方向を向く地物の検出精度が高くなるように移動体を制御する。これにより、出力装置は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させることができる。
【0012】
上記出力装置の一態様では、前記出力部は、前記位置精度が低い方向と地物の向きとのなす角度が所定角度以下の場合に、当該地物は前記位置精度が低い方向を向いていると判定する。上記所定角度は、少なくとも45度以下に設定されることが好ましい。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させるように移動体を制御することができる。
【0013】
上記出力装置の他の一態様では、前記地図情報には、地物毎の当該地物の大きさに関する情報が含まれ、前記出力部は、前記位置精度が低い方向を向く地物が存在しない場合、前記大きさに関する情報に基づき検出精度を高くすべき前記目標地物を決定する。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向を向く地物が存在しない場合であっても、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させるように移動体を制御することができる。
【0014】
上記出力装置の他の一態様では、出力装置は、前記移動体の周辺の地物を検出する検出装置の出力を取得する第3取得部と、前記目標地物に対する前記検出装置の出力と、前記地図情報に含まれる前記目標地物の位置情報とに基づき、前記移動体の位置推定を行う位置推定部と、をさらに備える。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向を向く地物を基準とした位置推定を行い、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させることができる。
【0015】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記目標地物に最も近い車線へ前記移動体を移動させる、又は、走行中の車線内において前記目標地物に近い側へ前記移動体を移動させるための制御情報を出力する。この態様により、出力装置は、移動体を位置精度が低い方向を向く地物に好適に近づけて当該地物の検出精度を高めることができる。
【0016】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記移動体の経路沿いに存在する地物から、前記目標地物を選択する。この態様により、出力装置は、目的地への経路を実質的に変更することなく、位置精度が低い方向における位置精度を高めることができる。
【0017】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記移動体から所定距離以内に存在する地物のうち、前記位置精度が低い方向と地物の向きとのなす角度が最も小さい地物を、前記目標地物として選択する。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させるように移動体を制御することができる。
【0018】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記移動体から所定距離以内に存在する地物のうち、前記位置精度が低い方向と地物の向きとのなす角度、及び前記移動体の周辺の地物を検出する検出装置の検出対象としての地物の適正度に基づいて、前記目標地物を選択する。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させつつ高精度な位置推定を行うことができる。
【0019】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記位置精度が低い方向と地物の向きとのなす角度が所定角度以下の地物のうち、前記適正度が最も高い地物を、前記目標地物として選択する。この態様により、出力装置は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させつつ高精度な位置推定を行うことができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態によれば、出力装置が実行する制御方法であって、出力装置が実行する制御方法であって、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得工程と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得工程と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力工程と、を有する。出力装置は、この制御方法を実行することで、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させることができる。