(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075882
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20230524BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B25J19/06
G05B19/4155 T
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005352
(22)【出願日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】110143284
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】514179436
【氏名又は名称】正▲わい▼精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林栢廷
(72)【発明者】
【氏名】林士偉
(72)【発明者】
【氏名】黎昆政
(72)【発明者】
【氏名】楊長運
(72)【発明者】
【氏名】呉佩芬
(72)【発明者】
【氏名】藍順謙
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB14
3C269CC09
3C269EF02
3C269EF28
3C269MN09
3C269MN16
3C269MN17
3C269MN27
3C269MN41
3C269QB17
3C707AS01
3C707BS14
3C707CX03
3C707DS01
3C707ES01
3C707HS27
3C707LS15
3C707LT06
3C707MS09
(57)【要約】
【課題】多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法は、特に障害物回避方法を指し、データベースの作成工程と、障害物回避姿勢を探す工程と、パラメータ設定工程と、最適な障害物回避姿勢を探す工程と、を含む。本発明は予め作成したデータベースにより、ロボットアームがタスクを実行する際に衝突が発生するかどうか評価し、衝突が発生すると評価した場合、障害物回避動作を実行して障害物を回避する。パラメータの設定により、障害物回避姿勢を最適な方式で実行し、全体的な効率を高めている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に障害物回避方法を指す多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法であって、
多軸ロボットアームの作業姿勢及び制御変量等のデータを含むデータベースの作成工程Aと、
工程Aの前記データベースに基づいて実行可能な複数の障害物回避姿勢を算出し、この工程の後に工程Dを実行する障害物回避姿勢を探す工程Bと、
各軸制御ロボットアームの動作の関連パラメータを設定し、この工程の後に工程Bと共に工程Dを実行するパラメータ設定工程Cと、
工程Bで算出した複数の前記障害物回避路線に基づいて、且つ前記パラメータ設定中の各軸制御ロボットアームの動作のパラメータにより、前記最適な障害物回避姿勢を算出する最適な障害物回避姿勢を探す工程Dと、を含むことを特徴とする多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項2】
各作業範囲内でのロボットアームの異なる前記作業姿勢をサンプリング点として標記し、各サンプリング点が全て各自の評価座標を有し、複数の評価座標により、評価座標とロボットアームの前記作業姿勢との相対関係を構築することを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項3】
工程Aにおいて、前記制御変量は制御器により直接設定するか、または既知の前記作業姿勢から、逆運動学に基づいて各軸がそれぞれ対応する制御変量を算出することを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項4】
工程Cのパラメータ設定において、ロボットアームの各軸モーターの回転速度、減速機の減速比、速度%、及び加減速の時間等のパラメータ設定を含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項5】
前記最適な障害物回避姿勢は動作時間が最少となる障害物回避姿勢であることを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートメーション機器の分野に関し、より詳しくは、多軸ロボットアームを使用して多種類の障害物を回避する方法において、最適な方法を選択する障害物回避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートメーション技術の発展により、各業界でロボットアームにより工場の生産効率を向上する割合が増加している。但し、ロボットアームの動作中に、突発的な状況や他の要因により、ロボットアームの作業範囲内に人や他の障害物が存在する場合、衝突して人を怪我させること、またロボットアームや他の物品が衝突により損壊するのを回避するため、接触式及び非接触式の衝突防止技術がある。
【0003】
接触式では、抵抗力及びモーターの動作電流を利用して制限する。ロボットアームが抵抗を受けて動作電流が制限を超えた場合、ロボットアームの動作を停止する。或いは、ロボットアームに圧力センサーを設置し、ロボットアームが障害物に衝突した場合、圧力センサーが信号を発し、ロボットアームの動作を停止する。
【0004】
