(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076910
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】無線送受電装置、無線送電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20230529BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20230529BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20230529BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230529BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20230529BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/20
H02J50/60
H02J50/80
H02J50/40
H02J7/00 301D
H02J7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189941
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】堀部 房二
(72)【発明者】
【氏名】青山 航大
(72)【発明者】
【氏名】安尾 貴司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503GB09
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】本開示の目的の一つは、送電装置から十分に見通せない機器にワイヤレスで電力を供給することができる無線送受電装置に関する技術を提供することにある。
【解決手段】本開示のある態様の第2無線送受電装置10は、電力供給用の第1電波W1を受信する第3受信装置7と、第3受信装置7で受信した第1電波W1から変換された電力に基づいて充電される二次電池53と、二次電池53の電力に基づいて電力供給用の第2電波W2を送信する送信部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給用の第1電波を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記第1電波から変換された電力に基づいて充電される二次電池と、
前記二次電池の電力に基づいて電力供給用の第2電波を送信する送信部と、
を備える、無線送受電装置。
【請求項2】
前記第2電波を受信するための複数の受信装置のうちから前記第2電波の送信先を決定する決定部と、
前記決定部の決定結果に基づいて前記第2電波の送信方向を制御する送信制御部と、
を備える、請求項1に記載の無線送受電装置。
【請求項3】
前記第1電波を受信するためのアンテナを用いて前記第2電波を送信する、請求項1または2に記載の無線送受電装置。
【請求項4】
前記第1電波の受信と、前記第2電波の送信とを時分割または空間分割で行う、請求項1から3いずれか1項に記載の無線送受電装置。
【請求項5】
前記第2電波を送信する空間に人が存在するか否かを推定する推定装置を備え、
前記推定装置が、人が存在すると推定したとき、前記第2電波の送信を停止する、請求項1から4のいずれか1項に記載の無線送受電装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記複数の受信装置について予め設定された時刻に前記電波を送信するように前記送信先を決定する、請求項2に記載の無線送受電装置。
【請求項7】
前記複数の受信装置は、受信した前記電波から変換された電力に基づいて充電される二次電池を有し、前記決定部は、前記各二次電池の電池残量に基づいて前記送信先を決定する、請求項2に記載の無線送受電装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記各二次電池の最大容量に対する電池残量の残量比率を比較して、前記各残量比率の差が小さくなるように前記送信先を決定する、請求項7に記載の無線送受電装置。
【請求項9】
電力供給用の第1電波を送信する第1無線送電装置と、
前記第1電波を受信する第2無線送受電装置と、
を備え、
前記第2無線送受電装置は、
前記第1電波を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記第1電波から変換された電力に基づいて充電される二次電池と、
前記二次電池の電力に基づいて電力供給用の第2電波を送信する送信部と、
を有する、無線送電システム。
【請求項10】
