(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076156
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230525BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20230525BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230525BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230525BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/2475
H01M8/0432
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189392
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲さこ▼ 孝太
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126FF10
5H127AC09
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB26
5H127DB47
5H127DB95
5H127DC22
5H127DC28
5H127DC29
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い暖機が可能な燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置1は、ケース2に収容される燃料電池3に接続される供給路25と、供給路25で供給路25の空気を圧縮して燃料電池3へ送り込むブロワー29と、供給路25のブロワー29より下流側とブロワー29より上流側とを接続する循環路26と、供給路25のブロワー29より下流側かつ供給路25と循環路26との接続部分より下流側に設けられて供給路25の空気の流れを許可または遮断する第1開閉機構43と、供給路25のブロワー29より下流側かつ第1開閉機構43より上流側に接続されてケース2内に空気を放出する放出路27と、循環路26の空気の流れを許可または遮断する第2開閉機構44と、放出路27の空気の流れを許可または遮断する第3開閉機構45と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容される燃料電池と、
前記燃料電池に接続される供給路と、
前記供給路に設けられて前記供給路内の空気を圧縮して前記燃料電池へ送り込むブロワーと、
前記供給路の前記ブロワーより下流側と前記ブロワーより上流側とを接続する循環路と、
前記供給路の前記ブロワーより下流側かつ前記供給路と前記循環路との接続部分より下流側に設けられて前記供給路における前記空気の流れを許可または遮断する第1開閉機構と、
前記供給路の前記ブロワーより下流側かつ前記第1開閉機構より上流側に接続されて前記ケース内に前記空気を放出する放出路と、
前記循環路に設けられて前記循環路での前記空気の流れを許可または遮断する第2開閉機構と、
前記放出路に設けられて前記放出路での前記空気の流れを許可または遮断する第3開閉機構と、を備える燃料電池装置。
【請求項2】
少なくとも三方向において選択的に開閉するバルブを備え、
前記第1開閉機構、前記第2開閉機構、および前記第3開閉機構は前記バルブに一体に設けられる請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記燃料電池に対向して設けられて前記燃料電池の周囲に沿って空気を流動させるファンを備え、
前記放出路の下端は、前記燃料電池側に配置される請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記ケース内の少なくとも一部の温度を検知する第1温度センサーを備え、
前記第1温度センサーが検知した温度が第1設定温度以下である場合、前記第1開閉機構および前記第3開閉機構を閉鎖し、かつ前記第2開閉機構を開放して前記循環路に前記空気を流し、
前記第1温度センサーが検知した温度が前記第1設定温度より高い場合、前記第3開閉機構を閉鎖し、かつ前記第1開閉機構を開放して前記燃料電池に前記空気を流す請求項1~3のいずれか一つに記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記第1温度センサーは、前記燃料電池の温度を検知する請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記供給路および前記循環路の少なくともいずれかの前記空気の温度を検知する第2温度センサーと、を備え、
前記第1温度センサーが検知した温度が前記第1設定温度以下であり、かつ前記第2温度センサーが検知した温度が前記第1設定温度より高い第2設定温度以上である場合、前記第1開閉機構を閉鎖し、かつ前記第3開閉機構を開放する請求項4または5に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を備える車載用の燃料電池装置が知られている。燃料電池は、燃料としての例えば水素と供給される空気に含まれる酸素との酸化還元反応により発電し、かつ水を生成する。酸化還元反応は、温度が低いと効率が低下する。このため、低温の燃料電池は、反応しなかった水素を無駄に排出し、十分に発電できず、自ら暖機する能力が低い。また、車載用の燃料電池装置は、冬には氷点下の環境に曝される場合がある。そのような場合には、装置内の水分が凍ってしまう。したがって、燃料電池装置は、始動時に燃料電池を昇温させる暖機機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池装置は、空気を反応させる空気室と、空気室に空気を供給する供給路と、供給路に設けられた圧縮機と、を備えている。また、従来の燃料電池装置は、空気を圧縮機で断熱圧縮して昇温して空気室に流入させる暖機機構を備えている。従来の燃料電池装置は、空気室から排出される空気を再び供給路に流入させて、空気の断熱圧縮を繰り返し、空気を充分に昇温させる。
