(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075797
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】生体組織貼付フィルム及び転写シート
(51)【国際特許分類】
A61L 15/24 20060101AFI20230524BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20230524BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230524BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230524BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230524BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61L15/24 100
A61L17/12
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/85
A61L15/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188924
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早坂 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4C081
4C083
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081AA14
4C081AC03
4C081BA16
4C081CA061
4C081CA172
4C081CD34
4C081DA02
4C081DC03
4C081DC11
4C083AD071
4C083AD091
4C083DD12
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】被着体の表面形状への高い密着性を有する生体組織貼付フィルムと、生体組織貼付フィルムを備える転写シートを提供する。
【解決手段】生体組織貼付フィルムは、疎水性生体適合材料と(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーとを含有する材料からなり、生体組織貼付フィルム中の(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマー割合が、40質量%以上である。生体組織貼付フィルム10の全体の質量に対する(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマー質量の割合を、40質量%以上とすることで、皮膚への十分な密着性を得ることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合材料からなるフィルム中に(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーを40質量%以上含む、生体組織貼付フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の生体組織貼付フィルムにおいて、単位面積当たりの質量が0.1g/m2以上10g/m2以下であることを特徴とする、生体組織貼付フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体組織貼付フィルムにおいて、前記生体組織貼付フィルム中の(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの含有量が50質量%以下であることを特徴とする、生体組織貼付フィルム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体組織貼付フィルムにおいて、前記生体適合材料が、ポリ乳酸L体、ポリ乳酸DL体、グリコール酸/L-乳酸共重合体、グリコール酸/DL-乳酸共重合体のいずれかであることを特徴とする、生体組織貼付フィルム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体組織貼付フィルムの片面に、前記生体組織貼付フィルムを支持する支持基材を備える、転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織貼付フィルム及び転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
数nm~数μm程度の厚さを有した極めて薄いフィルムは、高い柔軟性を有することから、生体器官の表面形状に対して高い密着性を示す。それゆえ、フィルムは、接着剤や粘着剤がなくとも生体器官の表面に貼り付くため、フィルムを臓器や皮膚等の被着体に貼り付けて利用することが試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィルムを美容用途に用いることが記載されている。美容用途において、フィルムは、スキンケアやメイクアップの補助のために皮膚に貼り付けられる。
【0004】
また、特許文献2には、フィルムを医療用途に用いることが記載されている。医療用途において、フィルムは、外科手術による切開部位の閉鎖、熱傷や創傷が生じている部位の保護、止血等を目的として、臓器や皮膚に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/058060号
【特許文献2】国際公開第2016/204266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
美容用途及び医療用途では、被着体に貼り付けられたフィルムにて水分の透過が抑えられることにより、フィルムが被着体の表面上に閉塞状態を形成できることが望まれる。例えば、美容用途においては、閉塞状態が形成されることにより、皮膚の表面に水分が保持されて角層水分量が高められるため、保湿効果が得られる。また、医療用途においては、閉塞状態が形成されることにより、湿潤によって創傷治癒環境を改善する湿潤療法や、皮膚への薬剤浸透を高める閉鎖密封法に適した状態が構築される。