前記第2無線送受電装置は、
前記第2電波を受信するための複数の受信装置のうちから前記第2電波の送信先を決定する決定部と、
前記決定部の決定結果に基づいて前記第2電波の送信方向を制御する送信制御部と、
を有する、請求項9に記載の無線送電システム。
【請求項11】
前記第1無線送電装置は、前記第2無線送受電装置とは別の受信装置に前記第1電波を送信する、請求項9または10に記載の無線送電システム。
【請求項12】
前記第1無線送電装置は、前記第2無線送受電装置と前記別の受信装置とに時分割または空間分割で前記第1電波を送信する、請求項11に記載の無線送電システム。
【請求項13】
前記第1無線送電装置の少なくとも一部は照明装置に組み込まれる、請求項9から12のいずれか1項に記載の無線送電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線送受電装置および無線送電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制御対象機器と、当該機器を遠隔操作するためのリモコンとから構成されるリモートコントロールシステムが記載されている。制御対象機器には、無線信号を発受信する発受信手段が搭載される。リモコンは、制御対象機器の発受信手段から発信された無線信号を受信手段と、無線信号を発信する発信手段とを有する。リモコンは、発受信手段から発信された無線信号を受信し電力に変換する電力変換部を備え、その電力をリモコン自身の制御電源とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ワイヤレス電力伝送の技術を用いて、制御対象機器から発信された無線信号を受信し、受信信号から変換された電力によりリモコンを作動させる技術が開示されている。しかし、この文献には、送電装置から十分に見通せない状態で設置された機器に電力を供給する観点からは十分な開示がなされていない。
【0005】
本開示の目的の1つは、送電装置から十分に見通せない機器にワイヤレスで電力を供給できる無線送受電装置の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の無線送受電装置は、電力供給用の第1電波を受信する受信手段と、受信手段で受信した第1電波から変換された電力に基づいて充電される二次電池と、二次電池の電力に基づいて電力供給用の第2電波を送信する送信部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、無線送電システムである。この無線送電システムは、電力供給用の第1電波を送信する第1無線送電装置と、第1電波を受信する第2無線送受電装置と、を備える。第2無線送受電装置は、第1電波を受信する受信手段と、受信手段で受信した第1電波から変換された電力に基づいて充電される二次電池と、二次電池の電力に基づいて電力供給用の第2電波を送信する送信部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の無線送電システムが適用されたトイレブースを示す図である。
【
図2】
図1の無線送電システムを示すブロック図である。
【
図3】
図1の第1無線送電装置を示すブロック図である。
【
図4】
図1の第2無線送受電装置を示すブロック図である。
【
図5】
図1のリモコンの一例を示すブロック図である。
【
図6】
図1のトイレ装置制御部の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図1の無線送電システムの第2動作状態を示す図である。
【
図8】
図1の無線送電システムの第3動作状態を示す図である。
【
図9】第1変形例の無線送電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者は、電力供給用の電波を送信する無線送電装置を検討し、次の新たな知見を得た。例えば、トイレブースに便器洗浄装置の制御装置とこの制御装置にワイヤレスで制御信号を送る壁付けリモコンを設置する場合、これらの機器のために電源工事が必要になる。既存の設備に後付けで機器を取り付ける場合に、壁裏配線の手間や狭い場所での作業など、設置工事が煩雑になる。
【0010】
電源工事を省くために、これらの機器それぞれに1次電池を備えることが考えられる。この場合、リモコンの機器は待機中も電力を消費するため電池の消耗が大きく、電池交換の頻度を考えると使い勝手が良いとはいえない。
【0011】
電源工事を省くために、これらの機器それぞれにマイクロ波等の電波で電力を供給するワイヤレス電力伝送を行うことが考えられる。この場合、無線送電装置から受信装置を直接見通せない状態ではワイヤレス電力伝送の伝送効率が大幅に低下する。伝送路を曲げるために、中継地点に電力伝送用の電波を反射するリフレクタを設けることが考えられる。この場合、受信装置までの伝送距離が長くなり、十分に電力を供給できない可能性がある。本開示は、これらの知見に基づいてなされたものであり、以下、実施形態を参照して説明する。