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向の位置精度を夫々取得する第1取得部と、地図情報に付与され、地物毎の当該地物の向きを夫々示す向き情報を取得する第2取得部と、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記位置精度が低い方向を向く目標地物の検出精度が高くなるように前記移動体を制御するための制御情報を出力する出力部として前記コンピュータを機能させる。出力装置は、このプログラムを実行することで、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させることができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な各実施例について説明する。
[概略構成]
【0023】
図1は、本実施例に係る運転支援システムの概略構成図である。図1に示す運転支援システムは、車両に搭載され、車両の運転支援に関する制御を行う車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2と、ジャイロセンサ3と、車速センサ4と、GPS受信機5とを有する。
【0024】
車載機1は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5と電気的に接続し、これらの出力に基づき、車載機1が搭載される車両の位置(「自車位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、車載機1は、自車位置の推定結果に基づき、設定された目的地への経路に沿って走行するように、車両の自動運転制御などを行う。車載機1は、道路データ及び道路付近に設けられた目印となる地物に関する情報である地物情報を記憶した地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。上述の目印となる地物は、例えば、道路脇に周期的に並んでいるキロポスト、100mポスト、デリニエータ、交通インフラ設備(例えば標識、方面看板、信号)、電柱、街灯などの地物であり、地物情報は、各地物に割り当てられたインデックスと、地物の位置情報と、地物の向きの情報とが少なくとも関連付けられた情報である。そして、車載機1は、この地物情報に基づき、ライダ2等の出力と照合させて自車位置の推定を行う。
【0025】
ライダ2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群情報を生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。一般的に、対象物までの距離が近いほどライダの距離測定値の精度は高く、距離が遠いほど精度は低い。本実施例では、ライダ2は、少なくとも車両の前方をスキャンするように車両の進行方向を向いて設置されているものとする。ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、GPS受信機5は、それぞれ、出力データを車載機1へ供給する。なお、車載機1は、本発明における「出力装置」の一例であり、ライダ2は、本発明における「検出装置」の一例である。
【0026】
図2は、車載機2の機能的構成を示すブロック図である。車載機2は、主に、インターフェース11と、記憶部12と、入力部14と、制御部15と、情報出力部16と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0027】
インターフェース11は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5などのセンサから出力データを取得し、制御部15へ供給する。また、インターフェース11は、制御部15が生成した車両の走行制御に関する信号を車両の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)へ供給する。制御部15からインターフェース11を介して車両の電子制御装置へ送信される信号は、本発明における「制御情報」の一例である。
【0028】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、地物情報を含む地図DB10を記憶する。図3は、地物情報のデータ構造の一例を示す。図3に示すように、地物情報は、地物ごとに当該地物に関する情報が関連付けられた情報であり、ここでは、地物のインデックスに相当する地物IDと、位置情報と、形状情報と、適正度情報を含んでいる。位置情報は、緯度及び経度(及び標高)等により表わされた地物の絶対的な位置を示す。形状情報は、地物の形状に関する情報であり、地物の向き(即ち正面に対する法線方向)を示す法線情報と、地物のサイズを示すサイズ情報とを含む。適正度情報は、ライダ2による検出のし易さ、換言すると、ライダ2による測定対象としての適正度を示す。なお、地図DB10は、定期的に更新されてもよい。この場合、例えば、制御部15は、図示しない通信部を介し、地図情報を管理するサーバ装置から、自車位置が属するエリアに関する部分地図情報を受信し、地図DB10に反映させる。
