(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007594
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】金属空気電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 12/08 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H01M12/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110540
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505456104
【氏名又は名称】チュラーロンコーン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木薮 敏康
(72)【発明者】
【氏名】野口 良典
(72)【発明者】
【氏名】キアウホーム、スラテープ
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA01
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS11
5H032BB08
5H032CC01
5H032CC11
5H032CC21
5H032CC28
(57)【要約】
【課題】電力の貯蔵が可能で効率的に充放電を行うことのできる金属空気電池システムを提供する。
【解決手段】金属空気電池システムは、チャンバと、チャンバに収容された電極装置とを有するセルを備え、電極装置は、第1電極と、第1電極の径方向外側で第1電極を囲むように設けられた筒形状の第2電極と、第2電極の径方向外側で第2電極を囲むように設けられた筒形状の第3電極とを備え、少なくとも第1電極の外周面と第3電極の内周面との間を電解液が流通するように構成され、第1電極と第2電極と第3電極との組み合わせは、金属を含む負極と充電用正極と放電用正極との組み合わせである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバに収容された電極装置と
を有するセルを備える金属空気電池システムであって、
前記電極装置は、
第1電極と、
前記第1電極の径方向外側で前記第1電極を囲むように設けられた筒形状の第2電極と、
前記第2電極の径方向外側で前記第2電極を囲むように設けられた筒形状の第3電極と
を備え、少なくとも前記第1電極の外周面と前記第3電極の内周面との間を電解液が流通するように構成され、
前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極との組み合わせは、金属を含む負極と充電用正極と放電用正極との組み合わせである金属空気電池システム。
【請求項2】
前記負極が前記充電用正極又は前記放電用正極のいずれか一方に電気的に接続するように切り替える切替装置をさらに備え、
前記切替装置は、
前記放電用正極及び前記負極間を電気的に開閉する第1スイッチと、
前記負極及び前記充電用正極間を電気的に開閉する第2スイッチと
を備える、請求項1に記載の金属空気電池システム。
【請求項3】
前記負極が前記充電用正極又は前記放電用正極のいずれか一方に電気的に接続するように切り替える切替装置をさらに備え、
前記切替装置は、前記放電用正極から前記負極への方向に電流を流す第1ダイオードを備える、請求項1に記載の金属空気電池システム。
【請求項4】
前記切替装置は、前記負極から前記充電用正極への方向に電流を流す第2ダイオードをさらに備える、請求項3に記載の金属空気電池システム。
【請求項5】
前記電極装置は、軸線方向に延びる形状を有するとともに前記軸線方向の一方の端部である第1端部及び前記軸線方向の他方の端部である第2端部を含み、
前記チャンバは、
前記電極装置の前記第1端部側において少なくとも前記第3電極の一方の端部を内部に収容するように設けられた第1チャンバ部と、
前記電極装置の前記第2端部側において少なくとも前記第3電極の他方の端部を内部に収容するように設けられた第2チャンバ部と
を備え、
前記第1チャンバ部は、前記軸線方向において互いに対して離れた位置にある第1端面及び第2端面を含み、前記第1端面及び前記第2端面にはそれぞれ、第1開口及び第2開口が形成され、
前記第2チャンバ部は、前記軸線方向において互いに対して離れた位置にある第3端面及び第4端面を含み、前記第3端面及び前記第4端面にはそれぞれ、第3開口及び第4開口が形成され、
前記第2開口及び前記第4開口にはそれぞれ、前記電極装置を構成する前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極とが挿入され、前記第1チャンバ部及び前記第2チャンバ部のそれぞれの内周面と前記第3電極の外周面との間には、これらの間をシールするシール部材が設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属空気電池システム。
【請求項6】
前記第3電極は前記放電用正極である、請求項5に記載の金属空気電池システム。
【請求項7】
前記第1電極は筒形状を有する前記放電用正極であり、
前記第1チャンバ部及び前記第2チャンバ部のそれぞれの内部には、前記チャンバ内における前記電解液の流れを、前記放電用正極の内部を流れる第1流れと、前記放電用正極の外部を流れる第2流れとに隔離する隔離部材が設けられ、
前記金属空気電池システムは、前記第1流れの電解液に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置をさらに備える、請求項5に記載の金属空気電池システム。
【請求項8】
前記第1電極は筒形状を有する前記放電用正極であり、
前記電極装置のうち前記放電用正極のみが前記第1開口及び前記第3開口に挿入され、
前記放電用正極の内部に酸素を含む流体を流通させる酸素含有流体供給装置が設けられている、請求項5に記載の金属空気電池システム。
【請求項9】
前記第2電極は前記充電用正極であり、前記第3電極は前記負極である、請求項7または8に記載の金属空気電池システム。
【請求項10】
前記第2電極は前記負極であり、前記第3電極は前記充電用正極である、請求項7または8に記載の金属空気電池システム。
【請求項11】
前記第2電極は前記放電用正極であり、
前記第1チャンバ部及び前記第2チャンバ部のそれぞれの内部には、前記チャンバ内における前記電解液の流れを、前記充電用正極と前記放電用正極との間を流れる第1流れと、前記放電用正極と前記負極との間を流れる第2流れとに隔離する隔離部材が設けられ、
前記金属空気電池システムは、前記第1流れの電解液に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置をさらに備える、請求項5に記載の金属空気電池システム。
【請求項12】
前記第1電極は前記充電用正極であり、前記第3電極は前記負極である、請求項11に記載の金属空気電池システム。
【請求項13】
前記第1電極は前記負極であり、前記第3電極は充電用正極である、請求項11に記載の金属空気電池システム。
【請求項14】
