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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076697
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】評価装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062392
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2021575837の分割
【原出願日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2020018344
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 一夫
(57)【要約】
【課題】運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価可能な評価装置を構成する端末装置を提供する。
【解決手段】評価装置1は、第1情報取得部11と、第2情報取得部12と、記憶部13と、算出部14と、評価部15とを備えている。第1情報取得部11は移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する。第2情報取得部12は移動体を操作する操作装置の操作速度又操作量に関する第2情報を取得する。記憶部13は、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する。算出部14は、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する。そして、評価部15は、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報と、前記移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報と、を検出する検出部と、
前記第2情報取得時における前記第1情報を関連付けて評価装置へ送信し、前記関連情報における前記視覚情報量と統計値との関係に基づく、前記移動体を操作する運転者の運転適合度を前記評価装置から受信する通信部と、
前記運転適合度を出力する出力部と、
を備えている端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両運転支援装置が開示されている。この車両運転支援装置では、まずブレーキの操作開始から車両停止までの車両の減速挙動データ、又はステアリングハンドルの操作開始から操作終了までのハンドル操作データが学習される。次に、ブレーキの操作時又はステアリングハンドルの操作時に、最新の減速挙動データ又はハンドル操作データと、過去の減速挙動データ又はハンドル操作データとが比較される。そして、比較結果に基づいて、ドライバの運転能力が所定の基準以上に衰えているか否かが判定される。
このように構成される車両運転支援装置によれば、ドライバの運転操作の経年的な衰えを検出し、衰えに応じて車両運転の支援を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-254694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、運転行動は「認知」、「判断」及び「操作」の3要素の運転適合度によって成り立っている。特に、「認知」及び「判断」の2要素の運転適合度は加齢等に伴って顕著に低下する傾向にある。
上記車両運転支援装置では、運転行動の「操作」の1要素に基づく運転適合度が判定され、運転操作の経年的な衰えが判定されていた。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価可能な評価装置及びこれを構成する端末装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1またはそれ以上の発明は、移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報と、前記移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報と、を検出する検出部と、前記第2情報取得時における前記第1情報を関連付けて評価装置へ送信し、前記関連情報における前記視覚情報量と統計値との関係に基づく、前記移動体を操作する運転者の運転適合度を前記評価装置から受信する通信部と、前記運転適合度を出力する出力部と、を備えている端末装置であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は運転適合度を評価する、本発明の一実施例に係る評価システムのブロック構成図である。
図2図2は、図1に示される評価システムの第1情報取得部に取得される第1情報の一例であって、視覚情報量が多いときの移動体の周囲の風景を示す図である。
図3図3は、第1情報の他の一例であって、視覚情報量が図2に示される視覚情報量に比し少ないときの移動体の周囲の風景を示す図である。
図4図4は、図1に示される評価システムにおいて算出された、視覚情報量に対する操作速度又は操作量の統計値を示すグラフである。
図5図5は、図1に示される評価システムにおいて評価された運転適合度であって、運転者の過去の運転適合度に対する最新の運転適合度の低下の傾向を示すグラフである。
図6図6は、図1に示される評価システムにおいて評価された運動能力であって、基準の運転者の平均の運転適合度に対する運転者の運動能力の低下の傾向を示すグラフである。
図7図7は、図1に示される評価システムにおいて第1情報、第2情報取得部に取得される第2情報のそれぞれを取得し、関連情報として記憶部に記憶されるまでの評価方法及び評価プログラムを説明するフローチャートである。
図8図8は、図1に示される評価システムにおいて、関連情報に基づいて運転適合度を評価する評価方法及び評価プログラムを説明するフローチャートである。
図9図9は、図1に示される評価システムにおける評価方法及び評価プログラムにおいて、移動体の移動速度に応じた視覚情報量の補正方法を説明するフローチャートである。
図10図10は、図1に示される評価システムにおける評価方法及び評価プログラムにおいて、既知の移動経路に対する関連情報の選別方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1実施態様に係る評価装置は、移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する第1情報取得部と、移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する第2情報取得部と、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する記憶部と、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する算出部と、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する評価部と、を備えている。