【0005】
しかしながら、氷点下まで低温になった燃料電池装置では、発電の際に生成された水が装置内で凍結して氷になる。氷は、燃料電池に空気を供給する供給路、燃料電池の空気室、および燃料電池から空気を排出する排出路などに付着する。昇温した空気を燃料電池に供給すると、装置内の氷が剥離して空気室に吹き込まれる虞がある。吹き込まれた氷は、空気室に面する電極膜およびガス拡散層を損傷する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、信頼性の高い暖機が可能な燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため本発明に係る燃料電池装置は、ケースと、前記ケースに収容される燃料電池と、前記燃料電池に接続される供給路と、前記供給路に設けられて前記供給路内の空気を圧縮して前記燃料電池へ送り込むブロワーと、前記供給路の前記ブロワーより下流側と前記ブロワーより上流側とを接続する循環路と、前記供給路の前記ブロワーより下流側かつ前記供給路と前記循環路との接続部分より下流側に設けられて前記供給路における前記空気の流れを許可または遮断する第1開閉機構と、前記供給路の前記ブロワーより下流側かつ前記第1開閉機構より上流側に接続されて前記ケース内に前記空気を放出する放出路と、前記循環路に設けられて前記循環路での前記空気の流れを許可または遮断する第2開閉機構と、前記放出路に設けられて前記放出路での前記空気の流れを許可または遮断する第3開閉機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性の高い暖機が可能な燃料電池装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池装置を示す構成図。
【
図2】本発明の実施形態における空気路を示す拡大図。
【
図3】本発明に係る実施形態の燃料電池装置の動作を示すフローチャート。
【
図4】本発明に係る実施形態の燃料電池装置の動作を示すタイムチャート。
【
図5】本発明に係る実施形態のコントローラーの始動過程の動作を示すフローチャート。
【
図6】(A)横軸に時間をとり縦軸に温度をとって燃料電池装置の動作時の燃料電池の温度変化を示すグラフ、(B)横軸に時間をとり縦軸に温度をとって燃料電池装置の動作時の供給路および循環路の空気の温度変化を示すグラフ。
【
図7】本発明に係る実施形態のコントローラーの暖気過程の動作を示すフローチャート。
【
図8】本発明に係る実施形態のコントローラーの発電過程の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本発明に係る燃料電池装置の実施形態について
図1から
図8を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号がふされている。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池装置を示す構成図である。
【0013】
燃料電池装置1は、内部空間を有するケース2を備えている。また、燃料電池装置1は、燃料電池3と、燃料電池3に接続された空気路4および水素路(図示せず)と、燃料電池3に風を送るファン5と、複数の温度センサー6と、コントローラー7と、バッテリー8とを備えている。これらは、ケース2に収納されている。なお、主要構造を明示するため、
図1は、燃料電池3のうちの一部のみを断面で図示している。
【0014】
ケース2は、閉じた箱状体である。ケース2は、壁面に複数の貫通孔11を有している。ケース2の内部空間は、貫通孔11を介して外部空間に繋がっている。ケース2は、例えば金属板によって形成されている。なお、ケース2は、一部が開放した箱状体でもよい。
【0015】
燃料電池3は、板状のセパレーター13が少なくとも二つ重ねられた積層構造を有している。セパレーター13は、積層方向に貫通する複数の貫通孔(図示せず)を有する。燃料電池3は、隣接する一対のセパレーター13の間に電極膜14と、電極膜14の表裏にそれぞれ設けられたガス拡散層15、16とを備えている。燃料電池3は、最も外側の二つのセパレーター13の外側面に接する二つのマニホールドプレート17と、マニホールドプレート17の内部空間の一部である空気室18および水素室19と、触媒層(図示せず)と、を備えている。
【0016】
電極膜14の表面および裏面は、燃料電池3の積層方向に略直交している。空気室18および水素室19は、マニホールドプレート17の内壁面によって区画された空間であり、マニホールドプレート17のセパレーター13側の面で例えば開口している。空気室18は、セパレーター13を介してガス拡散層15と電極膜14の例えば表面とに対向している。水素室19は、セパレーター13を介してガス拡散層16と電極膜14の例えば裏面とに対向している。
【0017】
水素室19は、水素路に繋がっている。水素室19は、水素路によって、水素(H2)ガスを供給され、反応後のガスを排出する。空気室18は、空気路4によって、空気を供給され、反応後の空気を排出する。
【0018】
ファン5は、ケース2の内部空間において燃料電池3の近傍に配置されている。ファン5は、吐出面21と吸込面22とを有している。吐出面21は、例えばケース2の内壁面に向けられ、吸込面22は、例えば燃料電池3、具体的には、燃料電池3の水素室19に向けられている。ファン5は、吸込面22から吐出面21に向かって空気を流すため、燃料電池3の周囲の空気を吸込面22から吸い込んで吐出面21から吐き出す。このように、ファン5は、燃料電池3の周囲に空気の流れを作る。
【0019】
図2は、本発明の実施形態における空気路を示す拡大図である。主要構造を明示するため、
図2はリリーフバルブ33を省略している。
【0020】
図1および