【0012】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。同一の構成要素を区別するときは符号に-A、-Bのようにアルファベットを付して表記する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状に、言及している内容に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含む。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられる。この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって本開示の構成が限定されるものではない。以下の実施形態は、本開示の内容理解を助けるために例示するものであり、本開示の構成を限定するものではない。
【0014】
[実施形態]
図1、
図2を参照する。本開示の実施形態は第2無線送受電装置10と無線送電システム100である。
図1に示すように、実施形態の無線送電システム100は、電力供給用の第1電波W1を送信する第1無線送電装置1と、第1電波W1を受信して電力供給用の第2電波W2を送信する第2無線送受電装置10とを備える。無線送受電装置は、第2無線送受電装置10に例示される。第2無線送受電装置10は、1個以上の受信装置に第2電波W2を送信する。
【0015】
図1は、壁82で仕切られた3つの空間80-A、80-B、80-Cに無線送電システム100が適用された例を示している。
図1の例では、空間80はトイレブースであり、床81と4方の壁82と、天井83に包囲される。空間80は、床81と壁82とが相互に接続され、壁82と天井83の間には隙間が設けられている。壁82には出入口や窓が設けられてもよい。天井83には照明装置85が設けられている。
【0016】
図1の例では、第1無線送電装置1は、空間80-B、80-Cおよび第2無線送受電装置10に電力供給用の第1電波W1を送信する。
図1の例では、壁82のため、第1無線送電装置1からは空間80-Aの送信対象を直接見通せない。第2無線送受電装置10は、空間80-Aを直接見通せる位置に配置され、空間80-Aに電力供給用の第2電波W2を送信する。第1電波W1と第2電波W2を総称するときは電波Wという。第1無線送電装置1と第2無線送受電装置10を総称するときは単に無線送電装置という。
【0017】
空間80には、電波Wを受信するための複数の受信装置5、6が設けられる。受信装置5、6は、様々な電気装置に備えることができる。
図1の例では、受信装置5、6は、操作装置21と、操作装置21にワイヤレスで遠隔操作される被制御機器22に備えられる。操作装置21は後述するリモコン75であり、被制御機器22は後述するトイレ装置制御部76である。受信装置5、6は、リモコン75に備えられる第1受信装置5と、トイレ装置制御部76に備えられる第2受信装置6を含む。
【0018】
図1に示すように、空間80にはトイレ装置70が設置される。トイレ装置70は、トイレ装置本体71と、水洗装置72と、洗浄便座装置73と、トイレ装置制御部76と、リモコン75とを含む。トイレ装置本体71は、便鉢部、便蓋、給水タンク等を含む。水洗装置72は、給水タンクからの水の勢いにより、便鉢内の汚物を洗い流して洗浄する装置である。この例の水洗装置72は、トイレ装置制御部76に制御される電磁弁を有し、この電磁弁の作用により作動する。電磁弁は、ソレノイドバルブであってもよい。
【0019】
洗浄便座装置73は、給水タンクからの水の勢いにより、使用者の肛門等を洗浄する装置である。この例の洗浄便座装置73は、トイレ装置制御部76に制御される電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの作用により作動する。これに加えて、トイレ装置70は、トイレ装置制御部76に制御されるその他の機能ユニット74を備えている。その他の機能ユニット74としては、温水生成ユニット、乾燥機能ユニット、脱臭ユニット、便座保温ユニット、マッサージユニットなどが挙げられる。
【0020】
図2から
図6の各図に示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。各ブロックは、1つの機器にまとめて配置されてもよいし、複数の機器に分散して配置されてもよい。
【0021】
先に、リモコン75およびトイレ装置制御部76を説明する。