【0009】
第1実施態様に係る評価装置は、第1情報取得部と、第2情報取得部と、記憶部と、算出部と、評価部とを備える。
第1情報取得部は移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する。第2情報取得部は移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する。記憶部は、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する。算出部は、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する。
ここで、「視覚情報量」は運転行動の「認知」の要素に関連し、「視覚情報量の違いに応じた操作装置の操作開始タイミング」は運転行動の「認知」及び「判断」の要素に関連する。そして、「操作装置の操作」は運転行動の「操作」の要素に関連する。つまり、算出部では、運転行動の複数の要素に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値が算出される。運転中に運転者が目にする視覚情報量が仮に同じであっても、「認知」及び「判断」の能力が低下している場合には「操作」に遅れが生じるため、この統計値は運転適合度の低下傾向を反映する。
このため、評価部では、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価することができるので、評価装置では、運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価することができる。
【0010】
本発明の第2実施態様に係る評価装置では、第1実施態様に係る評価装置において、評価部は、視覚情報量と統計値との関係に基づいて、視覚情報量に応じた運転者による移動体の操作の遅れ傾向を示す評価情報を算出する。
【0011】
第2実施態様に係る評価装置によれば、評価部は評価情報を算出する。評価情報は、視覚情報量と統計値との関係に基づいて、視覚情報量に応じた運転者による移動体の操作の遅れ傾向を示す。
このため、評価部では、視覚情報量に応じた運転者による移動体の操作の遅れの傾向に関する運転適合度を総合的に評価することができる。
【0012】
本発明の第3実施態様に係る評価装置は、第1実施態様又は第2実施態様に係る評価装置において、移動体の移動速度の増加に従って、第1情報の視覚情報量が増加するように補正する補正部を更に備えている。
【0013】
第3実施態様に係る評価装置は補正部を更に備える。補正部は、移動体の移動速度の増加に従って、第1情報の視覚情報量を増加するように補正する。移動速度が増加すると運転者の視野が狭くなり、視力も低下するので、同一の視覚情報量であっても認知に要する時間が増加する。
このため、移動体の移動速度に応じて視覚情報量を補正したうえで、運転行動の複数の要素に基づいて正確に運転適合度を評価することができる。
【0014】
本発明の第4実施態様に係る評価装置は、第1実施態様~第3実施態様のいずれか1つに係る評価装置において、記憶部は、移動体が移動経路を移動した履歴を履歴情報として蓄積し、履歴情報に基づいて既知の移動経路として特定された移動経路を移動体が移動した際の第1情報及び第2情報を、関連情報から除外する情報選別部を更に備えている。
【0015】
第4実施態様に係る評価装置では、記憶部は移動体が移動経路を移動した履歴を履歴情報として蓄積する。そして、評価装置は更に情報選別部を備える。情報選別部は、履歴情報に基づいて既知の移動経路として特定された移動経路を移動体が移動した際の第1情報及び第2情報を、関連情報から除外する。
例えば、視覚情報量が多い移動経路であっても、同一の移動経路を複数回移動すれば、運転者は移動体の移動毎に操作に必要なポイントを熟知し、このポイントの認知に要する時間は視覚情報量に対して左右され難くなる。つまり、運転行動の「認知」及び「判断」の要素の運転適合度は上昇する傾向にある。
このため、履歴情報に基づいて既知の移動経路における第1情報及び第2情報を関連情報から除外することにより、統計値の算出の精度を向上させることができ、運転行動の複数の要素に基づいて正確に運転適合度を評価することができる。
【0016】
本発明の第5実施態様に係る評価装置は、第1実施態様~第4実施態様のいずれか1つに係る評価装置において、評価部により評価された運転者の過去の運転適合度に対して、運転者の最新の運転適合度の低下が第1基準を超えるとき、運転適合度が低下している旨を運転者に報知するための第1報知情報を生成する第1報知情報生成部を備えている。
【0017】
第5実施態様に係る評価装置は第1報知情報生成部を備える。第1報知情報生成部は、評価部により評価された運転者の過去の運転適合度に対して、運転者の最新の運転適合度の低下が第1基準を超えるとき、運転適合度が低下している旨を運転者に報知するための第1報知情報を生成する。
仮に、第1報知情報が運転者に報知されれば、過去の運転適合度に対して最新の運転適合度が低下していることを運転者に認識させることができる。
【0018】
本発明の第6実施態様に係る評価装置は、第1実施態様~第5実施態様のいずれか1つに係る評価装置において、基準の運転適合度に対して、評価部により評価された運転者の最新の運転適合度の低下が第2基準を超えるとき、運転を自粛すべき旨を運転者に報知するための第2報知情報を生成する第2報知情報生成部を備えている。
【0019】
第6実施態様に係る評価装置は第2報知情報生成部を備える。第2報知情報生成部は、基準の運転適合度に対して、評価部により評価された運転者の最新の運転適合度の低下が第2基準を超えるとき、運転を自粛すべき旨を運転者に報知するための第2報知情報を生成する。
仮に、第2報知情報が運転者に報知されれば、基準の運転適合度に対して最新の運転適合度が低下しているので、運転を自粛すべきことを運転者に認識させることができる。
【0020】
本発明の第7実施態様に係る評価装置は、第1実施態様~第6実施態様のいずれか1つに係る評価装置において、移動体から送信される第1情報及び第2情報を受信するサーバ通信部を更に備えている。
【0021】
第7実施態様に係る評価装置はサーバ通信部を更に備える。サーバ通信部は移動体から送信される第1情報及び第2情報を受信する。第1情報取得部ではサーバ通信部を介して第1情報が取得される。第2情報取得部ではサーバ通信部を介して第2情報が取得される。そして、サーバ通信部、第1情報取得部、第2情報取得部、記憶部、算出部及び評価部はサーバを構築する。