非接触式では、従来の特許文献では、例えば、下記特許文献1の「ロボットアーム障害物回避方法とロボットアーム障害物回避システム」という記載がある。前記発明は予め作成したデータベースにより、ロボットアームがタスクを実行する際に、衝突が発生するかどうか評価し、衝突が発生すると評価した場合、前記障害物回避姿勢を探す工程を実行して障害物を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許出願公開第110131915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接触式では障害物にぶつかった後に動作を停止するが、停止する前に作業員が怪我してしまう、またロボットアームや製品が損傷してしまう場合がある。非接触式では、障害物の回避において、障害物を回避可能な多くの路線があるため、選択した路線が最適解ではなく、時間を浪費し、理想的ではない方式を実行することがあった。
【0007】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触式でロボットアームの障害物回避効率を高め、または理想な方式で動作を実行する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法は、特に障害物回避方法を指し、
多軸ロボットアームの作業姿勢及び制御変量等のデータを含むデータベースの作成工程Aと、
工程Aの前記データベースに基づいて実行可能な複数の障害物回避姿勢を算出し、この工程の後に工程Dを実行する障害物回避姿勢を探す工程Bと、
各軸制御ロボットアームの動作の関連パラメータを設定し、この工程の後に工程Bと共に工程Dを実行するパラメータ設定工程Cと、
工程Bで算出した複数の前記障害物回避路線に基づいて、且つ前記パラメータ設定中の各軸制御ロボットアームの動作のパラメータにより、前記最適な障害物回避姿勢を算出する最適な障害物回避姿勢を探す工程Dと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、次のような効果がある。
ロボットアームに採用する姿勢を予めデータベースに保存し、ロボットアームの動作時に運動中に衝突が発生するかどうか高速に評価し、衝突が発生すると評価した場合、各障害物の回避姿勢を判断し、且つ最適な障害物回避姿勢により最も理想的な方式で障害物を回避する。
【0011】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法を示したフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る8軸ロボットアームが移動経路に沿って移動し、障害物に遭遇する概略図である。
【
図3】本発明の障害物回避システムが障害物を回避する経路ように8軸ロボットアームを計算する概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る8軸ロボットアームが障害物を回避するように制御伸縮シャフトを制御することを選択する概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る8軸ロボットアームが障害物を回避するように他の回転軸を制御することを選択する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法について具体的に説明する。
【0014】
本発明に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法は自由度が高い多軸ロボットアーム、及び多軸ロボットアームに電気的に接続されているホストコンピューターに適用する。本実施例では、ロボットアームはベースに固定され、ロボットアームは複数の関節及び異なる関節にそれぞれ連結されている複数の接続アームを備えている。ホストコンピューターは互いに電気的に接続されているデータベース(database)、演算制御モジュール、信号受信モジュール等の部材を含み、前記演算制御モジュールはプロセッサ(processor)を備え、前記受信モジュールは受信機(receiver)及び発信機(emitter)を備えている。実際の応用では、ホストコンピューターはロボットアーム制御器(Robot Controller)、サーバー(sever)、デスクトップパソコン(desk computer)、またはノートバソコン(laptop)等でもよい。ホストコンピューター及びロボットアームの電気的接続方式は、信号受信モジュールによる信号ワイヤレス伝送方式に限らず、信号有線伝送方式でもよい。
【0015】
本発明に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法は下記工程S101~工程S104を少なくとも含む。
【0016】
<データベースの作成工程S10(
図1参照)>
ロボットアームモデルを過酷な条件でモデル化し、ロボットアームと障害物との間に十分な緩衝空間を有するようにする。ロボットアームは各作業範囲内に各種の作業姿勢を有し、これらをサンプリング点として標記する。各サンプリング点には各自の評価座標を有し、複数の評価座標により評価座標とロボットアームの作業姿勢との相対関係を構築する。移動経路上でのロボットアームの作業姿勢の制御変量を取得し、この制御変量は制御器により直接設定するか、既知の作業姿勢から、逆運動学に基づいて各軸がそれぞれ対応する制御変量を算出する。ロボットアームの作業範囲内の空間の座標を部分的に前記ロボットアームが占領するかどうか判断し、占領されると判断した場合は障害物に接触することを示し、反対であれば、障害物に接触しないことを示す。以上のデータを予め作成し、後続の障害物の回避に使用する。
【0017】
<障害物回避姿勢を探す工程S102(
図1参照)>
下記方程式に基づく。
Min(X
i
new-X
i)
2s.t.O(X
i
new)≦O
T...(1)
障害物回避姿勢を取得し、X
i
newは障害物回避姿勢が対応する制御変量であり、制御変量X
