(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076627
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】事故指標算出装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G08G1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061234
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2022121724の分割
【原出願日】2018-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉木 知
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 耕史
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる指標を用いて、車両における事故の生じやすさに関連する指標を算出できるようにすることが一例として挙げられる。
【解決手段】 事故指標算出装置10の算出用データ記憶部120は、地図データ記憶装置とともに使用される。事故指標算出装置10の第1指標取得部110は、車両60の走行経路を特定するための情報(走行経路特定情報)を取得し、この走行経路特定情報及び地図データ記憶装置50が記憶している地図データを用いて、第1指標を取得する。第1指標は、走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連している。算出部130は、車両60の運転者又は車両60における事故(例えば交通事故)の起こしやすさに関連する指標(第2指標)を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を用いて、事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出部を備える事故指標算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故指標算出装置、情報提供装置、コンテンツ選択装置、保険料設定装置、事故指標算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が道路を通行する際、その車両が事故を起こす可能性を算出することは重要である。例えば特許文献1には、運転手の運転行動に関する複数の特徴量を取得し、取得した特徴量を用いて事故が発生する確率を算出する。ここで用いられる特徴量は、車間距離、前方カメラが一時停止標識を検出したときの車両の速度、脇見運転が継続した距離、及び前方カメラが赤信号を検出した時の交差点の車両の通過時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、従来とは異なる指標を用いて、車両における事故の生じやすさに関連する指標を算出することを検討した。本発明が解決しようとする課題としては、従来とは異なる指標を用いて、車両における事故の生じやすさに関連する指標を算出できるようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得する第1指標取得部と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出部と、
を備える事故指標算出装置である。
【0006】
第2の発明は、運転者が車両を用いて走行した走行経路に含まれる単位道路の細かさと、前記走行経路における走行速度と、に応じて定まる第1指標を取得する取得部と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出部と、
を備える事故指標算出装置である。
【0007】
第3の発明は、コンピュータが、
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得し、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する、事故指標算出方法である。
【0008】
第4の発明は、コンピュータに、
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得する第1指標取得機能と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出機能と、
を持たせるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【
図1】実施形態に係る事故指標算出装置の使用環境を示す図である。
【
図2】事故指標算出装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】算出用データ記憶部が記憶しているデータの一例をテーブル形式で示す図である。