このため、サーバにおいて、運転行動の複数の要素に基づいて正確に運転適合度を評価することができる。
【0022】
本発明の第8実施態様に係る評価装置は、第1実施態様~第6実施態様のいずれか1つに係る評価装置において、移動体に搭載可能である。
【0023】
第8実施態様に係る評価装置は移動体に搭載可能である。例えば、車載端末として、評価装置は移動体に搭載可能とされる。
このため、移動体において、運転行動の複数の要素に基づいて正確に運転適合度を評価することができる。
【0024】
本発明の第9実施態様に係る評価方法は、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する評価装置が実行する評価方法であって、移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する工程と、移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する工程と、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する工程と、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する工程と、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する工程と、を備えている。
【0025】
第9実施態様に係る評価方法では、まず移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報、移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報のそれぞれが取得される。次に、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する。次に、関連情報に基づいて、視覚情報量に対する操作速度又は操作量の統計値が算出される。
ここで、「視覚情報量」は運転行動の「認知」の要素に関連し、「視覚情報量の違いに応じた操作装置の操作開始タイミング」は運転行動の「認知」及び「判断」の要素に関連する。そして、「操作装置の操作」は運転行動の「操作」の要素に関連する。つまり、視覚情報量に対する操作速度又は操作量の統計値は運動行動の複数の要素に基づいて算出される。
そして、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価することができるので、評価方法では、運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価することができる。
【0026】
本発明の第10実施態様に係る評価プログラムは、第1情報取得部、第2情報取得部、記憶部、算出部及び評価部を備え、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する評価装置における評価方法をコンピュータに実行させるための評価プログラムであって、第1情報取得部が、移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する工程と、第2情報取得部が、移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する工程と、記憶部が、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する工程と、算出部が、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する工程と、評価部が、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する工程とをコンピュータに実行させる。
【0027】
第10実施態様に係る評価プログラムは、第1情報取得部、第2情報取得部、記憶部、算出部及び評価部を備え、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する評価装置における評価方法をコンピュータに実行させるための評価プログラムである。この評価プログラムでは、まず第1情報取得部が移動毎に変化する移動体の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得し、第2情報取得部が移動体を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する。次に、記憶部が、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する。次に、算出部が、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する。
ここで、「視覚情報量」は運転行動の「認知」の要素に関連し、「視覚情報量の違いに応じた操作装置の操作開始タイミング」は運転行動の「認知」及び「判断」の要素に関連する。そして、「操作装置の操作」は運転行動の「操作」の要素に関連する。つまり、視覚情報量に対する操作速度又は操作量の統計値は運動行動の複数の要素に基づいて算出される。
そして、評価部が、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、移動体を操作する運転者の運転適合度を評価する。このため、評価プログラムでは、運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価する評価方法をコンピュータに実行させることができる。
【実施例0028】
以下、図1図10を用いて、一実施例に係る評価装置、評価方法及び評価プログラムについて説明する。
【0029】
(評価システム10の全体構成)
図1に示されるように、第1実施例に係る評価装置1は評価システム10に含まれ、評価装置1を用いて評価システム10が構築されている。評価システム10はサーバ2及び複数の端末3を主要な構成要素として備えている。ここでは、評価装置1を含んでサーバ2が構築されている。
【0030】
本実施例において、評価システム10は通信ナビゲーションシステムを構築している。このため、サーバ2は、ナビゲーションに必要とされる各種情報、例えば地図情報を複数の端末3に送信し、又複数の端末3から各種情報を取得する。
また、端末3は、図示省略の移動体に装着される車載端末又はクライアント端末として構成され、ナビゲーション機能を備えている。移動体として、ここでは車両、更に具体的には例えば自動車が使用されている。なお、自動車に限定されるものではなく、移動体としては、二輪車、トラック、バス、電車、自転車等の車両、又は船舶、又は航空機が含まれている。
以下、主要な構成要素について、詳細に説明する。
【0031】
(端末3の構成)
(1)端末3の全体の構成