【0029】
ここで、適正度情報は、ライダ2による測定対象としての地物ごとの適正度を示す情報として予め設定され地物情報の一部として記憶された情報である。適正度情報は、典型的には適正度を数値化した情報であって、例えば、0~1.0の範囲内の数値で示される。適正度が最も高い地物については適正度情報を1.0とし、相対的に適正度が低い地物ほど、小さい数値の適正度情報が設定される。
【0030】
適正度情報の設定例を例示する。例えば、地物がきれいな道路標識であり,ライダ2により検出し易い場合は、適正度情報を1.0に設定する。地物が若干汚れており、ライダ2のレーザ光に対する反射率が低下してやや検出しにくい場合は.適正度情報を0.8に設定する。樹木の周辺に存在する地物については、春から秋にかけて樹木の葉に一部が隠される場合があるため、冬には適正度情報を0.8に設定し、他の季節には適正度情報を0.5に設定する。降雪の際に雪の付着が発生する地物については、降雪時には適正度情報を0.1に設定し、その他の天候では適正度情報を0.8に設定する。再帰性反射材が塗布されていない地物や電光掲示板については、ライダ2により検出しにくい場合が考えられるため、適正度情報を0.2~0.1に設定する。
【0031】
入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付ける。情報出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0032】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。本実施例では、制御部15は、自車位置推定部17と、自動運転制御部18とを有する。制御部15は、本発明における「第1取得部」、「第2取得部」、「第3取得部」、「位置推定部」、「出力部」、及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0033】
自車位置推定部17は、地物に対するライダ2による距離及び角度の計測値と、地図DB10から抽出した地物の位置情報とに基づき、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及び/又はGPS受信機5の出力データから推定した自車位置を補正する。本実施例では、一例として、自車位置推定部17は、ベイズ推定に基づく状態推定手法に基づき、ジャイロセンサ3、車速センサ4等の出力データから自車位置を推定する予測ステップと、直前の予測ステップで算出した自車位置の推定値を補正する計測更新ステップとを交互に実行する。
【0034】
自動運転制御部18は、地図DB10を参照し、設定された経路と、自車位置推定部17が推定した自車位置とに基づき、自動運転制御に必要な信号を車両に送信する。自動運転制御部18は、設定された経路に基づき、目標軌道を設定し、自車位置推定部17が推定した自車位置が目標軌道から所定幅以内のずれ幅となるように、車両に対してガイド信号を送信して車両の位置を制御する。また、本実施例では、自動運転制御部18は、自車位置推定部17の進行方向における位置推定精度と、進行方向に垂直な方向(「側面方向」とも呼ぶ。)における位置推定精度をそれぞれ監視する。そして、自動運転制御部18は、位置推定精度が低い方向(「低位置精度方向Dtag」とも呼ぶ。)の位置推定精度を高めるのに好適な地物のライダ2による検出精度を高めるように、車両の目標軌道を修正する。車両の進行方向及び側面方向は、本発明における「第1方向」及び「第2方向」の一例である。
【0035】
ここで、自車位置推定部17による自車位置の推定処理について補足説明する。自車位置推定部17は、予測ステップと計測更新ステップを逐次的に繰返して自車位置推定を行う。これらのステップで用いる状態推定フィルタは、ベイズ推定を行うように開発された様々のフィルタが利用可能であり、例えば、拡張カルマンフィルタ、アンセンテッドカルマンフィルタ、パーティクルフィルタなどが該当する。このように、ベイズ推定に基づく位置推定は、種々の方法が提案されている。以下では、一例として拡張カルマンフィルタを用いた自車位置推定について簡略的に説明する。
【0036】
図4は、状態変数ベクトルxを2次元直交座標で表した図である。図4に示すように、xyの2次元直交座標上で定義された平面での自車位置は、座標「(x、y)」、自車の方位「θ」により表される。ここでは、方位θは、車の進行方向とx軸とのなす角として定義されている。座標(x、y)は、例えば緯度及び経度の組合せに相当する絶対位置を示す。
【0037】