【
図4】情報提供装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】コンテンツ選択装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】保険料設定装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】事故指標算出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】事故指標算出装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図8のステップS20の第1例を示すフローチャートである。
【
図10】
図8のステップS20の第2例を示すフローチャートである。
【
図11】
図8のステップS20の第3例を示すフローチャートである。
【
図12】情報提供装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】コンテンツ選択装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】保険料設定装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る事故指標算出装置10の使用環境を示す図である。事故指標算出装置10は、地図データ記憶装置50とともに使用され、車両60の運転者又は車両60における事故(例えば交通事故)の起こしやすさに関連する指標(以下、第2指標と記載)を算出する。例えば事故指標算出装置10は、車両60の走行経路を特定するための情報(以下、走行経路特定情報と記載)を取得し、この走行経路特定情報及び地図データ記憶装置50が記憶している地図データを用いて、第1指標を取得する。第1指標は、走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連している。なお、第1指標は、運転者が車両を用いて走行した走行経路に含まれる単位道路の細かさと、前記走行経路における走行速度と、に応じて定まっていると見なすこともできる。
【0013】
本発明者が検討した結果、この第1指標は、事故の起こしやすさに相関を有している。事故の起こしやすさには、車両60が原因で事故が生じる場合と、車両60が事故に巻き込まれる場合の双方を含む。そして、事故指標算出装置10は、この第1指標を用いて、上記した第2指標を算出する。第2指標の一例は、車両60又は車両60の運転者の事故の起こしやすさによって増減する数値である。
【0014】
事故指標算出装置10は、車両60の走行経路特定情報を、例えば、車両60に搭載された装置から取得する。この装置は、例えば車両60に組み付けられた走行経路記憶装置、又は、車両60の搭乗者が所持している携帯通信端末である。後者の場合、事故指標算出装置10は、車両60の外部に携帯通信端末が位置しているタイミングで走行経路特定情報を取得してもよいし、車両60の内部に携帯通信端末が位置しているタイミングで走行経路特定情報を取得してもよい。いずれの場合においても、この装置は、例えば車両60が走行すべきルートを案内するナビゲーション機能を有していてもよい。
【0015】
走行経路特定情報には、走行地点別の走行速度が含まれている。また、車両60に搭載された上記装置は、走行経路特定情報の他に、第2指標の算出に必要な他の情報を事故指標算出装置10に送信してもよい。事故指標算出装置10に送信される情報の一例として、急アクセル(例えばアクセルペダルが基準以上踏み込まれた場合、又は正の加速度が基準以上になった場合)の回数、や急ブレーキ(例えばブレーキペダルが基準以上踏み込まれた場合、又は負の加速度が基準以上になった場合)の回数、急ハンドル(ハンドルの回転速度及び回転角度の少なくとも一方が基準値以上になった場合、又は左右方向の加速度が基準以上になった場合)の回数である。
【0016】
事故指標算出装置10は、例えば車両60の外部に位置している。この場合、事故指標算出装置10は、車両60に搭載されている装置と、例えば無線通信網を介して通信する。なお、事故指標算出装置10は、車両60の走行経路定情報を、車両60の外部のサーバから取得してもよい。この場合、このサーバは、走行経路情報を車両60に搭載された装置から取得する。
【0017】
なお、事故指標算出装置10は、車両60に搭載されていてもよい。
【0018】
地図データ記憶装置50は、地図データを記憶している。この地図データは、道路に関する様々な情報(以下、道路情報と記載)を含んでいる。道路情報は、例えば、道路を特定するノード及びリンク、並びに、各リンクの長さ、車線数、制限速度、及び幅員が含まれている。なお、一つのリンクを複数の区間に分割し、各区間別に車線数、制限速度、及び幅員の少なくとも一つが設定されていてもよい。なお、地図データ記憶装置50は事故指標算出装置10の一部であってもよい。
【0019】