前記放電用正極は、前記負極に対向する面に隔膜を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の金属空気電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属空気電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属を負極活物質として使用するとともに酸素(空気)を正極活物質として使用する金属空気電池システムが公知である。特許文献1には、電解液中に浸漬された円筒形状の燃料極、補助極及び空気極が同心円状に配置された円筒型の3電極式の金属空気電池システムが記載されている。この金属空気電池システムは、燃料極と補助極とを使用して充電を行うとともに燃料極と空気極とを使用して放電を行う二次電池としての使用と、保持構造を有した補助極に亜鉛ペレットを投入して、補助極と空気極とを使用して発電を行う燃料電池としての使用とが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属空気電池システムにおいて電力の貯蔵が必要な場合には、電解液をタンクに貯蔵し、ポンプで電解液を循環供給することが行われている。しかしながら、特許文献1の金属空気電池システムでは、電解液は循環供給されるように構成されておらず、仮に電解液が循環供給されるように構成すると、補助極に投入した亜鉛ペレットが電解液に同伴して流れ去ってしまうおそれがあるので、特許文献1の金属空気電池システムに対して電解液が循環供給されるように変更することは想定されておらず、また、このような変更は簡単にできるものではない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、電力の貯蔵が可能で効率的に充放電を行うことのできる金属空気電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る金属空気電池システムは、チャンバと、前記チャンバに収容された電極装置とを有するセルを備える金属空気電池システムであって、前記電極装置は、第1電極と、前記第1電極の径方向外側で前記第1電極を囲むように設けられた筒形状の第2電極と、前記第2電極の径方向外側で前記第2電極を囲むように設けられた筒形状の第3電極とを備え、少なくとも前記第1電極の外周面と前記第3電極の内周面との間を電解液が流通するように構成され、前記第1電極と前記第2電極と前記第3電極との組み合わせは、金属を含む負極と充電用正極と放電用正極との組み合わせである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の金属空気電池システムによれば、断面が同心状になるように電極を配置することで、内側と外側の電極面積差が得られることから、外側に配置した電極の運用時の電流密度を中央の電極に比べて低減することが可能となる。この効果を利用し抵抗損失の低減が必要な電極を外側に配置することでシステムとしての抵抗を低減できるので、効率的に充放電を行うことができ、また、電解液をセルに循環供給するので、電力の貯蔵が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの構成模式図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの変形例の構成模式図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図4】本開示の実施形態2に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図5】本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図6】本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの変形例の3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図7】本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの別の変形例の一部の構成模式図である。
【
図8】本開示の実施形態4に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図9】本開示の実施形態4に係る金属空気電池システムの変形例の3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図10】本開示の実施形態5に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【
図11】本開示の実施形態6に係る金属空気電池システムの3電極式セルの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態による金属空気電池システムについて、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(実施形態1)
<本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの構成>
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る金属空気電池システム1は、円筒型の3電極式のセル2を備えている。セル2の内部に電解液を流通させるために、電解液の循環ライン3の両端がセル2に接続されており、循環ライン3には、電解液を貯留する電解液タンク4と、ポンプ5とが設けられている。
【0011】
電解液としては、水に電解質を溶解させた水系電解液、又は、有機溶媒等の非水溶液に電解質を溶解させた非水電解質のいずれも使用可能である。水系電解液としては例えば、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、塩化物、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩等を電解質とした水溶液を使用することができる。すなわち、水溶液の電気伝導率を付与するための指示塩であれば、電解質として使用することができる。非水電解液としては例えば、環状又は鎖状カーボネート、環状又は鎖状エステル、環状又は鎖状エーテル、スルホン化合物、イオン液体等の液体に、アルカリ金属等からなる指示塩を溶解させたものを使用することができる。
【0012】
セル2は、第1電極11と、第1電極11の径方向外側で第1電極11を囲むように設けられた筒形状の第2電極12と、第2電極の径方向外側で第2電極12を囲むように設けられた筒形状の第3電極13とを含み軸線方向に延びる形状を有する電極装置10を備えている。ここで、「囲む」とは、第1電極11及び第2電極12のそれぞれの長さ方向における少なくとも一部分を第2電極12及び第3電極13のそれぞれが内部に収容する構成を意味する。すなわち、第1電極11と第2電極12と第3電極13とは、それらの軸方向に垂直な断面が同心状(これらの電極が円筒形であれば同心円状)になるように設けられている。実施形態1では、第1電極11は負極11aであり、第2電極12は、金属空気電池システム1の充電中に負極11aと共に使用される充電用正極12aであり、第3電極13は、金属空気電池システム1の放電中に負極11aと共に使用される放電用正極13aである。
【0013】
負極11aは、金属、例えば亜鉛で製造された筒形状の電極であってもよいし、ステンレスやアルミニウム等の他の金属で製造された筒形状の本体の表面に亜鉛をメッキした電極であってもよい。後者の場合、負極11aの表面のうち、少なくとも充電用正極12aに対向する外表面に亜鉛がメッキされていればよい。尚、負極11aに含まれる金属として亜鉛に限定するものではない。電解液の種類(例えば、水系電解液/非水系電解液の違い)に応じて、鉄、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、銅、マグネシウム等又はこれらの合金を使用することができる。充電用正極12aは、非酸化性の多孔質金属材料、例えばニッケル又はニッケル合金又はステンレスでメッシュ状に製造された筒形状を有する電極を使用することができる。
【0014】