図5に示すように、リモコン75は、操作ボタン751と、操作取得部752と、信号変換部753と、リモコン送信部754と、第1受信装置5とを含む。操作ボタン751は、水洗装置72の操作を行うボタン、洗浄便座装置73の操作を行うボタン、その他の機能ユニット74の操作を行うボタンを含む。操作取得部752は、操作ボタン751から使用者の操作入力を取得する。信号変換部753は、操作取得部752で取得された操作入力を制御情報に変換する。リモコン送信部754は、制御情報を搬送波に変調したリモコン電波信号Uを送信する。一例として、リモコン電波信号Uは、ループアンテナ755によってトイレ装置制御部76に送信できる。
【0022】
図6に示すように、トイレ装置制御部76は、リモコン受信部762と、制御情報取得部763と、ユニット制御部764と、第2受信装置6とを含む。リモコン受信部762は、リモコン75から送信されるリモコン電波信号Uを、ループアンテナ765を介して受信する。リモコン電波信号Uは、所定の搬送波にリモコン75の制御情報が変調された信号である。制御情報取得部763は、リモコン電波信号Uを復調してリモコン75の制御情報を抽出する。ユニット制御部764は、リモコン75の制御情報に基づいて水洗装置72、洗浄便座装置73およびその他の機能ユニット74を制御する。
【0023】
第1受信装置5および第2受信装置6は、電力受信部51と、電力変換部52と、二次電池53とを含む。電力受信部51は、第2無線送受電装置10からの無線送電用の電波を、アンテナ512、612を介して受信する。電力変換部52は、電力受信部51で受信した電波を整流して電力に変換する。二次電池53は、電波から変換された電力を蓄える。第1受信装置5の二次電池53は、リモコン75内の電気回路(電子回路を含む)に電力を供給する。第2受信装置6の二次電池53は、トイレ装置制御部76、水洗装置72、洗浄便座装置73およびその他の機能ユニット74の電気回路(電子回路を含む)に電力を供給する。
【0024】
二次電池53の構成に限定はないが、この例では、リチウムイオン電池である。アンテナ512およびアンテナ612の構成に限定はないが、この例では、複数のアンテナ素子を規則的に配列したアレイアンテナである。
【0025】
図1を参照する。第1無線送電装置1は、空間80-B、80-Cおよび第2無線送受電装置10に電力供給用の電波W1を送信可能であれば何所に設置されてもよい。
図1に示すように、実施形態の第1無線送電装置1は、天井83に設けられている。第1無線送電装置1は、壁82に設けられてもよい。
【0026】
第2無線送受電装置10は、第1無線送電装置1から見通せる位置で、空間80-Aに電力供給用の電波W2を送信可能であれば何所に設置されてもよい。
図1に示すように、実施形態の第2無線送受電装置10は、壁82に設けられている。第2無線送受電装置10は、天井83に設けられてもよい。
【0027】
図2に示すように、第1無線送電装置1および第2無線送受電装置10は、補助ユニット8と、送信ユニット9を有する。加えて、第1無線送電装置1は、第3受信装置7を有する。
【0028】
図4を参照して、第3受信装置7を説明する。第3受信装置7は、電力受信部51と、電力変換部52と、二次電池53とを含む。電力受信部51は、第1無線送電装置1からの無線送電用の電波を、アンテナ36を介して受信する。電力変換部52は、電力受信部51で受信した電波を整流して電力に変換する。二次電池53は、電波から変換された電力を蓄える。二次電池53は、第2無線送受電装置10の電気回路(電子回路を含む)に電力を供給する。以下、第1受信装置5、第2受信装置6および第3受信装置7を総称するときは受信装置という。アンテナ36の受信領域の面積は、アンテナ34の受信領域の面積と同じであってもよいし、異なっていてもよい。アンテナ34、36の受信領域の面積は、アンテナ512、612の受信領域の面積よりも大きくてもよい。
【0029】
図3、
図4を参照して、送信ユニット9を説明する。送信ユニット9は、電波発生部32と、送信部3と、決定部2と、送信制御部33とを備える。電波発生部32は、電力供給用の電波Wを発生させる。電力伝送可能であれば電力供給用の電波Wに限定はない。例えば2.4GHz帯の電波により15W程度の送信出力を実現でき、例えば5.7GHz帯の電波により32W程度の送信出力を実現できることが判明している。また、その他の周波数帯の電波によっても電力伝送が可能であることが報告されている。実施形態では電力供給用の電波Wとして5.7GHz帯の電波を用いている。
【0030】
送信部3は、電波発生部32で発生させた電波Wを送信する。送信部3は、電波Wを送信するためのアンテナ34、36を含む。アンテナ34、36の構成に限定はないが、この例では、複数の放射素子を規則的に配列したアレイアンテナである。特に、この例のアンテナ34、36は、放射素子を平面状に配列したプレーナアレイである。
【0031】
