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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075520
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20230524BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 300D
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188470
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC20
3D131BC35
3D131BC37
3D131BC43
3D131BC44
3D131EA08U
3D131EB14X
3D131EB15X
3D131EB16X
3D131EB23X
3D131EB24X
3D131EB34X
3D131EB35X
3D131EB36X
3D131EB43V
3D131EB43X
3D131EB44V
3D131EB44X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】排水性能を維持しつつ石噛みを抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、トレッドにタイヤ周方向に沿って延びるように形成される複数の主溝のうち、タイヤ幅方向の最も外側に配置されるショルダー主溝と、ショルダー主溝からタイヤ幅方向外側へ向かって延びるショルダー横溝と、ショルダー主溝とショルダー横溝の交差部においてショルダー主溝の溝底を隆起させた底上げ部と、底上げ部の側壁からタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に沿って延びて、底上げ部の頂面とショルダー主溝の溝底又はショルダー横溝の溝底とを繋ぐ傾斜面を有する傾斜部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドにタイヤ周方向に沿って延びるように形成される複数の主溝のうち、タイヤ幅方向の最も外側に配置されるショルダー主溝と、
前記ショルダー主溝からタイヤ幅方向外側へ向かって延びるショルダー横溝と、
前記ショルダー主溝と前記ショルダー横溝の交差部において前記ショルダー主溝の溝底を隆起させた底上げ部と、
前記底上げ部の側壁からタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に沿って延びて、前記底上げ部の頂面と前記ショルダー主溝の溝底又は前記ショルダー横溝の溝底とを繋ぐ傾斜面を有する傾斜部と、を備える、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記底上げ部の前記ショルダー主溝の溝底からの高さは、前記ショルダー主溝の溝深さの30~50%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記傾斜部の前記底上げ部の側壁からの長さは、前記底上げ部の前記ショルダー主溝の溝底からの高さの1~2倍である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記底上げ部は、前記交差部の面積の50%以上に設けられる、請求項1~3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スノートラクション性能を維持しつつ、転がり抵抗の低減と低騒音化を図ることのできる空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びるショルダー主溝と、ショルダー主溝に対してタイヤ幅方向外側から接続される複数のショルダーラグ溝とを備え、ショルダー主溝とショルダーラグ溝の溝底に底上げ部が形成されている。
【0003】
特許文献1の空気入りタイヤは、雪柱せん断力を確保するためにショルダー主溝とショルダーラグ溝の交差部に底上げ部を設けない構成としているが、この構成は、当該交差部で石噛みを誘発する。石噛みは、溝底や溝側壁でクラックを引き起こしたり、振動や騒音を発生させたりする原因となり得るため好ましくない。
【0004】
一方、石噛みを抑制するために、例えば溝底に突起を設ける等の対策があるが、溝底に突起を設けると排水性能が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-34698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、排水性能を維持しつつ石噛みを抑制できる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の空気入りタイヤは、トレッドにタイヤ周方向に沿って延びるように形成される複数の主溝のうち、タイヤ幅方向の最も外側に配置されるショルダー主溝と、
前記ショルダー主溝からタイヤ幅方向外側へ向かって延びるショルダー横溝と、
前記ショルダー主溝と前記ショルダー横溝の交差部において前記ショルダー主溝の溝底を隆起させた底上げ部と、
前記底上げ部の側壁からタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に沿って延びて、前記底上げ部の頂面と前記ショルダー主溝の溝底又は前記ショルダー横溝の溝底とを繋ぐ傾斜面を有する傾斜部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図