図2に示すように、空気路4は、燃料電池3の空気室18にケース2内の空気を送り込む供給路25と、供給路25の例えば2カ所を接続する循環路26と、供給路25に接続される放出路27と、燃料電池3の空気室18から空気を排出する排出路28と、を備えている。供給路25、循環路26、放出路27、および排出路28は、例えば、それぞれ少なくとも1つ以上のダクト、パイプまたはホース等の配管を含んでいる。
【0021】
また、空気路4は、供給路25に設けられるブロワー29と、ブロワー29の上流側に設けられる上流側バルブ31と、ブロワー29の下流側に設けられる下流側バルブ32と、循環路26に設けられるリリーフバルブ33と、を有している。ブロワー29は、流入側から空気を吸い込み、流出側から空気を吹き出す。これにより、ブロワー29は、上流側バルブ31側から供給路25内の空気を吸い込んで圧縮し、下流側バルブ32側へ圧縮した空気を吐出する。リリーフバルブ33は、循環路26の空気が設定圧を超えると循環路26の空気圧を下げる。
【0022】
以後、説明の便宜上のため、空気路4を構成するいずれかの配管において、上端とはその配管の上流側の端部をいい、下端とはその配管の下流側の端部をいう。
【0023】
供給路25の上端は、空気の吸込口を含み、供給路25の下端は、空気の吐出口を含んでいる。供給路25の吐出口は、燃料電池3の空気室18に接続されている。供給路25の吸込口は、ケース2の壁面に対向している。供給路25の吸込口は、例えばケース2の貫通孔11に隣接している。
【0024】
供給路25は、ブロワー29が設けられる圧縮路34と、供給路25の下端を含む導入路35と、を含んでいる。圧縮路34の上端は、供給路25の吸込口を含んでいる。この上端とブロワー29との間に上流側バルブ31が配置されている。圧縮路34の下端と導入路35の上端とは、下流側バルブ32を介して接続されている。導入路35の下端は、供給路25の吐出口を含んでいる。
【0025】
循環路26の上端は、供給路25のブロワー29より下流側に下流側バルブ32を介して接続されている。循環路26の下端は、供給路25のブロワー29より上流側に上流側バルブ31を介して接続されている。このように、循環路26は、供給路25のブロワー29より下流側とブロワー29より上流側とを接続している。
【0026】
放出路27の上端は、供給路25のブロワー29より下流側に下流側バルブ32を介して接続されている。放出路27の下端は、放出路27の吐出口である。放出路27の下端は、燃料電池3側に配置されることが好ましい。また、放出路27の下端は、具体的には、燃料電池3の空気室18側に配置されている。さらに、放出路27の下端は、具体的には、燃料電池3の周囲であってファン5から離れた場所に配置されている。
【0027】
上流側バルブ31は、例えば電磁式の三方弁である。上流側バルブ31は、供給路25で開閉し、かつ循環路26の下端で開閉する。なお、上流側バルブ31は、供給路25および循環路26のそれぞれを個別に開閉する複数のバルブであっても良い。
【0028】
図2に示すように、上流側バルブ31は、三つのポート36a、36b、36cを有する。上流側バルブ31は、開放動作によって、ポート36aおよびポート36bを繋げ、ポート36cとポート36bを繋げる。ポート36aおよびポート36bは、供給路25に接続されている。詳細には、ポート36aは、ポート36bより上流側に接続され、ポート36bは、ブロワー29より上流側に接続されている。ポート36cは、循環路26の下端に接続されている。ポート36cは、例えばポート36aとポート36bの間に配置されている。ポート36aは、ポート36bおよびポート36cより供給路25の上端側に配置されている。
【0029】
上流側バルブ31は、上流開閉機構38を有する。上流開閉機構38は、ポート36aとポート36bとの間の空気の流れを制御する上流第1開閉機構39と、ポート36cとポート36bとの間の空気の流れを制御する上流第2開閉機構41と、を含む。上流第1開閉機構39は、供給路25の上流第2開閉機構41より上流側に設けられている。
【0030】
上流第1開閉機構39は、ポート36aとポート36bとの間、つまり、供給路25のブロワー29より上流側の部分の空気の流れを許可または遮断する。詳細には、上流第1開閉機構39は、供給路25の上端からブロワー29の流入側への空気の流れを許可または遮断する。
【0031】
上流第2開閉機構41は、ポート36cとポート36bとの間、つまり、循環路26の下端と供給路25のブロワー29の上流側との間の空気の流れを許可または遮断する。詳細には、上流第2開閉機構41は、循環路26の下端からブロワー29の流入側への空気の流れを許可または遮断する。
【0032】
下流側バルブ32は、例えば電磁式の四方弁である。下流側バルブ32は、供給路25で開閉し、循環路26の上端で開閉し、かつ放出路27の上端で開閉する。なお、下流側バルブ32は、供給路25、循環路26、および放出路27のそれぞれを個別に開閉する複数のバルブであってもよい。
【0033】
下流側バルブ32は、四つのポート37a、37b、37c、37dを有する。下流側バルブ32は、開放動作によってポート37aおよびポート37bを繋げ、ポート37aおよびポート37cを繋げ、ポート37aおよびポート37dを繋げる。ポート37aおよびポート37bは、供給路25に接続されている。詳細には、ポート37aは、ブロワー29の下流側に接続され、ポート37bは、ポート37aより下流側に接続されている。ポート37cは、循環路26の上端に接続され、ポート37dは、放出路27の上端に接続されている。ポート37cおよびポート37dは、例えばポート37aとポート37bとの間に配置されている。ポート37bは、ポート37a、ポート37cおよびポート37dより供給路25の下流側に配置されている。
【0034】
下流側バルブ32は、下流開閉機構42を有する。下流開閉機構42は、ポート37aおよびポート37bの間の空気の流れを制御する下流第1開閉機構43と、ポート37aおよびポート37cの間の空気の流れを制御する下流第2開閉機構44と、ポート37aおよびポート37dの間の空気の流れを制御する下流第3開閉機構45とを含む。下流第1開閉機構43は、供給路25の下流第2開閉機構44および下流第3開閉機構45より下流側に設けられている。
【0035】