放電用正極13aは例えば、酸素が拡散可能な多孔質性の最外層と、ニッケル等の金属で形成された多孔質性の中間層と、炭素等の導電材に酸素還元触媒が担持された最内層とを含む3層構造を有した電極を使用することができる。酸素還元触媒としては、酸性液環境下では主に白金を活性成分とする触媒(例えば、白金担持カーボン)を使用することができる。また、アルカリ液環境下では、鉄、マンガン、ニッケル、コバルトのような3d遷移金属又はその酸化物を活性成分とする触媒を使用することができる。その他には、酸性液環境下及びアルカリ液環境下のいずれにおいても、ルテニウム、銀、金、イリジウムを活性成分とする触媒も使用可能である。さらに、有機金属錯体や、炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ)、窒素炭化物等を活性成分とする触媒も使用可能である。また、この構成によれば、負極11aに対して充電用正極12a及び放電用正極13aの電極面積が大きくできることから、充放電時の電流密度を負極11aよりも低減できる。これにより、充電用正極12a及び放電用正極13aの抵抗による損失を相対的に低減できる効果が期待できる。
【0015】
金属空気電池システム1はさらに、切替装置7を備えることができる。負極11aは、交流直流変換器6に電気的に接続され、充電用正極12a及び放電用正極13aは、いずれか一方が交流直流変換器6に通電するように、すなわち、負極11aが充電用正極12a又は放電用正極13aのいずれか一方に電気的に接続するように切り替え可能な切替装置7を介して交流直流変換器6に接続されている。交流直流変換器6は、負荷8及び交流電源9のそれぞれに電気的に接続することができる。尚、交流電源9の代わりに直流電源を使用するとともに負荷8が直流電流で稼働するものである場合には、交流直流変換器6は必要ない。
【0016】
切替装置7の構成は特に限定しないが、例えば、放電用正極13a及び負極11a間を電気的に開閉する第1スイッチ7cと、負極11a及び充電用正極12a間を電気的に開閉する第2スイッチ7dとから構成されてもよい(以下、「スイッチ式の切替装置7」という)。第1スイッチ7c及び第2スイッチ7dはメカニカルスイッチに限定されず、半導体スイッチであってもよい。また、
図2に示されるように、切替装置7は、放電用正極13aから負極11aへの方向に電流を流す第1ダイオード7aと、負極11aから充電用正極12aへの方向に電流を流す第2ダイオード7bとから構成されてもよい(以下、「ダイオード式の切替装置7」という)。ダイオード式の切替装置7は、メカニカルスイッチから構成されるスイッチ式の切替装置7に比べて耐久性及びコスト面で優れており、半導体スイッチから構成されるスイッチ式の切替装置7に比べてコスト面で優れている。尚、充電用正極12aが電解液に浸されている状態では充電用正極12では放電反応は生じないため、ダイオード7bを設けなくてもよい(切替装置7はダイオード7aのみから構成される)。また、充電中における放電用正極13aでの反応を考慮する必要がない場合は、ダイオード7aも設けなくてもよい(すなわち、切替装置7が設けられていない構成)。
【0017】
図3に示されるように、セル2は、電極装置10を収容するチャンバ20を備えている。チャンバ20は、電極装置10の一方の端部である第1端部10a側において少なくとも第3電極13の一方の端部13d1を内部に収容するように設けられた第1チャンバ部21と、電極装置10の他方の端部である第2端部10b側において少なくとも第3電極13の他方の端部13d2を内部に収容するように設けられた第2チャンバ部22とを備えている。
【0018】
第1チャンバ部21は、セル2の軸線方向において互いに対して離れた位置にある第1端面21a及び第2端面21bを含み、第1端面21a及び第2端面21bのそれぞれには、第1開口23a及び第2開口23bが形成されている。第2チャンバ部22は、セル2の軸線方向において互いに対して離れた位置にある第3端面22a及び第4端面22bを含み、第3端面22a及び第4端面22bのそれぞれには、第3開口24a及び第4開口24bが形成されている。
【0019】
第2開口23b及び第4開口24bにはそれぞれ、第1電極11と第2電極12と第3電極13とが挿入され、第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のそれぞれの内周面と第3電極13の外周面との間には、これらの間をシールするシール部材25が設けられている。シール部材25により、第1開口23a及び第3開口24a間においてチャンバ20からの電解液のリークを抑制することができる。シール部材25は、接着剤、熱収縮チューブ、ヒートシール、樹脂溶接等であってもよい。
【0020】
放電用正極13aの内周面、すなわち、負極11aに対向する面には、隔膜26が設けられている。隔膜26としては、陰イオン交換膜や、高分子又は固体酸化物等から形成される微多孔膜等を使用することができる。陰イオン交換膜の構成としては特に限定しないが、イオン伝導率及び強度が高い高性能な膜を使用することが好ましい。また、微多孔膜の構成としても特に限定せず、様々な用途で市販されているものを使用可能である。水系電解液を使用する場合には水溶液系に適した微多孔膜を使用することが好ましいが、表面を親水基で修飾したり、表面に界面活性剤を付与したり、表面を酸化物粒子との複合化する等の親水性処理を表面に施せば、任意の樹脂製の微多孔膜を使用することができる。
【0021】
<本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの動作>
次に、
図1~
図3を参照しながら、金属空気電池システム1の動作を説明する。まず、金属空気電池システム1の放電によって、負荷8に電流が流れる動作について説明する。切替装置7を操作して負極11aが放電用正極13aに電気的に接続するようにした状態でポンプ5を起動し、循環ライン3を介して電解液タンク4から電解液をセル2に供給する。電解液は、セル2を通過した後、循環ライン3を介して電解液タンク4に戻ることで、循環ライン3を循環する。
【0022】
セル2内では、第1開口23aを介して第1チャンバ部21の内部に流入した電解液は、電極装置10の第1端部10aを介して、負極11aの外周面と放電用正極13aの内周面との間に形成される流路、すなわち、負極11aの外周面と充電用正極12aの内周面との間に形成される流路と、充電用正極12aの外周面と放電用正極13aの内周面との間に形成される流路とのそれぞれに流入し、これらの流路を流通する。これらの流路を流通した電解液は、電極装置10の第2端部10bを介して、これらの流路から第2チャンバ部22へ流出し、第3開口24aを介して第2チャンバ部22から流出する。
【0023】
このようにしてセル2内を電解液が流通する間、負極11a及び放電用正極13aにおいて次の反応が生じる。負極11aでは、負極11aに含まれる金属、例えば亜鉛と電解液中の水酸化物イオンとが反応して亜鉛酸イオンが生成するとともに電子が負極11aに放出され、放電用正極13aへ流れる。放電用正極13aでは、セル2の外部の空気に含まれる酸素が最外層及び中間層を拡散し、最内層の酸素還元触媒によって、空気と、電解液中の水と、放電用正極13aへ流れてきた電子との反応により、水酸化物イオンが生成する。生成した水酸化物イオンは、負極11aにおける上記反応に使用される。
【0024】
放電用正極13aの内周面、すなわち放電用正極13aの最内層(導電材に酸素還元触媒が担持された層)に隔膜26である陰イオン交換膜が設けられていると、酸素還元触媒/導電材/イオン伝導体が接触する反応界面(三相界面)で酸素分子が反応して水酸化物イオンが生成する。生成した水酸化物イオンはイオン伝導体を通じて電解液中に移動する。このようにして、酸素還元触媒とイオノマー接触による反応界面が拡張されるとともに抵抗が低減する。また、放電用正極13aの内周面に隔膜26が設けられると、電解液が放電用正極13aを介してセル2の外部に漏れたり、放電用正極13aの中間層及び最外層を閉塞したりすることを抑制でき、さらに、空気中に含まれる二酸化炭素が電解液に混入することを抑制することで、電解液からの炭酸塩の析出や放電用正極13aの中間層及び最外層の閉塞を抑制することができる。従って、放電用正極13aにおける反応の過電圧のロスを低減することができ、電解液の変質、劣化、漏れを抑制することができる。