図2】本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図
図3図2のIII領域拡大図
図4図3のIV領域拡大図
図5図3のV領域拡大図
図6図4のVI-VI線の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0011】
タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。なお、タイヤ幅方向D1のうち、第1側D11は、第1幅方向側D11ともいい、第2側D12は、第2幅方向側D12ともいう。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0012】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコアを有する一対のビード1aと、各ビード1aからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール1bと、一対のサイドウォール1bのタイヤ径方向D2の外端に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド2とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム20に装着される。
【0014】
また、タイヤ1は、一対のビードコアの間に架け渡されるカーカス1cと、カーカス1cの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナ1dとを備えている。カーカス1c及びインナーライナ1dは、ビード1a、サイドウォール1b、及びトレッド2に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0015】
トレッド2は、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2bと、トレッドゴム2bとカーカス1cとの間に配置されるベルト2cとを備えている。そして、トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外端は、接地端2d,2eという。なお、該接地面は、タイヤ1を正規リム20にリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面2aを指す。
【0016】
正規リム20は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリム20であり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0017】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には180kPaとする。
【0018】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧180kPaの対応荷重の85%とする。
【0019】
図1及び図2に示すように、トレッドゴム2bは、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝3a,3bを備えている。主溝3a,3bは、タイヤ周方向D3に連続して延びている。主溝3a,3bは、屈折を繰り返してジグザグ状に延びている。ただし、主溝3a,3bは、ストレート状に延びている、という構成でもよい。なお、主溝3a,3bの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、二つとしている。
【0020】
主溝3a,3bは、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えていてもよい。また、例えば、主溝3a,3bは、接地端2d,2e間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3.5%以上の溝幅を有していてもよい。また、例えば、主溝3a,3bは、5.0mm以上の溝幅を有していてもよい。
【0021】
複数の主溝3a,3bのうちタイヤ幅方向D1の最も外側に配置される一対の主溝3a,3bは、ショルダー主溝3a,3bという。なお、主溝を三つ以上設ける場合には、一対のショルダー主溝3a,3b間に配置される主溝は、センター主溝という。センター主溝は、ストレート状又はジグザグ状に延びている、という構成でもよい。さらに、センター主溝とショルダー主溝との間にメディエイト主溝を配置して、主溝を五つ以上設けてもよい。メディエイト主溝はセンター主溝同様、ストレート状又はジグザグ状に延びている、という構成でもよい。
【0022】
トレッドゴム2bは、複数の主溝3a,3b及び一対の接地端2d,2eによって区画される複数の陸4a~4cを備えている。なお、陸4a~4cの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、三つとしている。
【0023】
ショルダー主溝3a,3bと接地端2d,2eによって区画される陸4a,4bは、ショルダー陸4a,4bといい、ショルダー主溝3a,3bによって区画される陸4cは、センター陸4cという。
【0024】
ショルダー陸4aは、ショルダー主溝3aから第1幅方向側D11へ向かって延びる複数のショルダー横溝51,52を備える。ショルダー横溝51は、ショルダー主溝3aの屈曲部に開口し、ショルダー横溝52は、ショルダー主溝3aの直線部に開口している。ショルダー陸4aは、複数のショルダー横溝51,52によってタイヤ周方向D3に分割された複数のショルダーブロック41を有する。