図5は、予測ステップと計測更新ステップとの概略的な関係を示す図である。図5に示すように、予測ステップと計測更新ステップとを繰り返すことで、状態変数ベクトルXの推定値の算出及び更新を逐次的に実行する。ここでは、計算対象となる基準時刻(即ち現在時刻)「t」の状態変数ベクトルを、「X 」または「X 」と表記している。(「状態変数ベクトルX=(x、y、θ」と表記する。)なお、予測ステップで推定された暫定的な推定値には当該推定値を表す文字の上に「」を付し、計測更新ステップで更新された,より精度の高い推定値には当該値を表す文字の上に「」を付す。
【0038】
予測ステップでは、自車位置推定部17は、直前の計測更新ステップで算出された時刻t-1の状態変数ベクトルX t-1に対し、車両の移動速度「v」と角速度「ω」(これらをまとめて「制御値u=(v、ω」と表記する。)を作用させることで、時刻tの自車位置の推定値(「事前推定値」とも呼ぶ。)X を算出する。また、これと同時に、自車位置推定部17は、事前推定値X の誤差分布に相当する共分散行列「Σ 」を、直前の計測更新ステップで算出された時刻t-1での共分散行列「Σ t-1」から算出する。
【0039】
また、計測更新ステップでは、自車位置推定部17は、地図DB10に登録された地物の位置ベクトルとライダ2のスキャンデータとの対応付けを行う。そして、自車位置推定部17は、この対応付けができた場合に、対応付けができた地物のライダ2による計測値「Z」と、事前推定値X 及び地図DB10に登録された地物の位置ベクトルを用いてライダ2による計測処理をモデル化して求めた地物の計測推定値「Z 」とをそれぞれ取得する。計測値Zは、時刻tにライダ2が計測した地物の距離及びスキャン角度を表す2次元ベクトルである。そして、自車位置推定部17は、以下の式(1)に示すように、計測値Zと計測推定値Z との差分にカルマンゲイン「K」を乗算し、これを事前推定値X に加えることで、更新された状態変数ベクトル(「事後推定値」とも呼ぶ。)X を算出する。
=X +K(Z-Z ) 式(1)
【0040】
また、計測更新ステップでは、自車位置推定部17は、予測ステップと同様、事後推定値X の誤差分布に相当する共分散行列Σ を事前共分散行列Σ から求める。カルマンゲインK等のパラメータについては、例えば拡張カルマンフィルタを用いた公知の自己位置技術と同様に算出することが可能である。
【0041】
なお、自車位置推定部17は、複数の地物に対し、地図DB10に登録された地物の位置ベクトルとライダ2のスキャンデータとの対応付けができた場合、選定した任意の一個の地物(例えば後述する目標地物Ltag)の計測値等に基づき計測更新ステップを行ってもよく、対応付けができた全ての地物の計測値等に基づき計測更新ステップを複数回行ってもよい。なお、複数の地物の計測値等を用いる場合には、自車位置推定部17は、ライダ2から遠い地物ほどライダ2の計測誤差が大きくなることを勘案し、ライダ2と地物との距離が長いほど、当該地物に関する重み付けを小さくする。
【0042】
また、自動運転制御部18は、後述するように、低位置精度方向Dtagを決定し、低位置精度方向Dtagにおける位置推定精度を上げるため、車両の目標軌道を修正する。
【0043】
[位置推定精度に基づく車両制御]
(1)処理フロー
図6は、本実施例において自動運転制御部18が実行する位置推定精度に基づく車両制御を示すフローチャートである。図6のフローチャートでは、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagを検出した場合に、低位置精度方向Dtagの位置推定精度を高めるのに好適な地物(「目標地物Ltag」とも呼ぶ。)を決定し、目標地物Ltagに近づくように車両を制御する。なお、図6のフローチャートの実行時には、自動運転制御部18は、設定された目的地への経路に沿った車両の目標軌道を設定しているものとする。
【0044】
まず、自動運転制御部18は、車両の進行方向及び側面方向における位置推定の誤差の範囲を特定する(ステップS101)。例えば、自動運転制御部18は、拡張カルマンフィルタに基づく位置推定の算出過程で得られる誤差の共分散行列に対して自車の方位θを用いた回転行列による変換を行うことで、車両の進行方向及び側面方向における位置推定の誤差の範囲をそれぞれ特定する。
【0045】
次に、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在するか否か判定する(ステップS102)。例えば、自動運転制御部18は、ステップS101で特定した進行方向または側面方向における位置推定の誤差の範囲のいずれかが所定の閾値より長い場合に、誤差の範囲が所定の閾値より長い方向を低位置精度方向Dtagとみなす。なお、自動運転制御部18は、ステップS102の判定を行う代わりに、車両の進行方向における位置推定の誤差の範囲と、車両の側面方向における位置推定の誤差の範囲とを比較し、誤差の範囲が長い方向を低位置精度方向Dtagとみなしてもよい。この場合、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagの特定後、ステップS103以降の処理を実行する。