iは、例えば、各関節が各モーターにより制御される改変量でもよく、O
Tは障害物に接触するかどうかを評価するための閾値でもよい。O
T値が小さいほど、ロボットアームと障害物との間の距離が離れており、ロボットアームが障害物に接触する確率が低くなる。最小制御変量X
iの改変量及び閾値O
Tの大きさにより、ロボットアームが障害物を回避する姿勢を推定する。
【0018】
<パラメータ設定工程S10(
図1を参照)>
各軸制御ロボットアームの動作のパラメータを順番に設定する。設定するパラメータは、例えば、各軸モーターの回転速度、減速機の減速比、速度%、加減速の時間等であり、これらのパラメータ設定により、各軸の動作に必要な時間を取得する。
【0019】
<最適な障害物回避姿勢を探す工程S104(
図1を参照)>
前述の障害物回避姿勢に基づいて、複数の実行可能な障害物回避路線を取得し、パラメータ設定により各軸の運転速度を取得し、各障害物回避路線の動作に必要な時間を割り出し、最短時間の障害物回避路線を最適な障害物回避姿勢とする。
【0020】
一例を挙げると、八軸ロボットアームが特定の経路に沿ってタスクを実行し、例えば、2点でピックアンドプレース作業を行う際に、経路の途中で突然障害物aが侵入した場合(
図2参照)、障害物回避システムを起動し、幾つかの実行可能な障害物回避路線を計算し(
図3参照)、パラメータ設定により伸縮軸の動作時に、タスク実行にかかる時間が他の軸より長いことが分かったら(
図4を参照)、伸縮軸を固定することを選択し、他の軸は角度変化が最小の経路を選択し(
図5を参照)、ロボットアームが最適な障害物回避経路で障害物の回避タスクを完遂するようにする。
【0021】
本発明はロボットアームをタスク実行中に、障害物に接触してタスクが中断することがなくなるのみならず、パラメータの設定により、障害物回避経路及び姿勢がより最適化され、タスクを高速に達成可能になる。
【0022】
以上を総合すると、本発明に係る多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法は、本発明の目的を確実に達成する。
【0023】
本発明が掲示する技術内容は上述の実施例に限られず、本発明が掲示する発明の概念及び原則と同じであるものは全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。ちなみに、部材の定義は、例えば、「第一」及び「第二」は限定するための用語ではなく、区別するための用語である。本願に用いる「含む」または「備える」は、「包括する」及び「有する」という概念を含み、部材、操作工程及び/または組或いは上述の組み合せを示すものであり、排除または増加を示すものではない。また、特に説明がない限り、操作工程の順序は絶対的な順序ではない。なお、特に説明のない限り、単数形式で部材に言及していても(例えば、冠詞の「一」または「1つ」を使用する)、「1つ且つ1つのみ」を意味するものではなく、「1つまたは複数」を意味するものである。本願に使用する「及び/または」とは、「及び」或いは「または」、及び「及び」並びに「または」を意味する。本願に使用する範囲に関連した用語は全ての範囲及び/または限定した範囲を含み、例えば、「少なくとも」、 「超」、「未満」、「超ではない」等は、範囲の上限または下限を示す。
【0024】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
S101 データベースの作成
S102 障害物回避姿勢を探す
S103 パラメータ設定
S104 最適な障害物回避姿勢を探す
a 障害物
b 障害物回避経路b
c 障害物回避経路c
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に障害物回避方法を指す多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法であって、
多軸ロボットアームの作業姿勢及び制御変量等のデータを含むデータベースの作成工程Aと、
工程Aの前記データベースに基づいて実行可能な複数の障害物回避姿勢を算出し、この工程の後に工程Dを実行する障害物回避姿勢を探す工程Bと、
各軸制御ロボットアームの動作の関連パラメータを設定し、この工程の後に工程Bと共に工程Dを実行するパラメータ設定工程Cと、
工程Bで算出した複数の前記障害物回避姿勢に基づいて、且つ前記パラメータ設定中の各軸制御ロボットアームの動作のパラメータにより、前記最適な障害物回避姿勢を算出する最適な障害物回避姿勢を探す工程Dと、を含むことを特徴とする多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項2】
各作業範囲内でのロボットアームの異なる前記作業姿勢をサンプリング点として標記し、各サンプリング点が全て各自の評価座標を有し、複数の評価座標により、評価座標とロボットアームの前記作業姿勢との相対関係を構築することを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項3】
工程Aにおいて、前記制御変量は制御器により直接設定するか、または既知の前記作業姿勢から、逆運動学に基づいて各軸がそれぞれ対応する制御変量を算出することを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項4】
工程Cのパラメータ設定において、ロボットアームの各軸モーターの回転速度、減速機の減速比、速度%、及び加減速の時間等のパラメータ設定を含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。
【請求項5】
前記最適な障害物回避姿勢は動作時間が最少となる障害物回避姿勢であることを特徴とする請求項1に記載の多軸ロボットアームのスマート障害物回避方法。