【0025】
ショルダー横溝51,52の溝幅は例えば4.5~8.5mmである。また、ショルダー横溝51,52の溝深さは例えば7.0~12.0mmである。ショルダー横溝51,52の溝深さは、ショルダー主溝3aの溝深さよりも小さい。本実施形態において、ショルダー横溝51,52の溝深さは8.5mmである。
【0026】
センター陸4cは、ショルダー主溝3aから第2幅方向側D12へ向かって延びる複数のセンター横溝61,62を備える。センター横溝61,62は、いずれもショルダー主溝3aの直線部に開口している。また、センター横溝62のショルダー主溝3aへの開口は、ショルダー横溝52のショルダー主溝3aへの開口とショルダー主溝3aを挟んで対向しており、センター横溝62は、ショルダー横溝52と連続するように延びている。センター陸4cは、複数のセンター横溝61,62によってタイヤ周方向D3に分割された複数のセンターブロック42を有する。
【0027】
センター横溝61,62の溝幅は例えば3.0~6.0mmである。また、センター横溝61,62の溝深さは例えば7.0~12.0mmである。センター横溝61,62の溝深さは、ショルダー主溝3aの溝深さよりも小さい。本実施形態において、センター横溝61,62の溝深さは8.5mmである。
【0028】
ショルダー主溝3aは、図3に示すように、溝底30と、第1幅方向側D11の溝壁31と、第2幅方向側D12の溝壁32と、を備える。
【0029】
ショルダー主溝3aは、ショルダー横溝51との交差部33に底上げ部71を備えている。ここで、交差部33は、ショルダー横溝51がショルダー主溝3aの第2幅方向側D12の溝壁32に達するまで延びていると仮定したとき(図3及び図4に二点鎖線で示す)、ショルダー主溝3aとショルダー横溝51とが重なる部分である。本実施形態の底上げ部71は、交差部33の全体に形成されている。
【0030】
底上げ部71は、ショルダー主溝3aの溝底30の一部が隆起されて形成されている。底上げ部71は、全体が均一に隆起されており、底上げ部71の頂面71aはトレッド面2aと平行である(図6を参照)。
【0031】
ショルダー主溝3aとショルダー横溝51の交差部33に底上げ部71を設けることで、交差部33での石噛みを抑制することができる。
【0032】
図6に示すように、底上げ部71の溝底30からの高さh7(底上げ高さh7ともいう)は、ショルダー主溝3aの溝深さd3の30%~50%であるのが好ましい。底上げ部71の底上げ高さh7をショルダー主溝3aの溝深さd3の30%よりも小さくすると、石噛みを抑制する効果が得られにくい。一方、底上げ部71の底上げ高さh7をショルダー主溝3aの溝深さd3の50%よりも大きくすると、ショルダー主溝3aの溝容積が減少し、排水性能の低下が懸念される。
【0033】
本実施形態において、ショルダー主溝3aの溝深さd3は9.5mm、底上げ部71の底上げ高さh7は4.0mmであり、底上げ部71の底上げ高さh7が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の約42%である。
【0034】
底上げ部71は、平面視で略台形状である。底上げ部71は、タイヤ周方向D3を向いた側壁71b,71dと、タイヤ幅方向D1を向いた側壁71c,71eと、を有する。側壁71dは、ショルダーブロック41に接している。側壁71eは、ショルダー横溝51に対向する。
【0035】
ショルダー主溝3aは、底上げ部71の側壁71bからタイヤ周方向D3に沿って延びる傾斜部72と、底上げ部71の側壁71cからタイヤ幅方向D1に沿って延びる傾斜部73とを備える。ショルダー横溝51は、底上げ部71の側壁71eからタイヤ幅方向D1に沿って延びる傾斜部74を備える。
【0036】
傾斜部72は、ショルダー主溝3aの幅全体に設けられる。傾斜部72は、底上げ部71の頂面71aとショルダー主溝3aの溝底30とを繋ぐ傾斜面72aを有する。傾斜面72aは、底上げ部71の頂面71aとショルダー主溝3aの溝底30に滑らかに接続される。傾斜面72aは、底上げ部71の頂面71aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0037】
底上げ部71を設けることで、溝容積の減少および排水抵抗の増大による排水性能の悪化が懸念されるが、底上げ部71に隣接する傾斜部72を設けることで、底上げ部71による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。
【0038】
傾斜部72の底上げ部71の側壁71bからの長さL72は、底上げ部71の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部72の長さL72は、ショルダー主溝3aの延設方向に沿った長さである。傾斜部72の長さL72が底上げ部71の底上げ高さh7の1倍よりも短いと、排水抵抗を小さくする効果が得られにくい。一方、傾斜部72の長さL72が底上げ部71の底上げ高さh7の2倍よりも長いと、傾斜部72が大きくなり過ぎて溝容積が減少するため、却って排水性能が悪化するおそれがある。
【0039】
傾斜部73は、ショルダー主溝3aの幅全体に設けられる。傾斜部73は、底上げ部71の頂面71aとショルダー主溝3aの溝底30とを繋ぐ傾斜面73aを有する。傾斜面73aは、底上げ部71の頂面71aとショルダー主溝3aの溝底30に滑らかに接続される。傾斜面73aは、底上げ部71の頂面71aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0040】