図1に示されるように、端末3は、端末制御部30、端末通信部31、表示部32、操作入力部33、音声出力部34、外界センサ部35、車速取得部36、自己位置検出部37、操舵角検出部38及び加速度検出部39を含んで構成されている。端末制御部30等の各構成要素は符号省略の共通バス配線を介して相互に接続されている。
【0032】
(2)端末通信部31の構成
端末通信部31は、サーバ2との間において、ネットワークを介して通信による接続を行う。
【0033】
(3)表示部32の構成
表示部32は液晶表示パネル又は有機エレクトロルミネッセンスパネルを含んで構成され、サーバ2から取得される地図情報等が画像として表示される。表示部32は自動車のインストルメントパネルに装着若しくは内蔵され、表示部32に表示された画像は自動車を運転操作する運転者若しくは自動車に搭乗する同乗者が視認可能とされている。また、表示部32は、ヘッドアップディスプレイを構築するプロジェクタであってもよい。さらに、本実施例では、表示部32は、評価装置1を用いて生成された運転適合度の評価結果(第1報知情報又は第2報知情報)を画像表示により運転者へ報知する報知部としても使用されている。
【0034】
(4)操作入力部33の構成
操作入力部33は例えば表示部32の液晶表示パネルに重ねて配設されたタッチパネルを含んで構成されている。操作入力部33では、各種の操作、例えばナビゲーション機能の行き先の経路設定等の操作を実行することができる。
【0035】
(5)音声出力部34の構成
音声出力部34はスピーカを含んで構成されている。音声出力部34では、ナビゲーション機能の経路案内情報等を音声として出力することができる。また、表示部32と同様に、音声出力部34は、評価装置1を用いて生成された運転適合度の評価結果(第1報知情報又は第2報知情報)を音声出力により運転者へ報知する報知部としても使用されている。
【0036】
(6)外界センサ部35の構成
外界センサ部35は、少なくとも自動車に装着された撮像装置を含んで構成されている。撮像装置には例えば二次元イメージセンサが含まれている。二次元イメージセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用的に使用されている。
さらに、外界センサ部35には、ライダ(LIDAR: Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)、又はソナー(SONAR: Sound Navigation And Ranging)が含まれていてもよい。
【0037】
外界センサ部35では、移動毎に変化する自動車の周囲の風景を撮像情報(画像情報)として撮影することができる。自動車の周囲の風景とは、自動車の前方側に装着された前方を撮影する外界センサ部35の場合には、運転者が視認可能な前方の風景に相当する、外界センサ部35を用いて撮影された撮像情報である。
また、自動車の後方側に装着された後方を撮影する外界センサ部35の場合には、運転者が視認可能な後方の風景に相当する、外界センサ部35を用いて撮影された撮像情報である。同様に、自動車の側方側に装着された側方を撮影する外界センサ部35の場合には、運転者が視認可能な側方の風景に相当する、外界センサ部35を用いて撮影された撮像情報である。そして、自動車の水平方向における全周囲を撮影可能な外界センサ部35の場合には、運転者が視認可能な全周囲の風景に相当する、外界センサ部35を用いて撮影された撮像情報である。
【0038】
風景として撮影された撮像情報には、道路形態、交通標識、他車両としての自動車等の車両、歩行者、看板、立木、建物、山、海等、自動車を運転操作するとき運転者が目にする視覚情報が含まれている。視覚情報は所定のフレームレートにおいて撮影された撮像情報毎に変化する。つまり、視覚情報は、自動車が移動しているときには、自動車の移動毎(又は風景の撮影毎)に変化する。ここで、所定のフレームレートとして、例えば30 FPS(Frames Per Second)或いは27.5 FPSが使用されている。
【0039】
図2には、自動車の前方側に装着された外界センサ部35を用いて撮影した前方の風景の一例が示されている。図2に示される風景は夜間における都心の繁華街近傍の道路の風景であって、撮影された撮像情報には交通標識S、歩行者P、看板D、建物B等の多くの対象物が含まれている。このため、風景は複雑度が高く、視覚情報量が多い。本実施例において、この撮像情報に基づいて自動車(移動体)の周囲の視覚情報量を示す指標が第1情報とされる。図2に示される風景の場合、第1情報は視覚情報量が比較的多いことを示す。
ここで、「複雑度」は、撮像情報に含まれる交通標識S等の対象物に関する数的要素、及び撮像情報における風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、風景に関する視覚的な複雑度として得られる。「数的要素」として、自動車(自車両)から対象物までの距離、撮像情報に含まれる対象物の数等が含まれている。「風景自体の視覚的要素」は、例えば風景に占める建物の面積、配色、色彩のばらつき等により視覚的に生じる視覚的効果を表す単調度であり、運転者が感覚的に感じ取る開放感に関する要素を含んでいる。
なお、特開2009-230506号公報には、「複雑度」の具体的な解析例、解析方法が開示されている。また、「複雑度」は、特許第6214798号公報に開示されているように、既存の離散コサイン変換(DCT: Discrete Cosine Transform)法を用いて、風景の2次元周波数により算出可能である。
【0040】
一方、図3には、同様に、自動車の前方に装着された外界センサ部35を用いて撮影した前方の風景が示されている。図3に示される風景は昼間における郊外の道路の風景であって、撮影された撮像情報には図2に示される風景に比し少ない対象物が含まれている。このため、風景は複雑度が低く、視覚情報量が少ない。本実施例において、図3に示される風景の場合、第1情報は視覚情報量が比較的少ないことを示す。
【0041】
(7)車速取得部36の構成
図1に戻って、車速取得部36は自動車の車速(移動体の移動速度)を取得する。車速は自動車の車速センサ又はECU(Electrical Control Unit又はEngine Control Unit)からCAN(Controller Area Network)通信を用いて車速取得部36へ送信される。さらに、車速はGNSS(Global Navigation Satellite System)による測位情報に基づいて車速取得部36において取得されてもよい。
【0042】
(8)自己位置検出部37の構成
自己位置検出部37は自動車の自己位置を検出する。自己位置は前述のGNSSによる測位情報に基づいて検出される。また、自己位置はGNSSによる測位情報に基づく以外の公知の手法により検出してもよい。
【0043】
(9)操舵角検出部38の構成