地図データ記憶装置50は、さらに、事故が起こる頻度が基準値以上の地点または地域を、危険地点として記憶している。危険地点を示す情報は、例えば地図データの一部となっている。この危険地点には、事故が起こる頻度すなわち危険度に応じて複数のレベルが設定されている。この場合、地図データ記憶装置50は、危険地点の位置を示す情報を、上記したレベルを示す情報に紐づけて記憶している。なお、このレベルは、段階的に設定されていてもよいし、無断階に設定されていてもよい。上記したレベルを示す情報は、事故が起こる頻度を示す情報(例えば頻度を示す数値)であってもよい。また、レベルを示す情報は、ヒヤリハット情報のような事故に繋がる可能性のある情報に基づいて定められてもよい。
【0020】
また、地図データ記憶装置50は、地図データの一部として、一時停止などの所定のルールが設定されている地点を、そのルールに紐づけて記憶している。
【0021】
事故指標算出装置10で算出された第2指標は、情報提供装置20、コンテンツ選択装置30、及び保険料設定装置40で使用される。情報提供装置20は、地図データ記憶装置50が記憶している危険地点から、車両60の制御装置または車両60の運転者に対して警告を通知すべき地点を選択する基準を、第2指標を用いて設定する。情報提供装置20は、車両60で用いられるナビゲーション機能の一部であってもよい。コンテンツ選択装置30は、第2指標を用いて、車両60の運転者に対して提供すべきコンテンツを選択する。保険料設定装置40は、車両60又は車両60の運転者に対して設定すべき保険料を、第2指標を用いて設定する。情報提供装置20、コンテンツ選択装置30、及び保険料設定装置40が行う処理の詳細については後述する。
【0022】
図2は、事故指標算出装置10の機能構成の一例を示す図である。本図に示す事故指標算出装置10は、第1指標取得部110、算出用データ記憶部120、算出部130、指標記憶部140、及び送信部150を備えている。
【0023】
第1指標取得部110は、上記した第1指標を取得する。第1指標取得部110が第1指標を取得する方法の一つに、第1指標取得部110が第1指標を算出することがある。
【0024】
例えば第1指標取得部110は、地図データ記憶装置50が記憶している地図データ及び車両60の走行経路を用いて第1指標、例えば単位道路数を特定する。具体的には、第1指標取得部110は、車両60の走行経路特定情報を、例えば車両60に搭載された装置から取得する。また、第1指標取得部110は、走行経路特定情報を用いて車両60の走行経路を特定し、この走行経路に関する道路情報を地図データ記憶装置50から取得する。そして第1指標取得部110は、走行経路特定情報及び道路情報を用いて、第1指標を算出する。第1指標は、例えば単位道路の数(単位道路数)である。単位道路は、例えば地図データ上ではリンク、または互いに隣り合う2つのノードの間として定義される。リンクの数を数える場合、リンクIDの変化数をカウントしてもよい。ここで、互いに繋がっている2つ以上のリンクが一つの単位道路として扱われてもよい。なお、第1指標の算出処理の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0025】
ただし、第1指標は単位道路の数に限定されない。例えば第1指標は、走行経路に含まれる道路の分岐の数又は交差数、交差点の数、道路の密集度(例えば道路の交差点間の平均距離又は例えば走行している地区などの所定面積内において当該地区に存在する道路が占める割合)であってもよい。道路の密集度を用いる場合には、例えば密集度の高さを係数として走行距離に乗算する、時間当たりで評価する場合、更に走行時間で除算する。また、道路の分岐の数又は交差数、交差点の数については、地図データではなく車両60に搭載されたセンサ(撮像センサやLiDAR)によって事前に生成されていてもよい。道路の分岐の数又は交差数、交差点の数について時間当たりの通過数を求める場合、例えば所定時間内に通過した道路の分岐の数又は交差数、交差点の数を検出して時間当たりの通過数を算出する。
【0026】
上記した第1指標の算出機能は、事故指標算出装置10の外部の装置が有していてもよい。この場合、事故指標算出装置10は、この外部の装置から第1指標を取得する。
【0027】
算出用データ記憶部120は、第1指標から第2指標を算出する際に必要なデータ、例えば第1指標が第2指標に与える影響を示す係数を記憶している。算出用データ記憶部120が記憶しているデータの一例は、テーブルを用いて後述する。
【0028】
算出部130は、第1指標取得部110が取得した第1指標及び算出用データ記憶部120が記憶しているデータを用いて、第2指標を算出する。また、算出部130は、走行経路特定情報を用いて、第2指標の算出に必要な情報を生成する。さらに算出部130は、必要に応じて、第2指標の算出に必要な情報を取得する。この情報の取得方法は、例えば車両識別情報及び運転者識別情報を用いた外部データベースの検索であってもよいし、事故指標算出装置10のユーザからの入力であってもよい。