傾斜部72と同様、傾斜部73を設けることで、底上げ部71による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。傾斜部73の底上げ部71の側壁71cからの長さL73は、底上げ部71の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部73の長さL73は、ショルダー主溝3aの延設方向に沿った長さである。
【0041】
傾斜部74は、ショルダー横溝51の幅全体に設けられる。傾斜部74は、底上げ部71の頂面71aとショルダー横溝51の溝底510とを繋ぐ傾斜面74aを有する。傾斜面74aは、底上げ部71の頂面71aとショルダー横溝51の溝底510に滑らかに接続される。傾斜面74aは、底上げ部71の頂面71aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0042】
傾斜部72と同様、傾斜部74を設けることで、底上げ部71による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。傾斜部74の底上げ部71の側壁71eからの長さL74は、底上げ部71の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部74の長さL74は、ショルダー横溝51の延設方向に沿った長さである。
【0043】
ショルダー主溝3aに設けられる傾斜部72,73の長さL72,L73は、ショルダー横溝51に設けられる傾斜部74の長さL74よりも長いほうが好ましい。この構成によれば、排水性能に大きな影響を与えるショルダー主溝3aにおける排水抵抗を効果的に減らすことができる。
【0044】
ショルダー主溝3aは、ショルダー横溝52との交差部34に底上げ部75を備えている。ここで、交差部34は、ショルダー横溝52がショルダー主溝3aの第2幅方向側D12の溝壁32に達するまで延びていると仮定したとき(図3及び図5に二点鎖線で示す)、ショルダー主溝3aとショルダー横溝52とが重なる部分である。本実施形態の底上げ部75は、交差部34の一部のみに形成されている。底上げ部75は、交差部34の面積の50%以上に設けられるのが好ましい。底上げ部75が交差部34の面積の50%より小さいと、石噛みを効果的に抑制することが難しい。
【0045】
底上げ部75は、ショルダー主溝3aの溝底30の一部が隆起されて形成されている。底上げ部75は、全体が均一に隆起されており、底上げ部75の頂面75aはトレッド面2aと平行である。
【0046】
ショルダー主溝3aとショルダー横溝52の交差部34に底上げ部75を設けることで、交差部34での石噛みを抑制することができる。
【0047】
底上げ部75の溝底30からの高さh7(底上げ高さh7ともいう)は、ショルダー主溝3aの溝深さd3の30%~50%であるのが好ましい。底上げ部75の底上げ高さh7をショルダー主溝3aの溝深さd3の30%よりも小さくすると、石噛みを抑制する効果が得られにくい。一方、底上げ部75の底上げ高さh7をショルダー主溝3aの溝深さd3の50%よりも大きくすると、ショルダー主溝3aの溝容積が減少し、排水性能の低下が懸念される。
【0048】
本実施形態において、ショルダー主溝3aの溝深さd3は9.5mm、底上げ部75の底上げ高さh7は4.0mmであり、底上げ部75の底上げ高さh7が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の約42%である。
【0049】
底上げ部75は、平面視で略平行四辺形状である。底上げ部75は、タイヤ周方向D3を向いた側壁75b,75dと、タイヤ幅方向D1を向いた側壁75c,75eと、を有する。側壁75b,75dは、ショルダー横溝52のショルダー主溝3aへの開口のタイヤ周方向端部と、センター横溝62のショルダー主溝3aへの開口のタイヤ周方向端部とを接続する。側壁75cは、センター横溝62に対向し、側壁75eは、ショルダー横溝52に対向する。
【0050】
ショルダー主溝3aは、底上げ部75の側壁75bからタイヤ周方向D3に沿って延びる傾斜部76と、底上げ部75の側壁75dからタイヤ周方向D3に沿って延びる傾斜部77とを備える。ショルダー横溝52は、底上げ部75の側壁75eからタイヤ幅方向D1に沿って延びる傾斜部78を備える。また、センター横溝62は、底上げ部75の側壁75cからタイヤ幅方向D1に沿って延びる傾斜部79を備える。
【0051】
傾斜部76は、ショルダー主溝3aの幅全体に設けられる。傾斜部76は、底上げ部75の頂面75aとショルダー主溝3aの溝底30とを繋ぐ傾斜面76aを有する。傾斜面76aは、底上げ部75の頂面75aとショルダー主溝3aの溝底30に滑らかに接続される。傾斜面76aは、底上げ部75の頂面75aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0052】
底上げ部75を設けることで、溝容積の減少および排水抵抗の増大による排水性能の悪化が懸念されるが、底上げ部75に隣接する傾斜部76を設けることで、底上げ部75による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。
【0053】