【0025】
このような動作で電子が負極11aから放電用正極13aへ流れることにより、放電用正極13aから負極11aへ直流電流が流れる。交流直流変換器6がこの直流電流を交流電流に変換し、交流電流を負荷8へ供給する。
【0026】
次に、金属空気電池システム1の充電動作について説明する。切替装置7を操作して負極11aが充電用正極12aに電気的に接続するようにした状態で電解液を循環する。交流電源9からの交流電流が交流直流変換器6で直流電流に変換され、充電用正極12aへ直流電流が流れる。すなわち、電子が負極11aへ流れる。負極11aでは、電解液中の亜鉛イオンが電子を受け取ることで負極11a上に亜鉛が析出し、金属空気電池システム1の充電が行われる。
【0027】
このような充電中に亜鉛が負極11aの表面に均一に析出すれば何も問題は生じないが、実際は、一部が針状に延びるデンドライトが発生し得る。デンドライトが発生してそれが成長していくと、デンドライトが負極11aと充電用正極12aとを接続してしまうことがある。そうすると、内部短絡が発生して電池の電圧が0Vになるので、充電できなくなってしまう。
【0028】
このような内部短絡が発生した場合には、スイッチ式の切替装置7が設けられていれば、第1スイッチ7cを閉じるとともに第2スイッチ7dを開くことによって、負極11aが放電用正極13aに電気的に接続するようにして、充電状態から放電状態に切り替える。負極11aと充電用正極12aとがデンドライトによって内部短絡していても、負極11aと充電用正極12aとは電気的に切り離されるので、負極11aと放電用正極13aとを使用した放電は可能となる。放電中は、負極11aから亜鉛が亜鉛イオンとして電解液中に溶出するので、内部短絡は解消される。
【0029】
このように、断面が同心状になるように負極11aと充電用正極12aと放電用正極13aとを配置することで、内側と外側の電極面積差が得られることから、外側に配置した充電用正極12a及び放電用正極13aの運用時の電流密度を中央の負極11aに比べて低減することが可能となる。この効果を利用し抵抗損失の低減が必要な充電用正極12a及び放電用正極13aを外側に配置することでシステムとしての抵抗を低減できるので、効率的に充放電を行うことができ、また、電解液をセルに循環供給するので、電力の貯蔵が可能である。
【0030】
また、スイッチ式の切替装置7を設けることで、負極11aと充電用正極12aとを使用して充電するとともに負極11aと放電用正極13aとを使用して放電を行うことにより、充電時に内部短絡が発生しても放電を行うことができるので、充放電を支障なく行うことができ、また、電解液をセル2に循環供給するので、電力の貯蔵が可能である。一方、スイッチ式又はダイオード式いずれかの切替装置7を設けることで、充電及び放電中に、それぞれの逆の反応が正極で起きるリスクを削減でき、効率及び寿命の向上が期待できる。
【0031】
<本開示の実施形態1に係る金属空気電池システムの変形例>
実施形態1では、負極11aは筒形状ではないが、負極11aも充電用正極12a及び放電用正極13aと同様に筒形状であってもよい。この場合には、負極11aの内部にも電解液が流れるので、負極11aの内周面にも亜鉛が含まれる構成とすることが好ましい。
【0032】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る金属空気電池システムについて説明する。実施形態2に係る金属空気電池システムは、実施形態1に対して、電極装置10の構成を変更したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
<本開示の実施形態2に係る金属空気電池システムの構成>
図4に示されるように、本開示の実施形態2においてセル2は、第1電極11としての充電用正極11bと、第2電極12としての負極12bと、第3電極13としての放電用正極13aとを有する電極装置10を備えている。負極12bは筒形状であり、負極12bの外周面だけではなく内周面にも亜鉛が含まれる構成となっている。また、充電用正極11bは、実施形態1と同様に、メッシュ状に製造された筒形状を有する電極を使用してもよいが、この実施形態2では、非メッシュ状の非筒形状、すなわち棒形状の電極として説明する。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0034】
<本開示の実施形態2に係る金属空気電池システムの動作>
実施形態2の動作は実施形態1の動作と同じである。すなわち、実施形態2に係る金属空気電池システム1においても、負極12bと充電用正極11bとを使用して充電するとともに負極12bと放電用正極13aとを使用して放電を行うことにより、充電時に内部短絡が発生しても放電を行うことができる。実施形態2も、充電用正極11bと負極12bと放電用正極13aとが、断面が同心状に設けられているので、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
実施形態2では、負極12b及び放電用正極13a間の電位差を測定する測定器を設け、充電時にこの電位差を監視することで、負極12b及び放電用正極13a間で内部短絡が生じたことを検知することができる。負極12b及び放電用正極13a間の内部短絡を検知した場合は、負極12b及び充電用正極11bを用いて放電を行うことで、内部短絡を解消することができる。
【0036】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る金属空気電池システムについて説明する。実施形態3に係る金属空気電池システムは、実施形態1に対して、電極装置10の構成を変更したものである。尚、実施形態3において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
<本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの構成>
図5に示されるように、本開示の実施形態3においてセル2は、第1電極11としての放電用正極11cと、第2電極12としての充電用正極12aと、第3電極13としての負極13cとを有する電極装置10を備えている。放電用正極11cと充電用正極12aと負極13cとのいずれも筒形状を有している。放電用正極11cの外周面、すなわち、負極13cに対向する面には、隔膜26が設けられている。ただし、実施形態3では(後述する実施形態4も同じ)、放電用正極11cの3層構造は、実施形態1及び2の放電用正極13a(
図2参照)と異なり、炭素等の導電材に酸素還元触媒が担持された層は外周面側の最外層であり、酸素が拡散可能な多孔質性の層は内周面側の最内層である。
【0038】
第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のそれぞれの内部には、チャンバ20内における電解液の流れを、放電用正極11cの内部を流れる第1流れF1と、放電用正極11cの外部を流れる第2流れF2とに隔離する隔離部材30が設けられている。隔離部材30は、第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22の内部に設けられたときにセル2の軸線方向における両端に端面31,32が設けられるとともに端面31,32のそれぞれに開口31a,32aが形成された筒形状を有している。一方の開口32aに放電用正極11cを挿入し、開口31bの内周縁と放電用正極11cの外周面との間にOリング等のシール部材33が設けられている。他方の開口31aは、第1開口23a又は第3開口24aに面している。