【0046】
そして、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在すると判断した場合(ステップS102;Yes)、地図DB10を参照し、低位置精度方向Dtagの位置推定精度を高めるのに好適な経路沿いの地物を、目標地物Ltagとして決定する目的地物決定処理を実行する(ステップS103)。
【0047】
ここで、ステップS103の目的地物決定処理について、図12を参照して説明する。図12は、本実施例において図6のステップS103にて実行される目的地物決定処理を示すフローチャートである。図12のフローチャートでは、自動運転制御部18は、地図DB10を参照し、経路沿いの所定距離内の地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差以内である地物、すなわち低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する地物のうちから、ライダ2による測定対象として適正度が高く、低位置精度方向Dtagと法線方向の角度差が小さい地物を、目標地物Ltagとして決定する。なお、上述の所定角度差は、例えば、45度未満に設定され、この場合、低位置精度方向Dtagと法線方向の角度差が45度未満の地物が、低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する地物とみなされる。
【0048】
ここで、ステップS103について補足説明する。後述するように、ライダ2のレーザ光が照射される面の向き(即ち法線方向)とライダ2のレーザ光とが平行に近いほど、その方向の位置推定精度を高めることが可能である。従って、低位置精度方向Dtagと地物の法線方向との角度差が小さいほど、当該地物を用いた位置推定による低位置精度方向Dtagでの推定精度が向上する。
【0049】
まず、ステップS103の目的地物決定処理が開始された場合に、自動運転制御部18は、地図DB10に登録されている地物であって走行する経路からライダ2により計測可能な地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物を低位置精度方向Dtagと法線方向が近似するとみなし、このような地物が複数存在するかを判定する(ステップS301)。そして、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物が複数存在すると判断した場合(ステップS301;Yes)、複数の地物のうち、ライダ2による測定対象として適正度が最も高い地物を抽出する(ステップS302)。例えば、自動運転制御部18は、ステップS301で法線方向が所定角度差内であると判定した地物の適正度情報を参照し、適正度情報が示す適正度が最も高い地物を抽出する。
【0050】
次に、自動運転制御部18は、適正度の最も高い地物が一つだけ存在するかを判定する(ステップS303)。すなわちステップS302において、適正度の最も高い地物として、同じ適正度の複数の地物が抽出されなかったかを判定する。そして、自動運転制御部18は、適正度の最も高い地物が一つだけ存在すると判定した場合(ステップS303;Yes)、ステップS302において抽出した一つの地物を目標地物Ltagとして決定し、ステップS104に進む。一方、適正度の最も高い地物が一つだけ存在すると判定されなかった場合(ステップS303;No)、ステップS304において抽出した複数の地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が最も近似する地物を目標地物Ltagとして決定し、ステップS104に進む。
【0051】
自動運転制御部18は、ステップS301で低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物が複数存在しないと判断した場合(ステップS301;No)、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物が一つだけ存在するかを判定する(ステップS306)。低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物が一つも存在しないと判定した場合(ステップS306;No)、自動運転制御部18は、進行する経路沿いにおいて所定距離以内に存在する地物のサイズ情報を地図DB10から抽出して参照し、サイズが大きい地物を目標地物Ltagとして決定する。一方、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差内である地物が一つだけ存在すると判定した場合(ステップS306;Yes)、当該一つの地物を目標地物Ltagとして決定し、ステップS104に進む。