下流第1開閉機構43は、ポート37aおよびポート37bの間、つまり、供給路25のブロワー29より下流側の部分の空気の流れを許可または遮断する。詳細には、下流第1開閉機構43は、ブロワーの流出側から供給路25の下端への空気の流れを許可または遮断する。
【0036】
下流第2開閉機構44は、ポート37aおよびポート37cの間、つまり、供給路25のブロワー29の下流側と循環路26の上端との間の空気の流れを許可または遮断する。詳細には、下流第2開閉機構44は、ブロワー29の流出側から循環路26の上端への空気の流れを許可または遮断する。また、下流第2開閉機構44は、循環路26の空気の流れを許可または遮断する。
【0037】
下流第3開閉機構45は、ポート37aおよびポート37dの間、つまり、供給路25のブロワー29の下流側と放出路27の上端との間の空気の流れを許可または遮断する。詳細には、下流第3開閉機構45は、ブロワー29の流出側から放出路27の上端への空気の流れを許可または遮断する。また、下流第3開閉機構45は、放出路27の空気の流れを許可または遮断する。
【0038】
このような上流開閉機構38と下流開閉機構42は、供給路25、循環路26、および放出路27に始動流路47、循環流路48、放出流路49、および供給流路51を形成する。
【0039】
始動流路47は、燃料電池装置1の始動時の流路である。始動流路47では、例えば、
図2に示す実線矢印のように空気が流れる。このような始動流路47は、供給路25の吸込口から下流側バルブ32までの部分と循環路26とによる流路であり、上流第1開閉機構39、上流第2開閉機構41、および下流第2開閉機構44を開放し、かつ下流第1開閉機構43および下流第3開閉機構45を閉鎖することによって形成される。下流第1開閉機構43および下流第3開閉機構45を閉鎖することにより、始動流路47は空気室18に繋がる導入路35と放出路27とから離隔される。
【0040】
循環流路48は、空気を循環させてブロワー29で繰り返し圧縮するための流路である。循環流路48では、例えば、
図2に示す一点鎖線矢印のように空気が流れる。このような循環流路48は、供給路25の上流側バルブ31から下流側バルブ32までの部分と循環路26とによる閉じた流路であり、上流第2開閉機構41および下流第2開閉機構44を開放し、かつ上流第1開閉機構39、下流第1開閉機構43および下流第3開閉機構45を閉鎖することにより形成される。上流第1開閉機構39、下流第1開閉機構43および下流第3開閉機構45を閉鎖することにより、循環流路48は供給路25の上端、導入路35および放出路27から離隔する。
【0041】
放出流路49は、供給路25等の空気路4の空気をケース2内に放出するための流路である。放出流路49では、例えば、
図2に示す二点鎖線矢印のように空気が流れる。このような放出流路49は、供給路25の吸込口から下流側バルブ32までの部分と循環路26と放出路27とによる流路であり、上流第1開閉機構39、上流第2開閉機構41、下流第2開閉機構44、および下流第3開閉機構45を開放し、かつ下流第1開閉機構43を閉鎖することにより形成される。下流第1開閉機構43を閉鎖することにより、放出流路49は空気室18に繋がる導入路35から離隔する。
【0042】
供給流路51は、燃料電池3の空気室18に空気を供給するための流路である。供給流路51では、例えば、
図2に示す破線矢印のように空気が流れる。このような供給流路51は、供給路25の吸込口から吐出口までの部分による流路であり、上流第1開閉機構39および下流第1開閉機構43を開放し、上流第2開閉機構41、下流第2開閉機構44および下流第3開閉機構45を閉鎖することによって形成される。上流第2開閉機構41、下流第2開閉機構44、および下流第3開閉機構45を閉鎖することにより、供給流路51は循環路26および放出路27から離隔する。
【0043】
排出路28は、上端に空気の吸込口が配置され、下端に空気の吐出口が配置されている。排出路28の吸込口は、燃料電池3の空気室18に接続されている。排出路28の吸込口は、供給路25の吐出口から離隔し、その間に空気室18が介在している。排出路28の下端は、例えば、供給路25の一部に接続されていてもよく、ケース2内に配置されていてもよい。
【0044】
図1に示すように、バッテリー8は、コントローラー7または燃料電池装置1の外部機器に電源を供給できる。バッテリー8は、ケース2内の供給路25の近傍に設けられていることが好ましい。バッテリー8は、例えばリチウム(Li)イオンバッテリーである。
【0045】
複数の温度センサー6は、燃料電池3の温度を検知する第1温度センサー54と、循環路26の空気の温度を検知する第2温度センサー55と、ケース2内の空気の温度を検知する第3温度センサー56とを含む。第1温度センサー54、第2温度センサー55、および第3温度センサー56は、それぞれの対象の温度を検知して温度情報d1、d2、d3を生成する。
【0046】
第1温度センサー54は、例えば、燃料電池3において中心側の燃料電池3の温度を検知することが好ましい。第2温度センサー55は、循環路26の下端側における空気の温度を検知することが好ましく、循環路26のリリーフバルブ33より下流側の空気の温度を検知することが好ましい。第3温度センサー56は、ファン5または燃料電池3近傍の空気の温度を検知することが好ましく、ファン5の吸込面22近傍の空気の温度を検知してもよい。また、第3温度センサー56は、ファン5または燃料電池3の温度を検知してもよい。
【0047】
コントローラー7は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(メモリ)等を備えている。コントローラー7は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み取って実行することにより、例えば温度センサー制御部、ファン制御部、ブロワー制御部、および開閉機構制御部として機能する。コントローラー7は、燃料電池装置1内のバッテリー8または他のバッテリー(図示せず)から電源が供給されている。コントローラー7は、温度センサー6、ファン5、ブロワー29、上流側バルブ31、下流側バルブ32、排出路28や水素路の流量を制御するバルブ(図示せず)などに、例えばケーブル等を介して電気的に接続されている。