傾斜部76の底上げ部75の側壁75bからの長さL76は、底上げ部75の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部76の長さL76は、ショルダー主溝3aの延設方向に沿った長さである。傾斜部76の長さL76が底上げ部75の底上げ高さh7の1倍よりも短いと、排水抵抗を小さくする効果が得られにくい。一方、傾斜部76の長さL76が底上げ部75の底上げ高さh7の2倍よりも長いと、傾斜部76が大きくなり過ぎて溝容積が減少するため、却って排水性能が悪化するおそれがある。
【0054】
傾斜部77は、ショルダー主溝3aの幅全体に設けられる。傾斜部77は、底上げ部75の頂面75aとショルダー主溝3aの溝底30とを繋ぐ傾斜面77aを有する。傾斜面73aは、底上げ部75の頂面75aとショルダー主溝3aの溝底30に滑らかに接続される。傾斜面77aは、底上げ部75の頂面75aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0055】
傾斜部76と同様、傾斜部77を設けることで、底上げ部75による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。傾斜部77の底上げ部75の側壁75dからの長さL77は、底上げ部75の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部77の長さL77は、ショルダー主溝3aの延設方向に沿った長さである。
【0056】
傾斜部78は、ショルダー横溝52の幅全体に設けられる。傾斜部78は、底上げ部75の頂面75aとショルダー横溝52の溝底520とを繋ぐ傾斜面78aを有する。傾斜面78aは、底上げ部75の頂面75aとショルダー横溝52の溝底520に滑らかに接続される。傾斜面78aは、底上げ部75の頂面75aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0057】
傾斜部76と同様、傾斜部78を設けることで、底上げ部75による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。傾斜部78の底上げ部75の側壁75eからの長さL78は、底上げ部75の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部78の長さL78は、ショルダー横溝52の延設方向に沿った長さである。
【0058】
傾斜部79は、センター横溝62の幅全体に設けられる。傾斜部79は、底上げ部75の頂面75aとセンター横溝62の溝底620とを繋ぐ傾斜面79aを有する。傾斜面79aは、底上げ部75の頂面75aとセンター横溝62の溝底620に滑らかに接続される。傾斜面79aは、底上げ部75の頂面75aに対して一定の傾斜角度で延びる平坦面となっている。
【0059】
傾斜部76と同様、傾斜部79を設けることで、底上げ部75による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。傾斜部79の底上げ部75の側壁75cからの長さL79は、底上げ部75の底上げ高さh7の1~2倍であるのが好ましい。ここで、傾斜部79の長さL79は、センター横溝62の延設方向に沿った長さである。
【0060】
ショルダー主溝3aに設けられる傾斜部76,77の長さL76,L77は、ショルダー横溝52に設けられる傾斜部78の長さL78よりも長いほうが好ましい。この構成によれば、排水性能に大きな影響を与えるショルダー主溝3aにおける排水抵抗を効果的に減らすことができる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド2にタイヤ周方向D3に沿って延びるように形成される複数の主溝3a,3bのうち、タイヤ幅方向D1の最も外側に配置されるショルダー主溝3aと、ショルダー主溝3aからタイヤ幅方向外側へ向かって延びるショルダー横溝51,52と、ショルダー主溝3aとショルダー横溝51,52の交差部33,34においてショルダー主溝3aの溝底30を隆起させた底上げ部71,75と、底上げ部71,75の側壁71b,71c,71e,75b,75d,75eからタイヤ周方向D3又はタイヤ幅方向D1に沿って延びて、底上げ部71,75の頂面71a,75aとショルダー主溝3aの溝底30又はショルダー横溝51,52の溝底510,520とを繋ぐ傾斜面72a,73a,74a,76a,77a,78aを有する傾斜部72,73,74,76,77,78と、を備えるものである。
【0062】
ショルダー主溝3aとショルダー横溝51,52の交差部33,34に底上げ部71,75を設けることで、石噛みを抑制できる。また、底上げ部71,75に隣接する傾斜部72,73,74,76,77,78を設けることで、底上げ部71,75による排水抵抗を小さくして、排水性能を維持することができる。その結果、排水性能を維持しつつ石噛みを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、底上げ部71,75のショルダー主溝3aの溝底30からの高さh7は、ショルダー主溝3aの溝深さd3の30~50%である、という構成である。
【0064】
この構成によれば、排水性能を適切に維持しつつ石噛みを効果的に抑制できる。
【0065】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、傾斜部72,73,74,76,77,78の底上げ部71,75の側壁71b,71c,71e,75b,75d,75eからの長さL72,L73,L74,L76,L77,L78は、底上げ部71,75のショルダー主溝3aの溝底30からの高さh7の1~2倍である、という構成である。
【0066】
この構成によれば、排水性能を適切に維持できる。