送信制御部33は、決定部2の決定結果に基づいて電波Wの送信方向を制御する。上述したように、アンテナ34、36は、平面状に配列された複数の放射素子で構成されている。送信制御部33は、各放射素子の振幅と位相を電気的に調整してアンテナ34、36の指向性を変えることにより、電波Wの送信方向を制御できる。この例では、送信制御部33は、アンテナ34の指向性を変えることにより、電波Wの送信方向を複数の受信装置のいずれか一方向に向ける。
【0032】
良好な伝達効率を得る観点から、電波Wの送信方向の延長線が受信装置の近傍を通ることが望ましい。送信方向を変更せずに異なる方向に配置された複数の受信装置に電波Wを送信すると、良好な伝達効率を得にくい。そこで、実施形態では、決定部2は、空間80に設けられた複数の受信装置のうちから送信先を決定する。
【0033】
この例では、第1無線送電装置1の決定部2は、空間80-B、80-Cに設けられた第1受信装置5と第2受信装置6と、第2無線送受電装置10の第3受信装置7のうちから送信先を決定する。第1無線送電装置1の送信先を第1送信先という。第2無線送受電装置10の決定部2は、空間80-Aに設けられた第1受信装置5と第2受信装置6のうちから送信先を決定する。第2無線送受電装置10の送信先を第2送信先という。
【0034】
実施形態の決定部2は、補助ユニット8で取得した情報を参照して送信先を決定する。
図3、
図4に示すように、補助ユニット8は、残量取得部12、情報通信部13、推定装置14、光検知部15、方向検知部16および記憶部17を含む。
【0035】
(第1の例)
決定部2の決定動作の第1の例を説明する。一の受信装置に長時間送信すると、他の受信装置の二次電池の残量が不足するため、二次電池として大きな容量のものを備えることが求められる。そこで、決定部2は、電波Wを各受信装置に時分割または空間分割で送信するように送信先を決定してもよい。
【0036】
例えば、決定部2は、所定の期間P毎に各受信装置を順次切り替えて電波Wを送信してもよい。所定期間Pが短すぎると、切り替え時の損失が大きくなり効率が低下し、所定期間Pが長すぎると、二次電池の残量が不足しやすくなる。例えば、所定期間Pは、10秒以上で1時間以下の範囲で設定されてもよい。この範囲内では、損失を抑えながら二次電池の残量が不足することはほとんどない。所定期間Pは、一定でも変更してもよい。電波Wの送信期間は、各受信装置で異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0037】
(第2の例)
決定部2の決定動作の第2の例を説明する。例えば、夜間や休日など人の出入りが少ない時間帯に電波Wを送信することが望ましい。そこで、決定部2は、各受信装置について予め設定された時刻に電波Wを送信するように送信先を決定してもよい。例えば、決定部2は、予め設定されたスケジュールにしたがって各受信装置を順次切り替えて電波Wを送信できる。このスケジュールには、各受信装置について電波Wの送信開始時刻および送信終了時刻が設定される。
【0038】
(第3の例)
決定部2の決定動作の第3の例を説明する。二次電池の残量とは関係なく送信先を決定すると、いずれかの受信装置で電池の充電切れになる可能性がある。このため、二次電池の容量を増やすことも考えられるが、この場合、電池が大型化する。このため、電池残量を基準に、相対的に電池残量が低い受信装置に優先的に電波Wを送信することが望ましい。そこで、決定部2は、各受信装置の二次電池の電池残量に基づいて電波Wの送信先を決定してもよい。例えば、決定部2は、各二次電池の電池残量を比較して、相対的に残量が少ない受信装置に電波Wの送信先を決定できる。
【0039】
本明細書では、二次電池について、単位mAhで表す放電可能な電気量(電流時間積)を「容量」という。満充電状態の二次電池の容量を「最大容量」という。二次電池に残存する容量を「電池残量」、「残量」という。電池残量の最大容量に対する比率(電池残量/最大容量×100%)を「残量比率」という。
【0040】
受信装置5、6、7は、二次電池53の電池残量に関する情報を無線送電装置に送信する電池情報通信部56を備える。電池情報通信部56は、電池情報に加えて所定の情報を送受信できる。残量取得部12は、電池情報通信部56から送信された各電池残量に関する情報を取得する。決定部2は、残量取得部12で取得した各電池残量に関する情報に基づいて相対的に残量が少ない受信装置に電波Wの送信先を決定する。
【0041】
(第4の例)
決定部2の決定動作の第4の例を説明する。決定部2は、残量比率が相対的に低い受信装置に優先的に電波Wを送信してもよい。例えば、決定部2は、残量取得部12で取得した各電池残量に関する情報に基づいて各残量比率を算出し、算出された各残量比率を比較して、各残量比率の差が小さくなるように電波Wの送信先を決定できる。
【0042】