【0052】
なお、本実施例では、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagと法線方向が所定角度差以内であり、且つ適正度が最も高い地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が最も近似する地物を目標地物Ltagとして決定する例について説明したが、目標地物Ltagの決定方法はこれに限定されない。例えば、低位置精度方向Dtagと法線方向の角度差が極めて小さい地物が複数存在する場合には、これらの地物のうち適正度が最も大きい地物を目標地物Ltagとして決定してもよい。あるいは、低位置精度方向Dtagと法線方向の角度差と、各地物の適正度をそれぞれ所定の基準でスコア化し、角度差のスコアと適正度のスコアとに基づいて、低位置精度方向Dtagの位置推定精度を高めるのに好適な地物を総合的に判定して、目標地物Ltagを決定してもよい。また、地図DB10の地物情報に適正度情報が登録されていない場合は、低位置精度方向Dtagと法線方向との角度差が最小となる地物を目標地物Ltagとして決定してもよい。
【0053】
以上を勘案し、自動運転制御部18は、地図DB10に登録されている地物であって走行する経路からライダ2により計測可能な地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する地物を、目標地物Ltagとして決定する。この場合、自動運転制御部18は、各地物の法線方向を、地図DB10の地物情報に登録されている各地物の法線情報に基づき特定する。そして、自動運転制御部18は、例えば、経路沿いに所定距離以内に存在する地物のうち、低位置精度方向Dtagと法線方向が最も近似する地物、または低位置精度方向Dtagと法線方向の角度差が所定範囲内の地物であってライダ2による測定対象としての適正度が高い地物を、目標地物Ltagとして決定する。また、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する経路沿いの地物が存在しない場合には、地物情報のサイズ情報を参照して目標地物Ltagを決定する。目標地物Ltagの具体的な設定例については、「(3)具体例」のセクションで説明する。
【0054】
そして、自動運転制御部18は、ステップS103で決定した目標地物Ltagに近づくように車両の目標軌道を修正する(ステップS104)。具体的には、自動運転制御部18は、目標地物Ltagに最も近い車線に車線変更するように目標軌道を修正したり、走行中の車線上において目標地物Ltagに近い側に走行位置を車線内で偏らせるように目標軌道を修正したりする。このように、自動運転制御部18は、車両を目標地物Ltagに近付けることで、ライダ2による目標地物Ltagの検出精度を好適に高め、低位置精度方向Dtagの位置推定精度を高めることができる。また、各地物と車両との距離に応じた重み付けにより複数の地物に基づき位置推定を行う場合であっても、目標地物Ltagに車両を近付けることで、目標地物Ltagに関する重み付けを相対的に上げることが可能である。
【0055】
一方、ステップS102において、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在しないと判断した場合(ステップS102;No)、車両の目標軌道を修正する必要がないと判断し、フローチャートの処理を終了する。
【0056】
(2)地物の法線方向と位置推定精度との関係
次に、地物の法線方向と位置推定精度との関係について説明する。以下に説明するように、ライダ2のレーザ光が照射される地物の面の法線方向とライダ2のレーザ光とが平行に近いほど、その方向の位置推定精度を高めることが可能である。
【0057】
図7(A)は、ライダ2によるスキャンを実行中の車両の俯瞰図を示す。図7(A)では、ライダ2の計測範囲内に法線方向が異なる地物51、52が存在している。図7(B)は、ライダ2のレーザ光の照射点「P1」~「P5」を明示した地物51の拡大図である。また、図7(C)は、ライダ2のレーザ光の照射点「P6」~「P9」を明示した地物52の拡大図である。図7(B)、(C)では、それぞれ、各照射点の位置座標から算出した車両の側面方向及び進行方向の重心座標が破線により示されている。なお、図7(A)~(C)では、説明便宜上、ライダ2が所定の走査面に沿ってレーザ光を出射した場合を例示しているが、高さの異なる複数の走査面に沿ってレーザ光を出射してもよい。
【0058】
図7(A)及び図7(B)に示すように、地物51の法線方向は、車両の側面方向と略一致している。従って、照射点P1~P5は、車両の進行方向に沿って並んでおり、進行方向におけるばらつきが大きく、側面方向のばらつきが小さい。一方、位置推定処理においてライダ2による地物の計測位置(図5における計測値z)を決定する場合、自動運転制御部18は、対象の地物の点群データが示す車両を基準とした2次元座標の重心座標を算出する。従って、地物51を用いた位置推定では、照射点P1~P5のばらつきが小さい側面方向の位置精度が高くなることが予測される。よって、自動運転制御部18は、側面方向が低位置精度方向Dtagである場合に、地物51を目標地物Ltagに設定する。