【0007】
しかしながら、薄膜化により被着体の表面形状への密着性が高められている従来のフィルムは、薄さに起因した水分の透過や、薄さに起因した強度不足により破れが発生する問題がある。そして、水分透過や強度確保のためにフィルムを厚くした場合、十分な皮膚への密着性が得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、被着体の表面形状への高い密着性を有する生体組織貼付フィルムと、生体組織貼付フィルムを備える転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、疎水性生体適合材料からなるフィルム中に(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーを40質量%以上含む、生体組織貼付フィルムである。
【0010】
上述の生体組織貼付フィルムにおいて、単位面積当たりの質量が0.1g/m2以上10g/m2以下であることが好ましい。
【0011】
また、上述の生体組織貼付フィルムにおいて、生体組織貼付フィルム中の(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの含有量が50質量%以下でのあることが好ましい。
【0012】
また、上述した生体組織貼付フィルムにおいて、生体適合材料が、ポリ乳酸L体、ポリ乳酸DL体、グリコール酸/L-乳酸共重合体、グリコール酸/DL-乳酸共重合体のいずれかであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様は、上述した生体組織貼付フィルムの片面に、生体組織貼付フィルムを支持する支持基材を備える、転写シートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被着体の表面形状への高い密着性を有する生体組織貼付フィルム及びこれを備えた転写シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の生体組織貼付フィルムの断面図である。
【
図6】生体組織貼付フィルムの製造方法を示す図である。
【
図7】実施例及び比較例に係る生体組織貼付フィルムの人工皮革密着度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0017】
(実施形態)
以下、
図1及び
図2を参照して、生体組織貼付フィルムと、転写シートの構成を説明する。生体組織貼付フィルムが貼り付けられる対象である被着体は、生体組織であり、例えば、皮膚や臓器である。生体組織貼付フィルムは、特に、皮膚への貼り付けに用いることが好適である。
【0018】
また、生体組織貼付フィルムは、美容用途に用いられてもよいし、医療用途に用いられてもよい。美容用途に用いられる場合、生体組織貼付フィルムは、スキンケアやメイクアップを補助するために、皮膚に貼り付けられる。医療用途に用いられる場合、生体組織貼付フィルムは、創傷の保護や薬剤の塗布領域を保護するために、皮膚や臓器に貼り付けられる。
【0019】
[生体組織貼付フィルム]
図1に示した、生体組織貼付フィルム10は、疎水性生体適合材料と(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーとを含有する材料からなる。
【0020】
(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーは、耐水性のある皮膜形成剤を形成するため、サンケアやカラーコスメで耐水性向上剤として一般的に使用される。融点32~36℃であり、肌上で軟化し、塗擦で延び、皮膚上に皮膜を形成する。(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーは、人の体温付近で軟化するために、被着体に貼り付けた差異の生体組織貼付フィルム10の被着体への追従性が良好となる。
【0021】
生体組織貼付フィルム10の単位面積当たりの質量は0.1[g/m2]以上10[g/m2]以下の範囲内である。
【0022】
なお、単位面積当たりの質量は、平面視にて1[m2]の面積を有する部分当たりに換算した、生体組織貼付フィルム10の質量である。単位面積当たりの質量は、例えば、複数の測定領域で測定された質量の平均値から換算すること、又は、生体組織貼付フィルム10の厚さの平均値に密度を乗算することによって求められる。
【0023】
疎水性生体適合材料は、ポリ乳酸L体、ポリ乳酸DL体、グリコール酸/L-乳酸共重合体、グリコール酸/DL-乳酸共重合体のいずれかである。
【0024】
生体組織貼付フィルム10の全体の質量に対する(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの質量の割合は、40質量%以上であればよく、40質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0025】
生体組織貼付フィルム10の全体の質量に対する(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマー質量の割合を、40質量%以上とすることで、皮膚への十分な密着性を得ることが可能となる。なお、生体組織貼付フィルム10の全体の質量に対する(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの割合を、40質量%未満とすると、皮膚への密着性を得る効果が弱い。(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの割合が50質量%を超えると膜が脆弱になりやすく、肌への貼り付けが困難になる場合があるため50質量%以下が好ましい。
【0026】
[転写シート]
転写シート20は、