【0048】
コントローラー7は、温度センサー6に温度を検知させ、温度情報をコントローラー7に送信させる。具体的には、コントローラー7は、温度を検知させる温度検知命令r1を各温度センサー6に送信し、それぞれの温度情報d1、d2、d3を各温度センサー6から受信する。コントローラー7は、ファン5に駆動命令r2および停止命令を送信する。コントローラー7は、ブロワー29に駆動命令r3および停止命令を送信する。
【0049】
コントローラー7は、上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉を制御する。具体的には、コントローラー7は、上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉状態に関する開閉情報を上流開閉機構38および下流開閉機構42に送信する。開閉情報は、例えば、始動開閉情報r4、循環開閉情報r5、放出開閉情報r6、および供給開閉情報r7を含んでいる。始動開閉情報r4は、空気路4で始動流路47を形成するための上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉情報である。循環開閉情報r5は、空気路4で循環流路48を形成するための上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉情報である。放出開閉情報r6は、空気路4で放出流路49を形成するための上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉情報である。供給開閉情報r7は、空気路4で供給流路51を形成するための上流開閉機構38および下流開閉機構42の開閉情報である。
【0050】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池装置の動作について説明する。
【0051】
図3は、本発明に係る実施形態の燃料電池装置の動作を示すフローチャートである。
【0052】
図4は、本発明に係る実施形態の上流開閉機構および下流開閉機構の開閉動作を示すタイムチャートである。
【0053】
図3および
図4に示すように、燃料電池装置1は、燃料電池装置1の始動時の始動過程T1と、燃料電池装置1内を暖気する暖気過程T2と、燃料電池3が発電する発電過程T3とでそれぞれ異なる動作をする。暖気過程T2は、1以上の暖気サイクルT4を含む。暖気サイクルT4は、空気を断熱圧縮して加熱する圧縮過程T5と、加熱した空気をケース2内に放出する放出過程T6と、を含む。なお、
図4では、暖気過程T2で暖気サイクルT4が二回行われた場合を例示している。
【0054】
図5は、本発明に係る実施形態のコントローラーの始動過程の動作を示すフローチャートである。
【0055】
図5に示すように、まず、始動過程T1で、運転手によるエンジン起動などの操作によりコントローラー7が始動する(ステップS1)。コントローラー7は、温度センサー6、ファン5、ブロワー29、上流側バルブ31、下流側バルブ32などを通電状態もしくは通電可能な状態にする。コントローラー7は、第1温度センサー54に温度検知命令r1を送信する。第1温度センサー54は燃料電池3の温度情報d1を取得し、コントローラー7は、この温度情報d1を受信する(ステップS2)。
【0056】
図2および
図5に示すように、コントローラー7は、次に上流開閉機構38および下流開閉機構42に始動流路47を形成するための始動開閉情報r4を送信する(ステップS3)。これにより、上流開閉機構38および下流開閉機構42は、空気路4で始動流路47を形成する所定の開閉状態に切り替わり、始動流路47が空気路4に形成される。
【0057】
次に、コントローラー7は、ブロワー29に駆動命令r3を送信する(ステップS4)。これにより、ブロワー29は、駆動し、始動流路47でブロワー29の上流側から下流側に向かって空気を送る。このため、始動流路47の空気は、供給路25の吸込口から始動流路47に流入して始動流路47内を循環し、かつ導入路35と放出路27には流れない。このため、仮に始動流路47の内壁面に氷が付着している場合に、空気の流れによって剥離した氷が、導入路35から空気室18に吹き込むことがない。
図2の実線矢印で示すように、始動流路47の空気流れF1は、具体的には、供給路25の吸込口から流入し、上流第1開閉機構39、ブロワー29、下流第2開閉機構44、循環路26、および上流第2開閉機構41を通過する。
【0058】
図6(A)は、横軸に時間をとり縦軸に温度をとって燃料電池装置の動作時の燃料電池の温度変化を示すグラフである。
図6(B)は、横軸に時間をとり縦軸に温度をとって燃料電池装置の動作時の供給路または循環路の空気の温度変化を示すグラフである。
図6(A)および
図6(B)では、
図4に合わせて、暖気サイクルT4が二回行われた場合を例示している。
【0059】
図5および
図6(A)に示すように、次に、コントローラー7は、第1温度センサー54の温度情報d1が第1設定温度t1以下であるかを判断する(ステップS5)。第1設定温度t1は、例えば摂氏0度である。第1温度センサー54が検知した燃料電池3の温度が第1設定温度t1以下である場合は、空気路4および燃料電池3の空気室18に残存する水(H
2O)が凍結している可能性があり、かつ燃料電池3の発電効率が低い。このため、燃料電池装置1は、コントローラー7が第1温度センサー54の温度情報d1を第1設定温度t1以下であると判断した場合、始動過程T1を終了して暖気過程T2に移行し、コントローラー7が第1温度センサー54の温度情報d1を第1設定温度t1より高いと判断した場合、始動過程T1を終了して発電過程T3に移行する。
【0060】
図7は、本発明に係る実施形態のコントローラーの暖気過程の動作を示すフローチャートである。
【0061】
図2および