【0029】
指標記憶部140は、算出部130が算出した第2指標を、車両60を識別する情報(以下、車両識別情報と記載)及び車両60の運転者を識別する情報(以下、運転者識別情報と記載)の少なくとも一方に紐づけて記憶する。ここで用いられる車両識別情報及び運転者識別情報は、例えば第1指標取得部110によって走行経路特定情報とともに取得されるが、他の方法を用いて取得されてもよい。
【0030】
送信部150は、情報提供装置20、コンテンツ選択装置30、又は保険料設定装置40から運転者識別情報及び車両識別情報の少なくとも一方を取得すると、取得した情報に対応する第2指標を指標記憶部140から読み出し、この第2指標を返信する。
【0031】
図3は、算出用データ記憶部120が記憶しているデータの一例をテーブル形式で示す図である。上記したように、第1指標から第2指標を算出する際に必要なデータを記憶している。この必要なデータは、例えば第1指標を含む複数のパラメータ値から第2指標を算出する式を含む。
図3は、この式に含まれるパラメータとなる項目及びそのパラメータに対応する係数を示している。
図3に示す例において、パラメータには、上記した第1指標の他に、速度超過の回数(速度超過値によって複数に分けられていてもよい。例えば第1の基準値以上の速度超過値の回数、第2の基準値(>第1の基準値)以上の速度超過値の回数など。)、第2の交通違反キップ(例えば告知書)の数、一時停止の箇所を通過した回数、地図データ記憶装置50で定義されている危険地点(実際に事故が発生した地点の情報に基づいて定められてもよいし、ヒヤリハット地点を含んでもよい、また、これらと類似性のある道路が設定されていてもよい)を通過した回数、一時停止に違反した回数、一方通行を通過した回数、一方通行に違反(逆走)した回数、信号を通過した回数、信号を無視した回数、急アクセルの回数、急ブレーキの回数、及び急ハンドルの回数の少なくとも一つが含まれる。これら各パラメータの値には、例えば単位時間(例えば一時間)当たりの平均値が用いられる。
【0032】
これらのうち、第1の交通違反切符の数及び第2の交通違反キップの数は、車両識別情報及び運転者識別情報を用いた外部データベースの検索、又は、事故指標算出装置10のユーザからの入力、又は、速度超過などの違反行動に基づく検出結果に基づき算出されるものによって、算出部130に取得される。また、危険地点を通過した回数及び一時停止に違反した回数は、走行経路特定情報(走行地点別の走行速度を含む)及び地図データを用いて算出部130によって算出される。例えば算出部130は、一時停止すべき地点で車両60の速度が0になっていなかった場合、車両60が一時停止に違反したと判断できる。さらに、急アクセルの回数、急ブレーキの回数及び急ハンドルの回数は、例えば車両60に搭載された装置によってカウントされており、この装置から事故指標算出装置10に送信され、最終的に算出部130によって取得される。なお、上記した各種パラメータの取得方法(算出方法)は、上記した例に限定されない。
【0033】
図4は、情報提供装置20の機能構成の一例を示す図である。本図に示す情報提供装置20は、第2指標取得部210、選択基準設定部220、地点選択部230、及び送信部240を備えている。第2指標取得部210は、事故指標算出装置10から第2指標を取得する。選択基準設定部220は、車両60又は車両60の運転者に対して警告を通知すべき地点または地域を選択する基準を、第2指標を用いて設定する。地点選択部230は、選択基準設定部220が設定した基準を用いて、地図データ記憶装置50に記憶されている危険地点から、警告を通知すべき地点または地域を選択する。送信部240は、選択した地点または地域を、外部の装置、例えば車両60に搭載されているナビゲーション装置に送信する。送信先のナビゲーション装置は、車両60に組み付けられた装置であってもよいし、車両60の搭乗者が所持している携帯通信端末であってもよい。
【0034】
図5は、コンテンツ選択装置30の機能構成の一例を示す図である。本図に示すコンテンツ選択装置30は、第2指標取得部310、コンテンツ記憶部320、コンテンツ選択部330、及び送信部340を備えている。第2指標取得部310は、事故指標算出装置10から第2指標を取得する。
【0035】
コンテンツ記憶部320は、車両60の運転者に提供すべきコンテンツを、第2指標の値を特定する情報に紐づけて記憶している。コンテンツ記憶部320が記憶しているコンテンツは、例えば運転者の教育用コンテンツであるが、これに限定されない。また、上記した第2指標の値を特定する情報は、例えばそのコンテンツが提供されるべき第2指標の範囲を直接的または間接的に示している。なお、コンテンツ記憶部320はコンテンツ選択装置30の外に位置していてもよい。
【0036】
コンテンツ選択部330は、第2指標取得部310が設定した第2指標に対応するコンテンツをコンテンツ記憶部320から読み出す。送信部340は、コンテンツ選択部330が読み出したコンテンツを外部の装置に送信する。コンテンツの送信先は、ディスプレイであってもよいし、車両60の運転者の端末であってもよい。