【0059】
一方、図7(A)及び図7(C)に示すように、地物52の法線方向は、車両の進行方向と略一致している。従って、照射点P6~P9は、車両の側面方向に沿って並んでおり、側面方向におけるばらつきが大きく、進行方向のばらつきが小さい。従って、地物52を用いた位置推定では、照射点P6~P9のばらつきが小さい進行方向の位置精度が高くなることが予測される。よって、自動運転制御部18は、進行方向が低位置精度方向Dtagである場合に、地物52を目標地物Ltagに設定する。
【0060】
このように、ライダ2のレーザ光が照射される地物の面の法線方向とライダ2のレーザ光とが平行に近いほど、その方向の位置推定精度を高めることが可能である。よって、自動運転制御部18は、図6のステップS103において、低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する経路沿いの地物を目標地物Ltagとして決定する。
【0061】
(3)具体例
次に、図6のフローチャートの処理に基づく具体例について、図8図11を参照して説明する。
【0062】
図8は、片側3車線道路において道路の左側前方に車両に対して正面向きとなる地物53が存在し、道路の右側前方に車両に対して横向きとなる地物54が存在するときの車両の俯瞰図を示す。図8図11において、実線矢印「L1」は、図6のフローチャート実行前の目標軌道を示し、破線矢印「L2」は、図6のフローチャート実行後の目標軌道を示す。また、破線楕円「EE」は、位置推定の誤差の範囲に相当する誤差楕円を示す。
【0063】
図8の例では、破線楕円EEにより示される車両の進行方向の誤差の範囲は、車両の側面方向よりも長くなっており、かつ、所定の閾値より長くなっている。この場合、自動運転制御部18は、図6のフローチャートのステップS102において、車両の進行方向を低位置精度方向Dtagとみなす。そして、自動運転制御部18は、ステップS103において、地図DB10を参照し、進行する経路沿いの所定距離以内に存在する地物のうち、低位置精度方向Dtagである進行方向と法線方向が近似する地物53を目標地物Ltagに設定する。そして、自動運転制御部18は、ステップS104において、走行道路の中央車線から地物53に近い左車線に車線変更するように目標軌道を変更する。これにより、車両は、地物53に最も近い左車線を走行して地物53を通過するため、車載機1は、地物53をライダ2により高精度に検出し、低位置精度方向Dtagである進行方向の推定精度を好適に向上させることができる。
【0064】
図9は、図8の例と同一道路を走行中の場合において、車両の進行方向よりも側面方向の位置推定精度が低いときの車両の俯瞰図を示す。
【0065】
この場合、自動運転制御部18は、図6のフローチャートのステップS102において、車両の側面方向を低位置精度方向Dtagとみなす。そして、自動運転制御部18は、ステップS103において、地図DB10を参照し、進行する経路沿いの所定距離以内に存在する地物のうち、低位置精度方向Dtagである側面方向と法線方向が近似する地物54を目標地物Ltagに設定する。そして、自動運転制御部18は、ステップS104において、走行道路の中央車線から地物54に近い右車線に車線変更するように目標軌道を変更する。これにより、車両は、地物54に最も近い右車線を走行して地物54を通過するため、車載機1は、地物54をライダ2により高精度に検出し、低位置精度方向Dtagである側面方向の推定精度を好適に向上させることができる。
【0066】
図10は、道路沿いに法線方向が低位置精度方向Dtagと近似する地物が存在しない場合の車両の俯瞰図を示す。図10の例では、進行する経路沿いの所定距離以内に存在する地物55、56は、いずれも法線方向が低位置精度方向Dtagと略垂直になっている。
【0067】
図10の例では、自動運転制御部18は、図6のフローチャートのステップS102において、車両の側面方向を低位置精度方向Dtagとみなす。また、自動運転制御部18は、ステップS103において、地図DB10を参照し、進行する経路沿いの所定距離以内に存在する地物のうち、法線方向が低位置精度方向Dtagと近似する地物が存在しないと判断する。この場合、自動運転制御部18は、進行する経路沿いにおいて所定距離以内に存在する地物55、56のサイズ情報を地図DB10から抽出して参照し、サイズが大きい地物55を目標地物Ltagとして設定する(ステップS307参照)。そして、自動運転制御部18は、ステップS104において、破線L2に示されるように、走行道路の中央車線から地物55に近い左車線に車線変更するように目標軌道を変更する。