【0039】
第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のうち、セル2内を流れる電解液の流れ方向において上流側にある第1チャンバ部21内に設けられた隔離部材30の内部の第1流れF1の電解液に空気等の酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置34が設けられている。酸素含有ガス供給装置34としては例えば、一端が隔離部材30の内部に位置するとともに他端がセル2の外部に開口するか又は酸素含有ガスのボンベ等に接続された酸素含有ガス供給ライン35と、酸素含有ガス供給ライン35に設けられたコンプレッサ36とを有するバブリング装置を使用することができる。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0040】
<本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの動作>
次に、実施形態3に係る金属空気電池システム1の動作について、実施形態1に係る金属空気電池システム1の動作とは異なる部分を中心に説明する。金属空気電池システム1の放電時、セル2内では、第1開口23aを介して第1チャンバ部21の内部に流入した電解液は、開口31aを介して隔離部材30の内部に入り込んだ電解液の流れである第1流れF1と、隔離部材30の外部の電解液の流れである第2流れF2とに分かれる。
【0041】
隔離部材30の内部には、コンプレッサ36によって昇圧された酸素含有ガスが酸素含有ガス供給ライン35を介して供給されることにより、電解液に酸素含有ガスがバブリングされる。これにより、酸素が溶存した電解液が第1流れF1として、放電用正極11cの内部を流通する。一方、隔離部材30の外部の電解液は第2流れF2として、放電用正極11cの外周面と充電用正極12aの内周面との間に形成される流路と、充電用正極12aの外周面と負極13cの内周面との間に形成される流路とを流通する。
【0042】
第1流れF1の電解液は、放電用正極11cの内部から、第2チャンバ部22内に設けられた隔離部材30の内部に流出し、開口31aを介して隔離部材30の内部から流出する。一方、第2流れF2の電解液は、電極装置10の第2端部10bを介して、第2チャンバ部22へ流出する。第2チャンバ部22内において第1流れF1と第2流れF2とが合流した電解液は、第3開口24aを介して第2チャンバ部22から流出する。ただし、第1流れF1に含まれるガスを分離する等の目的で、第1流れF1と第2流れF2とを合流させずにそれらを別々に第2チャンバ部22から流出させてもよい。
【0043】
このようにしてセル2内を電解液が流通する間、負極13c及び放電用正極11cにおいて、実施形態1で説明した反応と同様の反応が生じる。ただし、実施形態3では、放電用正極11cを流れる電解液に含まれる酸素が、放電用正極11cの最内層及び中間層を拡散し、最外層の酸素還元触媒によって、空気と、第2流れF2の電解液中の水と、放電用正極11cへ流れてきた電子との反応により、水酸化物イオンが生成する。その他の動作は実施形態1と同じであり、隔膜26を設けることによって得られる作用効果も実施形態1と同じである。
【0044】
実施形態3においても、放電用正極11cと充電用正極12aと負極13cとが、断面が同心状に設けられている点は実施形態1と同じである。また、金属空気電池システム1の充電時に、電子が負極13cへ流れ、負極13cでは、電解液中の亜鉛イオンが電子を受け取ることで負極13c上に亜鉛が析出する点は、実施形態1と同じである。また、金属空気電池システム1の充電時に、デンドライトが負極13cと充電用正極12aとを接続してしまうことにより内部短絡が発生しても、負極13cと放電用正極11cとを使用した放電が可能となる点も実施形態1と同じである。したがって、実施形態3においても、実施形態1で得られる作用効果と同じ作用効果を得ることができる。
【0045】
実施形態3では、電極装置10において最も外側に配置される第3電極13が負極13cとなることにより、第1電極11又は第2電極12が負極である場合に比べて、負極の面積が相対的に増えることになる。このため、実施形態1に比べて、実施形態3における負極13cの亜鉛の析出量が増えるので、実施形態1に比べて蓄電容量を大きくすることができる。
【0046】
<本開示の実施形態3に係る金属空気電池システムの変形例>
図6に示されるように、実施形態3に係る金属空気電池システム1の変形例におけるセル2では、電極装置10のうち放電用正極11cのみが第1開口23a及び第3開口24aに挿入されている。すなわち、放電用正極11cの両端が、第1開口23a及び第3開口24aから第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22の外部へ延びている。第1開口23aから第1チャンバ部21の外部へ延びる放電用正極11cの端部には、酸素含有ガス供給ライン35の下流端が接続されている。その他の構成は、隔離部材30(
図4参照)が設けられていない点を除き、実施形態3と同じである。
【0047】
実施形態3のこの変形例では、第2流れF2とは隔離されて、酸素含有ガスの流れF3が放電用正極11cの内部を流通する。この形態でも、セル2内を電解液及び酸素含有ガスが流通する間、実施形態3と同じ反応によって放電が行われる。また、充電動作についても、実施形態3と同じである。したがって、この変形例においても、実施形態3と同じ作用効果を得ることができる。
【0048】
実施形態3のこの変形例では、放電用正極11cの内部に酸素含有ガスを流通させていたが、この形態に限定するものではない。
図7に示されるように、酸素を溶存させた電解液を第1流れF1として放電用正極11cの内部に流通させてもよい。この形態では、放電用正極11cの両端に、電解液が循環する循環ライン40の両端が接続され、循環ライン40には、電解液を貯留する電解液タンク41と、ポンプ42とが設けられている。尚、循環ライン40、電解液タンク41、ポンプ42はそれぞれ、循環ライン3(
図1参照)、電解液タンク4(
図1参照)、ポンプ5(
図1参照)とは別に設けられている。
【0049】
電解液タンク41には、電解液タンク41に貯留された電解液中に、酸素含有ガスをバブリングしながら供給するバブリング装置43が設けられている。これにより、第1流れF1の電解液を、酸素が溶存した電解液とすることができる。このように、実施形態3の変形例では、放電用正極11cの内部を流れるのは、酸素を含むガス又は酸素を含む電解液のいずれでもよい。すなわち、放電用正極11cの内部に、酸素を含む流体を流通させることができる。尚、この変形例では、酸素含有ガス供給ライン35及びコンプレッサ36を含む構成、又は、循環ライン40と電解液タンク41とポンプ42とバブリング装置43とを含む構成は、放電用正極11cの内部に酸素を含む流体を流通させる酸素含有流体供給装置37である。
【0050】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る金属空気電池システムについて説明する。実施形態4に係る金属空気電池システムは、実施形態3に対して、電極装置10の構成を変更したものである。尚、実施形態4において、実施形態3の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
<本開示の実施形態4に係る金属空気電池システムの構成>