操舵角検出部38は、ジャイロセンサを含んで構成され、ジャイロセンサにより取得した自動車の角速度情報と、車速取得部36により取得した自動車の車速とから、自動車の走行方向を操作するステアリングの操舵角及びステアリングの操舵速度を算出することができる。ステアリングは自動車を操作する操作装置の1つである。本実施例において、このステアリングの操舵速度は、自動車を操作する操作装置の操作速度に関する第2情報とされる。
なお、操舵角検出部38では、例えばECUからCAN通信により角速度又はステアリングの操舵角が取得されてもよい。
【0044】
(10)加速度検出部39の構成
加速度検出部39は、加速度センサを含んで構成され、自動車の加速度情報を検出する。ここでは、特に、自動車の車速を調整するブレーキ装置による減速度が算出される。ブレーキ装置は自動車を操作する操作装置の他の1つであり、自動車の減速度はブレーキ装置の操作量に関連する。本実施例において、この加速度情報は、自動車を操作する操作装置の操作量に関する第2情報とされる。
【0045】
(11)端末制御部30の構成
端末制御部30は、中央演算処理ユニット(CPU: Central Processing Unit)及び記憶ユニットを含んで構成され、端末3の端末通信部31等の各構成要素の動作制御を司る。
端末制御部30では、外界センサ部35を用いて撮影された撮像情報に基づいて、移動毎に変化する自動車の周囲の視覚情報量に関する第1情報が生成される。
加えて、端末制御部30では、加速度検出部39を用いて取得された加速度情報に基づいて、操作装置の操作量に関する第2情報が生成される。ここでの操作装置はブレーキ装置であり、加速度情報として減速度情報が取得されているので、第2情報はブレーキ装置の操作量に関する情報である。
また、端末制御部30では、操舵角検出部38を用いて取得された操舵角情報に基づいて、操作装置の操作速度に関する第2情報が生成される。ここでの操作装置はステアリング装置であり、第2情報はステアリング装置の操作速度に関する情報である。
【0046】
端末制御部30において生成された第1情報及び第2情報は、常時、端末通信部31を用いてサーバ2へ送信される。第1情報及び第2情報の送信の際には、端末3を識別する識別(ID: Identification)情報が付加される。
【0047】
(評価装置1及びサーバ2の構成)
図1に示されるように、サーバ2はサーバ制御部20、サーバ通信部21、地図データベース22及び記憶装置23を含んで構成され、サーバ制御部20及びサーバ通信部21の構成要素を用いて評価装置1が構築されている。すなわち、評価装置1は、サーバ制御部20、サーバ通信部21、第1情報取得部11、第2情報取得部12、記憶部13、算出部14、評価部15、第1報知情報生成部18及び第2報知情報生成部19を含んで構成されている。
さらに、本実施例では、評価装置1は補正部16及び情報選別部17を備えている。
サーバ2のサーバ制御部20等の各構成要素、評価装置1の第1情報取得部11等の各構成要素は符号省略の共通バス配線を介して相互に接続されている。
【0048】
(1)サーバ通信部21の構成
サーバ通信部21は、端末3の端末通信部31との間において、ネットワークを介して通信による接続を行う。サーバ通信部21はサーバ2、評価装置1のそれぞれにおいて共用されている。
【0049】
(2)地図データベース22の構成
地図データベース22には、主に通信ナビゲーションシステムに使用される地図情報が格納されている。
【0050】
(3)記憶装置23の構成
記憶装置23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHD(Hard Disk)を含んで構成されている。ROMには、例えばサーバ制御部20において実行されるプログラムが格納されている。RAMには、サーバ制御部20において処理された処理情報が一時的に格納される。HDは大記憶容量ストレージとして構築され、HDには例えば処理情報、端末3から送信される各種情報等が格納される。
【0051】
(4)サーバ制御部20の構成
サーバ制御部20は、端末制御部30と同様に、中央演算処理ユニット(CPU)及び記憶ユニットを含んで構成されている。サーバ制御部20は、サーバ2のサーバ通信部21等の各構成要素の動作制御を司り、更に評価装置1の各構成要素の動作制御を司る。
さらに、サーバ制御部20の中央演算処理ユニット及び記憶ユニットは、本実施例に係る評価プログラムを実行するコンピュータを構築している。この評価プログラム並びに評価プログラムの実行により達成される評価方法は後に説明する。
【0052】
(5)第1情報取得部11及び第2情報取得部12の構成
評価装置1の第1情報取得部11は、端末3の端末通信部31からサーバ2のサーバ通信部21を介して送信される視覚情報量に関する第1情報を取得する。
同様に、第2情報取得部12は、端末通信部31からサーバ通信部21を介して送信される操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する。
【0053】
(6)記憶部13の構成
記憶部13はRAM又はHDを含んで構築されている。記憶部13は、第2情報取得部12において取得された第2情報の操作速度又は操作量が予め設定された閾値を超えた際に、この第2情報に第1情報取得部11において取得された視覚情報量に関する第1情報を関連付けて、関連情報として記憶する。
具体的に説明すると、ブレーキ装置において運転者がブレーキをかけたときのブレーキの操作量に関する情報が閾値を超えた場合、すなわち運転者が予め設定された基準を上回る急なブレーキ操作を行った場合、このブレーキ装置の操作量に関する第2情報に、視覚情報量に関する第1情報を関連付けた関連情報が記憶部13に記憶される。また、ステアリング装置において運転者がハンドルをきったときのステアリングの操舵速度に関する情報が閾値を超えた場合、すなわち運転者が予め設定された基準を上回る急なステアリング操作を行った場合、このステアリング装置の操作速度に関する第2情報に、視覚情報量に関する第1情報を関連付けた関連情報が記憶部13に記憶される。
関連情報は、この関連情報を取得した日時情報も含み、端末3の識別情報毎に記憶部13に記憶される。
【0054】
(5)算出部14の構成
算出部14は、予め設定された所定の読出タイミング毎に、記憶部13に格納された最新の読出期間に取得されて格納された関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する。ここでは、「所定の読出タイミング」は例えば6ヶ月毎又は1年毎に設定されている。また、「最新の読出期間」は例えば最近の6ヶ月間又は1年間に設定されている。