図2に示すように、生体組織貼付フィルム10と、支持基材21を備えている。転写シート20は、生体組織貼付フィルム10を被着体に貼り付ける場合に用いられるシートである。
【0027】
支持基材21は、生体組織貼付フィルム10に積層されており、生体組織貼付フィルム10を支持する基材である。
【0028】
また、支持基材21は、生体組織貼付フィルム10の保管時や生体組織貼付フィルム10の使用に際して、被着体まで生体組織貼付フィルム10を移動させるときに、生体組織貼付フィルム10の変形を抑制する機能を有する。したがって、支持基材21に支持されていることにより、生体組織貼付フィルム10が取り扱いやすくなる。
【0029】
支持基材21は、多孔質基材であることが好ましい。多孔質基材は、内部に微小な多数の間隙を有する基材であり、液体を浸透又は透過させることが可能である。
【0030】
支持基材21として用いることが可能な多孔質基材としては、例えば、不織布、紙、編物、織物等の繊維材料を用いて形成したシートや、メッシュ状のように間隙を含む構造を有する樹脂シートが挙げられるが、特に、不織布が好適に用いられる。
【0031】
不織布を構成する繊維は、例えば、綿、麻、羊毛、パルプ等の天然繊維、レーヨン等の半合成繊維、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の合成繊維等である。また、不織布を構成する繊維のなかでも、天然繊維、特に、パルプが好適に用いられる。不織布は、1種類の繊維から構成されていてもよいし、2種類以上の繊維から構成されていてもよい。
【0032】
なお、支持基材21は、多孔質基材に限らず、内部に間隙を有さない樹脂シートや金属箔等の基材であってもよい。また、支持基材21として、シリコーンやフッ素樹脂を用いて形成された表面を有する樹脂シートのように、離型性を有する基材が用いられてもよい。
【0033】
[生体組織貼付フィルムの製造方法]
以下、生体組織貼付フィルム10の製造方法を説明する。
【0034】
まず、疎水高分子材料及び(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーを溶解させたインクを、
図6に示すように、離型性の基材である成膜用基材30に塗布して乾燥させることで、生体組織貼付フィルム10を形成する。上記インクは、総固形分量が1質量%以上10質量%以下であり、総固形分中の疎水性生体適合材料に対する(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーの割合が40質量%以上である。
【0035】
なお、インクを塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いた公知の方法を用いることが可能である。これらの塗工によるウエット塗布量は1.0g/m2から10.0g/m2の範囲であり、また乾燥温度は60℃から100℃である。
【0036】
[転写シートの製造方法]
以下、転写シート20の製造方法を説明する。
【0037】
成膜用基材から生体組織貼付フィルム10を剥離させる前、又は、成膜用基材から生体組織貼付フィルム10を剥離させた後に、生体組織貼付フィルム10に支持基材21を積層することで、転写シート20を形成する。
【0038】
例えば、成膜用基材の上に生体組織貼付フィルム10を配置し、さらに、生体組織貼付フィルム10の上面に支持基材21を接触させ、成膜用基材から支持基材21へ生体組織貼付フィルム10を転写することにより、転写シート20を形成する。
【0039】
成膜用基材から支持基材21へ生体組織貼付フィルム10を転写する方法としては、吸引による剥離を利用する方法や犠牲膜を利用する方法等、公知の方法を用いることが可能である。
【0040】
生体組織貼付フィルム10を成膜用基材から剥離させることにより、単独の生体組織貼付フィルム10を得ることが可能である。生体組織貼付フィルム10を成膜用基材から剥離させる方法は、例えば、成膜用基材と生体組織貼付フィルム10との間に剃刀で切り込みを入れてきっかけを作ることにより、成膜用基材から生体組織貼付フィルム10を剥離させる方法を用いることが可能である。
【0041】
生体組織貼付フィルム10及び転写シート20の製造方法は、上述した方法と異なってもよい。
【0042】
[生体組織貼付フィルムの貼付方法]
図3から
図5を参照して、被着体へ生体組織貼付フィルム10を貼り付ける方法、すなわち、転写シート20を用いた生体組織貼付フィルム10の転写方法を説明する。以降の説明では、一例として、美容用途において、被着体としての皮膚に生体組織貼付フィルム10を貼り付ける場合を説明する。
【0043】
図3に示すように、まず、皮膚Sk上に、液状体Lqを塗り付け、液状体Lqが塗り付けられた領域を塗布領域とする。なお、液状体Lqは、水、化粧水、ローション、美容クリーム等液状であれば、特に限定はされない。
【0044】
そして、
図4に示すように、液状体Lqの塗布領域に対し、転写シート20のうち生体組織貼付フィルム10の側を被着体に貼付するように重ね、転写シート20を皮膚Skの上に配置する。
【0045】
なお、転写シート20の構成を、両面に支持基材21が積層されている構成とした場合は、被着体に貼付する面の支持基材21を、予め剥離させておく。
【0046】
続いて、
図5に示すように、生体組織貼付フィルム10から支持基材21を剥離させる。これにより、生体組織貼付フィルム10が皮膚Skに転写される。そして、生体組織貼付フィルム10は、液状体Lqと共に皮膚Skの表面形状に追従していき、皮膚Skと密着する。なお、時間の経過とともに、液状体Lqが皮膚Skに吸収されることによって、生体組織貼付フィルム10と皮膚Skの表面との間に位置する液状体Lqの体積が減少する。その結果、生体組織貼付フィルム10と皮膚Skとの密着性が高まると考えられる。
【実施例0047】
生体組織貼付フィルム10及び転写シート20について、具体的な実施例及び比較例を用いて説明する。以下、実施例と比較例の作製方法を詳細に説明する。生体組織貼付フィルム10の製造方法を
図6に示す。
【0048】
(実施例1)