図8に示されるように、本開示の実施形態3においてセル2は、第1電極11としての放電用正極11cと、第2電極12としての負極12bと、第3電極13としての充電用正極13bとを有する電極装置10を備えている。放電用正極11cと負極12bと充電用正極13bとのいずれも筒形状を有している。尚、実施形態4では、充電用正極13bは、実施形態1にようにメッシュ状に製造された筒形状を有する電極ではなく、非メッシュ状の筒形状の電極として説明する。その他の構成は実施形態3と同じである。
【0052】
<本開示の実施形態4に係る金属空気電池システムの動作>
実施形態4の動作は実施形態3の動作と同じであるので、実施形態3と同じ作用効果を得ることができる。また、実施形態4も、充電用正極11bと負極12bと放電用正極13aとが、断面が同心状に設けられているので、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
実施形態2と同様に実施形態4でも、負極12b及び放電用正極11c間の電位差を測定する測定器を設け、充電時にこの電位差を監視することで、負極12b及び放電用正極11c間で内部短絡が生じたことを検知することができる。負極12b及び放電用正極11c間の内部短絡を検知した場合は、負極12b及び充電用正極13bを用いて放電を行うことで、内部短絡を解消することができる。
【0054】
<本開示の実施形態4に係る金属空気電池システムの変形例>
実施形態4でも、実施形態3と同様に、放電用正極11cの内部を流れる電解液の第1流れF1に代えて、
図9に示されるように、酸素含有ガスの流れF3とした変形例が可能である。また、
図7に示した構成をこの変形例に適用して、酸素が溶存した電解液を第1流れF1とすることもできる。また、実施形態4においてメッシュ状の充電用正極13bを使用する場合には、充電用正極13bの内周面にも隔膜26を設けることにより、充電用正極13bを介してセル2から電解液が漏れるのを抑制することができる。
【0055】
(実施形態5)
次に、実施形態5に係る金属空気電池システムについて説明する。実施形態5に係る金属空気電池システムは、実施形態1に対して、電極装置10の構成を変更したものである。尚、実施形態5において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
<本開示の実施形態5に係る金属空気電池システムの構成>
図10に示されるように、本開示の実施形態5においてセル2は、第1電極11としての負極11aと、第2電極12としての放電用正極12cと、第3電極13としての充電用正極13bとを有する電極装置10を備えている。放電用正極12cの内周面、すなわち、負極11aに対向する面には、隔膜26が設けられている。
【0057】
第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のそれぞれの内部には、チャンバ20内における電解液の流れを、放電用正極12cの外周面と充電用正極13bの内周面との間の流路を流れる第1流れF1と、負極11aの外周面と放電用正極12cの内周面との間の流路を流れる第2流れF2とに隔離する隔離部材30が設けられている。隔離部材30は、第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22の内部に設けられたときにセル2の軸線方向における両端に端面31,32が設けられるとともに端面31,32のそれぞれに開口31a,32aが形成された筒形状を有している。一方の開口32aに放電用正極12cを挿入し、開口32aの内周縁と放電用正極12cの外周面との間にOリング等のシール部材33が設けられている。他方の開口31aは、第1開口23a又は第3開口24aに面している。
【0058】
第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のうち、セル2内を流れる電解液の流れ方向において上流側にある第1チャンバ部21内に設けられた隔離部材30の外部の第1流れF1の電解液に空気等の酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置34が設けられている。実施形態5の酸素含有ガス供給装置34の構成は、実施形態3と同じとする。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0059】
<本開示の実施形態5に係る金属空気電池システムの動作>
実施形態5に係る金属空気電池システム1の動作は、第1流れF1が放電用正極12cの外周面と充電用正極13bの内周面との間の流路を流れる流れであるとともに第2流れF2が負極11aの外周面と放電用正極12cの内周面との間の流路を流れる流れである点を除き、実施形態3の動作の説明が当てはまる。したがって、実施形態5においても、実施形態3で得られる作用効果を得ることができる。また、実施形態5も、負極11aと放電用正極12cと充電用正極13bとが、断面が同心状に設けられているので実施形態1で得られる作用効果と同じ作用効果を得ることができる。
【0060】
実施形態5では、第1電極11が負極11aであるとともに第3電極13が充電用正極13bであるので、実施形態1~4に比べて、負極11aと充電用正極13bとの間の距離が大きい。このため、実施形態5では、実施形態1~4に比べて、金属空気電池システム1の充電時に内部短絡が生じにくい。
【0061】
実施形態2及び4と同様に実施形態5でも、負極11a及び放電用正極12c間の電位差を測定する測定器を設け、充電時にこの電位差を監視することで、負極11a及び放電用正極12c間で内部短絡が生じたことを検知することができる。負極11a及び放電用正極12c間の内部短絡を検知した場合は、負極11a及び充電用正極13bを用いて放電を行うことで、内部短絡を解消することができる。
【0062】
実施形態5では、放電用正極12cの内周面に隔膜26が設けられているので、第1流れF1の電解液に含まれる酸素が放電用正極12cを介して第2流れF2の電解液へ移動することを抑制できる。これにより、第2流れF2の電解液中で酸化亜鉛である高抵抗層の生成を抑制することができる。
【0063】
<本開示の実施形態5に係る金属空気電池システムの変形例>
また、実施形態5においても、メッシュ状の充電用正極13bを使用する場合には、充電用正極13bの内周面にも隔膜26を設けることにより、充電用正極13bを介してセル2から電解液が漏れるのを抑制することができる。
【0064】
(実施形態6)
次に、実施形態6に係る金属空気電池システムについて説明する。実施形態6に係る金属空気電池システムは、実施形態5に対して、電極装置10の構成を変更したものである。尚、実施形態6において、実施形態5の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
<本開示の実施形態6に係る金属空気電池システムの構成>
図11に示されるように、本開示の実施形態6においてセル2は、第1電極11としての充電用正極11bと、第2電極12としての放電用正極12cと、第3電極13としての負極13cとを有する電極装置10を備えている。放電用正極12cの外周面、すなわち、負極13cに対向する面には、隔膜26が設けられている。尚、放電用正極12cの3層構造は、実施形態3及び4の放電用正極11c(
図5参照)の3層構造と同じである。
【0066】
第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のそれぞれの内部には、チャンバ20内における電解液の流れを、充電用正極11bの外周面と放電用正極12cの内周面との間の流路を流れる第1流れF1と、放電用正極12cの外周面と負極13cの内周面との間の流路を流れる第2流れF2とに隔離する隔離部材30が設けられている。第1チャンバ部21及び第2チャンバ部22のうち、セル2内を流れる電解液の流れ方向において上流側にある第1チャンバ部21内に設けられた隔離部材30の内部の第1流れF1の電解液に空気等の酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置34が設けられている。その他の構成は実施形態5と同じである。