統計値は、相関分析法、回帰分析法等の統計的手法を用いて算出され、視覚情報量の変化に対する操作速度又は操作量の変化の傾向を示す量として算出される。ここで、例えば自動車が交差点を右折し、右折した先の道路を歩行者が横断中であった場合、自動車の運転者は歩行者への接近を避けるため、ステアリングやブレーキの操作を行うことになる。このとき、運転者が早く歩行者を認知できれば、余裕をもってブレーキやステアリングを操作し、歩行者への接近を避けることができるが、歩行者の認知が遅くなるほど操作行動が遅れて、結果的に大きい操作速度又は操作量でステアリングやブレーキの操作を行わねばならなくなる。すなわち、同じ視覚情報量が存在する環境下であっても、認知能力や判断能力が低下している運転者ほど、緊急時の操作速度又は操作量が大きくなる傾向があると言える。従って、ここで算出された視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値は、自動車の走行環境における視覚情報量の違いごとの運転者の運転行動の遅れの傾向を示している。
図4には統計値をグラフにした一例が示されている。横軸は視覚情報量であり、縦軸は操作速度又は操作量である。図4に示されるように、視覚情報量が増加するほど、認知、判断の遅れにより操作速度又は操作量は増加する傾向にあり、統計値は運転行動の遅れの傾向を示している。
【0055】
(6)評価部15の構成
図1に戻って、評価部15は、関連情報における視覚情報量と算出部14において算出された統計値との関係に基づいて、自動車を運転操作する運転者の運転適合度を評価する。運転適合度の評価方法として、ここでは2種類の評価方法が実施されている。第1の評価方法は、同一の運転者において、最新(現在)の運転行動の遅れの傾向に対する、過去の運転行動の遅れの傾向を比較し、運転適合度を評価する方法である。ここで、「同一の運転者」とは、例えば端末3から送信される識別情報が同一という意味において使用されている。第2の評価方法は、運転者の最新の運転行動の遅れの傾向に対する、基準の運転行動の遅れの傾向を比較し、運転適合度を評価する方法である。
【0056】
具体的に説明すると、第1の評価方法では、最新の運転行動の遅れの傾向に対して、例えば過去1年前や2年前の運転行動の遅れの傾向が比較される。図5には第1の評価方法に基づいて作成された運転行動の遅れの傾向をグラフにした一例が示されている。図4に示される横軸及び縦軸と同様に、図5において、横軸は視覚情報量であり、縦軸は操作速度又は操作量である。
図5に示されるように、過去の運転行動の遅れの傾向に対して、最新の運転行動の遅れの傾向を比較すると、運転行動の遅れの傾向が劣化している。ハッチングを記した差分が劣化量である。
【0057】
一方、第2の評価方法では、最新の運転行動の遅れの傾向に対して、基準の運転行動の遅れの傾向が比較される。ここで、「基準の運転行動の遅れの傾向」とは、例えば一般の複数の運転者の平均的な運転行動の遅れの傾向である。図6には第2評価方法に基づいて作成された運転行動の遅れの傾向をグラフにした一例が示されている。図4に示される横軸及び縦軸と同様に、図6において、横軸は視覚情報量であり、縦軸は操作速度又は操作量である。
図6に示されるように、基準の運転行動の遅れの傾向に対して、最新の運転行動の遅れの傾向を比較すると、運転行動の遅れの傾向が劣化している。ハッチングを記した差分が劣化量である。
【0058】
(7)補正部16の構成
図1に戻って、評価装置1の補正部16は、端末3の車速取得部36において取得された車速情報は端末通信部31からサーバ2のサーバ通信部21へ送信される。この車速情報に基づいて、補正部16は、移動体の移動速度の増加、つまり自動車の車速の増加に従って、第1情報の視覚情報量を増加させる補正を行う。補正部16は、視覚情報量に対する補正量が車速毎に記憶されたテーブルを含んで構成されていてもよいし、又は、車速に対する視覚情報量の補正量を算出する算出部として構成されてもよい。
一般的に、自動車の車速が増加するに従い、運転者の視野範囲が狭くなり、視力も低下する傾向にある。このため、同一の視覚情報量であっても、車速が増加すると、車速が増加しない場合に比し、視覚情報の認知に要する時間が増大する。補正部16では、このような車速の変化に伴う、視覚情報の認知に要する時間の変化が調整され、運転者の運転行動の「認知」及び「判断」の要素を含む運転適合度が正確に評価可能とされている。
【0059】
(8)情報選別部17の構成
前述の記憶部13では、関連情報の記憶に加えて、更に移動体が移動経路を移動した履歴、つまり自動車の走行経路の履歴が移動履歴情報として蓄積される。情報選別部17は、記憶部13に蓄積された移動履歴情報に基づいて、既知の走行経路として特定された走行経路を自動車が走行した際の第1情報及び第2情報を、関連情報から除外し(選別し)、記憶部13に記憶させない。
一般的に、視覚情報量が多い走行経路の地点であっても、常用する既知の走行経路である場合には、運転者は確認すべきポイント(視覚情報)を熟知しているので、視覚情報の認知に要する時間が視覚情報量に左右され難い。つまり、運転者の運転行動の「認知」及び「判断」の要素を含む運転適合度が高く評価される傾向にある。このため、情報選別部17では、特定された走行経路において取得される関連情報が運転適合度の評価の対象から除外され、運転適合度が正確に評価可能とされている。
【0060】
(9)第1報知情報生成部18の構成
第1報知情報生成部18では、評価部15により第1の評価方法を用いて評価された、同一の運転者の過去の運転適合度に対する最新の運転適合度の低下が予め設定された第1基準を超えるとき、第1報知情報を生成する。
第1報知情報は、運転適合度が低下している旨を運転者に報知する情報として生成されている。第1報知情報としては、「現在の運転適合度が1年前に比べて10%低下しています。安全運転を心掛けましょう。」という音声情報、又は文字(メッセージ)情報が一例として挙げられる。また、第1報知情報として、図5に示されるグラフを含む画像情報、上記音声情報及び文字情報の2以上を含む情報が他の一例として挙げられる。
第1報知情報生成部18において生成された第1報知情報は、サーバ通信部21及び端末通信部31を介して端末3へ送信され、音声出力部34から音声として、又は表示部32から文字情報若しくは画像情報として出力される。
【0061】
(10)第2報知情報生成部19の構成
第2報知情報生成部19では、評価部15により第2の評価方法を用いて評価された、基準の運転適合度に対する運転者の最新の運転適合度の低下が予め設定された第2基準を超えるとき、第2報知情報を生成する。第2基準は、自動車の運転操作を適切に行える基準として設定されている。
第2報知情報は、運転を自粛すべき旨を運転者に報知する情報として生成されている。第2報知情報としては、「現在の運転適合度は適性基準に達していません。運転を自粛するか、或いは運転免許の返納をお考え下さい。」という音声情報、文字情報及び画像情報の少なくとも1つが一例として挙げられる。画像情報として、図6に示されるグラフを含む情報が一例として挙げられる。