図7に示すように、暖気過程T2では、燃料電池装置1は先ず暖気サイクルT4の圧縮過程T5に移行する。圧縮過程T5で、コントローラー7は、先ず上流開閉機構38および下流開閉機構42に循環開閉情報r5を送信する(ステップS6)。これにより、上流開閉機構38および下流開閉機構42は、空気路4で循環流路48を形成する所定の開閉状態に切り替わり、循環流路48が空気路4に形成される。
【0062】
循環流路48の空気は、ブロワー29によって閉じた循環流路48を循環し、かつ供給路25の上端、導入路35、および放出路27には流れない。
図2の一点鎖線矢印で示すように、循環流路48の空気流れF2は、例えばブロワー29、下流第2開閉機構44、循環路26、および上流第2開閉機構41を通過して循環流路48を循環する。
図6(B)に示すように、この圧縮過程T5の循環の際に、循環流路48の空気は、断熱圧縮されて温度が上昇する。また、循環流路48の空気の温度が上昇するにしたがって、循環流路48が形成された供給路25および循環路26に熱が伝わる。さらに、導入路35および放出路27にも徐々に熱が伝わり、例えばケース2内の空気、燃料電池3、およびバッテリー8にも徐々に熱が伝わる。
図6(B)に示すように、このように循環流路48の温度上昇した空気の熱は、バッテリー8および燃料電池3を少しずつ暖機し、ケース2内の空気を少しずつ暖気する。
【0063】
一方、循環流路48の空気の圧力が許容上限圧力などの所定圧力を超えると、例えば循環流路48の空気は、リリーフバルブ33によって一部が放出されて減圧する。このため、循環流路48の空気の圧力は、例えば許容上限の圧力を超えない。この場合、リリーフバルブ33から放出された空気は、ケース2内の空気を僅かに暖気する。
【0064】
図2および
図7に示すように、循環開閉情報r5を送信した一定期間の経過後、コントローラー7は、第2温度センサー55に温度検知命令r1を送信し、第2温度センサー55は、循環路26内の空気の温度情報d2を取得し、コントローラー7にこの温度情報d2を送信する(ステップS7)。次に、コントローラー7は、第2温度センサー55の温度情報d2が第2設定温度t2以上であるかを判断する(ステップS8)。
図6(B)に示すように、第2設定温度t2は、第1設定温度t1より高い。第2設定温度t2以上の温度を有する循環流路48の空気は、ケース2の内部空間に放出すると、ケース2内の空気を効果的に暖気し、燃料電池3、ファン5およびバッテリー8を効果的に暖めることができる。
【0065】
このため、燃料電池装置1は、コントローラー7が第2温度センサー55の温度情報d2を第2設定温度t2以上であると判断した場合、燃料電池装置1は圧縮過程T5を終了して放出過程T6に移行する。コントローラー7が第2温度センサー55の温度情報d2を第2設定温度t2より低いと判断した場合、さらに一定期間圧縮過程T5を続けて循環流路48の空気を断熱圧縮して昇温する。その後、コントローラー7は、再び第2温度センサー55に温度検知命令r1を送信して温度情報d2を取得し(ステップS7)、温度情報d2を第2設定温度t2以上であるかを判断する(ステップS8)。このように、コントローラー7が循環流路48の空気の温度を第2設定温度t2以上と判断するまで、この圧縮過程T5を続ける。
【0066】
図2および
図7に示すように、放出過程T6で、コントローラー7は、先ず上流開閉機構38および下流開閉機構42に放出開閉情報r6を送信する(ステップS9)。これにより、上流開閉機構38および下流開閉機構42は、空気路4で放出流路49を形成する所定の開閉状態に切り替わり、放出流路49が空気路4に形成される。
【0067】
図2および
図7に示すように、圧縮過程T5によって第2設定温度t2以上の温度になった放出流路49の空気は、ブロワー29が放出流路49で駆動しているため、供給路25の吸込口から流入したケース2内の空気と共に放出流路49を流れる。このとき、放出流路49の空気は、導入路35には流れない。
図2の二点鎖線矢印に示すように、放出流路49の空気流れF3は、主流F4と分流F5とを含む。主流F4は、上流第1開閉機構39、ブロワー29、下流第3開閉機構45、および放出路27を通過して放出路27の吐出口から放出される。分流F5は、例えば、下流側バルブ32で主流から分かれ、下流第2開閉機構44、循環路26、および上流第2開閉機構41を通過し、上流側バルブ31で再び主流F4に合流する。
【0068】
放出流路49から放出された空気は、ケース2内で拡散され、かつケース2内の空気の温度を効果的に上昇する。
図6(A)に示すように、これにより、燃料電池3、排出路28および導入路35等に熱が伝わり易い。また、放出路27は、下端を燃料電池3側に、具体的には燃料電池3の周囲に配置されているため、燃料電池3、およびその周辺の空気の温度が上昇し易い。
図6(B)に示すように、放出流路49の空気は、暖気した空気を放出し、供給路25の吸込口からケース2内の空気が流入し続けるため、温度が低下する。
【0069】
図7に示すように、次に、コントローラー7は、第3温度センサー56に温度検知命令r1を送信し、第3温度センサー56は、ケース2内の空気の温度情報d3を取得し、コントローラー7はこの温度情報d3を取得する(ステップS10)。次に、コントローラー7は、第3温度センサー56の温度情報d3が第3設定温度t3以上であるかを判断する(ステップS11)。第3設定温度t3は、例えば第1設定温度t1より高く、第2設定温度t2より低い。第3設定温度t3以上の温度を有するケース2内の空気は、ファン5によって燃料電池3の周囲に沿って流動させられると、燃料電池3に効果的に熱を与えることができる。
【0070】
このため、コントローラー7が第3温度センサー56の温度情報d3を第3設定温度t3以上であると判断した場合、コントローラー7は、ファン5に駆動命令r2を送信する(ステップS12)。これにより、ファン5は、燃料電池3に風を送って燃料電池3に熱を与える。コントローラー7が第3温度センサー56の温度情報d3を第3設定温度t3より低いと判断した場合、燃料電池装置1は、放出過程T6を終了して次の暖気サイクルT4に移行し、同様に圧縮過程T5および放出過程T6を行う。このように、コントローラー7がケース2内の空気の温度を第3設定温度t3以上と判断するまで、この暖気サイクルT4を繰り返す。