【0067】
<本開示の実施形態6に係る金属空気電池システムの動作>
実施形態6に係る金属空気電池システム1の動作は実施形態5と同様に、第1流れF1が充電用正極11bの外周面と放電用正極12cの内周面との間の流路を流れる流れであるととともに第2流れF2が放電用正極12cの外周面と負極13cの内周面との間の流路を流れる流れである点を除き、実施形態3の動作の説明が当てはまる。したがって、実施形態6においても、実施形態3で得られる作用効果を得ることができる。また、実施形態6も、充電用正極11bと放電用正極12cと負極13cとが、断面が同心状に設けられているので実施形態1で得られる作用効果と同じ作用効果を得ることができる。
【0068】
実施形態5と同様に実施形態6でも、第1電極11が充電用正極11bであるとともに第3電極13が負極13cであるので、実施形態1~4に比べて、充電用正極11bと負極13cとの間の距離が大きい。このため、実施形態6では、実施形態1~4に比べて、金属空気電池システム1の充電時に内部短絡が生じにくい。
【0069】
実施形態6では、電極装置10において最も外側に配置される第3電極13が負極13cとなることにより、第1電極11又は第2電極12が負極である場合に比べて、負極の面積が相対的に増えることになる。このため、実施形態1に比べて、実施形態6における負極13cの亜鉛の析出量が増えるので、実施形態1に比べて蓄電容量を大きくすることができる。
【0070】
実施形態5と同様に実施形態6でも、負極13c及び放電用正極12c間の電位差を測定する測定器を設け、充電時にこの電位差を監視することで、負極13c及び放電用正極12c間で内部短絡が生じたことを検知することができる。負極13c及び放電用正極12c間の内部短絡を検知した場合は、負極13c及び充電用正極11bを用いて放電を行うことで、内部短絡を解消することができる。
【0071】
実施形態6では、放電用正極12cの外周面に隔膜26が設けられているので、第1流れF1の電解液に含まれる酸素が放電用正極12cを介して第2流れF2の電解液へ移動することを抑制できる。これにより、第2流れF2の電解液中で酸化亜鉛である高抵抗層の生成を抑制することができる。
【0072】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0073】
[1]一の態様に係る金属空気電池システムは、
チャンバ(20)と、
前記チャンバ(20)に収容された電極装置(10)と
を有するセル(2)を備える金属空気電池システム(1)であって、
前記電極装置(10)は、
第1電極(11)と、
前記第1電極(11)の径方向外側で前記第1電極(11)を囲むように設けられた筒形状の第2電極(12)と、
前記第2電極(12)の径方向外側で前記第2電極(12)を囲むように設けられた筒形状の第3電極(13)と
を備え、少なくとも前記第1電極(11)の外周面と前記第3電極(13)の内周面との間を電解液が流通するように構成され、
前記第1電極(11)と前記第2電極(12)と前記第3電(13)極との組み合わせは、金属を含む負極(11a,12b,13c)と充電用正極(11b,12a,13b)と放電用正極(11c,12c,13a)との組み合わせである。
【0074】
本開示の金属空気電池システムによれば、断面が同心状になるように電極を配置することで、内側と外側の電極面積差が得られることから、外側に配置した電極の運用時の電流密度を中央の電極に比べて低減することが可能となる。この効果を利用し抵抗損失の低減が必要な電極を外側に配置することでシステムとしての抵抗を低減できるので、効率的に充放電を行うことができ、また、電解液をセルに循環供給するので、電力の貯蔵が可能である。
【0075】
[2]別の態様に係る金属空気電池システムは、[1]の金属空気電池システムであって、
前記負極(11a,12b,13c)が前記充電用正極(11b,12a,13b)又は前記放電用正極(11c,12c,13a)のいずれか一方に電気的に接続するように切り替える切替装置(7)をさらに備え、
前記切替装置(7)は、
前記放電用正極(11c,12c,13a)及び前記負極(11a,12b,13c)間を電気的に開閉する第1スイッチ(7c)と、
前記負極(11a,12b,13c)及び前記充電用正極(11b,12a,13b)間を電気的に開閉する第2スイッチ(7d)と
を備える。
【0076】
このような構成によれば、負極と充電用正極とを使用して充電するとともに負極と放電用正極とを使用して放電を行うことにより、充電時に内部短絡が発生しても放電を行うことができるので、充放電を支障なく行うことができる。また、充電及び放電中に、それぞれの逆の反応が正極で起きるリスクを削減でき、効率及び寿命の向上が期待できる。
【0077】
[3]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[2]の金属空気電池システムであって、
前記切替装置(7)は、前記放電用正極(11c,12c,13a)から前記負極(11a,12b,13c)への方向に電流を流す第1ダイオード(7a)を備える。
【0078】
このような構成によれば、充電用正極が電解液に浸されている状態では、充電及び放電中に、それぞれの逆の反応が正極で起きるリスクを削減でき、効率及び寿命の向上が期待できる。また、上記[2]における切替装置に比べて、耐久性に優れ低コストである切替装置を構成することができる。
【0079】
[4]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[3]の金属空気電池システムであって、
前記切替装置(7)は、前記負極(11a,12b,13c)から前記充電用正極(11b,12a,13b)への方向に電流を流す第2ダイオード(7ba)をさらに備える。
【0080】
このような構成によれば、充電及び放電中に、それぞれの逆の反応が正極で起きるリスクを削減でき、効率及び寿命の向上が期待できる。また、上記[2]における切替装置に比べて、耐久性に優れ低コストである切替装置を構成することができる。
【0081】
[5]別の態様に係る金属空気電池システムは、[1]~[4]のいずれかの金属空気電池システムであって、
前記電極装置(10)は、軸線方向に延びる形状を有するとともに前記軸線方向の一方の端部である第1端部(10a)及び前記軸線方向の他方の端部である第2端部(10b)を含み、
前記チャンバ(20)は、
前記電極装置(10)の前記第1端部(10a)側において少なくとも前記第3電極(13)の一方の端部(13d1)を内部に収容するように設けられた第1チャンバ部(21)と、
前記電極装置(10)の前記第2端部(10b)側において少なくとも前記第3電極(13)の他方の端部(13d2)を内部に収容するように設けられた第2チャンバ部(22)と
を備え、
前記第1チャンバ部(21)は、前記軸線方向において互いに対して離れた位置にある第1端面(21a)及び第2端面(21b)を含み、前記第1端面(21a)及び前記第2端面(21b)にはそれぞれ、第1開口(23a)及び第2開口(23b)が形成され、
前記第2チャンバ部(22)は、前記軸線方向において互いに対して離れた位置にある第3端面(22a)及び第4端面(22b)を含み、前記第3端面(22a)及び前記第4端面(22b)にはそれぞれ、第3開口(24a)及び第4開口(24b)が形成され、