【0037】
図6は、保険料設定装置40の機能構成の一例を示す図である。本図に示す保険料設定装置40は、第2指標取得部410、設定ルール記憶部420、保険料設定部430、及び送信部440を備えている。第2指標取得部410は、事故指標算出装置10から第2指標を取得する。設定ルール記憶部420は、保険料を設定するためのルールを記憶している。このルールは、例えば複数のパラメータから保険料を算出するためのテーブルまたは演算式である。そしてこの複数のパラメータのひとつが、第2指標である。なお、設定ルール記憶部420は保険料設定装置40の外に位置していてもよい。
【0038】
保険料設定部430は、第2指標取得部410が取得した第2指標、及び設定ルール記憶部420が記憶している情報を用いて、保険料を算出する。送信部440は、保険料設定部430が算出した保険料を外部の装置に送信する。コンテンツの送信先は、ディスプレイであってもよいし、車両60の運転者の端末であってもよい。
【0039】
図7は、事故指標算出装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。事故指標算出装置10の主な構成は、集積回路を用いて実現される。この集積回路は、バス602、プロセッサ604、メモリ606、ストレージデバイス608、入出力インタフェース610、及びネットワークインタフェース612を有する。バス602は、プロセッサ604、メモリ606、ストレージデバイス608、入出力インタフェース610、及びネットワークインタフェース612が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ604などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ604は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ606は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス608は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0040】
入出力インタフェース610は、事故指標算出装置10を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。
【0041】
ネットワークインタフェース612は、事故指標算出装置10を通信網に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース612が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0042】
ストレージデバイス608は、事故指標算出装置10の各機能要素を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ604は、このプログラムモジュールをメモリ606に読み出して実行することで、事故指標算出装置10の各機能を実現する。また、ストレージデバイス608は算出用データ記憶部120としても機能する。
【0043】
なお、情報提供装置20、コンテンツ選択装置30、及び保険料設定装置40のハードウェア構成も、
図7に示した事故指標算出装置10のハードウェア構成と同様である。
【0044】
図8は、事故指標算出装置10が行う処理の一例を示すフローチャートである。まず、第1指標取得部110は、第2指標の算出対象となる車両60の車両識別情報及びその運転者の運転者識別情報の少なくとも一方を取得する。次いで、第1指標取得部110は、その識別情報に対応する走行経路特定情報を、車両60に搭載されている装置又は走行経路を記憶しているサーバから取得する。この際、第1指標取得部110は、第1指標の算出及び第2指標の算出に必要な他の情報も取得する(ステップS10)。
【0045】
次いで第1指標取得部110は、第1指標を算出する(ステップS20)。第1の算出処理の詳細については後述する。
【0046】
次いで、算出部130は、算出用データ記憶部120が記憶しているデータ、及び第1指標取得部110が算出した第1指標を用いて、第2指標を算出する(ステップS30)。詳細には、算出部130は、第1指標を取得するとともに、第2指標の算出に必要な他に必要なデータを取得する。これら必要なデータの一例、及びその取得方法は、
図3を用いて説明した通りである。そして、算出部130は、算出用データ記憶部120が記憶している式に、取得した各種データ(パラメータの値)を代入することにより、第2指標を算出する。その後、算出部130は、第2指標を指標記憶部140に記憶させる。
【0047】
図9は、