【0071】
ファン5に駆動命令r2を送信した所定期間の経過後、コントローラー7は、第1温度センサー54に温度検知命令r1を送信し、第1温度センサー54は、燃料電池3の温度情報d1を取得し、コントローラー7にこの温度情報d1を送信する(ステップS13)。次に、コントローラー7は、第1温度センサー54の温度情報d1が第4設定温度t4より高いか判断する(ステップS14)。
図6(A)に示すように、第4設定温度t4は、例えば第1設定温度t1と同じであり、第1設定温度t1より高くてもよい。燃料電池3の温度が第4設定温度t4より高い場合、排出路28や導入路35等の空気路4および燃料電池3の空気室18に残存する水が液体であることが予測できる。また、燃料電池3の温度が第4設定温度t4より高い場合、燃料電池3が暖機され、かつ空気路4とケース2内の空気が暖まっていることが予測できる。
【0072】
このため、コントローラー7が第1温度センサー54の温度情報d1を第4設定温度t4より高いと判断した場合、燃料電池装置1は、暖気過程T2を終了して発電過程T3に移行する。コントローラー7が第1温度センサー54の温度情報d1を第4設定温度t4以下であると判断した場合、燃料電池装置1は、放出過程T6を終了して次の暖気サイクルT4に移行し、同様に圧縮過程T5および放出過程T6を行う。
【0073】
図8は、本発明に係る実施形態のコントローラーの発電過程の動作を示すフローチャートである。
【0074】
図2および
図8に示すように、発電過程T3で、先ずコントローラー7は、上流開閉機構38および下流開閉機構42に供給開閉情報r7を送信する(ステップS15)。これにより、上流開閉機構38および下流開閉機構42は、空気路4で供給流路51を形成する所定の開閉状態に切り替わり、供給流路51が空気路4に形成される。この場合、コントローラー7は、例えば、先ず供給開閉情報r7を上流開閉機構38に送信し、上流開閉機構38が所定の開閉状態に切り替わった後、下流開閉機構42に供給開閉情報r7を送信し、下流開閉機構42が所定の開閉状態に切り替わることが好ましい。
【0075】
供給流路51の空気は、ブロワー29が供給流路51で駆動しているため、供給路25の吸込口から流入したケース2内の空気と共に供給流路51を流れる。このとき、供給流路51の空気は、例えば循環路26および放出路27には流れない。
図2の破線矢印で示すように、供給流路51の空気流れF6は、上流第1開閉機構39、ブロワー29、下流第1開閉機構43、および導入路35を通過する。また、供給流路51の空気流れF6は、循環路26の上端および放出路27の上端に入り込まずに流れるため、損失が少ない。さらに、供給流路51の空気は、空気室18および排出路28を流れる。このとき、供給流路51の空気は、供給流路51、空気室18、および排出路28に残存する水を下流側に向かって押し、水は下流側に流れていく。空気室18に流れ込んだ水は、セパレーター13を通過してもガス拡散層15および電極膜14を傷つけない。このように、空気室18には、供給流路51からケース2内の空気が供給され続ける。この供給流路51の空気の温度は、例えば、第4設定温度t4より高い。
【0076】
次に、コントローラー7は、水素路に水素の流通を開始させる(ステップS16)。これにより、水素室19に水素が供給され、水素室19の水素と空気室18の酸素との酸化還元反応が始まり、燃料電池3は発電を開始する。コントローラー7は、例えば、運転手によるエンジン停止などの操作により、温度センサー6、ファン5、ブロワー29、上流側バルブ31、下流側バルブ32等への通電を停止し、水素路に水素の流通を停止させる。これにより、燃料電池装置1は、発電過程T3が終了する。
【0077】
図1に示すように、放出路27と下流第3開閉機構45は、例えば、設けられなくてもよい。この場合、燃料電池装置1は、循環流路48が形成された空気路4からの伝熱によって暖機され、または、リリーフバルブ33から排出される空気がケース2内の空気を暖気する。また、放出路27および下流第3開閉機構45が設けられない場合、燃料電池装置1は、循環流路48から伝熱させた冷媒を用いて燃料電池3を暖機させてもよく、循環路26を燃料電池3の周囲に配置することにより燃料電池3を直接暖機してもよい。
【0078】
燃料電池3以外の空気路4、水素路、ファン5などの他の構成は、その一部がケース2に覆われておらず、外部に露出していてもよい。リリーフバルブ33は、循環路26に設けられているが、供給路25の上流第1開閉機構39の下流側かつ下流第1開閉機構43の上流側に設けられていてもよい。
【0079】
第1温度センサー54は、燃料電池3の温度を検知するが、これに限らない。第1温度センサー54は、例えば、ケース2内の他の構成、好ましくは、燃料電池3の近傍の他の構成の温度を検知してもよく、これらの周辺の空気の温度を検知してもよい。第2温度センサー55は、循環路26の空気の温度を検知するが、これに限らない。第2温度センサー55は、例えば、供給路25の、詳細には、ブロワー29の上流側の空気の温度を検知してもよく、循環路26または供給路25の温度を検知してもよい。
【0080】
本実施形態に係る燃料電池装置1は、燃料電池3の空気室18に接続される供給路25と、供給路25に設けられて供給路25内の空気を圧縮して燃料電池3に送り込むブロワー29と、供給路25のブロワー29より下流側かつブロワー29より上流側とを接続する循環路26と、供給路25のブロワー29より下流側、かつ供給路25および循環路26の接続部分より下流側に設けられて供給路25における空気の流れを許可または遮断する下流第1開閉機構43と、を備えている。このため、燃料電池装置1は、例えば始動後の暖機運転の際に、供給路25および循環路26で空気を循環させて断熱圧縮を繰り返す。そのため、燃料電池装置1は、空気の温度を効率的に上昇させて暖機できる。
【0081】