第2報知情報生成部19において生成された第2報知情報は、サーバ2から端末3へ送信され、音声出力部34から音声として、又は表示部32から文字情報若しくは画像情報として出力される。
【0062】
(評価方法及び評価プログラムの構成)
図1に示される評価装置1を用いた評価方法及びこの評価方法をコンピュータに実行させるための評価プログラムについて、図7及び図8を用いて説明する。なお、評価方法の各工程(各構成要素)は評価プログラムの各工程(各構成要素)と同一の工程又は実質的に同一の工程である。このため、以下に評価方法について説明し、評価プログラムについての説明は重複するので省略する。
【0063】
(1)端末3における評価方法
評価システム10の端末3において、評価方法の処理が開始される。図7に示されるように、端末3では、外界センサ部35を用いて、走行毎に変化する自動車の周囲の視覚情報量に関する第1情報が取得される(ステップS1)。引き続き、自己位置検出部37を用いて、自動車の自己位置情報が取得される(ステップS2)。引き続き、車速取得部36、加速度検出部39又は操舵角検出部38を用いて、自動車の操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報が取得される(ステップS3)。操作装置の操作速度又は操作量は、ここではステアリング装置の操作による操舵速度又はブレーキ装置の操作による減速度である。
ここで、ステップS1~ステップS3のそれぞれの順番は特に限定されず、処理順序が前後に入れ替わってもよい。
【0064】
端末3において取得された第1情報、位置情報、第2情報、速度情報等の各種情報は、端末通信部31及びサーバ通信部21を介してサーバ2へ送信される(ステップS4)。送信される各種情報には端末3の識別情報が付加される。
【0065】
次に、端末3において処理が継続されるか否かが判定される(ステップS5)。処理の継続の判定がなされると、ステップS1へ処理が移行する。処理を継続しない判定がなされると、端末3における評価方法の処理が終了する。
【0066】
(2)サーバ2の評価装置1における評価方法(各種情報の記憶処理方法)
評価システム10のサーバ2を構築する評価装置1において、評価方法の各種情報の記憶処理方法が開始される。図7に示されるように、サーバ通信部21では、端末3から送信される各種情報が受信される。第1情報取得部11では、サーバ通信部21において受信された視覚情報量に関する第1情報が取得される(ステップS11)。同様に、第2情報取得部12では、サーバ通信部21において受信された操作速度又は操作量に関する第2情報が取得される。
【0067】
サーバ制御部20において、第2情報取得部12に取得された第2情報の操作速度又は操作量が閾値を超えているか否かが判定される(ステップS12)。この判定はサーバ制御部20を用いて行う。
操作速度又は操作量が閾値を超えていないと判定されると、ステップS11へ処理が移行する。操作速度又は操作量が閾値を超えていると判定されると、操作速度又は操作量が閾値を超えた第2情報と、この第2情報に対応する、視覚情報量に関する第1情報とを関連付けて関連情報を生成する。この関連情報は記憶部13に記憶される(ステップS13)。
【0068】
次に、評価装置1において処理が継続されるか否かが判定される(ステップS14)。処理の継続の判定がなされると、ステップS11へ処理が移行する。処理を継続しない判定がなされると、評価装置1における評価方法の処理が終了する。
【0069】
(3)評価装置1における評価方法(運転適合度の評価処理方法)
評価装置1において、運転適合度の評価処理方法が開始される。図8に示されるように、評価対象の自動車に装着された端末3について、評価装置1の記憶部13に記憶された運転者の最新の関連情報が取得される(ステップS21)。取得された関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値が算出される(ステップS22)。統計値は算出部14を用いて算出される(図1及び図4参照)。
【0070】
引き続き、視覚情報量と統計値との関係に基づいて、運転者の運転適合度が評価される(ステップS23)。図6に示されるように、基準の運転適合度に対する運転者の最新の運転適合度の劣化量(差分)が算出される(ステップS24)。ここで、運転適合度の劣化量が第2基準を超えるか否かが判定される(ステップS25)。
【0071】
第2基準を超えると判定されると、第2報知情報生成部19において、運転自粛のメッセージとなる第2報知情報が生成される(ステップS32)。第2報知情報はサーバ通信部21及び端末通信部31を介して端末3へ送信される(ステップS34)。この後、評価方法は終了する。
なお、端末3では、第2報知情報は、音声出力部34から音声情報として、又は表示部32から文字情報若しくは画像情報として出力される。
【0072】
一方、ステップS25において第2基準を超えないと判定されると、評価対象の自動車に装着された端末3について、評価装置1の記憶部13に記憶された運転者の過去の関連情報が取得される(ステップS26)。取得された関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値が算出される(ステップS27)。統計値は算出部14を用いて算出される(図1及び図4参照)。
【0073】
引き続き、視覚情報量と統計値との関係に基づいて、運転者の運転適合度が評価される(ステップS28)。図5に示されるように、同一の運転者において過去の運転適合度に対する最新の運転適合度の劣化量(差分)が算出される(ステップS29)。ここで、運転適合度の劣化量が第1基準を超えるか否かが判定される(ステップS30)。
【0074】
第1基準を超えると判定されると、第1報知情報生成部18において、運転適合度の低下の旨のメッセージとなる第1報知情報が生成される(ステップS33)。第1報知情報はサーバ通信部21及び端末通信部31を介して端末3へ送信される(ステップS34)。この後、評価方法は終了する。
なお、端末3では、第1報知情報は、音声出力部34から音声情報として、又は表示部32から文字情報若しくは画像情報として出力される。
【0075】
一方、ステップS30において、第1基準を超えないと判定されると、何もメッセージが無いか、又は運転適合度の低下が無い旨のメッセージが報知情報として生成される(ステップS31)。この報知情報はサーバ通信部21及び端末通信部31を介して端末3へ送信される(ステップS34)。この後、評価方法は終了する。
なお、端末3では、報知情報が生成される場合には、この報知情報が音声出力部34から音声情報として、又は表示部32から文字情報若しくは画像情報として出力される。
【0076】
(4)評価方法における補正処理方法
本実施例に係る評価方法では、図7に示される評価方法のステップS11とステップS12との間において、補正処理が追加されてもよい。