図8のステップS20の第1例を示すフローチャートである。まず第1指標取得部110は、走行経路特定情報が示す走行経路を認識し、地図データ記憶装置50から、認識した走行経路と重なる道路の地図データを取得する。この地図データには、道路情報、例えば各リンクの長さ、車線数、制限速度、及び幅員が含まれる(ステップS102)。次いで、取得した道路情報に含まれるリンク及びノードの少なくとも一方を認識する(ステップS104)。
【0048】
そして第1指標取得部110は、ステップS104で認識したリンク及び/又はノードを用いて、単位道路数を算出する(ステップS106)。例えば第1指標取得部110は、ステップS104でリンクを認識した場合、認識したリンクの数を単位道路数にする。また第1指標取得部110は、ステップS104でノードを認識した場合、「認識したノードの数-1」を単位道路数としてもよいし、認識したノードから走行経路に含まれるリンクを特定し、特定したリンクの数を単位道路数としてもよい。
【0049】
図10は、
図8のステップS20の第2例を示すフローチャートである。まず、第1指標取得部110は、
図9のステップS102,S104と同様の処理を行う(ステップS112,S114)。ステップS114でノードを認識していた場合、認識したノードから走行経路に含まれるリンクを特定する。このリンクの特定処理は、
図9のステップS106を用いて説明した通りである。
【0050】
次いで第1指標取得部110は、認識したリンクそれぞれの長さを、道路情報を用いて特定する。そして、第1指標取得部110は、リンクの長さに応じた係数を、リンク別に特定し(ステップS116)、特定した係数を用いて補正後の単位道路数を算出する(ステップS118)。一例として、ステップS116において、係数は、リンクが長いほど大きくなるように設定される。言い換えると、この係数は、リンクの数を示す「1」という値を、そのリンクの長さに応じて補正した値とみなすこともできる。そしてステップS118において、第1指標取得部110は、リンク毎に設定された係数を加算することにより、補正後の単位道路数を算出する。なお、リンクの長さを係数に変換するためのルール(例えば変換式)は、事故指標算出装置10に予め記憶されている。
【0051】
図11は、
図8のステップS20の第3例を示すフローチャートである。まず、第1指標取得部110は、
図9のステップS102,S104と同様の処理を行う(ステップS122,S124)。ステップS124でノードを認識していた場合、認識したノードから走行経路に含まれるリンクを特定する。このリンクの特定処理は、
図9のステップS106を用いて説明した通りである。
【0052】
次いで第1指標取得部110は、認識したリンクそれぞれの制限速度を、道路情報を用いて特定する。そして、第1指標取得部110は、リンクの制限速度に応じた係数を、リンク別に特定し(ステップS126)、特定した係数を用いて補正後の単位道路数を算出する(ステップS128)。一例として、ステップS126において、係数は、制限速度が速いほど大きくなるように設定される。言い換えると、この係数は、リンクの数を示す「1」という値を、そのリンクの制限速度に応じて補正した値とみなすこともできる。そしてステップS128において、第1指標取得部110は、リンク毎に設定された係数を加算することにより、補正後の単位道路数を算出する。なお、制限速度を係数に変換するためのルール(例えば変換式)は、事故指標算出装置10に予め記憶されている。
【0053】
本例において、制限速度の代わりに車線数及び幅員の一方が用いられてもよい。この場合、係数は、例えば車線数が多いほど大きくなるように設定される。また、係数は、例えば幅員が狭いほど大きくなるように設定される。また、制限速度、車線数、及び幅員の少なくとも2つが用いられてもよい。
【0054】
図12は、情報提供装置20が行う処理の一例を示すフローチャートである。まず情報提供装置20の第2指標取得部210は、対象となる車両60の車両識別情報及び運転者の運転者識別情報の少なくとも一方を取得する。この取得は、例えば図示しない端末(例えば車両60に搭載されているナビゲーション装置や、車両60の搭乗者が保持しているナビゲーション機能付の携帯端末など)から通信網等を介して行われてもよいし、情報提供装置20が有する入力デバイスへの入力によって行われてもよい。この際、第2指標取得部210は、車両60又は端末の現在位置を取得してもよい。次いで第2指標取得部210は、取得した車両識別情報又は運転者識別情報に対応する第2指標を、事故指標算出装置10の指標記憶部140から読み出す(ステップS202)。
【0055】
次いで情報提供装置20の選択基準設定部220は、ステップS202で取得した第2指標を用いて、車両60又は車両60の運転者に対して警告を通知すべき地点または地域を選択する基準(以下、選択基準と記載)を、第2指標を用いて設定する(ステップS204)。一例として、選択基準設定部220は、第2指標が高くなるにつれて、上記した選択基準を、危険度が低い方向に変更する。この変更は段階的であってもよいし、無段階であってもよい。
【0056】