また、燃料電池装置1は、下流第1開閉機構43を閉鎖した供給路25および循環路26で空気を断熱圧縮する。このため、燃料電池装置1は、燃料電池3の空気室18に空気を流入させずに空気を昇温する。したがって、燃料電池3の温度が例えば氷点下である場合、空気路4および空気室18の内壁面に付着する氷が、空気の循環によって剥離して空気室18に吹き込むことを防いでいる。このように、燃料電池装置1は、暖機運転の際に空気室18に対向するガス拡散層15および電極膜14が傷付くことを抑止できる。
【0082】
さらに、燃料電池装置1は、供給路25のブロワー29より下流側かつ下流第1開閉機構43より上流側に接続されてケース2内に空気を放出する放出路27と、放出路27に設けられて放出路27での空気の流れを許可または遮断する下流第3開閉機構45と、を備えている。これにより、燃料電池装置1は、下流第3開閉機構45を開放して放出路27から昇温した空気をケース2内に放出する。このため、燃料電池装置1は、昇温した空気によって燃料電池3、下流側バルブ32より下流の導入路35や排出路28等の空気路4、およびケース2内の空気を暖める。また、供給路25は、ケース2内の空気を吸込んで空気の昇温と放出を繰り返して、段階的に空気を暖気できる。このように、燃料電池装置1は効果的に暖機できる。
【0083】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1は、少なくとも三方向において選択的に開閉する下流側バルブ32を備えている。下流第1開閉機構43、下流第2開閉機構44および下流第3開閉機構45は、下流側バルブ32に一体で設けられている。これにより、燃料電池装置1は、循環路26の上端および放出路27の上端にそれぞれ下流第2開閉機構44および下流第3開閉機構45を設けている。そのため、燃料電池装置1は、供給流路51の空気流れF6および放出流路49の空気流れF3の損失を低減できる。
【0084】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1は、燃料電池3に対向して設けられて燃料電池3の周囲に沿って空気を流動させるファン5を備えている。放出路27の下端は、燃料電池3側に配置されている。これにより、ファン5は、暖気された空気を燃料電池3の周囲に沿って流して、燃料電池3を効果的に暖機できる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る燃料電池装置1は、ケース2内の少なくとも一部の温度を検知する第1温度センサー54を備えている。第1温度センサー54が検知した温度が第1設定温度t1以下である場合、下流第1開閉機構43および下流第3開閉機構45を閉鎖し、かつ下流第2開閉機構44を開放して循環路26に空気を流し、第1温度センサー54が検知した温度が第1設定温度t1より高い場合、下流第3開閉機構45を閉鎖し、かつ下流第1開閉機構43を開放して燃料電池3に空気を流す。これにより、燃料電池装置1は、例えば、燃料電池3の暖機が必要な温度として第1設定温度t1を設定する。第1温度センサー54の検知温度が第1設定温度t1以下である場合、燃料電池装置1は、供給路25および循環路26で空気を循環させて断熱圧縮を繰り返し、空気を暖気して燃料電池3を暖機できる。一方、第1温度センサー54の検知温度が第1設定温度t1より高い場合、燃料電池装置1は、供給路25から燃料電池3に空気を流して発電を開始できる。
【0086】
さらにまた、本実施形態に係る燃料電池装置1によれば、第1温度センサー54は、燃料電池3の温度を検知する。これにより、燃料電池3の暖気が必要な温度として第1設定温度t1を的確に設定できる。
【0087】
さらにまた、本実施形態に係る燃料電池装置1は、供給路25および循環路26の少なくともいずれかの空気の温度を検知する第2温度センサー55を備えている。第1温度センサー54が検知した温度が第1設定温度t1以下であり、かつ第2温度センサー55が検知した温度が高い第2設定温度t2以上である場合、下流第1開閉機構43を閉鎖し、かつ下流第3開閉機構45を開放する。第2設定温度t2は、第1設定温度t1より高い。これにより、燃料電池装置1は、例えば、昇温した空気を放出路27から放出した場合に、効果的に燃料電池3を暖機できる温度として第2設定温度t2を設定する。第1温度センサー54の検知温度が第1設定温度t1以下であり、かつ第2温度センサー55の検知温度が第2設定温度t2以上である場合、燃料電池装置1は、昇温した空気を放出路27から放出して燃料電池3を効果的に暖機できる。
【0088】
したがって、本実施形態に係る燃料電池装置1によれば、信頼性の高い暖機ができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・燃料電池装置、2・・・ケース、3・・・燃料電池、4・・・空気路、5・・・ファン、6・・・温度センサー、7・・・コントローラー、11・・・貫通孔、13・・・セパレーター、14・・・電極膜、15、16・・・ガス拡散層、17・・・マニホールドプレート、18・・・空気室、19・・・水素室、21・・・吐出面、22・・・吸込面、25・・・供給路、26・・・循環路、27・・・放出路、28・・・排出路、29・・・供給路、29・・・ブロワー、31・・・上流側バルブ、32・・・下流側バルブ、33・・・リリーフバルブ、34・・・圧縮路、35・・・導入路、36a~36c・・・ポート、37a~37d・・・ポート、38・・・上流開閉機構、39・・・上流第1開閉機構、41・・・上流第2開閉機構、42・・・下流開閉機構、43・・・下流第1開閉機構、44・・・下流第2開閉機構、45・・・下流第3開閉機構、47・・・始動流路、48・・・循環流路、49・・・放出流路、51・・・供給流路、54・・・第1温度センサー、55・・・第2温度センサー、56・・・第3温度センサー、d1~d3・・・温度情報、F4・・・主流、F5・・・分流、Li・・・リチウム、r1・・・温度検知命令、r2、r3・・・駆動命令、r4・・・始動開閉情報、r5・・・循環開閉情報、r6・・・放出開閉情報、r7・・・供給開閉情報、S1~S16・・・ステップ、t1・・・第1設定温度、t2・・・第2設定温度、t3・・・第3設定温度、t4・・・第4設定温度、T1・・・始動過程、T2・・・暖気過程、T3・・・発電過程、T4・・・暖気サイクル、T5・・・圧縮過程、T6・・・放出過程