情報通信部13は、無線送電装置および各受信装置との間で各種の情報を送受信する情報通信を行う。電力供給用の電波Wと情報通信用の電波の干渉は避けることが望ましい。そこで、実施形態の第1無線送電装置1および第2無線送受電装置10は、情報通信部13が通信する場合、電波Wの送信を停止してもよい。
【0043】
図3に示すように、実施形態の第1無線送電装置1は、外部電源87から供給される電力を内部で利用可能な内部電力に変換する電源部11を備える。外部電源87は、照明装置85に電力を供給する電源と共通であってもよい。第1無線送電装置1と照明装置85とに別々に外部電源87用の配線を設けると、配線工数が増え、コスト面で不利になる。そこで、第1無線送電装置1の少なくとも一部は照明装置85に組み込まれてもよい。例えば、電源部11などの第1無線送電装置1の一部が照明装置85に組み込まれてもよいし、第1無線送電装置1が全体として照明装置85に組み込まれてもよい。
図1の例では、第1無線送電装置1の一部が照明装置85に組み込まれている。
【0044】
第1無線送電装置1のアンテナ34は、空間80の広い範囲に電波Wを送信できる位置に設置されることが望ましい。照明装置85は、空間80の広い範囲を照らす位置に設置される場合が多い。アンテナ34は、照明装置85に取り付けられてもよい。
【0045】
受信装置が設置された空間80に人がいる場合、電波Wの送信を停止することが考えられる。電波Wの送信を停止することで、人が電波を受けることを回避することができる。そこで、実施形態の無線送電装置は、受信装置が設置された空間80に人が存在するか否かを推定する推定装置14を備え、推定装置14が、人が存在すると推定したとき、電波Wの送信を停止する。推定装置14は、人の存在を推定可能なものであれば限定はない。推定装置14は、一例として、人感センサと、このセンサの検知結果に基づいて人が存在するか否かを判定する判定部とで構成できる。推定装置14が、人が存在しないと推定したら、電波Wの送信を再開してもよい。
【0046】
照明装置85が点灯しているときは、受信装置が設置された空間80に人がいる可能性があるため、電波Wの送信を停止することが望ましい。そこで、実施形態の無線送電装置は、受信装置が設置された空間80の明るさを検知する光検知部15を備え、光検知部15の検知結果が閾値を超える場合に電波Wの送信を停止する。光検知部15の検知結果が閾値以下になったら、電波Wの送信を再開してもよい。
【0047】
受信装置のそれぞれに適した電波Wの送信方向を自動検知して記憶しておくことにより、方向調整の工数を減らせる。そこで、実施形態の無線送電装置は、電波Wの送信方向を変化させて、各受信装置が電波Wを受信可能な送信方向を検知する方向検知部16と、方向検知部16で検知された送信方向を各受信装置と関連づけて記憶する記憶部17と、を備える。
【0048】
例えば、方向検知部16は、アンテナ34、36の各放射素子の振幅と位相を変化させることにより、電波Wの送信方向を変化させることができる。方向検知部16は、送信方向を変化させながら、各受信装置の受信状況をモニタすることにより、各受信装置の受信状況が良好な送信方向を検知できる。記憶部17は、受信状況が良好な送信方向を各受信装置に関連づけて記憶する。電波Wを送信する際、送信制御部33は、記憶部17から決定部2で決定された送信先の受信装置に関連づけられた送信方向を読み出して、アンテナ34、36の指向性を当該送信方向に向ける。
【0049】
図1、
図7、
図8を参照して無線送電システム100の動作を説明する。
図1は、空間80-A、80-B、80-Cに人90がいない第1動作状態を示している。
図7は、空間80-A、80-Cに人90がいて、空間80-Bに人90がいない第2動作状態を示している。
図8は、空間80-Bに人90がいて、空間80-A、80-Cに人90がいない第3動作状態を示している。第1無線送電装置1、第2無線送受電装置10は、人90がいない空間80に電波Wを送信し、人90がいる空間80には、電波Wを送信しない。この動作は、推定装置14の推定結果に基づいて実行できる。
【0050】
図1の例では、第1無線送電装置1は、空間80-B、80-Cの受信装置5、6と、第2無線送受電装置10の第3受信装置7とに電波W1を送信する。第2無線送受電装置10は、空間80-Aの受信装置5、6に電波W2を送信する。第1受信装置5、第2受信装置6および第3受信装置7では、電波Wから変換された電力によって各二次電池53が充電される。第2無線送受電装置10は、二次電池53の電力により作動する。
【0051】
図7の例では、第1無線送電装置1は、空間80-Bの受信装置5、6と、第2無線送受電装置10の第3受信装置7とに電波W1を送信する。空間80-Cに人90がいるので、第1無線送電装置1は、空間80-Cには電波W1を送信しない。空間80-Aに人90がいるので、第2無線送受電装置10は、電波W2の送信を停止する。空間80-Bの受信装置5、6の二次電池53は、電波Wから変換された電力によって充電される。第2無線送受電装置10の二次電池53は、電波Wから変換された電力によって充電される。