次いで情報提供装置20の地点選択部230は、地図データ記憶装置50が記憶している危険地点のうち、危険度がステップS204で設定した選択基準を満たす地点または地域を、通知すべき地点または地域として選択する(ステップS206)。例えば地点選択部230は、危険度が選択基準以上の危険地点を選択する。そして情報提供装置20の送信部240は、地点選択部230が選択した危険地点を出力する(ステップS208)。この出力は、例えば情報提供装置20に接続されたディスプレイやプリンターに対して行われてもよいし、車両識別情報又は運転者の運転者識別情報を送信してきた端末に対して行われてもよい。
【0057】
なお、ステップS206において、地点選択部230は、車両60又は端末の現在位置をさらに用いて、通知すべき地点または地域を選択してもよい。例えば地点選択部230は、危険度が選択基準以上の危険地点のうち、車両60又は端末の現在位置から基準距離以内にある地点または地域を、通知すべき地点または地域として選択する。
【0058】
図13は、コンテンツ選択装置30が行う処理の一例を示すフローチャートである。まずコンテンツ選択装置30の第2指標取得部310は、対象となる車両60の車両識別情報及び運転者の運転者識別情報の少なくとも一方を取得する。これらの情報の取得方法は、情報提供装置20の第2指標取得部210において説明した方法と同様である(ステップS302)。
【0059】
次いでコンテンツ選択装置30のコンテンツ選択部330は、第2指標取得部310が取得した第2指標に対応するコンテンツをコンテンツ記憶部320から読み出す(ステップS304)。そして送信部340は、コンテンツ選択部330が読み出したコンテンツを出力する(ステップS306)。この出力は、例えばコンテンツ選択装置30に接続されたディスプレイやプリンターに対して行われてもよいし、車両識別情報又は運転者の運転者識別情報を送信してきた端末に対して行われてもよい。
【0060】
図14は、保険料設定装置40が行う処理の一例を示すフローチャートである。まず保険料設定装置40の第2指標取得部410は、対象となる車両60の車両識別情報及び運転者の運転者識別情報の少なくとも一方を取得する。また第2指標取得部410は、保険料の設定に必要な他の情報も取得する。これらの情報の取得方法は、情報提供装置20の第2指標取得部210において説明した方法と同様である(ステップS402)。
【0061】
次いで保険料設定装置40の保険料設定部430は、第2指標取得部410が取得した第2指標に対応する保険料の設定ルールを設定ルール記憶部420から読み出す(他のパラメータの設定:ステップS404)。次いで保険料設定部430は、読み出した設定ルール、及び第2指標取得部410が取得した情報を用いて保険料を設定する(ステップS406)。そして送信部440は、設定された保険料を出力する(ステップS408)。この出力は、例えば保険料設定装置40に接続されたディスプレイやプリンターに対して行われてもよいし、車両識別情報又は運転者の運転者識別情報を送信してきた端末に対して行われてもよい。
【0062】
以上、本実施形態によれば、事故指標算出装置10は、第1指標を用いて、車両60の運転者又は車両60における事故の起こしやすさに関連する第2指標を算出する。第1指標は走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連しており、事故の起こしやすさと相関を有している。このため、第2指標は事故の起こしやすさと高い相関を有している。
【0063】
また、第1指標として走行経路に含まれるリンクの数又はノードの数を用いる場合、事故指標算出装置10は、地図データ記憶装置50が記憶している情報を用いて容易に第1指標を算出することができる。
【0064】
また、車両60の走行経路特定情報を車両内に存在する携帯通信端末から取得する場合、車両との接続や端末の車両への固定が不要なため、簡便な構成で取得することができる。
【0065】
(変形例1)
算出用データ記憶部120が記憶している情報、すなわち第2指標の算出に用いられる情報として、さらに下記のものの何れかを算出に用いてもよい。この場合、より正確な第2指標を算出することができる。
・踏切の通過回数
・踏切不停止の回数
・最高時速が所定値以下に設定されている区域(例えばZONE30)の通過回数(侵入から退出で一回としてもよいし、通過回数でなくZONE30内の走行距離を評価してもよい)
・通行禁止違反行動の回数
・大きい交差点(車線数が基準値以上、例えば片側3車線以上)、又は複雑な交差点(交差する道路の数が基準値以上、例えば5叉路以上)の通過回数
・車両識別情報及び車種情報の少なくとも一方(例えば、車種情報を併せて統計処理することによって、属性情報の影響度を第2指標に反映させる)
・運転者識別情報及び運転者の属性情報(性別、年齢など)の少なくとも一方(例えば、属性情報を併せて統計処理することによって、属性情報の影響度を第2指標に反映させる)
【0066】
(変形例2)
第1指標は、下記の道路環境データに基づいてさらに補正されてもよい
・動的パラメータ