補正処理では、図7に示されるステップS11において端末3から各種情報が取得されると、評価装置1の補正部16(図1参照)は、図9に示されるように、最初に視覚情報量に関する第1情報を取得する(ステップS41)。引き続き、補正部16は速度情報を取得する(ステップS42)。速度情報は、自動車の車速に関する情報である。
【0077】
補正部16では、取得された第1情報及び速度情報に基づいて、自動車の移動速度に応じて第1情報の視覚情報量が補正される(ステップS43)。この補正は、移動速度が増加するほど視覚情報量を増加させる補正である。
そして、補正された視覚情報量に基づいて、第1情報が生成(補正)される(ステップS44)。この第1情報は、ステップS12において、第2情報の操作速度又は操作量が閾値を超えたときに、この第2情報に関連付けられて関連情報として記憶部13に記憶される(図7のステップS13参照)。
ステップS44において、第1情報が生成されると、補正処理が終了する。
【0078】
(5)評価方法における情報選別方法
本実施例に係る評価方法では、図7に示される評価方法のステップS12とステップS13との間において、情報選別処理が追加されてもよい。
情報選別処理では、図7に示されるステップS11において端末3から各種情報が取得されると、評価装置1の情報選別部17(図1参照)において、自動車の位置情報を取得する(ステップS51)。さらに、情報選別部17では、取得された自動車の位置情報と地図データベース22の地図情報とに基づいて、自動車が移動経路を移動したときの履歴となる移動履歴情報を蓄積する(ステップS52)。なお、移動履歴情報は記憶部13に記憶させてもよい。
【0079】
情報選別部17において、蓄積された移動履歴情報に基づいて、自動車の最新の移動経路が既知の移動経路であるか否かが判定される(ステップS53)。複数回、例えば5回以上、同一の移動経路を移動した移動履歴情報が存在している場合、既知の移動経路であると判定される。この場合、記憶部13に記憶される予定の関連情報は除外され、図7に示されるステップS14へ処理が移行する(ステップS55)。この後、情報選別方法は終了する。
一方、既知の移動経路ではないと判定されると、図7に示されるステップS13へ処理が移行し(ステップS54)、関連情報が記憶部13に記憶される。この後、情報選別方法は終了する。
【0080】
このように本実施例に係る評価装置1は、図1に示されるように、第1情報取得部11と、第2情報取得部12と、記憶部13と、算出部14と、評価部15とを備える。
第1情報取得部11は移動毎に変化する自動車(移動体)の周囲の視覚情報量に関する第1情報を取得する。第2情報取得部12は自動車を操作する操作装置の操作速度又は操作量に関する第2情報を取得する。記憶部13は、操作速度又は操作量が閾値を超えた際の第1情報及び第2情報を関連付けて、関連情報として記憶する。算出部14は、関連情報に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値を算出する(図4参照)。
ここで、「視覚情報量」は運転行動の「認知」の要素に関連し、「視覚情報量の違いに応じた操作装置の操作開始タイミング」は運転行動の「認知」及び「判断」の要素に関連する。そして、「操作装置の操作」は運転行動の「操作」の要素に関連する。つまり、算出部14では、運転行動の複数の要素に基づいて、視覚情報量に対応する操作速度又は操作量の統計値が算出される。運転中に運転者が目にする視覚情報量が仮に同じであっても、「認知」及び「判断」の能力が低下している場合には「操作」に遅れが生じるため、この統計値は運転適合度の低下傾向を反映する。
このため、評価部15では、関連情報における視覚情報量と統計値との関係に基づいて、自動車を運転操作する運転者の運転適合度を評価することができるので、評価装置1では、運転行動の複数の要素に基づいて、運転者の運転適合度を総合的に評価することができる。
【0081】
(その他の実施例)
(1)第1実施例
図1に示される評価装置1は端末3に含まれ、評価装置1は端末3を構築してもよい。端末3に含まれる評価装置1の構成要素は、第1情報取得部11、第2情報取得部12、記憶部13、算出部14及び評価部15を少なくとも含む。
また、評価装置1には、補正部16、情報選別部17、第1報知情報生成部18、第2報知情報生成部19の少なくとも1つの構成要素が含まれてもよい。
このように構成される評価装置1は、端末3を構築するので、自動車に搭載可能である。このため、自動車(端末3)において、運転行動の複数の要素に基づいて正確に運転適合度を評価することができる。
【0082】
(2)第2実施例
図1に示される端末3では、操作速度又は操作量に関する第2情報が取得されているので、操作装置の操作速度又は操作量が閾値を超えたときに、視覚情報量に関する第1情報、第2情報等の各種情報が端末3からサーバ2へ送信される構成としてもよい。操作速度又は操作量が閾値を超えるか否かの判定は端末3の端末制御部30が実行する。
この場合、各種情報の通信量を減らすことができ、端末3の端末制御部30、サーバ2のサーバ制御部20のそれぞれの各種処理の負担を軽減することができる。
【0083】
(3)第3実施例
サーバ2の地図データベース22に視覚情報量を記憶させ、端末3の自己位置情報に基づいて、対応する位置情報の視覚情報量に関する第1情報が、地図データベース22から評価装置1へ取得されてもよい。
詳しく説明すると、地図データベース22に含まれる道路上において複数のそれぞれ異なる位置から視認される風景の視覚情報量が、当該道路の進行方向毎に地図データベース22に記憶される。道路上の複数の位置から視認される風景の視覚情報量は、例えば、プローブカーから撮影された画像情報に基づいて算出される。また、この視覚情報量は、複数のそれぞれ異なる自動車に搭載された端末3から送信された視覚情報量を統計処理により算出してもよい。評価装置1は、端末3において取得された自己位置情報と自動車の進行方向情報とに基づいて、対応する道路上の位置において、対応する移動方向に紐づけて記憶された視覚情報量を地図データベース22から取得する。この場合、端末3における視覚情報量に関する第1情報の取得処理を無くすことができる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 評価装置
10 評価システム
11 第1情報取得部
12 第2情報取得部
13 記憶部
14 算出部
15 評価部
16 補正部
17 情報選別部
18 第1報知情報生成部
19 第2報知情報生成部
2 サーバ
20 サーバ制御部
21 サーバ通信部
22 地図データベース
23 記憶装置
3 端末
30 端末制御部
31 端末通信部
32 表示部
33 操作入力部
34 音声出力部
35 外界センサ部
36 車速取得部
37 自己位置検出部
38 操舵角検出部
39 加速度検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10