【0052】
図8の例では、第1無線送電装置1は、空間80-Cの受信装置5、6と、第2無線送受電装置10の第3受信装置7とに電波W1を送信する。空間80-Bに人90がいるので、第1無線送電装置1は、空間80-Bには電波W1を送信しない。第2無線送受電装置10は、空間80-Aの受信装置5、6に電波W2を送信する。空間80-Aの受信装置5、6の二次電池53は、電波W2から変換された電力によって充電される。空間80-Cの受信装置5、6の二次電池53は、電波W1から変換された電力によって充電される。
【0053】
空間80のリモコン75およびトイレ装置制御部76は、二次電池53の電力により作動する。
【0054】
実施形態の第2無線送受電装置10の特徴を説明する。第2無線送受電装置10は、電力供給用の第1電波W1を受信する第3受信装置7と、第3受信装置7で受信した第1電波W1から変換された電力に基づいて充電される二次電池53と、二次電池53の電力に基づいて電力供給用の第2電波W2を送信する送信部3と、を備える。
【0055】
この構成によれば、第2無線送受電装置10は、第1電波W1を直接受信できない受信装置にワイヤレスで電力供給できる。例えば、リフォームなどで、既設のトイレにリモコン75を後から設置する場合、リモコン75に受信装置を設けることができる。この場合、リモコン75のための外部電源の壁裏配線をしなくてもよいので、煩雑な作業を回避できる。
【0056】
一例として、第2無線送受電装置10は、第2電波W2を受信するための複数の受信装置5、6のうちから第2電波W2の送信先を決定する決定部2と、決定部2の決定結果に基づいて第2電波W2の送信方向を制御する送信制御部33と、を備えてもよい。この場合、複数の受信装置5、6それぞれにワイヤレスで電力供給できる。
【0057】
一例として、第2無線送受電装置10は、第1電波W1を受信するためのアンテナ36を用いて第2電波W2を送信してもよい。この場合、別々にアンテナを設ける場合よりも、小型化に有利である。
【0058】
一例として、第2無線送受電装置10は、第1電波W1の受信と、第2電波W2の送信とを時分割または空間分割で行ってもよい。この場合、第1電波W1と第2電波W2の干渉を抑制できる。
【0059】
一例として、第2無線送受電装置10は、第2電波W2を送信する空間に人が存在するか否かを推定する推定装置14を備え、推定装置14が、人が存在すると推定したとき、第2電波W2の送信を停止してもよい。この場合、人が存在するときには電波Wの送信を止めることによって、人が電波を受けることを回避できる。
【0060】
一例として、決定部2は、複数の受信装置5、6について予め設定された時刻に電波Wを送信するように送信先を決定してもよい。この場合、夜間など人の出入りが少ない時間帯に集中的に給電できる。
【0061】
一例として、複数の受信装置5、6は、受信した電波Wから変換された電力に基づいて充電される二次電池53を有しており、決定部2は、各二次電池53の電池残量に基づいて電波Wの送信先を決定してもよい。この場合、電池残量が低い受信装置の電池に優先的に充電できるので、電池の充電切れを生じにくい。
【0062】
一例として、決定部2は、各二次電池の最大容量に対する電池残量の残量比率を比較して、各残量比率の差が小さくなるように電波Wの送信先を決定してもよい。この場合、残量比率が低い受信装置の電池に優先的に充電できるので、電池の充電切れを生じにくい。
【0063】
実施形態の無線送電システム100の特徴を説明する。無線送電システム100は、電力供給用の第1電波W1を送信する第1無線送電装置1と、第1電波W1を受信する第2無線送受電装置10と、を備える。第2無線送受電装置10は、第1電波W1を受信する第3受信装置7と、第3受信装置7で受信した第1電波W1から変換された電力に基づいて充電される二次電池53と、二次電池53の電力に基づいて電力供給用の第2電波W2を送信する送信部3と、を有する。
【0064】
この構成によれば、第2無線送受電装置10は、第1電波W1を直接受信できない受信装置にワイヤレスで電力供給できる。
【0065】
一例として、無線送電システム100の第2無線送受電装置10は、第2電波W2を受信するための複数の受信装置5、6のうちから第2電波W2の送信先を決定する決定部2と、決定部2の決定結果に基づいて第2電波W2の送信方向を制御する送信制御部33と、を有してもよい。この場合、複数の受信装置5、6それぞれにワイヤレスで電力供給できる。
【0066】
一例として、第1無線送電装置1は、第2無線送受電装置10とは別の受信装置に第1電波W1を送信してもよい。この場合、別の受信装置にワイヤレスで電力供給できる。