【0067】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、底上げ部71,75は、交差部33,34の面積の50%以上に設けられる、という構成である。
【0068】
この構成によれば、石噛みを効果的に抑制できる。
【0069】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0070】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、底上げ部71,75のショルダー主溝3aの溝底30からの高さh7は、ショルダー主溝3aの溝深さd3の30~50%である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、底上げ部71,75の底上げ高さh7が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の30%よりも小さい場合、石噛みの抑制効果を奏しつつ、排水性能には有利となる。一方、底上げ部71,75の底上げ高さh7が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の50%よりも大きい場合、排水性能には不利となるが、石噛みの抑制効果が高まる。
【0071】
(2)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、傾斜部72,73,74,76,77,78の底上げ部71,75の側壁71b,71c,71e,75b,75d,75eからの長さL72,L73,L74,L76,L77,L78は、底上げ部71,75のショルダー主溝3aの溝底30からの高さh7の1~2倍である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、底上げ部71,75の底上げ高さh7が十分に低い場合には、傾斜部72,73,74,76,77,78の長さL72,L73,L74,L76,L77,L78が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の1倍よりも小さくても構わない。また、底上げ部71,75の底上げ高さh7が十分に高い場合には、傾斜部72,73,74,76,77,78の長さL72,L73,L74,L76,L77,L78が、ショルダー主溝3aの溝深さd3の2倍よりも大きくても構わない。
【0072】
(3)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、底上げ部71,75は、交差部33,34の面積の50%以上に設けられる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、底上げ部71,75が交差部33,34の面積の50%より小さく設けられる場合、石噛みの抑制効果を奏しつつ、排水性能には有利となる。
【0073】
(4)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、傾斜部72~74,76~79の傾斜面72a~74a,76a~79aは平坦面である、という構成である。しかし、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。傾斜面72a~74a,76a~79aは、底上げ部71,75の頂面71a,75aに近付く向きに凸となった凸曲面でもよく、また、底上げ部71,75の頂面71a,75aから離れる向きに凸となった凹曲面でもよい。
【0074】
(5)なお、上記実施形態では、ショルダー主溝3aとショルダー主溝3aから延びるショルダー横溝51,52について説明を行ったが、本実施形態のタイヤ1は、車両への装着向きを指定されないタイヤであり、ショルダー主溝3bとショルダー主溝3aは同じ形状である。したがって、底上げ部71,75もショルダー主溝3a、3b両方に同形状に設けられるのが好適である。ただし、本実施形態は車両への装着向きが指定されたいわゆる非対称パターンを有するタイヤにも適用可能であり、その際、底上げ部71,75はショルダー主溝3a、3bのいずれかに設けてもよいし、またショルダー主溝3a、3bで底上げ部71,75の形状を異ならせてもよいし、底上げ部71,75の底上げ高さh7をショルダー主溝3a、3bで異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…空気入りタイヤ、2…トレッド、2a…トレッド面、2d…接地端、2e…接地端、3a…主溝(ショルダー主溝)、3b…主溝(ショルダー主溝)、4a…陸(ショルダー陸)、4b…陸(ショルダー陸)、4c…陸(センター陸)、30…ショルダー主溝の溝底、33…ショルダー主溝とショルダー横溝の交差部、34…ショルダー主溝とショルダー横溝の交差部、41…ショルダーブロック、42…センターブロック、51…ショルダー横溝、52…ショルダー横溝、61…センター横溝、62…センター横溝、71…底上げ部、71a…底上げ部の頂面、71b~71e…底上げ部の側壁、72~74…傾斜部、72a~74a…傾斜面、75…底上げ部、75a…底上げ部の頂面、75b~75e…底上げ部の側壁、76~79…傾斜部、76a~79a…傾斜面、510…ショルダー横溝の溝底、520…ショルダー横溝の溝底、620…センター横溝の溝底、d3…ショルダー主溝の溝深さ、h7…底上げ高さ、D1…タイヤ幅方向、D11…タイヤ幅方向第1側、D12…タイヤ幅方向第2側、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6