リンクに対する走行時の道路の路面状況及び渋滞情報の少なくとも一方。一例では、路面状況が凍結(または天候が雪など)の場合には、係数を大きく設定する。
・静的パラメータ
上記したZONE30、交差点の大きさ、信号機有無、自動車専用道路(例えば自動車専用道路は、一般道路より通過リンク数が比較的少なくことを考慮し重みを小さくする)、リンク形状(例えば曲率など。曲率で重みをつけ、道路の複雑さを考慮する)、通行禁止情報(例えば通行禁止となる時間帯及び日時(曜日)、または、通行不可、居住者のみ通行可など。これらに応じたその重みづけを行う(道路の複雑さとその暴露量に繋がる))、一方通行情報(一方通行となる時間帯及び日時(曜日)。これらに応じた重みづけを行う)、及び道路管理者(道路管理者によって異なる道路の管理状況によって重みづけする)の少なくとも一つ。
【0067】
(変形例3)
第2指標の利用としては、上記実施例に限定されない。例えば、運転手のスコアに応じて各種優待サービス(リース料、レンタカー利用料等)を受けられるようにしても良い。また、管理者によるタクシー運転手、バス運転手、物流運転手の評価に用いてもよい。運転スコアを時系列的に記憶・評価することにより、第2指標の変化が基準を満たしたか否か(急激な変化があったか否か)に基づいて、認知症の予兆把握を行ってもよい。
【0068】
また、第2指標を運転ルートレコメンドサービスに利用してもよい。例えば、所定の距離長を持つ経路において算出された第2指標の情報を収集し、経路と第2指標を統計処理することにより、(個人ごとにまたは一般的に)事故が発生する確率が低い経路を提案する、若しくは高い経路を避ける、というように利用しても良い。
【0069】
(変形例4)
一時停止をしなかった回数について、見通しの悪い場所において一時停止をしなかった回数と、それ以外の場所において一時停止をしなかった回数とを分けて算出に用いてもよい。その際には、見通しの悪い場所において一時停止をしなかった回数がより大きく事故確率に影響が出るように係数を変更してもよい。
【0070】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得する第1指標取得部と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出部と、
を備える事故指標算出装置。
2.
1.に記載の事故指標算出装置において、
前記単位道路は、地図データにおいてノード及びリンクの少なくとも一方を用いて定められており、
前記第1指標取得部は、前記車両の走行経路及び前記地図データを用いて前記単位道路数を特定する、事故指標算出装置。
3.
1.又は2.に記載の事故指標算出装置において、
前記第1指標取得部は、前記第1指標として前記単位道路数を算出する、事故指標算出装置。
4.
3.に記載の事故指標算出装置において、
前記第1指標取得部は、前記走行経路に含まれる前記単位道路それぞれの長さを用いて補正された前記単位道路数を、前記第1指標とする事故指標算出装置。
5.
3.又は4.に記載の事故指標算出装置において、
前記第1指標取得部は、前記走行経路に含まれる前記単位道路それぞれの制限速度、車線数及び幅員の少なくとも一つを用いて補正された前記単位道路数を、前記第1指標とする事故指標算出装置。
6.
1.~5.のいずれか一つに記載の事故指標算出装置が算出した前記第2指標を取得する第2指標取得部と、
前記運転者に対して警告を通知すべき地点または地域を選択する基準を前記第2指標を用いて設定する選択基準設定部と、
を備える情報提供装置。
7.
1.~5.のいずれか一つに記載の事故指標算出装置が算出した前記第2指標を取得する第2指標取得部と、
前記運転者に対して提供すべきコンテンツを前記第2指標を用いて選択するコンテンツ選択部と、
を備えるコンテンツ選択装置。
8.
1.~5.のいずれか一つに記載の事故指標算出装置が算出した前記第2指標を取得する第2指標取得部と、
前記運転者又は前記車両に対して設定すべき保険料を前記第2指標を用いて設定する保険料設定部と、
を備える保険料設定装置。
9.
運転者が車両を用いて走行した走行経路に含まれる単位道路の細かさと、前記走行経路における走行速度と、に応じて定まる第1指標を取得する取得部と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出部と、
を備える事故指標算出装置。
10.
コンピュータが、
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得し、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する、事故指標算出方法。
11.
コンピュータに、
車両が走行した走行経路に含まれる単位道路の単位走行時間あたりの数である単位道路数に関連する第1指標を取得する第1指標取得機能と、
前記第1指標を用いて、前記車両の運転者又は前記車両における事故の生じやすさに関連する第2指標を算出する算出機能と、
を持たせるプログラム。