【0068】
このように、自動運転制御部18は、法線方向が低位置精度方向Dtagと近似する地物が存在しない場合、サイズが大きい(即ちライダ2のレーザ光の照射点が多くなる)地物を目標地物Ltagとして選定する。一般に、ライダ2による地物の計測位置(計測値z)を決定する場合、地物に対する点群データの数が多いほど、重心位置を算出する際のサンプル数が増えるため、対象の地物の計測位置を高精度に設定することが可能である。従って、図10の例では、自動運転制御部18は、より多くの点群データが得られる地物を目標地物Ltagとして選定し、低位置精度方向Dtagの推定精度を可能な限り向上させることができる。
【0069】
図11は、道路の左側前方と右側前方にそれぞれ法線方向が異なる地物が存在するときの車両の俯瞰図を示す。この例では、地物57は、車両の側面方向に対して角度「α1」だけ傾いており、地物58は、車両の側面方向に対して角度α1より大きい「α2」だけ傾いている。
【0070】
図11の例では、自動運転制御部18は、ステップS102において、車両の進行方向を低位置精度方向Dtagとして特定し、ステップS103において、地物57、58のいずれも低位置精度方向Dtagである進行方向と法線方向が近似すると判定する。この場合、自動運転制御部18は、地図DB10から地物57、58に対応する適正度情報を参照し、これらの適正度情報が同一値を示す場合、又は、対応する適正度情報が存在しない場合、低位置精度方向Dtagと最も近い法線方向となる経路沿いの地物57を、目標地物Ltagとして設定する(ステップS304参照)。そして、自動運転制御部18は、ステップS104において、破線L2に示されるように、走行道路の中央車線から地物55に近い左車線に車線変更するように目標軌道を変更する。一方、自動運転制御部18は、地図DB10から地物57、58に対応する適正度情報を参照し、地物58の適正度情報が示す値が地物57の低精度情報が示す値より大きい場合、地物58を目標地物Ltagとして設定する(ステップS302、S305参照)。
【0071】
このように、図11の例では、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagと法線方向が近似する地物が複数存在する場合には、低位置精度方向Dtagと法線方向が最も近似する地物あるいは適正度情報の値が最も高い地物を目標地物Ltagとして設定する。これにより、低位置精度方向Dtagの位置推定精度を好適に向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施例に係る車載機1の自動運転制御部18は、車両の進行方向及び車両の側面方向の位置精度を夫々取得する。また、自動運転制御部18は、地図DB10を参照することで、地物毎の当該地物の向きを夫々示す法線情報を取得する。そして、自動運転制御部18は、車両の進行方向及び側面方向のうち、位置精度が低い方向を向く地物の検出精度が高くなるように車両を制御するための制御情報を車両の電子制御装置に出力する。これにより、車載機1は、位置精度が低い方向での位置精度を好適に向上させることができる。
【0073】
[変形例]
以下、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施例に適用してもよい。
【0074】
(変形例1)
車載機1は、地図DB10を記憶部12に記憶する構成に代えて、図示しないサーバ装置が地図DB10を有してもよい。この場合、車載機1は、図示しない通信部でサーバ装置と通信することにより、必要な地物情報を取得する。
【0075】
(変形例2)
低位置精度方向Dtagは、車両の進行方向又は車両の側面方向のいずれかに設定される場合に限定されない。これに代えて、自動運転制御部18は、例えば、予め定めた2つの方向のうち、誤差の範囲が大きい方向を低位置精度方向Dtagと定めてもよい。他の例では、自動運転制御部18は、全方位の中で最も誤差の範囲が大きい方向が進行方向又は側面方向のいずれでもない場合には、最も誤差の範囲が大きい方向を低位置精度方向Dtagと定めてもよい。
【0076】
(変形例3)
図1に示す運転支援システムの構成は一例であり、本発明が適用可能な運転支援システムの構成は図1に示す構成に限定されない。例えば、運転支援システムは、車載機1を有する代わりに、車両の電子制御装置が車載機1の自車位置推定部17及び自動運転制御部18等の処理を実行してもよい。この場合、地図DB10は、例えば車両内の記憶部に記憶され、車両の電子制御装置は、地図DB10の更新情報を図示しないサーバ装置から受信してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 車載機
2 ライダ
3 ジャイロセンサ
4 車速センサ
5 GPS受信機
10 地図DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12