ポリ乳酸DL体 重量分子量11万(武蔵野化学製)に対して(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーが40質量%になるよう酢酸ブチル溶液を作製した。上記酢酸ブチル溶液の総固形分は10質量%である。成膜用基材30として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FOS#50)を用い、上記酢酸ブチル溶液をバーコート法を利用して成膜用基材30に塗布することにより、塗膜を形成した。そして、成膜用基材30に形成した塗膜を温度が90[℃]の環境にて2分間乾燥させることによって、塗布量が約0.6[g/m2]の生体組織貼付フィルム10を形成した。
【0049】
続いて、成膜用基材30の上に配置した生体組織貼付フィルム10の表面、すなわち、複合層の表面に、支持基材21としてポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材30から生体組織貼付フィルム10と支持基材21との積層体を剥離させた。これにより、実施例1の転写シート20を作製した。
【0050】
(実施例2)
ポリ乳酸DL体 重量分子量11万(武蔵野化学製)に対して(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーが50質量%になるよう酢酸ブチル溶液を作製した。上記酢酸ブチル溶液の総固形分は10質量%である。成膜用基材30として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FOS#50)を用い、上記酢酸ブチル溶液をバーコート法を利用して成膜用基材30に塗布することにより、塗膜を形成した。そして、成膜用基材30に形成した塗膜を温度が90[℃]の環境にて2分間乾燥させることによって、塗布量が約0.6[g/m2]の生体組織貼付フィルム10を形成した。
【0051】
続いて、成膜用基材30の上に配置した生体組織貼付フィルム10の表面、すなわち、複合層の表面に、支持基材21としてポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材30から生体組織貼付フィルム10と支持基材21との積層体を剥離させた。これにより、実施例2の転写シート20を作製した。
【0052】
(比較例1)
ポリ乳酸DL体 重量分子量11万(武蔵野化学製)の酢酸ブチル溶液を作製した。上記酢酸ブチル溶液の総固形分は10質量%である。成膜用基材30として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FOS#50)を用い、上記酢酸ブチル溶液をバーコート法を利用して成膜用基材30に塗布することにより、塗膜を形成した。そして、成膜用基材30に形成した塗膜を温度が90[℃]の環境にて2分間乾燥させることによって、塗布量が約0.6[g/m2]の生体組織貼付フィルム10を形成した。
【0053】
続いて、成膜用基材30の上に配置した生体組織貼付フィルム10の表面、すなわち、複合層の表面に、支持基材21としてポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材30から生体組織貼付フィルム10と支持基材21との積層体を剥離させた。これにより比較例1の転写シート20を作製した。
【0054】
(比較例2)
ポリ乳酸DL体 重量分子量11万(武蔵野化学製)に対して共重合比率がモル比率で(ビニルピロリドン/エイコセン)コポリマーが30質量%になるよう酢酸ブチル溶液を作製した。上記酢酸ブチル溶液の総固形分は10重量%である。成膜用基材30として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FOS#50)を用い、上記酢酸ブチル溶液をバーコート法を利用して成膜用基材30に塗布することにより、塗膜を形成した。そして、成膜用基材30に形成した塗膜を温度が90[℃]の環境にて2分間乾燥させることによって、塗布量が約0.6[g/m2]の生体組織貼付フィルム10を形成した。
【0055】
続いて、成膜用基材30の上に配置した生体組織貼付フィルム10の表面、すなわち、複合層の表面に、支持基材21としてポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材30から生体組織貼付フィルム10と支持基材21との積層体を剥離させた。これにより、実施例1の転写シート20を作製した。
【0056】
(密着性評価方法)
作製した転写シート20を10[mmφ]の大きさに切り出した後、人工皮革(株式会社イデアテックスジャパン製:サプラーレ)に25[μL]の蒸留水を滴下した。その後、滴下した蒸留水に生体組織貼付フィルム10がある面を乗せ、支持基材21を剥離させて人工皮革の上に生体組織貼付フィルム10を転移させた。その後、室温の環境にて3時間乾燥させて測定サンプルを作製した。
【0057】
そして、作製した測定サンプルを、小型卓上試験機(島津製作所:EX-SX)に設置し、測定治具である8[mmφ]の圧縮治具に6[mmφ]に切り出した両面テープ(NW-P15)を貼り付けた後、小型卓上試験機に設置した測定治具を20[mm/min]の速度で加重が3[N]になるまで圧縮した。その後、10秒間停止させ、さらに、10[mm/min]の速度で上昇させ、上昇時における両面テープの粘着によって測定サンプルが人工皮革から剥離する際の抵抗を測定した。3回測定した値の平均を人工皮革密着度(mN)として取得した。人工皮革密着度が100mNを以上の場合、十分な密着性ありとして〇とし、人工皮革密着度が100mNを下回った場合、密着性が不十分として×とした。
【0058】
(評価結果)
上述した評価方法による評価結果を、表1、
図7に示す。比較例2では人工皮革へ貼付する際に破れが生じ密着力を測定することができなかった。
【0059】
表1に示すように、実施例1~実施例2はいずれも、十分な密着性が有り、比較例1~比較例2は、破断により測定不可能か、十分な密着性が無いという結果が得られた。
【0060】
得られた結果から、本発明の生体組織貼付フィルム10及び転写シート20であれば、被着体の表面形状への密着性を高めることが可能となることが確認された。
【0061】