【0067】
一例として、第1無線送電装置1は、第2無線送受電装置10と別の受信装置とに時分割または空間分割で第1電波W1を送信してもよい。この場合、第2無線送受電装置10と別の受信装置それぞれに給電可能で、一方の二次電池53をフル充電してから他方の二次電池53に充電する場合より、電池の充電切れを起こしにくい。
【0068】
一例として、第1無線送電装置1の少なくとも一部は照明装置に組み込まれてもよい。この場合、これらを別々に設置する場合に比べて外部電源87からの配線工数を削減できる。
【0069】
以上が実施形態の説明である。
【0070】
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成を重点的に説明する。
【0071】
(第1変形例)
図9を参照して、無線送電システム100の第1変形例を説明する。
図9は、無線送電システム100が、壁82で仕切られた2つの空間80-D、80-Eに適用された例を示している。第1無線送電装置1は、空間80-Dの天井83に設けられており、空間80-Dの壁82に設けられた受信装置5に電波W1を送信できる。第1無線送電装置1は、隣の空間80-E内を直接見通せないため、空間80-Eの壁82に設けられた受信装置5と、空間80-Eの天井83に設けられた受信装置6には、電波W1を送信できない。
【0072】
空間80-Eの受信装置5、6に電波W1を送信するために、空間80-Dと、空間80-Eの中間近傍の床81に電波W1を反射するリフレクタを配置することが考えられる。この場合、伝送距離が長くなるため、電波W1の減衰が大きくなり、十分な電力伝送は難しい。
【0073】
そこで、本変形例では、空間80-Dと、空間80-Eの中間近傍の床81に第2無線送受電装置10を配置している。第2無線送受電装置10は、第1無線送電装置1からの第1電波W1を受信し、第1電波W1から変換された電力を二次電池に蓄え、当該二次電池の電力に基づいて電力供給用の第2電波W2を送信する。第2無線送受電装置10は、空間80-Eの壁82に設けられた受信装置5と、空間80-Eの天井83に設けられた受信装置6に第2電波W2を送信する。第2無線送受電装置10を中継に用いることにより、リフレクタの場合と比べて伝送距離が短くなるため、十分な電力伝送が可能になる。
【0074】
第2無線送受電装置10は、受信装置5、6と比べて広い面積のアンテナを備えうるため、第1電波W1を高効率で受信でき、第2電波W2を高効率で伝送できる。
【0075】
(その他の変形例)
実施形態の説明では、決定部2の決定動作の第1から第4の例が独立して実行される例を示したが、第1から第4の例の決定動作は、必要に応じて組み合わせて実行されてもよい。
【0076】
実施形態の説明では、中継用の第2無線送受電装置10を一つ備えるシステムの例を示したが、これに限定されない。システムは、第1電波を受信する第2無線送受電装置を複数備えてもよいし、中継用の第2無線送受電装置を複数カスケードに組み合わせてもよい。
【0077】
実施形態の説明では、各無線送電装置が、2つの受信装置5、6に電力供給用の電波Wを送信する例を示したが、これに限定されない。各無線送電装置は3以上の受信装置に電力供給用の電波を送信する構成であってもよい。
【0078】
実施形態の説明では、第2受信装置6が、水洗装置72および洗浄便座装置73に電力を供給する例を示したが、これに限定されない。例えば、受信装置は水洗装置と洗浄便座装置とに別々に設けられてもよい。
【0079】
実施形態の説明では、第1無線送電装置1がバッテリを備えない例を示したが、これに限定されない。第1無線送電装置1は充放電可能なバッテリを備えてもよい。
【0080】
実施形態の説明では、無線送電用のアンテナ34、36が露出する例を示したが、これに限定されない。例えば、無線送電用のアンテナは、照明装置のカバーなどのカバー部材に覆われてもよい。
【0081】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態及び他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【0082】
以上、実施形態及び変形例を説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。
【符号の説明】
【0083】
1 第1無線送電装置、 10 第2無線送受電装置、 2 決定部、 3 送信部、 5 第1受信装置、 6 第2受信装置、 7 第3受信装置、 12 残量取得部、 13 情報通信部、 14 推定装置、 15 光検知部、 16 方向検知部、 17 記憶部、 33 送信制御部、 34、36 アンテナ、 51 電力受信部、 52 電力変換部、 53 二次電池、 56 電池情報通信部、 85 照明装置、 100 無線送電システム。