前記第2開口(23b)及び前記第4開口(24b)にはそれぞれ、前記電極装置(10)を構成する前記第1電極(11)と前記第2電極(12)と前記第3電極(13)とが挿入され、前記第1チャンバ部(21)及び前記第2チャンバ部(22)のそれぞれの内周面と前記第3電極(13)の外周面との間には、これらの間をシールするシール部材(25)が設けられている。
【0082】
このような構成によれば、第1チャンバ及び第2チャンバのそれぞれの内周面と第3電極の外周面との間に設けられたシール部材によってこれらの間がシールされているので、第1開口及び第3開口間においてチャンバからの電解液のリークを抑制することができる。
【0083】
[6]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[5]の金属空気電池システムであって、
前記第3電極(13)は前記放電用正極(13a)である。
【0084】
このような構成によれば、充電中に負極及び充電用正極間で短絡が生じても、負極及び放電用正極間で放電が可能になる。
【0085】
[7]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[5]の金属空気電池システムであって、
前記第1電極(11)は筒形状を有する前記放電用正極(11c)であり、
前記第1チャンバ部(21)及び前記第2チャンバ部(22)のそれぞれの内部には、前記チャンバ(20)内における前記電解液の流れを、前記放電用正極(11c)の内部を流れる第1流れ(F1)と、前記放電用正極(11c)の外部を流れる第2流れ(F2)とに隔離する隔離部材(30)が設けられ、
前記金属空気電池システムは、前記第1流れ(F1)の電解液に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置(34)をさらに備える。
【0086】
このような構成によれば、充電中に負極及び充電用正極間で短絡が生じても、負極及び放電用正極間で放電が可能になる。
【0087】
[8]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[5]の金属空気電池システムであって、
前記第1電極(11)は筒形状を有する前記放電用正極(11c)であり、
前記電極装置(10)のうち前記放電用正極(11c)のみが前記第1開口(23a)及び前記第3開口(24a)に挿入され、
前記放電用正極(11c)の内部に酸素を含む流体を流通させる酸素含有流体供給装置(37)が設けられている。
【0088】
このような構成によれば、充電中に負極及び充電用正極間で短絡が生じても、負極及び放電用正極間で放電が可能になる。
【0089】
[9]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[7]または[8]の金属空気電池システムであって、
前記第2電極(12)は前記充電用正極(12a)であり、前記第3電極(13)は前記負極(13c)である。
【0090】
このような構成によれば、第1電極又は第2電極が負極である場合に比べて、負極の面積が相対的に増えることになる。このため、負極の金属の析出量が増えるので、蓄電容量を大きくすることができる。
【0091】
[10]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[7]または[8]の金属空気電池システムであって、
前記第2電極(12)は前記負極(12b)であり、前記第3電極(13)は前記充電用正極(13b)である。
【0092】
このような構成によれば、負極及び放電用正極間の電圧を監視することで、負極及び充電用正極間の内部短絡の事前検知が可能になる。
【0093】
[11]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[5]の金属空気電池システムであって、
前記第2電極(12)は前記放電用正極(12c)であり、
前記第1チャンバ部(21)及び前記第2チャンバ部(22)のそれぞれの内部には、前記チャンバ(20)内における前記電解液の流れを、前記充電用正極(11b,13b)と前記放電用正極(12c)との間を流れる第1流れ(F1)と、前記放電用正極(12c)と前記負極(11a,13c)との間を流れる第2流れ(F2)とに隔離する隔離部材(30)が設けられ、
前記金属空気電池システム(1)は、前記第1流れ(F1)の電解液に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置(34)をさらに備える。
【0094】
このような構成によれば、負極と充電用正極とが隣り合う構成に比べて、負極と充電用正極間の距離が長くなるので、負極及び充電用正極間の内部短絡が生じにくくなるが、仮に充電中に内部短絡が生じたとしても、負極及び放電用正極間で放電が可能になる。また、負極及び放電用正極間の電圧を監視することで、負極及び充電用正極間の内部短絡の事前検知が可能になる。
【0095】
[12]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[11]の金属空気電池システムであって、
前記第1電極(11)は前記充電用正極(11b)であり、前記第3電極(13)は前記負極(13c)である。
【0096】
このような構成によれば、第1電極又は第2電極が負極である場合に比べて、負極の面積が相対的に増えることになる。このため、負極の金属の析出量が増えるので、蓄電容量を大きくすることができる。
【0097】
[13]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[11]の金属空気電池システムであって、
前記第1電極(11)は前記負極(11a)であり、前記第3電極(13)は前記充電用正極(13b)である。
【0098】
このような構成によれば、断面が同心状になるように電極を配置することで、内側と外側の電極面積差が得られることから、外側に配置した電極の運用時の電流密度を中央の電極に比べて低減することが可能となる。この効果を利用し抵抗損失の低減が必要な電極を外側に配置することでシステムとしての抵抗を低減できるので、効率的に充放電を行うことができ、また、電解液をセルに循環供給するので、電力の貯蔵が可能である。
【0099】
[14]さらに別の態様に係る金属空気電池システムは、[1]~[13]のいずれかの金属空気電池システムであって、
前記放電用正極(11c,12c,13a)は、前記負極(11a,12b,13c)に対向する面に隔膜(26)を備える。
【0100】
このような構成によれば、負極と充電用正極と放電用正極とのそれぞれの位置に応じて、放電用正極における反応の過電圧のロスを低減することと、電解液の変質及び劣化を抑制することと、放電用正極からの電解液の漏れを抑制することと、負極と酸素含有ガスの接触による高抵抗層の生成を抑制することとのいずれかが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
1 金属空気電池システム
2 セル
7 切替装置
7a 第1ダイオード
7b 第2ダイオード
7c 第1スイッチ
7d 第2スイッチ
10 電極装置
10a 第1端部
10b 第2端部
11 第1電極
11a 負極
11b 充電用正極
11c 放電用正極
12 第2電極
12a 充電用正極
12b 負極
12c 放電用正極
13 第3電極
13a 放電用正極
13b 充電用正極
13c 負極
13d1 (第3電極の)一方の端部
13d2 (第3電極の)他方の端部
20 チャンバ
21 第1チャンバ部
21a 第1端面
21b 第2端面
22 第2チャンバ部
22a 第3端面
22b 第4端面
23a 第1開口
23b 第2開口
24a 第3開口
24b 第4開口
25 シール部材
26 隔壁
30 隔離部材
34 酸素含有ガス供給装置
37 酸素含有流体供給装置
F1 第1流れ
F2 第2流れ